南 堺 病 院 で 大 腸 癌 の 治 療 をお 受 けになる 方 に 南 堺 病 院 では 患 者 さんの 人 権 を 尊 重 し 患 者 さんにご 満 足 頂 け 喜 んで 退 院 して 頂 けるよう な 治 療 を 目 指 しています 手 術 前 には 十 分 な 説 明 をし ご 納 得 頂 いた 上 で 最 も 良 いと 思 われる 治 療 法 を 選 択 して 頂 くことにしております 大 腸 癌 の 治 療 についても 同 様 で 以 下 は 一 応 の 目 安 です 最 終 的 治 療 方 針 は 適 切 なインフォームドコンセントの 上 で 決 めさせて 頂 きます 従 いまし て 他 の 専 門 医 へのご 相 談 (セカンドオピニオン)を 希 望 される 場 合 も 喜 んで 便 宜 をはかります はじめに 大 腸 は 口 から 摂 取 した 食 物 が 小 腸 で 栄 養 素 が 吸 収 された 後 液 状 の 排 泄 物 を 固 形 の 便 にす る 臓 器 です 大 腸 は 虫 垂 盲 腸 上 行 結 腸 横 行 結 腸 下 行 結 腸 S 状 結 腸 の 結 腸 と 直 腸 にわ けられます( 図 1) 結 腸 の 壁 は 内 側 から 粘 膜 (M) 粘 膜 下 層 (SM) 筋 層 (MP) しょう 膜 (S) の 大 きく4 層 に 分 けられます 直 腸 は 粘 膜 (M) 粘 膜 下 層 (SM) 筋 層 (MP) 外 膜 (A)に 分 け られ SMまでにとどまる 癌 を 早 期 癌 MPよりも 深 く 入 り 込 んだ 癌 を 進 行 癌 といいます( 図 2) 癌 は 小 さいうちはほとんど 症 状 がありませんが 大 きく 深 くなるにつれ 血 便 が 出 た 便 が 細 くなっ た 下 痢 と 便 秘 を 繰 り 返 す おなかがはる 腹 痛 嘔 気 嘔 吐 などの 症 状 が 出 現 します
図 1 大 腸 の 構 造
図 2 大 腸 壁 の 構 造 と 癌 の 深 さの 分 類
癌 は 正 常 のヒトの 細 胞 とは 違 った 細 胞 ( 癌 細 胞 )が 自 分 勝 手 に 増 殖 し 正 常 細 胞 を 蝕 んでいくた め 悪 性 なのです 癌 は 大 腸 の 粘 膜 から 発 生 し 表 面 に 拡 がっていくだけではなく 大 腸 の 壁 を 外 側 に 向 け 大 きく なっていきます 大 腸 癌 の 転 移 様 式 としては 以 下 の3 種 類 があげられます( 図 3) 1 リンパ 行 性 転 移 2 血 行 性 転 移 ( 肝 肺 脳 骨 など) 3 腹 膜 播 種 大 腸 の 粘 膜 下 にはリンパ 管 血 管 などが 豊 富 で ここに 癌 が 浸 潤 すると 転 移 を 生 じる 危 険 性 がでてきます また 癌 がしょう 膜 ( 外 膜 )を 貫 いて 腸 の 外 側 に 露 出 すると 種 が 播 かれるようにおなかの 中 で 散 らばってしまうことがあります これを 腹 膜 播 種 といいます この 状 態 では 麻 痺 性 の 腸 閉 塞 や 腹 水 貯 留 が 生 じることがあります
図 3 大 腸 癌 の3 大 転 移
さらに 癌 がしょう 膜 ( 外 膜 )を 貫 いて 腸 の 外 側 に 露 出 している 場 合 近 くの 臓 器 にくっついて 浸 潤 ( 蝕 んでいくこと)することがあります これを 直 接 浸 潤 といいます 癌 の 進 行 度 については その 深 さとリンパ 節 転 移 の 程 度 遠 隔 転 移 ( 血 行 性 転 移 腹 膜 播 種 )の 有 無 のよって 大 きく5つに 分 類 されます( 表 1) 癌 の 進 行 度 を 手 術 前 に 充 分 把 握 するためには 大 腸 X 線 検 査 内 視 鏡 検 査 のほかに 血 液 検 査 腹 部 超 音 波 検 査 CT 検 査 胸 部 X 線 検 査 ( 場 合 により MRI 検 査 )などを 施 行 します その 結 果 を 参 考 に 以 下 のような 治 療 法 を 決 定 します 表 1 大 腸 癌 の 進 行 度 分 類
