男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 向 上 のための 方 策 ~ 成 功 した 企 業 の 事 例 を 参 考 に~ 石 島 修 平 小 此 木 綾 華 芳 賀 真 依 子 津 久 井 慧 1 はじめに 安 倍 政 権 は 3 本 の 矢 と 呼 ばれる 経 済 再 生 目 標 を 掲 げ そのうちの 成 長 戦 略 目 標 において 女 性 の 活 躍 推 進 を 挙 げている これは 女 性 の 社 会 進 出 が 進 む 現 代 において 女 性 が 出 産 後 も 働 き 続 けられる 社 会 を 目 指 すというものである 私 たちは 女 性 の 育 児 と 仕 事 の 両 立 に 焦 点 を 当 て 女 性 の 両 立 支 援 実 現 の 一 助 となるように 男 性 が 育 児 休 業 を 取 得 するこ とに 注 目 した 女 性 の 仕 事 と 育 児 の 両 立 が 困 難 な 理 由 として 女 性 は 男 性 に 比 べて 育 児 に 対 する 負 担 が 大 きいことがあげられる 総 務 省 の 調 査 では 6 歳 以 下 の 子 どもをもつ 夫 婦 が 1 日 のうち 家 事 育 児 仕 事 等 にかける 時 間 は 共 働 き 世 帯 で 妻 は 家 事 3 時 間 29 分 育 児 2 時 間 8 分 仕 事 4 時 間 19 分 である 一 方 夫 は 家 事 29 分 育 児 30 分 仕 事 8 時 間 43 分 という 結 果 が でており 1 ここから 夫 の 家 事 や 育 児 への 関 わりが 極 めて 低 調 であることがわかる( 図 表 1) 図 表 1 出 典 : 総 務 省 統 計 局 社 会 生 活 基 本 調 査 ( 平 成 18 年 )より 作 成 女 性 の 育 児 負 担 を 軽 減 し 育 児 と 仕 事 にかけられる 時 間 のバランスを 取 りやすくするた 1
めに 男 性 が 積 極 的 に 育 児 に 参 加 する 必 要 がある そのための 方 法 の 1 つとして 育 児 休 業 制 度 の 活 用 がある 育 児 休 業 は 継 続 就 業 をしながら 育 児 に 関 わる 時 間 を 増 やす 手 段 として 有 効 であると 考 えられる 男 性 が 育 児 休 業 を 取 得 するメリットとして 男 性 の 育 児 参 加 に より 男 性 は 仕 事 女 性 は 家 庭 といったような 性 別 役 割 分 担 意 識 の 是 正 がはかられ 社 会 全 体 の 働 き 方 を 変 えるための 第 一 歩 となるということがあげられる また 企 業 にとって も 男 性 の 育 児 休 業 取 得 者 が 増 加 することで 休 業 者 の 業 務 内 容 を 見 直 すことによる 仕 事 の 効 率 化 ファミリーフレンドリー 企 業 という 会 社 のイメージアップ 社 員 の 家 庭 生 活 の 安 定 による 仕 事 への 姿 勢 改 善 といったような 良 い 影 響 がある しかし 現 状 として 男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 は 2.3%であり 女 性 の 86.6%に 比 べると 低 い 水 準 である 2 本 論 文 では 先 行 研 究 や 厚 生 労 働 省 の 調 査 結 果 などを 参 考 にし 男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 が 低 い 理 由 を 考 察 したうえで 男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 を 上 げるために 大 企 業 が 取 るべき 方 策 を 提 示 する 大 企 業 向 けの 方 策 を 考 えるにあたり 今 回 は 日 本 生 命 保 険 相 互 会 社 ( 以 下 日 本 生 命 とする)の 事 例 を 参 考 にした ここで 大 