公的年金運用改革は一元化後に本格化するか

金 融 資 本 市 場 2015 年 11 月 16 日 全 9 頁 公 的 年 金 運 用 改 革 は 一 元 化 後 に 本 格 化 するか 被 用 者 年 金 一 元 化 を 見 据 え 各 共 済 組 合 等 も 資 産 構 成 に 変 化 がみられる 金 融 調 査 部 研 究 員 佐 川 あぐり [ 要 約 ] 公 的 年 金 の 資 産 総 額 は 205.4 兆 円 と 8 年 ぶりに 200 兆 円 を 回 復 した 資 産 構 成 をみる と 2000 年 代 後 半 以 降 は 国 債 等 の 割 合 が 徐 々に 低 下 し 替 わって 株 式 出 資 金 対 外 証 券 投 資 の 割 合 が 上 昇 している これは GPIF の 動 きを 反 映 したものとみられる GPIF では 運 用 対 象 の 多 様 化 ベンチマークの 多 様 化 などの 運 用 改 革 が 本 格 化 してい る 2014 年 10 月 には 基 本 ポートフォリオの 変 更 を 公 表 し その 後 の 資 産 構 成 は 国 内 債 券 からリスク 性 資 産 へのシフトが 進 んでいることを 示 している 被 用 者 年 金 制 度 の 一 元 化 により 共 済 年 金 は 厚 生 年 金 と 一 本 化 した 一 元 化 後 は GPIF 及 び 各 共 済 組 合 等 は 共 通 の 運 用 方 針 の 下 積 立 金 の 管 理 運 用 を 行 う 一 元 化 前 の 各 共 済 組 合 等 の 資 産 構 成 を 確 認 すると 国 内 債 券 の 比 率 は 高 いものの リスク 性 資 産 へシフト する 動 きもみられる GPIF の 運 用 改 革 の 背 景 には 少 子 高 齢 化 により 公 的 年 金 制 度 の 維 持 が 難 しくなってい ることがある 積 立 金 の 運 用 リターンの 改 善 を 図 るべく ポートフォリオ 改 革 が 進 めら れているが さらに 高 度 化 した 分 散 投 資 を 進 めていくには 同 時 にガバナンス 改 革 が 必 要 になろう 1. 変 化 する 公 的 年 金 の 資 産 構 成 日 銀 の 資 金 循 環 統 計 によると 日 本 の 年 金 資 産 は 2014 年 度 末 で 331.2 兆 円 となり 内 訳 は 公 的 年 金 が 205.4 兆 円 年 金 基 金 1 が 1.8 兆 円 である 公 的 年 金 は 1990 年 代 後 半 から 2000 年 代 前 半 にかけて 200 兆 円 を 超 える 資 産 を 保 有 していたが 世 界 金 融 危 機 等 の 影 響 を 受 け 2000 年 代 後 半 以 降 残 高 が 減 少 していた 2014 年 度 は 運 用 環 境 が 好 調 だったことから 8 年 ぶりに 200 兆 円 を 回 復 している 1 年 金 基 金 の 内 訳 は 企 業 年 金 ( 厚 生 年 金 基 金 確 定 給 付 企 業 年 金 確 定 拠 出 年 金 ( 企 業 型 ) 等 )と その 他 年 金 ( 国 民 年 金 基 金 勤 労 者 退 職 金 共 済 機 構 中 小 基 盤 機 構 の 小 規 模 共 済 勘 定 農 業 者 年 金 基 金 確 定 拠 出 年 金 ( 個 人 型 ))となる 日 銀 資 金 循 環 統 計 の 解 説 41~43 ページ 参 照 株 式 会 社 大 和 総 研 丸 の 内 オフィス 100-6756 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 一 丁 目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは 投 資 勧 誘 を 意 図 して 提 供 するものではありません このレポートの 掲 載 情 報 は 信 頼 できると 考 えられる 情 報 源 から 作 成 しておりますが その 正 確 性 完 全 性 を 保 証 する ものではありません また 記 載 された 意 見 や 予 測 等 は 作 成 時 点 のものであり 今 後 予 告 なく 変 更 されることがあります 大 和 総 研 の 親 会 社 である 大 和 総 研 ホールディングスと 大 和 証 券 は 大 和 証 券 グループ 本 社 を 親 会 社 とする 大 和 証 券 グループの 会 社 です 内 容 に 関 する 一 切 の 権 利 は 大 和 総 研 にあります 無 断 での 複 製 転 載 転 送 等 はご 遠 慮 ください

