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Title 195 年 から6 年 代 における 日 本 のニットデザインの 基 礎 調 査 第 1 報 Author(s) 近 藤, 静 香 Citation 文 化 学 園 大 学 紀 要 47(16-1) pp.53-61 Issue Date 16-1-31 URL http://hdl.handle.net/1457/2432 Rights http://dspace.bunka.ac.jp/dspace

研 究 ノート 195 年 から6 年 代 における 日 本 のニットデザインの 基 礎 調 査 第 1 報 A Basic Research of Hand-Knitting Design in Japan in the 195 and 6s. 近 藤 静 香 Shizuka Kondo 要 旨 195 年 から 6 年 代 の 編 物 ブーム 時 にどのような 編 物 が 行 われていたのかを 明 らかにするために 本 稿 では 5 年 代 の 日 本 で 発 刊 された 編 物 書 13 冊 のニットデザインの 基 礎 調 査 行 った その 結 果 ウェア 類 の 比 率 が 68%と 高 い 理 由 として 紡 績 会 社 がファッションブックや 雑 誌 を 利 用 し ウェア 類 の 人 気 が 高 まり 編 糸 の 販 売 促 進 に 繋 がったことがわかった 5 年 代 で 最 も 使 用 されていた 編 物 針 は 性 別 年 代 別 問 わず 2 号 棒 針 であり 中 細 糸 対 応 の 編 機 と 棒 針 の 併 用 が 行 われていたことから 5 年 代 は 中 細 糸 中 心 で 作 品 が 製 作 されていた 5 年 代 でも 様 々な 技 法 が 使 用 されていたが 編 物 と 刺 繍 等 の 手 芸 技 法 を 融 合 させたデザインが 多 く 存 在 し 明 治 時 代 から 洋 裁 教 育 の 影 響 を 受 けている 可 能 性 が 明 らかになった 13 冊 の 編 物 書 内 掲 載 のコラムの 内 容 を 調 査 したところ 海 外 の 編 物 モードの 紹 介 が 最 多 掲 載 で 編 糸 の 選 び 方 から 編 物 の 仕 上 げ 方 法 までの 編 物 に 関 する 一 連 の 流 れに 関 するコラムが 紹 介 されていた また 染 色 などによる 編 糸 の 再 生 方 法 も 掲 載 され 当 時 の 編 糸 の 貴 重 さが 感 じら れた しかし 195 年 代 後 半 には 扱 いやすい 新 糸 の 開 発 などの 理 由 により 編 糸 の 再 生 に 関 するコラム 数 は 減 少 傾 向 になった キーワード: ニットデザイン(Knitting design)/ 編 物 ブーム(Knitting boom)/ 手 編 み(hand-knit) Ⅰはじめに 日 本 における 本 格 的 な 編 物 教 育 は 明 治 初 期 から 始 まっ た 谷 本 きよは 編 物 が 日 本 へ 伝 来 された 経 緯 と 学 校 教 育 によって 普 及 された 流 れを 述 べ 当 時 の 編 物 教 育 の 導 入 を 明 らかにした 1) 明 治 当 時 の 教 育 においては 長 谷 川 綾 子 が 明 治 期 におけ る 編 物 教 育 を 19 点 の 書 物 から 分 析 し 衣 服 の 西 洋 化 に 伴 い 手 芸 ( 編 物 )が 女 子 教 育 の 場 に 深 く 定 着 し それ と 共 に 女 性 の 自 立 を 助 け 国 の 為 にもなっていた と 述 べている 2)3) 1921 年 に 実 業 学 校 令 職 業 学 校 規 定 が 訓 令 され 女 学 校 が 専 門 学 校 に 昇 格 した 後 第 一 次 世 界 大 戦 後 の 社 会 情 勢 不 安 で 減 少 傾 向 だった 編 物 教 本 の 出 版 が 増 加 し 実 用 的 な 編 物 被 服 の 構 成 と 様 々な 性 別 年 代 に 対 応 する デザインが 流 通 し 始 めた 森 理 絵 はこれを 日 本 におけ る 第 一 次 編 物 ブームと 位 置 づけ また 19 年 から 193 年 代 始 めを 第 二 次 編 物 ブームである と 論 じ この 時 期 は 編 物 が 家 庭 