局 部 磁 場 による 裏 波 ビード 形 状 の 改 善 効 果 - 溶 融 池 磁 気 制 御 アーク 溶 接 法 の 適 用 拡 大 に 関 する 研 究 - 棚 原 靖 羽 地 龍 志 松 本 幸 礼 これまで 溶 融 金 属 の 垂 れ 下 がり 等 を 防 止 するために 溶 融 池 磁 気 制 御 アーク 溶 接 法 をステンレス 鋼 のTIG 溶 接 に 適 用 し 実 験 を 行 ってきた ステンレス 鋼 は 常 磁 性 体 であるため 磁 気 の 変 動 が 少 ないことから 比 較 的 良 好 な 結 果 が 得 られたが 強 磁 性 体 である 鋼 管 の 溶 接 においては 溶 接 物 に 磁 気 が 流 れるなどの 磁 気 変 動 の 影 響 が 大 きいことが 予 想 される そこで 本 研 究 では 磁 気 変 動 の 予 測 にシミュレーションを 導 入 し 磁 気 コイルの 形 状 と 磁 気 の 流 れなどを 把 握 すると 共 に 実 機 による 確 認 実 験 を 行 った 実 験 では シミュレーションの 結 果 に 基 づき 最 適 な 磁 気 コイルの 先 端 形 状 を 決 定 し SSに 対 して 確 認 を 行 ったところ 漏 れ 磁 束 の 影 響 からSUS3 溶 接 時 と 異 なり 電 磁 力 による 持 ち 上 げ 効 果 は 少 ないことが 判 った 1 はじめに 水 道 管 などの 配 管 材 料 として 利 用 されている 鋼 管 の 一 層 目 の 溶 接 には 継 ぎ 手 の 信 頼 性 の 高 さから TIG 溶 接 が 利 用 されている しかしながら 溶 接 時 においては 重 力 による 溶 融 金 属 の 垂 れ 下 がりにより 欠 陥 を 生 じやすい と 同 時 に 内 側 からの 補 修 も 困 難 であることから これ らの 問 題 を 解 決 する 溶 接 法 が 望 まれている これまで 溶 融 金 属 の 垂 れ 下 がり 抑 制 については 常 磁 性 体 で あ る オ ー ス テ ナ イ ト 系 ス テ ン レ ス 鋼 (SUS3)に 対 して 溶 融 池 磁 気 制 御 アーク 溶 接 法 ( 以 下 ECMP 法 )を 適 用 し 実 験 を 行 ってきた その 結 果 溶 融 池 に 重 力 とは 逆 方 向 の 電 磁 力 を 発 生 させること で 垂 れ 下 がりを 抑 制 するような 磁 化 電 流 値 を 含 む 適 正 溶 接 条 件 を 明 らかにしてきた 1) 本 研 究 は 鋼 管 材 料 として 使 用 される 強 磁 性 体 である 炭 素 鋼 にECMP 法 を 適 用 し 溶 融 金 属 の 垂 れ 下 がりを 抑 制 できるような 適 正 溶 接 条 件 を 見 出 すことを 目 的 とし ている 溶 融 金 属 に 対 し 電 磁 力 を 効 果 的 に 発 生 させる ためには アークの 磁 気 吹 きを 抑 制 するとともに 溶 融 池 に 局 部 的 に 磁 場 を 与 える 必 要 がある また 強 磁 性 体 で ある 炭 素 鋼 に 関 しては 漏 れ 磁 束 など 磁 気 変 動 の 影 響 が 大 きいことも 予 測 される そこで 本 報 告 では シミュレー ションを 活 用 した 局 部 的 な 磁 場 を 発 生 させる 磁 気 コイル の 形 状 や 溶 接 部 ならびに 母 材 に 作 用 する 磁 場 分 布 につい て 検 討 を 行 うとともに その 結 果 に 基 づき 溶 接 実 験 を 行 ったので その 結 果 を 報 告 する 溶 融 池 磁 気 制 御 アーク 溶 接 法 -1 溶 融 池 磁 気 制 御 アーク 溶 接 法 の 基 本 概 念 ECMP 法 は 溶 接 時 の 電 流 と 電 磁 石 による 磁 界 を 利 用 して 電 磁 力 を 発 生 させ 溶 融 金 属 の 持 ち 