名 古 屋 学 院 大 学 論 集 言 語 文 化 篇 第 23 巻 第 1 号 (2011 年 10 月 ) 研 究 ノート 英 語 とゲルマン 語 北 欧 語 の 視 点 から 八 亀 五 三 男 Ⅰ はじめに デンマーク 語 ( 以 下,D=Danish)のflittig という 語 に 初 めて 接 したドイツ 人 は,いとも 容 易 に 母 語 であるドイツ 語 ( 以 下,G=German)の fleißigを 想 起 することができ,その 意 味 ( 勤 勉 な ) が 明 確 にわかると 言 う 1) それは, 発 音 と 綴 りが 酷 似 しているという 点 ともう 一 つ 意 味 が 同 一 で ある, 意 味 にズレがないという 言 語 事 実 による 綴 り( 発 音 )の 同 一 性 は 一 目 瞭 然 であって, 語 頭, 語 末 がfl-,-ig と 共 通 している, 語 頭 のfl- に -i-,-ei- という 母 音 が 後 続 している,[t]と[s]はDとGで 頻 繁 に 音 対 応 する 最 後 の 子 音 対 応 規 則 は 慣 れてしまうと 何 の 困 難 も 感 ずることはない: 例 えば,D[t]:G[s]=slot:Schloß 城, sluttet:geschlossen 閉 じられた,opfattelse:Auffassung 理 解 など 2) しかし, 最 も 重 要 なのは 意 味 の 対 応 にズレがないということである すなわち,このドイツ 人 は 形 態 的 にD. flittig と G. fleißig を 対 応 させ, 母 語 のfleißig の 意 味 内 容 をそのままflittig に 適 用 す れば,この 語 を 完 全 に 習 得 したことになる 少 し 大 胆 な 言 い 方 になるが, 発 音 文 字 という 形 式 と 意 味 内 容 が 非 常 に 類 似 している 場 合, 言 語 間 に 相 違 はあるのだろうか これに 対 して, 英 語 を 母 語 とする 人 が 日 本 語 の 本 (ほん) を 修 得 する 時,まず 形 式 ( 文 字 発 音 )の 学 習 で 苦 しみを 経 験 し, 意 味 内 容 のズレで 戸 惑 いを 感 ずる つまり, 我 々は book = 本 と 習 ったが, 英 語 のbankbook,checkbook,datebook,minute book,notebook,roll book などは 確 かにbook の 一 種 ではあるが, 本 ではない すなわち, 両 言 語 には 意 味 領 域 の 共 通 部 分 とそ うでない 部 分 とが 存 在 するのである 以 上 の 言 語 事 実 を 基 本 としながら, 本 稿 においてはゲルマン 語, 特 に 北 欧 語 から 見 ると 英 語 の 語 彙 にはどのような 特 徴 が 見 られるのかを 観 察 したいと 思 う 他 言 語 と 比 較 することにより,そ の 言 語 内 だけの 分 析 では 気 付 かない 言 語 事 実 が 見 つかることがある Ⅱ ゲルマン 語 における 英 語 昨 年 コペンハーゲンでこの 辞 書 を 買 った という 日 本 語 を, 同 じゲルマン 語 である 英 語 (E=English),ドイツ 語 (G=German),デンマーク 語 (D=Danish),アイスランド 語 (I=Icelandic)で 表 現 すると, 83
名 古 屋 学 院 大 学 論 集 E:Last year I bought this dictionary in Copenhagen. G:Letztes Jahr kaufte ich dieses Wörterbuch in Kopenhagen. D:Sidste år købte jeg denne ordbog i København. I:Árið sem leið keypti ég þessa orðabók í Kaupmannahöfn. となる これらの 文 を 比 較 すると,いくつかの 相 違 点 に 気 付 く まず 初 めは, 昨 年 という 副 詞 ( 句 ) が 文 頭 に 来 ると,E 以 外 の 言 語 では, 主 語 と 動 詞 の 位 置 が 逆 転 している 点 である( 定 動 詞 倒 置 : 主 語 + 動 詞 動 詞 + 主 語 これは 義 務 的 で, 倒 置 しないと 非 文 法 的 になる) E の I+bought と 言 う 語 順 に 対 して, 他 は bought+i になっている と 言 うより,Eだけが 他 のゲルマン 語 とは 異 なり, 主 語 + 