生 活 に 潤 いをもたらすこと 余 暇 の 善 用 といった 意 味 と 共 に 内 職 して 家 庭 の 経 済 面 でも 大 きな 意 味 をもっていたとした 4) しかし 194 年 に 全 世 界 が 混 乱 の 戦 争 時 期 に 突 入 し 女 性 は 節 約 と 抑 圧 の 日 々を 強 いられた 1945 年 に 太 平 洋 戦 争 が 終 了 直 後 は 戦 中 と 変 わらず 食 料 と 衣 料 品 は 乏 しく 1947 年 には 衣 料 配 給 規 則 衣 料 品 切 符 規 則 が 復 活 し 衣 生 活 の 厳 しさは 一 層 増 し 多 くの 人 は 国 民 服 や もんぺ 姿 更 生 服 などを 着 用 していた 依 然 資 源 不 足 は 続 き 既 製 服 は 未 熟 な 状 況 であり 洋 服 の 入 手 は 注 文 仕 立 てか 家 庭 洋 裁 しかなかった 当 時 の 主 婦 にとって 家 族 の 洋 服 を 仕 立 てることは 家 計 を 助 けることもあり 重 要 な 家 事 の 一 つになった そのよう な 状 況 下 でファッション 雑 誌 の 復 刊 や 洋 裁 学 校 の 再 開 な どが 相 次 ぎ 全 国 に 洋 裁 学 校 が 急 増 した 5) また 編 物 教 室 も 各 所 で 開 校 され 編 物 は 洋 裁 と 同 様 に 人 気 を 博 し 6) 家 庭 内 でも 様 々なものが 編 まれていた しかし 時 代 が 進 むにつれ 196 年 代 後 半 には 景 気 の 拡 大 と 共 に 洋 服 も 大 量 生 産 消 費 の 波 が 押 し 寄 せ 家 庭 で 洋 裁 を 行 うことは 激 減 した 7) このように 明 治 大 正 昭 和 初 期 の 編 物 における 洋 裁 教 育 の 盛 り 上 がり 方 と 表 1 の 戦 前 戦 後 の 梳 毛 糸 用 途 別 生 産 量 を 見 ると 文 化 学 園 大 学 造 形 学 部 助 手 ニットデザイン 染 織 文 化 学 園 大 学 紀 要 第 47 集 53

戦 前 戦 後 表 1 戦 前 戦 後 の 梳 毛 糸 用 途 別 生 産 量 ( あみもの 毛 糸 いまむかし P115より 抜 粋 ) ( 単 位 =1ポンド) 織 糸 メリヤス 糸 手 編 み 糸 合 計 生 産 量 % 生 産 量 % 生 産 量 % 生 産 量 % 昭 和 9 年 5.87 62.8 21.47 26. 9.13 11.2 81.48 1. 1 年 6.933 67.3.489 22.7 9.81 1. 9.53 1. 11 年 68.166 66.1 24.828 24. 1.179 9.9 13.173 1. 27 年 43.987 65.6 9.37 13.9 13.772.5 67.66 1. 28 年 54.688 62. 15.644 17.7 17.873.3 88.212 1. 29 年 62.345 66.3 15.63 16.6 16.79 17.1 94.34 1. 3 年 63.714 62. 18.9 18.4.7 19.6 12.716 1. 戦 前 と 戦 後 では 編 糸 の 消 費 量 は 2 倍 であり 195 から 196 年 代 が 戦 後 における 編 物 ブームであったとされる 現 在 日 本 における 編 物 の 歴 史 的 変 遷 に 関 する 研 究 は 存 在 するが 195 年 から 6 年 代 の 編 物 に 関 する 調 査 や 見 当 たらない 当 時 は 編 物 愛 好 者 が 多 かったことから 195 年 から 6 年 代 の 編 物 ブーム 時 に 日 本 でどのような 編 物 が 好 まれて 行 われていたのか 調 査 を 行 い 本 稿 では 5 年 代 の 編 物 状 況 報 告 の 第 1 報 とした Ⅱ 調 査 方 法 195 年 代 に 出 版 された 家 庭 の 主 婦 を 読 者 層 に 設 定 し た 文 化 学 園 図 書 館 所 有 または 著 者 が 自 ら 入 手 した 編 物 が 主 題 となっている 雑 誌 又 は 書 籍 13 点 を 以 下 の 項 目 に 沿 って 調 査 を 行 った 調 査 した 編 物 書 の 一 覧 は 表 2 に 示 した アイテム 別 掲 載 数 性 別 年 代 別 アイテム 掲 載 数 使 用 号 数 性 別 年 代 別 使 用 