企 業 に 限 定 した 理 由 は 2 つある 第 1 の 理 由 として 中 小 企 業 と 大 企 業 とでは 人 材 資 産 などの 条 件 が 異 なっているため 両 者 に 同 じ 方 策 を 実 行 させることが 困 難 である ことが 挙 げられる 第 2 の 理 由 は 大 企 業 は 強 い 市 場 支 配 力 をもち 社 会 へもたらす 影 響 力 が 強 いので 大 企 業 が 行 動 することで 取 得 率 を 向 上 させるための 動 きを 社 会 全 体 へと 波 及 させやすいと 考 えられるからである 育 児 休 業 取 得 率 の 低 い 現 状 を 変 えるためには 育 児 休 業 取 得 に 対 する 前 向 きな 考 え 方 を 社 会 に 広 めることが 重 要 である 本 来 であれば 企 業 規 模 にかかわらず 効 果 が 得 られる 取 り 組 みを 提 示 するべきであるが 本 論 文 では 大 企 業 に 取 り 組 みを 実 施 させることを 目 標 とする 2 育 児 休 業 制 度 について 育 児 休 業 制 度 とは 1 歳 に 満 たない 子 を 持 つ 男 女 の 労 働 者 が その 事 業 主 に 申 し 出 ること によって 子 が 1 歳 に 達 するまでの 間 休 業 できる 制 度 である 休 業 は 1 人 の 子 に 対 して 一 回 の 連 続 した 日 数 で 取 得 することが 定 められている 子 が 1 歳 に 達 するまでの 間 分 割 して 何 度 も 取 得 することはできない 正 社 員 ではなく 就 業 する 期 間 が 定 められている 有 期 契 約 雇 用 者 も 条 件 を 満 たせば 取 得 できるようになった 例 外 として 保 育 所 に 入 所 を 希 望 しているが 入 所 できない 場 合 や 1 歳 以 降 子 を 養 育 する 予 定 であったものが 死 亡 するなどの 事 情 により 子 を 養 育 することが 困 難 になった 場 合 は 子 が 1 歳 6 カ 月 に 達 するまで 育 児 休 業 期 間 を 延 長 することができる また 育 児 休 業 制 度 の 中 には 父 親 も 子 育 てができる 働 き 方 の 実 現 を 目 指 した 規 定 が 3 つある 1 つ 目 は パパママ 育 休 プラスである これは 父 母 ともに 育 児 休 業 を 取 得 する 場 合 の 休 業 可 能 期 間 の 延 長 のことであり 父 母 がともに 育 児 休 業 を 取 得 する 場 合 育 児 休 業 取 2
得 可 能 期 間 を 子 が 1 歳 から 1 歳 2 カ 月 に 達 するまでに 延 長 する 2 つ 目 は 出 産 後 8 週 間 以 内 の 父 親 の 育 児 休 業 取 得 の 促 進 である これは 妻 の 出 産 後 8 週 間 以 内 に 父 親 が 育 児 休 業 を 取 得 した 場 合 特 例 として 育 児 休 業 の 再 度 の 取 得 を 認 めるというものである 3 つ 目 は 労 使 協 定 による 専 業 主 婦 ( 夫 ) 除 外 規 定 の 廃 止 である 労 使 協 定 により 専 業 主 婦 の 夫 など を 育 児 休 業 の 対 象 外 にできるという 法 律 の 規 定 を 廃 止 し すべての 父 親 が 必 要 に 応 じ 育 児 休 業 を 取 得 できるようにした 3 育 児 休 業 取 得 率 の 推 移 厚 生 労 働 省 は 雇 用 均 等 基 本 調 査 を 行 い 育 児 休 業 取 得 率 を 調 査 している( 図 表 2) この 調 査 の 対 象 となるのは 無 作 為 抽 出 された 正 規 非 正 規 を 含 む 5 人 以 上 の 従 業 員 がいる 民 間 事 業 所 である 女 性 は 80% 前 後 を 推 移 しているのに 対 して 男 性 は 2% 前 後 という 低 い 水 準 で 推 移 している 国 は 2020 年 までに 男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 を 13%に 引 き 上 げる 目 標 値 を 出 しているが それには 程 遠 い 数 値 となっている 3 図 表 2 出 典 : 厚 生 労 働 省 平 成 26 年 度 雇 用 均 等 基 本 調 査 結 果 より 作 成 また 総 務 省 は 日 本 アメリカ イギリスなどの 先 進 7 か 国 を 比 較 した 6 歳 未 満 の 子 供 3
