(3) 国 際 海 峡 における 通 過 通 航 権 についての 考 え 方 日 本 は 領 海 法 により 宗 谷 海 峡 津 軽 海 峡 対 馬 海 峡 東 水 道 対 馬 海 峡 西 水 道 及 び 大 隅 海 峡 を 特 定 海 域 とし 例 外 的 に 領 海 の 幅 を 3 カイリとして



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預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

Transcription:

第 9 章 日 本 の 海 洋 安 全 保 障 政 策 カントリー プロファイル 小 谷 哲 男 1. 海 洋 法 の 解 釈 (1) 領 海 における 無 害 通 航 権 についての 考 え 方 日 本 は 1996 年 に 国 連 海 洋 法 条 約 を 批 准 した 後 同 条 約 による 海 域 の 区 分 に 応 じて 領 海 及 び 接 続 水 域 に 関 する 法 律 ( 領 海 法 )の 改 正 ( 新 領 海 法 )と 排 他 的 経 済 水 域 及 び 大 陸 棚 に 関 する 法 律 (EEZ 法 )の 制 定 を 行 った これらの 法 律 は 基 本 的 に 各 海 域 の 幅 を 定 めるものであり 領 海 における 無 害 通 航 の 判 断 基 準 や EEZ における 行 政 機 関 の 権 限 行 使 についての 規 定 を 欠 いている このため 航 行 の 規 制 については 別 途 個 別 法 の 制 定 によっ てなされる 日 本 の 領 海 での 外 国 船 舶 による 無 害 でない 通 航 を 規 制 するために 2008 年 に 領 海 等 における 外 国 船 舶 の 航 行 に 関 する 法 律 ( 外 国 船 舶 航 行 法 )が 定 められた これにより 日 本 政 府 は 外 国 船 舶 が 事 前 通 報 のないまま 停 留 徘 徊 等 を 行 っている 場 合 には 立 ち 入 り 検 査 ができる これは 国 連 海 洋 法 条 約 第 19 条 に 規 定 された 航 行 の 無 害 性 ではなく 同 条 約 第 18 条 に 規 定 された 航 行 性 に 基 づく 規 制 である また 2012 年 に 同 法 が 改 正 され やむを 得 ない 場 合 は 勧 告 を 経 た 上 で 立 入 り 検 査 を 省 略 して 退 去 命 令 を 発 することがで きるようになった ただし 外 国 船 舶 航 行 法 は 外 国 の 軍 艦 政 府 公 船 は 規 制 対 象 外 とし ている 無 害 でない 通 航 を 行 う 外 国 船 舶 に 対 する 武 器 使 用 および 外 国 の 軍 艦 政 府 公 船 への 退 去 要 請 は 国 内 法 よりも 国 連 海 洋 法 条 約 第 19 条 に 基 づく 無 害 でない 通 航 の 解 釈 適 用 を 通 じて 行 われる なお 日 本 政 府 は 外 国 船 舶 や 外 国 軍 艦 政 府 公 船 が 日 本 の 領 海 で 無 害 通 航 権 を 行 使 する 際 に 事 前 の 通 告 や 日 本 政 府 の 承 認 が 必 要 との 立 場 を 取 って いない (2) EEZ における 航 行 権 及 び 上 空 飛 行 についての 考 え 方 EEZ における 行 政 機 関 の 権 限 については 漁 業 資 源 の 保 全 海 洋 環 境 保 護 航 行 安 全 確 保 海 洋 の 科 学 的 調 査 等 規 制 分 野 ごとに 個 別 法 が 整 備 されている ただし 外 国 軍 艦 政 府 公 船 は 規 制 対 象 外 となっている 外 国 政 府 公 船 による EEZ での 事 前 申 請 のない 調 査 活 動 に 対 する 中 止 要 請 は 国 内 法 が 未 整 備 のため 国 連 海 洋 法 条 約 第 246 条 の 義 務 を 履 行 し ていないことを 根 拠 に 行 われる EEZ における 外 国 の 軍 事 演 習 については 禁 止 されてい ないとの 立 場 が 1998 年 に 国 会 答 弁 で 表 明 されている -89-