動 詞 の 語 順 になっていると 言 った 方 が 正 確 なのであろう 3) E と 同 じ 西 ゲルマン 語 の Gでさえ, 北 ゲルマン 語 の D,I と 同 じ 語 順 になっている 二 つ 目 は, 辞 書 という 名 詞 の 語 構 成 がE とそれ 以 外 の 言 語 では 異 なっている 点 である こ れについては, 後 述 する また, 買 う を 意 味 する 動 詞 が,E: 他 言 語 =buy:kaufen,købe, kaupa の 対 立 になっている 4) kaufen,købe,kaupa の 3 語 だけを 比 較 すると 相 違 が 目 立 つが,buy を 導 入 すると,これら 三 つの 動 詞 は 同 一 のものという 見 方 ができる G,D,I は 語 源 を 一 にして いる このように, 統 語 論 と 語 彙 に 関 して,これら4 言 語 は 同 じゲルマン 語 に 属 しながら,E だけが 特 異 な 特 徴 を 示 していることがわかる 以 下 においては, 後 者 の 語 彙 の 実 例 をさらに 具 体 的 に 観 察 したいと 思 うが, 英 語 語 彙 の 特 徴 を 確 認 するために, 前 述 の 文 中 の 辞 書 を 意 味 する 語 をそれぞれの 言 語 でもう 一 度 列 挙 し, 語 構 成 の 分 析 を 行 う E:dictionary G:Wörterbuch D:ordbog I:orðabók となり 5),G,D,I の 語 構 成 は 全 て 単 語 + 本 (G. Wörter + buch,d. ord + bog,i. orða+ bók)となっている ただ, 厳 密 に 言 うと, 西 ゲルマン 語 に 属 するオランダ 語 のwoordenboek (woorden + boek)を 示 せば 明 確 なように, 西 ゲルマン 語 (G)ではw- で 始 まり, 北 ゲルマン 語 (D,I)では 母 音 のo- で 始 まっている これは 通 時 的 音 韻 変 化 の 結 果 であって, 語 構 成 について は 西 も 北 も 同 じである 6) 一 方,E はラテン 語 に 由 来 しており,diction[ 話 すこと]+ary[ ~に 関 するもの の 意 味 の 名 詞 を 造 語 する 接 尾 辞 ]のように 他 のゲルマン 語 とは 異 なる 特 異 な 形 態 を 持 っている G,D,I は 容 易 な 日 常 語 彙 2 つでできあがっている つまり,D を 知 っていると, 辞 書 を 意 味 するG,I の 単 語 の 見 当 をつけることができるが,Eのdictionary は 思 いつかない 印 欧 語 比 較 言 語 学 的 に 言 うと, 英 語 (アングロ=サクソン 語 )もドイツ 語,デンマーク 語,ア イスランド 語 などの 諸 言 語 と 同 じように,ゲルマン 語 に 属 している しかしながら, 周 知 のよう 84
英 語 とゲルマン 語 に,ゲルマン 語 ではない 他 言 語 ( 特 にラテン 語,フランス 語 などのイタリック 語 派 の 言 語 )との 接 触 により 大 きな 影 響 を 受 けた 結 果, 英 語 はゲルマン 語 本 来 の 特 徴 の 多 くを 喪 失 してしまってい る (1)このE. dictionary の 場 合 は,4 言 語 とも 意 味 は 同 じだがE だけが 他 の 言 語 と 形 態 ( 語 構 成 ) が 異 なる 例 である (2) 以 下 においては, 北 欧 語 の 視 点 から, 逆 に 類 似 した 形 態 であるが 意 味 にズレが 生 じている 例 について 考 えみたいと 思 う Ⅲ 北 欧 語 語 彙 と 英 語 語 彙 デンマーク 語 の 語 彙 を 観 察 していると, 英 語 語 彙 との 比 較 において 興 味 深 い 現 象 が 多 く 発 見 す ることができる 以 下 において,そのうちのいくつかを 提 示 してみたいと 思 う D. hund[hun ] 7) は 普 通 名 詞 で 一 般 的 な 犬 を 意 味 している 犬 に 関 連 する 単 語 でこの 形 態 に 類 似 した 英 語 語 彙 を 探 し 出 すと,hound が 見 つかるが,この 語 は 犬 の 中 でも 特 殊 な 猟 犬 を 意 味 する D では, 猟 犬 はjagthund(=jagt[hunting]+hund[dog])と 言 い,jagt で hund の 意 味 範 囲 を 限 定 している D. fugl は 一 般 的 な 鳥 の 総 称 であるのに 