を 持 つ 男 性 の 育 児 家 事 関 連 時 間 の 調 査 を 行 った( 図 表 3) 日 本 人 男 性 の 育 児 家 事 関 連 時 間 は 約 1 時 間 であり 育 児 時 間 にあまり 差 がないフランスと 比 較 しても 家 事 全 体 で 見 る と 倍 近 くの 差 がある 4 このことから 日 本 の 家 事 関 連 時 間 は 他 の 先 進 諸 国 と 比 較 して 低 い 水 準 であることがわかる 日 本 労 働 組 合 総 連 合 会 の 育 児 休 業 の 取 得 経 験 5 の 調 査 によると 取 得 したことはない が 取 得 したかった と 回 答 した 男 性 は 45.5%である 取 得 経 験 がある 男 性 を 含 めると 約 5 割 の 男 性 が 育 児 休 業 を 取 得 意 向 があることが 分 かる( 図 表 4) 図 表 3 出 典 : 内 閣 府 男 女 共 同 参 画 局 男 女 共 同 参 画 白 書 ( 平 成 27 年 版 ) より 作 成 図 表 4 4
出 典 : 日 本 労 働 組 合 総 連 合 会 パタハラに 関 する 調 査 より 作 成 4 男 性 が 育 児 休 業 を 取 得 できなかった 理 由 平 成 25 年 の 厚 生 労 働 省 の 調 査 6によると 男 性 が 育 児 休 業 を 取 得 したいと 思 っているのに 取 得 できなかった 理 由 として 図 表 5 の 回 答 が 得 られた 中 でも 職 場 が 育 休 制 度 を 取 得 しづ らい 雰 囲 気 だった 日 頃 から 休 暇 を 取 りづらい 職 場 だった 男 性 の 両 立 支 援 制 度 利 用 に 会 社 職 場 の 理 解 がなかった などの 会 社 内 の 雰 囲 気 を 理 由 とした 回 答 が 最 も 多 くなっ ている また 所 得 が 減 少 するという 収 入 に 対 する 不 安 や 育 児 休 業 制 度 について 十 分 わ かっていなかったなどの 知 識 不 足 によるものがあった 図 表 5 出 典 : 厚 生 労 働 省 平 成 25 年 度 育 児 休 業 制 度 等 に 関 する 実 態 把 握 のための 調 査 研 究 事 業 より 作 成 育 児 休 業 取 得 意 向 のある 男 性 の 数 に 対 して 実 際 に 取 得 できる 人 は 少 ない 職 場 環 境 や 所 得 減 に 対 する 不 安 が 育 児 休 業 取 得 を 妨 げる 原 因 となっており それを 改 善 することが 課 題 となっている これらの 問 題 を 改 善 するには 各 企 業 の 取 り 組 みが 重 要 であるので 企 業 ご 5
とに 改 善 策 を 立 てることが 有 効 であると 考 えられる 5 日 本 生 命 5-1 日 本 生 命 について 厚 生 労 働 省 では 男 性 が 育 児 により 関 わることのできるような 環 境 づくりに 社 会 全 体 がより 積 極 的 に 取 り 組 んでいくために イクメンプロジェクトを 推 進 している このプロ ジェクトの 取 り 組 みの 1 つとしてイクメン 企 業 アワードというものがある これは 働 き ながら 安 心 して 子 どもを 産 み 育 てることができる 労 働 環 境 の 整 備 を 推 進 するため 男 性 の 育 児 と 仕 事 の 両 立 を 積 極 的 に 促 進 し 業 務 改 善 を 図 る 企 業 を 表 