2 / 9 図 表 1 日 本 の 年 金 資 産 ( 兆 円 ) 0 300 0 年 金 基 金 公 的 年 金 200 150 100 50 0 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 ( 出 所 ) 日 本 銀 行 資 金 循 環 統 計 をもとに 大 和 総 研 作 成 公 的 年 金 とは 主 に 厚 生 年 金 と 国 民 年 金 の 積 立 金 を 運 用 する GPIF 2 と 被 用 者 年 金 一 元 化 前 の 共 済 年 金 である その 資 産 構 成 をみると 2000 年 以 降 財 投 改 革 による 財 政 融 資 資 金 への 預 託 金 が 減 少 するのに 伴 い 他 の 資 産 へシフトする 動 きがみられるが そのシフト 先 は 主 に 国 債 等 であったいえる しかし 預 託 金 の 償 還 が 終 了 した 2008 年 以 降 は 国 債 等 の 割 合 が 徐 々に 低 下 しており 2009 年 度 末 で 50.だったのが 2014 年 度 末 時 点 で 34.3%となった 替 わって 投 資 割 合 が 上 昇 してきたのが 株 式 出 資 金 対 外 証 券 投 資 である これは GPIF の 動 きを 反 映 した ものとみられる 図 表 2 公 的 年 金 の 資 産 構 成 ( 兆 円 ) 0 200 150 その 他 対 外 証 券 投 資 株 式 出 資 金 株 式 以 外 の 証 券 国 債 等 財 政 融 資 資 金 預 託 金 100 50 0 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 ( 注 1) 国 債 等 は 国 庫 短 期 証 券 国 債 財 融 債 地 方 債 政 府 関 係 機 関 債 を 含 む ( 注 2) 株 式 以 外 の 証 券 は 国 債 等 に 含 まれる 資 産 を 除 く ( 注 3) その 他 は 現 金 預 金 貸 出 預 け 金 未 収 未 払 い 金 その 他 を 含 む ( 出 所 ) 日 本 銀 行 資 金 循 環 統 計 をもとに 大 和 総 研 作 成 2 年 金 積 立 金 管 理 運 用 独 立 行 政 法 人 (Government Pension Investment Fund)

3 / 9 2.GPIF においては 運 用 戦 略 の 多 様 化 が 進 む 日 本 再 興 戦 略 20 (20 年 6 月 14 日 閣 議 決 定 )の 一 つとして 公 的 準 公 的 資 金 の 運 用 等 についての 検 討 が 挙 げられ 同 年 7 月 1 日 に 第 1 回 有 識 者 会 議 が 行 われた 有 識 者 会 議 の 議 論 の 柱 の 一 つが GPIF の 運 用 に 関 することで 日 本 の 低 金 利 国 内 債 を 多 く 保 有 しすぎている のではないか 3 ということであり 国 内 債 券 中 心 のポートフォリオからの 脱 却 を 見 据 えた GPIF におけるポートフォリオ 改 革 が 検 討 課 題 となった 同 年 11 月 に 提 言 を 取 りまとめた 報 告 書 が 公 表 され 具 体 的 には 運 用 対 象 の 多 様 化 やベンチマークの 多 様 化 アクティブ 比 率 の 引 き 上 げな どが 提 言 された これを 受 けて GPIF の 運 用 については 大 きな 変 化 がみられる 2014 年 10 月 に 変 更 された 新 基 本 ポートフォリオ 国 内 債 券 %(±10) 国 内 株 式 %(±9) 外 国 債 券 15%(±4) 外 国 株 式 %(±8) ( 変 更 日 : 平 成 26 年 10 月 31 日 )では 国 内 株 式 外 国 債 券 外 国 株 式 のリスク 性 資 産 の 割 合 が 引 き 上 げられた 公 表 前 の 2014 年 3 月 と 直 近 の 2015 年 6 月 で 実 際 の 資 産 構 成 割 合 を 比 較 