号 数 使 用 技 法 編 物 に 関 するコラム 尚 表 2 以 降 は 書 名 を 省 略 し 表 2 に 示 した 識 別 番 号 はそれぞれの 編 物 書 を 表 すこととした Ⅱ- 1-1 アイテム 別 掲 載 数 調 査 対 象 とした 編 物 書 に 掲 載 されていたニットデザイ 表 2 調 査 の 対 象 とした 刊 本 識 別 番 号 書 籍 及 び 雑 誌 名 著 者 発 行 元 発 行 年 1 春 の 編 物 と 家 庭 染 色 - 大 日 本 雄 弁 会 講 談 社 195 2 婦 人 世 界 秋 の 毛 糸 あみもの 大 全 集 - 大 日 本 雄 弁 会 講 談 社 195 3 婦 人 倶 楽 部 付 録 新 しいデザインの 春 向 き 編 物 特 集 号 荒 木 三 郎 大 日 本 雄 弁 会 講 談 社 1951 4 編 物 大 事 典 飯 村 二 朗 飯 村 清 子 ハンドブック 社 1951 5 手 編 みでも 機 械 編 でもできる 秋 の 流 行 編 物 集 - 大 日 本 雄 弁 会 講 談 社 1952 6 婦 人 子 ども 男 子 冬 の 編 物 と 洋 裁 全 書 - 大 日 本 雄 弁 会 講 談 社 1952 7 編 物 - 主 婦 の 友 社 1953 8 冬 の 洋 裁 編 物 大 全 集 - 大 日 本 雄 弁 会 講 談 社 1953 9 婦 人 の 編 物 - 主 婦 の 友 社 1956 1 冬 の 編 物 新 型 集 - 大 日 本 雄 弁 会 講 談 社 1956 11 春 の 編 物 と 洋 裁 ( 婦 人 生 活 3 月 号 付 録 ) - 同 志 社 1957 12 防 寒 あみもの( 婦 人 生 活 12 月 号 付 録 ) - 同 志 社 1958 13 毛 糸 あみもの 大 全 集 - 雄 鶏 社 1959 表 3 アイテム 分 類 表 ウェア 類 小 物 類 下 着 類 和 装 類 その 他 上 着 セーター プルオーバー スカート ジャケット チョッキ マント コンビネーション ケープ 遊 び 着 オーバーオール オーバー 子 ども 服 スーツ 寝 巻 ナイトガウン ドレス ワンピース ジャンパー 水 着 ロンパース ベビー 服 三 つ 揃 ボレロ カーディガン ジレー コート 運 動 服 肩 掛 帽 子 靴 下 襟 巻 手 袋 ショール スカーフ スリッパ おくるみ キャップ 前 掛 ベビーシート レギンス ブーティー アフガン 毛 布 靴 下 カバー 巾 着 バック ベレー マフラー ストール ベルト 股 引 ペチコート ズボン 下 アンダースカート 肌 着 下 着 腹 巻 アンダーシャツ ブルマ おむつカバー スリップ 女 性 着 パンティ 半 襦 袢 着 物 用 チョッキ 足 袋 ちゃんちゃんこ 茶 羽 織 着 物 打 掛 湯 たんぽカバー 室 内 用 カバー 氷 袋 カバー テーブルクロス ベッドカバー 座 布 団 造 花 人 形 クッション ラグ 鍋 掴 み 前 掛 け 54 文 化 学 園 大 学 紀 要 第 47 集

ンを ウェア 類 小 物 類 下 着 類 和 装 類 その 他 に 区 分 けした( 表 3) 幼 児 のおもちゃ 人 形 インテリア 小 物 などは その 他 に 分 類 し 5 年 代 で どのようなアイテムが 編 まれていたのかを 調 査 した 調 査 の 結 果 表 4 の 結 果 から 図 1 に 示 したように 5 年 代 で 最 も 編 まれていたのは ウェア 類 の 81 点 で 全 体 の 68% を 占 めていた 次 に 小 物 類 は 17%で その 他 は 5.4%だった 下 着 類 は 5.3% となり 4 年 代 から 引 き 続 き 家 庭 内 で 下 着 類 が 編 まれていたことがわかった 明 治 期 には ウェア 類 と 同 率 の 6% だったが 和 装 類 は 大 正 期 で 3% 昭 和 初 期 で 5% と 落 ち 込 み 8) 5 年 代 では 36 点 しか 掲 載 されず 全 体 の 3% であった 8 6 4 ウ ェ ア 類 表 4 アイテム 分 類 表 識 別 番 号 ウェア 類 小 物 類 下 着 類 和 装 類 その 他 1 32 2 - - - 2 37 - - - 6 3 44 - - - 5 4 29 1-1 5 58 26 11 4 17 6 6 5 6 1-7 6 26 11 4 17 8 26 