上 げ 等 の 制 御 を 行 う 方 法 であり 横 向 姿 勢 の 溶 接 施 工 時 における 溶 融 金 属 の 垂 れ 下 がりを 防 止 するために 真 鍋 らによって 発 案 さ れたものである )-) 横 向 き 溶 接 時 におけるECMP 法 の 基 本 原 理 は 溶 接 ト ーチと 同 軸 方 向 の 磁 場 を 与 えることで 母 材 と 平 行 な 電 磁 力 を 発 生 させ 重 力 による 溶 融 金 属 の 垂 れ 下 がりを 抑 制 するものであるが 本 研 究 で 用 いる 手 法 では 図 1に 示 すように 溶 接 トーチおよび に 垂 直 な 磁 場 を 与 えることで 母 材 に 垂 直 な 電 磁 力 を 発 生 させることがで きる 電 極 ( 溶 接 トーチ) 母 材 アーク 電 流 図 1 ECMP 法 による 溶 接 現 象 の 模 式 図 - 実 験 装 置 の 構 成 ECMP 法 を 利 用 した 実 験 装 置 を 図 に 示 す 本 装 置 は 溶 接 トーチ 部 ならびに 磁 化 コイル 部 電 動 スライダ 部 か ら 構 成 されている 溶 接 トーチと 磁 化 コイルは 固 定 され ており 電 動 スライダにより 試 験 片 が 移 動 する 方 式 とな っている また 磁 化 コイルは 溶 接 トーチ 側 だけでなく 試 験 片 を 挟 んで 溶 接 トーチと 対 極 に 配 置 することも 可 能 である 電 磁 力 磁 界 の 向 き 磁 気 吹 きの 向 き 電 磁 力 電 流 磁 化 コイルは 鉄 心 被 覆 銅 線 上 部 ヨークならびに 下 部 ヨークから 構 成 されている 図 3に 詳 細 図 を 示 す 上 部 ヨークの 形 状 は 溶 接 トーチと 同 軸 にも 配 置 できるよ うにコの 字 型 とした 下 部 ヨーク 外 側 には オーステナ イトステンレス 鋼 製 の 倣 いローラを 取 り 付 け 試 験 片 と 一 - 11 -
定 の 隙 間 (.5mm)を 保 持 したまま 溶 接 が 行 えるような 構 造 となっている 溶 接 電 源 溶 接 トーチ アーク 溶 融 池 X 試 験 片 磁 化 コイル ク 形 状 1と 似 ているが 溶 接 トーチから 磁 場 の 影 響 を 少 なくするために 試 験 片 から1mm 程 度 離 れる 形 状 となっ ている 下 部 ヨーク 形 状 3は 鉄 心 からの 磁 界 の 影 響 を 考 慮 して 先 端 のみ 溶 融 池 に 近 づくような 形 状 となって いる 下 部 ヨーク 形 状 は 下 部 ヨーク 形 状 3と 同 様 に 鉄 心 からの 影 響 を 考 慮 すると 同 時 に 電 磁 力 により 持 ち 上 げられた 溶 融 金 属 が 凝 固 するまで 電 磁 力 によって 保 持 出 来 るような 後 方 に 伸 びるような 形 状 となっている なお 解 析 には アドバンスト サイエンス テクノ ロ ジ ー 社 の 3D 電 磁 界 解 析 ソ フ ト ウ ェ ア で あ る Magnum を 使 用 した 磁 化 電 源 図 実 験 装 置 の 構 成 図 下 部 ヨーク 形 状 1 下 部 ヨーク 形 状 上 部 ヨーク 鉄 心 被 覆 銅 線 下 部 ヨーク コイル 巻 き 数 1 鉄 芯 直 径 [mm] 総 経 路 長 9[mm] 図 3 磁 化 コイルの 詳 細 図 下 部 ヨーク 形 状 3 下 部 ヨーク 形 状 図 解 析 した 下 部 ヨーク 形 状 3- 磁 束 密 度 および 磁 場 ( 磁 束 密 度 ) 分 布 の 測 定 シミュレーションの 結 果 に 基 づき 試 作 した 下 部 ヨーク の 磁 場 発 生 特 性 を 把 握 するため 磁 化 コイルに 印 加 する 電 流 ( 以 下 磁 化 電 流 )に 対 する 発 生 磁 束 密 度 および 磁 場 ( 磁 束 密 度 ) 分 布 の 測 定 を 行 うとともに シミュレー ションの 結 果 との 比 較 を 行 った 3 実 験 方 法 3-1 シミュレーションによる 磁 化 コイルの 設 計 製 作 磁 化 コイルによって 与 えられる 磁 場 は 溶 融 池 のみな らずアークの 磁 気 吹 きを 引 き 起 こし 強 い 磁 場 を 与 える と 過 度 な 磁 気 吹 きにより 母 材 に 与 えられる 熱 源 幅 が 減 少 し 結 果 的 に 溶 接 不 良 となるため 与 える 磁 場 はでき る 限 り 溶 融 池 に 集 中 させたほうが 良 い 磁 場 を 溶 融 池 に 局 部 的 に 与 えるためには コイルに 発 生 する 磁 場 を 効 果 的 に 誘 導 するよう 下 部 ヨーク 形 状 を 最 適 化 する 必 要 がある そこで 図 に 示 す 下 部 ヨークの 形 状 種 類 について 磁 束 密 度 分 布 の 解 析 を 行 った 下 部 ヨーク 形 状 1は 溶 融 池 に 磁 場 が 集 中 するように 先 端 が 細 くなっている 下 部 ヨーク 形 状 は 下 部 ヨー 3-3 実 験 条 件 溶 接 試 験 片 ( 母 材 )は 板 厚 3.mmの 一 般 構 造 用 圧 延 鋼 材 (SS)を 使 用 した その 他 詳 細 な 実 験 条 件 を 表 1に 示 す 溶 接 電 流 Iw=1[A] 磁 化 電 流 Ic=,5,1[A]とし 磁 束 密 度 が 溶 融 金 属 の 持 上 げ 効 果 に 与 える 影 響 を 調 べた なお 実 験 に 際 しては 溶 込 み 形 成 の 解 析 を 容 易 にす るため 平 板 上 でのビードオンプレート 溶 接 を 行 った 図 5には 側 面 から 見 た 溶 接 トーチと 磁 化 コイルの 配 置 図 を 示 す また アークと 溶 融 池 の 挙 動 を 観 察 するため 赤 外 線 領 域 を 撮 影 できるよう 改 良 した 一 眼 レフカメラにバンド パスフィルター(97nm)とNDフィルターを 装 着 し 溶 接 中 の 撮 影 を 行 った - -
表 1 実 験 条 件 溶 接 姿 勢 下 向 き ルート 間 隔 [mm](ヒ ート オン) 溶 接 電 流 (Iw) 溶 接 速 度 シールドガス バックシールドガス 1[A] [mm/sec] Ar:3[l/min] Ar:[l/min] アーク 長 (Da) [mm] 磁 化 電 流 (Ic),5,1[A] 試 験 片 と 磁 化 コイルの 間 隔 (Dm).5[mm] [mm] 電 極 と 磁 化 コイルの 間 隔 (Dc) 溶 接 材 料 SS 試 験 片 寸 法 7 3 3. t [mm] 図 5 磁 化 コイルと Dc Da 溶 接 トーチの Dm 配 置 図 実 験 結 果 および 考 察 -1 シミュレーションによる 磁 化 コイルの 解 析 結 果 図 にシミュレーションモデルを 示 す モデルは 上 部 ヨーク 鉄 心 磁 化 コイル 下 部 ヨーク 試 験 片 とな っている 1は 溶 接 トーチ 側 と 磁 化 コイル 側 ほぼ 軸 対 称 となってい るが それ 以 外 の 下 部 ヨーク 形 状 は 磁 気 コイル 側 にシフ トしている 次 に 図 の 軸 方 向 の 解 析 結 果 では 下 部 ヨーク 形 状 以 外 は 溶 接 トーチを 中 心 として 溶 接 方 向 の 前 後 で 軸 対 称 となっている. 1.7 1.3 -. 1.15 -. 溶 接 トーチ 側 磁 化 コイル 側. 9.93 E-3 -. 下 部 ヨーク 形 状 1 下 部 ヨーク 形 状.9 3. 1.5. -. 下 部 ヨーク 形 状 3 下 部 ヨーク 形 状 図 7 軸 方 向 の 磁 束 密 度 分 布.. 上 部 ヨーク.9 1.3 磁 化 コイル 下 部 ヨーク 1.7 -. 