すると 国 内 債 券 が 低 下 し 替 わって 国 内 株 式 外 国 株 式 が 上 昇 しており 国 内 債 券 中 心 のポートフォリオからの 脱 却 が 進 んでいることがわかる 図 表 3 GPIF の 資 産 構 成 割 合 と 基 本 ポートフォリオ 2014/3 2015/6 17% 11% % 15% 16% 55% 1% 24% 38% 22% 3% % % % 国 内 債 券 国 内 株 式 外 国 債 券 外 国 株 式 短 期 資 産 国 内 債 券 国 内 株 式 外 国 債 券 外 国 株 式 短 期 資 産 国 内 債 券 外 国 債 券 国 内 株 式 外 国 株 式 ( 注 ) 基 本 ポートフォリオの 変 更 日 は 2014( 平 成 26) 年 10 月 31 日 ( 出 所 )GPIF 平 成 年 度 業 務 概 況 書 平 成 27 年 度 第 1 四 半 期 運 用 状 況 をもとに 大 和 総 研 作 成 運 用 対 象 の 多 様 化 としては 2012 年 度 に 新 興 国 株 式 への 投 資 が 開 始 された 2014 年 度 末 には 資 産 総 額 ( 時 価 ベース)が 2012 年 度 末 の 約 2 倍 となり 外 国 株 式 アクティブ 運 用 資 産 の 約 6% となっている また 20 年 度 には 日 本 政 策 投 資 銀 行 及 びカナダ オンタリオ 州 公 務 員 年 金 基 金 と 共 同 でインフラ 投 資 を 開 始 しており 投 資 規 模 は 5 年 程 度 をかけて 最 大 総 額 約 2800 億 円 と なるという ベンチマークの 多 様 化 については 2014 年 4 月 に 国 内 株 式 運 用 受 託 機 関 構 成 の 見 直 しにおい て 公 表 している( 変 更 は 20 年 度 の 運 用 から 実 施 されている) パッシブ 運 用 においては 従 来 の TOPIX に 加 えて JPX 日 経 400 など 3 つの 新 しいベンチマークが 採 用 され アクティ ブ 運 用 においても 伝 統 的 なアクティブ 運 用 に 加 えて スマートベータ 型 のアクティブ 運 用 が 追 3 伊 藤 (2015)

4 / 9 加 された( 図 表 4) さらに 2015 年 10 月 には 外 国 債 券 運 用 の 運 用 受 託 機 関 の 選 定 結 果 が 公 表 された 2014 年 度 の 外 国 債 券 アクティブ 運 用 においては ベンチマークは シティ 世 界 BIG 債 券 インデックス( 除 く 日 本 円 ヘッジなし 円 ベース) のみ 7 ファンドであったのに 対 し 2015 年 度 は 8 つのベンチマークが 採 用 され 21 ファンドが 選 定 されている 図 表 4 GPIF における 国 内 株 式 運 用 受 託 機 関 構 成 の 変 更 のイメージ 図 (20 年 度 より) ( 変 更 前 ) ( 変 更 後 ) パッシブ 運 用 (6) アクティブ 運 用 (18) TOPIX(5) JPX 日 経 400(3) MSCI JAPAN(1) Russell Nomura Prime(1) スマートベータ 型 アクティブ 運 用 (3) 伝 統 的 アクティブ 運 用 (14) インデックス 運 用 ( 注 )() 内 はファンド 数 ( 出 所 )GPIF 平 成 年 度 業 務 概 況 書 を 基 に 大 和 総 研 作 成 また 2014 年 5 月 には 日 本 版 スチュワードシップ コードの 受 け 入 れを 表 明 2015 年 9 月 には 国 連 責 任 投 資 原 則 の 署 名 機 関 となったことを 公 表 している スチュワードシップ 責 任 を 果 たす 一 環 として ESG への 取 組 みを 強 めることとしており GPIF の 資 金 が ESG 投 資 を 通 して 社 会 の 持 続 的 な 発 展 に 貢 献 する 企 業 へ 流 れる 新 たな 役 割 が 期 待 されているといえるだろう 一 方 で 有 識 者 会 議 の 議 論 のもう 一 つの 柱 が 高 度 な 資 産 運 用 を 戦 略 的 に 考 えて 実 行 するガ バナンス 体 制 が 整 っていないのではないか 4 ということであった 国 内 債 券 