地 域 の 実 情 に 応 じた 在 宅 医 療 介 護 連 携 を 推 進 するための 多 職 種 研 修 プログラム ロールプレイ 用 標 準 シナリオ2 < 事 例 名 > 急 きょ 退 院 が 決 まった 自 宅 での 最 後 を 希 望 するがん 患 者 の 退 院 支 援 < 事 例 概 要 > 1 患 者 利 用 者 の 状 況 (1) 年 齢 70 歳 (2) 性 別 男 性 (3) 病 名 胆 管 癌 統 合 失 調 症 2 型 糖 尿 病 (4) 経 過 現 状 (5) 家 族 関 係 者 キーパーソン 概 要 統 合 失 調 症 にて 当 院 ( 地 域 の 中 核 である 総 合 病 院 ) 通 院 治 療 中 であっ た 2 月 に 腹 痛 嘔 気 にて 来 院 閉 塞 性 黄 疸 を 認 め 同 日 当 院 入 院 CT ĒRCP 検 査 腹 部 エコー 等 の 検 査 にて 胆 管 癌 多 発 性 肺 転 移 と 診 断 そ の 後 胆 管 ステント 留 置 し 黄 疸 は 改 善 傾 向 で 食 欲 も 出 てきている 主 治 医 より 予 後 3 か 月 と 言 われ 自 宅 退 院 を 希 望 している ADL ほぼ 自 立 処 方 内 容 経 口 抗 がん 剤 投 与 腹 痛 に 対 してはオピオイドを 投 与 している (オキ ノーム デュロテップパッチ 使 用 ) 現 在 は 病 棟 より 配 薬 し オピオイド 以 外 は 自 分 で 管 理 一 人 暮 らし 唯 一 の 親 族 であるいとこが 隣 市 に 在 住 しているが 関 係 は 薄 く 今 回 の 入 院 でさらに 関 係 が 悪 化 し 今 後 入 院 時 の 保 証 人 等 には なれないと 支 援 を 拒 否 されている 10 年 以 上 前 に 妻 と 離 婚 息 子 が 一 人 いるが 音 信 不 通 生 命 保 険 の 受 取 人 が 息 子 になっているので 本 人 は 息 子 を 探 してほしいという 気 持 ち がある 地 区 担 当 の 民 生 委 員 は 地 域 の 組 も 違 うこともあり 今 まであまりかか わりはない すぐ 下 の 家 に 1 歳 下 の 幼 なじみが 住 んでおり 本 人 を 気 にかけてくれている 2 ロールプレイの 場 面 設 定 入 院 中 であるが 無 断 で 離 院 したことをきっかけに 本 人 も 希 望 しているとの 理 由 で 3 日 後 に 退 院 することが 決 定 した 退 院 調 整 が 行 えていないので 関 係 者 を 集 めて 退 院 時 カンファレンスを 開 催 することとした
3 結 論 ( ロールプレイ 開 始 前 には 説 明 せず 終 了 後 の 解 説 時 に 説 明 ) 退 院 前 カンファレンスの 終 了 後 本 人 の 了 解 を 得 て 地 域 包 括 支 援 センター 職 員 訪 問 看 護 ス テーションスタッフが 自 宅 へ 訪 問 し 居 室 の 片 づけ 寝 床 の 準 備 ( 布 団 シーツ 等 ) トイレの 確 認 冷 蔵 庫 洗 濯 機 等 の 確 認 をする 地 域 包 括 支 援 センターが 民 間 の 配 食 サービスの 手 配 退 院 時 に 待 ち 合 わせ お 金 をおろして 買 い 物 をして 帰 宅 退 院 翌 日 から 訪 問 看 護 と 訪 問 診 療 を 開 始 同 日 民 生 委 員 隣 人 も 参 加 してもらい 自 宅 でカンファレンスを 開 催 急 変 時 の 緊 急 連 絡 先 を 皆 で 共 有 お 金 の 管 理 は しばらくは 地 域 包 括 支 援 センターが 行 い 成 年 後 見 人 の 申 し 立 てのためにも 息 子 を 探 す 手 配 をする 住 所 地 がわかり 手 紙 で 連 絡 を 依 頼 するも 返 事 なし 死 亡 された 場 合 の 遺 体 引 き 取 り 葬 儀 等 について 地 区 区 長 評 議 員 民 生 委 員 ボランティアで 話 し 合 いをし 承 諾 を 得 