1.. -.. 試 験 片.9 下 部 ヨーク 形 状 1.9 下 部 ヨーク 形 状 図 解 析 モデル 表 解 析 条 件 銅 線 直 径 1.5mm コイル 巻 き 数 1 印 加 電 流 [A] 1[A]( 片 側 5[A]) 比 透 磁 率 (ヨーク) ( 鉄 心 ) ( 試 験 片 ) 空 気 1 図 7に 軸 方 向 の 解 析 結 果 を 示 す 下 部 ヨーク 形 状 1.75 1.3 -.. -. 下 部 ヨーク 形 状 3 下 部 ヨーク 形 状 図 軸 方 向 の 磁 束 密 度 分 布 これらの 解 析 結 果 から 最 適 な 下 部 ヨーク 形 状 は ア ークへの 磁 場 の 影 響 を 抑 制 し かつ 溶 融 池 後 部 まで 磁 場 を 保 持 できることが 可 能 な 下 部 ヨーク 形 状 に 決 定 し 製 作 した 製 作 した 下 部 ヨークの 寸 法 ならびに 写 真 を 図 9に 示 す. - 13 -
図 9 決 定 した 下 部 ヨーク 形 状 - 磁 束 密 度 および 磁 場 ( 磁 束 密 度 ) 分 布 の 測 定 --1 磁 化 電 流 を 変 化 させたときの 磁 束 密 度 の 測 定 試 作 した 下 部 ヨークの 磁 場 発 生 特 性 を 把 握 するため 磁 化 コイルに 印 加 する 電 流 ( 磁 化 電 流 )と 発 生 する 磁 場 ( 磁 束 密 度 )の 関 係 を 調 べた その 結 果 を 図 1に 示 す 磁 化 電 流 の 増 加 に 伴 い 磁 束 密 度 も 増 加 している 磁 場 分 布 の 傾 向 はいずれの 磁 化 電 流 においても 同 様 な 傾 向 を 示 しており 磁 化 電 流 が 高 いほど 極 大 値 までの 変 化 率 が 高 くなる 傾 向 にあることがわかる 1 1 1 1 3.[A] 5.[A] 7.[A] 溶 接 トーチ 側 磁 化 コイル 側 - -1 1 軸 方 向 の 磁 場 分 布.5mm mm 図 1 磁 化 電 流 を 変 化 させた 場 合 の 磁 場 分 布 1 1 1 1 3.[A] 5.[A] 7.[A] - -1 1 軸 方 向 の 磁 場 分 布 mm.5mm -3 溶 接 実 験 -3-1 断 面 写 真 磁 化 電 流 を 変 化 させた 場 合 の 断 面 マクロ 写 真 を 図 に 示 す 強 磁 性 体 であるSSでは 磁 化 電 流 Ic=[A] 時 の 試 験 片 上 面 の 凹 みが 磁 化 電 流 の 増 加 とともに 減 少 している が 磁 化 電 流 Ic=1[A] 時 においても 凹 みは 解 消 されきっ てはいない これに 対 して 常 磁 性 体 であるSUS3で は 磁 化 電 流 IC=[A]のときはSSと 同 様 に 試 験 片 表 面 に 大 きな 凹 みが 生 じているが 磁 化 電 流 Ic=5[A] 時 に は 試 験 片 上 面 が 凸 形 状 となっている なお 磁 化 電 流 Ic=1[A] 時 の 試 験 片 上 面 は 平 坦 となっているが これは 磁 気 吹 きによりアークの 偏 向 が 過 大 となり 結 果 的 に 熱 源 が 溶 融 池 後 方 に 移 行 したためである 図 13には ビード 幅 およびビード 高 さの 測 定 結 果 を 示 す SSのビード 高 さは 磁 化 電 流 Ic=5[A]において Ha=.1[mm]となり その 後 は 減 少 に 転 じていることか ら 磁 化 電 流 Ic=5[A]~1[A]の 間 に 極 大 値 となる 磁 化 電 流 が 存 在 することが 示 唆 されるが SSにおいては 磁 化 電 流 Ic=1[A]においても 増 加 傾 向 にあることから 持 ち 上 げ 効 果 を 得 るには 磁 化 電 流 をさらに 増 価 させる 必 要 があるものと 思 われる 3mm 3mm 3mm 磁 化 電 流 :[A](mT) 磁 化 電 流 :5[A](11mT) 磁 化 電 流 :1[A](.mT) SS 溶 接 時 の 断 面 写 真 -- シミュレーションとの 比 較 次 に 磁 化 電 流 Ic=5[A] 印 加 時 における 磁 場 分 布 と 解 析 結 果 を 比 較 した 結 果 を 図 11に 示 す 磁 化 コイル 製 作 時 の 損 失 等 により 若 干 の 値 の 低 下 が 見 られるものの 軸 方 向 軸 方 向 共 に 同 様 な 傾 向 を 示 していることから シミュレーションが 下 部 ヨーク 形 状 の 設 計 に 活 用 できる ものと 考 えられる 3mm 3mm 3mm 磁 化 電 流 :[A](mT) 磁 化 電 流 :5[A](11mT) 磁 化 電 流 :1[A](.mT) SUS3 溶 接 時 の 断 面 写 真 図 磁 化 電 流 を 変 化 させた 場 合 の 断 面 写 真 Wa Ha 溶 接 金 属 1 1 1 1 解 析 値 実 測 値 溶 接 トーチ 側 - -15-1 -5 5 1 15 軸 方 向 の 磁 場 分 布 (Ic=5[A]).5mm 磁 化 コイル 側 mm - -15-1 -5 5 1 15 軸 方 向 の 磁 場 分 布 (Ic=5[A]) 図 11 実 測 した 磁 場 分 布 と 解 析 結 果 との 比 較 1 1 1 1 解 析 値 実 測 値 mm.5mm ビード 高 さ[mm].5 -.5-1 -1.5 - Ha(SS) Hb(SS) Ha(SUS3) Hb(SUS3) 3 5 1 磁 化 電 流 [A] a)ビード 高 さ Hb b)ビード 幅 図 13 ビード 高 さとビード 幅 の 変 化 Wb ビード 幅 [mm] 1 母 材 Wa(SS) Hb(SS) Ha(SUS3) Hb(SUS3) 3 5 1 磁 化 電 流 [A] - 1 -
-3- アークの 挙 動 -3-1の 結 果 より SSに 対 しては 電 磁 力 の 効 果 が SUS3に 対 して 少 なかったことから アークの 挙 動 を 比 較 した 結 果 を 図 1に 示 す SUS3は 磁 化 電 流 Ic=5[A] 時 SSは 磁 化 電 流 Ic=1[A] 時 と 比 較 したものである が SS 溶 接 時 における 磁 気 吹 きのアーク 偏 向 角 は SUS3 溶 接 時 の 倍 の 磁 化 電 流 を 印 加 しているにも 関 わ らず 偏 向 角 が 小 さくなっているのがわかる このこと は 試 験 片 裏 側 の 磁 化 コイルから 発 生 する 磁 束 が 強 磁 性 体 であるSSにも 流 れ 込 み( 漏 れ 磁 束 ) 結 果 的 に 溶 接 トーチ 側 の 磁 場 を 抑 制 したものと 考 えられる 1[mT] a) 空 気 中.[mT] SS 溶 接 時 のアークの 挙 動 (Ic=1[A]) b) 強 磁 性 体 (SS) 図 15 磁 場 分 布 の 解 析 結 果 1) 溶 融 金 属 部 後 方 に 対 して 局 所 的 な 強 い 磁 場 を 発 生 さ せるため 幾 つかの 磁 極 先 端 形 状 について 解 析 を 行 い 最 適 な 磁 極 先 端 形 状 を 決 定 した SUS3 溶 接 時 のアークの 挙 動 (Ic=5[A]) 図 1 アーク 挙 動 の 比 較 - シミュレーションによる 磁 場 解 析 これまでの 結 果 より SS 溶 接 時 における 磁 場 特 性 は SUS3 溶 接 時 と 大 きく 異 なることから 再 度 解 析 を 行 うために 溶 融 池 やルート 間 隙 を 別 モデル 化 し 個 別 にキュリー 温 度 を 考 慮 した 比 透 磁 率 を 与 えられるよう シミュレーションモデルを 再 考 した 試 験 片 表 面 部 の 磁 場 分 布 の 解 析 結 果 を 図 15に 示 す これより 空 気 中 における 溶 接 部 ( 白 部 )の 磁 束 密 度 は 約 1[mT]であるのに 対 し 強 磁 性 体 であるSSの 溶 接 部 の 磁 束 密 度 は 約.