第 53 回 日 本 学 生 科 学 賞 入 選 3 等 第 53 回 静 岡 県 学 生 科 学 賞 県 教 育 長 賞 3 ホテイアオイのつくるバイオループ 学 校 法 人 静 岡 理 工 科 大 学 静 岡 北 高 等 学 校 科 学 部 水 質 班 2 年 五 島 菜 々 鈴 木 圭 祐 高 橋 周 平 瀧 田 祐 介 村 田 稔 恭 1.はじめに ホテイアオイ( 以 後 は 英 語 名 がWater HyacinthよりWHと 表 記 ) は 南 米 原 産 の 多 年 草 であり 7ヵ 月 で200 万 倍 1) になる 異 常 繁 殖 が 報 告 されている 巴 川 は 全 長 18kmの2 級 河 川 である 麻 機 遊 水 地 はその 中 流 に 位 置 し 総 面 積 は86haである 遊 水 地 では 水 面 の 3 割 がWHで 覆 われている WHが 大 繁 殖 している 水 域 ( 以 後 は 密 集 域 と 表 記 )の 水 が 異 様 に 透 き 通 って 見 えたことが 本 研 究 のきっか けである 更 に 溶 存 酸 素 濃 度 ( 以 降 はDOと 表 記 )の 異 常 な 低 さに 図 1 バイオループの 定 義 着 目 し 密 集 域 では 植 物 プランクトンの 減 少 により 捕 食 食 物 連 鎖 が 弱 まり 植 物 プランクトンが 排 出 する 有 機 物 2) の 代 りにWHが 微 生 物 食 物 連 鎖 の 起 点 となる 溶 存 物 質 を 排 出 し 細 菌 による 著 しいDO 低 下 が 起 こるのではないかと 考 えた 図 1に 示 す 循 環 を ホテイアオイのつくるバイオループ ( 以 降 はBL と 表 記 )と 定 義 した 上 で 密 集 域 においてBLが 形 成 されるという 独 自 の 仮 説 を 立 てた 本 稿 では こ の 仮 説 の 検 証 結 果 と 周 囲 の 水 環 境 に 与 える 影 響 を 考 察 した 2.ホテイアオイのつくるバイオループの 検 証 ⑴ホテイアオイが 水 中 に 溶 存 物 質 を 排 出 することの 検 証 採 取 したWHを 水 道 水 で 洗 浄 後 水 道 水 を 入 れた 水 槽 に 入 れ 室 内 で30 日 間 栽 培 した 2 週 間 目 頃 から WHの 葉 柄 や 根 に 沿 って 細 菌 のコロニーと 思 われる 白 い 物 質 が 現 れ 30 日 後 には 明 確 化 し たことから WHは 水 に 接 している 部 分 から 溶 存 物 質 を 排 出 する 可 能 性 があると 考 えた 検 証 1 WHが 排 出 する 溶 存 物 質 の 特 徴 を 知 る 方 法 1 密 集 域 にあるWH フサモ マツモ オオカナダモを 水 道 水 で20 日 間 栽 培 し 栽 培 水 に 含 まれる 溶 存 物 質 を 分 析 した 栽 培 水 を 孔 径 0.22μmフィルタで 濾 過 後 全 窒 素 (TN) ア ンモニア 態 窒 素 (NH4-N) 亜 硝 酸 態 窒 素 (NO2-N) 硝 酸 態 窒 素 (NO3-N) COD 値 ( 化 学 的 酸 素 要 求 量 )を 測 定 した 有 機 態 窒 素 濃 度 はTN-(NH4-N+NO2-N+NO3-N)で 算 出 した 結 果 1 WH 栽 培 水 の 窒 素 成 分 は 24 時 間 後 と20 日 後 共 に 全 窒 素 中 の 有 機 態 窒 素 の 割 合 が 大 き い COD と 有 機 態 窒 素 濃 度 の 比 較 から 栽 培 水 中 の 有 機 物 に 占 める 窒 素 の 割 合 が 約 1 割 を 占 めることが 分 