彰 するものである 今 回 男 性 の 育 児 休 業 取 得 を 推 進 している 企 業 の 取 り 組 みをより 詳 しく 知 るために 2014 年 度 のイクメン 企 業 アワードで 特 別 奨 励 賞 を 受 賞 した 日 本 生 命 にインタビューを 行 った 日 本 生 命 を 選 んだ 理 由 は 女 性 従 業 員 が 多 いため 育 児 に 関 する 関 心 が 高 い イクボスの 育 成 に 力 を 入 れている 後 に 記 述 するような 輝 き 推 進 室 を 設 置 し 女 性 の 活 躍 推 進 にむけ た 制 度 を 多 く 取 り 入 れている という 3 つの 点 からである 女 性 従 業 員 が 多 いなどといっ た 条 件 の 整 った 会 社 は 大 企 業 であっても 少 ないと 考 えられるが 女 性 の 活 躍 推 進 を 目 指 し 男 性 の 育 児 休 業 取 得 を 推 進 する 取 り 組 みを 率 先 して 行 っているという 点 では ほかの 大 企 業 においても 参 考 になる 点 は 多 いと 考 えられる 日 本 生 命 は 1889 年 に 創 業 と 歴 史 の 深 い 大 企 業 だ 従 業 員 は 平 成 26 年 度 で 70,783 名 そ のうち 63,363 名 が 女 性 従 業 員 となっており 従 業 員 の 約 9 割 を 女 性 が 占 めているという 女 性 比 率 の 高 い 企 業 である 平 均 年 齢 は 男 女 とも 40 代 半 ばとなっている 5-2 日 本 生 命 の 取 り 組 み 育 児 休 業 を 取 得 しやすい 雰 囲 気 作 り 日 本 生 命 は 人 事 部 内 で 社 内 の 意 識 改 革 を 担 う 専 門 部 署 輝 き 推 進 室 を 設 けている 日 本 生 命 では 創 業 後 間 もない 時 期 から 女 性 が 営 業 の 分 野 で 活 躍 しており 本 部 の 企 画 や 開 発 などはほぼ 男 性 社 員 が 担 っていた そこでこのような 状 況 を 変 えるために 女 性 職 員 のキャリア 開 発 や 能 力 向 上 働 きやすい 職 場 づくりを 企 画 推 進 する 輝 き 推 進 室 を 2008 年 に 設 置 した 当 初 は 女 性 を 対 象 に 仕 事 と 家 庭 の 両 立 支 援 や チャレンジ 意 欲 を 醸 成 する 取 り 組 みから 着 手 したが 女 性 の 仕 事 の 質 を 高 めるためには 全 職 員 の 意 識 改 革 が 必 要 と 判 断 し 2009 年 からは 男 性 も 含 めた 意 識 改 革 に 取 り 組 んだ 2012 年 度 までの 主 な 実 績 として 社 内 HP での ワークライフ バランス(WLB) 王 子 の 紹 介 全 事 業 所 で 出 張 講 義 輝 き 塾 の 開 催 6
新 任 課 長 研 修 での WLB 研 修 実 施 WLB ハンドブック 作 成 部 門 を 超 えてマネジメント 手 法 を 共 有 する 課 長 塾 の 開 催 パパママランチ 交 流 会 の 開 催 イクメンハンドブック を 作 成 両 立 支 援 ハンドブック Q&A 集 を 作 成 などがある 現 場 だけでなく 管 理 職 層 にも 積 極 的 に 意 識 改 革 を 働 き 掛 けてきた こう した 取 り 組 みを 通 じて 男 性 の 育 休 が 浸 透 していない 現 実 が 浮 き 彫 りとなった 子 供 が 育 つ 環 境 整 備 の 点 からも 男 性 の 育 児 参 加 が 社 会 的 機 運 になってきた ことも 踏 まえ 2013 年 度 は 男 性 の 育 児 参 加 を 推 進 することに 決 めた WLB 王 子 の 紹 介 や パパママランチ 交 流 会 の 開 催 といった 草 の 根 運 動 をはじめ 男 性 が 抵 抗 感 なく 育 児 休 業 を 取 得 できるよ う 社 内 の 雰 囲 気 をあらかじめ 醸 成 した 