景 気 循 環 研 究 所 嶋 中 雄 二 の 景 気 サイクル 最 前 線 No. 年 月 5 日 日 銀 は 年 間 兆 円 規 模 のマネタリーベース 拡 大 を ~ QQE の 開 始 で 実 態 兆 円 の 追 加 金 融 緩 和 に~ 消 費 再 増 税 は 財 政 金 融 政 策 を 発 動 しつつ 予 定 どおり 実 施 を 5 年 月 からの 消 費 税 率 再 引 き 上 げを 巡 って 賛 否 両 論 が 戦 わされている 両 論 とも そ れなりに 尤 もな 点 があるので 安 倍 首 相 が 最 終 的 に 決 断 するとされる 月 日 (この 日 に 法 人 企 業 統 計 の 7 9 月 期 分 が 発 表 される) あるいは 明 らかにその 重 要 な 前 哨 戦 となる 月 7 日 (7 9 月 期 の GDP 次 速 報 の 発 表 日 )にかけ 議 論 は 大 きな 高 まりを 見 せるだろう 私 自 身 は 再 増 税 を 予 定 通 りに 実 施 すべきだという 立 場 である その 場 合 89 年 月 や 97 年 月 そして 年 月 の 先 例 も 踏 まえて 後 述 する 追 加 金 融 緩 和 に 加 え 年 限 りの 特 別 所 得 減 税 ( 年 収 千 万 円 以 下 などの 条 件 付 き)を 含 む 5 兆 円 規 模 の 経 済 対 策 ( 人 手 不 足 対 策 を 内 蔵 した 財 政 出 動 )を 実 施 してもよいと 考 えている( 図 ) 消 費 税 率 を 引 き 上 げるのは 少 子 高 齢 化 の 中 で 放 置 すれば 先 細 りして 行 くのが 避 けられない 社 会 保 障 財 源 を 確 保 すること と 共 に 将 来 の 財 政 破 綻 リスクを 軽 減 化 し できるだけ 早 期 に 具 体 的 には 5 年 度 に 基 礎 的 財 政 収 支 (プライマリー バランス)の 対 GDP 比 の 赤 字 幅 を 年 度 比 で 半 減 させ 年 度 には 黒 字 化 するという 財 政 健 全 化 目 標 を 達 成 することを 最 低 限 の 目 標 としている 図. 89 年 月 のケース ~ 金 融 引 締 めと 不 動 産 融 資 規 制 によりバブル 崩 壊 ~ ( 円 ), 8, 6,,,, 8, 日 経 平 均 株 価 ( 左 目 盛 ) 不 動 産 業 への 貸 出 残 高 ( 増 減 額 右 目 盛 ) 消 費 税 を 導 入 (% 89 年 月 ) 89//9 株 価 史 上 最 高 値 に 6, 89/5 金 融 引 締 め, 基 準 貸 付 金 利, ( 旧 公 定 歩 合 右 目 盛 ), 87/ 88/ 89/ 9/ ( 年 / 月 ) 5 9 8 7 6 5 ( 前 期 比 兆 円 ) 5...... -. -. 図. 97 年 月 のケース ~ 公 共 投 資 抑 制 とアジア 通 貨 危 機 金 融 危 機 でデフレ 不 況 に~ ( 円 ) 5,, 5,, 5, 96/6/9 消 費 税 率 引 き 上 げ 閣 議 決 定 消 費 税 率 を 引 き 上 げ (% 5% 97 年 月 ) 97/6/9 タイ バーツ 大 幅 下 落 公 共 投 資 ( 右 目 盛 ) TIBORヵ 月 ( 右 目 盛 ) 95/ 96/ 97/ 98/ 日 経 平 均 株 価 ( 左 目 盛 ) ( 年 / 月 )..8.6....8.6... 8 7 6 5 9 8 7 6 5 今 回 は マネタリーベースが 年 間 で 倍 の 異 次 元 金 融 緩 和 ( 第 の 矢 )- 追 加 緩 和? や 積 極 的 な 財 政 出 動 ( 第 の 矢 )- 追 加 財 政 出 動? 北 海 道 拓 殖 銀 行 山 一 證 券 経 営 破 綻 (97 年 月 )
