大阪市立科学館研究報告 第23号 2013年 p.25-30



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Transcription:

大 阪 市 立 科 学 館 研 究 報 告 23, 25-30 (2013) 電 極 式 炊 飯 器 とその 再 現 長 谷 川 能 三 * 概 要 現 在 の 電 気 炊 飯 器 はヒーターやIH 方 式 によって 加 熱 する 方 式 となっているが かつては 炊 飯 器 に 入 れた 米 と 水 に 直 接 電 流 を 流 し そのジュール 熱 によって 加 熱 する 炊 飯 器 が 存 在 した しかしこのような 炊 飯 器 ではうまくご 飯 が 炊 けないと 思 われがちである そこで このような 電 極 式 炊 飯 器 を 再 現 したところ 普 通 の 電 気 炊 飯 器 で 炊 いたものと 遜 色 のなく 炊 くことができた そこで この 炊 飯 方 式 やその 背 景 問 題 点 等 について 述 べる 1.はじめに エネルギーの 変 換 や 電 気 抵 抗 の 学 習 素 材 として パン 種 に 直 接 通 電 する 電 気 パン と 呼 ばれる 実 験 が 行 なわれることがある これは 容 器 の 内 側 に2つの 電 極 を 配 して100V 交 流 の 電 源 につなぐという 簡 単 なも のであり パン 種 に 直 接 電 流 が 流 れ パン 種 そのもの が 発 熱 することでパンが 焼 ける( 蒸 しパンのようなものが できる)という 実 験 である( 例 えば [1][2]などで 紹 介 されている) パン 種 に 水 分 が 多 い 間 は 電 流 がたくさん 流 れ 発 熱 量 も 大 きいが 水 分 が 少 なくなると 電 流 がほ とんど 流 れなくなり パンが 焼 き 上 がる 純 粋 な 水 は 理 論 的 には 非 常 に 電 気 抵 抗 が 非 常 に 大 きく ほぼ 絶 縁 体 である しかし 水 道 水 など 実 際 に 使 われている 水 にはさまざまな 電 解 質 が 溶 け 込 んでお り 絶 縁 体 とはいえない これは 水 に 溶 解 した 電 解 質 がイオンとなり 自 由 に 移 動 することができるためである このため 水 がすべて 蒸 発 し 析 出 した 電 解 質 だけにな ったり 水 が 少 なくなり 何 らかの 理 由 でイオンが 移 動 で きなくなれば 電 流 は 流 れなくなる しかし パン 種 の 場 合 にはいくら 水 分 が 多 いとはいえ イオンが 移 動 す るというイメージは 持 ちにくいのではないだろうか たからおはち という 商 品 で 木 製 のおひつ 状 の 容 器 の 底 に 櫛 の 歯 状 の 電 極 が2つ 櫛 の 歯 が 互 い 違 いに なるように 取 り 付 けられ 電 極 とつながったコードをコン セントに 差 すだけという 簡 単 なものである このような 方 式 の 炊 飯 器 に 特 に 決 まった 名 称 はないようであるの で ここでは 電 極 式 炊 飯 器 とする このような 電 極 式 炊 飯 器 は 現 在 のソニーの 前 身 で ある 東 京 通 信 研 究 所 が 終 戦 直 後 (1945 年 秋 )に 試 作 したものの ご 飯 に 芯 があったりお 粥 のようになったり うまく 炊 けるほうがまれというありさま で ソニーの 失 敗 作 第 一 号 であるということが ソニーの 歴 史 の 中 で 紹 介 されている [ 3 ] 4 ][5 ] このため 電 極 式 炊 飯 器 と 2. 電 極 式 炊 飯 器 大 阪 市 立 科 学 館 では このように 材 料 に 直 接 電 流 を 流 し その 電 気 抵 抗 による 発 熱 によって 調 理 する 炊 飯 器 を 所 蔵 展 示 している 富 士 計 器 株 式 会 社 製 の * 大 阪 市 立 科 学 館 学 芸 員 hasegawa@sci-museum.jp 写 真 1. 電 極 式 炊 飯 器 たからおはち

