しのびよる 水 の 危 機 ~ 水 は 誰 のものか~ 東 京 農 業 大 学 客 員 教 授 農 政 ジャーナリスト 中 村 靖 彦 私 は 長 いこと NHK で 食 糧 問 題 や 農 業 問 題 の 取 材 や NHK の 最 後 の 段 階 では 解 説 委 員 として 自 分 の 分 野 を 食 糧 問 題 農 業 問 題 にして 解 説 をしたり 取 材 をしたりしていました 人 間 そのものが 理 科 系 ではなく 文 科 系 なものですから 食 糧 問 題 にしても 社 会 経 済 的 なアプローチで 取 り 扱 うスタンス で やって 参 りました 水 も 食 料 と 同 じ 分 配 が 問 題 水 に 関 心 を 持 ちましたのは 食 糧 と 水 は 切 っても 切 れない 関 係 にあるからです 食 糧 問 題 につい ては この 20~30 年 の 間 に しのびよる 不 安 と 言 いますか これが 現 実 のものになるのではないか という 問 題 意 識 をずっと 持 っておりました 水 もやはり 同 じではないかと 考 え 続 けております 需 要 供 給 の 関 係 で 供 給 が 少 なければそこに 様 々な 利 益 を 求 めた 個 人 団 体 企 業 が 参 入 してくるのは 当 然 の 帰 結 であると 思 います そのウォータービジネスは 既 にかなり 活 発 になっておりますが そう いうところを 入 り 口 にして 水 の 問 題 を 考 えてみようと 思 ったわけです 取 材 をして 一 冊 本 を 書 いたの で 特 に 水 についてもの 凄 く 何 年 も 研 究 してきた 人 間 ではありません 水 の 危 機 はやはり 供 給 量 の 少 ない 所 に 危 機 という 言 葉 が 生 まれると 思 うのですが 今 年 の 印 象 で 言 えば 洪 水 台 風 など 長 雨 の 連 続 でした これは 水 が 足 りないどころの 話 ではなく 水 が 多 すぎて 我 が 日 本 は 青 息 吐 息 の 状 況 であったと 思 います 改 めて 申 し 上 げる 必 要 もありませんが 地 球 上 にある 水 の 97.5%は 海 水 で その 残 りの 2.5%は 淡 水 です しかしこの 大 半 が 北 極 や 南 極 の 地 域 に 存 在 していて 私 たちが 身 近 に 使 える 川 や 湖 や 沼 や 地 下 水 は 0.8%しかない これは 絶 対 的 な 量 であり この 水 をめぐって 思 惑 が 交 錯 するのは 当 然 だと 思 います 今 年 の 場 合 日 本 の 例 を 踏 まえて 考 えると 水 は 食 糧 と 同 じで 分 配 の 問 題 が 大 き いという 気 がしております 京 都 で 世 界 水 フォーラムが 開 催 された 時 に 私 は 取 材 に 行 っておりました その 時 にピーター ブ リックさんというアメリカ カルフォルニアのコンサルタントにインタビューをしたことがあります 彼 は 今 地 球 上 で 11 億 人 の 人 間 が 安 全 な 飲 料 水 に 接 することが 出 来 ないでいる 24 億 人 の 人 が 衛 生 的 なサービスを 受 けられていない と 仰 っていました FAO のデータによると 栄 養 失 調 あるいは 餓 死 寸 前 のような 境 遇 にある 人 口 は 世 界 で 8 億 人 いると 言 われております そうすると 同 じ 分 配 の 問 題 なのですが 水 の 方 が 厳 しい 人 たちが 多 い 気 が 致 します ビジネス チャンスと 水 そうした 状 況 において 水 についてのビジネスチャンスが 生 まれてきました 私 たちが 一 番 身 近 に 感 じる 水 のビジネスはボトルウォーターでございます 私 がアメリカやヨーロッパで 取 材 をして 感 じた のは このボトルウォーターの 世 界 でいちばん 成 熟 した 社 会 は フランスなどを 筆 頭 としたヨーロッパ だと 思 います そして 今 猛 烈 に 伸 び 始 めているのがアメリカです 日 本 は アメリカを 追 いかける 形 でボトルウォーターの 世 界 で 企 業 が 活 動 しているという 気 が 致 しました 日 本 は 大 都 会 の 一 部 を 除