からリスク 性 資 産 へ 分 散 投 資 を 進 めるには より 高 度 な 資 産 運 用 に 精 通 した 人 材 や 組 織 が 必 要 となるが 現 在 の GPIF では 人 員 も 少 なく 不 十 分 という 見 解 である 日 本 再 興 戦 略 改 訂 2015 (2015 年 6 月 30 日 閣 議 決 定 )では GPIF については ガバナンス 体 制 について 年 金 制 度 法 人 の 組 織 論 などの 観 点 から 今 後 の 法 改 正 の 必 要 性 も 含 めた 検 討 を 行 うなど 必 要 な 施 策 の 取 組 を 加 速 すべく 所 要 の 対 応 を 行 う とされている GPIF におけるガバナンス 改 革 は 今 後 本 格 化 していくといえよう 3. 被 用 者 年 金 制 度 の 一 元 化 により 共 済 年 金 は 厚 生 年 金 と 統 合 へ GPIF 以 外 の 公 的 年 金 である 共 済 年 金 については 上 述 のように 2015 年 10 月 に 被 用 者 年 金 制 度 の 一 元 化 等 を 図 るための 厚 生 年 金 保 険 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 ( 以 下 被 用 者 年 金 一 元 化 法 )が 施 行 され 厚 生 年 金 に 統 一 された これまで 被 用 者 年 金 制 度 は 民 間 サラリーマンが 厚 生 年 金 公 務 員 等 が 共 済 年 金 と 区 別 されていたが 今 後 は 厚 生 年 金 に 一 本 化 される 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 の 制 度 的 差 異 については 基 本 的 に 厚 生 年 金 に 揃 えて 解 消 され 共 済 年 金 の 上 乗 せ 給 付 である 職 域 部 分 は 廃 止 が 決 定 した 新 たに 年 金 払 い 退 職 給 付 制 度 が 設 立 され これは 民 間 サラリーマンにおける 3 階 部 分 となる 企 業 年 金 制 度 と 同 等 の 位 置 づけとなる 4 伊 藤 (2015)

5 / 9 共 済 年 金 の 積 立 金 については 厚 生 年 金 の 水 準 に 見 合 った 額 を 厚 生 年 金 の 積 立 金 ( 共 通 財 源 ) 残 った 額 を 各 共 済 組 合 等 における 経 過 的 長 期 給 付 積 立 金 5 として 仕 分 け 一 元 化 後 も 引 き 続 き 各 共 済 組 合 等 が 積 立 金 の 管 理 運 用 を 行 う 共 通 財 源 については 管 理 運 用 における 基 本 指 針 ( 以 下 積 立 金 基 本 指 針 6 という)が 定 められている 積 立 金 基 本 指 針 は 管 理 運 用 主 体 7 となる GPIF 国 家 公 務 員 共 済 組 合 連 合 会 ( 以 下 国 共 連 ) 地 方 公 務 員 共 済 組 合 連 合 会 ( 以 下 地 共 連 ) 日 本 私 立 学 校 振 興 共 済 事 業 団 ( 以 下 私 学 共 済 )の 各 主 務 大 臣 8 が 定 める 管 理 運 用 主 体 は こ の 積 立 金 基 本 指 針 に 則 して 共 同 でモデルポートフォリオを 作 成 している さらに 各 主 体 は 積 立 金 基 本 指 針 及 びモデルポートフォリオに 則 してそれぞれの 管 理 運 用 の 基 本 方 針 を 定 めている モデルポートフォリオは 前 述 した GPIF の 基 本 ポートフォリオと 同 じ 中 心 値 乖 離 許 容 幅 を 採 用 している これまで 各 共 済 組 合 等 においても GPIF と 同 様 に 国 内 債 券 中 心 の 資 産 構 成 であ った 一 元 化 後 は 新 しい 基 本 ポートフォリオに 則 して 運 用 が 行 われることになり 今 後 の 各 共 済 組 合 等 の 資 産 構 成 の 変 化 が 注 目 される 4. 