長 谷 川 能 三 写 真 2. たからおはち 内 部 の 電 極 いうものを 知 っていても この 方 式 ではご 飯 はうまく 炊 くことができない このような 炊 飯 器 は 試 作 されたが 商 品 化 されなかった このような 炊 飯 器 はソニー( 東 京 通 信 研 究 所 )が 独 自 に 考 案 した と 思 われることが 多 いよ うである [6] そこでまず たからおはち を 調 べたところ 添 付 され ていた 説 明 書 に 実 用 新 案 登 録 一 四 九 五 号 とあった しかしこの 番 号 は 実 用 新 案 の 登 録 番 号 ではなく 昭 和 21 年 の 実 用 新 案 の 願 書 番 号 1495 号 が 該 当 する 実 用 新 案 であった この 実 用 新 案 の 出 願 は 東 京 通 信 研 究 所 の 試 作 より 後 の1946 年 であるが その 内 容 は 電 流 を 直 接 材 料 に 流 して 炊 飯 することではなく 電 極 の 形 状 を 同 形 の 櫛 の 歯 型 の 電 極 2 枚 にすることにより 電 極 の 製 作 取 り 付 けを 容 易 にすることであった つま り この 炊 飯 方 式 そのものについては 当 時 既 知 の 技 術 だったのである そこで これ 以 前 で 炊 飯 方 法 に 関 する 特 許 実 用 新 案 を 調 べたところ 電 極 式 炊 飯 器 図 1. たからおはち の 実 用 新 案 写 真 3. たからおはち の 説 明 書 そのものについては 電 気 に 依 る 炊 飯 法 として 昭 和 9 年 に 特 許 出 願 昭 和 11 年 に 特 許 取 得 されている こ の 特 許 では 電 極 の 形 状 として 同 心 円 状 の 円 形 の 電

電 極 式 炊 飯 器 とその 再 現 図 2. 電 気 に 依 る 炊 飯 法 の 特 許 極 もしくは 短 冊 形 の 電 極 を 並 べるようになっており たからおはち の 実 用 新 案 で 公 知 とされている 電 極 の 形 状 とも 一 致 する また この 頃 には 他 にも 食 材 に 直 接 電 流 を 流 すことにより 煮 炊 きする 調 理 器 具 やパン 焼 き 器 など 特 許 や 実 用 新 案 に 登 録 されているものが 多 い これらのことから 電 極 式 炊 飯 器 はソニー( 東 京 通 信 研 究 所 )が 独 自 に 開 発 したものでないことは 明 らか である 3. 電 極 式 炊 飯 器 の 再 現 電 極 式 炊 飯 器 の 再 現 にあたっては 簡 単 のため 容 器 は たからおはち に 近 い 大 きさの 市 販 の 木 製 の おひつを 用 いた 電 極 は 0.1mm 厚 のステンレス 板 を たからおはち の 電 極 の 形 状 をまねて 切 り 抜 き お ひつの 底 の 内 側 に 木 ねじで 固 定 した また 両 電 極 か ら 各 1ヶ 所 おひつの 底 を 貫 通 するようにボルトを 通 し おひつの 裏 側 で 電 線 とつないだ この 電 線 には ブレ ーカーを 介 しプラグを 取 り 付 けた お 米 は 普 通 のお 米 1 合 を 研 いで30 分 程 水 に 浸 した ものを 使 用 し 水 の 量 は 一 般 的 な 電 気 炊 飯 器 で 炊 く 場 合 と 同 じ 量 にした これをおひつを 改 造 した 電 極 式 炊 飯 器 に 入 れ 100V 交 流 の 電 源 につないだところ 最 初 は70W 程 度 の 電 力 消 費 であった その 後 図 3 のとおり 消 費 電 力 は200W 程 度 まで 増 えたが 非 常 に 増 減 が 激 しく 不 安 定 となった これは 中 