, 5,, 5, 図. 年 月 (5 年 月 )のケース ~ 第 の 矢 第 の 矢 の 継 続 が 鍵 5 年 末 までの マネタリーベースの 規 模 は 前 年 比 % 増 の 7 兆 円 に 拡 大 する 必 要 ~ ( 円 ) 5, 日 経 平 均 株 価 ( 左 目 盛 ) 消 費 税 率 を 引 き 上 げ (5% 8% 年 月 ) 消 費 税 率 引 き 上 げ? (8% % 5 年 月 ) マネタリーベース ( 右 目 盛 ) / / / 5/ 公 共 投 資 ( 右 目 盛 ) ( 百 兆 円 ).7 5/ ( 年 / 月 月 次 ) 5 年 末 で 7 兆 円 のマネタリーベース と 5 兆 円 の 追 加 財 政 出 動 ( 公 共 投 資 プラス 特 別 所 得 減 税 )があれば 5 年 月 の 再 増 税 乗 り 切 りも 可 能 に 5 年 度 からの 法 人 税 率 の 引 き 下 げ( 第 三 の 矢 )が 重 要 なポイントに ( 注 ) 図 : 日 経 平 均 株 価 は 月 中 平 均 基 準 貸 付 金 利 および 無 担 保 コール 翌 日 物 金 利 は 月 末 公 共 投 資 は 実 質 ベース 四 半 期 ( 注 ) 図 : 公 共 投 資 の 年 7-9 月 期 以 降 とマネタリーベースの 5 年 - 月 期 以 降 は 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 の 予 測 公 共 投 資 の 5 年 - 月 期 以 降 の 点 線 部 は 5 年 度 補 正 予 算 で 計 兆 円 の 追 加 を 行 った 場 合 ( 資 料 ) 図 -: 内 閣 府 日 本 銀 行 資 料 をもとに 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 作 成.5..5..5..5 財 政 健 全 化 目 標 の 達 成 のための 戦 略 については アベノミクスと 同 様 に 同 時 かつ 全 方 位 型 で 実 施 されるべきだと 考 える そのための 第 の 軸 は 何 といっても 歳 出 削 減 だろうが この 実 施 にあたっては 機 動 的 な 財 政 出 動 や 国 土 強 靭 化 への 政 策 処 置 は 堅 持 しつつ 規 制 緩 和 や 財 政 改 革 を 徹 底 し 生 産 性 の 高 い 公 的 なサービスを 目 指 して 行 くべきだ 第 は 力 強 い 経 済 成 長 の 実 現 だ 現 状 の 日 本 経 済 が 設 備 投 資 建 設 投 資 社 会 インフラ 投 資 が 堅 調 に 伸 びる 中 長 超 長 期 の 循 環 の 上 昇 局 面 にあるとみられる 中 年 の 東 京 五 輪 に 向 けての 上 昇 気 流 も 加 わっ ていることから 設 備 投 資 需 要 はなお 底 堅 い 中 での 消 費 増 税 による 一 時 的 な 個 人 消 費 住 宅 投 資 の 屈 折 を 過 度 に 恐 れて 消 費 再 増 税 を 先 送 りにする 必 要 はないと 考 える( 図 5 6 7) しかも 財 政 健 全 化 への 第 の 軸 であり 既 に 国 際 公 約 化 しているとされる 5 年 月 での 消 費 税 率 %への 引 き 上 げを 先 送 りするとすれば 日 本 が 財 政 再 建 への 努 力 を 放 棄 したと 受 け とられ 例 えば 海 外 の 格 付 け 会 社 が 一 斉 に 日 本 国 債 を 格 下 げする 海 外 の 投 機 筋 が 国 債 株 式 の 仕 掛 け 売 りを 行 う などの 行 動 を 誘 発 しかねない 特 に 今 回 はこれまでの 株 高 が 円 安 に 支 えられてきただけに 債 券 相 場 の 急 落 が 起 こればこれが 逆 転 して 円 高 株 安 に 転 ずるリス クが 大 きい こうなってしまえば 安 倍 政 権 下 でアベノミクスの 第 の 矢 である 日 銀 による 異 次 元 金 融 緩 和 や 第 の 矢 の 機 動 的 な 財 政 出 動 によりこじ 開 けられつつあった 虎 の 子 のデフレ 脱 却 への 扉 も 再 び 閉 ざされてしまう もちろん 消 費 増 税 も 短 期 的 な 景 気 循 環 への 抑 制 圧 力 となることは 明 らかだ 現 に 年 月 から 8 月 にかけて 日 本 経 済 は 景 気 動 向 指 数 (CI) 一 致 指 数 から 作 成 されるヒストリカル DI(HDI)の 簡 易 版 から 見 る 限 り 7 ヵ 月 間 の ミニ 景 気 後 退 に 陥 った 可 能 性 がある( 図 8 表 ) その 原 因 の つとして 消 費 増 税 による 駆 け 込 み 需 要 の 反 動 と 税 率 上 昇 を 受 けた 物 価 急 上 昇 による 実 質 所 得 の 減 退 が 挙 げられる しかし それら 自 体 は 当 初 から 想 定 されていたこ とであった これに 月 に 発 生 した 関 東 甲 信 地 方 の 記 録 的 な 大 雪 8 月 における 西 日 本 の 豪 雨 被 害 米 国 を 除 く 世 界 経 済 特 に 欧 州 と 中 国 の 景 気 低 迷 による 輸 出 の 伸 び 悩 み パ ソコンの 基 本 ソフトの 切 り 替 えによる 耐 久 消 費 財 需 要 の 撹 乱 等 が 加 わり 事 態 を 一 時 的 に 悪 化 させたのである 6 8 6 8
