コーポレート ガバナンスの 発 展 に 向 けて 非 業 務 執 行 役 員 に 関 する 議 論 を 中 心 に わが 国 のコーポレート ガバナンスについては 近 年 会 社 法 金 融 商 品 取 引 法 証 券 取 引 所 規 則 による 規 律 強 化 がはかられてきているが 最 近 も 不 祥 事 事 案 があり 海 外 投 資 家 の 一 部 に 存 在 する 根 強 い 不 信 感 を 払 拭 するには 至 っていない 今 秋 の 臨 時 国 会 に 上 程 される 会 社 法 改 正 法 案 への 対 応 を 控 え また 近 時 の 株 主 総 会 における 議 決 権 行 使 の 状 況 もふまえれば 企 業 価 値 向 上 に 向 けた 非 業 務 執 行 役 員 の 活 用 など コーポレート ガバナンスの 発 展 に 向 け 各 企 業 の 自 主 的 な 取 り 組 みがますます 必 要 となっている コーポレート ガバナンス くり 返 される 法 制 度 改 正 コーポレート ガバナンスとは 企 業 の 不 正 行 為 を 防 止 すると 同 時 に 収 益 力 や 競 争 力 を 高 め 企 業 価 値 を 向 上 させる 企 業 経 営 の 仕 組 みで ある 近 年 コーポレート ガバナンスの 議 論 が 行 われる 際 に 特 に 大 きな 争 点 となっているの は 非 業 務 執 行 役 員 とりわけ 社 外 取 締 役 に 関 する 議 論 である わが 国 では 近 時 の 企 業 法 制 や 取 引 所 規 則 の 改 正 によって コーポレート ガバナンスのルー ルが 整 備 され 企 業 の 内 部 昇 格 者 だけでなく 社 外 の 目 線 で 経 営 を 監 視 する 体 制 も 整 備 されて きた( 表 1) 具 体 的 には 2001 年 の 商 法 改 正 に おいて 監 査 役 会 設 置 会 社 では 監 査 役 の 半 数 以 上 を 社 外 監 査 役 とすることが 義 務 付 けられた 2002 年 には 取 締 役 会 の 中 に 社 外 取 締 役 を 中 心 とした 指 名 監 査 報 酬 の3 委 員 会 を 設 置 す る 委 員 会 設 置 会 社 制 度 が 導 入 され ガバナンス の 機 関 設 計 は 同 制 度 と 監 査 役 会 設 置 会 社 制 度 と の 選 択 制 となった また 2009 年 には 東 京 02 2013 October 経 済 人
証 券 取 引 所 の 規 則 によって 上 場 会 社 には1 名 以 上 の 独 立 役 員 ( 一 般 株 主 と 利 益 相 反 が 生 じる 恐 れのない 社 外 取 締 役 または 社 外 監 査 役 をい う)を 確 保 することが 要 求 されている このよう な 一 連 の 改 正 によって 監 査 役 会 設 置 会 社 や 委 員 会 設 置 会 社 といった 大 会 社 には 複 数 の 社 外 役 員 が 選 任 され 業 務 執 行 の 監 督 が 行 われるよ うになっている ところが こうした 一 連 の 取 り 組 みにもかか わらず 国 内 外 からは ( 社 外 監 査 役 ではなく) 社 外 取 締 役 の 導 入 を 義 務 付 けるべきである と いう 声 が 後 を 絶 たない 2010 年 4 月 から2012 年 8 月 まで 開 催 された 法 制 審 議 会 会 社 法 制 部 会 においても 企 業 に 社 外 取 締 役 を 義 務 付 ける べきか 否 か が 最 大 の 争 点 となり 委 員 の 意 見 が 激 しく 対 立 した 会 社 法 制 の 見 直 しにおける 新 たな 規 律 この 社 外 取 締 役 の 選 任 の 義 務 付 けに 関 しては 反 対 の 声 があがり 結 論 として 義 務 付 けは 回 避 されたものの 社 外 取 締 役 に 関 しては 新 たな 規 律 が 設 けられることとなっている 2012 年 9 月 に 法 制 審 議 会 から 法 務 大 臣 に 答 申 