女 性 の 活 躍 を 推 進 するうえで 男 性 にも 家 事 や 育 児 に 対 する 理 解 を 深 めてもらい 自 分 たちの 働 き 方 を 変 えるきっかけになってほしいとい う 目 的 から 2013 年 度 に 男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 100% 目 標 を 打 ち 出 した イクボス 育 成 の 取 り 組 み 日 本 生 命 は 従 業 員 が 意 欲 的 前 向 きに 働 くことが 出 来 る 環 境 整 備 をするために ニッ セイ 版 イクボス の 育 成 に 力 を 入 れている イクボスとは 職 場 で 共 に 働 く 部 下 スタッ フのワークライフ バランスを 考 え その 人 のキャリアと 人 生 を 応 援 しながら 組 織 の 業 績 も 結 果 を 出 しつつ 自 らも 仕 事 と 私 生 活 を 楽 しむことができる 上 司 のことを 指 す 7 ニッ セイ 版 イクボスは 育 次 ( 次 世 代 育 成 に 注 力 する) 育 自 ( 自 らも 成 長 し 続 ける) 育 児 ( 部 下 の WLB を 大 切 にする) 育 地 ( 組 織 風 土 を 作 る) といった 4 つの イクジ 取 り 組 みを 推 進 している 女 性 活 躍 にはトップの 本 気 度 が 大 きく 問 われる 社 長 をはじめと した 経 営 トップが 女 性 活 躍 を 経 営 戦 略 と 明 確 に 位 置 づけ 理 解 を 示 すことは 男 性 従 業 員 が 育 児 休 業 を 取 得 しやすい 雰 囲 気 を 作 ることにつながる 育 休 有 給 化 の 取 り 組 み 日 本 生 命 の 育 児 休 業 制 度 は 子 供 の 出 生 日 から 満 1 歳 6 か 月 到 達 日 の 翌 日 以 降 最 初 に 訪 れる 3 月 31 日 までを 取 得 可 能 な 期 間 としている また 最 初 の 7 日 間 は 有 給 扱 いとな るといった 会 社 独 自 の 制 度 を 設 けている そこで 今 回 の 施 策 では まず 男 性 の 対 象 者 全 員 に 1 週 間 程 度 取 得 させることを 目 標 とした 取 得 徹 底 に 向 けては 文 書 での 通 達 に 加 え 部 課 長 クラスには 研 修 などの 機 会 がある 度 に 経 営 層 からも 働 き 掛 けた 休 みの 取 り 方 をイメ ージしやすいように 家 族 構 成 や 子 供 の 成 長 過 程 ごとに 取 得 パターンも 例 示 した 5-3 取 り 組 みの 効 果 7
このような 会 社 全 体 での 働 きかけにより 2013 年 度 に 男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 100%の 目 標 を 達 成 することが 出 来 た その 後 も 取 り 組 みを 続 行 し 2014 年 度 も 育 児 休 業 取 得 率 100% となった 2015 年 度 も 取 り 組 みを 実 施 している 実 際 に 育 児 休 業 を 取 得 した 男 性 社 員 の 声 として 子 供 を 持 つ 女 性 に 対 する 理 解 が 進 んだ 育 児 参 加 の 喜 びや 意 味 合 いに 気 付 き 効 率 的 な 働 き 方 を 志 向 などというものがあった 職 場 では 一 人 で 抱 えていた 業 務 の 周 囲 への 分 担 部 下 への 委 譲 が 進 んだ 業 務 の 見 える 化 が 進 み 急 な 休 みにも 対 応 できる 協 力 体 制 ができた 普 段 接 することのないほかの 営 業 部 の 拠 点 長 や 次 長 支 社 長 が 訪 れることで 職 場 の 活 性 化 につながった などという 効 果 が 聞 かれた 育 児 休 業 を 取 得 するとなると 周 囲 の 負 担 の 増 加 や 仕 事 が 遅 れるなど 悪 いイメ ージが 浮 かぶが 実 