9 図. 短 期 循 環 ( 在 庫 投 資 循 環 ) 9 957 周 期 ~8 年 の 波 (キッチン サイクル:. 年 ) 99 98 897 95 97 9 9 96 969 985 99 889 9 95 997 95 98 7 96 9 98 97 95 6 96 96 99 999 89 98 98-965 978 988 99 899 9 9 886 9 96-95 955 959 97 99 96 9-885 9 95 9 95 96 975 99 5 ( 年 ) 図 5. 中 期 循 環 ( 設 備 投 資 循 環 ) 886 897 98 98 98 9 95 96 周 期 8~ 年 の 波 (ジュグラー サイクル:9. 年 ) 97 98 99 999 8-89 985 99 9 9 976-96 9 9 966 956-885 9 95 9 95 96 975 99 5 ( 年 ) 7 6 5 - - - - -5-6 89 9 98 9 図 6. 長 期 循 環 ( 建 設 投 資 循 環 ) 9 周 期 ~ 年 の 波 (クズネッツ サイクル:5.5 年 ) 885 9 95 9 95 96 975 99 5 95 967 98 99 999 ( 年 ) 図 7. 超 長 期 循 環 (インフラ 投 資 循 環 ) 96 周 期 ~7 年 の 波 (コンドラチェフ サイクル:56.5 年 ) 97 - - 96-885 9 95 9 95 96 975 99 5 ( 年 ) ( 注 ) 図 ~ 図 7: 暦 年 直 近 は 年 - 月 期 ~-6 月 期 平 均 値 ~8 年 8~ 年 ~ 年 ~7 年 の 波 はバンドパス フィルターにより 抽 出 ( 資 料 ) 図 ~ 図 7: 大 川 一 司 他 国 民 所 得 ( 長 期 経 済 統 計 ) 東 洋 経 済 新 報 社 97 年 内 閣 府 国 民 経 済 計 算 もとに 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 作 成
9 8 7 6 5 図 8. 景 気 動 向 指 数 (CI) 一 致 指 数 のヒストリカルDIの 推 移 85 86 87 88 89 9 9 9 9 9 95 96 97 98 99 5 6 7 8 9 ( 年 月 次 ) ( 注 )シャドー 部 は 景 気 後 退 期 ( 内 閣 府 調 べ) 年 月 の 山 と 同 年 月 の 谷 は 暫 定 日 付 直 近 は 表 の 想 定 をもとにした HDI ( 資 料 ) 内 閣 府 景 気 動 向 指 数 より 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 作 成 表. 景 気 動 向 指 数 (CI) 一 致 指 数 のヒストリカルDIと 採 用 系 列 の 推 移. 生 産 指 数. 鉱 工 業. 大 口 電 力. 耐 久 消 費 財 5. 所 定 外 労 働 6. 投 資 財 出 荷 7. 商 業 販 売 額 8. 商 業 販 売 額 9. 営 業 利 益. 中 小 企 業. 有 効 求 人 ( 鉱 工 業 ) 生 産 財 使 用 量 出 荷 指 数 時 間 指 数 指 数 ( 小 売 業 ) ( 卸 売 業 ) ( 全 産 業 ) 出 荷 指 数 倍 率 HDI 出 荷 指 数 ( 全 産 業 ) ( 除 輸 送 機 械 ) ( 前 年 同 月 比 ) ( 前 年 同 月 比 ) ( 製 造 業 ) ( 除 学 卒 ) 年 8 月 8. 9 月 8. 月 6. 月 6. 月 8.8 年 月 8.8 月 8.8 月. 月. 5 月. 6 月. 7 月. 8 月. 9 月. 月. 月. 月. 年 月. 月 5.5 月 5.5 月 9. 5 月 9. 6 月 9. 7 月 ( ) 7. 