かった 文 献 1) によると WHの 全 糖 濃 度 は27 ~ 36% WH100g 中 にはアミノ 酸 が0.2 ~ 1.5g 含 まれるため これらの 有 機 態 窒 素 はアミノ 酸 であり COD 値 を 上 昇 させた 主 な 有 機 物 は 糖 であると 推 理 した ⑵ 従 属 栄 養 細 菌 の 急 速 な 増 殖 によりホテイアオイが 大 繁 殖 した 水 中 が 無 酸 素 化 することの 検 証 遊 水 地 からWHを 採 取 し 洗 浄 後 不 透 明 な5つの20l 水 槽 の 表 面 に 隙 間 なく 入 れ 室 内 に 設 置 し 11
水 道 水 で30 日 間 栽 培 した その 結 果 全 ての 水 槽 でDOが3.0 mg/l 以 下 そのうち2つが 1.0mg/l 以 下 に 減 少 した( 図 2) このことから WHがDOを 低 下 させる 一 因 であるこ とが 確 かめられた このDOの 降 下 が 従 属 栄 養 細 菌 の 増 殖 によるものであることを 確 かめるために 検 証 2を 行 った 検 証 2 WHからの 溶 存 物 質 と 従 属 栄 養 細 菌 によって 急 速 なDO 低 下 が 起 きることを 検 証 する 方 法 2 滅 菌 したフラスコに 栽 培 水 から 抽 出 した 従 属 栄 養 細 菌 とWHから 溶 出 した 溶 存 物 質 を 入 れ DO 計 図 2 水 槽 内 のDOの 推 移 をフラスコに 挿 入 した 後 密 封 した 30 で 培 養 し 培 養 中 のDOの 変 化 を 測 定 した 対 照 実 験 として 細 菌 のみと 溶 存 物 質 のみのサンプ ルを 同 条 件 で 培 養 した 準 備 1 図 2の5つの 水 槽 のうち 最 も 無 酸 素 化 が 進 行 した 水 槽 3から 採 水 し その 水 を 孔 径 6μm フィルタで 濾 過 した 濾 液 を 孔 径 0.7μmフィルタで0.1l 濾 過 し 細 菌 のみを 抽 出 した 準 備 2 WH40gをミキサーで 粉 砕 し イオン 交 換 水 1lに 加 え 900rpmで1 時 間 攪 拌 した 攪 拌 した 溶 液 を 孔 径 0.2μmフィルタで 濾 過 滅 菌 し WHの 溶 存 物 質 だけを 抽 出 した 結 果 2 従 属 栄 養 細 菌 とWHから 抽 出 した 溶 存 物 質 を 共 に 入 れた 場 合 のみ 急 激 なDO 低 下 が 起 きた WHの 溶 存 物 質 のみの 場 合 のDO 低 下 はわずかなため 溶 存 物 質 が 化 学 的 に 酸 化 する 際 に 起 きたと 考 えられる 細 菌 だけを 入 れた 場 合 の DOはほとんど 変 化 しなかった 以 上 から WHの 溶 存 物 質 を 従 属 栄 養 細 菌 が 消 費 する 際 に 水 中 の 酸 素 を 消 費 し 急 速 なDO 低 下 が 起 きることが 示 唆 された 検 証 3 DO 低 下 に 関 するアミノ 酸 と 糖 の 関 与 を 調 べる 検 証 1と2よりWHの 溶 存 物 質 にアミノ 酸 と 糖 が 含 有 されること WHの 溶 存 物 質 を 細 菌 が 消 費 し 貧 酸 素 化 することが 示 唆 され た 検 証 3では 検 証 2の 実 験 セットでWHの 溶 存 物 質 の 代 りにアミノ 酸 と 糖 を 添 加 し こ れらのBLにおける 水 中 の 無 酸 素 化 への 関 与 を 明 確 にする 方 法 3 滅 菌 した5つのフラスコに 準 備 1で 抽 出 した 従 属 栄 養 細 菌 と 下 記 の 準 備 3のアミノ 酸 溶 液 