癌 の 進 行 度 を 手 術 前 に 充 分 把 握 するためには 大 腸 X 線 検 査 内 視 鏡 検 査 のほかに 血 液 検 査 腹 部 超 音 波 検 査 CT 検 査 胸 部 X 線 検 査 ( 場 合 により MRI 検 査 )などを 施 行 します その 結 果 を 参 考 に 以 下 のような 治 療 法 を 決 定 します 1. 内 視 鏡 的 治 療 大 腸 内 視 鏡 下 に 腫 瘍 を 切 り 取 る 治 療 法 です( 図 4) 適 応 は3cm 以 内 の 隆 起 型 腫 瘍 ( 癌 )で 癌 の 深 さがが 粘 膜 内 にとどまるものです 治 療 前 に 粘 膜 内 と 診 断 しても 病 理 組 織 の 結 果 脈 管 浸 潤 (リンパ 管 血 管 )が 陽 性 のとき あるいは 粘 膜 下 層 深 くまで 癌 があるときなどは 手 術 が 必 要 です 詳 しくは 表 3 4を 参 考 にして 下 さい 合 併 症 としては まれに 出 血 腸 穿 孔 などがあり 入 院 期 間 が 延 びたり 手 術 が 必 要 になったりする 場 合 があります
a.ポリペクトミー b.emr ( 内 視 鏡 的 粘 膜 切 除 術 ) c.esd ( 内 視 鏡 的 粘 膜 下 層 剥 離 術 ) 図 4 大 腸 内 視 鏡 治 療
表 3 早 期 大 腸 癌 の 治 療 法 の 選 択
表 4 SM( 粘 膜 下 層 ) 大 腸 癌 の 治 療 法 の 選 択
2. 大 腸 切 除 術 大 腸 癌 の 発 生 部 位 によって 切 除 範 囲 と 再 建 方 法 が 異 なります 癌 が 右 側 の 大 腸 ( 盲 腸 上 行 結 腸 )にあるときは 右 半 ( 側 ) 結 腸 切 除 術 を 行 い 横 行 結 腸 にあ るときは 横 行 結 腸 切 除 術 左 側 ( 下 行 結 腸 S 状 結 腸 )の 場 合 は 左 側 ( 左 半 結 腸 ) 結 腸 切 除 術 直 腸 にある 場 合 は 前 方 切 除 術 を 行 います( 図 5) 腹 腔 鏡 補 助 下 大 腸 切 除 術 南 堺 病 院 では 大 腸 切 除 術 を 従 来 の 開 腹 手 術 に 加 え 腹 腔 鏡 補 助 下 手 術 でも 施 行 しています( 図 6) この 方 法 は おへそからヒトの 目 の 役 割 をする 腹 腔 鏡 を 入 れ おなかの 壁 と 腸 の 間 に 二 酸 化 炭 素 ガスを 注 入 してから 数 本 の 筒 を 挿 入 し 鉗 子 で 病 巣 周 囲 を 剥 離 し 最 後 に 約 5cmの 小 さなキズで 病 巣 をおなかから 取 り 出 し 手 吻 合 操 作 を 行 います キズが 小 さく 腹 腔 内 臓 器 を 体 外 に 長 時 間 露 出 しないので 回 復 が 早 く 体 にやさしい 手 術 といわれています( 図 7) 基 本 的 に 癌 が 大 腸 の 壁 に 露 出 していてもリンパ 節 転 移 のない 状 態 (Dukes 分 類 のBまで)を 腹 腔 鏡 補 助 下 大 腸 切 除 術 の 適 応 としています
1) 右 半 結 腸 切 除 3)S 状 結 腸 切 除 2) 横 行 結 腸 切 除 4) 前 方 切 除 図 5 大 腸 の 切 除 範 囲 と 再 建 法
テレビモニター 腹 腔 鏡 図 6 腹 腔 鏡 下 大 腸 切 除 術 外 観
図 7 開 腹 手 術 と 腹 腔 鏡 下 手 術 のキズの 比 較 図 7.キズの 大 きさの 比 較
ただし 以 前 に 大 きな 開 腹 手 術 を 施 行 していて 腹 腔 内 (おなかのなか)の 癒 着 が 著 しい 場 合 腸 閉 塞 の 状 態 にある 場 合 心 臓 や 肺 に 重 い 疾 患 を 合 併 している 場 合 は 腹 腔 鏡 下 手 術 が 難 しい 場 合 があります( 詳 しくは 腹 腔 鏡 下 手 術 をお 受 けになる 方 に を 参 照 してください) 2) 開 腹 手 術 手 術 前 の 検 査 で 大 腸 癌 周 囲 のリンパ 節 が 明 らかに 転 移 陽 性 と 考 えられる 癌 の 場 合 または 腫 瘍 が 大 きく 摘 出 するだけでも 大 きな 切 開 が 要 る 癌 には 開 腹 手 術 を 行 います また 癌 が 大 腸 壁 のしょう 膜 ( 外 膜 )を 超 え 周 囲 臓 器 ( 小 腸 子 宮 膀 胱 など)に 浸 潤 している 場 合 には これらも 一 緒 に 切 除 します( 周 囲 臓 器 合 併 切 除 ) 図 8に 術 後 生 存 率 を 示 します 癌 が 固 有 筋 層 までにとどまりリンパ 節 転 移 のないもの(Dukes A) では92% 癌 が 腸 壁 を 貫 いているがリンパ 節 転 移 のないもの(Dukes B)では85% リンパ 節 転 移 があるもの(Dukes C)は77%であることが 知 られています 図 9 図 10は 永 井 院 長 の 前 任 地 泉 大 津 市 立 病 院 の 手 術 成 績 です 結 腸 癌 直 腸 癌 ともに 腹 腔 鏡 下 手 術 の 成 績 が 全 国 成 績 よりも 良 好 な 傾 向 を 示 しています