8 月 ( ) (7. ) ( 注 ) は 拡 張 は 後 退 を 示 す カッコは 当 研 究 所 予 測 を 基 にした 判 断 HDI はこれらに 基 づく 数 値 ( 資 料 ) 内 閣 府 景 気 動 向 指 数 より 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 作 成 原 油 価 格 下 落 で 年 間 でのインフレ 目 標 達 成 に 不 確 実 性 年 には こうした ミニ 景 気 後 退 が 発 生 し これと 連 動 した 年 度 全 体 の 実 質 GDP 成 長 率 の 低 下 や 特 に 中 国 景 気 の 減 速 を 主 因 とする 原 油 価 格 の 低 下 など 5 年 度 の 早 期 における インフレ 目 標 %の 安 定 的 な 達 成 を 阻 むようなリスクが 台 頭 してきた これまでは 私 自 身 日 銀 執 行 部 と 同 様 に 年 月 以 降 の 異 次 元 金 融 緩 和 ( 量 的 質 的 金 融 緩 和 )で 長 らく 年 間 でのインフレ 目 標 %の 安 定 的 達 成 が 十 分 に 可 能 との 立 場 を 貫 いて きた 実 際 に 年 6 月 期 までの 消 費 者 物 価 指 数 は 順 調 に 加 速 してきた 年 月 期 の 前 年 比 はマイナス.%であったが 6 月 期.% 7 9 月 期.7% 月 期.% 年 月 期.% 6 月 期.%という 具 合 だ( 図 9) しかし 7 8 月 平 均 で.%と それまでの 年 間 の 上 昇 トレンドからやや 下 方 に 逸 脱 し 始 めた この 直 接 の 原 因 としては 原 油 価 格 の 急 落 が 大 きいが 日 本 を 含 む 世 界 的 な 景 気 の 減 速 で 商 品 市 場 次 いで 国 内 企 業 物 価 の 鈍 化 傾 向 が 鮮 明 になってきたことが 重 要 である 国 内 企 業 物 価 の 前 年 比 に 約 半 年 先 行 し 消 費 者 物 価 コアの 前 年 比 に 約 年 先 行 する MUMSS 先 行 指 数 (MUMSS LI)インフレ 版 は 年 月 をピークに 年 8 月 まで 低 下 傾 向 を 続 けている( 図 )
図 9. 前 年 比 %を 達 成 する 経 路 と 実 際 の 消 費 者 物 価 ( 生 鮮 食 品 を 除 く 総 合 ) ( 前 年 比 %).5..5..5. -.5 -.. -. 年 7-9 月 期.7%..6. 年 -6 月 年 - 月.%.% 年 - 月 期.%.8.. 実 績 年 7-8 月.% 5 年 -6 月 期..5.7.9 5 年 -6 月 期 に( 年 間 で) %を 達 成 する 経 路 -..Q.Q Q Q Q.Q Q Q Q 5.Q Q Q Q ( 年 四 半 期 ) ( 注 ) 年 Q 以 降 は 消 費 税 の 影 響 を 除 くベース ( 資 料 ) 総 務 省 資 料 などをもとに 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 作 成 図.MUMSS-LI インフレ 版 と 国 内 企 業 物 価 の 推 移 図. MUMSS-LIインフレ 版 とコアCPIの 推 移 5 / ( 前 年 比 %) (76 年 月 =) ( 両 者 の 間 のタイムラグは 約 年 ) 8 年 8 月 MUMSS-LIインフレ 版 ( 右 目 盛 ) 9. / /7 6 5 8 6 年 8 月 / 5. 9 /.7 - /7 8-7 95-6 6 9 9/8-8 - MUMSS-LI インフレ 版 ( 左 目 盛 ) 消 費 者 物 価 指 数 ( 生 鮮 食 品 を 除 く 総 合 左 目 盛 ) 5-85 - 国 内 企 業 物 価 ( 前 年 比 )( 右 目 盛 ) - 976 8 8 88 9 96 8 ( 年 月 次 ) 9/7 8-5 6 7 8 9 ( 注 ) は 景 気 後 退 期 ( 内 閣 府 調 べ) 年 月 の 山 と 同 年 月 の 谷 は 暫 定 日 付 ( 資 料 ) 総 務 省 消 費 者 物 価 指 数 ( 資 料 ) 日 本 銀 行 企 業 物 価 指 数 三 菱 UFJモルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 MUMSS 先 行 指 数 三 菱 UFJモルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 MUMSS 先 行 指 数 こうした 中 で 黒 田 日 銀 総 裁 は 月 8 