された 会 社 法 制 の 見 直 しに 関 する 要 綱 に 関 連 しては 3 点 の 見 直 しが 行 われることとさ れた 1 点 めとして 社 外 取 締 役 を 選 任 しない 場 合 の 説 明 責 任 が 設 けられる 監 査 役 会 設 置 会 社 ( 公 開 会 社 であり かつ 大 会 社 であるものに 限 る) のうち 金 融 商 品 取 引 法 の 規 定 により その 発 行 する 株 式 について 有 価 証 券 報 告 書 を 提 出 しなけ ればならない 会 社 には 社 外 取 締 役 が 存 しない 場 合 社 外 取 締 役 を 置 くことが 相 当 でない 理 由 を 事 業 報 告 の 内 容 とすることとした 2 点 めとし て 証 券 取 引 所 規 則 において 取 締 役 である 独 立 役 員 を1 人 以 上 確 保 するよう 努 める 旨 の 規 定 を 設 ける 必 要 がある との 附 帯 決 議 を 行 っている さらに 3 点 めとして 現 行 の 監 査 役 会 設 置 会 社 制 度 と 委 員 会 設 置 会 社 制 度 の2 制 度 に 加 えて 監 査 監 督 委 員 会 設 置 会 社 制 度 を 創 設 するこ ととしている 表 1 コーポレート ガバナンスに 関 する 近 年 の 主 な 制 度 改 正 年 日 本 米 国 備 考 大 会 社 について 監 査 役 の 半 数 以 上 を 社 外 監 査 役 と 2001 会 社 法 ( 商 法 ) エンロン 事 件 することを 義 務 付 け 2002 会 社 法 ( 商 法 ) 東 証 ルール 委 員 会 設 置 会 社 制 度 が 導 入 され 監 査 役 会 設 置 会 社 との 選 択 制 になる サーベンス オクスレー 法 (SOX 法 ) 制 定 四 半 期 財 務 業 績 情 報 の 開 示 を 義 務 付 け (2004 年 4 月 1 日 以 降 の 事 業 年 度 から) すべての 上 場 企 業 に 監 査 委 員 会 を 設 置 すべきこと 等 を 強 制 ワールドコム 事 件 2005 会 社 法 大 会 社 について 内 部 統 制 の 構 築 に 係 る 規 律 を 明 文 化 金 融 商 品 取 引 法 四 半 期 報 告 書 と 内 部 統 制 監 査 制 度 を 導 入 2006 東 証 ルール コーポレート ガバナンス 報 告 書 の 提 出 開 示 を 開 始 2008 リーマン ショック 2009 東 証 ルール 上 場 会 社 に 対 して1 名 以 上 の 独 立 役 員 確 保 を 要 求 2010 会 社 法 2012 会 社 法 法 制 審 議 会 会 社 法 制 部 会 が 会 社 法 制 の 見 直 しに 関 する 議 論 を 開 始 法 制 審 議 会 が 会 社 法 の 見 直 しに 関 する 要 綱 を 答 申 社 外 取 締 役 の 選 任 の 義 務 付 けは 見 送 りとなったが 新 たな 規 律 が 設 けられる ドッド フランク 法 (DF 法 ) 制 定 すべての 上 場 企 業 に 報 酬 委 員 会 を 設 置 すべきこと 等 を 強 制 2013 October 経 済 人 03
コーポレート ガバナンスの 発 展 に 向 けた 考 え 方 ~ 第 1 次 報 告 書 ~ 日 本 企 業 のコーポレート ガバナンスを 取 り 巻 く 最 近 の 状 況 法 制 審 議 会 の 答 申 にもとづく 会 社 法 改 正 案 は 今 秋 の 臨 時 国 会 に 上 程 が 予 定 されている 各 企 業 は 法 改 正 後 のガバナンス 構 築 へ 向 け 準 備 を 進 めつつあ るが コーポレート ガバナンスを 取 り 巻 く 状 況 は 法 改 正 だけにとどまらない 現 在 わが 国 の 上 場 企 業 のコーポレート ガバナン スに 非 常 に 強 い 影 響 力 を 及 ぼす 存 在 として 日 本 株 を 所 有 する 外 国 人 投 資 家 による 議 決 権 行 使 があげら れる 日 本 の 