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研 究 報 告 平 成 27 年 度 建 築 分 野 No.2 花 街 における 伝 統 文 化 を 継 承 した 地 方 創 成 活 動 に 関 する 研 究 The study on regional revitalization by inheriting traditional cultures in kagai 新 潟 大 学 工 学 部 建 設 学 科 教 授 岡 崎 篤 行 ( 研 究 計 画 ないし 研 究 手 法 の 概 略 ) 花 街 とは 主 に 芸 妓 を 呼 べる 料 亭 などが 集 積 する 都 市 の 一 画 を 言 う 明 治 以 降 芸 妓 の 花 街 と 娼 妓 の 遊 廓 に 分 離 され 売 春 防 止 法 施 行 による 遊 廓 の 廃 止 以 後 芸 妓 のいる 花 街 のみが 残 った 芸 妓 の 職 能 は おもてなしと 伝 統 技 芸 の 二 つと 言 われており お 酌 するだけでなく 季 節 やご 当 地 に 合 わせた 舞 礼 儀 作 法 お 座 敷 のしつらえも 含 めて 接 遇 する そのため 花 街 はソフト( 日 本 舞 踊 純 邦 楽 華 道 茶 道 香 道 和 服 日 本 画 日 本 髪 日 本 料 理 日 本 酒 伝 統 工 芸 品 作 法 など) ハード( 建 築 庭 園 街 路 空 間 など)の 双 方 に 渡 り あらゆ る 日 本 の 伝 統 文 化 を 包 括 的 に 継 承 する 唯 一 の 都 市 空 間 だと 言 われている さらに 花 街 は 郷 土 料 理 郷 土 出 身 作 家 の 作 品 新 民 謡 方 言 など 地 元 文 化 を 継 承 する 場 でもある しかし 企 業 接 待 の 減 少 や 娯 楽 の 多 様 化 など 社 会 情 勢 の 変 化 により かつて 全 国 各 地 の 都 市 に 存 在 し た 花 街 は 衰 退 の 一 途 を 辿 っている これに 対 して 近 年 花 街 の 文 化 や 景 観 を 再 評 価 し 都 市 観 光 や 中 心 市 街 地 の 活 性 化 に 活 かそうという 行 政 市 民 の 取 り 組 みが 増 えている 申 請 者 はこれまでに 花 街 における 歴 史 的 建 造 物 や 景 観 の 調 査 を 全 国 的 に 実 施 してきた しかし 花 街 の 文 化 や 景 観 を 活 用 した 中 心 市 街 地 活 性 化 の 取 り 組 みについては 未 だ 明 らかにされていない そこで 本 研 究 は (1) 活 性 化 に 関 わる 官 民 双 方 の 取 り 組 みのプロセス (2) 関 連 組 織 の 運 営 体 制 及 び 組 織 間 の 連 携 (3) 花 街 建 築 の 観 光 拠 点 施 設 としての 活 用 実 態 に 関 して 全 国 的 な 実 態 を 明 らかにすることを 目 的 としたものである 具 体 的 な 調 査 は 以 下 のとおりである (1) 官 民 双 方 の 取 り 組 みのプロセス/(2) 関 連 組 織 の 協 力 体 制 関 係 者 に 対 するヒアリング 調 査 を 行 った これにより 支 援 組 織 による 連 携 活 動 内 容 ( 芸 妓 育 成 支 援 や 花 柳 界 の 行 事 への 支 援 花 街 建 築 の 改 修 への 援 助 など)を 把 握 した (3) 花 街 建 築 の 観 光 拠 点 施 設 としての 活 用 実 態 花 柳 界 関 係 者 関 連 分 野 の 研 究 者 支 援 組 織 関 係 者 等 へのヒアリングおよび 関 連 HPの 参 照 により 歴 史 的 花 街 建 築 ( 検 番 ( 見 番 ) 歌 舞 練 場 茶 屋 揚 屋 など)の 従 来 とは 異 なる 新 た な 活 用 事 例 を 確 認 した これらの 事 例 に 対 して 活 用 されている 歴 史 的 花 街 