年金制度の改正法の解説と意見2



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目 次 1. 社 会 保 障 分 野 でできること 1 1 高 額 医 療 高 額 介 護 合 算 制 度 の 改 善 2 保 険 証 機 能 の 一 元 化 3 自 己 診 療 情 報 の 活 用 4 給 付 可 能 サービスの 行 政 側 からの 通 知 2. 年 金 分 野 でできること 5

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

1 特 別 会 計 財 務 書 類 の 検 査 特 別 会 計 に 関 する 法 律 ( 平 成 19 年 法 律 第 23 号 以 下 法 という ) 第 19 条 第 1 項 の 規 定 に 基 づき 所 管 大 臣 は 毎 会 計 年 度 その 管 理 する 特 別 会 計 について 資 産

Transcription:

税 制 A to Z 2012 年 11 月 22 日 全 23 頁 年 金 制 度 の 改 正 法 の 解 説 と 意 見 2 2.5% 年 金 減 額 を 含 む 年 金 支 給 額 の 試 算 など 金 融 調 査 部 研 究 員 是 枝 俊 悟 [ 要 約 ] 2012 年 11 月 16 日 年 金 関 連 の 2 つの 法 律 が 国 会 にて 可 決 成 立 した 過 去 に 物 価 が 下 落 した 際 に 据 え 置 いてきた 年 金 支 給 額 の 特 例 分 について 2013 年 10 月 より 段 階 的 に 引 き 下 げが 行 われる 年 金 受 給 者 にとっては 支 給 額 の 2.5%の 引 き 下 げと なる なお 政 府 提 出 の 当 初 案 より 支 給 額 の 引 き 下 げは 1 年 遅 れになっている 本 稿 で はこれらを 考 慮 した 今 後 の 年 金 支 給 額 の 試 算 を 行 っている 所 得 の 低 い 高 齢 者 に 対 して 2015 年 10 月 より( 消 費 税 率 10%への 引 き 上 げを 条 件 とし て) 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 が 支 給 される 所 得 の 低 い 高 齢 者 に 対 する 支 援 にはなるが 所 得 を 世 帯 単 位 でなく 個 人 単 位 で 判 定 すること 遺 族 年 金 等 を 含 めないで 判 定 すること 等 必 ずしも 支 援 の 必 要 性 が 高 くない 高 齢 者 にも 給 付 金 が 支 給 される 可 能 性 がある このほか 一 体 改 革 関 連 法 として 8 月 に 成 立 した 年 金 制 度 の 改 正 も 併 せて 解 説 する 本 稿 は 拙 稿 年 金 制 度 の 改 正 法 の 解 説 と 意 見 (2012 年 8 月 24 日 発 表 )の 改 訂 版 である http://www.dir.co.jp/souken/research/report/law-research/tax/12082401tax.html Ⅰ.2012 年 11 月 に 可 決 成 立 した 年 金 制 度 の 改 正 法 2 1. 物 価 スライド 特 例 措 置 の 廃 止 ( 年 金 支 給 額 2.5% 引 き 下 げ) 3 2. 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 ( 低 年 金 者 への 福 祉 的 な 給 付 )の 支 給 8 3. 基 礎 年 金 国 庫 負 担 1/2 の 財 源 の 手 当 て 11 Ⅱ.2012 年 8 月 に 可 決 成 立 した 年 金 制 度 の 改 正 法 11 4. 受 給 資 格 期 間 の 短 縮 11 5. 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 の 一 元 化 14 6. 父 子 家 庭 への 遺 族 基 礎 年 金 の 支 給 19 7. 短 時 間 労 働 者 への 厚 生 年 金 の 加 入 拡 大 21 8. 産 休 中 の 厚 生 年 金 保 険 料 免 除 23 Ⅲ. 法 改 正 が 行 われなかった 項 目 (9. 高 所 得 者 の 年 金 支 給 額 の 減 額 ) 23 株 式 会 社 大 和 総 研 丸 の 内 オフィス 100-6756 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 一 丁 目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは 投 資 勧 誘 を 意 図 して 提 供 するものではありません このレポートの 掲 載 情 報 は 信 頼 できると 考 えられる 情 報 源 から 作 成 しておりますが その 正 確 性 完 全 性 を 保 証 する ものではありません また 記 載 された 意 見 や 予 測 等 は 作 成 時 点 のものであり 今 後 予 告 なく 変 更 されることがあります 大 和 総 研 の 親 会 社 である 大 和 総 研 ホールディングスと 大 和 証 券 は 大 和 証 券 グループ 本 社 を 親 会 社 とする 大 和 証 券 グループの 会 社 です 内 容 に 関 する 一 切 の 権 利 は 大 和 総 研 にあります 無 断 での 複 製 転 載 転 送 等 はご 遠 慮 ください

2 / 23 Ⅰ.2012 年 11 月 に 可 決 成 立 した 年 金 制 度 の 改 正 法 2012 年 11 月 16 日 年 金 関 連 の 2 つの 法 律 が 国 会 で 可 決 成 立 した これらの 法 律 ( 案 )は 社 会 保 障 税 一 体 改 革 を 構 成 するものとして 政 府 与 党 が 国 会 提 出 していたものであったが 野 党 の 要 求 により 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 に 関 する 特 別 委 員 会 では 審 議 せず 厚 生 労 働 委 員 会 で 審 議 されることとなっていた 年 金 関 連 では 受 給 資 格 期 間 の 短 縮 などを 行 う 法 律 と 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 の 一 元 化 を 行 う 法 律 は 消 費 税 率 を 10%に 引 き 上 げる 消 費 税 法 改 正 法 とともに 8 月 に 既 に 成 立 しており 11 月 の 法 律 成 立 で 社 会 保 障 税 一 体 改 革 の 年 金 関 連 の 法 改 正 が 一 通 り 済 んだ 2012 年 に 国 会 に 提 出 された 年 金 制 度 の 改 正 法 律 ( 案 )の 結 果 は 以 下 のとおりである 図 表 1 2012 年 に 国 会 に 提 出 された 年 金 制 度 の 改 正 法 律 ( 案 )の 結 果 法 律 の 名 称 番 号 主 な 内 容 結 果 施 行 日 国 民 年 金 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 (2 月 10 日 国 会 提 出 ) 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 の 支 給 に 関 する 法 律 (7 月 31 日 国 会 提 出 ) 公 的 年 金 制 度 の 財 政 基 盤 及 び 最 低 保 障 機 能 の 強 化 等 のための 国 民 年 金 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 (3 月 30 日 国 会 提 出 ) 1 3 2 物 価 スライド 特 例 水 準 の 廃 止 ( 年 金 支 給 額 2.5% 引 き 下 げ) 2012 年 度 2013 年 度 における 基 礎 年 金 国 庫 負 担 1/2の 財 源 の 手 当 て 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 ( 低 年 金 者 への 福 祉 的 な 給 付 )の 支 給 消 費 税 条 件 国 庫 負 担 11 月 成 立 2013 年 10 月 なし 減 る 11 月 成 立 本 文 で 説 明 なし 変 わらず 11 月 成 立 2015 年 10 月 10% 増 える 4 受 給 資 格 期 間 の 短 縮 8 月 成 立 2015 年 10 月 10% 増 える 6 父 子 家 庭 への 遺 族 基 礎 年 金 の 支 給 8 月 成 立 2014 年 4 月 8% 増 える 7 短 時 間 労 働 者 への 厚 生 年 金 の 加 入 拡 大 8 月 成 立 2016 年 10 月 なし 変 わらず 8 産 休 中 の 保 険 料 免 除 8 月 成 立 公 布 日 より2 年 以 内 なし 変 わらず 3 2014 年 度 以 後 の 基 礎 年 金 国 庫 負 担 1/2 の 財 源 の 手 当 て 8 月 成 立 2014 年 4 月 8% 変 わらず 被 用 者 年 金 制 度 の 一 元 化 等 を 図 るための 厚 生 年 金 保 険 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 5 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 の 一 元 化 8 月 成 立 2015 年 10 月 なし 変 わらず (4 月 13 日 国 会 提 出 ) 9 高 所 得 者 の 年 金 支 給 額 の 減 額 法 案 から 削 除 減 る ( 注 ) 番 号 は 本 レポートでの 項 目 番 号 のことである 消 費 税 条 件 とは 表 記 の 税 率 への 消 費 税 率 の 引 き 上 げの 施 行 が 当 該 年 金 制 度 の 改 正 の 施 行 のための 条 件 とされていることを 意 味 する( 本 文 参 照 ) ( 出 所 ) 大 和 総 研 金 融 調 査 部 制 度 調 査 課 作 成 なお 国 会 審 議 の 過 程 で 当 初 は 公 的 年 金 制 度 の 財 政 基 盤 及 び 最 低 保 証 機 能 の 強 化 等 のた めの 国 民 年 金 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 案 に 含 まれていた 高 所 得 者 の 支 給 額 の 減 額 が 法 案 から 削 除 された また 同 法 案 には 同 様 に 低 年 金 者 への 年 金 額 の 加 算 を 行 うことも 含 まれ ていたが これは 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 の 支 給 に 置 き 換 えられた 図 表 1 の 法 律 の 施 行 のために 消 費 税 率 の 8%または 10%への 引 き 上 げの 施 行 が 条 件 とされ ている 改 正 項 目 が 4 つある これらのうち 2014 年 度 以 後 の 基 礎 年 金 国 庫 負 担 1/2 の 財 源 の 手 当 て 以 外 は 国 庫 負 担 が 増 える 改 正 項 目 である もし 景 気 条 項 の 発 動 により 消 費 税 率 が 引 き 上 げられなければ 年 金 制 度 の 充 実 も 行 われないようになっている

3 / 23 1. 物 価 スライド 特 例 措 置 の 廃 止 ( 年 金 支 給 額 2.5% 引 き 下 げ) 改 正 法 の 内 容 2012 年 11 月 の 法 改 正 により 物 価 スライド 特 例 措 置 を 廃 止 することとなった 本 来 公 的 年 金 の 支 給 額 は 物 価 上 昇 時 には 増 額 し 物 価 下 落 時 には 減 額 することが 原 則 であ る(この 原 則 に 基 づく 支 給 額 を 本 来 水 準 と 呼 ぶ) しかしながら 過 去 に 物 価 が 下 落 した 際 にその 分 の 年 金 支 給 額 を 減 らさなかった 経 緯 から 2011 年 度 現 在 本 来 より 高 い 水 準 ( 特 例 水 準 )の 公 的 年 金 の 支 給 を 行 っている(この 措 置 を 物 価 スライド 特 例 措 置 と 呼 ぶ) 改 正 法 では 2013 年 度 より 3 年 かけて 段 階 的 に 年 金 支 給 額 を 縮 減 するものとし 2013 年 度 に おいては 10 月 より 支 給 額 を 1% 減 額 するものとしている 2014 年 4 月 にも 1% 減 額 し 2015 年 4 月 には 物 価 スライド 特 例 措 置 を 廃 止 ( 支 給 額 を 0.5% 減 額 )するものとしている なお この 間 に 2011 年 比 で 物 価 が 下 落 した 場 合 は その 下 落 率 分 の 年 金 支 給 額 の 減 額 も 併 せて 行 うものと している 当 初 の 法 案 では 2012 年 10 月 より 支 給 額 を 0.9% 減 額 2013 年 4 月 にさらに 0.8% 減 額 2014 年 4 月 からは 物 価 スライド 特 例 措 置 を 廃 止 ( 支 給 額 を 0.8% 減 額 )するものとなっていた 年 金 減 額 のスケジュールを 当 初 案 と 改 正 法 で 比 較 すると 以 下 の 図 表 2 のように 表 される 図 表 2 公 的 年 金 の 支 給 額 ( 本 来 水 準 と 比 べた 割 合 )の 推 移 +3.0% +2.5% +2.0% +1.5% +1.0% +0.5% 特 例 水 準 ( 改 正 法 ) 特 例 水 準 ( 当 初 案 ) 本 来 水 準 +0.0% ( 注 ) 本 来 水 準 の 変 動 がないと 仮 定 ( 出 所 ) 大 和 総 研 金 融 調 査 部 制 度 調 査 課 作 成 また 物 価 スライド 特 例 措 置 は 単 に 年 金 支 給 額 を 高 止 まりさせているだけでなく マクロ 経 済 スライドの 実 施 を 阻 む 性 質 も 持 っている(マクロ 経 済 スライドの 実 施 は 特 例 水 準 の 年 金 支 給 が 解 消 された 後 とされているため) マクロ 経 済 スライドとは 年 金 の 給 付 と 負 担 のバラ