(3) 国 際 海 峡 における 通 過 通 航 権 についての 考 え 方 日 本 は 領 海 法 により 宗 谷 海 峡 津 軽 海 峡 対 馬 海 峡 東 水 道 対 馬 海 峡 西 水 道 及 び 大 隅 海 峡 を 特 定 海 域 とし 例 外 的 に 領 海 の 幅 を 3 カイリとしている これらの 海 峡 で 12 カイリの 領 海 を 宣 言 すると 公 海 部 分 がなくなるが 日 本 独 自 の 措 置 によりこれらの 海 域 には 公 海 部 分 が 残 されている その 理 由 は 公 海 部 分 がなくなれば 米 ソ 両 海 軍 の 核 兵 器 を 搭 載 した 艦 艇 の 領 海 通 航 を 事 実 上 認 めざるを 得 ず 非 核 三 原 則 と 抵 触 するおそれがあっ たからというのが 通 説 である 特 定 海 域 では 自 由 通 航 が 認 められているのであって 国 際 海 峡 の 通 過 通 航 制 度 が 適 用 されるわけではない 2. 海 洋 安 全 保 障 政 策 (1) 海 洋 安 全 保 障 に 関 する 国 内 法 政 策 2007 年 に 海 洋 基 本 法 が 成 立 し 省 庁 の 垣 根 を 取 り 払 って 海 洋 政 策 を 総 合 的 に 推 進 するた めに 総 合 海 洋 政 策 本 部 を 内 閣 官 房 に 設 置 し 海 洋 の 開 発 利 用 保 全 や 海 洋 の 安 全 確 保 を 一 体 的 に 促 進 する 体 制 が 整 えられた 同 基 本 法 に 基 づき 2008 年 に 海 洋 基 本 計 画 が 定 めら れ 海 洋 をめぐる 国 際 情 勢 の 変 化 などをふまえて 2013 年 に 同 計 画 が 改 定 された 改 定 さ れた 基 本 計 画 では 海 洋 安 全 保 障 に 関 して 周 辺 海 域 の 警 戒 監 視 の 強 化 や 海 上 自 衛 隊 と 海 上 保 安 庁 の 連 携 強 化 海 賊 対 策 のため 日 本 籍 船 への 民 間 武 装 警 備 員 乗 船 に 向 けた 取 り 組 みが 盛 り 込 まれた 海 洋 基 本 法 の 成 立 以 降 海 の 安 全 に 関 する 法 整 備 が 進 んでいる 最 も 重 要 なものは 2009 年 に 成 立 した 海 賊 行 為 の 処 罰 及 び 海 賊 行 為 への 対 処 に 関 する 法 律 で この 法 律 により 海 賊 行 為 の 訴 追 や 外 国 籍 船 の 護 衛 海 賊 船 への 危 害 射 撃 が 可 能 となっ た 日 本 政 府 が 2013 年 12 月 に 策 定 した 国 家 安 全 保 障 戦 略 は 日 本 を 海 洋 国 家 と 位 置 づけ 海 洋 安 全 保 障 に 関 わる 課 題 として 力 による 一 方 的 な 現 状 変 更 への 対 処 や 海 上 交 通 路 の 保 護 公 海 上 空 の 自 由 の 確 保 などを 具 体 的 に 挙 げている そして 日 本 が 取 るべ きアプローチとして 領 域 保 全 の 強 化 などと 並 んで 国 際 法 とルールに 基 づく 開 