血糖コントロールと合併症 糖尿病は 発病初期には自覚症状がないために 治療せずに 放置してしまったり 合併症が起きてから糖尿病とわかることも 多い病気です 長期間高血糖状態が続くと ブドウ糖によって 血管がもろくなり それが原因でさまざまな合併症が発症します 高血 卵 1個が 1 単位だから ト ル

糖 尿病の合 併 症 糖 尿 病 と 上 手 に つ き あうた め に 監修 関西電力病院院長 清野 裕 先生 合併症と 腎症 その予防法を 知っておこう その他の 合併症 神経障害 網膜症

血糖コントロールと合併症 糖尿病は 発病初期には自覚症状がないために 治療せずに 放置してしまったり 合併症が起きてから糖尿病とわかることも 多い病気です 長期間高血糖状態が続くと ブドウ糖によって 血管がもろくなり それが原因でさまざまな合併症が発症します 高血 卵 1個が 1 単位だから ト ルー 坦 平 糖 血 ート ル 上下 血糖 糖尿病と診断される 2

糖尿病と診断されたら 早めに食事療法 運動療法 薬物療法 内服薬 インスリン注射など などの治療を行う必要があり ます 血糖をきちんとコントロールすれば 糖尿病でない人 つまり健康な人と同じような生活を送ることも可能です 糖山 合併症の苦しみ 合併症山脈 糖尿病でない人と変わらぬ人生 3

糖尿病 しん けい しょう がい 神経障害 血糖をコントロールして神経を守りましょう 糖尿病神経障害の症状は多岐にわたり 健康で快適な生活を 脅かします 長 期間高血糖が続くことで発症 進行し 主に両足の感覚 運動神経障害と自律神経障害の症状があらわれます え そ 進行すると知覚が低下し 足壊疽などの原因になります 糖尿病と診断されてからの期間が長い程 発症しやすくなります 神経のしくみ 脳 運動神経 手足などを動かす ちゅう すう 中枢神経 脳と脊髄から なる神経 まっ しょう 末梢神経 中枢神経から 体の隅々まで のびる神経 感覚神経 痛みや 熱い 冷たいなどの 感覚を伝える 自律神経 無意識に内臓の働きや 発汗をコントロールする 神経障害は末梢神経の感覚神経と自律神経に多くみられます 4

糖尿病神経障害の主な症状 感覚 運動神経障害の 主な症状 自律神経障害の 主な症状 無自覚性低血糖 どう こう 瞳孔の異常 発汗の異常 感覚が鈍る 無痛性心筋 突然死 足がつる こむらがえり え そ 足壊疽 こう そく 塞 胃の不調 便秘 下痢 排尿の障害 勃起不全 ED たちくらみ 起立性低血圧 足の裏の しびれ 痛み 5

糖尿病 神経障害 糖尿病神経障害を予防するために 6 1 きちんとした血糖コントロールを続ける 2 高血圧や脂質異常がある場合は 主治医の指示に従って治療を行う 3 禁酒 禁煙など 生活習慣を改善する 4 早期発見 治療のために 定期的に神経機能検査 心電図検査を受ける 5 もし糖尿病神経障害の症状があらわれたら 主治医に相談する

フットケア 最も大切なことは 清潔を保つこと です 足を清潔に保った上で 毎日素足をよく観察し 足に傷がないか 爪が変形していないか はく せん べん ち 水虫 白癬 やタコ 胼胝 ができていないかどうか確認を行いま しょう 少しでも異常だと感じたら主治医に相談しましょう 糖尿病の場合 感覚が鈍り 痛みなどを感じにくくなる場合があります あんかや湯たんぽの使用は危険です また 靴の選び方や爪の切り 方なども注意が必要ですので 主治医や看護師に確認しておきま しょう 足にこのような症状があったら要注意 ー主なチェックポイントー 感覚が鈍っている 悪臭 痛みやしびれを感じる 腫れ は 傷 切り傷 ひっかき傷 足の色が悪い 傷が治りにくい 靴ずれ べん ち タコ 胼胝 水ぶくれ 皮膚の乾燥やひび割れ か のう 化膿 7

糖尿病 もう まく しょう 網膜症 血糖をコントロールして失明を防ぎましょう 糖尿病が原因で発症する眼の病気は 大きく 網膜症 と 白内障 があります 糖尿病網膜症は糖尿病に特徴的な合併症で 進行すると視覚障害をきたし 失明の原因ともなります 成人の失明の原因でもあり 毎年 多くの方がこの糖尿病の 合併症である糖尿病網膜症で視力を失っています 8

正常な眼の構造 かく まく すい しょう たい しょう し たい 外からの光は 角膜 水晶体 硝子体を通り 眼底の網膜に像を 映します 映し出された像は 視神経を経て 脳に伝わります 網膜は 外から入った光の明暗や色を感知する役割を担っています かく まく おう はん 角膜 ぶ 黄斑部 脳へ しょう し すい しょう たい 水晶体 たい 硝子体 視神経 もう まく 網膜 9