2 - - - 9 39 35 - - 1 1 95 8-5 - 11 76 12 - - 3 12 17 32 1 13 6 13 147 45 16 9 9 合 計 81 213 64 36 65 小 物 類 下 着 類 和 装 類 図 1 アイテム 別 掲 載 数 比 率 ( 単 位 :%) そ の 他 Ⅱ- 1-2 性 別 年 代 別 アイテム 掲 載 数 表 3 に 掲 載 されていたアイテムを 女 性 用 男 性 用 幼 児 子 ども 用 その 他 に 分 類 し 5 年 代 にどの 性 別 年 代 の 編 物 が 製 作 されていたのかを 棒 針 と かぎ 針 に 分 け それぞれを 表 5 にまとめた 調 査 の 結 果 (1) 棒 針 - 女 性 用 が 最 も 多 く 全 体 の 44% であっ た 続 いて 幼 児 子 ども 用 で 34% 3 番 目 に そ の 他 の 11% の 順 で 掲 載 さ れ て い た 男 性 用 は 8.8% であった( 図 2) 表 5 性 別 年 代 別 掲 載 アイテム 分 類 棒 針 識 別 幼 児 女 性 男 性 番 号 子 ども その 他 かぎ 針 識 別 幼 児 女 性 男 性 番 号 子 ども その 他 1 23 2 7 2 1 1 2 22 2 13 9 2 11 3 25 4 14 3 3 4 3 15 4 1 5 25 16 5 3 6 32 4 24 5 6 3 7 21 15 21 27 7 4 26 8 14 14 8 9 36 15 2 9 1 33 3 27 2 1 1 5 6 11 33 3 27 2 11 1 5 6 12 5 8 53 12 5 1 1 17 13 81 23 9 17 13 14 13 15 合 計 415 82 321 19 合 計 44 1 33 88 5 4 3 1 図 2 性 別 年 代 別 掲 載 アイテム 分 類 比 率 - 棒 針 ( 単 位 :%) (2)かぎ 針 - 図 3 の 通 り 最 も 多 く 掲 載 されたのは その 他 であり 53% であった 次 に 女 性 用 は 26% であり 3 番 目 の 幼 児 子 ども 用 は 19.8% であった 男 性 用 は 1.9%であった 6 5 4 3 1 図 3 性 別 年 代 別 掲 載 アイテム 分 類 比 率 -かぎ 針 ( 単 位 :%) 考 察 長 谷 川 の 調 査 によると 明 治 期 では 編 物 のアイテムは 靴 下 や 肩 掛 けなどの 小 物 中 心 であり 大 正 期 には 戦 争 に 文 化 学 園 大 学 紀 要 第 47 集 55

より 編 糸 が 入 手 困 難 になるなど 編 物 業 界 では 下 火 の 期 間 が 長 かった 9) 戦 争 終 了 後 から 洋 裁 化 と 洋 裁 ブームの 波 に 乗 り 昭 和 初 期 は ウェア 類 が 全 体 数 の 62% に 及 ぶことがわかった 1) 引 き 続 き 5 年 代 でも ウェア 類 の 人 気 が 68%ま でに 高 まった 理 由 の 一 つとして 図 4 の 様 な 紡 績 会 社 から ウェア 類 の 編 み 方 が 掲 載 されたファッションブックが 次 々に 創 刊 され 様 々な 編 物 が 紹 介 されていたことから 洋 装 のイメージが 庶 民 に 掴 み 易 くなったこと 第 二 に 紡 績 会 社 が 編 糸 販 売 促 進 のためのテレビコマーシャルや 雑 誌 広 告 を 強 化 したことで 11) 編 物 で 製 作 されたウェ ア 類 がより 身 近 に 感 じられたと 考 えられる 若 干 ではあるが 各 4 件 と 編 まれていたことがわかった (2)かぎ 針 - 5 年 代 でもっとも 使 用 されていたかぎ 針 の 号 数 は 号 数 指 定 なしの その 他 であったが 使 用 毛 糸 を 調 査 すると 大 多 数 が 極 細 2 本 取 りや 中 細 糸 を 指 定 しており 棒 針 同 様 かぎ 針 でも 最 も 使 用 されていた 毛 糸 は 極 細 から 中 細 糸 だったことが 判 明 した( 図 6) 表 6 使 用 号 数 一 覧 - 棒 針 - 棒 針 の 号 数 識 別 番 号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 その 他 1-3 1 1 - - - - - - 1 2 