[mT]となっており 空 気 中 の 約 1/5 程 度 の 磁 束 密 度 となっている このことは 溶 融 池 周 りの 強 磁 性 領 域 に 磁 束 が 回 り 込 み 溶 融 池 内 の 磁 束 の 流 れが 変 動 したものと 推 測 される 5 まとめ 本 研 究 では ECMP 法 を 活 用 したTIG 溶 接 における 裏 波 ビードの 改 善 方 法 として 磁 気 変 動 の 予 測 にシミュレ ーションを 導 入 し 磁 気 コイルの 形 状 と 磁 気 の 流 れなど を 把 握 すると 共 に 実 機 による 確 認 実 験 を 行 った 結 果 以 下 の 結 論 を 得 た ) 決 定 した 磁 極 先 端 形 状 を 製 作 して 磁 場 分 布 を 計 測 し 解 析 結 果 と 比 較 したところ 磁 束 密 度 の 値 は 若 干 下 回 っ たものの 分 布 傾 向 は 解 析 結 果 とほぼ 一 致 していた 3) 新 しい 磁 極 先 端 を 用 いて 強 磁 性 体 材 料 であるSSに ついて 溶 接 実 験 を 行 ったところ 漏 れ 磁 束 の 影 響 から SUS3 溶 接 時 と 異 なり 電 磁 力 による 持 ち 上 げ 効 果 は 少 なかった ) 溶 接 実 験 の 結 果 から 解 析 条 件 を 見 直 すため テスト ピースを 溶 融 池 や 開 先 の 隙 間 等 を 個 別 にモデリングし 溶 融 金 属 部 については キュリー 温 度 を 考 慮 した 比 透 磁 率 を 設 定 したところ 空 気 中 と 比 較 して 溶 融 金 属 部 の 磁 束 密 度 が1/5 程 度 に 低 下 する 結 果 となった 磁 化 電 源 の 発 生 電 流 限 界 のため 現 在 使 用 中 の 磁 化 コ イルでは 溶 融 金 属 の 持 ち 上 げ 効 果 が 得 られるような 磁 束 密 度 を 発 生 できないことから コイルの 巻 数 を 増 やすな どした 新 たな 磁 化 コイルの 製 作 が 必 要 である 今 後 は 新 たな 磁 化 コイルを 製 作 するとともに 同 コ イルを 用 いた 溶 接 実 験 を 行 い 最 適 な 溶 接 条 件 を 見 出 す 予 定 である 本 研 究 は 平 成 5 年 度 沖 縄 県 産 業 振 興 重 点 研 究 推 進 事 業 の 局 部 磁 場 による 裏 波 ビード 形 状 の 改 善 効 果 - 磁 性 材 料 への 適 用 -( 技 ) で 行 ったものである - 15 -
参 考 文 献 1) 松 田 昇 一, 真 鍋 幸 男, 玉 城 光 輝, 棚 原 靖, 松 本 幸 礼, 又 吉 勇 介 : 溶 融 池 磁 気 制 御 溶 接 法 の 適 用 拡 大 に 関 する 研 究, 溶 接 学 会 論 文 集,Vol.3(),No.,11- ) 真 鍋 幸 男, 和 田 宏 一, 銭 谷 哲, 広 本 悦 己, 小 林 泰 幸 : 溶 融 池 磁 気 制 御 溶 接 法 の 基 本 概 念 と 可 能 性 の 検 討, 高 温 学 会 誌,Vol.5(1999),No.1,3-5. 3) 真 鍋 幸 男, 和 田 宏 一, 銭 谷 哲, 若 元 郁 夫, 小 林 泰 幸 : 溶 融 池 磁 気 制 御 横 向 TIG 溶 接 法 の 研 究, 高 温 学 会 誌, Vol.5(1999),No.5,11-1. ) 真 鍋 幸 男, 和 田 宏 一, 銭 谷 哲, 広 本 悦 己, 橋 本 安 之 : 溶 融 池 磁 気 制 御 手 法 を 用 いたワイヤ 式 横 向 姿 勢 TIG 溶 接 法 の 研 究, 溶 接 学 会 論 文 集,Vol.1(),No.1, -5-1 -