株 式 市 場 における 外 国 人 投 資 家 の 所 有 比 率 は リーマン ショック 等 による 一 時 的 な 下 落 を 除 けば 一 貫 して 上 昇 を 続 けており 2012 年 度 には 国 内 金 融 機 関 の 所 有 比 率 に 並 ぶ28%に 達 した( 図 1) 欧 米 の 議 決 権 行 使 助 言 会 社 は その 外 国 人 投 資 家 の 株 主 総 会 における 議 決 権 行 使 に 大 きな 影 響 力 を 持 っている 助 言 会 社 の 策 定 する 基 準 が 国 内 の 法 改 正 を 先 回 りする 形 で 実 質 的 な 規 律 強 化 という 影 響 を 企 業 に 与 えているのである 世 界 最 大 の 議 決 権 行 使 助 言 会 社 であるISS(Institutional Shareholder Services Inc.)が 策 定 した 2013 年 日 本 向 け 議 決 権 行 使 助 言 基 準 では 社 外 取 締 役 が 一 人 もいな い 場 合 経 営 トップである 取 締 役 の 選 任 に 反 対 する ことを 推 奨 した( 表 2) その 結 果 2013 年 6 月 の 株 主 総 会 シーズンには 社 外 取 締 役 を 選 任 しない 企 業 の 社 長 選 任 議 案 への 賛 成 率 が80%を 下 回 る 例 が 発 生 した このように 企 業 にとってのコーポレート ガバナ ンスとは 法 律 や 規 則 に 定 められた 体 制 を 構 築 する だけにとどまらず 海 外 も 含 めたステークホルダーと 対 話 しながら 自 主 的 に 改 善 の 取 り 組 みを 継 続 的 に 行 うことがますます 重 要 となっている 関 経 連 としては 社 外 取 締 役 の 選 任 義 務 付 けにつ いては 真 にガバナンスの 向 上 につながるか 不 明 確 であるとして 反 対 の 立 場 に 立 っている 法 制 審 議 会 図 1 主 要 投 資 部 門 別 株 式 所 有 比 率 の 推 移 出 所 : 東 京 証 券 取 引 所 平 成 24 年 度 株 式 分 布 状 況 調 査 より 作 成 04 2013 October 経 済 人
で 会 社 法 制 の 見 直 しが 議 論 されるなかで2011 年 12 月 に 実 施 された 中 間 試 案 に 対 するパブリックコメントに 関 しても 当 会 は 反 対 意 見 を 提 出 した 一 方 当 時 大 企 業 における 大 きな 不 祥 事 事 案 が 報 道 され また 海 外 からもわが 国 企 業 のコーポレー ト ガバナンスに 関 する 不 信 感 が 表 明 されていた そ のことをふまえ ただ 反 対 を 唱 えるのではなく 経 済 界 として 自 主 的 に コーポレート ガバナンスを 発 展 させていくための 基 本 的 な 考 え 方 を 明 らかにし 自 ら 不 断 の 改 善 努 力 を 重 ねていくことが 必 要 ではないか との 認 識 に 至 った そこで 2012 年 11 月 企 業 経 営 委 員 会 ( 当 時 )( 委 員 長 : 和 田 勇 積 水 ハウス 会 長 兼 CEO)のもとに 企 業 の 法 務 監 査 部 門 経 営 企 画 部 門 IR 部 門 か ら 派 遣 された 幹 部 で 構 成 する コーポレート ガバ ナンスに 関 する 研 究 会 を 設 置 法 曹 界 や 大 学 から アドバイザーを 迎 え 約 半 年 にわたる 議 論 の 末 本 年 7 月 に コーポレート ガバナンスの 発 展 に 向 けた 考 え 方 ~ 第 1 次 報 告 書 ~ を 発 表 した 以 下 にその 概 要 を 述 べる 持 続 的 な 企 業 価 値 の 向 上 こそ 企 業 発 展 の 基 本 そもそもコーポレート ガバナンスの 目 的 とは 何 か 本 報 告 書 においては 持 続 的 な 企 業 価 値 の 向 上 に 向 けた 企 業 経 営 の 仕 組 みをいかに 構 築 