1 17 21 7 - - - - - - - - 3-11 25 1 - - - - - - - - 4 2 8 44 6 - - - - - - 1-5 - 16 21 1 - - - - 1 - - 5 6-16 33 9 - - - - - - - - 7 8 21 53 3 - - - - - - - - 8-3 13 2 - - - - - - - - 9-15 37 1 - - - - - - 1-1 - 8 18 3 - - - - - - 1-11 1 26 4 - - - - - - - - - 12 5 58 46 15 - - 1-3 - 1 3 13 2 13 48 8 2 1 1 - - - - - 合 計 19 332 419 75 3 1 2 4 4 9 図 4 紡 績 会 社 から 発 行 されたファッションブック Ⅱ- 2-1 編 物 用 使 用 針 と 糸 表 1 内 で 掲 載 されている 編 図 に 使 用 されている 棒 針 かぎ 針 の 号 数 を 以 下 のルールに 沿 って 分 類 し 5 年 代 でどの 号 数 の 針 糸 が 使 用 されていたのかを 調 査 した ( 表 6)( 表 7) 1) 針 の 号 数 は ~ 1 号 とし それ 以 外 の 号 数 は その 他 とした 2) 編 機 と 手 編 みの 両 方 で 制 作 できる 作 品 は 調 査 対 象 としたが 編 機 のみの 編 図 のものは 対 象 外 とした 3) かぎ 針 では 号 数 の 指 定 がないものは その 他 と した 4) アフガン 針 は その 他 に 分 類 した 調 査 の 結 果 (1) 棒 針 - 表 6 の 結 果 最 も 使 用 されていた 棒 針 の 号 数 は 2 号 で 全 体 の 48%であった 次 に 1 号 で 38% 3 号 で 8.6%の 順 となった( 図 5) 2 号 と 1 号 を 両 方 合 わ せて 86%も 使 用 されていたということは 5 年 代 に 使 用 されていた 毛 糸 は 極 細 ~ 中 細 糸 が 主 流 であったという ことが 判 明 した しかし 太 糸 を 使 用 する 8 号 1 号 も 表 7 使 用 号 数 一 覧 -かぎ 針 - 識 別 番 号 かぎ 針 の 号 数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 その 他 1 - - - - - - - - - - - 1 2 - - - - - - - - - - - 11( 指 定 号 数 なし) 3 - - - - - - - - - - - 3( 指 定 号 数 なし) 4 - - - - - - - - - - - 1(アフガン) 5 - - - - - - - - - - - 3( 指 定 号 数 なし) 6 - - - - - - - - - - - 3( 指 定 号 数 なし) 7-1 - - - - 2-4 - 2 8 - - - - - - - - - - - - 9 - - - - - - - - - - - - 1 - - - - - 1 - - - - - 5 ( 指 定 号 数 なし) 11 - - - - - - - - - - - 14( 指 定 号 数 なし) 太 :1 細 :1 12 - - - - - - - - 1 - - 15( 指 定 号 数 なし) アフガン :1 13 - - - - - - - - 2 - - 14( 指 定 号 数 なし) アフガン :24 合 計 1 1 2 7 2 126 6 5 4 3 1 図 5 使 用 号 数 比 率 - 棒 針 -( 単 位 :%) 56 文 化 学 園 大 学 紀 要 第 47 集

1 8 6 4 Ⅱ- 2-2 性 別 年 代 別 編 物 用 使 用 針 と 糸 表 2 内 の 編 図 を 女 性 用 男 性 用 幼 児 子 ども 用 その 他 指 定 なし で 分 類 し 各 性 別 年 代 別 で 最 も 使 用 されている 棒 針 かぎ 針 を 調 査 し 表 8 にま とめた 使 用 号 数 図 6 使 用 号 数 比 率 -かぎ 針 -( 単 位 :%) 表 8 性 別 年 代 別 使 用 棒 針 かぎ 針 一 覧 女 性 男 性 棒 針 幼 児 子 ども その 他 女 性 男 性 かぎ 針 幼 児 子 ども その 他 - - 1 9 - - - - 1 