際 は 引 き 継 ぎの 際 に 業 務 内 容 を 見 直 し 整 理 することによって 協 力 体 制 ができ 仕 事 の 効 率 化 につながるなど 職 場 に 好 影 響 を 与 えると 考 えられる 日 本 生 命 は 半 ば 強 制 的 に 男 性 社 員 に 育 児 休 業 を 取 得 させた 男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 100% 目 標 を 推 進 するまでは 約 1%の 男 性 しか 育 児 休 業 を 取 得 していなかった 育 児 休 業 制 度 は あったが 本 当 に 男 性 で 使 う 人 はいるのか? と 思 っている 人 が 大 半 だったと 言 う 最 初 は 数 名 しか 取 得 していなかったが 取 得 した 人 の 事 例 を 社 内 ホームページで 掲 載 すること で 男 性 も 育 児 休 業 を 取 得 しても 良 いという 空 気 が 広 がっていった 6 男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 を 上 げるために 日 本 生 命 の 取 り 組 みをふまえて 男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 をあげるための 方 策 を 2 つ 考 え た 1 つめはイクボスの 育 成 である イクボスとは 部 下 やスタッフの 仕 事 と 育 児 を 両 立 しや すい 環 境 の 整 備 に 務 めるリーダーのことである 先 ほど 男 性 が 育 児 休 業 を 取 得 できなかっ た 理 由 として 職 場 が 育 休 制 度 を 取 得 しづらい 雰 囲 気 だったから 男 性 の 両 立 支 援 制 度 利 用 に 会 社 職 場 の 理 解 がなかった など 職 場 の 雰 囲 気 が 理 由 で 育 児 休 業 を 取 得 できな い 男 性 が 上 位 を 占 めていたと 述 べたことからも 分 かるように いかに 育 児 休 業 を 取 得 しや すい 雰 囲 気 を 作 り 出 すかが 重 要 となる そこで 職 場 の 雰 囲 気 を 改 善 するために 経 営 者 や 管 理 職 の 上 司 が 部 下 やスタッフの 仕 事 と 育 児 を 両 立 しやすい 環 境 整 備 に 務 めるリーダー になることが 有 効 であると 考 えられる このようなリーダーのことであるイクボスの 育 成 を 会 社 全 体 ではかることが 重 要 である 日 本 生 命 においても 上 司 が 積 極 的 に 部 下 に 働 き かけ 育 児 休 業 の 取 得 を 推 進 した では どのようにしてイクボスの 育 成 をはかれば 良 いのか イクボスの 育 成 をはかる 方 法 の 1 つとして 企 業 向 けの 講 演 会 に 参 加 することが 挙 げられる NPO 法 人 ファザーリン グ ジャパン 8 などが 企 業 向 けに 育 児 に 対 する 男 性 の 意 識 改 革 を 目 的 とした 講 演 会 を 開 いて 8
おり 企 業 はこれらの 活 動 に 参 加 することで 管 理 職 層 の 育 児 に 対 する 考 え 方 を 前 向 きな ものにすることができる 各 都 道 府 県 でも 講 演 会 を 開 催 しており また 広 島 県 では 湯 﨑 英 彦 知 事 が 県 内 の 企 業 経 営 者 に 呼 びかけ 全 国 初 となるイクメンを 応 援 する 企 業 経 営 者 の 同 盟 イクメン 企 業 同 盟 を 結 成 するなど 仕 事 と 子 育 てを 両 立 しやすい 環 境 づくり に 取 り 組 んでいるので そういった 活 動 にかかわっていくのも 良 い まずは 経 営 者 や 管 理 職 の 上 司 が 育 児 に 対 して 関 心 を 持 ち 前 向 きな 姿 勢 にならなければならず 各 企 業 が 経 営 者 や 管 理 職 の 上 司 にこのような 