4 / 23 ンスを 取 るために 原 則 として 前 年 の 物 価 上 昇 率 から 0.9% 程 度 1 を 差 し 引 いた 率 で 年 金 の 支 給 額 を 改 定 する 仕 組 みである(ただし 物 価 が 下 落 した 場 合 は マクロ 経 済 スライドは 行 われず 物 価 下 落 率 分 だけ 年 金 支 給 額 が 減 る) 2 改 正 法 による 物 価 スライド 特 例 措 置 の 廃 止 は マクロ 経 済 スライドが 実 施 されやすくなると いう 意 味 も 持 つ なお 年 金 の 物 価 スライド 特 例 措 置 と 同 様 に 物 価 が 下 落 しても 金 額 を 据 え 置 いてきた 児 童 扶 養 手 当 等 (ひとり 親 世 帯 や 障 害 者 に 対 する 手 当 )の 特 例 措 置 も 同 様 に 3 年 かけて 段 階 的 に 廃 止 するとしている( 支 給 額 の 1.7%の 引 き 下 げ) ちなみに これらの 手 当 にはマクロ 経 済 スラ イドは 導 入 されていないため この 改 正 は 単 純 な 支 給 額 の 引 き 下 げである マクロ 経 済 スライドへの 影 響 と 考 察 法 改 正 により 年 金 支 給 額 は 2013 年 10 月 から 1 年 半 をかけて 2.5% 減 額 される さらに 2015 年 度 以 後 はマクロ 経 済 スライドが 実 施 できるものと 予 想 される そもそも 従 来 の 規 定 と 法 改 正 後 の 規 定 において どのように 物 価 スライド 特 例 水 準 の 解 消 と マクロ 経 済 スライドの 導 入 が 規 定 されているかを 整 理 すると 以 下 の 図 表 3 のようにな る 図 表 3 年 金 額 の 改 定 ルール 実 際 の 年 金 支 給 額 本 来 水 準 の 改 定 ( 既 裁 定 者 ) 特 例 水 準 の 改 定 従 来 の 規 定 本 来 水 準 と 特 例 水 準 の 高 い 方 原 則 として 物 価 上 昇 率 で 改 定 する( 物 価 下 落 ならマイナス 改 定 ) 物 価 が 上 昇 しても 増 やさない ( 特 例 水 準 導 入 後 の) 過 去 最 低 の 物 価 水 準 を 下 回 った 場 合 下 回 った 率 だけマ イナス 改 定 法 改 正 後 の 規 定 本 来 水 準 と 特 例 水 準 の 高 い 方 (ただし 特 例 水 準 は2015 年 度 に 廃 止 ) 原 則 として 物 価 上 昇 率 で 改 定 する( 物 価 下 落 ならマイナス 改 定 ) 2013 年 度 (10 月 ) 2014 年 度 (4 月 )は 対 前 年 比 マイナス1%の 改 定 を 行 う 物 価 が 上 昇 しても 増 やさない ( 特 例 水 準 導 入 後 の) 過 去 最 低 の 物 価 水 準 を 下 回 った 場 合 下 回 った 率 を 上 記 のマイナ ス1%に 加 えてマイナス 改 定 ( 注 1) 2015 年 度 には 特 例 水 準 を 廃 止 する マクロ 経 済 スライドの 実 施 について 本 来 水 準 が 特 例 水 準 を 上 回 るこ とになる 年 度 から 名 目 ベースで 前 年 度 の 実 際 の 年 金 支 給 額 より 減 らない 範 囲 でマクロ 経 済 スライドを 実 施 する 12013 年 度 または2014 年 度 に 本 来 水 準 が 特 例 水 準 を 上 回 った 場 合 は その 年 度 以 後 マクロ 経 済 スライドを 実 施 21に 該 当 しない 場 合 でも2015 年 度 以 後 マクロ 経 済 スライドを 実 施 3マクロ 経 済 スライドを 実 施 する 場 合 は 名 目 ベースで 前 年 度 の 実 際 の 年 金 支 給 額 より 減 らない 範 囲 で 行 う ( 注 1)この 場 合 2015 年 4 月 までの 年 金 支 給 額 ( 名 目 ベース)の 引 き 下 げは2.5%を 超 える 場 合 がある ( 注 2)2013 年 度 または2014 年 度 に 本 来 水 準 が 特 例 水 準 を 上 回 ることになった 場 合 その 年 度 の 年 金 支 給 額 ( 名 目 ベース)は 前 年 度 以 上 となる この 場 合 2015 年 4 月 までの 年 金 支 給 額 ( 名 目 ベース)の 引 き 下 げ は 2.5%を 下 回 る 場 合 がある ( 出 所 ) 大 和 総 研 金 融 調 査 部 制 度 調 査 課 作 成 1 正 確 には 年 金 制 度 加 入 者 数 の 減 少 率 などをもとに 計 算 した 率 であり 年 々 差 し 引 く 率 は 異 なる 2 正 確 には 年 金 支 給 額 の 改 定 には 賃 金 上 昇 率 との 比 較 も 行 われるなどの 規 定 があるが ここでは 説 明 を 省 略 する

5 / 23 物 価 スライド 特 例 措 置 は 1999 年 ~2001 年 に 物 価 が 下 落 した 際 に その 分 の 年 金 支 給 額 を 減 らさなかった 経 緯 から 設 けられ 本 来 水 準 と 特 例 水 準 の 高 い 方 が 実 際 の 年 金 支 給 額 と なった この 特 例 水 準 の 解 消 については 2004 年 の 法 改 正 時 に 本 来 水 準 は 物 価 上 昇 率 で 改 定 さ れるのに 対 し 特 例 水 準 は 物 価 が 上 昇 しても 増 やさないものとすることで 対 応 することと していた 物 価 が 順 調 に 上 昇 していけば いずれは 本 来 水 準 が 特 例 水 準 を 上 回 り 特 例 水 準 による 年 金 支 給 は 終 了 するという 想 定 であった しかしながら 実 際 には 物 価 が 下 落 基 調 をたどったため 2012 年 度 現 在 も 本 来 水 準 は 特 例 水 準 に 達 していない そこで 法 改 正 により 2013 年 度 と 2014 年 度 は 特 例 水 準 を 1%ず つ 切 り 下 げていくことで 本 来 水 準 に 近 づけていき 2015 年 度 には 特 例 水 準 自 体 を 廃 止 することとした 3 また 年 金 の 給 付 と 負 担 のバランスを 保 つために 導 入 する 予 定 であった マクロ 経 済 スライ ド については 従 来 の 規 定 では 本 来 水 準 が 特 例 水 準 を 上 回 ることになる 年 度 から 実 施 することになっていた しかし 法 改 正 により 2015 年 度 以 後 は 特 例 水 準 そのものがな くなり マクロ 経 済 スライドが 実 施 できることになる ここでの 物 価 とは 消 費 税 込 みの 価 格 である 消 費 者 物 価 指 数 (CPI)により 判 断 される 消 費 税 率 を 2014 年 4 月 に 8% 2015 年 10 月 に 10%に 引 き 上 げる 消 費 税 法 改 正 法 が 成 立 しているた め 2014 年 から 2016 年 は 高 い 確 率 で 物 価 が 上 昇 することが 見 込 まれる この 消 費 税 込 みの 物 価 上 昇 率 から 0.9% 程 度 を 差 し 引 いて 2015 年 度 から 2017 年 度 の 年 金 支 給 額 の 改 定 が 行 われるも のと 予 想 される 日 本 経 済 中 期 予 測 (2012 年 7 月 )を 用 いた 年 金 支 給 額 の 試 算 これらの 法 改 正 と 大 和 総 研 経 済 調 査 部 経 済 社 会 研 究 班 日 本 経 済 中 期 予 測 (2012 年 7 月 ) (2012 年 7 月 30 日 発 表 ) 4 による 物 価 上 昇 率 等 の 予 測 を 用 いて 既 に 年 金 を 受 け 取 っている 者 ( 既 裁 定 者 5 )の 年 金 支 給 額 ( 名 目 ベース)を 試 算 したものが 次 の 図 表 4 である 3 なお 2013 年 度 または 2014 年 度 に 物 価 が 下 がった 場 合 は 本 来 水 準 は 物 価 下 落 率 でマイナス 改 定 するの に 対 し 特 例 水 準 は 1%に 物 価 下 落 率 を 加 えた 率 でマイナス 改 定 するため その 年 度 は 本 来 水 準 と 特 例 水 準 の 差 は 1% 縮 まることになる 4 http://www.dir.co.jp/souken/research/report/japan/mloutlook/12073001mloutlook.html 5 正 確 には 1999 年 度 時 点 の 既 裁 定 者 ( 既 に 年 金 を 受 け 取 っていた 者 )

6 / 23 図 表 4 既 裁 定 者 の 年 金 支 給 額 の 試 算 (2012 年 度 までは 実 績 値 ) 100 試 算 値 年 金 給 付 額 (1999 年 度 =100) 98 96 94 92 90 特 例 水 準 本 来 水 準 デフレ 下 スライド 88 19992000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 デフレ 下 スライド とは 仮 に2007 年 度 以 降 1 物 価 スライド 特 例 措 置 を 廃 止 し 2マクロ 経 済 スライドを 開 始 し 3 デフレ 下 でもマクロ 経 済 スライドを 行 うこととする( 物 価 下 落 時 には 物 価 下 落 率 にさらに 約 0.9%( 注 )を 加 えてマイ ナス 改 定 ) という3 点 の 改 正 を 行 ったとした 場 合 の 年 金 水 準 2013 年 度 ~2016 年 度 の 年 金 額 は 大 和 総 研 経 済 調 査 部 日 本 経 済 中 期 予 測 (2012 年 7 月 )をもとにした 試 算 値 2013 年 度 は 10 月 以 後 ( 引 き 下 げ 後 )の 水 準 ( 注 ) 計 算 上 は 毎 年 度 年 金 制 度 の 加 入 者 数 の 減 少 率 などを 算 出 した 上 で 差 し 引 くべき 率 を 試 算 している ( 出 所 ) 大 和 総 研 作 成 年 度 図 表 のうち 特 例 水 準 は 実 際 の 支 給 額 であり 2014 年 度 まではこの 水 準 で 年 金 が 支 給 さ れるが 法 改 正 により 2015 年 度 以 後 は 特 例 水 準 は 廃 止 され 本 来 水 準 の 年 金 が 支 給 さ れる 予 定 である 試 算 では 2013 年 度 (10 月 から) 2014 年 度 に 1%ずつ 年 金 支 給 額 が 引 下 げられた 後 2015 年 度 と 2016 年 度 の 支 給 額 は 物 価 上 昇 率 とマクロ 経 済 スライドを 反 映 して 前 年 度 と 同 水 準 (2012 年 度 と 比 べ 2% 低 い 水 準 で 一 定 )となる 見 込 みである より 詳 細 に 説 明 すると 2014 年 の 物 価 上 昇 率 は 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 もあり 2.3%となる 見 込 みで その 分 は 2015 年 度 の 年 金 支 給 額 に 反 映 されるが 同 時 に 2015 年 度 からマクロ 経 済 スライドが 実 施 されるために 結 果 として 2015 年 度 の 年 金 支 給 額 は 2014 年 度 と 同 じとなると いう 試 算 になった 2016 年 度 も 同 様 に 消 費 税 率 引 き 上 げによる 物 価 上 昇 分 をマクロ 経 済 スラ イドで 押 し 戻 して 年 金 支 給 額 は 2015 年 度 と 同 じになるという 試 算 結 果 であった 年 金 受 給 中 の 高 齢 者 から 見 れば 消 費 税 率 が 上 がってもその 分 はマクロ 経 済 スライドにより 相 殺 され 実 質 的 な 年 金 水 準 は 目 減 りすることになる もっとも 消 費 税 率 の 引 き 上 げを 世 代 間 の 公 平 性 の 観 点 から 高 齢 者 も 含 めて 社 会 保 障 財 源 を 集 めるために 行 うとするならば 消 費 税 率 引 き 上 げによる 物 価 上 昇 分 は 年 金 支 給 額 の 改 定 の 際 には 除 いて 考 えるべきかもしれない しかしながら 年 金 支 給 額 の 改 定 の 際 に 物 価 上 昇 率 から 消 費 税 率 引 き 上 げ 分 の 影 響 を 除 くと 今 度 は 物 価 上 昇 率 が 低 くなるためにマクロ 経 済 スラ イドが 実 施 できなくなる 可 能 性 が 高 いものと 考 えられる