かれ 安 定 した 海 洋 の 維 持 発 展 に 主 導 的 な 役 割 を 果 たすことが 謳 われている アジア 太 平 洋 に おいて 領 土 海 洋 をめぐる 緊 張 が 高 まっている 状 況 をふまえて 安 倍 晋 三 首 相 は 2014 年 5 月 のシャングリラ 会 議 で 法 の 支 配 3 原 則 を 提 唱 した それは 各 国 が 国 際 法 に 照 らし て 正 しい 主 張 をすること, 紛 争 解 決 に 力 や 威 圧 を 用 いないこと, 紛 争 の 平 和 的 解 決 を 図 る ことを 求 めるもので 同 会 議 に 参 加 した 多 くの 国 の 関 係 者 から 賛 同 を 得 た 2015 年 に 成 立 した 平 和 安 全 保 障 法 制 により 存 立 危 機 事 態 では 集 団 的 自 衛 権 の 限 定 行 使 が 認 められ 国 際 海 峡 での 自 衛 隊 による 機 雷 掃 海 が 可 能 となった また 重 要 影 響 事 態 で -90-

は 日 米 防 衛 協 力 のための 指 針 に 基 づき 自 衛 隊 は 米 軍 およびその 他 の 軍 隊 への 補 給 や 給 油 など 後 方 支 援 を 日 本 の 領 海 外 でも 行 うことができる 国 連 安 保 理 決 議 に 基 づく 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 でも 地 理 的 制 約 なく 外 国 軍 隊 への 後 方 支 援 が 認 められる 平 時 にも 日 本 の 防 衛 に 寄 与 する 作 戦 を 行 う 米 軍 やその 他 の 軍 隊 の 武 器 を 自 衛 隊 が 防 護 することができる (2) 優 先 度 の 高 い 個 別 問 題 への 対 処 尖 閣 諸 島 の 周 辺 海 域 に 中 国 の 政 府 公 船 がほぼ 常 駐 するようになり 領 海 への 侵 入 も 断 続 的 に 行 われているため 領 域 警 備 が 最 重 要 課 題 となっている 中 国 の 調 査 船 が 尖 閣 諸 島 周 辺 の EEZ で 通 報 なく 調 査 活 動 を 行 う 事 例 や 中 国 の 政 府 公 船 が 中 国 の 漁 船 に 対 して 漁 業 に 関 する 規 制 を 行 う 事 例 も 起 こっている 日 本 政 府 は この 戦 争 でも 平 和 でもないグレーゾー ン 事 態 への 対 処 を 行 うため 海 上 保 安 庁 の 増 強 と 権 限 の 強 化 を 行 うとともに( 後 述 ) 海 上 自 衛 隊 が 法 執 行 活 動 を 行 う 海 上 警 備 行 動 を 迅 速 に 発 令 するため 電 話 閣 議 制 度 を 導 入 して いる 領 海 警 備 法 の 必 要 性 についても 議 論 が 続 いている また 中 国 の 接 近 阻 止 領 域 拒 否 (A2/AD) 能 力 の 拡 大 とともに 中 国 人 民 解 放 軍 が 南 西 諸 島 周 辺 海 域 および 空 域 での 活 動 を 活 発 化 させている 中 国 艦 船 が 海 上 自 衛 隊 の 護 衛 艦 とヘリに 火 器 管 制 レーダーを 照 射 した 事 例 や 人 民 解 放 軍 の 戦 闘 機 が 海 上 自 衛 隊 の 偵 察 機 に 公 海 上 空 で 異 常 接 近 する 事 態 も 発 生 している 人 民 解 放 軍 の 軍 用 機 が 日 本 の 領 空 に 接 近 する 回 数 も 激 増 し 航 空 自 衛 隊 による 中 国 機 への 緊 急 発 進 回 数 は 年 間 400 回 を 超 える こ のため 2013 年 に 改 定 された 