とブドウ 糖 溶 液 とWHの 溶 存 物 質 をそれぞれ 入 れ DO 計 をフラスコに 挿 入 した 後 密 封 する 30 で 培 養 し 培 養 期 間 中 のDOの 変 化 を 測 定 した 準 備 3 イオン 交 換 水 1lにペプトンをそれぞれ0.022g 0.044g 1.65g 加 え 実 験 時 に0.02g/l 0.04g/l 1.5g/lの 濃 度 になるアミノ 酸 溶 液 をつくった 同 様 にブドウ 糖 をそれぞれ 0.022g 1.1gを 加 え 実 験 時 に0.02g/l 1.0g/lの 濃 度 になるブドウ 糖 溶 液 をつくった 結 果 3 アミノ 酸 濃 度 が 高 いほどDOの 低 下 速 度 が 大 きいた め DO 低 下 へのアミノ 酸 の 関 与 が 分 かった ブド ウ 糖 濃 度 を 変 えてもDO 低 下 が 緩 やかなことから 糖 の 関 与 は 低 いことが 分 かった 以 上 から WH 栽 培 水 から 抽 出 した 細 菌 は 糖 よりもアミノ 酸 を 多 く 消 費 する または WHが 排 出 する 成 分 は 糖 がアミノ 酸 より 圧 倒 的 に 多 く WH 栽 培 水 には 糖 が 十 分 にある 可 能 性 がある どちらの 場 合 でも 溶 存 アミノ 酸 が 従 属 栄 養 細 菌 の 増 殖 を 制 限 している 要 因 になっていると 考 えられた 12
検 証 4 ホテイアオイのつくるバイオループ における 無 酸 素 化 が 従 属 栄 養 細 菌 の 増 殖 によって 起 きることを 確 かめる 方 法 4 検 証 3のペプトン 濃 度 0.02g/lの 実 験 セットを 用 い 懸 濁 態 濃 度 と 懸 濁 態 起 因 のCOD 値 ( 以 降 はP-CODと 表 記 )を3 時 間 ごとに 測 定 した 1 懸 濁 態 濃 度 (OD)は 紫 外 線 可 視 分 光 光 度 計 で 測 定 した660nmの 吸 光 度 と 定 義 した 2P-COD=T-COD-D-CODと 定 義 した T-COD(Total COD)はフラスコから 採 水 した 溶 液 のCOD 値 D-CODは 同 サンプルの 孔 径 0.22μmフィルタによる 濾 液 のCOD 値 である 結 果 4 ODは 白 濁 の 度 合 いを 定 量 化 している フラスコ 内 に 入 れた 有 機 物 はWH 栽 培 水 中 の 溶 存 物 質 と 細 菌 ペプトン であるため P-COD 値 は 細 菌 起 因 の 有 機 物 の 濃 度 であ る DO 低 下 は 培 養 を 開 始 してから6~ 12 時 間 後 が 顕 著 である ODとP-CODはその 前 後 6 時 間 である18 時 間 後 までに 増 加 が 確 認 できた 以 上 から WH 栽 培 水 から 抽 出 した 細 菌 にアミノ 酸 を 与 えると 細 菌 の 個 体 数 が 増 加 し DOが 低 下 することが 分 かった 検 証 1よりWHが 排 出 する 溶 存 物 質 にはアミノ 酸 が 含 まれているので 密 集 域 では WHが 排 出 する 溶 存 物 質 によって 従 属 栄 養 細 菌 の 増 殖 し 無 酸 素 化 が 起 きることが 指 示 された ⑶ 水 中 が 無 酸 素 化 することにより 無 機 リンが 溶 出 することを 検 証 する 検 証 5 無 酸 素 化 することによって 遊 水 地 の 底 泥 から 無 機 リンが 溶 出 することを 検 証 する 方 法 5 遊 水 地 の 底 泥 と 水 WHを 採 取 し 40lの 樽 に 入 れ 屋 上 で1ヶ 月 栽 