7 / 23 法 改 正 後 も マクロ 経 済 スライドにより 年 金 支 給 額 を 約 0.9% 差 し 引 く 措 置 は 物 価 下 落 時 に は 行 えず 物 価 上 昇 率 が 0.9% 未 満 の 場 合 には 物 価 上 昇 率 の 範 囲 でしか 行 えない マクロ 経 済 ス ライドも 行 い かつ 消 費 税 率 の 引 き 上 げ 分 は 年 金 支 給 額 に 反 映 しないようにするには デフレ または 低 インフレの 下 でもマクロ 経 済 スライドを 行 える( 物 価 上 昇 時 には 物 価 上 昇 率 から 毎 年 約 0.9%を 差 し 引 き 物 価 下 落 時 には 物 価 下 落 率 に 約 0.9%を 加 えてマイナス 改 定 する 仕 組 みと する)よう 法 改 正 する 必 要 があるだろう デフレ 下 のマクロ 経 済 スライド 実 施 の 必 要 性 図 表 4 の デフレ 下 スライド は もし 2007 年 度 以 後 1 物 価 スライド 特 例 措 置 を 廃 止 し 2マクロ 経 済 スライドを 開 始 し 3デフレ 下 でもマクロ 経 済 スライドを 行 うこととする とい う 3 点 の 改 正 を 行 っていたと 仮 定 した 場 合 の 年 金 額 である 2004 年 時 点 の 政 府 の 想 定 ( 基 準 ケース)では 2007 年 度 以 後 はマクロ 経 済 スライドが 実 施 さ れることとなっていた 毎 年 少 子 高 齢 化 は 進 行 していくため 年 金 財 政 の 観 点 から 見 れば 物 価 上 昇 率 に 関 係 なくマクロ 経 済 スライドを 行 うべきであり この 考 え 方 をとっていたと 仮 定 し た 場 合 の 年 金 の 支 給 水 準 を 示 すものが 図 表 4 の デフレ 下 スライド である 1999 年 度 を 100 とすると 2012 年 度 現 在 の 年 金 支 給 額 ( 特 例 水 準 )は 97.82 本 来 水 準 は 95.38 である この 特 例 水 準 と 本 来 水 準 の 2.5%の 差 をもって 2.5%の 払 い 過 ぎ と 言 われている しかし デフレ 下 スライドの 水 準 は 92.01 であり これと 比 較 すれば 現 在 の 年 金 支 給 額 は 6.3% の 払 い 過 ぎ とも 考 えられる 過 去 5 年 間 を 振 り 返 ると デフレ 下 ではマクロ 経 済 スライドを 行 えない 仕 組 みであった( 物 価 下 落 率 分 のみの 引 き 下 げに 留 まり さらに 約 0.9%を 差 し 引 くことができなかった)がために 名 目 ベースでの 年 金 支 給 額 が 高 止 まりする 状 況 となり その 分 の 負 担 は 潜 在 的 な 将 来 世 代 の 保 険 料 増 や 給 付 減 につながるものとなっている マクロ 経 済 スライドの 実 施 が 遅 れれば 遅 れるほど 年 金 制 度 による 世 代 間 格 差 ( 先 に 生 まれ た 世 代 ほど 年 金 制 度 による 受 益 が 大 きく 後 に 生 まれた 世 代 ほど 負 担 が 大 きいこと)が 拡 大 す ることになる 6 もっとも 現 在 年 金 を 受 給 中 の 世 代 はその 親 の 扶 養 を 社 会 保 障 制 度 の 枠 外 で 私 的 に 行 ってき た 面 や 平 均 寿 命 の 伸 長 が 予 想 以 上 であった 面 などもあり 現 在 の 年 金 制 度 にある 程 度 の 世 代 間 格 差 が 生 じていることは 必 ずしも 問 題 視 すべきものではないかもしれない 7 しかしながら 2004 年 時 点 の 見 通 しと 比 べてマクロ 経 済 スライドが 実 施 できなかったことに より 世 代 間 格 差 が 拡 大 傾 向 にあること および 今 後 もマクロ 経 済 スライドの 実 施 が 遅 れると 世 代 間 格 差 が 拡 大 することについては 問 題 とすべきではないかと 筆 者 は 思 う 筆 者 は 世 代 間 の 公 平 性 の 観 点 からも マクロ 経 済 スライドの 実 施 は 必 須 であり デフレ 下 でもマクロ 経 済 スライドを 行 えるようにする 法 改 正 が 必 要 であると 考 えている 6 増 島 稔 森 重 彰 浩 年 金 の 受 益 と 負 担 に 対 するデフレの 影 響 ( 内 閣 府 経 済 社 会 総 合 研 究 所 ESRI Discussion Paper Series No.282 2012 年 1 月 )を 参 照 http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis290/e_dis282.html 7 厚 生 労 働 省 社 会 保 障 の 正 確 な 理 解 についての1つのケーススタディ~ 社 会 保 障 制 度 の 世 代 間 格 差 に 関 する 論 点 ~ ( 第 5 回 社 会 保 障 の 教 育 推 進 に 関 する 検 討 会 における 資 料 平 成 24 年 8 月 24 日 ) 参 照

8 / 23 2. 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 ( 低 年 金 者 への 福 祉 的 な 給 付 )の 支 給 改 正 法 の 内 容 改 正 法 により 所 得 の 額 が 一 定 以 下 の 老 齢 基 礎 年 金 障 害 基 礎 年 金 遺 族 基 礎 年 金 の 受 給 者 に 対 して 福 祉 的 な 給 付 措 置 として 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 が 支 給 される 具 体 的 な 制 度 設 計 は 次 のようにされている 所 得 の 額 が 一 定 の 基 準 ( 注 1)を 下 回 る 老 齢 基 礎 年 金 の 受 給 者 に 老 齢 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 ( 国 民 年 金 の 保 険 料 納 付 済 期 間 及 び 保 険 料 免 除 期 間 を 基 礎 )を 支 給 する 1 基 準 額 ( 月 額 5 千 円 )に 納 付 済 期 間 ( 月 数 )/480 を 乗 じて 得 た 額 の 給 付 2 免 除 期 間 に 対 応 して 老 齢 基 礎 年 金 の 1/6 相 当 を 基 本 とする 給 付 所 得 の 逆 転 を 生 じさせないよう 上 記 の 所 得 基 準 を 上 回 る 一 定 範 囲 の 者 ( 注 2)に 上 記 1 に 準 じる 補 足 的 老 齢 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 ( 国 民 年 金 の 保 険 料 納 付 済 期 間 を 基 礎 )を 支 給 す る 一 定 の 障 害 基 礎 年 金 または 遺 族 基 礎 年 金 の 受 給 者 に 障 害 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 または 遺 族 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 を 支 給 する ( 支 給 額 : 月 額 5 千 円 (1 級 の 障 害 基 礎 年 金 受 給 者 は 月 額 6.25 千 円 )) これらの 給 付 金 には 公 租 公 課 が 禁 じられる ( 注 1) 課 税 対 象 となる 年 金 額 と 前 年 の 所 得 との 合 計 額 をベースとし 政 令 で 定 めるものとされている 厚 生 労 働 省 の 資 料 では 住 民 税 が 家 族 全 員 非 課 税 で 前 年 の 年 金 収 入 +その 他 所 得 の 合 計 額 が 老 齢 基 礎 年 金 満 額 (2015 年 度 で 77 万 円 ) 以 下 であること と 説 明 されている ( 注 2) 政 令 で 定 めるものとされている 改 正 法 では 施 行 日 を 消 費 税 率 10%への 引 き 上 げが 施 行 された 日 (すなわち 2015 年 10 月 1 日 )としている 当 初 法 案 からの 修 正 点 当 初 の 政 府 提 出 法 案 では 低 年 金 者 への 年 金 加 算 として 年 金 額 そのものを 増 やす 措 置 が 想 定 されていた 民 主 党 自 民 党 公 明 党 の 3 党 の 協 議 により 改 正 法 では 年 金 額 の 加 算 ではなく 年 金 とは 別 の 福 祉 的 な 給 付 という 位 置 づけに 変 わった また 加 算 ( 給 付 )の 金 額 についても 当 初 の 政 府 提 出 法 案 では 一 定 以 下 の 年 金 額 (およ び 所 得 額 )の 者 に 対 して 定 額 ( 月 額 6 千 円 )を 加 算 する 案 となっていた これに 対 して 改 正 法 では 基 準 額 ( 月 額 5 千 円 )に 納 付 済 期 間 の 月 数 /480 を 乗 じて 給 付 額 を 決 めるものと なっており これまで 保 険 料 を 納 付 してきた 者 に 手 厚 い 給 付 を 行 う 制 度 設 計 に 変 わった なお 免 除 期 間 に 応 じた 給 付 については 年 金 の 加 算 か 福 祉 的 な 給 付 かの 位 置 づけは 変 わったが 金 額 については 同 じである

9 / 23 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 の 試 算 例 えば 2012 年 8 月 現 在 老 齢 基 礎 年 金 の 満 額 は 年 78 万 6,500 円 である この 年 金 額 をベー スとして 1941 年 度 に 生 まれ 納 付 履 歴 の 異 なるAさん~Fさんの 6 人 の 年 金 受 給 者 が 受 け 取 る 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 の 試 算 を 行 った 8 図 表 5 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 の 試 算 納 付 済 の 月 数 全 額 免 除 の 月 数 未 納 未 加 入 の 月 数 現 在 の 年 金 額 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 納 付 済 期 間 に 応 じた 給 付 免 除 期 間 に 応 じた 給 付 年 金 + 給 付 金 Aさん 480 0 0 786,500 逆 転 現 象 防 止 の 給 付 が 行 われる Bさん 400 0 80 655,400 50,000 0 705,400 Cさん 360 120 0 655,400 45,000 32,771 733,171 Dさん 240 240 0 524,300 30,000 65,542 619,842 Eさん 240 120 120 458,800 30,000 32,771 521,571 Fさん 0 480 0 262,200 0 131,083 393,283 ( 注 )いずれも1941 年 度 生 まれの 者 とする 2012 年 8 月 現 在 の 年 金 額 をもとにした 試 算 である( 施 行 され る2015 年 10 月 までには 物 価 スライド 特 例 水 準 の 解 消 により2.5%の 年 金 額 引 き 下 げが 予 定 され ているが この 点 は 考 慮 していない) いずれも 厚 生 年 金 等 の 支 給 はないものとし 国 民 年 金 の 振 替 加 算 の 対 象 ではなく 年 金 以 外 の 所 得 はないものとする 金 額 はすべて 年 額 円 単 位 であ る ( 出 所 ) 法 令 等 に 基 づき 大 和 総 研 金 融 調 査 部 制 度 調 査 課 試 算 現 在 40 年 (480 ヵ 月 )すべて 納 付 済 期 間 である 者 に 対 して 年 78 万 6,500 円 の 満 額 の 老 齢 基 礎 年 金 が 支 払 われている(A さん) 全 額 免 除 期 間 は 年 金 給 付 額 に 1/3 だけ 反 映 される したがって 40 年 (480 ヵ 月 )すべて 全 額 免 除 期 間 である 者 に 対 しては 満 額 の 1/3 年 26 万 2,200 円 の 老 齢 基 礎 年 金 が 支 払 われて いる(F さん) 未 納 未 加 入 ( 免 除 とは 異 なる)の 期 間 は 年 金 額 にはまったく 反 映 されない 400 ヵ 月 保 険 料 を 納 付 し 80 ヵ 月 未 納 とした B さんは 400 ヵ 月 分 の 保 険 料 納 付 実 績 のみで 年 金 額 を 判 定 する 360 ヵ 月 保 険 料 を 納 付 し 120 ヵ 月 全 額 免 除 を 受 けた C さんは 360+120 1/3=400 で 400 ヵ 月 保 険 料 を 納 付 した 者 と 同 じ 扱 いとなる B さんと C さんの 現 在 の 年 金 額 は 同 じ 年 65 万 5,400 円 である 同 じ 240 ヵ 月 保 険 料 を 納 付 した D さんと E さんを 比 べると 未 納 未 加 入 の 期 間 がなく 全 額 免 除 期 間 が 多 い D さんの 方 が 現 在 の 年 金 額 が 多 くなっている このように 現 在 の 年 金 額 は 納 付 済 期 間 が 短 いと 年 金 額 が 少 なくなるが 申 請 を 行 い 全 額 免 除 を 受 けた 者 については 1/3 が 年 金 額 に 反 映 される 保 険 料 を 多 く 払 った 者 ほど また 免 除 手 続 きを 滞 りなく 行 った 者 ほど 年 金 額 が 多 くなる 仕 組 みとなっている 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 の 額 を 見 ると 納 付 済 期 間 に 応 じた 給 付 は 400 ヵ 月 納 付 した B さ 8 1961 年 度 に 国 民 年 金 制 度 の 運 用 が 開 始 され 国 民 皆 年 金 が 実 現 した 1941 年 度 に 生 まれた 者 は 1961 年 度 に 20 歳 となり 40 年 間 国 民 年 金 に 加 入 している 1940 年 度 以 前 に 生 まれた 者 については 国 民 年 金 に 加 入 で きる 期 間 が 40 年 より 短 くなる( 加 入 できる 期 間 についてすべて 保 険 料 を 納 付 していれば 満 額 の 老 齢 基 礎 年 金 が 支 給 される 仕 組 みとなっている)