日 ニューヨークでの 講 演 後 の 質 疑 において 追 加 緩 和 は 経 済 次 第 であり オプションは 沢 山 あるとし 物 価 目 標 %の 安 定 的 達 成 に 向 けて 必 要 ならば 躊 躇 なく 金 融 政 策 を 調 整 する 姿 勢 を 繰 り 返 し 示 した( 月 9 日 付 け ブルームバーグ 東 京 藤 岡 徹 記 者 による) 同 記 事 によれば 黒 田 総 裁 は 発 行 済 みの 日 本 国 債 のうち 日 銀 が 保 有 しているのは %であ るのに 対 し 英 国 のイングランド 銀 行 は 英 国 債 を % 保 有 していると 指 摘 すると 共 に 日 銀 が 購 入 を 増 やせる 金 融 資 産 として CP 社 債 J REIT ETF などを 挙 げたという この 記 事 を 読 んで 私 は 黒 田 総 裁 が 年 半 前 の 年 月 に 量 的 質 的 金 融 緩 和 (いわゆ る QQE) を 引 っ 下 げて 登 場 する 直 前 と 同 じような 雰 囲 気 を 醸 し 出 していることに 気 づいた あ のときも 黒 田 総 裁 は 日 銀 が 買 うことができる 金 融 資 産 はいくらでもある と 自 信 たっ ぷりな 表 情 で 語 っていた この 連 想 もあり 黒 田 総 裁 は 具 体 的 にいつかはわからないが き っと 年 内 には QQE を やる 気 なのだと 私 は 思 っている 5
QQE からQQE へ ところで この QQE ( 既 に 歴 史 的 事 実 となったこの 日 銀 の 政 策 を 敢 えてこう 名 づけよう) が 始 まる 直 前 の 年 月 9 日 私 は 景 気 循 環 研 究 所 で 行 った 試 算 をもとに つのレポー トを 書 いた( 嶋 中 雄 二 黒 田 日 銀 のマネー 拡 大 ~ 日 銀 当 座 預 金 は 年 で 75 兆 円 の 増 額 が 必 要 に~ 嶋 中 雄 二 の 月 例 景 気 報 告 No.5 年 月 9 日 ) そこでは 以 下 の 通 りの 議 論 を 展 開 した すなわち マネタリーベースが 年 半 のタイムラ グを 経 て 名 目 GDP をどれだけ 拡 大 させるか という 考 え 方 に 基 づいて マネタリーベースと 名 目 GDP のそれぞれのトレンドを とした 指 数 を 作 成 し 年 半 前 における 前 者 の 変 化 に 対 し て 後 者 の 変 化 がどれだけあるかという 弾 性 値 (.)を 用 いて 推 計 する そうすると 丁 度 年 後 の 5 年 月 期 に 名 目 GDP 成 長 率 が 政 府 目 標 の.%に 達 し それを 持 続 するための マネタリーベース 伸 び 率 は 平 残 ベースで 平 均 年 率.%で 行 って 5 年 月 期 には 59. 兆 円 必 要 になることになる( 図 ) また その 際 に 実 現 する 消 費 者 物 価 指 数 ( 生 鮮 食 品 を 除 く 総 合 )の 前 年 比 上 昇 率 は.%に 達 する 計 算 になる 名 目 GDP 成 長 率 目 標 は %の 潜 在 実 質 GDP 成 長 率 プラス GDP デフレーター 上 昇 率 が %の 合 わせて %ということだ CPI 上 昇 率 は 通 常 ( 消 費 税 率 引 き 上 げ 直 後 などは 乱 れるものの) GDP デフレーター 上 昇 率 より 平 均 % 高 い( 図 ) 平 残 と 末 残 との 違 いはあるが 我 々の 計 算 よりも 四 半 期 早 い 年 末 にマネタリーベースが 7 兆 円 と 我 々の 59. 兆 円 に 極 めて 近 いながらも それを 上 回 っていることは 明 らかで 日 銀 が 年 月 日 に 発 表 し た QQE の 緩 和 の 規 模 は 結 果 的 に その 週 間 前 に 発 表 した 我 々の 推 計 をも 超 えたことにな る しかし 我 々と 日 銀 の 推 計 値 が 極 めて 近 かったという 事 実 は 推 計 に 用 いた 方 法 が 共 に 名 目 GDP 成 長 率 の 目 標 値 からタイムラグを 考 慮 しつつ 必 要 なマネタリーベース 伸 び 率 を 計 算 す るという いわゆる 修 正 マッカラム ルール か それに 類 似 した 考 え 方 であったことを 示 唆 していると 思 われる 日 銀 が たとえ フィリップス 曲 線 のシフト を 様 々なモデルで 再 現 したとしても それだけでは 説 得 的 な 形 で 望 ましいマネタリーベース 残 高 を 推 計 することは 困 難 だからだ (トレンド=) 8 6 8 96 9 図. 