る 隣 人 コンビニの 店 員 も 見 守 りに 加 わり 生 活 を 継 続 していた 食 欲 も 徐 々に 低 下 し 黄 疸 も 著 明 となる 退 院 約 1 か 月 後 朝 方 前 の 家 に 雨 の 中 傘 もささずに 訪 問 され 近 所 から 不 安 の 声 が 出 たため 主 治 医 民 生 委 員 隣 人 等 と 自 宅 にてカンファレンスを 開 催 主 治 医 より 今 朝 の 行 動 は 胆 管 癌 の 進 行 による 不 穏 状 態 と 考 える 痛 みもあって 不 安 になっ たのだろう 近 所 の 方 が 見 守 ってくれていることで 安 心 している 痛 み 止 めの 効 果 で 少 しぼー っとしているが 皆 さんの 声 掛 けが 本 人 の 安 心 につながっていると 話 される しかし 今 後 も 同 じようなことが 起 こるであろうと 説 明 される 病 状 の 悪 化 と 急 死 に 対 する 地 域 の 不 安 も 聞 か れたため 入 院 の 提 案 をされる 地 域 の 方 とも 相 談 し 本 人 も 承 諾 したため 当 院 に 入 院 となる 保 証 人 は 近 隣 の 方 が 受 けてくれることとなった 本 人 入 院 後 死 亡 後 の 流 れについて 地 域 とも 準 備 しておくため 死 亡 届 が 出 せる 唯 一 の 方 であ るいとこへの 連 絡 をどうするかを 検 討 した 葬 儀 納 骨 については 地 域 の 組 内 で 話 し 合 いがあり 今 まで 地 域 の 付 き 合 いをしてこられた 方 なので 皆 で 手 伝 う 組 費 から 不 足 分 は 出 すことにした と 地 域 包 括 支 援 センターに 報 告 があ った 入 院 2 週 間 後 に 亡 くなられた いとこには 組 の 方 が 連 絡 を 取 ってくれて 無 事 死 亡 届 に 印 鑑 とサインをいただいた 病 院 に 協 力 して 火 葬 場 の 使 用 時 間 まで 霊 安 室 を 使 用 させてもらった その 後 組 内 のほぼ 全 員 の 方 に 見 守 られ お 寺 にお 経 を 一 巻 あげてもらい 無 事 納 骨 までを 終 える
<シナリオ 配 役 1> Aさん 70 歳 男 性 持 ち 家 に 一 人 暮 らし 母 屋 はあるが 玄 関 の 鍵 が 壊 れており 離 れ に 住 んでいる 台 所 やトイレは 母 屋 にあるため 廊 下 伝 いで 出 入 りしている 寝 たきりで 特 別 養 護 老 人 ホームに 入 所 していた 母 親 を 5 年 前 に 亡 くされている 年 金 生 活 で 貯 蓄 はほぼなし 妻 とは 10 年 以 上 前 に 離 婚 息 子 が 一 人 大 阪 にいるが 音 信 不 通 唯 一 の 親 族 であるいとこがおり 病 状 説 明 にも 呼 んでほしいと の 希 望 で 連 絡 し 一 度 は 承 諾 されたが いとこの 妻 の 反 対 もあ り 今 後 は 関 われないと 連 絡 があった そのことを 本 人 に 伝 え ると 涙 されていた 以 前 から 食 事 には 貪 欲 でカップラーメンなど 好 きなものを 好 きなだけ 食 べて 特 に 食 費 に 関 しては 浪 費 傾 向 があり 年 金 月 に は お 金 が 足 りなくなることもあった ギャンブル 依 存 傾 向 も あったが 引 き 落 としのための 入 金 は 几 帳 面 に 各 通 帳 に 振 り 分 けていた 地 域 の 付 き 合 いもきちんとされていた 統 合 失 調 症 で 総 合 病 院 に 通 院 中 であったが 腹 痛 嘔 気 を 主 訴 に 来 院 し 閉 塞 性 黄 疸 を 認 め 同 日 入 院 検 査 の 結 果 胆 管 癌 多 発 性 肺 転 移 と 診 断 ステント 留 置 し 黄 疸 改 善 し 食 欲 も 良 好 になり 制 限 のある 病 院 の 食 事 では 満 足 せず 無 断 で 離 院 してラーメンを 食 べに 行 った り 自 宅 に 