糖尿病 網膜症 糖尿病網膜症の進行 主な治療法 厳格な血糖と 血圧の 網膜に出血や白斑 シミ 自覚症状は ほとんどありません コントロール があらわれます ①単純網膜症 はく はん ひかり ぎょう ②増殖前網膜症 光凝固療法 はく はん 網膜に出血が増え 白斑も増加します しょう し ③増殖網膜症 網膜の血管の流れが悪く 眼の前に黒い点がちらつ ひ ぶん しょう なり 新しい血管 新生血管 いて見えたり 飛蚊症 しょう し たい が網膜を越えて硝子体に 黒や 赤 の ベールが 視 界 も伸びてきます を遮るような症状があら われます 10 こ たい 硝子体手術

主な治療法 しょう し たい 厳格な血糖と 血圧の 新生血管はもろく 破れて流れ出た血液が硝子体 コントロール の中の光の伝わりを遮ってしまいます ④硝子体出血 はく しょう し たい り ⑤網膜剥離 ぞう しょく まく は 出血によってできた増殖膜が 網膜を引き剥がします ぞう しょく まく 増殖膜 おう はん ぶ 黄斑部 眼が見えなくなります ⑥失明 おう はん ぶ は 黄斑部の網膜が剥がれると 失明してしまいます 注意 長期間 血糖コントロールが悪い状態 高血糖 が続いていた 場合 急に血糖を下げると網膜症が悪化することがあります 血糖コントロールの目安は主治医の指示に従うことが重要です 11

糖尿病 網膜症 白内障 すい しょう たい 正常な水晶体は 透明で光を通します すい しょう たい しかし 何らかの原 因で この水 晶 体が白く濁ってくることが あります これが 白内障 です すい しょう たい 眼がかすむ ぼやける まぶしい 水晶体の濁りが光を乱反射 する 細かい字が読みにくい などの症状があらわれます かく まく 角膜 光 光 すい しょう たい 濁った水晶体 12 もう まく 網膜

糖尿病網膜症を予防するために 1 きちんとした血糖コントロールを続ける 2 高血圧の人は 主治医の指示に従い 高血圧の治療も行う 3 早期発見 治療のために 症状がなくても定期的に眼底検査を受ける 自覚症状が出にくいため 自覚症状があらわれた 頃には かなり病気が進行しています 4 万が一 糖尿病網膜症が進行してしまったら 眼科で治療を受ける 失明を予防するための治療として 光凝固療法 ひかり ぎょう しょう し こ たい 硝子体手術を受ける 13

糖尿病 じん しょう 腎症 血糖をコントロールして 人工透析や腎移植を防ぎましょう 腎臓には毛細血管 細い血管 が集まっており ここで血液が ろ過され 老廃物を尿として体外へ出します 糖尿病腎症は 長期間高血糖が続くことで毛細血管がもろく たん ぱく なり 発症 進行します 早期にはごく微量の蛋白 アルブミン が尿中に出てきます 血糖コントロールが良くないとさらに たん ぱく にょう 進行が進み 蛋白尿があらわれるようになります 腎不全に進行すると 人工透析が必要になります 14

糖尿病腎症の進行 主な治療法 尿検査 腎機能検査 ともに異常なし 自覚症状 なし 糖尿病食を基本とし 血糖コントロールに努める たんぱく質の過剰摂取は 好ましくない 早期腎症期 症状 腎症前期 検査 自覚症状 尿検査で 微量アルブミン尿 なし がみつかる 糖尿病食を基本とし 厳格な 血糖コントロールに努める 降圧治療 たんぱく質の過剰摂取は 好ましくない けん せい 顕性腎症 前期 尿検査で 蛋白尿が 出続ける たん ぱく にょう むくみや 厳格な血糖コントロール 血圧の上昇 降圧治療 たんぱく質制限食 顕性腎症 後期 けん せい 血糖コントロール 降圧治療 たんぱく質制限食 場合によっては 水分を適宜制限する 腎不全期 血液中の 尿素窒素や クレアチニン値が 上昇する 怠感や 血糖コントロール 降圧治療 疲労感が 低たんぱく食 透析療法導入 あらわれ 場合によっては 水分を適宜制限する 尿毒症の 危険がある 透析 療法期 血糖コントロール 降圧治療 透析療法または腎移植 水分制限 15

糖尿病 腎症 糖尿病腎症を予防するために 16 1 きちんとした血糖コントロールを続ける 2 早期発見 治療のために症状がなくても 定期的に微量アルブミン尿や蛋白尿の検査を受ける 3 腎症の進行度合いに合わせた治療を行う たん ぱく にょう