き 決 してまずくはない 良 質 な 水 が 水 道 からでも 飲 めると 思 っています ただヨーロッパは 何 年 もい ろいろ 取 材 をしていますが 昔 はフランスへ 行 く 時 でも 向 こうの 生 の 水 は 飲 まないほうがいい 気 を つけなさい と 言 われました そういう 中 から おそらくヨーロッパのボトルウォ-ターのビジネスは 非 常 に 盛 んになったと 思 っています ただ 日 本 も 非 常 に 良 質 な 水 道 の 水 が 飲 めるにも 関 わらず これ だけボトルウォーターが 盛 んになったのは 健 康 志 向 自 然 志 向 もう 一 つはファッショナブルな 感 覚 がむしろ 大 きいと 思 います ファッショナブルということをもう 少 し 具 体 的 にご 説 明 いたしますと アメリカには アクアフィナ と ダサニィ というボトルウォーターがあります アクアフィナ はただ 水 道 の 水 の 塩 素 を 取 り 除 いただ けの 水 ダサニィ はミネラルの 方 を 添 加 しているボトルウォーターでスーパーマーケットに 行 けば 何 処 でも 売 っています いずれも 非 常 に 売 れ 行 きが 伸 びているのですが いずれもただの 水 道 の 水 であります アメリカでは スプリングウォーター などといった 表 示 をしていることが 多 いのですが こ れらの 商 品 は ピュ-ルファイルドウォーター( 清 浄 な 水 ) という 表 示 を 付 けて 販 売 をしております 向 こうのコンサルタントなどは どうしてあんなのが 売 れるのだろうね 消 費 者 はただペットボトルに 入 っ ていれば 有 難 いと 思 って 買 うんじゃないか と 笑 っておりました これを 作 っていたメーカーが 去 年 の12 月 にフランスにマーケティングをして 進 出 を 図 ったのですが 売 れずに 壁 にぶつかっている ようです これはまさにファッショナブルということを 念 頭 に 置 いておかないといけないと 思 います 地 下 水 は 大 丈 夫 か? ボトルウォーターを 考 えるときにやはり 心 配 になるのは 地 下 水 です 地 下 水 を 汲 み 上 げてボトルウ ォーターにしているわけですが 日 本 の 場 合 には 雨 が 多 くて 比 較 的 補 充 が 順 調 に 行 われるので 地 下 水 の 枯 渇 まではなかなか 思 い 及 びません 実 際 に 一 番 メーカーが 殺 到 している 例 えば 有 名 な サントリーウイスキーのモルト 工 場 がある 山 梨 県 の 白 州 町 でも 水 を 汲 み 上 げて ボトルに 詰 めて 全 国 的 に 売 っています 山 梨 県 は 日 本 全 体 の 半 分 くらいのシェアを 持 っていると 記 憶 しておりますが 何 箇 所 かスポットを 決 めて 定 期 的 に 水 位 を 測 って 枯 渇 しないようにするなど 非 常 に 地 下 水 の 管 理 をきちんとしています 日 本 の 場 合 地 下 水 の 補 充 という 点 では 今 くらいのメーカーが 現 在 くらいの 量 を 汲 み 上 げるのであれば 心 配 はないのではないかという 印 象 でした ただ 日 本 とヨーロッパの 非 常 に 顕 著 な 違 いは ヨーロッパでは ナチュラルミネラルウォーター とい う 表 示 をつける 水 については 汲 み 上 げた 場 所 の 水 をボトルに 詰 