食 品 中 の 放 射 性 物 質 による 健 康 影 響 について 資 料 1 平 成 24 年 7 月 食 品 安 全 委 員 会 1
放 射 線 放 射 性 物 質 について 2
α 線 β 線 γ 線 X 線 放 射 線 とは 物 質 を 通 過 する 高 速 の 粒 子 高 いエネルギーの 電 磁 波 ガンマ(γ) 線 /エックス(X) 線 ガンマ 線 はエックス 線 と 同 様 の 電 磁 波 物 質 を 透 過 する 力 がアルファ 線 やベータ 線 に 比 べて 強 い ベータ(β) 線 電 子 の 流 れ 薄 いアルミニウム 板 で 遮 ることができる アルファ(α) 線 ヘリウムと 同 じ 原 子 核 の 流 れ 薄 い 紙 1 枚 程 度 で 遮 ることができる 紙 アルミニウム 等 薄 い 金 属 板 鉛 3
放 射 能 と 人 体 影 響 の 単 位 放 射 能 の 強 さ の 単 位 は ベクレル 人 体 影 響 レベル の 単 位 は シーベルト ベクレルとシーベルトをつなぐ 実 効 線 量 係 数 単 位 :ベクレル(Bq) 放 射 線 を 出 す 能 力 の 強 さ 食 品 検 査 などの 結 果 表 示 で 使 う 単 位 :シーベルト(Sv) 全 身 の 人 体 影 響 ( 実 効 線 量 ) 内 部 被 ばく 実 効 線 量 係 数 放 射 性 物 質 の 摂 取 後 50 年 間 ( 子 供 は70 歳 まで) に 受 ける 線 量 を 計 算 するための 換 算 係 数 4
放 射 性 物 質 を 摂 った 時 の 人 体 影 響 ( 計 算 方 法 ) 例 :1kgあたり100ベクレルのセシウム137を 含 む 食 品 を1kg 食 べ た 場 合 の 放 射 線 による 人 体 影 響 の 程 度 (シーベルト) ( 成 人 の 場 合 ) 食 べた 量 実 効 線 量 ベクレル/kg (kg) 係 数 = ミリシーヘ ルト(mSv) 100ヘ クレル/kg 1kg 0.000013=0.0013ミリシーヘ ルト(mSv) 実 効 線 量 係 数 は 放 射 性 物 質 の 種 類 (セシウム137など)ごと 摂 取 経 路 ( 経 口 吸 入 など)ごと 年 齢 区 分 ごとに 国 際 放 射 線 防 護 委 員 会 (ICRP) 等 で 設 定 参 考 : 実 効 線 量 係 数 の 例 ( 経 口 摂 取 ) ( 出 典 ) 国 際 放 射 線 防 護 委 員 会 (ICRP) Publication 72 (1996) 0 歳 ~2 歳 ~7 歳 ~12 歳 ~17 歳 18 歳 ~ ヨウ 素 131 0.00018 0.00018 0.00010 0.000052 0.000034 0.000022 セシウム137 0.000021 0.000012 0.0000096 0.000010 0.000013 0.000013 カリウム40 0.000062 0.000042 0.000021 0.000013 0.0000076 0.0000062 5
放 射 性 物 質 が 減 る 仕 組 み 体 内 に 入 った 放 射 性 物 質 は 放 射 性 物 質 の 性 質 と 排 泄 などの 体 の 仕 組 みによって 減 少 する 物 理 学 的 半 減 期 ( 放 射 性 物 質 の 放 射 能 が 弱 まる) ベク レル ベク 100 50 25 レル ベク レル ( 体 内 に) 生 物 学 的 半 減 期 ( 体 内 の 放 射 性 物 質 が 減 る) 100g 50g 25g 減 衰 減 衰 物 理 学 的 半 減 期 の 例 セシウム134は2.1 年 セシウム137は 30 年 ヨウ 素 131は8 日 排 出 排 出 排 出 放 射 性 セシウムの 生 物 学 的 半 減 期 ~1 歳 9 日 ~9 歳 38 日 ~30 歳 70 日 ~50 歳 90 日 6
内 部 被 ばくと 外 部 被 ばく 内 部 被 ばくも 外 部 被 ばくも 人 体 影 響 は 同 じ 単 位 の シーベルト 内 部 被 ばくでは 体 内 での 存 在 状 況 に 応 じた 放 射 性 物 質 からの 被 ばくが 続 くことを 考 慮 して 線 量 が 計 算 される 内 部 被 ばく ( 食 品 摂 取 吸 入 ) 外 部 被 ばく 被 ばく 線 量 の 単 位 :シーベルト = 放 射 能 の 強 さ(ベクレル) 実 効 線 量 係 数 摂 取 後 50 年 間 ( 子 供 は70 歳 まで) に 受 ける 積 算 の 線 量 ( 預 託 線 量 ) 被 ばく 線 量 :シーベルト = 線 量 率 (msv/ 時 ) 被 ばくした 時 間 ( 時 ) 7