Dukes 分 類 図 8 Dukes 分 類 別 にみた 術 後 成 績
図 9 結 腸 癌 5 年 生 存 率 ( 腹 腔 鏡 ) (2004/7/1~2009/6/30) 病 期 0 Ⅰ Ⅱ Ⅲa Ⅲb Ⅳ Tota l 症 例 数 11 28 37 29 11 8 124 生 存 率 (%) 100 100 93.8 82.5 90.9 66.7 83.1 ( 全 国 登 録 ) 94.8 90.6 83.6 76.1 62.1 14.3 71.4 当 科 では 結 腸 癌 手 術 症 例 156 例 中 124 例 (79 79.5%) が 腹 腔 鏡 手 術 です (ただし 全 国 登 録 データは1991 年 ~1994 年 ) 腹 腔 鏡 手 術 結 腸 癌 生 存 曲 線 生 存 率 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0 500 1000 1500 2000 生 存 期 間 0 Ⅰ Ⅱ Ⅲa Ⅲb Ⅳ 泉 大 津 市 立 病 院 の 治 療 成 績 は 大 腸 癌 全 国 登 録 データより 良 好 です
図 10 直 腸 癌 5 年 生 存 率 ( 腹 腔 鏡 ) (2004/7/1~2009/6/30) 病 期 0 Ⅰ Ⅱ Ⅲa Ⅲb Ⅳ Tota l 症 例 数 4 12 29 16 4 5 70 生 存 率 (%) 100 100 100 82.5 100 33.3 86.3 ( 全 国 登 録 ) 92.9 89.3 76.4 64.7 47.1 11.1 67.7 当 科 では 直 腸 癌 手 術 症 例 103 例 中 70 例 (68 68.0%)が 腹 腔 鏡 手 術 です (ただし 全 国 登 録 データは1991 年 ~1994 年 ) 腹 腔 鏡 手 術 直 腸 癌 生 存 曲 線 生 存 率 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0 500 1000 1500 2000 生 存 期 間 0 Ⅰ Ⅱ Ⅲa Ⅲb Ⅳ 泉 大 津 市 立 病 院 の 治 療 成 績 は 大 腸 癌 全 国 登 録 データより 良 好 です
* 人 工 肛 門 直 腸 癌 は 前 方 切 除 術 といって 口 側 の 大 腸 と 残 った 肛 門 側 直 腸 をつなぐことが 多 いのですが 肛 門 に 近 く 肛 門 を 残 しても 肛 門 の 機 能 が 残 らないくらい 肛 門 に 近 いがんの 場 合 は 肛 門 を 一 緒 に 切 除 してしまい 人 工 肛 門 を 腹 部 に 造 設 する 場 合 があります( 図 11) また 術 後 に 縫 合 不 全 ( 吻 合 部 がうまくくっつかない)を 来 した 場 合 一 時 的 に 双 口 式 の 人 工 肛 門 を 造 設 す る 場 合 もあります また 癌 による 狭 窄 が 著 しく 腸 閉 塞 を 合 併 している 場 合 には 癌 の 口 側 の 腸 が 腫 れているので 残 っている 腸 同 士 を 吻 合 ( 腸 と 腸 をつなぐこと)が 不 可 能 です この 場 合 腫 瘍 部 を 切 除 し その 口 側 に 人 工 肛 門 を 造 設 します 人 工 肛 門 を 再 手 術 して 閉 鎖 するか 否 かは 病 期 により 異 なります * 腹 膜 播 種 のある 癌 では 癌 腫 本 体 のみを 切 除 する 減 量 手 術 重 要 な 臓 器 ( 大 血 管 や 膵 臓 な ど)に 浸 潤 しており 癌 腫 の 切 除 もできない 場 合 は バイパス 手 術 もしくは 癌 の 口 側 の 腸 での 人 工 肛 門 ( 腸 瘻 ともいう) 造 設 を 行 います * 肝 転 移 のある 場 合 は 転 移 巣 が1 個 である 場 合 や 数 個 であっても 小 さい 場 合 は 肝 転 移 病 巣 も 同 時 または 日 を 改 めて 手 術 で 切 除 する 事 で 再 発 を 抑 制 できる 場 合 があります 3. 補 助 化 学 療 法 進 行 度 によっては 術 後 に 抗 癌 剤 治 療 を 併 用 することもあります 4. 手 術 の 合 併 症 について 考 えられる 合 併 症 としては 術 中 術 後 出 血 縫 合 不 全 腸 閉 塞 開 腹 創 の 感 染 があげられます 直 腸 癌 や 肛 門 癌 でソケイ 部 や 骨 盤 の 奥 まで 手 術 することがあり そのような 場 合 排 尿 障 害 性 機 能 障 害 が 生 じる 場 合 があります
図 11 人 工 肛 門 の 適 応 と 種 類