一 元 化 前 における 各 共 済 組 合 等 の 運 用 状 況 2014 年 度 末 時 点 での GPIF および 各 共 済 組 合 等 の 資 産 残 高 を 図 表 5 に 示 した 共 済 組 合 等 全 体 の 資 産 残 高 は 52.9 兆 円 で 内 訳 は 国 共 連 (A)が 7.8 兆 円 地 方 公 務 員 共 済 組 合 全 体 (B 1~ 5の 合 計 )が 40.9 兆 円 私 学 共 済 (C)が 4.2 兆 円 であった 図 表 5 GPIF と 各 共 済 組 合 等 の 資 産 総 額 (2014 年 度 末 ) 合 計 GPIF 144.0 共 済 組 合 等 (A B 1~5 Cの 合 計 ) 52.9 国 家 公 務 員 共 済 組 合 連 合 会 (A) 7.8 地 方 公 務 員 共 済 組 合 連 合 会 (B) 21.1 地 方 職 員 共 済 組 合 (1) 0.2 公 立 学 校 共 済 組 合 (2) 5.4 警 察 共 済 組 合 (3) 2.9 全 国 市 町 村 職 員 共 済 組 合 連 合 会 (4) 10.5 東 京 都 職 員 共 済 組 合 (5) 0.6 地 方 公 務 員 共 済 組 合 の 合 計 (B 1~5の 合 計 ) 40.9 日 本 私 立 学 校 振 興 共 済 事 業 団 (C) 4.2 ( 注 ) 単 位 は 兆 円 時 価 ベース ( 出 所 )GPIF 国 共 連 地 共 連 私 学 共 済 地 方 職 員 共 済 組 合 公 立 学 校 共 済 組 合 警 察 共 済 組 合 全 国 市 町 村 職 員 共 済 組 合 連 合 会 東 京 都 職 員 共 済 組 合 の 公 表 データをもとに 大 和 総 研 作 成 5 旧 職 域 部 分 の 給 付 に 係 る 積 立 金 6 2014( 平 成 26) 年 7 月 3 日 公 布 7 管 理 運 用 主 体 である GPIF 国 共 連 地 共 連 私 学 共 済 のほか 図 表 5 に 示 す 地 共 連 傘 下 の 4 共 済 組 合 1 連 合 会 ( 地 方 職 員 共 済 組 合 公 立 学 校 共 済 組 合 警 察 共 済 組 合 全 国 市 町 村 職 員 共 済 組 合 連 合 会 東 京 都 職 員 共 済 組 合 )が 実 質 的 に 積 立 金 の 運 用 を 行 っている 後 述 参 照 8 厚 生 労 働 大 臣 (GPIF) 財 務 大 臣 ( 国 共 連 ) 総 務 大 臣 ( 地 共 連 ) 文 部 科 学 大 臣 ( 私 学 共 済 )の 4 大 臣

6 / 9 各 共 済 組 合 等 の 運 用 状 況 については それぞれディスクローズしている 内 容 が 異 なるため 取 得 できるデータや 情 報 等 から 推 察 したい まずは (A) 国 共 連 (B) 地 共 連 (C) 私 学 共 済 において 確 認 する 資 産 構 成 の 推 移 をみると いずれも 徐 々に 国 内 債 券 の 比 率 が 低 下 しており 程 度 の 違 いはあるだろうが 被 用 者 年 金 制 度 一 元 化 へ 向 けた 取 り 組 みが 行 われていたと 推 察 さ れる (A) 国 共 連 については 国 内 債 券 の 比 率 が 2014 年 度 末 時 点 で 66%と 地 共 連 私 学 共 済 と 比 較 しても 高 い 水 準 である しかし 各 共 済 組 合 等 の 中 で 唯 一 被 用 者 年 金 制 度 の 一 元 化 前 の 今 年 2 月 に 現 行 の 基 本 ポートフォリオへ 変 更 しており 20 年 度 は 外 国 株 式 2014 年 度 は 国 内 株 式 の 運 用 受 託 機 関 構 成 の 見 直 しも 行 われている 運 用 状 況 の 報 告 書 には 保 有 債 券 の 一 部 を 売 却 し 内 外 株 式 に 資 金 投 入 が 行 われたことが 明 記 されている また 国 共 連 は 積 立 金 の 34%を 財 政 融 資 資 金 に 預 託 する 義 務 があり 国 内 債 券 のうち 5 割 以 上 が 預 託 金 となるが 一 元 化 後 はこ の 義 務 が 廃 止 されることになった 2015 年 度 も 国 内 債 券 から 他 の 資 産 へシフトする 動 きがみ られるだろう (B) 地 共 連 は 図 表 5 の1から5に 示 す 各 共 済 組 合 等 の 連 合 体 であり 傘 下 の 各 共 済 組 合 等 においても 積 立 金 の 管 理 運 用 を 行 