161 17 118 42 - - - 1 2 17 45 139 51 - - - - 3 29 12 28 5 - - - - 4 1 1 - - - - - - 5-1 - - - - - - 6 1 - - 1 - - - 2 7 - - - - - - - - 8 3 - - - 1 - - 7 9 - - - - - - - - 1 2 - - - - - - 2 その 他 - - - - 15 2 13 14 指 定 なし - - - - 8 3 9 6 調 査 の 結 果 (1) 棒 針 女 性 用 - 2 号 は 17 点 1 号 は 161 点 と 大 き な 差 はないが 3 号 は 29 点 だった (2) 棒 針 男 性 用 - 2 号 は 45 点 で 最 多 であり 1 号 は 17 点 3 号 は 12 点 の 順 で 使 用 されていた (3) 棒 針 幼 児 子 ども 用 - 2 号 が 139 点 1 号 が 118 点 と 続 き 最 後 は 3 号 の 28 点 の 順 で 使 用 されていた (4) 棒 針 その 他 - 2 号 は 51 点 1 号 は 42 点 と 使 用 さ れていて 3 番 目 に 号 が 9 点 使 用 されていた 棒 針 で 最 も 使 用 されていた 号 数 はどの 性 別 年 齢 別 で も 2 号 針 だった 男 性 用 以 外 は 次 点 に 1 号 3 号 で あり 女 性 用 や 幼 児 子 ども 用 その 他 では より 細 い 号 数 が 使 用 されていたことがわかった 男 性 用 は 2 号 の 次 に 3 号 が 続 いた (5)かぎ 針 女 性 -その 他 が 15 点 次 に 指 定 なしの 8 点 だった (6)かぎ 針 男 性 用 - 指 定 なしで 3 点 その 他 の 2 点 で 大 きな 差 はなかった (7)かぎ 針 幼 児 子 ども 用 - その 他 の 13 点 が 最 も 使 用 されており 次 に 指 定 なしであった (8)かぎ 針 その 他 - 指 定 なし が 6 点 次 にその 他 の 14 点 であった かぎ 針 では 元 々ウェア 類 のアイテム 数 が 少 なく その 他 で 最 も 多 く 利 用 されていた 使 用 号 数 は 指 定 なしが 大 多 数 であるが 6 8 1 号 針 の 使 用 も 発 見 することが できた 考 察 5 年 代 には 2 号 針 以 外 にも 使 用 されていたが 最 も 使 用 されていた 号 数 は 全 体 の 約 半 数 の 割 合 を 占 めた 2 号 棒 針 であり どの 性 別 年 代 別 おいても 最 も 使 用 され ていたのも 2 号 棒 針 という 結 果 であった この 結 果 か ら 5 年 代 では 性 別 年 齢 別 によって 号 数 を 使 い 分 け るということはなく 中 細 糸 を 中 心 に 作 品 が 製 作 されて いたことがわかった 中 細 糸 が 最 も 利 用 されていた 理 由 として 考 えられるの は 昭 和 35 年 (1955 年 ) 前 後 からの( 中 細 糸 を 使 用 す る) 編 機 の 普 及 などから 中 細 は 全 体 の 七 八 割 のウ エイトを 占 める 12) ようになり この 理 由 として 婦 人 セーターの 需 要 が 伸 びた 13) と あみもの 毛 糸 いまむ かし で 述 べられている その 裏 付 けとして 識 別 番 号 5 7 9 11 12 13 内 には 編 機 と 棒 針 が 併 用 できる 編 み 方 が 掲 載 されており 使 用 されている 糸 は 両 方 に 対 応 できる 中 細 糸 だったため 使 用 されていたと 推 測 される Ⅱ- 3 使 用 技 法 5 年 代 にはどのような 技 法 が 使 用 されていたのか 表 1 に 記 載 されている 全 ての 編 図 を 棒 針 編 は メリヤス 編 裏 メリヤス 編 ガーター 編 鹿 の 子 編 模 様 編 編 み 込 み 編 縄 編 ゴム 編 引 上 げ 編 透 か し 編 複 合 編 手 芸 との 複 合 その 他 に 分 類 した かぎ 針 編 は 細 編 長 編 長 々 編 模 様 編 モ チーフ 編 その 他 とし 表 9 にまとめた 尚 調 査 時 に 以 下 の 分 類 基 準 を 定 め 調 査 を 行 った 1) 調 査 した 箇 所 はゲージで 使 用 されている 技 法 とした 2) 模 様 編 は 主 に 表 目 裏 目 などで 構 成 されている 模 様 編 とした 3) 編 み 込 み 編 は 2 色 以 上 の 糸 を 柄 に 沿 って 編 み 込 む 文 化 学 園 大 学 紀 要 第 47 集 57