名 目 GDPとマネタリーベースの 推 移 ( 修 正 マッカラム ルールによる 推 定 ) マネタリーベース( 年 半 先 行 左 目 盛 ) 名 目 GDP( 右 目 盛 ) (トレンド=) 日 銀 の 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 実 行 した 場 合 の 経 路 88 9 7 75 77 79 8 8 85 87 89 9 9 95 97 99 5 7 9 5 ( 年 四 半 期 月 ) ( 注 )マネタリーベース 名 目 GDP は 実 額 のトレンドを として 計 算 マネタリーベースは 月 次 実 績 の 直 近 は 年 月 - 日 値 先 行 きは 量 的 質 的 緩 和 を 実 行 した 場 合 の 経 路 名 目 GDP は 四 半 期 初 出 は 嶋 中 雄 二 月 例 景 気 報 告 No. 5 年 月 9 日 付 ( 資 料 ) 内 閣 府 日 本 銀 行 資 料 をもとに 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 作 成 8 6 98 96 図.GDPデフレーターと 消 費 者 物 価 コア( 生 鮮 食 品 を 除 く 総 合 ) ( 前 年 比 %) - - GDPデフレーター 消 費 者 物 価 コア( 生 鮮 食 品 を 除 く 総 合 ) - 95 96 97 98 99 5 6 7 8 9 ( 年 四 半 期 ) GDPデフレーター 前 年 比 と 消 費 者 物 価 コア( 生 鮮 食 品 を 除 く 総 合 ) 前 年 比 の 乖 離 平 均.%ポイント(95 年 Q ~ 年 Q 平 均 ) CPI% 上 昇 GDPデフレーター % 上 昇 ( 注 ) 直 近 の GDP テ フレーターは 年 -6 月 期 消 費 者 物 価 コアは 年 7-8 月 年 Q 以 降 は 消 費 税 の 影 響 を 除 くベース ( 資 料 ) 内 閣 府 総 務 省 資 料 をもとに 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 作 成 6
しかし 本 来 ならば 名 目 % 成 長 率 すなわち %のインフレ 目 標 を 達 成 し かつその 状 態 を 安 定 的 に 維 持 するためには QQE での 声 明 文 のように マネタリーベースが 年 間 約 6~7 兆 円 に 相 当 するペースで 増 加 するよう 金 融 市 場 調 節 を 行 う といった 一 定 の 実 額 水 準 で 表 示 するのではなく 一 定 の 伸 び 率 で 考 えて その 上 で 表 示 もすべきだといえる もちろん 当 初 の 予 定 通 り 丁 度 年 間 で つまり 5 年 度 初 めにも %のインフレ 目 標 が 達 成 されるのならば それでもよいといえるが 実 際 のように 様 々な 外 的 要 因 により 名 目 成 長 率 あるいはインフレ 目 標 の 期 間 内 での 達 成 が 可 能 ではあっても やや 不 確 定 となる 場 合 伸 び 率 が 年 5%( 実 額 6 兆 円 増 ) 年 5%( 実 額 7 兆 円 増 )と 年 平 均 では %と はいえ 年 目 に 減 速 したままでは 不 十 分 である そこで 私 が 今 回 日 銀 に 採 用 を 提 案 する QQE は マネタリーベースの 年 間 伸 び 率 を QQE の 年 間 平 均 値 と 同 じながら 年 の 伸 び 率 から 5% 上 振 れる 形 になる %の 伸 び 率 で 行 って 実 態 的 には QQE を 単 純 に 5 年 まで 延 長 した 際 の 実 額 7 兆 円 増 よりも 兆 円 多 い 実 額 兆 円 増 の 残 高 7 兆 円 を 5 年 末 に 実 現 し より 強 力 に 名 目 % 成 長 %のインフレ 目 標 を 安 定 的 な 形 で 達 成 できるようにしようとするものなのである( 表 図 ) 日 銀 がこの 提 案 と 同 様 な 考 え 方 で 現 状 打 開 に 取 り 組 み ミニ 景 気 後 退 からの 完 全 脱 出 と 資 産 価 格 の 健 全 な 上 昇 ひいては 日 本 経 済 のデフレ 脱 却 と 中 長 期 的 な 成 長 力 の 復 元 に 繋 げて 行 くことを 祈 念 したいと 思 う( 図 5) 表. 