建 築 の 特 徴 建 物 の 使 い 方 管 理 運 営 方 法 行 政 の 支 援 制 度 などを 把 握 した これにより 各 事 例 による 違 いを 整 理 し 花 街 建 築 の 観 光 拠 点 施 設 としての 活 用 手 法 とその 課 題 を 考 察 した 対 象 地 は 京 都 市 祇 園 甲 部 祇 園 東 宮 川 町 上 七 軒 先 斗 町 ( 以 下 京 都 五 花 街 ) 島 原 東 京 都 浅 草 神 楽 坂 八 王 子 市 中 町 新 潟 市 古 町 金 沢 市 ひがし 主 計 町 にし( 以 下 金 沢 三 茶 屋 街 ) 静 岡 市 清 水 福 岡 市 博 多 とした 1/5

( 実 験 調 査 によって 得 られた 新 しい 知 見 ) (1) 官 民 双 方 の 取 り 組 みのプロセス 古 町 における 官 民 双 方 の 活 動 について 関 連 文 献 資 料 の 参 照 関 係 者 へのヒアリングによ り 調 査 を 行 った 昭 和 5 年 には 新 潟 三 業 協 同 組 合 が 結 成 され 昭 和 30 年 代 には 好 景 気 で 芸 妓 数 が 約 200 名 まで 増 加 するが その 後 40 年 代 から 減 少 し 50 年 代 には 芸 妓 数 は2 桁 となった 芸 妓 数 の 減 少 を 受 け 昭 和 62 年 には 全 国 初 の 置 屋 株 式 会 社 柳 都 振 興 株 式 会 社 が 設 立 され 芸 妓 に 対 して 福 利 厚 生 の 行 き 届 いた 現 代 的 雇 用 形 態 が 実 現 した また 昭 和 62 年 の 第 一 回 開 催 からほぼ 毎 年 開 催 されている 古 町 芸 妓 総 出 演 の 舞 踊 公 演 ふるまち 新 潟 をどり は 平 成 27 年 で27 回 目 を 数 える さらに 平 成 22 年 に 新 潟 市 の 景 観 形 成 推 進 組 織 として 認 定 された 市 民 団 体 古 町 花 街 の 会 が 設 立 され 地 元 まちづくり 団 体 である 新 潟 まち 遺 産 の 会 とともに 毎 年 9 月 に 古 町 花 街 イベントとして 景 観 やまちづくりについて 発 信 するなどの 活 動 が 行 われている こ れを 契 機 として 新 潟 市 により 平 成 24 年 になじらね 協 定 区 域 への 認 定 平 成 25 年 に 古 町 芸 妓 育 成 支 援 補 助 金 の 導 入 平 成 26 年 に 東 新 道 の 石 畳 化 が 行 われた 古 町 花 街 の 会 の 働 きかけに より 平 成 27 年 には 新 潟 市 民 文 化 遺 産 に 認 定 された 図 1 古 町 花 街 の 活 動 年 表 (2) 関 連 組 織 の 協 力 体 制 関 連 する 組 織 を 図 2のように 運 営 組 織 と 支 援 組 織 に 分 類 した 行 政 の 関 連 部 局 との 連 携 関 係 が 確 認 された 金 沢 三 茶 屋 街 静 岡 市 清 水 福 岡 市 博 多 では 伝 統 芸 能 振 興 会 がイベントの 企 画 運 営 芸 妓 育 成 支 援 を 行 っている まちづくり 組 織 との 連 携 関 係 が 確 認 された 先 斗 町 古 町 中 町 では 市 民 団 体 がイベント の 企 画 運 営 等 を 行 い 花 街 の 景 観 演 出 や 周 知 活 動 を 行 っている 神 楽 坂 ではまちづくりを 行 う 株 式 会 社 がイベントの 企 画 運 営 を 行 っている 2/5