識 別 番 号 メリヤ ス 編 裏 メリ ヤス 編 ガー ター 編 鹿 の 子 編 み 込 模 様 編 編 み 編 表 9 表 2 内 で 使 用 されていた 技 法 一 覧 棒 針 棒 針 かぎ 針 縄 編 ゴム 編 引 き 上 げ 編 透 かし 編 複 合 編 手 芸 と 編 ワンポイ その 他 物 の 複 合 ント 刺 繍 細 編 長 編 長 々 編 模 様 編 1 3 - - 1 5 4 7 1-2 9 2 1 5-1 - - - - 2 1-2 1 4 7 2 1 1 11 5 4 1-3 2-6 - - 3 9 - - 1 9 5 4 1 2 2 4 9-5 3 - - - - - 4 13-1 - 11 7 2 4-3 12 8 - - - - - - - - 5 14 - - - 5 1-1 1 2 13 4 - - 1 1-1 - - 6-1 1 11 9 4 1 4-8 12-4 1 - - - 5-7 26 1 4 1 7 4 11 4 5 9 1 6 4-11 - - 3 4 8 8 4 1 - - 5 2 3 1 2 1 2 5-1 2 - - - - - 9 25 - - - 1 1 1 2 1 3 2 15 1 13 - - - - 1 2 1 36 9 1-4 6 2 5 8 2 4 17-6 1 1 1-3 6 11 22 2 1 1 3 5 3 1 4 5 5 1 2 8 3 - - 18 3 3 12 33 5-1 5 15 12 6 18 5 8 24 2 3 8 1-12 - 1 13 35 11 2 4 12 28 6 1 34 13 9 26 4 7 8 - - 12 1 24 合 計 25 29 12 11 82 94 57 38 8 58 91 142 15 52 41 6 1 52 17 53 モチー フ 編 その 他 技 法 のものとした 4) 複 数 の 技 法 が 同 等 の 割 合 で 使 用 されており ゲージ が 複 数 掲 載 されていた 場 合 は 複 合 編 とした 5) 後 加 工 として 刺 繍 やコード 飾 り シャーリング ス モッキング ピンタック ビーズ 等 が 施 された 特 徴 的 な デザインは 手 芸 との 複 合 とした 6)かぎ 針 の 模 様 編 は 細 編 や 長 編 等 を 組 み 合 わせた 技 法 とした 8)アフガン 編 は その 他 に 含 めた 調 査 結 果 と 考 察 表 9 の 調 査 の 結 果 5 年 代 で 最 も 使 用 されていた 技 法 は メリヤス 編 で 全 体 の 26%であった メリヤス 編 は 編 物 の 基 本 であり どの 編 物 書 にも 必 ず 編 み 方 が 記 載 されていた 技 法 であった メリヤス 編 の 次 に 使 用 されていた 技 法 は 手 芸 と 編 物 の 複 合 であり 14.8%と 次 点 の 編 み 込 み 編 の 9.8% とは 5%の 差 異 があった 3 番 目 に 使 用 されていた 技 法 は 2 色 の 糸 を 柄 のデザ インに 沿 って 編 込 んでいく 編 み 込 み 編 であり 雪 の 結 晶 柄 や 格 子 柄 など 様 々な 柄 が 編 まれていた 4 番 目 に 複 数 の 技 法 を 組 み 合 わせた 複 合 編 で 5 番 目 に 表 目 や 裏 目 などを 組 み 合 わせた 模 様 編 が 続 いた また 手 芸 と 編 物 の 複 合 とは 別 に ワンポイントで 編 地 に 刺 繍 を 施 していたデザインも 多 数 見 受 けられたこ とから ワンポイント 刺 繍 の 調 査 を 行 った その 結 果 52 点 の 該 当 作 品 が 見 つかり 全 体 の 5.4%となった( 図 7) かぎ 針 はアフガン 編 を 含 む その 他 の 31%が 最 も 編 まれていたが これは 識 別 13 内 にアフガン 編 の 作 品 が 多 く 掲 載 されていた 結 果 であると 考 えられる 25 3 15 1 5 4 3 1 図 7 使 用 技 法 割 合 - 棒 針 ( 