防 衛 計 画 の 大 綱 に 基 づき 日 本 政 府 は 警 戒 監 視 の 強 化 と 南 西 諸 島 防 衛 態 勢 の 構 築 を 行 っている( 後 述 ) (3) 交 渉 国 際 裁 判 での 紛 争 処 理 例 日 本 はこれまで 領 有 権 をめぐる 紛 争 を 国 際 裁 判 で 処 理 したことはない 竹 島 問 題 につい ては 韓 国 との 交 渉 による 解 決 を 基 本 としているが 1954 年 1962 年 と 2012 年 に 国 際 司 法 裁 判 所 (ICJ)への 付 託 を 韓 国 に 提 案 し 同 裁 判 所 の 強 制 管 轄 権 を 受 け 入 れていない 韓 国 に 拒 否 されている 北 方 領 土 問 題 については ロシアと 断 続 的 に 交 渉 を 続 けている 尖 閣 諸 島 については 領 有 権 紛 争 が 存 在 しないとの 立 場 であるが 台 湾 とは 尖 閣 諸 島 周 辺 海 域 で の 漁 業 協 定 を 2013 年 に 結 び 漁 業 資 源 の 共 同 開 発 を 進 めている 日 本 が 国 際 裁 判 で 初 めて 紛 争 当 事 国 となったのは 日 本 による 南 極 海 での 調 査 捕 鯨 が 国 際 捕 鯨 取 締 条 約 に 違 反 するとして 豪 州 が 中 止 を 求 めた 南 極 における 捕 鯨 訴 訟 である ICJ は 2014 年 に 南 極 海 での 日 本 の 調 査 捕 鯨 を 科 学 的 でない と 結 論 づけた 上 で 現 行 制 度 での 調 査 捕 鯨 の 中 止 を 命 じる 判 決 を 言 い 渡 し 日 本 は 事 実 上 全 面 敗 訴 した 日 本 はこの 判 決 を 受 け 入 れ 調 査 捕 鯨 の 計 画 の 見 直 しを 行 った また 2007 年 にロシア 当 局 により 拿 捕 された 第 88 豊 進 丸 の 乗 組 員 及 び 船 体 の 拘 束 -91-

が 長 引 いたため 日 本 はこの 早 期 釈 放 を 求 めてこの 事 案 を 国 際 海 洋 法 裁 判 所 に 付 託 した 同 裁 判 所 は, 合 理 的 な 保 証 金 の 額 として 1000 万 ルーブルを 認 定 するとともに,ロシアに 対 し,その 支 払 いにより 船 体 の 早 期 釈 放 と 船 長 及 び 乗 組 員 の 無 条 件 での 帰 国 を 認 めることを 命 じる 判 決 を 下 した (4) 南 シナ 海 問 題 に 関 する 方 針 日 本 政 府 はサンフランシスコ 平 和 条 約 で 西 沙 諸 島 および 南 沙 諸 島 のすべての 権 原 を 放 棄 しているため 領 有 権 問 題 については 立 場 を 表 明 していない しかし 南 シナ 海 は 日 本 に とって 重 要 な 海 上 交 通 路 であるため 航 行 および 上 空 飛 行 の 自 由 の 確 保 と 紛 争 の 平 和 的 解 決 を 求 めている このため 日 本 は 米 国 の 航 行 の 自 由 作 戦 と ASEAN と 中 国 の 南 シナ 海 行 動 規 範 締 結 に 向 けた 動 き そしてフィリピンが 中 国 を 提 訴 した 国 際 仲 裁 手 続 きを 支 持 し ている また 東 南 アジア 諸 国 への 能 力 構 築 支 援 や 共 同 訓 練 演 習 親 善 寄 港 も 行 ってい る( 後 述 ) 自 衛 隊 が 南 シナ 海 でパトロールを 行 うことや 航 行 の 自 由 作 戦 を 行 うことにつ いては 今 のところ 計 画 はない 3. 