培 した 後 栽 培 した 水 を 採 取 孔 径 6μmフィルタで 濾 過 し 従 属 栄 養 細 菌 を 含 んだ 水 を300g 抽 出 した 滅 菌 した1lフラスコに 遊 水 地 の 底 泥 30gと 抽 出 した 水 300g イオン 交 換 水 800gを 入 れ ペプ トンを 添 加 し 密 封 した 30 で 培 養 し PO4 濃 度 の 変 化 を 測 定 した 結 果 5 添 加 したアミノ 酸 の 量 に 比 例 して PO4の 溶 出 量 が 増 加 した ことから 以 下 の1~3が 分 かった 1 結 果 3より 嫌 気 状 態 が 保 持 された 時 間 が 長 いほど 溶 出 する 無 機 リンの 量 が 増 加 す る 2 結 果 4より 従 属 栄 養 細 菌 が 多 いほど 溶 出 した 無 機 リン の 量 が 増 加 する 3 遊 水 地 の 底 泥 には 大 量 のリン 酸 が 蓄 積 さ れている 可 能 性 がある 検 証 6 遊 水 地 の 密 集 域 がつくる 貧 酸 素 状 態 と 無 機 リン 濃 度 の 関 連 性 を 明 確 にする 方 法 6 密 集 域 と 周 辺 の35 地 点 のDOとPO4 濃 度 を 測 定 した 底 泥 付 近 からバンドン 採 水 器 を 用 い て 嫌 気 を 保 持 しながら 採 水 後 ゴムチュー ブを 装 着 したシ リ ン ジ と0.2μ mフィルタ 濾 過 器 を 用 いて 濾 過 し 濾 液 のPO4 を 測 定 した 13
結 果 6 35 地 点 のDOとPO4 濃 度 には 負 の 相 関 が 見 られた 密 集 域 ではDOが0 1mg/lかつPO4 濃 度 が0.5mg/l 以 上 であり 他 の 水 域 と 比 較 すると 貧 酸 素 かつ 無 機 リン 濃 度 が 高 いこと が 明 確 である また DOは 密 集 域 に 近 付 くにつれて 減 少 し PO4 濃 度 の 増 加 から 密 集 域 がDO 低 下 と 無 機 リン 濃 度 上 昇 に 関 与 していることが 分 かった 結 果 5より 密 集 域 で は 安 定 した 嫌 気 状 態 が 長 時 間 保 たれていることが 分 かった 3.ホテイアオイのつくるバイオループが 周 囲 の 水 環 境 に 与 える 影 響 検 証 6ではBLにより 底 泥 付 近 から 高 濃 度 の 無 機 リンが 溶 出 している ことが 分 かった 図 3は 遊 水 地 における 流 入 から 放 流 までのリン 酸 態 リン( 以 降 はPO4-Pと 表 記 ) 濃 度 の 変 化 を 晴 天 時 と 降 雨 後 に 調 査 した 結 果 である 密 集 域 付 近 である 流 入 地 点 AとBでは 晴 天 時 の 方 がPO4-P 濃 度 が 高 く 密 集 域 から 離 れた 連 結 地 点 Cと 放 流 地 点 Dでは 降 雨 後 の 方 が PO4-P 濃 度 が 高 くなっていることから BLによって 溶 出 した 無 機 リン が 他 の 水 域 や 河 川 へ 負 荷 を 与 えていることが 分 かった 図 4に 遊 水 地 の 流 入 から 放 流 までのCOD 値 とNO3 濃 度 を 示 した 流 入 地 点 AとB 付 近 に 密 集 域 があり 流 入 地 点 AとBからの 流 入 水 は 密 集 域 を 通 り 遊 水 地 の 図 3 PO4-P 濃 度 比 較 他 の 水 域 へ 流 出 している 図 4より 密 集 域 に 流 入 前 の 濃 度 より 密 集 域 から 流 出 後 のNO3 濃 度 が 低 下 する 傾 向 があることから