帰 ったりした 病 院 から 連 絡 を 受 けた 地 域 包 括 支 援 センターの 職 員 が 話 に 行 き 病 院 に 送 り 届 けるも 家 は 良 かったが だれも 来 てはくれ んからねえ と 寂 しそうに 話 された 余 命 3 か 月 の 告 知 を 受 け 退 院 を 強 く 希 望 されているが 経 済 的 に 生 活 も 厳 しい お 金 の 管 理 にも 不 安 がある いとこにも 今 後 入 院 の 保 証 人 にはなれないといわれた でも 今 は とにかくおいしいものが 食 べたい 病 院 に 乗 ってきた 車 の 処 分 もどうしたらいいかと 悩 んでいる 実 は 生 命 保 険 に 加 入 して 受 取 人 は 息 子 になっている 息 子 を 探 してほしい できれば 会 いに 来 てほしいと 話 される
<シナリオ 配 役 2> 内 科 主 治 医 40 代 男 性 病 状 の 説 明 は 丁 寧 だが 地 味 で 少 し 頼 りない 印 象 本 人 のことは 親 身 に 考 えてはいるが 度 重 なる 離 院 で 元 気 なうちに 自 宅 退 院 をとの 思 いが 強 い 何 かあればいつでも 再 入 院 は 可 能 と 考 えているが 相 談 員 の 顔 色 をうかがっている 様 子 が 見 られる 経 口 抗 がん 剤 の 継 続 処 方 については 経 済 的 なこともあ るのではと 心 配 している 在 宅 の 主 治 医 には すぐにでも 連 絡 可 能 と 連 携 はスムー ズな 印 象 である 本 人 には 何 を 食 べてもいいですと 説 明 するつもり
<シナリオ 配 役 3> 病 棟 師 長 40 代 女 性 若 作 りであるが しっかりした 印 象 口 調 もはきはきとしており 相 談 員 とも 張 り 合 える 状 況 度 重 なる 離 院 で 本 人 を 見 離 しているような 感 じも 受 け る ある 意 味 苦 言 を 言 わなければならない 役 職 として 病 院 の 立 場 も 説 明 され 本 人 にも 入 院 中 に 何 かあってはいけ ないのでと 説 明 され 1 日 でも 早 い 退 院 を 望 んでいる 一 方 今 自 宅 に 帰 らないと 帰 れなくなるのではとも 考 え ている 歩 行 も 可 能 でトイレも 自 立 内 服 薬 もセットして 渡 せ ば 自 分 で 内 服 できる と 本 人 の 状 態 が 安 定 しており いつでも 退 院 できる 状 態 であることを 強 調 している た だ パッチの 交 換 だけは 難 しいので 訪 問 看 護 の 利 用 が 必 要 ではないかと 提 案 したいと 考 えている
<シナリオ 配 役 4> 病 院 相 談 員 40 代 女 性 様 々な 施 設 や 病 院 勤 務 を 経 験 したベテラン 社 会 福 祉 士 在 宅 スタッフとは 以 前 同 じ 病 院 で 勤 務 していたことも あり お 互 い 話 しやすい 関 係 早 い 段 階 から 地 域 包 括 支 援 センターに 連 絡 を 取 り 今 後 の 支 援 を 依 頼 していた 今 回 のカンファレンスも 司 会 進 行 を 務 める 本 人 からは 信 頼 されており 関 係 は 良 好 今 回 の 退 院 に 向 けての 話 を 中 心 に 進 めてきた 駐 車 場 の 本 人 の 車 のことも 気 になっている 一 方 本 人 の 最 後 は 自 宅 で の 希 望 をかなえてあげた いので 病 状 が 安 定 している 今 が 退 院 のタイミングとも 思 う しかし 急 な 入 院 で 着 替 えがない お 金 がないなど 問 題 も 山 積 みで 退 院 後 の 日 々の 生 活 費 に 加 え 入 院 費 の 支 払 いや 死 亡 時 の 対 応 など 在 宅 スタッフに 丸 投 げになっ てはいけないので 入 院 中 にできることは 支 援 したいと 思 うが もう 退 院 は 延 期 できない ただ 再 入 院 については 保 証 人 が 必 要 であると 強 調 さ れる