っている 地 共 連 は 各 共 済 組 合 等 から 払 い 込 まれる 組 合 払 込 金 9 を 積 立 金 として 管 理 運 用 しており 2014 年 度 末 時 点 で 資 産 総 額 は 21.1 兆 円 である 地 共 連 の 事 業 内 容 の 一 つとして 傘 下 の 各 共 済 組 合 等 で 年 金 給 付 のための 資 金 が 不 足 した 場 合 に これを 原 資 として 必 要 な 額 を 交 付 することになっている 10 資 産 構 成 割 合 をみると 国 内 債 券 の 比 率 が 2014 年 度 末 時 点 で 51%まで 低 下 している 国 内 株 式 については 22%と 国 共 連 私 学 共 済 と 比 較 しても 高 い 水 準 で 基 本 ポートフォリオの % との 乖 離 が-3%となっている 国 内 株 式 については 好 調 な 相 場 環 境 による 時 価 上 昇 の 影 響 も 大 きいだろうが 2014 年 7 月 11 月 に 国 内 株 式 アクティブ 運 用 国 内 株 式 インデックス 運 用 にお ける 運 用 受 託 機 関 の 選 定 結 果 が 公 表 されており 資 金 投 入 も 行 われたとみられる さらに 2015 年 6 月 8 月 には 外 国 株 式 アクティブ 運 用 外 国 債 券 アクティブ 運 用 において 運 用 受 託 機 関 の 選 定 結 果 が 公 表 されており 今 後 は 外 国 株 式 外 国 債 券 の 比 率 が 徐 々に 高 まってくるとみられ る (C) 私 学 共 済 においても 国 内 債 券 の 比 率 は 2014 年 度 末 時 点 で 51%まで 低 下 した 運 用 状 況 の 報 告 書 には やはり 被 用 者 年 金 制 度 の 一 元 化 を 見 据 え 当 初 予 定 していた 国 内 債 券 への 投 資 資 金 の 一 部 を 内 外 株 式 や 外 国 債 券 への 投 資 に 振 り 替 えたと 明 記 されている リスク 性 資 産 に ついては 特 に 外 国 債 券 が %と 基 本 ポートフォリオの 15%との 乖 離 が-2%となっており 今 後 は 国 内 株 式 外 国 株 式 へのリバランスが 行 われるのではないだろうか 9 各 組 合 の 各 年 度 の 収 入 ( 掛 金 負 担 金 )が 支 出 ( 給 付 )を 上 回 る 場 合 には 長 期 給 付 積 立 金 が 増 加 し この 場 合 この 増 加 額 の 3を 連 合 会 に 払 い 込 むこととなっている 各 組 合 の 収 入 が 支 出 を 下 回 る 場 合 には 各 組 合 は 当 面 各 自 積 み 立 てている 長 期 給 付 積 立 金 を 取 り 崩 して 給 付 に 充 てることとなっており この 場 合 連 合 会 への 払 込 金 はゼロとなる 地 方 公 務 員 共 済 組 合 連 合 会 資 金 運 用 基 本 問 題 研 究 会 資 金 運 用 基 本 問 題 研 究 会 報 告 書 ( 平 成 17 年 6 月 )http://www.chikyoren.or.jp/sikin/pdf/houkoku.pdf 4 ページ 脚 注 2 より 抜 粋 10 このような 財 政 調 整 制 度 は 他 の 公 的 年 金 制 度 には 見 られない 独 自 のものとされている

7 / 9 図 表 6 GPIF および 各 共 済 組 合 等 の 資 産 構 成 推 移 (A) 国 共 連 7.8 兆 円 4 2 6 8 12 8 3 2 (±10) 8 15 (±10) 66 74 (±10) (±30) (B) 地 共 連 21.1 兆 円 1 1 15 11 11 10 (±12) 22 14 15 (±6) (±14) 4 64 2 51 (±15) (C) 私 学 共 済 4.2 兆 円 7 5 14 15 4 51 56 2 15 (±8) (±4) (±9) (±10) 参 考 GPIF 144 兆 円 4 2 5 5 21 12 11 12 15 22 39 60 (±8) (±4) (±9) (±10) 2 4 00/1 00/1 00/1 00/1 63% 11% 12% 5% 9% % % 15% その 他 外 国 株 式 外 国 債 