人工透析 透析療法 とは 腎臓の代わりに透析装置で血液をろ過します これにより血液中の 毒性物質を除去したり 不足物質を補充したりします 通常 腕の 血管から血液を装置に送り 浄化した血液を再び体内に戻します 1回4 5時間 週3回程度医療機関に通う必要があります 17

糖尿病に合併しやすい さまざまな病気 血糖をコントロールして さまざまな合併症を予防しましょう 糖尿病の3 大合併症 糖尿病神経障害 糖尿病網膜症 糖尿病腎症 以外にも 糖尿病の人には起こりやすい病気が たくさんあります 糖尿病の他に 肥満 高血圧 脂質異常症 などの危険因子が重なることで さらに合併症は起こりやすく なります 主治医の指示に従い 自分に合った食事療法 運動 療法 薬物療法を実行し 合併症を予防しましょう 食事療法 運動療法 18 薬物療法

糖尿病に合併する主な病気 さい しょう 細小血管障害 細い血管の障害 糖尿病網膜症 糖尿病腎症 糖尿病神経障害 大血管障害 太い血管の障害 その他 脳 感染症 気管支炎 狭心症 心筋 か はく せん 水虫 白癬 膀胱炎 尿道感染症 じん う 塞 脳卒中 歯周病 肺炎 こう そく えん 腎盂炎 できもの すい ほう 水疱 し こう そく 塞 へい そく せい 下肢閉塞性 動脈硬化症 下肢の血流障害 か し 動脈硬化 高血圧 陰部のかゆみ こつ 骨減少症 19

糖尿病に合併しやすい さまざまな病気 さい しょう 細小血管障害 長期間高血糖が続くと 細い血管が傷み 血液の流れが悪く なることから起こります さい しょう 細小血管障害には 糖尿病神経障害 糖尿病網膜症 糖尿病腎症 などが挙げられます 大血管障害 糖尿病の人には 高血圧の合併が多いといわれています 糖尿 病と高血圧は長い年月の間に症状を自覚しないまま進行し 血管に障害をおよぼすことがわかっています これは 腎症を はじめとする糖尿病合併症の進行を早めます また 糖尿病と 高血圧の合併は 脳や心臓の動脈硬化の危険性も高めます さらに 血液中の脂質 コレステロールや中性脂肪 が高いと けっ せん ない くう 動脈に血の固まり 血栓 ができたり 血液の通り道 内腔 が 狭まって 血圧も上がります 動脈が詰まってしまうと心臓 脳 手足にさまざまな症状があらわれ 死に至ることもあります 20

その他の主な合併症 感染症 長期間高血糖が続くと 血管がもろくなります また 白血球 の働きが鈍り 体の免疫力が低下して 細菌などに感染しやす くなります 歯周病 歯周病があると 細菌から出される毒素の影響で血糖コント ロールがうまくいかなくなります また 糖尿病の人はそれらの 細菌にも感染しやすくなり 悪循環に陥ります こつ 骨減少症 インスリンの不足は血糖値を上昇させるだけでなく 骨へも 影響をおよぼします 長期間高血糖が続いている人ほど 骨量 骨密度 が減少し 骨折の危険が高くなります 21

糖尿病の合併症を防ぐために 糖尿病を治療して 健康な人と変わらない生活を 送りましょう 糖尿病の治療とは つまり糖尿病の合併症を予防すること でもあります 健康な人と変わらない日常生活の質 QOL の維持 健康な人と変わらない寿命の確保 さい しょう 糖尿病細小血管合併症 網膜症 腎症 神経障害 および 動脈硬化性疾患 冠動脈疾患 脳血管障害 末梢動脈性疾患 の 発症 進展の阻止 まっ しょう 血糖 体重 血圧 血清脂質の 良好なコントロール状態の維持 日本糖尿病学会 編 糖尿病治療ガイド2012-2013 第1版 文光堂 24, 2012より抜粋 22

血糖コントロールの指標 合併症を防ぐ最大のポイントは 血糖コントロール です 主治医の アドバイスに従い 強い意志を持って血糖をコントロールしましょう 食事療法 運動療法 薬物療法 血糖コントロール 血糖コントロールの指標 HbA1c 7.0 未満 を目指す HbA1cは過去1 2ヵ月間の平均血糖値を反映する指標で 血糖コントロール状態の最も重要な指標です 定期的な検査で 合併症を防ぎましょう 糖尿病は自覚症状が少ない病気です きちんと血糖をコントロールすることはもちろん 合併症の定期的な 検査も大切なポイントです 合併症の早期発見 早期治療の ためにも 怖がったり おっ くう 億劫がったりせずに 進んで検査を 受けましょう 23

糖尿病の合併症 1444090201 2013年7月作成 糖尿病サイト http://club-dm.jp