の 水 が 沸 騰 し 電 極 に 水 蒸 気 の 泡 がつくなどしたからではないかと 考 えられる その 後 20 分 を 過 ぎた 頃 から 消 費 電 力 は 落 ち やがて30Wを 切 るようになった そこで 炊 き 始 めから およそ30 分 後 に 電 源 を 切 り 5 分 ほど 蒸 らした 蓋 を 開 けてみると きれいにご 飯 が 炊 けており 少 し 固 めであ ったが 芯 が 残 ったりお 粥 のようなご 飯 にはならなかっ た ただ 電 極 の 先 端 に 接 していた 部 分 で 少 し 黒 く 焦 げたご 飯 粒 があった 図 4. 炊 飯 中 の 消 費 電 力 の 変 化 写 真 4. 再 現 した 電 極 式 炊 飯 器 炊 きあがったご 飯 が 少 し 固 めであったことから 少 し 水 を 多 めにして 同 じように 炊 いたところ 問 題 なく 炊 き あがった また お 米 の 量 を2 合 にしても 同 様 にうま 炊 くことができた

長 谷 川 能 三 写 真 5. 炊 飯 中 の 様 子 ( 左 上 は 炊 飯 前 右 上 は 炊 飯 中 で 消 費 電 力 最 大 の 頃 下 2 枚 は 炊 きあがり) 電 力 計 の 誤 差 により 電 力 を 使 用 していなくても1~2Wの 表 示 となる 写 真 6. 炊 きあがったごはん ( 写 真 上 部 に 少 し 焦 げたご 飯 粒 がある) 4. 課 題 このように 電 極 式 炊 飯 器 は ソニーのオリジナルの ものではなく 実 際 に 商 品 化 もされており ご 飯 を 炊 く ことのできるものであった 東 京 通 信 研 究 所 の 試 作 で 炊 飯 に 失 敗 した 理 由 とし ては 米 や 水 の 入 れ 加 減 が 難 しく また 当 時 は 電 圧 が 不 安 定 だった とある [ 3][ 4][5] しかし 今 回 の 再 現 で 簡 単 にご 飯 をうまく 炊 くことができたのは 実 際 に 商 品 として 販 売 されていた たからおはち の 電 極 をまねたこ とが 大 きいと 思 われる 電 気 パンの 実 験 では 牛 乳 等 の1Lの 紙 パックを 底 から 数 cmの 高 さにカットし 向 か い 合 った2つの 側 面 に 電 極 を 取 り 付 けた 容 器 が 使 われ ることがある そこで 今 回 この 容 器 でも 炊 飯 を 試 みた が 電 極 間 の 距 離 が 長 いため 電 気 抵 抗 が 大 きく 炊 飯 するだけの 熱 量 とはならなかった このことから 電 極 間 の 距 離 は 非 常 に 重 要 である しかし 今 回 の 再 現 で 問 題 点 も 明 らかとなった 簡 単 に 再 現 するために 市 販 のおひつを 用 いたが おひ つは 炊 いたご 飯 を 入 れるためのものであり 水 を 入 れる ことを 考 えては 作 られていない そのため 数 回 使 用 す ると 底 板 にゆがみが 生 じ 水 漏 れを 起 こすようになっ てしまった また 電 極 として 薄 いステンレス 板 をカット して 使 用 したが このステンレス 板 とおひつの 底 板 との 間 に 隙 間 ができ 炊 いたご 飯 が 入 り 込 んだため 清 掃 が 難 しかった そこで 2 回 目 以 降 の 炊 飯 では 中 にガ ーゼを 敷 いて 電 極 とお 米 が 接 触 しないようにした この ことにより ご 飯 粒 が 少 し 黒 く 焦 げることも 防 ぐことがで きた また 電 極 式 炊 飯 器 だけでなく 電 気 パンにも 共 通 し た2つの 問 題 点 がある