講 演 会 に 参 加 する 機 会 を 設 けなければならない 2 つめは 会 社 独 自 の 育 児 休 業 制 度 に 関 するものである 現 行 法 では 休 業 中 の 給 付 金 の 面 で 柔 軟 性 がないので 現 行 法 をもとに 会 社 独 自 で 従 業 員 のニーズに 合 わせた 規 定 をつくるこ とで 育 児 休 業 取 得 率 の 増 加 が 見 込 まれる 育 児 休 業 を 取 得 する 際 に 休 業 取 得 により 所 得 が 減 ることなどの 不 安 を 持 っている 人 が 多 く その 不 安 が 育 児 休 業 の 取 得 をためらう 原 因 の 1 つとなっている この 不 安 を 解 消 する ために 育 児 休 業 中 の 一 定 日 数 を 有 給 化 することが 挙 げられる 現 行 法 では 育 児 休 業 中 は 会 社 から 給 与 は 支 払 われず 雇 用 保 険 から 育 児 休 業 給 付 金 が 支 給 される 6 か 月 以 内 の 休 業 であれば 給 与 の 67% それ 以 降 は 給 与 の 50%が 支 払 われるが 少 しでも 収 入 が 減 ることへ の 不 安 から 育 児 休 業 を 取 らないという 人 は 多 い 日 本 生 命 では 育 児 休 業 中 の 最 初 の 7 日 間 を 有 給 にするとしており 短 い 間 でも 制 度 を 利 用 させる 誘 因 となり 短 期 間 の 休 業 取 得 者 を 増 やすことでも 育 児 休 業 取 得 率 を 向 上 させることは 可 能 となる 育 児 休 業 は 長 期 間 休 む ものだと 考 えがちだが 育 児 休 業 の 取 得 日 数 は 1 日 でも 休 業 になる 1 か 月 以 上 連 続 して 休 むことへの 抵 抗 感 はあるかもしれないが 短 い 期 間 ならば 抵 抗 感 は 感 じないはずである 育 児 休 業 が 1 日 1 週 間 だけでは 意 味 がないという 考 えもあるが たとえ 短 期 間 でも 育 児 休 業 をとり 子 供 とふれあい そして 妻 の 普 段 の 苦 労 を 知 ることにより より 家 族 への 理 解 が 深 まる まずは 1 日 1 週 間 でも 良 い はじめから 長 く 取 得 しようとするからいつまでも 育 児 休 業 取 得 率 が 上 がらない 確 かに 1 日 1 週 間 だけでは 妻 の 就 業 支 援 にはならないかもしれ ないが はじめは 1 日 1 週 間 で 良 いので 育 児 休 業 の 取 得 率 を 上 げる まずはそこをクリア してから 徐 々に 期 間 を 長 くすることを 考 えるべきである 多 少 時 間 がかかるかもしれない が まずは 短 期 間 でも 良 いから 育 児 休 業 を 取 得 して その 後 徐 々に 取 得 する 期 間 を 長 く していけば 妻 の 仕 事 の 両 立 を 助 けることができるようになる 7 まとめ 女 性 の 育 児 と 仕 事 の 両 立 が 重 要 視 されている 今 そのキーワードのひとつが 男 性 の 育 児 休 業 取 得 であると 考 えられる 男 性 が 育 児 休 業 を 取 得 することにより 女 性 の 育 児 と 仕 事 の 両 立 を 手 助 けすることができる しかし 国 の 方 策 だけでは 取 得 者 が 増 えないのが 現 状 9
であり そこで 必 要 となってくるのが 企 業 の 取 り 組 みである 男 性 の 育 児 休 業 取 得 を 推 進 する 企 業 が 増 えていけば 女 性 の 育 児 と 仕 事 の 両 立 だけでは なく 性 別 役 割 分 業 観 といった 男 性 の 育 児 に 対 する 意 識 改 革 を 社 会 全 体 で 図 ることができ る 今 回 取 り 上 げた 日 本 生 命 保 険 相 互 会 社 は 男 性 従 業 員 の 育 児 休 業 を 義 務 付 けるなど 他 社 では 見 られない 企 業 独 自 