めます 除 菌 や 添 加 はしないこと がナチュラルミネラルウォーターの 表 示 になってます 一 方 日 本 は 何 も 除 菌 もしないで 出 すことに 抵 抗 があるのではないか という 消 費 者 心 理 を 考 慮 して 除 菌 滅 菌 をしたものをボトル 詰 めして 販 売 し それに ミネラルウォーター の 表 示 を 付 けでも 構 わないとなっています ヨーロッパの 場 合 には 水 だけではなく 環 境 を 飲 む という 考 え 方 があるため ゴミを 捨 てたり 動 物 がいたずらをしたりしないような 規 制 表 示 を 作 り 地 域 そのものを 保 全 しています ヨーロッパには 表 示 や 規 格 を 国 際 的 に 管 理 しているコーデクス 委 員 会 というのがありますけれども コーデクス 委 員 会 では ヨーロッパの 基 準 を ナチュラルミネラルウォ-ター と 呼 ぶべきだと 決 めております 日 本 の お 役 所 も 少 し 悩 んでいた 時 期 はありますが 現 在 は 独 自 の 表 示 をしている 訳 です
アメリカで 頻 発 する 水 をめぐる 紛 争 日 本 は 地 下 水 について 現 状 それ 程 危 機 を 感 じるほどではないと 思 いますが アメリカは 水 をめ ぐる 紛 争 が 頻 発 しておりまして ほとんど 地 下 水 を 巡 る 争 いであります 私 が 取 材 したのはミシガン 州 の 小 さい 町 でモートンやメコスタというタウンよりもう 少 し 小 さい 町 の 水 争 いを 取 材 しました この 地 域 は 沼 や 湖 が 非 常 に 多 い 湿 地 帯 で 水 鳥 なども 多 く 比 較 的 閑 静 で 環 境 も 良 いので 別 荘 地 なども 売 り 出 されて 人 気 を 博 する 地 域 でした その 中 には サンクチュアリ と 言 われる 中 で 狩 猟 が 出 来 るような 非 常 に 大 きな 土 地 がありました そこの 地 主 さんが 大 手 のボトルウォーターメーカーと 地 下 水 を 供 給 する 契 約 を 結 んでしまい そのパ イプラインを 工 場 に 引 くことになったのです そのパイプを 道 路 の 上 に 引 くのではなく 地 下 を 潜 らせ て 作 ったので 住 民 が 気 がつかなかった そこは 過 疎 地 域 だったため ボトルウォーターの 企 業 が 住 民 説 明 会 を 開 いて 初 めてそういう 事 が 進 行 していると 分 かったわけです 行 政 もボトルウォーターメ ーカーと 事 前 に 相 談 をしていますからメーカー 側 でありまして 既 にその 話 は 決 着 しているような 状 況 でした 住 民 達 が 抱 いた 最 初 の 疑 問 は 広 い 湿 地 帯 にある 地 主 さんの 土 地 の 地 下 水 であっても 水 は 地 下 で 繋 がっているのだから そこの 水 を 限 定 して 吸 い 上 げることは 地 域 全 体 に 関 係 することではない かということです 計 画 の 中 止 を 求 める 様 々な 交 渉 や 要 求 をしたわけですが もちろんそれは 受 け 入 れられる 筈 もなく 結 局 訴 訟 になりました 訴 訟 もいろいろあって 最 初 は 土 地 の 地 目 変 更 を 認 めない 訴 訟 もう 一 つは 水 が 吸 い 上 げられる ことによる 地 域 環 境 への 影 響 を 考 慮 して 工 場 設 立 そのものをやめさせることを 訴 える 訴 訟 でした しかし 二 つとも 市 民 のグループは 敗 れてしまいました 三 番 目 の 訴 訟 が 水 は 誰 のものか というものでした この 問 いかけの 訴 訟 はかなり 有 効 な 言 い 分 になったようで その 時 初 めて 市 民 の 会 側 は 勝 ちました しかし 企 