京 都 五 花 街 では 公 益 財 団 法 人 京 都 伝 統 伎 芸 振 興 財 団 (おおきに 財 団 )によって 花 柳 界 行 事 や 建 築 物 改 修 芸 妓 の 技 芸 向 上 への 援 助 及 び 広 報 活 動 が 行 われている 同 様 に 金 沢 でも 公 益 財 団 法 人 横 浜 記 念 金 沢 の 文 化 創 生 財 団 により 新 人 芸 妓 や 芸 妓 を 育 成 する 料 亭 経 営 者 およ び 芸 妓 の 広 報 活 動 を 行 っている 図 2 関 連 組 織 一 覧 (3) 歴 史 的 花 街 建 築 の 観 光 拠 点 施 設 としての 活 用 実 態 1) 全 国 的 状 況 花 柳 界 関 係 者 関 連 分 野 の 研 究 者 支 援 組 織 関 係 者 等 へのヒアリングおよび 関 連 HPの 参 照 により 上 七 軒 祇 園 甲 部 宮 川 町 島 原 浅 草 神 楽 坂 金 沢 三 茶 屋 街 において 歴 史 的 花 街 建 築 の 従 来 とは 異 なる 新 たな 活 用 を 確 認 した このうち 現 在 も 芸 妓 によるサービスを 受 けられる 施 設 または 花 柳 界 の 管 轄 下 にある 施 設 ( 以 下 現 役 の 花 街 建 築 )と 現 在 は 営 業 を 行 っていない 施 設 ( 以 下 元 花 街 建 築 )に 分 類 した 活 用 方 法 は 常 時 の 場 合 と 臨 時 の 場 合 の2 通 りが 確 認 された ただし このほかにも 同 様 の 活 動 を 行 っている 花 街 が 存 在 する 可 能 性 は あるため 今 後 も 継 続 した 調 査 を 実 施 することが 必 要 である 2) 現 役 の 花 街 建 築 の 常 時 活 用 京 都 祇 園 甲 部 にある 弥 栄 会 館 ギオンコーナー は 祇 園 甲 部 組 合 事 務 所 公 益 財 団 法 人 京 都 伝 統 伎 芸 振 興 財 団 事 務 所 に 併 設 された 伝 統 文 化 体 験 施 設 であり 常 時 活 用 が 確 認 された 大 規 模 なホールにて 京 舞 華 道 茶 道 琴 雅 楽 狂 言 文 楽 が 披 露 される 初 心 者 でも 分 かりやすいよう パンフレットが 配 布 される 加 えて パンフレットや 案 内 板 は 外 国 人 観 光 客 にも 対 応 したものとなっている 3) 現 役 の 花 街 建 築 の 臨 時 活 用 現 役 の 花 街 建 築 の 臨 時 活 用 は 最 も 多 くの 事 例 が 確 認 された 活 用 手 法 である 3/5

金 沢 三 茶 屋 街 では 各 検 番 を 会 場 としたお 稽 古 風 景 見 学 会 を 実 施 している これは 伝 統 芸 能 振 興 協 同 組 合 が 主 催 するもので 東 料 亭 組 合 へのヒアリングによると 収 入 が 落 ち 込 む 夏 季 の 芸 妓 の 支 援 と 新 規 の 芸 妓 を 募 集 するための 広 報 という 意 図 があるとのことである 実 施 に 係 る 経 費 広 報 などは 伝 統 芸 能 振 興 協 同 組 合 が 担 っているため 料 亭 組 合 の 負 担 は 軽 減 さ れていると 考 えられる このほかにも 支 援 組 織 が 企 画 運 営 するものとして 神 楽 坂 の 見 番 を 会 場 としてお 座 敷 遊 びを 体 験 できるイベントが 確 認 された このイベントでは 支 援 組 織 と してまちづくりを 行 う 株 式 会 社 が 行 政 や 民 間 企 業 と 連 携 して 広 報 を 行 っている 京 都 上 七 軒 と 宮 川 町 では 歌 舞 練 場 の 庭 や 空 き 地 金 沢 ひがしとにし 浅 草 では 見 番 の 稽 古 場 を 会 場 としてビアガーデン( 座 敷 )を 実 施 している これは 上 記 のお 稽 古 風 景 見 学 会 とは 異 なり 花 柳 界 の 運 営 組 織 が 主 催 している これは 営 利 事 業 として 実 施 されるもので 経 費 運 営 広 報 は 花 柳 界 の 運 営 組 織 が 担 っている 場 合 が 多 い 先 斗 町 では 歌 舞 練 場 のロビーを 会 場 とし 京 都 市 内 で 実 施 されるイベントに 合 わせて 京 舞 鑑 賞 軽 食 提 供 が 行 われるイベントがある ただし これは 旅 