10 / 23 んが 年 5 万 円 360 ヵ 月 納 付 した C さんが 年 4 万 5,000 円 240 ヵ 月 納 付 した D さんと E さんが 年 3 万 円 となっている 免 除 期 間 に 応 じた 給 付 は 120 ヵ 月 全 額 免 除 を 受 けた C さんと E さんが 年 3 万 2,771 円 240 ヵ 月 全 額 免 除 を 受 けた D さんが 年 6 万 5,542 円 480 ヵ 月 全 額 免 除 を 受 けた F さんが 年 13 万 1,083 円 となっている 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 だけで 見 ると 納 付 済 期 間 1 ヵ 月 あたりの 納 付 済 期 間 に 応 じた 給 付 よりも 全 額 免 除 期 間 1 ヵ 月 あたりの 免 除 期 間 に 応 じた 給 付 の 方 が 多 い 同 じく 240 ヵ 月 ず つを 納 付 済 期 間 と 全 額 免 除 期 間 としている D さんにおいて 納 付 済 期 間 に 応 じた 給 付 が 年 3 万 円 であるのに 対 し 免 除 期 間 に 応 じた 給 付 は 年 6 万 5,542 円 である したがって この 6 人 の 例 の 中 では 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 が 最 も 多 いのは 480 ヵ 月 すべて 全 額 免 除 期 間 である F さん( 年 13 万 1,083 円 )となっている もっとも 480 ヵ 月 すべて 全 額 免 除 期 間 である F さんの 年 金 + 給 付 金 ( 年 39 万 3,283 円 )よ り 240 ヵ 月 ずつ 納 付 済 期 間 全 額 免 除 期 間 としている D さんの 年 金 + 給 付 金 の 額 ( 年 61 万 9,842 円 )の 方 が 多 い また 240 ヵ 月 ずつ 納 付 済 期 間 全 額 免 除 期 間 としている D さんの 年 金 + 給 付 金 の 額 よりも 480 ヵ 月 すべて 納 付 済 期 間 である A さんの 年 金 額 ( 年 78 万 6,500 円 )の 方 が 多 い 年 金 と 給 付 金 を 合 わせた 金 額 で 見 ると 保 険 料 をより 長 い 期 間 納 付 した 者 の 方 が 免 除 を より 長 い 期 間 受 けた 者 より 多 い 金 額 になっている すなわち 年 金 と 給 付 金 を 合 わせた 金 額 で 見 ると 納 付 済 期 間 が 長 い 者 免 除 期 間 が 長 い 者 ほど 金 額 が 多 くなる 設 計 となっており 現 行 の 年 金 制 度 を 踏 まえた 給 付 金 の 設 計 になっている ものと 言 える なお 納 付 済 期 間 に 応 じた 給 付 と 免 除 期 間 に 応 じた 給 付 だけだとすると 480 ヵ 月 す べて 納 付 済 期 間 である A さんは 例 えば 479 ヵ 月 が 納 付 済 期 間 で 1 ヵ 月 が 全 額 免 除 期 間 である 者 よりも 年 金 + 給 付 金 の 額 が 少 なくなる 逆 転 現 象 が 生 じてしまう このようなことがないよう A さんには 補 足 的 老 齢 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 が 給 付 されるものとされている( 詳 細 は 政 省 令 で 定 めることとされている) 制 度 設 計 の 問 題 点 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 は 個 人 単 位 で 支 給 を 行 うものとなっている 世 帯 全 員 が 住 民 税 非 課 税 という 要 件 はあるが 厚 生 年 金 受 給 者 ( 現 役 時 代 会 社 員 であった 者 )の 年 金 支 給 額 の 平 均 額 では 住 民 税 は 課 税 されない このため 夫 婦 で 合 わせればある 程 度 年 金 額 がある 世 帯 であって も 妻 の 分 だけ 見 れば 低 年 金 であれば 給 付 が 行 われる 設 計 になっている 例 えば 夫 の 年 金 額 が 180 万 円 であり 妻 の 年 金 額 が 60 万 円 である 平 均 的 な 年 金 額 である 夫 婦 にも 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 は 支 給 される 9 また 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 は 課 税 対 象 の 年 金 額 と 前 年 所 得 をベースに 支 給 の 可 否 を 判 断 するものとされている したがって 非 課 税 の 遺 族 年 金 や 障 害 年 金 の 支 給 額 が 高 額 であったと 9 2011 年 度 の 老 齢 厚 生 年 金 ( 老 齢 基 礎 年 金 分 を 含 む)の 支 給 額 の 平 均 ( 夫 分 )は 月 15.2 万 円 ( 年 182.4 万 円 ) 老 齢 基 礎 年 金 の 支 給 額 の 平 均 ( 妻 分 )は 月 5.3 万 円 ( 年 63.6 万 円 )であり 夫 婦 合 計 の 年 金 支 給 額 は 月 20.5 万 円 ( 年 246 万 円 ) 程 度 である( 日 本 年 金 機 構 日 本 年 金 機 構 の 主 要 統 計 ( 平 成 23 年 度 版 ) による)

11 / 23 しても 老 齢 基 礎 年 金 の 額 が 一 定 額 以 下 であれば 支 給 される 設 計 となっている 筆 者 は 課 税 非 課 税 を 問 わずすべての 年 金 収 入 を 判 定 対 象 に 入 れ かつ 世 帯 単 位 で 判 定 を 行 うことにより 真 に 支 援 が 必 要 な 世 帯 に 対 して 重 点 的 な 支 援 が 行 えるように 制 度 設 計 すべきと 考 えている 3. 基 礎 年 金 国 庫 負 担 1/2 の 財 源 の 手 当 て 2009 年 度 以 後 基 礎 年 金 の 国 庫 負 担 割 合 ( 基 礎 年 金 給 付 額 のうち 国 庫 が 負 担 する 割 合 )は 1/2 と 定 められている しかしながら 2009 年 度 以 後 一 般 会 計 から 支 出 している 金 額 は 約 36.5% であり その 差 の 約 2.5 兆 円 分 は 長 らく 恒 久 財 源 が 不 足 している 状 況 にあった 2012 年 8 月 の 法 改 正 2012 年 8 月 10 日 に 公 的 年 金 制 度 の 財 政 基 盤 及 び 最 低 保 障 機 能 の 強 化 等 のための 国 民 年 金 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 が 参 議 院 で 可 決 成 立 し 8 月 22 日 に 公 布 された これにより 2014 年 度 以 後 においては 消 費 税 率 引 き 上 げにより 得 られる 税 収 により 基 礎 年 金 国 庫 負 担 1/2 の 恒 久 財 源 が 確 保 されることとなった ただし この 改 正 の 施 行 日 は 消 費 税 率 8%への 引 き 上 げが 施 行 された 日 とされているため もし 景 気 条 項 の 発 動 により 消 費 税 率 が 8%へ 引 き 上 げられなかった 場 合 は 基 礎 年 金 国 庫 負 担 1/2 の 恒 久 財 源 も 確 保 されないこととなる 2012 年 11 月 の 法 改 正 2012 年 度 および 2013 年 度 の 基 礎 年 金 国 庫 負 担 1/2 の 財 源 については 2012 年 11 月 16 日 に 参 議 院 にて 可 決 成 立 した 国 民 年 金 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 に より 確 保 された 当 初 の 政 府 提 出 法 案 では 2012 年 度 分 の 財 源 については 年 金 交 付 国 債 によって 賄 うも のとされていた その 後 国 会 での 修 正 により 年 金 交 付 国 債 でなく 消 費 税 増 税 により 得 ら れる 収 入 を 償 還 財 源 とする 年 金 特 例 国 債 (つなぎ 国 債 ) により 賄 うものとされた また 2012 年 度 分 だけでなく 2013 年 度 分 の 財 源 についても 年 金 特 例 国 債 (つなぎ 国 債 ) で 賄 う ものとされた なお 景 気 条 項 の 発 動 により 消 費 税 率 の 引 き 上 げが 2014 年 4 月 に 行 われなかった 場 合 におけ る 2014 年 度 の 基 礎 年 金 国 庫 負 担 1/2 の 財 源 については 2012 年 8 月 および 11 月 の 法 改 正 に おいて 定 められなかった Ⅱ.2012 年 8 月 に 可 決 成 立 した 年 金 制 度 の 改 正 法 4. 受 給 資 格 期 間 の 短 縮 改 正 内 容 法 改 正 により 年 金 の 受 給 資 格 を 得 るために 必 要 となる 保 険 料 納 付 済 期 間 が 原 則 25 年 から 10 年 に 短 縮 されることとなった