業 側 がその 判 決 に 対 して 異 議 申 し 立 てをし それを 行 使 しない 仮 処 分 申 請 をして 結 局 認 められます その 工 場 には 60 人 くらいの 地 域 住 民 が 雇 用 されているので 全 部 ストップしてしまうと 雇 用 問 題 まで 響 くために 仮 処 分 で 判 決 後 も 争 いは 続 いている 状 況 でした 日 本 はそれほど 今 は 緊 迫 した 関 係 で 住 民 とそのメーカー 側 が 対 立 している 例 はありません しか し 将 来 メーカー 側 の 活 動 はどんどん 大 きくなった 時 に 今 申 し 上 げたようなことは 一 つの 教 訓 にな るかもしれないという 気 が 致 しまして 本 の 中 に 書 きました 私 が 取 材 をした 段 階 では 全 米 で7つくらいの 地 域 で 訴 訟 が 行 われておりました それは 地 下 水 は 地 下 の 何 処 まで 行 ってもその 人 間 のものなのか 現 実 にはそうなのだが 本 当 にその 考 え 方 で いいのか という 問 いかけをしている 訴 訟 が 非 常 に 多 くなっています アメリカは 日 本 よりは 雨 も 少 ないし 水 も 恵 まれていないため ビジネスの 世 界 に 参 入 するケースが 非 常 に 多 いと 思 われます もう 一 つ 面 白 い 例 は 水 のコンサルタント という 商 売 がアメリカにあります これは 大 メーカーの 意 向 を 受 けて 特 に 途 上 国 に 対 してボトルウォーターのマーケティングをする 仕 事 です NHK スペシャ ルという 番 組 が 取 材 して 紹 介 した 例 は インド 市 場 への 進 出 を 目 論 む 大 手 メーカーの 話 でした 1998~99 年 当 時 インド 市 場 には 小 さい 水 のメーカーが 約 3000 あったのですが 水 質 の 基 準 も 何 もないために ボトルに 入 って 売 られている 水 の 安 全 性 は 低 く それをただ 適 当 に 販 売 している 状 態
でした 水 のコンサルタント であるハイデルさんは まず 行 政 に 対 して 品 質 基 準 も 何 もない 状 態 でボトルウォーターを 売 っているというのは 良 くない 人 間 の 健 康 にも 良 くないと 説 得 して インド 政 府 は 2000 年 3 月 に 水 質 の 安 全 基 準 を 作 ります そうすると 今 まであった 約 3000 のメーカーは 基 準 に 該 当 しないため 潰 れてしまいます そこで 本 国 のアメリカから 本 当 のボトルウォーターを 売 り 込 みに 行 き 大 変 な 利 益 を 得 ているわけです そして 彼 の 次 なる 仕 事 は 潰 れてしったボトルウォーター 企 業 に 対 して もう 一 度 新 しい 基 準 で 水 の 商 売 を 始 めるアプローチをして 会 社 の 再 建 のお 手 伝 いをするのです 水 のビジネスは だんだ ん 活 発 になって 来 ていると 申 し 上 げていいと 思 います 食 糧 問 題 と 水 私 は 食 糧 問 題 農 業 問 題 をずっとやって 来 たために どうしても 食 糧 問 題 を 水 という 事 を 考 えざ るを 得 なくなりました 食 糧 問 題 との 関 連 で 言 えば 鍵 はアメリカと 中 国 にあると 思 っております 食 糧 問 題 での 日 本 の 対 外 依 存 度 の 中 でも 2001 年 のデータでは 第 一 位 がアメリカで 37% 第 二 位 が 中 国 で 12%を 依 存 しています これらが 日 本 の2 大 依 存 国 で 三 番 目 にオーストラリア 4 番 目 はカナ ダと 続 きますが それは 大 した 数 字 ではありません アメリカと 中 国 に 依 存 