対 して, 語 源 を 一 にするEのfowl は 鳥 ではある のだが, 意 味 が 狭 くなり 家 禽 類 を 意 味 している -g-:-w- と 綴 りが 異 なっているが,ゲルマ ン 祖 語 では-g- と 共 通 しており,Eは 通 時 的 に-w-に 変 化 している(cf. E. owl:d. ugle) D. havn は 港 8) の 意 味 で, 頻 繁 に 使 用 される 日 常 語 彙 である それに 対 して,E. haven は 港 の 持 つ 機 能 の 一 つである 避 難 港 ; 避 難 する 場 所 の 意 味 の 文 語 となっており, 一 般 的 な 港 の 意 味 は port(<ラテン 語 )に 譲 っている この3 語 をもう 一 度 まとめると, 以 下 のようになる ゲルマン 語 全 体 を 知 るために,I,Gも 示 した E D I G hound hund hundur Hund fowl fugl fugl Vogel haven havn höfn Hafen D,I,G では 一 般 的 な 意 味 なのだが,E では 猟 犬 家 禽 避 難 所 と 意 味 が 限 定 的 になっ ている D,I,Gなどの 言 語 においてはゲルマン 語 本 来 の 意 味 をそのまま 維 持 しているのに 対 し て,E では 意 味 に 変 化 が 生 じている E に teller という 語 がありこれは 出 納 係 を 意 味 する,すなわち 動 詞 tell+-er という 語 構 造 になっている tell とは 数 える の 意 味 の 古 語 で 今 は 使 用 されないが,E がゲルマン 語 に 属 す る 言 語 であることを 証 明 する 貴 重 な 名 残 であると 考 えられる このtell に 相 当 する 語 がD. tælle であり,これは 現 在 でも count の 意 味 で 使 用 されているDの 日 常 語 彙 である 語 源 を 一 にするE. deer,d. dyr,i. dýr,g. Tier については,deer は 鹿,dýr と Tier は 動 85
名 古 屋 学 院 大 学 論 集 物 なのだが,D. dyr はその 中 間 的 な 位 置 を 占 め, 鹿 動 物 の 両 方 を 意 味 する 9) 例 えば, D. dyrehospital 動 物 病 院 [dyr(e)+ hospital]の 場 合 dyr は 動 物 の 意 味 で 使 われており, dyrekød 鹿 肉 [dyr(e)+kød meat ]の 場 合 dyrは 鹿 である 10) さらに E と Dの 複 雑 な 対 応 関 係 は, 時 間 などに 関 する,Eの hour,time,tide とDの time, tid,gang という 6つの 語 に 見 られる 形 態 的 類 似 に 基 づいた 対 応 関 係 は, E D hour time time tide tid gang となり,E. time:d. time,e. tide:d. tidと 対 を 成 している ところが, 意 味 的 対 応 は, E D hour time time tid gang tide( tidevand) [D. tid(e)+vand=e. time+water] である この 対 応 図 は, 例 えば 2 時 間 はE. two hours=d. to timer, 長 い 間 はE. long time=d. lang tid, 5 回 は E. five times=d. fem gange であることを 示 している 11) Ⅳ 形 態 と 意 味 の 異 同 パターン 形 態 と 意 味 を 中 心 にその 異 同 について 述 べてきたが,2 言 語 を 比 較 した 時 の 両 者 の 基 本 的 な 異 同 パターンは 次 のようになるのではなかろうか 形 態 意 味 同 同 D. flittig:g. fleißig 同 異 D. hund:e. hound 異 同 D. ordbog:e. dicitonary 異 異 E. book:j. hon[ 本 ](J=Japanese) この 表 は 次 のことを 意 味 している:(D. hund:e. hound の 場 合 ) hund と hound は, 形 態 は 同 じだが, 意 味 は 異 なっている また, 前 述 したD. hund:g. Hund,D. ordbog:i. orðabók などは, 形 態 同 意 味 同 と 考 える このように,この 対 応 表 を 手 がかりにして, 形 態 と 意 味 の 種 々のパターンの 可 能 性 を 考 えることができる Ⅴ おわりに 友 人 のデンマーク 人 はユトランド 半 島 南 部 のドイツ 国 境 に 近 いTønder tøn という 町 の 出 86