12 / 23 現 行 の 国 民 年 金 法 等 では 公 的 年 金 を 受 給 するためには 保 険 料 納 付 済 期 間 保 険 料 免 除 期 間 合 算 対 象 期 間 10 の 合 計 ( 以 下 受 給 資 格 期 間 )が 25 年 (300 ヵ 月 ) 以 上 なければならない ことになっている 法 改 正 により 受 給 資 格 期 間 が 10 年 (120 ヵ 月 ) 以 上 あれば 公 的 年 金 を 受 給 できるように なる 現 在 無 年 金 である 高 齢 者 に 対 しても 施 行 時 に 受 給 資 格 期 間 が 10 年 (120 ヵ 月 ) 以 上 あ れば 公 的 年 金 を 受 給 できるようになる 施 行 日 は 消 費 税 率 10%への 引 き 上 げが 施 行 された 日 (すなわち 2015 年 10 月 1 日 )とし ている ただし 年 金 受 給 額 についての 規 定 は 改 正 されない すなわち 保 険 料 納 付 済 期 間 に 比 例 し て 基 礎 年 金 ( 国 民 年 金 )が 支 給 され 勤 務 期 間 の 平 均 報 酬 額 に 比 例 して 厚 生 年 金 が 支 給 される 現 行 の 仕 組 みが 維 持 される したがって 例 えば 保 険 料 納 付 済 期 間 が 10 年 である 者 に 支 給 され る 老 齢 基 礎 年 金 は 保 険 料 納 付 済 期 間 が 40 年 である 者 の 1/4 である 現 在 無 年 金 の 高 齢 者 への 影 響 と 考 察 法 改 正 により 受 給 資 格 期 間 が 10 年 以 上 25 年 未 満 の 高 齢 者 には 公 的 年 金 が 支 給 されるよ うになる 厚 生 労 働 省 の 資 料 によると 65 歳 以 上 の 無 年 金 の 高 齢 者 ( 約 42 万 人 )のうち 40% ほど 約 17 万 人 が 法 改 正 により 年 金 が 支 給 されるようになる 11 なお 2010 年 度 現 在 約 74 万 人 の 高 齢 者 が 生 活 保 護 を 受 給 している 12 生 活 保 護 者 のうち 公 的 年 金 を 受 給 している 者 の 数 は 延 べ 人 数 で 約 54 万 人 である 13 すなわち 少 なくとも 約 20 万 人 の 高 齢 者 が 無 年 金 でありながら 生 活 保 護 を 受 けていると 言 える 生 活 保 護 は 本 人 の 収 入 に 年 金 を 含 めた 他 のあらゆる 制 度 からの 給 付 を 足 した 上 で なお 最 低 限 の 生 活 費 に 足 りない 場 合 に ( 財 産 状 況 等 の 審 査 を 経 て) 差 額 が 給 付 されるという 制 度 で ある 生 活 保 護 を 受 けている 無 年 金 の 高 齢 者 の 多 くは 法 改 正 により 年 金 が 支 給 されるようになっ ても なお 収 入 が 最 低 限 の 生 活 費 に 足 りず 生 活 保 護 を 受 けることに 変 わりないものと 考 えら れる この 場 合 年 金 が 支 給 されてもその 分 だけ 生 活 保 護 費 が 減 るため 生 活 水 準 はまったく 変 わらないことになる 財 政 的 な 影 響 としてもプラスマイナスゼロである 一 方 で 生 活 保 護 を 受 けていない 無 年 金 の 高 齢 者 については 法 改 正 により 年 金 が 支 給 され るようになると その 分 だけ 収 入 が 増 え 生 活 水 準 が 向 上 することになる しかし 生 活 保 護 を 受 けていない 高 齢 者 というのは 収 入 や 資 産 がある 程 度 以 上 あるか または 親 族 等 からの 支 援 を 受 けているかのいずれかであろう 14 このうち 親 族 等 から 支 援 を 受 けている 者 については 支 援 する 親 族 等 の 側 から 見 れば そ 10 年 金 額 には 反 映 されないが 受 給 資 格 期 間 には 算 入 される 期 間 のこと 例 えば 学 生 納 付 特 例 制 度 を 適 用 し た 期 間 (その 後 追 納 を 行 わなかった 場 合 )は 合 算 対 象 期 間 となる 11 厚 生 労 働 省 による 当 該 法 ( 案 )の 説 明 資 料 では 2007 年 の 旧 社 会 保 険 庁 調 べとして 無 年 金 高 齢 者 の 分 布 状 況 が 示 されていた 12 厚 生 労 働 省 平 成 22 年 被 保 護 者 全 国 一 斉 調 査 による 13 厚 生 労 働 省 平 成 22 年 被 保 護 者 全 国 一 斉 調 査 による 複 数 の 年 金 を 受 給 している 者 は 重 複 計 上 されており また 65 歳 未 満 で 遺 族 年 金 や 障 害 年 金 を 受 給 している 者 も 計 上 されている 14 そのいずれでもない( 収 入 資 産 も 少 なく 親 族 等 からの 支 援 も 受 けていない) 場 合 は 本 来 生 活 保 護 の 対 象 となるべき 者 である

13 / 23 の 高 齢 者 が 無 年 金 であるがために 公 的 制 度 で 支 えられない 分 を 私 的 に 支 えているものと 言 え る 無 年 金 の 高 齢 者 本 人 については 過 去 に 保 険 料 を 未 納 としたり 手 続 きを 怠 ったりしたという 過 失 があるかもしれないが その 高 齢 者 を 支 える 親 族 等 にその 責 任 を 求 めるというのは 酷 であ ろう 無 年 金 の 高 齢 者 に 年 金 が 支 給 されることにより その 高 齢 者 を 支 える 親 族 等 の 負 担 が 軽 減 される 効 果 についてはこの 改 正 の 評 価 すべき 点 と 言 える 一 方 収 入 や 資 産 がある 程 度 以 上 ある 無 年 金 者 に 対 する 年 金 の 支 給 は この 改 正 の 目 的 であ る 公 的 年 金 制 度 の 最 低 保 障 機 能 の 強 化 に 照 らして 考 えると 適 当 ではないように 思 える これらのことを 考 慮 すると 法 改 正 により 新 たに 年 金 を 支 給 される 者 については 収 入 や 資 産 が 一 定 以 下 であることなどを 条 件 とすべきものと 筆 者 は 考 えている 現 役 世 代 への 影 響 と 考 察 現 在 年 金 保 険 料 を 納 付 中 の 現 役 世 代 にとっては 法 改 正 により 年 金 受 給 権 獲 得 のためのハー ドルが 下 がり 保 険 料 納 付 のインセンティブが 減 退 する 可 能 性 がある 15 もっとも そもそも 年 金 保 険 料 の 納 付 は 権 利 ではなく 義 務 であり 国 は 滞 納 者 に 対 して 督 促 や 財 産 の 差 し 押 さえなどを 行 うことが 可 能 である しかし 現 状 国 は 滞 納 者 に 対 する 督 促 や 財 産 の 差 し 押 さえを 十 分 に 行 っていない 状 況 にある 16 これは 事 実 上 年 金 保 険 料 を 納 めるか 否 かを 国 民 が 選 択 できるような 状 況 にあるとも 言 える このような 状 況 下 で 受 給 資 格 期 間 が 短 縮 されれば 保 険 料 を 納 付 する 者 が 減 るものと 筆 者 は 考 えている そもそも 受 給 資 格 期 間 の 短 縮 は 何 のために 行 う 施 策 なのだろうか 経 済 的 に 保 険 料 納 付 が 困 難 であれば 国 民 年 金 保 険 料 の 全 額 または 一 部 の 免 除 を 受 けることが 可 能 である 未 納 者 の うち 免 除 の 対 象 となりうる 者 については 国 は 積 極 的 に 免 除 を 適 用 すべきである 一 方 保 険 料 納 付 が 可 能 な 者 に 対 しては 国 は 督 促 や 差 し 押 さえなどを 行 って 保 険 料 を 徴 収 すべきである 筆 者 としては 保 険 料 納 付 中 の 現 役 世 代 には 国 は 保 険 料 を 納 付 させる( 徴 収 する)か 免 除 を 受 けさせるかして そもそも 受 給 資 格 期 間 が 短 い 者 が 現 れないようにすべきであると 考 えて いる 在 留 外 国 人 への 影 響 法 改 正 により 今 後 は 在 留 外 国 人 に 対 して 年 金 が 支 給 されるケースが 増 えるものと 考 えられ る 現 行 の 受 給 資 格 期 間 の 25 年 (300 ヵ 月 )は 日 本 に 永 住 するつもりはない 在 留 外 国 人 にと っては 長 すぎる 期 間 とも 言 える だが 日 本 に 25 年 以 上 住 むつもりがなかったとしても 日 本 に 居 住 している 者 は 法 律 により 国 籍 を 問 わず 国 民 年 金 や 厚 生 年 金 の 加 入 保 険 料 納 付 を 義 務 付 けられる 17 年 金 の 支 給 は 国 籍 や 居 住 地 を 問 わず 行 われるが 受 給 資 格 期 間 を 満 たしてい ない 場 合 は 支 給 されない このため 在 留 外 国 人 については 年 金 保 険 料 が 掛 け 捨 て にな 15 10 年 ならば 払 ってもよいと 考 えることにより 保 険 料 納 付 のインセンティブが 増 加 すると 指 摘 する 者 もいる 16 2011 年 度 の 国 民 年 金 保 険 料 の 最 終 催 告 は 30,045 件 督 促 は 17,615 件 差 し 押 さえは 5,012 件 であった な お 2010 年 度 2011 年 度 の 24 ヵ 月 間 すべての 保 険 料 を 未 納 とした 者 は 320 万 人 である これに 対 して 国 が 最 終 催 告 督 促 差 し 押 さえを 行 った 件 数 は 1% 程 度 にすぎない (これらの 数 値 の 出 所 は 厚 生 労 働 省 日 本 年 金 機 構 平 成 23 年 度 の 国 民 年 金 保 険 料 の 納 付 状 況 と 今 後 の 取 組 等 について による) 17 ただし 社 会 保 障 協 定 を 結 んでいる 国 (2012 年 11 月 1 日 現 在 米 英 独 仏 など 14 ヵ 国 と 発 効 済 )の 国 籍 を 持 つ 者 については 母 国 の 社 会 保 障 制 度 の 適 用 を 受 ける( 日 本 の 社 会 保 障 制 度 を 適 用 しない)か 日 本 の 社 会 保 障 制 度 を 適 用 し 年 金 の 受 給 資 格 期 間 については 母 国 の 受 給 資 格 期 間 と 通 算 するかの 扱 いを 受 けることができる

14 / 23 ってしまうケースが 多 いものとされている 18 短 縮 後 の 受 給 資 格 期 間 の 10 年 (120 ヵ 月 )となると 在 留 外 国 人 にとって 年 金 の 受 給 資 格 を 取 得 できる 可 能 性 が 高 まるものと 考 えられる 現 状 年 金 保 険 料 が 掛 け 捨 て になるがゆえ に 保 険 料 を 未 納 としている 在 留 外 国 人 も 多 いと 言 われる 法 改 正 により 在 留 外 国 人 にとって 保 険 料 を 納 付 するインセンティブが 生 まれ 保 険 料 納 付 率 も 向 上 が 見 込 まれるだろう なお 受 給 資 格 期 間 には 保 険 料 納 付 済 期 間 だけでなく 保 険 料 免 除 期 間 も 含 まれる また 保 険 料 免 除 は 国 籍 によらず 所 得 等 の 要 件 を 満 たせば 受 けられる このため 低 所 得 の 在 留 外 国 人 が 保 険 料 免 除 期 間 を 10 年 以 上 積 み 上 げて 年 金 の 受 給 権 を 得 るケースも 想 定 される 年 金 の 受 給 資 格 期 間 の 改 正 は 在 留 外 国 人 が 年 金 の 受 給 権 を 得 やすくなり 外 国 人 労 働 者 が 働 きやすい 環 境 整 備 がされることになる しかし 低 所 得 の 在 留 外 国 人 が 増 加 すれば 国 や 地 方 の 社 会 保 障 費 が 増 加 する 可 能 性 もある 法 改 正 により 外 国 人 労 働 政 策 をどのようにするのか が 国 や 地 方 の 社 会 保 障 費 にも 大 きな 影 響 を 与 えるようになるだろう 5. 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 の 一 元 化 受 給 者 にとっての 制 度 改 正 法 改 正 により 現 在 共 済 年 金 に 加 入 している 公 務 員 等 も 厚 生 年 金 に 加 入 することとし 被 用 者 年 金 制 度 を 厚 生 年 金 に 統 一 することとなった 施 行 日 は 2015 年 10 月 1 日 とされている(2015 年 10 月 1 日 は 消 費 税 率 の 10%への 引 き 上 げの 施 行 日 である だが この 改 正 は 消 費 税 率 の 10%への 引 き 上 げとは 関 係 なく 単 純 に 施 行 日 が 2015 年 10 月 1 日 と 定 められている) 共 済 年 金 と 厚 生 年 金 の 制 度 設 計 は 以 下 のような 差 異 があるが 原 則 として 厚 生 年 金 に 統 一 す るように 改 められる 現 行 の 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 の 違 い および 新 厚 生 年 金 の 制 度 設 計 は 次 の 図 表 6 に 示 される 図 表 6 現 行 の 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 の 違 いと 新 厚 生 年 金 の 設 計 現 行 の 厚 生 年 金 現 行 の 共 済 年 金 被 保 険 者 民 間 給 与 所 得 者 公 務 員 私 学 職 員 等 被 保 険 者 年 齢 ( 保 険 料 を 払 う 年 齢 )の 上 限 年 金 受 給 者 が 厚 生 年 金 の 被 保 険 者 となったときの 年 金 調 整 70 歳 まで 年 齢 制 限 なし 70 歳 まで 65 歳 までは 賃 金 + 年 金 が 月 28 万 円 を 超 えた 場 合 年 金 の 一 部 または 全 部 を 支 給 停 止 65 歳 以 後 は 賃 金 + 年 金 が 月 46 万 円 を 超 えた 場 合 年 金 の 一 部 または 全 部 を 支 給 停 止 年 齢 にかかわらず 賃 金 + 年 金 が 月 46 万 円 を 超 えた 場 合 年 金 の 一 部 または 全 部 を 支 給 停 止 新 厚 生 年 金 (2015 年 10 月 ~) 民 間 給 与 所 得 者 公 務 員 私 学 職 員 等 65 歳 までは 賃 金 + 年 金 が 月 28 万 円 を 超 えた 場 合 年 金 の 一 部 または 全 部 を 支 給 停 止 65 歳 以 後 は 賃 金 + 年 金 が 月 46 万 円 を 超 えた 場 合 年 金 の 一 部 または 全 部 を 支 給 停 止 障 害 給 付 の 受 給 要 件 保 険 料 納 付 要 件 あり 保 険 料 納 付 要 件 なし 保 険 料 納 付 要 件 あり 遺 族 年 金 の 転 給 転 給 なし 転 給 あり 転 給 なし ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 資 料 をもとに 大 和 総 研 金 融 調 査 部 制 度 調 査 課 作 成 18 母 国 に 帰 国 後 脱 退 一 時 金 を 受 給 することができるため 掛 け 捨 て ではないと 考 える 者 もいる しかし 脱 退 一 時 金 は 支 払 った 保 険 料 ( 厚 生 年 金 の 場 合 労 使 合 計 )の 半 分 以 下 であり 年 金 保 険 料 の 半 分 以 上 は 掛 け 捨 て になっているものと 言 える