海 上 警 備 態 勢 (1) 自 衛 隊 2013 年 の 防 衛 計 画 の 大 綱 は 統 合 機 動 防 衛 力 を 打 ち 出 し 自 衛 隊 は 航 空 優 勢 海 上 優 勢 の 確 保 と 陸 上 兵 力 の 機 動 展 開 能 力 の 強 化 を 目 指 している 統 合 機 動 防 衛 力 構 築 のため に 特 に 警 戒 監 視 能 力 情 報 収 集 能 力 輸 送 能 力 指 揮 統 制 通 信 能 力 島 嶼 防 衛 サイ バー 空 間 宇 宙 空 間 における 対 応 弾 道 ミサイル 対 処 大 規 模 災 害 への 対 応 国 際 平 和 協 力 活 動 などが 重 視 されている 防 衛 費 の 減 少 傾 向 は 2013 年 度 に 転 換 したが 厳 しい 財 政 状 況 の 中 防 衛 費 の 抑 制 は 続 いている 2018 年 度 の 防 衛 予 算 案 は 前 年 度 1.5% 増 の 5 兆 541 億 円 である 自 衛 隊 の 定 員 は 24 万 7,160 人 ( 陸 上 自 衛 隊 約 15 万 1,012 人 海 上 自 衛 隊 約 4 万 5,494 人 航 空 自 衛 隊 約 4 万 7,073 人 )で 充 足 率 は 約 91.7%である 海 上 自 衛 隊 は 護 衛 艦 48 隻 体 制 から 54 隻 体 制 への 移 行 が 計 画 され 指 揮 統 制 や 情 報 通 信 能 力 に 優 れた 大 型 のヘリ 搭 載 護 衛 艦 4 隻 を 艦 隊 の 中 心 に 置 き イージス 艦 を 6 隻 から 8 隻 に 増 勢 し 小 型 で 機 動 力 に 優 れた 多 用 途 護 衛 艦 2 隻 を 導 入 する イージス 艦 に 搭 載 する ため 能 力 向 上 型 迎 撃 ミサイル(SM-3 BlockⅡA)の 開 発 推 進 が 行 われている 潜 水 艦 は 16 隻 から 22 隻 に 増 強 し 次 世 代 哨 戒 機 P-1 の 導 入 と 現 行 の P-3C の 能 力 向 上 哨 戒 ヘリの 増 強 により 警 戒 監 視 能 力 を 強 化 する 陸 上 自 衛 隊 は 陸 上 総 隊 を 新 設 するとともに 15 ある 師 団 旅 団 のうち 7 個 の 師 団 旅 団 を 有 事 に 即 応 できる 機 動 師 団 機 動 旅 団 へと 改 編 する これにより 島 嶼 部 の 警 -92-

戒 監 視 や 防 衛 に 迅 速 に 対 応 できる 態 勢 を 整 える さらに 水 陸 機 動 団 の 新 設 南 西 諸 島 へ の 沿 岸 監 視 警 備 隊 の 配 備 機 動 戦 闘 車 の 導 入 オスプレイの 導 入 地 対 艦 誘 導 弾 部 隊 の 強 化 が 計 画 されている 航 空 自 衛 隊 は 航 空 優 勢 の 維 持 と 常 続 警 戒 監 視 のため 戦 闘 機 部 隊 を 12 個 飛 行 隊 (260 機 )から 13 個 飛 行 隊 (280 機 )に 増 強 する これにともない F-35 戦 闘 機 の 導 入 を 進 める とともに F-15 戦 闘 機 の 近 代 化 改 修 を 行 っている また グローバルホーク 新 しい 早 期 警 戒 機 と 空 中 給 油 機 次 世 代 輸 送 機 C-2 の 導 入 も 進 めている 南 西 諸 島 防 衛 のため 那 覇 基 地 の 戦 闘 機 部 隊 を 2 個 飛 行 隊 に 増 勢 し 警 戒 飛 行 隊 を 新 設 する 弾 道 ミサイル 対 応 のた め 能 力 向 上 型 の PAC-3 ミサイル(PAC-3 MSE)の 導 入 も 行 われる (2) 海 上 保 安 庁 領 海 警 備 を 主 任 務 の 1 つとする 海 上 保 安 庁 は 定 