<シナリオ 配 役 5> 訪 問 看 護 ステーション 看 護 師 50 代 女 性 訪 問 看 護 師 になって 20 年 近 いベテラン 看 護 師 姉 御 肌 で スタッフや 利 用 者 家 族 の 信 頼 も 厚 い 夜 間 の 呼 び 出 しや 相 談 の 電 話 にも 速 やかに 対 応 し 救 急 車 より 早 く 来 てくれる と 家 族 に 言 わしめた 人 物 今 回 地 域 包 括 支 援 センターより 依 頼 を 受 けて 参 加 病 院 相 談 員 とは 元 同 僚 で 今 までもケースのことで 相 談 を 受 けたこともあり 気 兼 ねがない 関 係 な 反 面 急 な 退 院 に 少 し 不 満 も 感 じている 現 在 ターミナルのケースも 数 件 あるが 在 宅 での 看 取 りに 関 してはできるだけ 本 人 の 希 望 に 添 いたいという 強 い 思 いがある しかし キーパーソンがいないことや 金 銭 面 について 不 安 がある 在 宅 の 医 師 は 普 段 から 在 宅 看 取 りをともに 支 援 してい る 先 生 なので 心 強 いし 無 理 も 言 える とりあえず 地 域 包 括 支 援 センターもともに 関 わるとい うことで 役 割 分 担 もしながら 支 援 を 考 えなければと 思 う
<シナリオ 配 役 6> 民 生 委 員 60 代 男 性 民 生 委 員 2 年 目 元 教 員 本 人 とは 少 し 家 が 離 れており あまり 関 わりはなかっ た 今 回 病 院 から 連 絡 を 受 けて 訪 問 したが お 金 の 貯 えも ない 家 族 もいないと 聞 いて 今 後 どこまで 関 わればいい のか 不 安 が 強 い 家 に 帰 るとなると 今 後 どうなっていくのか すべてが 不 安 今 後 死 後 の 葬 儀 も 組 内 でどこまで 関 わるか 区 長 さん らと 相 談 しなければと 思 う 本 人 のすぐ 近 くの 家 の 男 性 がいつも 関 わってくださっ ていたので 今 後 も 情 報 は 聞 けると 思 う 今 回 も 家 の 鍵 をかけないで 急 きょ 入 院 されたので 近 所 の 男 性 は 心 配 されていたらしい どちらにしても 自 分 は できること の 限 界 がある お 金 のことが 一 番 気 がかりである
<シナリオ 配 役 7> 地 域 包 括 支 援 センター 保 健 師 50 代 女 性 地 域 包 括 支 援 センター 勤 務 8 年 目 訪 問 看 護 師 とも 関 係 良 好 で 多 くのケースを 共 に 支 援 し てきた 最 初 に 病 院 から 情 報 提 供 の 連 絡 があった 際 に 病 院 に 会 いに 行 くなどフットワークは 軽 い 離 院 して 自 宅 に 帰 っ た 時 も 自 宅 訪 問 し 本 人 を 説 得 し タクシーで 同 行 し 病 院 に 送 り 届 けた 今 回 は 問 題 が 多 く 大 変 な 印 象 だが 医 療 のことは 訪 問 看 護 師 に 任 せて 役 割 分 担 をしてひとつずつ 整 理 してい けたらと 考 えている ただ 以 前 訪 問 した 際 に 見 た 自 宅 内 はかなり 乱 雑 なの で 退 院 前 に 環 境 整 備 が 必 要 だと 思 う 近 所 の 方 にも 協 力 を 得 る 必 要 があり 近 所 のキーパーソ ンともつながらなければと 思 う 身 寄 りのない 高 齢 者 の 死 亡 時 の 対 応 については 経 験 も 少 なく 音 信 不 通 の 息 子 への 連 絡 等 は 行 政 にも 相 談 をしながら 対 応 しようと 思 う 今 後 のことを 考 えたら 成 年 後 見 制 度 の 活 用 も 必 要 では ないか 退 院 後 早 急 に 自 宅 で 在 宅 主 治 医 民 生 委 員 近 所 の 町 内 役 員 の 方 を 交 えての 話 し 合 いをしようと 考 えている