していくかとい うこと と 定 義 している 株 主 資 本 利 益 率 (ROE)のような 成 果 主 義 を 否 定 するものではないが 短 期 的 な 視 野 のみに 陥 るので はなく イノベーションや 新 市 場 開 拓 のような 将 来 へ の 投 資 また 企 業 の 社 会 的 責 任 (CSR)にも 配 慮 し たバランスのとれたガバナンスを 構 築 しなくては 企 業 が 持 続 的 に 発 展 することはできない( 図 2) そこで わが 国 の 企 業 においては 中 長 期 的 な 視 点 に 立 って 経 営 者 と 従 業 員 が 一 体 感 を 持 って 持 続 的 な 企 業 価 値 の 向 上 に 取 り 組 むという 日 本 的 経 営 の 特 徴 を 生 かしながらも 海 外 の 投 資 家 も 含 めた 多 様 なステークホルダーから 理 解 の 得 られる 公 平 で 透 明 性 のあるコーポレート ガバナンスを 構 築 するよう 改 善 努 力 を 積 み 重 ねていくことが 大 切 である リーマン ショックの 後 は 海 外 機 関 投 資 家 の 主 な 関 心 も より 長 期 的 な 企 業 価 値 の 向 上 に 向 いており 短 期 的 にROEを 向 上 させることだけに 固 執 せず 持 続 的 な 企 業 価 値 の 向 上 をめざす 方 向 にシフトしてい るといわれている とはいえ 海 外 においては コー ポレート ガバナンスの 目 的 は 株 主 利 益 の 最 大 化 であり 経 営 者 がいかに 株 主 の 利 益 に 沿 った 行 動 を とるかがガバナンスのテーマとなっている その 点 で は ステークホルダー 全 体 の 利 益 を 追 求 すべきとす る 日 本 の 考 え 方 とは 異 なっている 図 2 企 業 価 値 の 向 上 に 必 要 な 要 素 株 式 資 本 利 益 率 (ROE) イノベーション 新 市 場 開 拓 社 会 的 責 任 (CSR) 表 2 ISSによる2013 年 日 本 向 け 議 決 権 行 使 助 言 基 準 ( 取 締 役 監 査 役 選 任 についての 主 な 基 準 を 抜 粋 ) 取 締 役 選 任 監 査 役 選 任 下 記 のいずれかに 該 当 する 場 合 は 原 則 として 反 対 を 推 奨 する 総 会 後 の 取 締 役 会 に 社 外 取 締 役 が 一 人 もいない 場 合 経 営 トップである 取 締 役 親 会 社 や 支 配 株 主 を 持 つ 会 社 において ISSの 独 立 性 基 準 を 満 たす 社 外 取 締 役 が2 名 未 満 の 場 合 経 営 トップである 取 締 役 前 会 計 年 度 における 取 締 役 会 の 出 席 率 が75% 未 満 の 社 外 取 締 役 等 下 記 のいずれかに 該 当 する 場 合 を 除 き 原 則 として 賛 成 を 推 奨 する ISSの 独 立 性 基 準 を 満 たさない 社 外 監 査 役 前 会 計 年 度 における 取 締 役 会 もしくは 監 査 役 会 の 出 席 率 が 75% 未 満 の 社 外 監 査 役 等 2013 October 経 済 人 05
監 査 役 制 度 の 情 報 発 信 強 化 日 本 における 大 会 社 のガバナンスの 機 関 設 計 のタ イプとしては 先 に 述 べたとおり 監 査 役 会 設 置 会 社 と 委 員 会 設 置 会 社 が 存 在 するが 現 在 東 証 上 場 会 社 の97.8%は 監 査 役 会 設 置 会 社 である こ の 監 査 役 会 設 置 会 社 は 日 本 独 自 の 制 度 であり ま た 海 外 からは 監 査 役 には 取 締 役 会 における 議 決 権 がないことを 理 由 に 監 査 役 だけでは 監 督 機 能 と して 不 十 分 であるとして 社 外 取 締 役 による 監 督 を 望 む 声 が 強 い 監 査 役 制 度 については 1974 年 以 降 の 一 連 の 商 法 (2006 年 以 