の 取 り 組 みをしている その 取 り 組 みを 踏 まえて イクボスの 育 成 育 児 休 業 中 の 一 定 日 数 の 有 給 化 を 各 企 業 が 行 っていけば 男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 は 向 上 するはずである 男 女 比 や 平 均 年 齢 の 違 いなど 企 業 によって 様 々な 特 色 があるので そ れも 考 慮 してイクボスの 育 成 や 育 児 休 業 中 の 一 定 日 数 の 有 給 化 をしていくべきである い きなり 長 期 間 の 育 児 休 業 を 取 得 することは 難 しいがまずは 短 期 間 でも 良 いので 取 得 するこ とからはじめて 徐 々に 期 間 を 長 くしていけば 良 い このような 方 策 を 実 行 できれば 男 性 の 育 児 休 業 取 得 率 を 上 げることができる 参 考 文 献 武 石 恵 美 子 (2004) 男 性 はなぜ 育 児 休 業 を 取 得 しないのか,54-57 頁, 日 本 労 働 研 究 雑 誌. 厚 生 労 働 省 (2014) 平 成 26 年 度 雇 用 均 等 基 本 調 査 結 果 1-23 頁 厚 生 労 働 省 (2015) 育 児 休 業 給 付 の 内 容 及 び 支 給 申 請 手 続 きについて 1-8 頁 総 務 省 統 計 局 (2006) 社 会 生 活 基 本 調 査 厚 生 労 働 省 ホームページ(2015 年 11 月 11 日 アクセス) http://www.mhlw.go.jp/ 内 閣 府 ホームページ http://www.cao.go.jp/ 日 本 労 働 組 合 総 連 合 会 ホームページ http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/chousa/ 日 本 経 済 新 聞 http://www.nikkei.com/ 日 本 生 命 相 互 会 社 ホームページ(2015 年 10 月 24 日 アクセス) http://www.nissay.co.jp/ ファザーリング ジャパンホームページ(2015 年 11 月 11 日 アクセス) http://fathering.jp/ 広 島 県 ホームページ(2015 年 11 月 18 日 アクセス) http://www.pref.hiroshima.lg.jp/ 労 働 政 策 研 究 研 修 機 構 (2015 年 11 月 18 日 アクセス) 10
http://www.jil.go.jp/index.html 1 総 務 省 統 計 局 平 成 18 年 度 社 会 生 活 基 本 調 査 2 厚 生 労 働 省 平 成 26 年 度 雇 用 均 等 基 本 調 査 事 業 所 調 査 4-5 頁 3 厚 生 労 働 省 平 成 26 年 度 雇 用 均 等 基 本 調 査 事 業 所 調 査 4-5 頁 4 総 務 省 統 計 局 平 成 23 年 度 社 会 生 活 基 本 調 査 63 頁 5 日 本 労 働 組 合 総 連 合 会 (2014) パタハラに 関 する 調 査 8 頁 6 厚 生 労 働 省 平 成 25 年 度 育 児 休 業 制 度 に 関 する 実 態 把 握 のための 調 査 研 究 事 業 7 ファザーリング ジャパン イクボスプロジェクト ホームページより 引 用 8 ファザーリング ジャパンは 父 親 支 援 事 業 による Fathering の 理 解 浸 透 こそが よい 父 親 ではなく 笑 っている 父 親 を 増 やし ひいてはそれが 働 き 方 の 見 直 し 企 業 の 意 識 改 革 社 会 不 安 の 解 消 次 世 代 の 育 成 に 繋 がり 10 年 後 20 年 後 の 日 本 社 会 に 大 きな 変 革 をもたらすということを 信 じ これを 目 的 としてさまざまな 事 業 を 展 開 していく ソーシャル ビジネス プロジェクト 11