している 食 糧 と 水 の 関 係 が 私 の 一 つの 問 題 意 識 でありました 穀 倉 地 帯 で ここ 最 近 言 われておりますのが 地 下 水 の 枯 渇 ならびに 地 下 水 の 低 下 です 有 名 なのは 米 国 中 西 部 を 縦 に 流 れる オガララ 水 系 というもの 凄 く 巨 大 な 水 系 です そこでは センタープロット 方 式 といって 井 戸 から 地 下 水 を 汲 み 上 げて スプリンクラーで 撒 いています アメリカに 行 ったときに 天 気 がよければ 飛 行 機 の 上 から 緑 のお 盆 のような 形 が 延 々と 連 なって 見 ることが 出 来 るはずです そのセンタープロット 方 式 によって 灌 漑 をして 世 界 に 輸 出 する 穀 物 を 増 産 して 来 たわけであります 日 本 もその 恩 恵 を 受 けていたというわけです この 地 下 水 の 枯 渇 地 下 水 の 低 下 が 言 われてからかなり 経 ちます 私 は 23~24 年 前 NHK の 現 役 の 時 に 当 時 の 大 型 番 組 で 日 本 の 条 件 という 番 組 がありまして 日 本 の 条 件 食 糧 という 三 部 作 を 作 った 時 に やはりオガララ 水 系 の 地 下 水 の 低 下 を 取 り 上 げました これは 8 つくらいの 州 にまたがっている 大 変 な 水 系 なのですが 一 番 地 下 水 の 低 下 が 心 配 されているのはテキサスであっ て 今 回 もテキサスに 行 って 実 態 を 見 て 参 りました 現 地 では 新 しく 井 戸 を 堀 る 時 には 従 来 とは 違 う 届 出 をしなければならないとか 深 さを 以 前 よりは 深 く 掘 らないといけないといった 規 則 が 作 られて います 地 下 水 の 低 下 は 一 ~ 二 年 で 大 きな 変 化 が 見 られるものではありませんが 管 理 上 は 極 めて 精 密 な 計 測 をしております 計 測 マップでは 非 常 に 精 密 なスポットごと 都 市 ごとにの 変 化 を 観 察 し ています もちろんこの 何 年 かでこの 穀 倉 地 帯 の 地 下 水 がなくなって 食 糧 の 供 給 力 が 乏 しくなるとい う 程 の 現 状 ではないですが 中 期 的 に 見 てこの 要 素 というのは 非 常 に 日 本 としては 懸 念 して 念 頭 に 置 いておく 必 要 がある 事 態 ではないかと 思 っています もう 一 つ 中 国 ですが 現 在 日 本 の 食 糧 輸 入 金 額 の 12%を 占 めています パーセンテージにし てはあまり 多 くないかもしれませんが 中 国 の 場 合 は 価 格 が 安 いので 金 額 で 比 べると 12%はかな り 大 きな 依 存 度 だと 思 います 特 に 現 在 日 本 が 依 存 している 野 菜 や 加 工 食 品 についての 中 国 の 存 在 は 極 めて 大 きく 特 に 野 菜 をよく 使 う 漬 物 産 業 界 は 極 端 に 言 うと 中 国 なしでは 成 り 立 たない くら
いの 状 況 であります 沢 庵 でさえ 中 国 から 製 品 となって 入 ってくる 状 況 です もちろん 国 内 で 原 料 調 達 してそれなりの 老 舗 の 場 合 はブランドを 付 けて 販 売 している 所 もありますが 日 本 の 漬 物 メーカー の 原 料 調 達 先 の 大 半 は 中 国 です 中 国 は 南 水 北 調 が 展 開 進 行 中 です これは 南 の 水 を 北 へ 送 って 調 整 するという 意 味 です 南 の 水 は 比 較 的 豊 かな 水 量 を 誇 る 長 江 のことで 北 の 方 にある 黄 河 は 天 津 や 北 京 など 大 都 会 に 送 る 