量 的 質 的 金 融 緩 和 における マネタリーベースの 目 標 とバランスシートの 見 通 し 年 末 年 末 年 末 5 年 末 ( 実 績 ) ( 見 通 し) ( 見 通 し) ( 見 通 し) マネタリーベース 8 7 7 増 加 額 - 6 7 前 年 比 - 5 5 (バランスシート 項 目 の 内 訳 ) 長 期 国 債 89 9 CP 等... 社 債 等.9.. ETF.5.5.5 J-REIT...7 貸 出 支 援 基 金. 8 その 他 とも 資 産 計 58 9 銀 行 券 87 88 9 当 座 預 金 7 7 75 その 他 とも 負 債 純 資 産 計 58 9 ( 資 料 ) 日 本 銀 行 量 的 質 的 金 融 緩 和 の 導 入 について( 年 月 ) 5 年 末 までの 見 通 しは 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 推 定 5 5 5 図. 日 銀 の 量 的 質 的 緩 和 の マネタリーベース 日 銀 当 座 預 金 の 経 路 (QQE からQQE へ) マネタリーベース 日 銀 当 座 預 金 量 的 質 的 緩 和 の 経 路 QQE 6 7 8 9 7 8 5 5 QQE 7 ( 年 月 ) 56.8 58 75 ( 年 月 ) 6.8 5 ( 年 四 半 期 ) ( 注 ) 末 残 ベース 実 線 は 実 績 ( 直 近 は 年 月 日 時 点 をもとに 推 計 ) 点 線 は 量 的 質 的 緩 和 の 経 路 矢 印 より 右 は 予 想 ( 資 料 ) 内 閣 府 日 本 銀 行 資 料 をもとに 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 作 成 5 年 末 7 兆 円 へ 5 年 末 7 兆 円?へ 7
図 5 マネタリーベースと 日 経 平 均 5 種 東 証 REIT 指 数 の 推 移 7 8 5 マネタリーベース( 平 残 左 目 盛 ) 東 証 REIT 指 数 ( 右 目 盛 ) 日 経 平 均 株 価 5 種 ( 右 目 盛 ) 今 後 予 想 される マネタリーベースの 経 路 量 的 質 的 緩 和 (//) 7 兆 円 (5 年 末 ) 7 兆 円 ( 年 末 ) 9 期 限 を 定 めない 6 資 産 買 い 入 れ 方 式 (7/7/9) (//) の 導 入 (//) 8,6.98 6,9. 7 (//8) (9//) (//5)(/6/) 7,68.68 7,5.98 8,6. 8,95.6 5 6 7 8 9 5 量 的 緩 和 開 始 量 的 緩 和 解 除 資 産 買 入 等 の 基 金 ( 年 月 ) (//9) (6//9) 創 設 (//8) 5, 5, 8, 5,, 9, 6,,, 7,,, 8, 5,, 9, 6,, ( 注 ) 日 経 平 均 REIT 指 数 は 月 中 平 均 直 近 は 年 月 ~ 日 平 均 値 高 値 安 値 は 日 次 終 値 ベース ( 注 )マネタリーベースは 平 残 未 季 調 値 5 年 末 の 数 値 は 予 測 ( 資 料 ) 日 本 銀 行 日 本 経 済 新 聞 などより 三 菱 UFJモルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 作 成 ( 円 ) (/ 末 =) 5,5,5,,75 5 ( 以 上 ) 三 菱 UFJモルガン スタンレー 証 券 景 気 循 環 研 究 所 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 -5- 三 菱 ビルヂング 参 与 景 気 循 環 研 究 所 長 嶋 中 雄 二 -6-657 shimanaka-yuuji@sc.mufg.jp 8