英 語 とゲルマン 語 身 であるが,ドイツ 語 はほぼ 間 違 いなく 理 解 できるそうである ドイツとデンマークがその 帰 属 をめぐって 争 ったこの 地 域 を,ドイツ 人 は シュレスヴィッヒ ホルシュタインSchleswig- Holstein と 発 音 し,デンマークでは スレスヴィ ホルステンSlesvig-Holsten と 発 音 する ど こに 相 違 を 見 つけることができるであろうか G と D の 音 声 的 な 対 応 関 係 がわかれば,すなわち 音 対 応 が 定 式 化 できれば, 何 の 問 題 もない 冒 頭 で 示 した D. flittig:g. fleißigの 対 応 例 だが,これは 大 阪 方 言 : 東 京 方 言 [h]:[s](ありま へん:ありません,おばはん:おばさん,ほな:そうなら)の 対 立 と 同 じ 言 語 現 象 であって, 音 対 応 のルールを 無 意 識 に 学 習 してしまえば,もう 一 方 の 言 語, 方 言 の 当 該 形 態 を 思 い 浮 かべるの に 何 ら 困 難 はない(Ⅳの 表 を 参 照 ) 月 刊 言 語 08.12 月 号 ラテン 語 における, 逸 見 喜 一 郎 氏 の 指 摘 は 非 常 に 重 要 である 12) そもそも 何 がラテン 語, 何 が 英 語 か 語 彙 の 国 籍 とは 何 なのか と 疑 問 を 呈 し, 英 語 university,フランス 語 université,ドイツ 語 Universitätなどは, ラテン 語 universitas の,それぞ れの 言 語 の 癖 にあわせてできた 語 形 である そもそもほとんど 同 じ 綴 りの 同 じ 文 字 (ローマ 字 ) を 使 うことからして 同 一 文 化 圏 の 証 である 発 音 はやや 違 う けれどもかりに 英 語 の 中 でドイツ 語 風 に 発 音 してもまちがいなく 通 じる 外 来 語 というのでもない あえて 言 えば 現 代 語 のそれぞ れはラテン 語 形 の 方 言 形 である と 断 じておられる まちがいなく 通 じる の 部 分 は,D. flittig:g. fleißigと 同 じ 内 容 のことを 指 摘 されているのであろう 言 語 的 血 縁 関 係 があるがゆえに,ゲルマン 系 言 語 はゲルマン 系 言 語 で 統 一 体 を 形 成 しており, イタリック 系 言 語 はイタリック 系 言 語 で 相 互 に 類 似 しまとまっている 13) しかし,それらをさら に 上 位 の 印 欧 祖 語 という 歴 史 言 語 学 的 観 点 から 見 ると,これら 両 系 言 語 も 印 欧 語 として 一 つ に 統 一 できる foot:pedis(ラテン 語 pes foot の 単 数 属 格 比 較 する 部 分 はfoot:ped-)は, その 音 韻 対 応 規 則 ( グリムの 法 則 14) 印 欧 祖 語 ゲルマン 語 :*p f,*d t)がわかれば, 語 派 が 異 なる 言 語 と 言 えども 容 易 に 対 応 させることができるので, 形 態 は 同 じ と 言 えるのかも しれない 空 間 的 方 言 ( 共 時 的 )に 対 して 時 間 的 方 言 ( 通 時 的 )と 呼 んでもいいのではな かろうか ヨーロッパの 言 語 は, 確 かに 言 語 間 の 相 違 が 多 々 見 受 けられるのであるが,それよりも 重 要 な のは, 文 字 体 系, 印 欧 語 族 という 言 語 的 血 縁 関 係 から 類 似 性 が 非 常 に 高 いと 言 う 点 である すなわち, 言 語 的 な 統 一 体 をなしているヨーロッパにもう 一 度 焦 点 を 当 てるべきだと 考 えてい る 注 1 ) 北 欧 語 を 始 めた 頃,コペンハーゲンでデンマーク 語 の 夏 期 集 中 講 座 に 参 加 した その 時, 同 じクラスに いたドイツ 人 が 以 下 のような 主 旨 の 発 言 をした: 今 日 新 しくflittigという 単 語 が 出 てきた これに 発 音 と 綴 りが 似 たドイツ 語 の 単 語 を 思 い 浮 かべると, 果 たしてそのドイツ 語 の 単 語 fleißig がこのデンマーク 語 の 単 語 に 対 応 している このような 手 順 を 踏 むと,デンマーク 語 の 単 語 は 何 の 問 題 もなく 習 得 できる 87