15 / 23 実 施 機 関 と 財 源 2015 年 10 月 以 後 被 用 者 年 金 制 度 は 厚 生 年 金 に 統 合 されるが 実 施 者 や 財 源 が 完 全 に 統 合 されるわけではない 現 在 の 厚 生 年 金 被 保 険 者 は 第 1 号 厚 生 年 金 被 保 険 者 となり 厚 生 労 働 大 臣 が 実 施 者 となる 一 方 現 在 の 共 済 年 金 被 保 険 者 は 第 2 号 厚 生 年 金 被 保 険 者 等 となり 共 済 組 合 が 実 施 機 関 となる 19 公 的 年 金 制 度 の 財 源 はかなり 複 雑 であるが 現 行 制 度 の 概 略 図 を 示 すと 図 表 7 のようになる 図 表 7 現 行 の 公 的 年 金 制 度 の 財 源 の 概 略 図 自 営 業 者 等 会 社 員 公 務 員 等 が 支 払 った 保 険 料 は それぞれ 国 民 年 金 厚 生 年 金 共 済 年 金 の 積 立 金 に 積 み 立 てられる その 上 で それぞれの 積 立 金 は 基 礎 年 金 (1 階 部 分 の 年 金 )の 給 付 に 必 要 な 額 を 基 礎 年 金 勘 定 に 基 礎 年 金 拠 出 金 として 支 払 う また 基 礎 年 金 の 給 付 費 の 1/2 は 国 庫 ( 税 金 )から 支 払 われる 基 礎 年 金 は 基 礎 年 金 勘 定 から 支 払 われる 厚 生 年 金 および 共 済 年 金 は それぞれの 積 立 金 から 支 払 われる 基 礎 年 金 拠 出 金 の 算 定 方 法 をめぐっては 会 社 員 が 不 利 だと 言 われている その 理 由 は 基 礎 年 金 拠 出 金 は 保 険 料 を 支 払 った 者 ( 被 扶 養 配 偶 者 も 保 険 料 を 支 払 った 者 とする)の 数 によ って 各 制 度 で 頭 割 りを 行 うこととなっているため 自 営 業 者 等 ( 国 民 年 金 第 1 号 被 保 険 者 )に 保 険 料 の 未 納 が 多 いと その 分 会 社 員 や 公 務 員 等 ( 国 民 年 金 第 2 号 被 保 険 者 )が 負 担 する 拠 出 金 が 増 えるからである 20 また 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 では 共 済 年 金 の 方 が 平 均 年 収 が 高 いが 19 正 確 には 国 家 公 務 員 は 第 2 号 厚 生 年 金 被 保 険 者 となり 国 家 公 務 員 共 済 組 合 連 合 会 等 が 実 施 機 関 に 地 方 公 務 員 は 第 3 号 厚 生 年 金 被 保 険 者 となり 地 方 公 務 員 共 済 組 合 連 合 会 等 が 実 施 機 関 に 私 学 教 員 等 は 第 4 号 厚 生 年 金 被 保 険 者 となり 日 本 私 立 学 校 振 興 共 済 事 業 団 が 実 施 機 関 となる 共 済 年 金 は 現 在 大 きく 3 制 度 に 分 けて 運 用 されており 厚 生 年 金 への 一 元 化 後 も 共 済 組 合 は 3 制 度 それぞれ 別 々に 運 用 がされる 本 稿 では 説 明 の 簡 略 化 のため 共 済 組 合 内 の 制 度 の 違 いには 触 れず 共 済 組 合 を 1 制 度 とみなして 説 明 する 20 むろん 自 営 業 者 等 のうち 保 険 料 を 払 っている 者 の 負 担 も 増 える

16 / 23 基 礎 年 金 拠 出 金 の 支 払 いは 人 数 による 頭 割 りである このため 厚 生 年 金 よりも 共 済 年 金 の 方 が 保 険 料 のうち 基 礎 年 金 拠 出 金 に 充 てる 部 分 が 少 なくなり 年 金 財 政 に 余 裕 が 出 やすい 構 図 と なっている 21 2015 年 10 月 以 後 の 財 源 の 概 略 図 は 図 表 8 のようになる 図 表 8 2015 年 10 月 以 後 の 公 的 年 金 制 度 の 財 源 の 概 略 図 共 済 年 金 が 持 つ 積 立 金 は 2015 年 10 月 ( 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 の 統 合 時 )に 一 部 を 厚 生 年 金 に 渡 し 残 りは 共 済 組 合 が 独 自 に 持 つ この 際 に 共 済 年 金 が 厚 生 年 金 に 渡 す 積 立 金 の 額 は 積 立 比 率 ( 保 険 料 で 賄 われる 1 2 階 部 分 の 年 間 の 支 出 に 対 して 何 年 分 を 保 有 しているかという 積 立 金 の 水 準 )が 等 しくなるように 設 計 するものとされている 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 の 統 合 後 も 会 社 員 の 保 険 料 は 厚 生 年 金 の 積 立 金 に 公 務 員 等 の 保 険 料 は 共 済 組 合 の 積 立 金 に 入 る 構 図 となる 基 礎 年 金 拠 出 金 の 負 担 方 法 も 変 わらない 元 公 務 員 等 の 高 齢 者 に 対 する 厚 生 年 金 も 共 済 組 合 の 積 立 金 から 支 払 われる ただし 厚 生 年 金 と 共 済 組 合 は 財 源 調 整 として 厚 生 年 金 交 付 金 と 厚 生 年 金 拠 出 金 を 受 け 渡 しする ま た 元 公 務 員 等 の 高 齢 者 に 対 する 職 域 加 算 ( 後 述 する)についても 共 済 組 合 の 積 立 金 から 支 払 われる この 厚 生 年 金 交 付 金 と 厚 生 年 金 拠 出 金 の 詳 細 な 仕 組 みは 政 省 令 で 定 められることと 21 この 構 図 は 厚 生 労 働 省 社 会 保 障 審 議 会 年 金 数 理 部 会 平 成 21 年 財 政 検 証 財 政 再 計 算 に 基 づく 公 的 年 金 制 度 の 財 政 検 証 でも 確 認 されている

17 / 23 されているが 設 計 如 何 により 会 社 員 か 公 務 員 等 のいずれかが 有 利 にも 不 利 にもなりうる 政 府 および 厚 生 労 働 省 は これらの 仕 組 みについて 厚 生 年 金 と 共 済 組 合 のいずれも 有 利 にも 不 利 にもならないように 制 度 設 計 を 行 うとともに 丁 寧 な 説 明 を 行 う 必 要 があるだろう なお 筆 者 は 図 表 9 のように 財 源 を 受 け 渡 しすべきと 考 えている 図 表 9 公 的 年 金 制 度 の 財 源 の 概 略 図 ( 筆 者 案 ) 筆 者 としては 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 の 一 元 化 にあたっては 会 社 員 の 保 険 料 も 公 務 員 等 の 保 険 料 も 厚 生 年 金 の 積 立 金 に 入 れ 厚 生 年 金 の 給 付 は 厚 生 年 金 の 積 立 金 から 支 払 う 仕 組 みにした 方 がよい( 厚 生 年 金 交 付 金 と 厚 生 年 金 拠 出 金 の 受 け 渡 しは 行 わない 方 がよい)ものと 考 えている 筆 者 案 のような 構 図 であれば 元 公 務 員 等 の 高 齢 者 (およびこれまで 職 域 加 算 分 込 みの 保 険 料 を 支 払 ってきた 現 役 の 公 務 員 等 )に 対 して 支 払 われる 職 域 加 算 の 支 払 い 財 源 は 厚 生 年 金 積 立 金 とは 切 り 離 され 共 済 組 合 の 積 立 金 から 支 払 われることになる 共 済 組 合 は これまで 職 域 加 算 の 分 も 含 めて 年 金 を 支 払 うに 足 るだけの 保 険 料 を 積 み 立 てているはずなので 共 済 組 合 の 積 立 金 から 職 域 加 算 を 支 払 えるはずである もし そ れが 厳 しいとすると 職 域 加 算 の 金 額 を 減 らすか 現 役 の 公 務 員 等 から 厚 生 年 金 保 険 料 と は 別 途 の 共 済 組 合 独 自 の 保 険 料 を 徴 収 するかのいずれかまたは 両 方 を 行 う 必 要 があるだろう 制 度 設 計 にもよるが 厚 生 年 金 交 付 金 と 厚 生 年 金 拠 出 金 の 受 け 渡 しを 行 うと 実 質 的 に 共 済 組 合 の 負 担 すべき 金 額 を 減 らす( 会 社 員 の 負 担 すべき 金 額 を 増 やす)おそれもある すなわち 結 果 的 に 厚 生 年 金 の 積 立 金 が 元 公 務 員 等 の 高 齢 者 に 支 払 う 職 域 加 算 などに 充 て られるような 構 図 となる 懸 念 もある