本 資 料 は 信 頼 できると 思 われる 各 種 データに 基 づいて 作 成 されていますが 当 社 はその 正 確 性 完 全 性 を 保 証 するものではありません 本 資 料 で 直 接 あるいは 間 接 に 採 り 上 げられている 有 価 証 券 は 価 格 の 変 動 や 発 行 者 の 経 営 財 務 状 況 の 変 化 およびそれらに 関 する 外 部 評 価 の 変 化 金 利 為 替 の 変 動 などにより 投 資 元 本 を 割 り 込 むリスクがあります ここに 示 したすべての 内 容 は 当 社 の 現 時 点 での 判 断 を 示 している に 過 ぎません 本 資 料 は お 客 様 への 情 報 提 供 のみを 目 的 としたものであり 特 定 の 有 価 証 券 の 売 買 あるいは 特 定 の 証 券 取 引 の 勧 誘 を 目 的 と したものではありません 本 資 料 にて 言 及 されている 投 資 やサービスはお 客 様 に 適 切 なものであるとは 限 りません また 投 資 等 に 関 するアドバ イスを 含 んでおりません 当 社 は 本 資 料 の 論 旨 と 一 致 しない 他 のレポートを 発 行 している 或 いは 今 後 発 行 する 場 合 があります 本 資 料 でイン ターネットのアドレス 等 を 記 載 している 場 合 がありますが 当 社 自 身 のアドレスが 記 載 されている 場 合 を 除 き ウェッブサイト 等 の 内 容 について 当 社 は 一 切 責 任 を 負 いません 本 資 料 の 利 用 に 際 してはお 客 様 ご 自 身 でご 判 断 くださいますようお 願 い 申 し 上 げます 当 社 および 関 係 会 社 の 役 職 員 は 本 資 料 に 記 載 された 証 券 について ポジションを 保 有 している 場 合 があります 当 社 および 関 係 会 社 は 本 資 料 に 記 載 された 証 券 同 証 券 に 基 づくオプション 先 物 その 他 の 金 融 派 生 商 品 について 買 いまたは 売 りのポジションを 有 している 場 合 が あり 今 後 自 己 勘 定 で 売 買 を 行 うことがあります また 当 社 および 関 係 会 社 は 本 資 料 に 記 載 された 会 社 に 対 して 引 受 等 の 投 資 銀 行 業 務 その 他 サービスを 提 供 し かつ 同 サービスの 勧 誘 を 行 う 場 合 があります 三 菱 UFJモルガン スタンレー 証 券 の 役 員 ( 会 社 法 に 規 定 する 取 締 役 執 行 役 監 査 役 又 はこれらに 準 ずる 者 をいう)が 以 下 の 会 社 の 役 員 を 兼 任 しております: 三 菱 UFJフィナンシャル グループ 三 菱 倉 庫 債 券 取 引 には 別 途 手 数 料 はかかりません 手 数 料 相 当 額 はお 客 様 にご 提 示 申 し 上 げる 価 格 に 含 まれております 本 資 料 は 当 社 の 著 作 物 であり 著 作 権 法 により 保 護 されております 当 社 の 事 前 の 承 諾 なく 本 資 料 の 全 部 もしくは 一 部 を 引 用 または 複 製 転 送 等 により 使 用 することを 禁 じます Copyright c Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. -5 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 -5- 三 菱 ビルヂング 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 株 式 会 社 景 気 循 環 研 究 所 ( 商 号 ) 三 菱 UFJ モルガン スタンレー 証 券 株 式 会 社 金 融 商 品 取 引 業 者 関 東 財 務 局 長 ( 金 商 ) 第 6 号 ( 加 入 協 会 ) 日 本 証 券 業 協 会 一 般 社 団 法 人 金 融 先 物 取 引 業 協 会 一 般 社 団 法 人 日 本 投 資 顧 問 業 協 会 一 般 社 団 法 人 第 二 種 金 融 商 品 取 引 業 協 会 本 資 料 は 英 国 において 同 国 the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの 監 督 下 にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが 配 布 致 します また 米 国 においては Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が 配 布 致 します 9