もともとある 自 然 放 射 線 から 受 ける 線 量 1 人 あたりの 年 間 線 量 ( 日 本 人 平 均 )は 約 1.5ミリシーベルト 大 気 中 の ラドン トロン から 食 品 から 0.40 部 被 ば 内 0.41 合 計 1.5mSv く 外 0.29 部 く 被 ば 宇 宙 線 から 大 地 から 0.38 日 本 国 内 でも 最 大 約 0.4ミリシーベルト の 地 域 差 があります 出 典 : 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 2007 自 然 放 射 線 の 量 は 地 質 により 異 なるため 地 域 差 がある 食 品 にはカリウム40などが 含 まれている 8
通 常 の 食 品 に 含 まれる 放 射 性 物 質 (カリウム40) 食 品 名 放 射 能 食 品 名 放 射 能 干 し 昆 布 2,000Bq/kg 魚 100Bq/kg 干 し 椎 茸 700Bq/kg 牛 乳 50Bq/kg お 茶 600Bq/kg 米 30Bq/kg ドライミルク 200Bq/kg 食 パン 30Bq/kg 生 わかめ 200Bq/kg ワイン 30Bq/kg ほうれん 草 200Bq/kg ビール 10Bq/kg 牛 肉 100Bq/kg 清 酒 1Bq/kg (ATOMICA( 財 ) 高 度 情 報 科 学 技 術 研 究 機 構 から 転 載 ( 出 典 :( 独 ) 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 資 料 )) カリウムは ナトリウムの 排 泄 を 促 し 血 圧 の 上 昇 を 制 御 するなど 健 康 を 保 つのに 必 要 なミネラル カリウムは 自 然 界 に 存 在 し 動 植 物 にとって 必 要 な 元 素 であり その0.012% 程 度 が 放 射 性 物 質 であるカリウム40 9
放 射 線 による 健 康 影 響 の 種 類 確 定 的 影 響 比 較 的 高 い 放 射 線 量 で 出 る 影 響 高 線 量 による 脱 毛 不 妊 など 急 性 被 ばくによる 永 久 不 妊 のしきい 値 は 男 性 3500mSv 女 性 2500mSv 出 典 : 国 際 放 射 線 防 護 委 員 会 (ICRP) 妊 娠 と 医 療 放 射 線 (Publication 84) 確 率 的 影 響 発 症 の 確 率 が 線 量 とともに 増 える とされる 影 響 がん( 白 血 病 含 む) ( 遺 伝 的 影 響 については ヒトの 調 査 では 見 られて いません) 10
食 品 中 の 放 射 性 物 質 に 関 する 食 品 健 康 影 響 評 価 ( 食 品 安 全 委 員 会 のリスク 評 価 ) 11
放 射 性 物 質 に 関 するリスク 評 価 とリスク 管 理 の 取 組 内 閣 府 食 品 安 全 委 員 会 (リスク 評 価 機 関 ) 食 品 中 の 危 害 物 質 摂 取 による 厚 生 労 働 省 (リスク 管 理 機 関 ) リスク 評 価 結 果 に 基 づき 科 学 的 知 見 客 観 的 中 立 公 正 政 策 的 費 用 対 効 果 技 術 的 可 能 性 不 安 など 国 民 感 情 リスク 評 価 の 実 施 食 品 ごとの 規 制 値 等 を 決 定 緊 急 とりまとめ(H23 年 3 月 29 日 ) ICRPの 実 効 線 量 10mSv/ 年 緊 急 時 の 対 応 として 不 適 切 とまで 言 える 根 拠 は 見 いだせず 放 射 性 セシウム 5mSv/ 年 はかなり 安 全 側 に 立 ったもの 評 価 を 要 請 結 果 を 通 知 緊 急 を 要 するため 暫 定 規 制 値 を 設 定 (H23 年 3 月 17 日 ) 暫 定 規 制 値 の 維 持 を 決 定 (H23 年 4 月 4 日 ) 継 続 してリスク 評 価 を 実 施 評 価 結 果 をとりまとめ(H23 年 10 月 27 日 ) 結 果 を 通 知 新 たな 基 準 値 の 設 定 H24 年 4 月 施 行 12
食 品 健 康 影 響 評 価 にあたって1 国 内 外 の 放 射 線 の 健 康 影 響 に 関 する 文 献 を 検 討 ( 約 3300 文 献 ) UNSCEAR( 原 子 放 射 線 に 関 する 国 連 科 学 委 員 会 ) 等 の 報 告 書 とその 引 用 文 献 ICRP( 国 際 放 射 線 防 護 委 員 会 ) WHO( 世 界 保 健 機 関 )の 公 表 資 料 等 次 の 観 点 から 文 献 を 精 査 被 ばく 線 量 の 推 定 が 信 頼 に 足 るか 調 査 研 究 手 法 が 適 切 か 等 外 部 被 ばくを 含 む 疫 学 データの 援 用 食 品 由 来 の 内 部 被 ばくに 限 定 した 疫 学 データは 極 めて 少 なく 外 部 被 ばくを 含 んだ 疫 学 データも 用 いて 検 討 13