名 古 屋 学 院 大 学 論 集 2 )D:G= dental :[s]の 例 としては,bedre:besser[better],flod:Fluß[river],fod:Fuß[foot],stræde: Straße[street]などを 挙 げることができる 3 ) 従 属 文 が 文 頭 に 来 る 場 合 も,この 定 動 詞 倒 置 が 起 こる: E. When I came home, he was in his room..[s+v] D. Da jeg kom hjem, var han i sit værelse..[v+s] 4 )G. kaufte,d. købte,i. keyptiは,それぞれg. kaufen,i. kaupa の 1 人 称 単 数 過 去 形,D. købeの 過 去 形 である 5 )ただし,G,I は 名 詞 に 格 変 化 があり,ここに 示 された 形 は 単 数 主 格 である 6 ) 西 ゲルマン 語 ( 英 語,ドイツ 語 )と 北 ゲルマン 語 (デンマーク 語,アイスランド 語 )の 明 確 な 相 違 は 以 下 の 例 にも 見 ることができる: E. butter year fox fish old sleep G. Butter Jahr Fuchs Fisch alt schlafen D. smør år ræv fisk gammel sove I. smjör ár refur fiskur gamall sofa 7 ) she の 意 味 のhun は[hun]と 言 う 発 音 で,glottal stop[ ]は 入 らない 8 )D. havn はデンマークの 首 都 København[Køben-havn]の 中 に 使 用 されており, 商 人 の 港 と 言 う 意 味 であ る(I. Kaupmannahöfn, 古 デンマーク 語 Køpman(næ)hafn) 9 ) 英 語 学 事 典 p. 55 10) 古 英 語 d or は 動 物 の 意 味 であった 他 に,D. sky 雲 :E. sky 空,D. gård:e. yard(garden)など があるが,それらは 今 後 さらに 詳 しく 調 べてみたい 11)GとF(=French)を 加 えてみると, 以 下 のような 対 応 になる E D G F hour time Stunde heure time tid Zeit temps gang Mal fois 12) 月 刊 言 語 08.12 月 号 : 特 集 古 典 語 古 代 語 の 世 界 p. 21 13)スペイン 語 とポルトガル 語 の 対 応 を 一 例 示 す: スペイン 語 ポルトガル 語 英 語 efecto efeito effect perfecto perfeito perfect directo direito direct confecto confeito confection ( 因 みに, 日 本 語 では, 順 番 に エフェクト パーフェクト ダイレクト コンペイトー( 金 米 糖 ポル トガル 語 ) となる) ブラジル 人 は,スペイン 語 :ポルトガル 語 =[ekto]:[eito]の 音 対 応 を, 意 識 的 にしろ 無 意 識 的 にしろ 学 習 してしまえば,それ 以 後 母 語 のポルトガル 語 に 対 応 するスペイン 語 を 容 易 に 想 起 することができる 14) グリムの 法 則 とは, 印 欧 祖 語 の*p,*dがギリシャ 語,ラテン 語 などではそのまま p,dとして 維 持 されて いるのに 対 して,ゲルマン 語 では 規 則 的 にそれぞれf,t と 変 化 している 現 象 を 言 う,すなわち, 無 声 閉 鎖 音 無 声 摩 擦 音, 有 声 閉 鎖 音 無 声 閉 鎖 音 と 言 う 通 時 的 音 韻 変 化 のことである 88
英 語 とゲルマン 語 参 考 文 献 Simensen, Erik The Old Nordic lexicon O. Bandle (ed.) The Nordic Languages Vol. 1(Berlin/New York: Walter de Gruyter, 2002) 逸 見 喜 一 郎 ラテン 語 月 刊 言 語 Vol. 37 No. 12(2008) 森 田 貞 雄 監 修 現 代 デンマーク 語 辞 典 ( 東 京 : 大 学 書 林,2011) 松 浪 有 池 上 嘉 彦 今 井 邦 彦 編 英 語 学 事 典 ( 東 京 : 大 修 館 書 店,1983) 89