員 13,422 人 巡 視 船 128 隻 巡 視 艇 238 隻 飛 行 機 26 機 ヘリコプター48 機 を 備 えている 領 海 警 備 の 重 要 性 が 高 まっているこ とをうけ 近 年 予 算 は 増 加 傾 向 にあり 2016 年 度 は 前 年 度 比 9% 増 の 2,042 億 円 が 要 求 さ れている これにともない 人 員 と 装 備 の 増 強 も 進 んでいる 尖 閣 諸 島 の 領 海 警 備 のため 石 垣 島 に 専 従 部 隊 を 配 備 する 予 定 である 2012 年 の 海 上 保 安 庁 法 の 改 正 により 警 察 官 の 到 着 を 待 たず 離 島 上 で 海 上 保 安 官 が 犯 罪 への 対 処 を 行 えるようになった (3) 運 用 上 の 課 題 と 重 要 海 域 の 警 備 状 況 東 シナ 海 の 常 続 監 視 と 尖 閣 諸 島 の 領 海 警 備 が 最 優 先 課 題 である 海 上 保 安 庁 は 石 垣 島 に 尖 閣 専 従 部 隊 を 新 設 中 で 人 員 600 人 4000 トン 級 のヘリ 搭 載 巡 視 船 2 隻 と 1000 トン 級 の 巡 視 船 10 隻 を 配 備 し 尖 閣 諸 島 の 領 海 警 備 に 充 てる 1000 トン 級 巡 視 船 の 運 用 に 関 し ては 複 数 制 クルーの 導 入 により 12 隻 分 の 稼 働 率 が 見 込 まれる 加 えて 全 国 から 12 隻 の 応 援 を 得 て 合 計 24 隻 で 尖 閣 諸 島 の 警 備 を 行 うことになる また 空 からの 警 戒 監 視 能 力 強 化 のため ジェット 機 2 機 が 石 垣 島 に 配 備 予 定 である 伊 良 部 島 にも 警 備 能 力 を 強 化 した 巡 視 船 9 隻 と 人 員 約 200 人 を 配 備 予 定 である 巡 視 船 と 乗 組 員 の 不 足 は 海 上 保 安 庁 にとって 今 後 も 大 きな 課 題 である 2014 年 に 小 笠 原 諸 島 で 数 百 隻 の 中 国 漁 船 による 赤 サンゴの 密 漁 が 行 われたことをうけて 全 国 の 離 島 や 遠 方 海 域 の 警 備 のための 巡 視 船 の 不 足 が 指 摘 されている 加 えて 尖 閣 専 従 部 隊 の 発 足 に ともない 巡 視 船 の 乗 組 員 の 不 足 が 課 題 となっている このため 海 上 保 安 庁 は 元 職 員 を 再 雇 用 し 巡 視 船 の 運 用 に 充 てている 東 シナ 海 の 常 続 監 視 のため 海 上 自 衛 隊 は 哨 戒 機 による 常 続 監 視 に 加 えて 護 衛 艦 と 潜 水 艦 の 増 強 によって 東 シナ 海 の 監 視 態 勢 を 強 化 している 陸 上 自 衛 隊 は 与 那 国 島 に 沿 岸 監 視 部 隊 を 宮 古 島 や 奄 美 大 島 に 警 備 隊 を 配 備 する 予 定 で 石 垣 島 にも 警 備 隊 の 配 備 を 検 -93-

討 している 航 空 自 衛 隊 は 那 覇 基 地 の 戦 闘 機 部 隊 を 2 個 飛 行 隊 に 増 勢 し 警 戒 飛 行 隊 を 新 設 し 急 増 する 中 国 機 へのスクランブルに 備 える 態 勢 を 整 えている 統 合 機 動 防 衛 力 構 想 は 統 合 輸 送 を 前 提 としているが 輸 送 力 不 足 は 大 きな 課 題 となっ ている 海 上 自 衛 隊 は 輸 送 艦 を 改 修 して 水 陸 両 用 車 やオスプレイの 運 用 を 可 能 にしてい るが 輸 送 艦 の 数 は 不 十 分 