食 品 健 康 影 響 評 価 にあたって2 国 際 機 関 においては リスク 管 理 のために 高 線 量 域 で 得 られたデータを 低 線 量 域 にあてはめた いくつかのモデルが 示 されている モデルの 検 証 は 困 難 ( 参 考 ) 国 際 機 関 におけるモデルの 例 被 ばくした 人 々の 実 際 の 疫 学 データ に 基 づいて 判 断 影 響 が 現 れ る 確 率 低 線 量 域 高 線 量 域 被 ばくによる 確 率 増 加 自 然 発 生 による 影 響 100mSv(50~200mSvとも) 線 量 出 典 :( 独 ) 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 HP http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i13より 改 変 作 成 14
食 品 健 康 影 響 評 価 の 基 礎 となった 疫 学 データ インドの 自 然 放 射 線 量 が 高 い( 累 積 線 量 500 msv 強 ) 地 域 で 発 がんリスクの 増 加 がみられなかった 報 告 白 血 病 による 死 亡 リスク 被 ばくした 集 団 (Shimizu et al. 1988) 被 ばくして ない 集 団 統 計 学 的 に 比 較 固 形 がんによる 死 亡 リスク 被 ばく 線 量 0~125mSV の 集 団 (Nair et al. 2009) 広 島 長 崎 の 被 ばく 者 における 疫 学 データ 被 ばく 線 量 が 増 えると リスクが 高 くなることが (Preston et al. 2003) 被 ばく 線 量 0~100mSV の 集 団 200mSv 以 上 でリスクが 上 昇 200mSv 未 満 で 差 はなかった 統 計 学 的 に 確 かめられた 統 計 学 的 に 確 かめられず : 被 ばくした 放 射 線 がβ 線 又 はγ 線 だったと 仮 定 して 放 射 線 荷 重 係 数 1を 乗 じた 15
食 品 健 康 影 響 評 価 の 参 考 とした 小 児 胎 児 に 関 する 疫 学 データ チェルノブイリ 原 子 力 発 電 所 事 故 に 関 連 した 報 告 5 歳 未 満 であった 小 児 に 白 血 病 のリスクの 増 加 (Noshchenko et al. 2010) 被 ばく 時 の 年 齢 が 低 いほど 甲 状 腺 がんの リスクが 高 い (Zablotska et al. 2011) ただし どちらも 線 量 の 推 定 等 に 不 明 確 な 点 があった 胎 児 への 影 響 1 Sv 以 上 の 被 ばくにより 精 神 遅 滞 がみられたが 0.5 Sv 以 下 の 線 量 で 健 康 影 響 が 認 められなかった (UNSCEAR 1993) : 被 ばくした 放 射 線 がβ 線 又 はγ 線 だったと 仮 定 して 放 射 線 荷 重 係 数 1を 乗 じた 16
食 品 健 康 影 響 評 価 の 結 果 の 概 要 ( 平 成 23 年 10 月 27 日 食 品 安 全 委 員 会 ) 放 射 線 による 影 響 が 見 いだされているのは 生 涯 における 追 加 の 累 積 線 量 が おおよそ100 msv 以 上 ( 通 常 の 一 般 生 活 で 受 ける 放 射 線 量 ( 自 然 放 射 線 や 医 療 被 ばくなど)を 除 く) そのうち 小 児 の 期 間 については 感 受 性 が 成 人 より 高 い 可 能 性 ( 甲 状 腺 がんや 白 血 病 )がある 100mSv 未 満 の 健 康 影 響 について 言 及 することは 困 難 と 判 断 曝 露 量 の 推 定 の 不 正 確 さ 放 射 線 以 外 の 様 々な 影 響 と 明 確 に 区 別 できない 可 能 性 根 拠 となる 疫 学 データの 対 象 集 団 の 規 模 が 小 さい 17
おおよそ100mSv とは 安 全 と 危 険 の 境 界 ではなく 食 品 についてリスク 管 理 機 関 が 適 切 な 管 理 を 行 うために 考 慮 すべき 値 これを 超 えると 健 康 上 の 影 響 が 出 る 可 能 性 が 高 まることが 統 計 的 に 確 認 されている 値 食 品 からの 追 加 的 な 実 際 の 被 ばく 量 に 適 用 されるもの 18
ご 清 聴 ありがとうございました 19