生 活 用 水 にも 不 足 するくらい 水 が 不 足 しているので 南 の 水 をパイプラインで 送 ろうというわけ です 長 江 沿 いに 3 つのルートを 作 る 計 画 を 立 てていますが 現 在 は 上 海 に 近 い 所 から 北 へ 送 る パイプラインの 工 事 がスタートしたばかりです これはまだ 本 格 的 ではないのですが 私 も 現 場 を 見 ないとなかなか 原 稿 が 書 きにくいタイプなものですから 上 海 の 近 くの 所 だけ 工 事 現 場 を 見 せてもら い その 話 を 聞 いてきました そういう 事 を 考 えていった 時 に 私 は 時 々 話 題 になっている バーチャルウォーター を 思 い 出 す のです 食 糧 問 題 との 関 連 として カロリーベースの 食 糧 自 給 率 というのがございます それは 量 ベ ースの 自 給 率 とは 違 って 畜 産 物 などで 顕 著 に 違 いが 出 てくるのですが 畜 産 物 を 作 る 餌 の 所 まで の 自 給 度 を 計 算 します カロリーベースの 自 給 率 が 日 本 は 40% 先 進 国 中 最 低 という 数 字 です 一 番 典 型 的 な 鶏 卵 が 量 ベースで 言 うと 自 給 率 が 96%ですが これをカロリーベースにすると 僅 か 9%に なってしまうのです 日 本 にある 養 鶏 所 から 卵 をスーパーに 届 けられるのですが 鶏 を 飼 育 している その 餌 はほとんど 95% 以 上 海 外 依 存 であり アメリカのトウモロコシなのです それを 全 部 さかのぼっ て 計 算 すると 9%になってしまう 同 じように 鶏 肉 は 量 ベースで 言 うと 65%の 自 給 率 ですが カロリー ベースでは 6%になってしまう バーチャルウォーターは 表 には 見 えないけれども 実 際 に 食 糧 を 作 る のに 使 われている 水 ということになる これはカロリーベースの 自 給 率 と 非 常 に 似 ていると 思 います それだけ 日 本 は 飽 食 と 言 われていますが その 飽 食 が 言 ってみれば 砂 上 の 楼 閣 のような 状 態 では ないかとしみじみと 感 じているわけであります 水 は 誰 のもの? 水 は 誰 のものか という 問 いかけは 大 変 難 しいのですが 日 本 は 雨 量 も 多 く 水 に 恵 まれているの で 日 本 人 の 水 に 対 する 関 心 が 薄 いのが 実 状 です 特 に 最 近 は 田 んぼもだんだん 生 産 調 整 で 少 な くなって 参 りました 田 んぼに 水 を 貯 めて 環 境 の 保 全 に 役 立 つこともなくなって 来 ました 長 野 県 の 山 形 村 でお 米 の 取 材 をした 時 に 昔 お 米 が 採 れない 時 に 近 くの 梓 川 から 水 を 引 いてく る 工 事 を 住 民 達 が 労 力 も 予 算 も 出 し 合 ったのですが 今 はこのように 自 分 で 水 を 引 いてきて 農 産 物 を 作 るということはほとんどないわけです それはやるとすれば 公 共 事 業 で お 上 に 頼 むことです ということは だんだん 水 と 私 たちの 暮 らしとが 離 れてしまっているのではないでしょうか 水 は 誰 のものか を 考 える 時 に こうした 意 識 は 必 要 だと 思 います 先 ほど 申 し 上 げました 地 下 水 の 権 利 も 当 然 今 の 制 度 上 ではどこかが 違 法 行 為 をしているわけではないと 思 いますが 将 来 的 に この 点 については 何 らかの 制 度 の 整 備 が 必 要 になると 思 います 特 に 先 進 国 であるアメリカや 日 本 などに 必 要 性 が 起 きてくるのではないかという 印 象 を 持 っています