WHまたは 従 属 栄 養 細 菌 によって 消 費 または 脱 窒 された 可 能 性 が 示 唆 された COD 値 はNO3 濃 度 の 変 化 と 反 対 に 密 集 域 から 流 出 後 の 方 が 高 いことか ら 密 集 域 から 流 出 した 無 機 栄 養 塩 により 植 物 プランクトン 等 が 増 殖 することで 有 機 物 濃 度 を 高 めていると 推 測 された 以 上 から 密 集 域 で は 窒 素 濃 度 の 低 下 と 遮 光 により 植 物 プランク 図 4 遊 水 地 の 流 入 から 放 流 までのCOD 値 とNO3 トンの 増 殖 が 抑 えられているが その 周 囲 の 水 域 では 植 物 プランクトンが 増 殖 する 状 況 になりやすい という 仮 説 を 立 てた 検 証 7 WH 繁 殖 時 期 と 密 集 域 の 周 囲 の 無 機 栄 養 塩 濃 度 と 植 物 プランクトン 増 殖 の 関 係 をみる 方 法 7 麻 機 遊 水 地 では4~ 12 月 にWHが 繁 殖 する 密 集 域 から200m 離 れている 水 域 で NO3と PO4 濃 度 COD 値 とクロロフィル 濃 度 を 約 一 年 間 測 定 し 無 機 栄 養 塩 と 植 物 プランクト ン 濃 度 を 比 較 した クロロフィル 濃 度 の 算 出 は 三 波 長 吸 光 光 度 法 を 用 いた 結 果 7 WHが 大 繁 殖 しなかった1~3 月 と NO3 濃 度 が 高 い 期 間 が 一 致 したこと から 遊 水 地 に 流 入 するNO3が 年 間 を 通 して 一 定 であると 仮 定 すると WH の 大 繁 殖 が 窒 素 濃 度 を 低 下 させる 一 因 になっていると 考 えられる 一 般 的 に 植 物 プランクトンは 組 成 比 (N: P=16:1)に 近 い 栄 養 塩 を 含 有 する 水 域 において 増 殖 が 著 しい 1~3 月 以 外 の 遊 水 地 において リン 濃 度 に 対 して 窒 素 濃 度 が16 倍 に 満 たない 状 態 ( 以 降 は 窒 素 制 限 と 表 記 )のため 植 物 プランクトンの 増 殖 が 抑 制 14
されていると 考 えられる 1~3 月 以 外 のCODとクロロフィル 濃 度 がほぼ 一 定 になって いることから 窒 素 制 限 のために 植 物 プランクトンの 増 殖 が 抑 制 されていることが 分 かっ た 1~3 月 はWHの 減 少 により 窒 素 制 限 が 解 除 されたが 水 温 の 低 下 により 増 殖 が 抑 制 されたと 考 えた 以 上 より 現 状 は WHの 大 増 殖 により 無 機 栄 養 塩 が 密 集 域 で 止 められ ているが WHを 駆 除 すると 植 物 プランクトンが 増 殖 して 淡 水 赤 潮 やアオコを 引 き 起 す 危 険 性 があると 示 唆 された 検 証 8 WHが 排 出 する 溶 存 物 質 が 植 物 プランクトンの 増 殖 に 与 える 影 響 をみる 検 証 7では 栄 養 塩 濃 度 上 昇 による 植 物 プランクトンが 大 増 殖 する 可 能 性 があることを 述 べた この 検 証 では 2で 検 証 したBLの 起 点 であるWHが 排 出 する 溶 存 物 質 が 植 物 プランクトンの 増 殖 に 与 える 影 響 について 検 証 する 方 法 8 密 集 域 から200m 離 れた 水 域 から 採 水 した N:Pを10:1に 調 整 後 検 証 2の 準 備 2で 抽 出 したWHの 溶 存 物 質 を 添 加 したものとしないものを 