券 国 内 株 式 国 内 債 券 ( 注 1) 国 共 連 の 資 産 は 国 内 債 券 に 預 託 金 その 他 に 短 期 資 産 不 動 産 貸 付 金 を 含 む ( 注 2) 地 共 連 の 資 産 は その 他 に 短 期 資 産 を 含 む ( 注 3) 私 学 共 済 の 資 産 は その 他 に 短 期 資 産 を 含 む ( 注 4)GPIF の 資 産 は 国 内 債 券 に 財 投 債 その 他 に 短 期 資 産 を 含 む ( 注 5) 時 価 ベース ( 注 6) 現 行 の 基 本 ポートフォリオについては 国 共 連 が 2015 年 5 月 地 共 連 私 学 共 済 が 2015 年 10 月 GPIF が 2014 年 10 月 から 採 用 されている ( 出 所 ) 国 共 連 地 共 連 私 学 共 済 GPIF の 公 表 資 料 を 基 に 大 和 総 研 作 成 さらに 地 共 連 の 傘 下 の 共 済 組 合 等 のうちデータが 取 得 できる 2 公 立 学 校 共 済 組 合 3 警 察 共 済 組 合 4 全 国 市 町 村 職 員 共 済 組 合 連 合 会 について 確 認 する 公 立 学 校 共 済 組 合 について は 2011 年 度 から 20 年 度 にかけて 国 内 債 券 の 比 率 が 上 昇 していた 2014 年 度 は 低 下 したが 比 率 は 64%と 高 く 前 回 基 本 ポートフォリオにおいて 国 内 債 券 の 比 率 が と 他 の 共 済 組 合 等 と 比 較 しても 高 い 水 準 であることから 特 に 国 内 債 券 中 心 の 運 用 内 容 であったと 推 察 される 警 察 共 済 組 合 は 共 済 組 合 等 の 中 では 最 も 分 散 投 資 が 進 んでいるといえよう 2014 年 度 末 の 資 産 構 成 と 現 行 の 基 本 ポートフォリオを 比 較 すると 外 国 債 券 (フルヘッジとノーヘッジの 合 計 ) の 乖 離 幅 が+9%と 国 内 株 式 外 国 株 式 に 比 べて 比 率 が 高 い 全 国 市 町 村 職 員 共 済 組 合 連 合 会 においては 2011 年 度 以 降 の 推 移 をみると 大 きな 変 化 が 見 られていない しかし 四 半 期 ご との 運 用 状 況 を 公 表 しており 2015 年 6 月 末 時 点 での 最 新 の 資 産 構 成 をみると 国 内 株 式 の 比

8 / 9 率 が 15.6%(2014 年 度 末 )から 16.9%(2015 年 6 月 末 )へと 上 昇 している 今 後 これら 共 済 組 合 等 においても 現 行 の 基 本 ポートフォリオに 向 けて 国 内 債 券 から 他 の 資 産 へのシフト が 進 んでいくだろうと 思 われる また 各 共 済 組 合 等 で 公 表 している 厚 生 年 金 の 積 立 金 における 管 理 運 用 の 方 針 の 中 にも ス チュワードシップ コードに 係 る 取 り 組 みや また 株 式 運 用 における ESG 投 資 を 考 慮 すること の 検 討 について 明 記 されている GPIF においては 多 面 的 な 運 用 改 革 が 本 格 的 に 進 んでいるが 各 共 済 組 合 等 においても 運 用 改 革 の 波 が 押 し 寄 せているといえよう 図 表 7 地 共 連 傘 下 の 各 共 済 組 合 等 の 資 産 構 成 推 移 2 公 立 学 校 共 済 組 合 5.5 兆 円 4 2 12 7 4 8 4 6 5 (±12) 10 15 (±6) (±14) 80 64 (±15) 3 警 察 共 済 組 合 2.9 兆 円 4 9 14 23 (±12) 24 12 20 15 (±6) 18 (±14) 2 32 (±15) 4 全 国 市 町 村 職 員 共 済 組 合 連 合 会 10.6 兆 円 4 2 8 11 12 9 6 5 16 12 58 63 2 4 (±12) 15 (±6) (±14) (±15) 00/1 00/1 00/1 00/1 参 考 (B) 地 共 連 21.1 兆 円 1 1 15 11 11 10 22 14 15 ( 注 1) 公 立 学 校 共 済 組 合 の 資 産 は 国 