04
05
CASE 02 08
09
10
11
法律相談 Q& 不動産法律知識 A 押さえておきたい 瑕疵担保責任と宅建業者の責任 Q 仲介した物件 または売主として売買した物件に隠れた瑕疵があった 場 合 宅 建 業 者の調 査 説 明 義 務 違 反が問われるのはどのような 場合ですか A. 1 瑕疵担保責任の内容 目的物に隠れた瑕疵がある場合 売主の過失の有無を問わず 買主は契約を解除でき または 損害賠償の責めを追及できるのが 瑕疵担保責任 です 例えば 売買契約において 当事者が仮に1,000万円という代金で合意し その支払いがなされ 売買の目的物の所有権の移転等がなされたとします ところが 契約時点では存在が判明しなかった 瑕疵が見つかり 目的物の価値が想定した価値の70 しかなかった場合 単純計算すれば700万円 相当の価値でしかなかったことになります このような事態が発覚した場合 買主は 払い過ぎた300万円を返せ 代金減額請求 損 害賠償請求 あるいは そもそも その程度の価値しかないのであれば 買った目的が達せ られないので契約はなかったことにする 契約解除と1,000万円の代金返還請求 と 売主に対し て主張することができます 2 瑕疵担保責任発生の要件 1 瑕疵とは ここでいう 瑕疵 とは 目的物が通常備えなければならない性質 取引通念上通常有すべき性 状を欠いていることをいいます この 瑕疵 には 目的物として通常有すべき機能等を有していな いなどの 物理的瑕疵 法令等によりその物件を取得した目的に従った使用が制限されているなど の 法令上の瑕疵 目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景などの 心理的瑕疵 日照 眺 望等が阻害されることなどの 環境の瑕疵 があるとされています 16
17
賃貸借契約において無効となる特約条項 Q 居住用の賃貸借契約書を作成しようと思いますが どのような内容の 特約 契約条文 が法律上無効とされるのでしょうか また 無効とされ ないようにするには どのような注意が必要でしょうか A. 契約書の意義と契約条文 契約書とは 契約 相対立する当事者間の合意 を書面化したものです そして 私法上の契 約は 一般に契約自由の原則により 方式 内容は自由に定めることができるとされています ところが 不動産賃貸借 とりわけ居住用不動産の賃貸借においては このような原則が修正さ れ 借地人 借家人保護の要請により 借地借家法や判例理論によって契約自由の原則が修正さ れ 一定の契約条件等は無効などとされる場合があります このような 契約書に一定の合意内容を特約として定めたとしても その効力が否定されるものとし て その根拠ごとに 次の 4 つが考えられるところです 1 明確な合意の不存在 判例 仮に契約書に規定があるとしても 借主に一方的に不利な内容である場合 借主がその意義等 を明確に認識したうえで意思表示したものではないとして 当該契約条項については契約 特約 が 成立しないとするものです これは 原状回復に関し 通常損耗 通常の利用によって生じるような損耗や自然損耗 の補修に つき借主の負担とする特約の効力が争われた事案などで 裁判所が示している考え方です 最高裁 平成17年12月16日判決など したがって 特約内容が借主側により多くの義務を課すようなものである場合には 事前に十分な 説明があり 借主側も認識のうえで契約がなされたという点を 重要事項説明も含め 契約手続 きにおいてしっかりと対応することが大切でしょう 2 公序良俗違反 民法90条 契約内容が公の秩序 または善良な風俗に反する事項を目的とするものにつき無効とするもので す 不動産の賃貸借では 借主の債務不履行に際し 自力救済が認められる特段の事情がない にも関わらず 貸主が明渡し 鍵の交換 物件内の動産の処分等 を自ら行うことができる旨の条項 などが これにより無効とされます 東京高裁平成 3 年 1 月29日判決など したがって 上記のような自力救済の禁止等の法理に関係する条項については 例外として認 められる特段の事情がある場合に限って適用されるような条項にすることが大切です 上記判決で は 借主の占有に対する侵害を伴わない態様における搬出等に適用される限りにおいて有効とされ る としています 18
3 借地借家法の 片面的 強行法規違反 借地借家法により借主の保護を図っている規定につき 特約で当該規定内容に反して借主側に 不利な特約は無効とされます 例えば 貸主側からの更新拒否の要件 6 ヶ月前までの通知 正 当事由 がなくても更新拒否ができる旨の特約などがこれに該当します このように 法令の規定に反する特約の効力を認めない取扱いをする規定を 強行規定 とい い 例外はありませんので 特約を定める場合には借地借家法の規定をしっかりと確認することが 大切です 4 消費者契約法 消費者契約法は 事業者 と 消費者 との間で締結される契約 これを 消費者契約 と いいます につき 事業者と消費者では 情報の質 量 交渉力に大きな差があるという前提に立 ち 一定の条項を無効とします 消費者契約法は 不動産賃貸借では 居住用で個人が借主の賃貸借契約 に適用されますの で 設問の場合 消費者契約法の次の条項に注意しなければなりません ① 損害賠償責任の免除特約の無効 8 条 事業者の債務不履行 不法行為に基づく損害賠償責任の全部を免除する特約などが無効とされ ます これには例外がありませんので 特約を定める場合には これらに該当していないかをしっかり と確認することが大切です ② 損害賠償の予定の制限 9 条 ア 契約解除に伴う損害賠償の予定または違約金を定めた条項について それらを合算した額が 解除事由 時期等の区分に応じ 当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い事業者に 生ずべき平均的な損害額を超える部分は無効とされます 契約解除の場合の明渡し遅延損害 金が この条項により無効とされてしまう可能性があります イ 遅延損害金について 年14.6 を超える部分は無効とされます 滞納賃料等の利息につき この条項により 利息が14.6 を超えている場合には 14.6 に引き 直し計算されます 例外はありません ③ 消費者の利益を一方的に害する特約の無効 10条 ある契約条項が 法律の規定よりも消費者 この場合は借主 の権利を制限したり 義務をより多く 課すような内容で それが当事者間の信義則に反し 消費者に一方的に不利である場合には そ の契約条項は無効とされます この規定に基づき 更新料特約や敷引特約の有効性が最高裁まで争われました 最高裁は 一定の合理性のある金銭であり 契約書に一義的かつ具体的な記載があり 契約期間や賃料 等 地域の慣行などに比して金額が高額すぎなければ消費者契約法上無効とはされない としたと ころです したがって 例えば 月額賃料以外の金銭授受の特約をする場合には 当該金員の趣旨を整理 し その趣旨に見合うとともに 地域の相場等を勘案して借主に当該物件の賃貸借に伴う全体的な負 担につき誤解がないよう 契約書への具体的かつ明確な記載と金額設定を行うことが大切です また それ以外の条項についても この規定に基づき 消費者契約法により無効とされるか否かが 争われていることが予想されますので 最新の判例の動向等を今後も注視しておく必要があります 回答者 佐藤 貴美 さとう たかよし 佐藤貴美法律事務所 全宅管理顧問弁護士 総理府 現内閣府 建設省 現国土交通省 での勤務 を経て 平成11年に司法試験合格 平成14年に弁護士登録 賃貸管理 マンション管理などを 中心に弁護士活動をしている 主な著書は 基礎からわかる賃貸住宅管理 住宅新報社 わかりやすい賃貸住宅標準契約書の解説 大成出版社 共著 など 19
1 24
2 25
26
Back Number Index http://www.hosyo.or.jp/jigyo/shijyo.php 27