水 温 30 14W 蛍 光 灯 8 本 照 射 を 保 ち 2 週 間 培 養 し 植 物 プランクトンの 増 殖 の 様 子 を 顕 微 鏡 で 比 較 した 結 果 8 WHから 抽 出 した 溶 存 物 質 を 添 加 したフラスコにおいて 特 定 の 植 物 プランクトンだけが 増 殖 する 現 象 が 起 きた 5 月 の 遊 水 地 からの 採 水 にWHから 抽 出 した 溶 存 物 質 を 添 加 した 結 果 ミカヅキモだけが 増 殖 し 単 離 された 状 態 になった 6 月 と7 月 の 遊 水 地 からの 採 水 にWHから 抽 出 した 溶 存 物 質 を 添 加 した 結 果 それぞれアオコの 原 因 となるミクロキス ティスと 同 目 である 藍 藻 や 窒 素 固 定 ができるアナベナと 同 目 である 藍 藻 だけが 増 殖 した どの 場 合 もWHの 溶 存 物 質 を 添 加 していないサンプルでは 植 物 プランクトンは 増 殖 した が 単 離 された 状 態 にはならなかったため WHの 溶 存 物 質 が 特 定 の 植 物 プランクトンの 増 殖 を 促 進 または 抑 制 する 効 果 があると 推 測 された 4.まとめ 本 稿 では WHが 排 出 する 溶 存 物 質 が 微 生 物 食 物 連 鎖 の 起 点 となり 従 属 栄 養 細 菌 が 急 速 に 増 殖 し DO 低 下 が 起 きることを 明 らかにした 更 にDO 低 下 が 進 み 水 中 の 無 酸 素 化 により 底 泥 から 無 機 リン が 溶 出 し WHの 繁 殖 を 促 進 する 一 因 になることを 示 した これらの 一 連 の 循 環 を 本 稿 では ホテイア オイのつくるバイオループ と 定 義 した WHが 大 繁 殖 した 水 域 とその 付 近 水 域 では BLの 影 響 によっ て 窒 素 制 限 と 無 機 リン 濃 度 上 昇 が 起 きるため 窒 素 固 定 ができるアナベナ 等 の 藍 藻 類 が 大 繁 殖 する 可 能 性 がある また WHの 溶 存 物 質 を 添 加 した 培 養 実 験 の 結 果 から 大 繁 殖 したWH 群 を 駆 除 した 直 後 には 遮 光 や 窒 素 制 限 が 解 除 され 特 定 の 植 物 プランクトンだけが 増 殖 する 可 能 性 がある 特 定 の 植 物 プラン クトンだけに 限 定 された 水 域 に 土 壌 から 溶 出 した 無 機 リンとBLに 閉 じ 込 められていた 無 機 窒 素 が 流 入 すれば 特 定 の 種 の 植 物 プランクトンだけが 増 殖 する 危 険 性 が 高 い 培 養 実 験 の 結 果 から WHの 異 常 繁 殖 とアオコ 発 生 を 関 連 付 ける 手 掛 かりを 得 た 5. 今 後 の 課 題 密 集 域 の 周 囲 の 水 質 と 植 物 プランクトン 相 の 調 査 を 継 続 することにより 実 験 室 で 起 きたアオコ 発 生 が 遊 水 地 で 起 きている 証 拠 を 収 集 し WH 大 繁 殖 とアオコ 発 生 の 因 果 関 係 を 明 確 にする 更 に ホテ イアオイのつくるバイオループ を 考 慮 したWHの 駆 除 方 法 や 水 質 環 境 改 善 策 を 考 案 したい 6. 参 考 文 献 ⑴ 石 井 猛.ホテイアオイは 地 球 を 救 う. 増 補 1 版, 内 田 老 鶴 圃,1996,126p. ⑵ 日 本 微 生 物 生 態 学 会 教 育 研 究 部 会. 微 生 物 生 態 学 入 門. 日 科 技 連,2004,273p. 15