18 / 23 また 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 を 統 合 するにもかかわらず 基 礎 年 金 拠 出 金 の 負 担 について 会 社 員 と 公 務 員 等 をグループ 分 けすることについては 理 解 に 苦 しむ 会 社 員 と 公 務 員 等 の 保 険 料 を いずれも 厚 生 年 金 の 積 立 金 に 入 れた 上 で 厚 生 年 金 の 積 立 金 から 基 礎 年 金 を 拠 出 すべきであろ う 職 域 加 算 の 廃 止 年 金 給 付 については 共 済 年 金 については 厚 生 年 金 にはない 職 域 加 算 があり これが 公 務 員 の 3 階 部 分 の 年 金 とされる この 職 域 加 算 については 2015 年 10 月 以 後 廃 止 すること とされた 職 域 加 算 廃 止 後 の 新 たな 年 金 については 2012 年 中 に 検 討 を 行 い その 結 果 に 基 づき 別 の 法 律 により 措 置 を 講 じるものとしている なお 廃 止 前 までに 年 金 受 給 権 を 得 ている 者 については 職 域 加 算 も 含 めた 年 金 額 が 維 持 される また これまでの 共 済 年 金 の 保 険 料 は 職 域 加 算 も 含 めた 保 険 料 という 位 置 づけ であったため まだ 年 金 受 給 権 を 得 ていない 者 についても 既 に 払 い 込 んだ 保 険 料 のうち 職 域 加 算 に 相 当 する 給 付 を 受 ける 権 利 があるものと 考 えられる この 分 の 扱 いについては 別 途 法 律 で 定 めることとされた このように 廃 止 前 までに 既 に 年 金 受 給 権 を 得 ている 元 公 務 員 の 高 齢 者 および 廃 止 前 まで に 保 険 料 を 払 い 込 んだ 現 役 の 公 務 員 に 対 しては 職 域 加 算 およびそれに 相 当 する 給 付 が 継 続 されることとなる この 分 の 財 源 について 厚 生 年 金 積 立 金 から 流 用 されることがないよう 筆 者 としては 図 表 5 のように 共 済 組 合 の 積 立 金 を 厚 生 年 金 とは 分 けて 管 理 すべきと 考 えている 保 険 料 率 保 険 料 率 については 2012 年 11 月 現 在 厚 生 年 金 の 16.766%( 労 使 計 以 下 同 じ)に 対 し 共 済 年 金 は 16.216%である 22 厚 生 年 金 も 共 済 年 金 もいずれも 従 来 の 法 律 で 保 険 料 率 を 毎 年 引 き 上 げるよう 規 定 されている が 公 務 員 等 については 共 済 年 金 が 厚 生 年 金 に 統 合 された 後 も 従 来 の 保 険 料 率 引 き 上 げスケジ ュールに 従 うものとし 2018 年 10 月 に 保 険 料 率 が 18.3%に 統 一 されることとされている 23 ( 保 険 料 率 は 図 表 10 を 参 照 ) すなわち 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 の 統 合 後 も 3 年 間 公 務 員 等 は 会 社 員 に 比 べて 低 い 保 険 料 率 が 適 用 されることとなっている この 経 過 措 置 は 公 務 員 等 について 保 険 料 率 が 急 増 しないよ うに 配 慮 したものと 考 えられる しかし 厚 生 年 金 の 財 政 事 情 や 会 社 員 と 公 務 員 等 の 公 平 性 を 考 慮 すると この 経 過 措 置 は 必 ずしも 必 要 ないようにも 考 えられる 22 国 家 公 務 員 共 済 組 合 および 地 方 公 務 員 共 済 組 合 の 保 険 料 率 である 私 学 共 済 の 保 険 料 率 は 13.292%となって いる 23 私 学 共 済 の 保 険 料 率 が 18.3%に 統 一 されるのは 2027 年 であり それまでの 間 会 社 員 や 公 務 員 と 比 べて 低 い 保 険 料 率 の 適 用 が 続 くものとなっている

19 / 23 図 表 10 厚 生 年 金 と 共 済 年 金 ( 国 地 方 公 務 員 共 済 )の 保 険 料 率 引 き 上 げスケジュール 厚 生 年 金 改 正 前 共 済 年 金 厚 生 年 金 の うち 会 社 員 厚 生 年 金 のう ち 公 務 員 等 2011 年 10 月 ~ 16.412% 15.862% 2012 年 10 月 ~ 16.766% 16.216% 2013 年 10 月 ~ 17.120% 16.570% 2014 年 10 月 ~ 17.474% 16.924% 2015 年 10 月 ~ 17.828% 17.278% 17.828% 17.278% 2016 年 10 月 ~ 18.182% 17.632% 18.182% 17.632% 2017 年 10 月 ~ 18.300% 17.986% 18.300% 17.986% 2018 年 10 月 ~ 18.300% 18.340% 2019 年 10 月 ~ 18.300% 18.694% 2020 年 10 月 ~ 18.300% 19.048% 2021 年 10 月 ~ 18.300% 19.402% 2022 年 10 月 ~ 18.300% 19.756% 2023 年 10 月 ~ 18.300% 19.800% ( 出 所 ) 大 和 総 研 金 融 調 査 部 制 度 調 査 課 作 成 改 正 後 18.300%で 一 律 化 なお 改 正 前 の 法 律 では 共 済 年 金 の 保 険 料 率 は 2023 年 に 19.8%( 最 終 的 な 保 険 料 率 )に 達 するまで 引 き 上 げるものとされていた 最 終 的 な 保 険 料 率 は 厚 生 年 金 の 18.3%よりも 高 く 設 計 されていたが これは 共 済 年 金 は 厚 生 年 金 にない 職 域 加 算 を 行 うため 財 源 が 厚 生 年 金 よ り 多 く 必 要 になるためである 法 改 正 により 職 域 加 算 は 廃 止 することとされたので 最 終 的 な 保 険 料 率 は 現 行 の 厚 生 年 金 と 同 じ 18.3%でよいものとされた 6. 父 子 家 庭 への 遺 族 基 礎 年 金 の 支 給 改 正 内 容 現 行 制 度 では 遺 族 基 礎 年 金 は 子 か 子 のいる 妻 にしか 支 給 されない(さらに 父 が いる 場 合 は 子 に 対 する 遺 族 基 礎 年 金 は 支 給 停 止 される 規 定 がある) 父 子 家 庭 には 事 実 上 遺 族 基 礎 年 金 は 給 付 されない 仕 組 みであった 法 改 正 により 遺 族 基 礎 年 金 は 子 か 子 のいる 配 偶 者 に 対 して 支 給 されるようになる これにより 父 子 家 庭 に 対 しても 遺 族 基 礎 年 金 が 給 付 されるようになる 施 行 日 は 消 費 税 率 8%への 引 き 上 げが 施 行 された 日 (すなわち 2014 年 4 月 1 日 )として いる 遺 族 年 金 の 解 説 図 表 11 が 現 行 および 改 正 後 の 遺 族 年 金 支 給 の 有 無 に 関 する 早 見 表 である 改 正 点 は 妻 が 亡 くなった 場 合 かつ 18 歳 未 満 の 子 がいる かつ 妻 の 死 亡 時 の 夫 の 年 収 が 850 万 円 未 満 の 3 点 を 満 たす 場 合 の 遺 族 基 礎 年 金 の 支 給 のみである 亡 くなったのが 夫 であるのか 妻 であるのか( 遺 族 が 妻 であるのか 夫 であるのか) 夫 ( 妻 )

20 / 23 の 死 亡 時 の 18 歳 未 満 24 の 子 の 有 無 夫 ( 妻 )の 死 亡 時 の 妻 ( 夫 )の 年 収 によって 遺 族 年 金 の 支 給 の 有 無 が 変 わってくる また 遺 族 基 礎 年 金 と 遺 族 厚 生 年 金 で 扱 いも 異 なる 図 表 11 遺 族 年 金 支 給 の 有 無 に 関 する 早 見 表 ( 現 行 および 改 正 後 ) 夫 ( 妻 )の 死 亡 時 の18 歳 未 満 の 子 の 有 無 夫 ( 妻 )の 死 亡 時 の 妻 ( 夫 )の 年 収 18 歳 未 満 の 子 がいる 18 歳 未 満 の 子 がいない 850 万 円 未 満 夫 が 亡 くなった 場 合 850 万 円 以 上 850 万 円 未 満 850 万 円 以 上 850 万 円 未 満 妻 が 亡 くなった 場 合 18 歳 未 満 の 子 がいる 18 歳 未 満 の 子 がいない 850 万 円 以 上 850 万 円 未 満 遺 族 基 礎 年 金 ( 注 1) ( 注 1) 850 万 円 以 上 遺 族 厚 生 年 金 原 則 ( 注 2) 原 則 ( 注 3) 原 則 ( 注 4) 亡 くなった 被 保 険 者 と 生 計 維 持 関 係 にある 者 が 配 偶 者 (および 子 )のみである 場 合 配 偶 者 または 子 に 対 して 終 身 年 金 が 支 給 される 子 が18 歳 に 達 するまで 有 期 年 金 が 支 給 される 年 金 が 支 給 されない ( 注 1) 今 後 第 3 号 被 保 険 者 が 亡 くなった 場 合 の 配 偶 者 には 遺 族 基 礎 年 金 が 支 給 されなくなる 改 正 が 行 われる 予 定 である ( 注 2) 夫 の 死 亡 時 妻 が30 歳 未 満 であった 場 合 は5 年 間 の 有 期 年 金 となる ( 注 3) 妻 の 死 亡 時 夫 が55 歳 以 上 である 場 合 に 限 り 子 が18 歳 に 達 しても( 夫 が60 歳 以 上 となった 後 に) 年 金 の 支 給 が 継 続 する ( 注 4) 妻 の 死 亡 時 夫 が55 歳 以 上 である 場 合 に 限 り 夫 が60 歳 以 上 となった 後 に 終 身 年 金 が 支 給 される ( 出 所 ) 大 和 総 研 金 融 調 査 部 制 度 調 査 課 作 成 改 正 後 は 遺 族 基 礎 年 金 においては 夫 が 亡 くなった 場 合 および 妻 が 亡 くなった 場 合 の 扱 いが 同 じになる いずれの 場 合 も 遺 された 子 の 養 育 費 を 保 障 する 役 割 を 持 ち 夫 ( 妻 )の 死 亡 時 に 18 歳 未 満 の 子 がいる 場 合 に 限 り 子 が 18 歳 に 達 するまでの 有 期 年 金 が 支 給 される 夫 ( 妻 )の 死 亡 時 に 妻 ( 夫 )の 年 収 が 850 万 円 以 上 である 場 合 25 には 従 来 どおり 遺 族 基 礎 年 金 は 支 給 されない( 死 亡 した 者 の 年 収 ではなく 遺 族 の 年 収 である) 自 身 の 年 収 が 850 万 円 以 上 あるならば 配 偶 者 が 亡 くなっても 子 の 養 育 費 を 賄 える(そのような 者 に 対 して 国 は 養 育 費 を 支 援 する 必 要 はない)との 考 え 方 によるものと 思 われる 遺 族 厚 生 年 金 については 夫 が 亡 くなった 場 合 および 妻 が 亡 くなった 場 合 の 扱 いが 異 なるが これは 改 正 されない 夫 の 死 亡 時 の 妻 の 年 収 が 850 万 円 未 満 である 場 合 18 歳 未 満 の 子 の 有 無 にかかわらず 妻 に は 原 則 として 終 身 年 金 が 支 給 される 一 方 妻 の 死 亡 時 の 夫 の 年 収 が 850 万 円 未 満 である 場 合 は 18 歳 未 満 の 子 がいる 場 合 は 原 則 として 子 が 18 歳 に 達 するまでの 有 期 年 金 が 支 給 され 18 歳 未 満 の 子 がいない 場 合 は 原 則 として 遺 族 厚 生 年 金 が 支 給 されない 夫 ( 妻 )の 死 亡 時 の 妻 ( 夫 )の 年 収 が 850 万 円 以 上 である 場 合 は 夫 が 亡 くなった 場 合 も 妻 が 亡 くなった 場 合 も 扱 いが 同 じである 夫 ( 妻 )の 死 亡 時 に 18 歳 未 満 の 子 がいる 場 合 は 子 が 18 歳 に 達 するまでの 有 期 年 金 が 支 給 され 18 歳 未 満 の 子 がいない 場 合 は 原 則 として 遺 族 厚 生 年 金 が 支 給 されない 24 正 確 には 18 歳 に 達 した 年 度 の 年 度 末 ( 一 般 的 には 高 校 の 卒 業 時 )までは 18 歳 未 満 とする 以 下 同 じ 図 表 7 においても 同 じ 25 正 確 には 年 収 850 万 円 以 上 (または 所 得 655.5 万 円 以 上 )を 将 来 にわたって 有 すると 認 められる 者 には 遺 族 基 礎 年 金 等 が 支 給 されない 年 収 および 所 得 の 判 定 は 源 泉 徴 収 票 や 確 定 申 告 書 などをもとに 行 われてい る 模 様 である なお 配 偶 者 の 死 亡 時 において 近 い 将 来 (おおむね 5 年 以 内 )に 定 年 退 職 等 の 事 情 により 年 収 が 850 万 円 未 満 になる 見 込 みがある 者 は 年 収 850 万 円 以 上 を 将 来 にわたって 有 する 者 にあたらず 遺 族 基 礎 年 金 等 が 支 給 されうる ただし 遺 族 基 礎 年 金 等 の 支 給 の 有 無 の 判 定 は 配 偶 者 の 死 亡 時 1 回 限 りであ り 事 後 的 に 年 収 が 増 減 しても 年 金 の 受 給 権 が 発 生 したり 消 滅 したりすることはない