内 債 券 に 生 命 保 険 貸 付 等 その 他 に 短 期 資 産 を 含 む ( 注 2) 警 察 共 済 組 合 の 資 産 は 外 国 債 券 及 び 外 国 株 式 はそれぞれノーヘッジとフルヘッジの 合 計 その 他 に 短 期 資 産 2 号 3 号 ( 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 施 行 規 程 第 14 条 第 1 項 第 2 号 及 び 第 3 号 に 掲 げる 不 動 産 又 は 貸 付 金 をいう 長 期 経 理 の 余 裕 金 の 運 用 に 関 する 基 本 方 針 ( 平 成 14 年 7 月 31 日 ) 2 ページより 抜 粋 )を 含 む ( 注 3) 全 国 市 町 村 職 員 共 済 組 合 連 合 会 の 資 産 は その 他 に 短 期 資 産 等 を 含 む ( 注 4) 地 共 連 の 資 産 は その 他 に 短 期 資 産 を 含 む ( 注 5) 時 価 ベース ( 注 6) 現 行 の 基 本 ポートフォリオについては いずれも 2015 年 10 月 から 採 用 されている ( 出 所 ) 地 共 連 公 立 学 校 共 済 組 合 警 察 共 済 組 合 全 国 市 町 村 職 員 共 済 組 合 連 合 会 の 公 表 資 料 をもとに 大 和 総 研 作 成 4 2 51 64 63% 11% 12% 5% 9% % % 15% その 他 外 国 株 式 外 国 債 券 国 内 株 式 国 内 債 券 (±12) (±6) (±14) (±15)

9 / 9 5.まとめ 被 用 者 年 金 制 度 の 一 元 化 によって 共 済 年 金 は 厚 生 年 金 に 統 一 されるわけだが 積 立 金 の 運 用 については 共 通 の 運 用 方 針 の 下 ではありながら 引 き 続 き 各 共 済 組 合 等 で 行 っていくこと になった GPIF 並 びに 各 共 済 組 合 等 の 公 表 する 基 本 ポートフォリオは 中 心 値 はいずれも 同 じ だが 乖 離 許 容 幅 はそれぞれ 異 なる 水 準 を 採 っている 例 えば ポートフォリオ 上 は 内 外 株 式 5となっているが 乖 離 許 容 幅 を 考 慮 すると 各 共 済 組 合 等 の 内 外 株 式 保 有 比 率 は 5に 近 い 数 字 ではあるかもしれないが 全 く 同 じ 比 率 ではないだろう よって 短 期 的 には 運 用 結 果 に 差 が 出 るかもしれないが 長 期 的 にみると 運 用 リスクが 分 散 されていると 考 えられる 公 的 年 金 においては 少 子 高 齢 化 の 進 行 によって 給 付 支 出 が 保 険 料 収 入 を 上 回 り 積 立 金 を 取 り 崩 し 給 付 に 対 応 している しかし 積 立 金 の 取 り 崩 しが 永 遠 に 続 くわけはなく また 保 険 料 の 引 き 上 げや 給 付 水 準 の 引 き 下 げ(マクロ 経 済 スライドの 本 格 適 用 等 ) 支 給 開 始 年 齢 の 引 き 上 げといった 対 応 により 加 入 者 の 負 担 も 大 きい そこで 積 立 金 の 運 用 リターン 改 善 を 図 るべく ポートフォリオ 並 びにガバナンス 改 革 が 進 められているというのが GPIF の 運 用 改 革 の 背 景 である 本 稿 で 確 認 したように GPIF の 資 産 構 成 には 大 きな 変 化 がみられるが さらに 高 度 化 した 分 散 投 資 を 進 めていくためには やはりガバナンス 改 革 が 必 要 になろう < 参 考 文 献 > 伊 藤 隆 敏 (2015) 公 的 年 金 運 用 改 革 の 必 要 性 と 提 言 の 背 景 証 券 アナリストジャーナル Vol.53, PP.6-15. 企 業 年 金 連 合 会 企 業 年 金 に 関 する 基 礎 資 料 ( 平 成 23 年 12 月 ) 大 和 総 研 レポート 公 的 年 金 の 規 模 と 資 産 構 成 (09 年 度 末 ) (2010 年 11 月 ) 土 屋 貴 裕 大 和 証 券 レポート 共 済 年 金 の 日 本 株 運 用 の 現 状 と 今 後 (2015 年 7 月 ) 塩 村 賢 史