降 は 会 社 法 ) 改 正 を 通 じて 監 査 役 の 権 限 と 独 立 性 を 強 化 してきた 監 査 役 は 取 締 役 会 において 必 要 に 応 じて 発 言 することができる 上 に 取 締 役 の 善 管 注 意 義 務 に 反 する 業 務 執 行 を 単 独 で 差 止 請 求 する 権 限 を 持 ち 監 査 報 告 書 への 意 見 の 記 載 を 通 じて 株 主 に 対 して 直 接 その 意 見 を 開 示 する ことができる また 任 期 は4 年 で 解 任 のために は 株 主 総 会 の 特 別 決 議 が 必 要 である こうした 法 改 正 をふまえれば 監 査 役 による 業 務 執 行 への 監 督 機 能 は 十 分 に 強 力 であり その 実 績 か らしても わが 国 のコーポレート ガバナンスの 発 展 に 大 きく 寄 与 してきたといえる 特 に 監 査 役 会 設 置 会 社 では 取 締 役 会 と 監 査 役 会 がともに 監 督 機 能 を 発 揮 し ガバナンスの 役 割 を 果 たしている 取 締 役 の 業 務 執 行 が 適 正 に 行 われ ていることについては 取 締 役 会 だけでなく 監 査 役 も 関 与 して 監 督 を 行 い 株 主 への 説 明 責 任 を 果 た すことにより 企 業 価 値 を 維 持 向 上 させていると いえる ただし 監 査 役 が 経 営 監 督 の 機 能 を 発 揮 している という 実 態 に 関 しては その 情 報 発 信 が 必 ずしも 十 分 でないため 特 に 海 外 の 投 資 家 からは 理 解 されに くいところがある これに 対 し 日 本 監 査 役 協 会 では 監 査 役 の 英 文 呼 称 を 改 め 監 査 役 会 が 取 締 役 会 と 協 働 して 監 督 機 能 (Supervisory)の 一 翼 を 担 っていることを 明 確 化 している( 図 3) また 監 査 役 の 実 態 効 用 をよ り 理 解 してもらうため 英 語 での 説 明 や 図 をもって 視 覚 に 訴 えるなど 説 明 に 工 夫 をしていく 方 針 である このように 監 査 役 制 度 については 海 外 へ 向 け て これまで 以 上 にわかりやすく 情 報 発 信 し 丁 寧 に 説 明 していくことが 必 要 である 日 本 監 査 役 協 会 を 中 心 に 関 係 省 庁 や 経 済 団 体 が 連 携 して より 一 層 の 情 報 発 信 に 努 めることが 求 められる 図 3 監 査 役 設 置 会 社 における 監 査 役 および 監 査 役 会 の 英 文 呼 称 株 主 総 会 選 任 選 任 選 任 監 督 機 能 取 締 役 会 Supervisory Board 監 査 役 会 Audit & Supervisory Board Board of Directors ( 取 締 役 の 職 務 執 行 の 監 督 ) 代 表 取 締 役 取 締 役 Director 出 席 各 種 報 告 等 の 協 働 関 係 監 督 の 一 翼 としての 監 査 監 査 役 Audit & Supervisory Board Member 業 務 執 行 取 締 役 Management 報 告 監 査 ( 会 計 監 査 の 相 当 性 判 断 ) 会 計 監 査 人 ( 会 計 監 査 報 告 の 作 成 提 出 ) 出 所 : 日 本 監 査 役 協 会 ホームページより 作 成 06 2013 October 経 済 人