21 / 23 なお 法 律 に 規 定 はないが 社 会 保 障 審 議 会 の 資 料 を 見 ると 被 扶 養 者 である 第 3 号 被 保 険 者 が 亡 くなった 場 合 の 配 偶 者 は 遺 族 基 礎 年 金 の 支 給 対 象 としない 旨 を 政 省 令 の 改 正 に 盛 り 込 む 模 様 である すなわち 法 改 正 後 も 専 業 主 婦 が 亡 くなった 場 合 の 夫 に 対 しては 遺 族 基 礎 年 金 が 支 給 され ない 見 込 みである( 共 働 き であった 場 合 に 限 り 妻 が 亡 くなった 場 合 に 夫 に 遺 族 基 礎 年 金 が 支 給 されるということになる) また 現 状 では 専 業 主 夫 が 亡 くなった 場 合 の 妻 に 対 しては 遺 族 基 礎 年 金 が 支 給 される ことになっているが これについても 今 後 は 遺 族 基 礎 年 金 が 支 給 されなくなるものと 見 込 まれ る 考 察 と 意 見 今 回 の 改 正 により 遺 族 基 礎 年 金 の 扱 いが 夫 が 亡 くなった 場 合 と 妻 が 亡 くなった 場 合 とで 同 じになることは 評 価 できる しかし 筆 者 としては 遺 族 基 礎 年 金 に 留 まらず 遺 族 厚 生 年 金 に おいても 同 様 の 改 正 を 行 うべきと 考 えている 夫 婦 共 働 きの 世 帯 においては 夫 が 亡 くなった 場 合 に 限 らず 妻 が 亡 くなった 場 合 について も 収 入 が 大 きく 減 少 する また 現 状 では 少 ないが 妻 が 働 き 夫 が 専 業 主 夫 となる 世 帯 も いる 専 業 主 夫 世 帯 においては 妻 が 亡 くなった 場 合 収 入 が( 少 なくとも 一 時 的 には)ゼ ロになる このようなケースについてもある 程 度 の 所 得 保 障 が 行 われるよう 夫 が 亡 くなった 場 合 と 妻 が 亡 くなった 場 合 の 遺 族 厚 生 年 金 の 扱 いは 同 じにすべきと 筆 者 は 考 えている 26 なお 国 としての 制 度 の 是 非 にかかわらず 家 計 としては 妻 および 夫 の 死 亡 時 の 公 的 保 障 が 異 なることを 認 識 した 上 で 生 命 保 険 などの 私 的 保 障 を 組 み 立 てていくべきであろう 7. 短 時 間 労 働 者 への 厚 生 年 金 の 加 入 拡 大 改 正 内 容 現 在 短 時 間 労 働 者 について 厚 生 年 金 に 加 入 するか 否 かの 判 断 基 準 は 法 律 および 政 省 令 に は 定 めがない 旧 厚 生 省 ( 現 在 の 厚 生 労 働 省 ) 内 で 作 成 された 昭 和 56 年 被 保 険 者 資 格 取 扱 基 準 により 次 のように 定 められている 勤 務 している 事 業 所 の 通 常 の 労 働 者 に 対 して 1 日 または 1 週 間 の 労 働 時 間 がおおむね 3/4 以 上 かつ 労 働 日 数 がおおむね 3/4 以 上 である 者 は 被 保 険 者 とする 法 改 正 により 短 時 間 労 働 者 の 厚 生 年 金 に 加 入 するか 否 かの 判 断 基 準 は 厚 生 年 金 法 に 明 記 さ れ 次 のように 改 められる 26 一 般 的 には 男 性 よりも 女 性 の 方 が 年 収 が 低 いため 妻 が 亡 くなった 場 合 の 夫 の 保 障 よりも 夫 が 亡 くなった 場 合 の 妻 の 保 障 を 手 厚 くするべきという 考 えもありうる しかしながら 男 性 の 中 にも 年 収 が 低 い 者 もいるし 女 性 の 中 にも 年 収 が 高 い 者 もいる 遺 族 の 年 収 によって 遺 族 年 金 の 扱 いを 変 えるのはよいが 男 女 ( 夫 か 妻 か) によって 遺 族 年 金 の 扱 いを 変 えるのは 望 ましくないだろう

22 / 23 1 勤 務 している 事 業 所 の 通 常 の 労 働 者 に 対 して 1 日 または 1 週 間 の 労 働 時 間 がおおむね 3/4 以 上 かつ 労 働 日 数 がおおむね 3/4 以 上 である 者 は 被 保 険 者 とする 2 1に 該 当 しない 場 合 であっても 次 の(1)~(5)の 全 てを 満 たす 場 合 は 被 保 険 者 とする (1)1 週 間 の 所 定 労 働 時 間 が 20 時 間 以 上 (2)1 年 以 上 継 続 して 勤 務 することが 見 込 まれること (3) 月 額 賃 金 が 8 万 8,000 円 以 上 であること( 当 初 法 案 では 7 万 8,000 円 以 上 ) (4) 学 生 等 でないこと (5) 従 業 員 501 人 以 上 ( 注 )の 企 業 に 勤 めていること ( 注 )1の 適 用 基 準 の 下 で 適 用 される 被 保 険 者 数 で 判 定 する このうち 2(5)については 厚 生 年 金 法 の 附 則 により 当 分 の 間 の 経 過 措 置 とされている 将 来 的 には 企 業 規 模 によらず 勤 務 実 態 により 厚 生 年 金 の 加 入 の 可 否 について 判 断 すべきだが 中 小 企 業 の 負 担 を 緩 和 する 観 点 から 当 分 の 間 の 経 過 措 置 として 規 定 が 設 けられている 上 記 のうち 2(3) 月 額 賃 金 については 当 初 政 府 提 出 法 案 では 7 万 8,000 円 以 上 とさ れていたが 民 主 党 自 民 党 公 明 党 の 3 党 の 協 議 により 8 万 8,000 円 以 上 に 修 正 された この 改 正 は 2016 年 10 月 に 施 行 される( 当 初 法 案 では 2016 年 4 月 施 行 とされていたが 民 主 党 自 民 党 公 明 党 の 3 党 の 協 議 により 修 正 された) 健 康 保 険 法 においても 同 様 の 法 改 正 が 行 われており 2016 年 10 月 から 短 時 間 労 働 者 の 一 部 が 新 たに 厚 生 年 金 と 健 康 保 険 に 加 入 することとなる なお 今 後 のさらなる 厚 生 年 金 および 健 康 保 険 の 加 入 範 囲 の 拡 大 については 施 行 後 3 年 以 内 に 検 討 を 加 え その 結 果 に 基 づき 必 要 な 措 置 を 講 じる とされた( 当 初 法 案 では 2019 年 3 月 31 日 までにさらなる 適 用 範 囲 拡 大 のために 必 要 な 法 制 上 の 措 置 を 講 じる とされていた が 民 主 党 自 民 党 公 明 党 の 3 党 の 協 議 により 修 正 された) 改 正 の 影 響 と 考 察 厚 生 労 働 省 の 資 料 では 法 改 正 により 約 25 万 人 が 新 たに 厚 生 年 金 と 健 康 保 険 に 加 入 するもの と 見 込 んでいる この 人 数 は 1 週 間 の 所 定 労 働 時 間 が 20 時 間 以 上 である 短 時 間 労 働 者 ( 約 370 万 人 )の 1 割 未 満 である 27 すなわち 大 部 分 の 短 時 間 労 働 者 にとっては 従 来 と 扱 いが 変 わら ないものと 言 える もっとも 労 働 者 や 企 業 が 社 会 保 険 料 の 負 担 を 回 避 するために 労 働 時 間 等 を 調 整 することも 考 えられ 実 際 に 厚 生 年 金 健 康 保 険 に 加 入 する 短 時 間 労 働 者 の 数 は 厚 生 労 働 省 の 見 込 む 約 25 万 人 より 少 なくなることも 考 えられる 特 に 配 偶 者 が 会 社 員 であり 第 3 号 被 保 険 者 となっている 者 は 厚 生 年 金 に 加 入 すると 将 来 受 け 取 れる 年 金 額 が 増 加 するなどのメリットもあるとはいえ 厚 生 年 金 保 険 料 を 新 たに 負 担 することにより 手 取 りが 約 8%( 健 康 保 険 料 も 合 わせると 約 13%) 減 少 するデメリットが 大 きい 厚 生 労 働 省 は 今 回 の 改 正 は 社 会 保 険 制 度 における 働 かない 方 が 有 利 になるような 仕 組 27 厚 生 労 働 省 社 会 保 障 審 議 会 第 12 回 短 時 間 労 働 者 への 社 会 保 険 適 用 等 に 関 する 特 別 部 会 の 資 料 による

23 / 23 みを 除 去 することで 特 に 女 性 の 就 業 意 欲 を 促 進 して 今 後 の 人 口 減 少 社 会 に 備 える 考 え 方 によるとしている しかし 筆 者 は 今 回 の 改 正 によっても 働 かない 方 が 有 利 になるような 仕 組 み は 変 わらないし 女 性 の 就 業 意 欲 を 促 進 するものでもないように 思 う 筆 者 は 働 かない 方 が 有 利 になるような 仕 組 み を 是 正 し 女 性 の 就 業 意 欲 を 促 進 した いのであれば 適 用 基 準 を 超 えたときに 一 度 に 社 会 保 険 料 が 大 きく 増 えるような 現 行 の(また は 法 改 正 後 の) 仕 組 みを 改 め 適 用 基 準 を 超 えた 後 年 収 の 増 加 に 合 わせて 徐 々に 社 会 保 険 料 が 増 えるような 仕 組 みにすべきであると 考 えている 28 8. 産 休 中 の 厚 生 年 金 保 険 料 免 除 改 正 内 容 法 改 正 により 厚 生 年 金 の 保 険 料 について 産 前 産 後 の 休 業 期 間 中 ( 原 則 産 前 6 週 間 産 後 8 週 間 )は 保 険 料 が 免 除 されることとなった 従 業 員 負 担 分 だけでなく 企 業 負 担 分 の 保 険 料 も 免 除 される 厚 生 年 金 を 受 給 する 際 には 育 児 休 業 中 の 免 除 期 間 も 産 休 前 の 保 険 料 を 納 付 したものとして 年 金 額 が 算 定 される( 免 除 を 受 けたことにより 将 来 の 年 金 が 減 ることはない) 育 休 中 の 厚 生 年 金 の 保 険 料 免 除 規 定 は 既 にあるので 改 正 により 産 休 期 間 から 育 休 期 間 を 経 て 職 場 に 復 帰 するまで 厚 生 年 金 の 保 険 料 が 免 除 されることとなる この 改 正 は 法 律 の 公 布 日 から 2 年 を 超 えない 範 囲 で 政 令 で 定 める 日 とされている 法 改 正 による 国 地 方 の 財 政 支 出 は 生 じないが 保 険 料 収 入 が 減 少 する 分 厚 生 年 金 財 政 を 悪 化 させることとなる Ⅲ. 法 改 正 が 行 われなかった 項 目 (9. 高 所 得 者 の 年 金 支 給 額 の 減 額 ) 当 初 の 政 府 案 政 府 は 当 初 高 所 得 者 の 年 金 支 給 額 の 減 額 を 行 う 予 定 で 改 正 法 案 を 国 会 提 出 していた し かし 民 主 党 自 民 党 公 明 党 の 3 党 の 修 正 協 議 を 経 て この 項 目 は 削 除 された 現 在 の 老 齢 基 礎 年 金 の 給 付 費 の 1/2 は 国 庫 負 担 により 賄 われている このため 老 齢 基 礎 年 金 の 給 付 額 の 1/2 については 年 金 受 給 者 (および 勤 務 先 の 企 業 )が 負 担 してきたものではなく 税 金 により 賄 われているものと 言 える このため 老 齢 基 礎 年 金 の 給 付 額 の 1/2 については 高 所 得 である 高 齢 者 については 減 額 してもよいものとするのが 政 府 の 考 え 方 であった( 現 役 時 代 に 高 所 得 であった 者 ではなく 年 金 受 給 時 に 高 所 得 である 者 である) これについては 今 後 の 検 討 課 題 とされた 以 上 28 詳 しくは 拙 稿 社 会 保 険 料 還 付 つき 税 額 控 除 の 提 言 ( 大 和 総 研 調 査 季 報 2011 年 春 季 号 (Vol.2))を 参 照 http://www.dir.co.jp/souken/research/report/law-research/tax/11050201tax.html