である 輸 送 力 不 足 を 補 うため 民 間 船 を 有 事 に 使 用 できる 契 約 を 結 ぶほか 民 間 船 員 を 予 備 自 衛 官 に 任 命 することも 検 討 されている また 海 上 自 衛 隊 はソマリア 沖 アデン 湾 での 海 賊 対 処 のため 常 時 2 隻 の 護 衛 艦 2 機 の 哨 戒 機 を 派 遣 し ているが 東 シナ 海 の 常 続 監 視 を 行 う 上 で 運 用 上 の 大 きな 負 担 になっている より 根 本 的 な 課 題 は 海 上 自 衛 隊 が 従 来 の 領 域 の 海 上 交 通 路 の 安 全 確 保 に 加 えて 領 域 防 衛 への 貢 献 が 求 められていることである 海 上 自 衛 隊 は 東 京 グアム 台 湾 を 結 ぶ TGT 海 域 の 海 洋 統 制 を 重 視 し 装 備 の 調 達 と 作 戦 運 用 を 行 ってきた これは 商 船 の 安 全 確 保 に 加 え 有 事 の 際 の 米 軍 の 来 援 を 確 保 するためであるが 領 域 防 衛 の 重 要 性 に 鑑 み 海 上 自 衛 隊 は 作 戦 運 用 構 想 の 転 換 を 迫 られている 3. 他 国 との 関 係 海 洋 安 全 保 障 は 日 米 同 盟 の 大 きな 柱 であり 日 本 は 米 第 七 艦 隊 の 司 令 部 と 空 母 戦 闘 群 の 拠 点 となっているだけでなく アメリカとの 様 々な 訓 練 演 習 を 通 じて 共 同 対 処 能 力 を 高 めている 平 和 安 全 保 障 法 制 の 下 で 自 衛 隊 による 米 艦 防 護 が 可 能 となり 日 米 の 作 戦 協 力 がより 一 層 深 まる 近 年 は 島 嶼 防 衛 が 重 視 されており 日 米 統 合 演 習 ドーン ブリッツ が 毎 年 行 われている 2015 年 に 改 定 された 日 米 防 衛 協 力 のための 指 針 (ガイドライン)で は 島 嶼 防 衛 における 日 米 の 役 割 分 担 が 明 確 化 され 日 本 が 主 体 的 に 行 う 作 戦 に 米 国 が 支 援 を 行 うと 定 められた また 日 米 豪 日 米 印 による 海 洋 安 全 保 障 協 力 も 進 んでおり 日 米 豪 では 潜 水 艦 の 共 同 開 発 が 検 討 され 日 米 印 では 米 印 の マラバール 演 習 に 自 衛 隊 が 常 時 参 加 することが 決 まっている 南 シナ 海 で 緊 張 が 高 まっていることを 背 景 に 日 本 はフィリピンやベトナムへの 能 力 構 築 支 援 を 重 視 している 巡 視 船 の 提 供 に 加 えて 政 府 開 発 援 助 (ODA)の 戦 略 的 活 用 によ るインフラ 開 発 が 検 討 されている 海 上 自 衛 隊 はフィリピン 海 軍 の 定 期 演 習 やベトナムと の 共 同 訓 練 スービック 基 地 やカムラン 湾 への 寄 港 を 行 い 南 シナ 海 でのプレゼンスを 強 化 している 中 国 との 間 では 自 衛 隊 と 人 民 解 放 軍 の 間 で 海 空 連 絡 メカニズムの 協 議 が 進 められ 司 令 部 間 のホットラインの 設 置 や 定 期 協 議 の 開 催 で 合 意 しているが メカニズムを 領 海 内 で 適 用 すべきかどうかで 意 見 が 一 致 せず 運 用 開 始 に 至 っていない 日 中 高 級 事 務 レベル 海 -94-

洋 協 議 では 海 洋 安 全 保 障 に 関 する 分 科 会 も 設 置 され 双 方 の 海 洋 関 係 機 関 の 間 で 対 話 が 続 けられている -95-