行 会 社 が 企 画 実 施 するも ので 花 柳 界 の 運 営 組 織 の 関 与 は 少 ない 先 斗 町 以 外 の 花 街 でも 旅 行 会 社 による 花 街 文 化 を 体 験 するプランは 存 在 する 以 上 より 花 街 建 築 の 臨 時 活 用 においては 企 画 運 営 を 支 援 組 織 が 行 うもの 花 柳 界 の 運 営 組 織 が 行 うもの 旅 行 会 社 が 行 うものの3 通 りが 確 認 された お 座 敷 の 通 常 営 業 が 減 る 夏 季 に 実 施 されるイベントが 多 く 芸 妓 の 経 済 的 支 援 の 役 割 も 果 たしていた 営 業 利 益 を 向 上 さ せるため 開 催 期 間 を 長 くしたり 1 日 の 開 催 回 数 を 増 やしたりする 工 夫 も 確 認 された 表 1 検 番 歌 舞 練 場 の 臨 時 活 用 事 例 4) 元 花 街 建 築 の 常 時 活 用 元 お 茶 屋 建 築 を 公 開 し 花 街 文 化 を 見 学 することができる 施 設 として 活 用 している 事 例 を 4/5

金 沢 ひがしで2 件 確 認 した いずれも 運 営 は 個 人 が 担 っている うち1 件 では 喫 茶 スペース を 併 設 している 5) 元 花 街 建 築 の 臨 時 活 用 島 原 において 元 揚 屋 建 築 を 美 術 館 として 臨 時 活 用 している 事 例 を 確 認 した 公 益 財 団 法 人 の 保 存 会 が 設 立 され 建 築 物 の 管 理 運 営 を 行 っている 開 館 期 間 中 一 般 公 開 イベントも 実 施 しており 舞 の 鑑 賞 抹 茶 の 提 供 などが 行 われる 行 政 等 との 連 携 は 取 られていない 所 有 者 へのヒアリングによれば 建 築 物 の 保 存 活 用 に 係 る 費 用 は 後 援 会 により 支 えられて いるが 今 後 も 維 持 していくためには 会 員 を 増 やしていく 必 要 があるという 6) 活 用 手 法 の 比 較 と 想 定 される 課 題 の 整 理 一 般 客 向 けの 花 街 建 築 の 活 用 における 課 題 として 1) 手 頃 で 明 解 な 料 金 設 定 2) 初 心 者 で もわかりやすい 内 容 解 説 の 充 実 3) 情 報 の 入 手 が 容 易 であること 4) 申 込 み 手 続 きが 容 易 であること 5) 運 営 する 人 材 の 確 保 が 想 定 される 1) 3) 5)については 花 柳 界 のみなら ず 行 政 が 関 わる 振 興 会 などの 支 援 組 織 によって 経 費 が 賄 われたり 広 報 支 援 が 行 われた りと 連 携 体 制 の 構 築 が 解 決 策 となっている また 臨 時 活 用 の 場 合 は 実 施 回 数 を 増 やす ことで 客 数 を 増 やし 低 価 格 でも 必 要 な 収 益 が 得 られるような 工 夫 もみられる 2)について は 解 説 版 パンフレット 解 説 者 を 用 意 する 事 例 が 見 られた 4)については イベント 内 容 をパッケージ 化 することで 簡 略 化 していると 考 えられる これらはいずれも 格 式 を 重 ん じる 花 街 にとっては 必 ずしも 一 般 的 なことではなく 新 たな 客 層 の 拡 大 と 理 解 者 の 獲 得 に 向 けた 取 り 組 みと 言 える (4)シンポジウムの 開 催 古 町 において 平 成 27 年 9 月 27 日 に 文 化 体 験 型 社 会 実 験 イベントおよびシンポジウムを 開 催 し 本 研 究 の 途 中 経 過 を 報 告 した ( 発 表 論 文 ) 岡 崎 篤 行 松 井 大 輔 宮 島 悠 夏 花 街 における 文 化 的 景 観 を 活 かした 活 動 の 運 営 実 態 日 本 建 築 学 会 技 術 報 告 集 ( 投 稿 予 定 ) 5/5