電 極 式 炊 飯 器 とその 再 現 まず 100V 交 流 の 電 源 を 用 いることから 感 電 や 漏 電 ショートを 起 こさないように 対 策 する 必 要 がある 今 回 電 源 との 間 にブレーカーを 取 り 付 け ショートや 漏 電 により 過 電 流 が 流 れた 場 合 には 電 流 を 遮 断 する ようにした しかし 通 電 中 に2つの 電 極 に 触 れるなど して 感 電 した 場 合 の 対 策 とはなっていない 直 接 電 極 などに 触 れられないような 構 造 にするなどの 対 策 だけ でなく 通 電 中 は 水 に 手 を 入 れるなどもしないように 注 意 が 必 要 である また 今 回 は 簡 単 のために 電 極 にステンレス 板 を 使 用 したが 試 食 を 行 なう 場 合 には 電 極 の 素 材 にも 注 意 しなければならない 食 品 衛 生 法 に 基 づく 食 品 添 加 物 等 の 規 格 基 準 [7] では 電 流 を 直 接 食 品 に 通 ず る 装 置 を 有 する 器 具 の 電 極 は 鉄 アルミニウム 白 金 及 びチタン 以 外 の 金 属 を 使 用 してはならない ただし 食 品 を 流 れる 電 流 が 微 量 である 場 合 にあっては ステ ンレスを 電 極 として 使 用 することは 差 し 支 えない とな っている しかし この 炊 飯 において 食 品 を 流 れる 電 流 が 微 量 であるとはいえない 上 記 基 準 では 鉄 やアルミ ニウムの 電 極 の 使 用 も 認 められているが イオンの 溶 け 出 し 清 潔 性 価 格 等 を 考 えると 電 極 にはチタンを 使 用 する 必 要 があるであろう このように 今 回 の 再 現 ではいくつかの 問 題 点 が あるが 電 気 パンと 比 べて 食 品 の 状 態 と 電 気 抵 抗 の 関 係 を 理 解 しやすいと 考 える つまり 液 体 の 水 に 電 解 質 が 溶 けた 状 態 では 電 流 が 流 れ 見 た 目 に 液 体 の 水 がなくなれば 電 流 はあまり 流 れなくなる さらに 醤 油 等 を 入 れた 炊 き 込 みご 飯 では 電 流 がどのように 変 化 す るかを 調 べてみるのもおもしろい また 炊 飯 方 式 としてこの 方 式 はエネルギーのロス が 少 ない このことから チタン 電 極 を 用 いて 通 常 の 電 気 炊 飯 器 のようにマイコン 制 御 といったことができれ ば IH 方 式 よりも 簡 単 で 効 率 の 良 い 炊 飯 器 となる 可 能 性 も 考 えられる [ 参 考 文 献 ] [1] 杉 原 和 夫 電 気 パン 焼 き 器, 理 科 おもしろ 実 験 ものづくり 完 全 マニュアル ( 左 巻 健 男 編 著 ),p21, 東 京 書 籍 (1993) [2] もりの 小 学 校 webサイト 電 気 パン http://www.morinogakko.com/classroom/rika/jikken/denkipan/index.htm [3] ソニー 広 報 部 ソニー 自 叙 伝,ワック 株 式 会 社 (2001) [4] 江 戸 東 京 博 物 館 板 谷 敏 弘 益 田 茂 本 田 宗 一 郎 と 井 深 大 ホンダとソニー 夢 と 創 造 の 原 点, 朝 日 新 聞 社 (2002) [5] ソニー 株 式 会 社 webサイト Sony History 第 1 章 焼 け 跡 からの 出 発 http://www.sony.co.jp/sonyinfo/corporateinfo/history/sonyhistory/1-01.html [6] 柏 木 博 長 沼 行 太 郎 内 田 青 蔵 大 竹 誠 唐 澤 平 吉 中 野 照 子 CONFORT 5 月 増 刊 にっぽん 家 事 録, 建 築 資 料 研 究 社 (2002) [7] 厚 生 労 働 省 厚 生 省 告 示 第 370 号 食 品 添 加 物 等 の 規 格 基 準 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kigu/dl/4.pdf