企 業 価 値 向 上 のための 社 外 取 締 役 の 活 用 東 証 上 場 企 業 のうち 2012 年 9 月 現 在 54.7% の 企 業 において すでに 社 外 取 締 役 が 選 任 されてお り 監 査 役 会 設 置 会 社 に 限 っても53.7%の 企 業 で 選 任 されている 監 査 役 会 設 置 会 社 においては 法 制 で 義 務 付 け られていないにもかかわらず 過 半 の 企 業 において 自 主 的 に 社 外 取 締 役 が 選 任 されている そのことか ら 日 本 企 業 が 社 外 取 締 役 の 意 義 そのものを 否 定 しているわけではなく 自 主 的 なコーポレート ガ バナンスの 発 展 のための 有 用 な 手 段 の 一 つとしてと らえていることがうかがえる 実 際 に 社 外 取 締 役 を 選 任 している 企 業 からは 社 外 取 締 役 の 業 界 常 識 の 枠 を 超 えた 多 様 な 知 見 判 断 を 経 営 に 活 用 し 企 業 価 値 の 向 上 をはかることができるといった 声 が ある また 企 業 経 営 がグローバル 化 するなか 人 材 の 多 様 化 (ダイバーシティ)という 観 点 は ますます 重 要 となっている 女 性 や 外 国 人 の 登 用 も 含 めて 役 員 構 成 を 多 様 なものにするという 点 でも 社 外 取 締 役 を 選 任 することには 意 義 がある 一 方 で 欧 米 のように 一 般 株 主 のために 業 務 執 行 をモニタリングする 監 督 機 能 としての 社 外 取 締 役 の 活 用 ということについては その 実 効 性 に 懐 疑 的 な 意 見 もある 社 外 取 締 役 の 選 任 については 監 督 機 能 よりむしろ その 知 見 や 判 断 を 企 業 価 値 の 向 上 に 活 用 できるかどうかという 視 点 において そ の 要 否 が 十 分 に 判 断 されるべきである 社 外 取 締 役 が 実 効 的 に 機 能 するためには 企 業 価 値 を 高 め るのに 適 切 な 資 質 を 持 ち その 企 業 のために 十 分 な 時 間 と 情 熱 を 割 くことのできる 人 物 を 招 かなくては ならず また 実 際 に 活 躍 してもらうためには 企 業 の 内 部 情 報 提 供 などのサポート 体 制 を 整 備 する ことも 必 要 である それらのことを 考 慮 すると 法 律 や 取 引 所 規 則 な どによって 一 律 に 選 任 を 義 務 付 け 多 くの 企 業 で 形 式 的 に 社 外 取 締 役 を 導 入 するようなことになれば 本 来 社 外 取 締 役 に 期 待 される 役 割 と 実 際 に 果 たし 得 る 役 割 とのギャップが 大 きくなる 恐 れがある 実 際 国 内 外 を 問 わず 社 外 取 締 役 を 招 いておきなが らも 実 効 性 を 伴 わなかった 例 は 存 在 している したがって 最 も 重 要 なことは 各 企 業 が 持 続 的 な 企 業 価 値 の 向 上 に 向 けて ステークホルダーと 対 話 しながら 自 主 的 に 最 適 なコーポレート ガバナン スを 構 築 していくことなのである ( 経 済 調 査 部 奥 谷 勝 昭 ) コーポレート ガバナンスに 関 するシンポジウムを 開 催 企 業 法 制 委 員 会 では 9 月 17 日 ( 火 ) 経 済 産 業 省 お よび 日 本 監 査 役 協 会 の 後 援 を 得 て コーポレート ガバ ナンスに 関 するシンポジウムを 開 催 した 会 社 法 制 の 改 正 を 控 え 多 くの 参 加 が 予 想 されたなか 当 日 の 出 席 者 は400 名 を 超 え 関 係 者 の 関 心 の 高 さがうかがえた シンポジウムでは 日 本 の 企 業 統 治 を 育 んできた 監 査 役 制 度 を 世 界 にPRするとともに 海 外 機 関 投 資 家 から 求 められている 社 外 取 締 役 についても 有 効 に 活 用 することで 企 業 価 値 を 高 めることができるのでは という 意 見 が 出 された また 外 形 的 で 一 律 な 規 制 に よってガバナンスを 構 築 するのではなく ステークホ ルダーとの 対 話 をふまえ 企 業 が 自 主 的 に 仕 組 みを 構 築 しなければ 実 効 性 は 伴 わないであろうとの 議 論 も あった 2013 October 経 済 人 07