単 位 :%) 次 に 編 まれていたのが 模 様 編 で 195 年 初 期 に 作 品 点 数 は 多 くはないが 5 年 代 後 期 に 使 用 頻 度 が 高 まっ ているという 結 果 になった 最 後 に 細 編 であるが かぎ 編 の 最 も 基 本 的 な 技 法 であるため 表 2 のかぎ 針 が 掲 載 されていた 全 てに 編 物 書 で 細 編 は 使 用 されていた( 図 8) 考 察 5 年 代 で 使 用 されていた 技 法 を 調 査 した 結 果 メリ ヤス 編 と 図 9 のような 手 芸 と 編 物 の 複 合 が 大 きな 図 8 使 用 技 法 比 率 -かぎ 針 ( 単 位 :%) 58 文 化 学 園 大 学 紀 要 第 47 集

割 合 を 占 めていることがわかった メリヤス 編 は 最 も 基 礎 的 かつシンプルな 編 地 であ ることから 性 別 年 齢 関 係 なく 様 々な 面 で 使 用 されて おり 最 多 使 用 技 法 になったと 考 えられる 手 芸 と 編 物 の 複 合 はワンポイント 刺 繍 の 割 合 を 合 わせて.2%となることから 5 年 代 には 一 般 的 な 技 法 だったといえる その 他 に 使 用 されていた 技 法 は ビーズを 編 み 込 んだもの コード 飾 り シャーリング スモッキング ピンタックや 織 物 風 のデザインや 革 と 組 み 合 わせた 作 品 等 も 発 見 することができた 図 9 配 色 と 刺 繍 で 柔 らかみを 添 えたロマンチックな 若 向 のセーターのデザイン Ⅱ- 4 編 物 に 関 するコラム 表 2 内 には 編 物 の 方 法 以 外 にも 編 物 や 糸 に 関 するコラ ムが 掲 載 されており 当 時 の 女 性 は 編 物 に 関 する 知 識 は コラムから 得 ていたと 推 測 される 表 2 内 に 掲 載 されて いたコラムにはどのような 項 目 内 容 が 書 かれていたの かを 毛 糸 編 物 の 洗 い 方 毛 糸 の 扱 い 方 仕 上 げ 方 法 毛 糸 の 巻 き 方 毛 糸 編 物 の 保 存 法 編 物 毛 糸 の 再 生 方 法 毛 糸 の 染 め 方 毛 糸 のつなぎ 方 海 外 モードの 紹 介 に 分 けて 調 査 を 行 い 当 時 の 女 性 が 編 物 に 対 してどのような 知 識 を 編 物 本 から 得 て その 内 容 は 年 ごとに 変 化 はあったのかを 調 査 し 表 1 にまとめた 調 査 結 果 最 も 掲 載 されていた 内 容 は 海 外 モードの 紹 介 で 7 件 であった 紹 介 の 中 には 海 外 の 編 物 情 報 が ファッ ション 写 真 や 編 み 方 と 共 に 紹 介 されていた 識 別 番 号 2 では アメリカで 一 番 有 名 な 毛 糸 と 毛 織 物 会 社 ボヌニー 社 の 糸 を 使 用 したデザイン 5 点 が 掲 載 され ていたり 識 別 番 号 1 の 中 では 新 しい 年 の 編 物 の 流 行 というコラムで ニッテッド ルックというセーター を 着 ていかに 洗 練 された 美 しさを 表 現 するかということ が 流 行 の 新 しい 課 題 である 14) と 述 べられている また 識 別 番 号 12 では 海 外 のニッティング と 題 して 縄 編 のスキーウェアやバルキー 調 のカーディガン ラグランスリーブのトッパーコートが 紹 介 されていた 掲 載 点 数 5 点 の 毛 糸 編 物 の 洗 い 方 は 識 別 番 号 7の 中 では 洗 濯 という 項 目 で 使 用 する 洗 剤 はモノゲ ンなどの 中 性 洗 剤 とアンモニア 酢 で つかみ 洗 いによ る 下 洗 い 本 洗 い 濯 ぎ 洗 い と 続 き 脱 水 の 意 味 の 搾 り 方 は 洗 濯 板 2 枚 と 石 を 使 用 する 15) という 記 述 があっ た 識 別 番 号 4 では 洗 濯 前 に 袖 口 裾 口 のゴム 編 が 伸 び るため 木 綿 糸 でぬい 糸 を 緩 めてぬるま 湯 に 浸 すとい う 毛 糸 製 品 を 貴 重 に 扱 う 方 法 も 紹 介 されていた 次 に 4 件 と 掲 載 されていたものは 仕 上 げ 方 法 と 編 物 毛 糸 の 再 生 方 法 である 仕 上 げ 方 法 は 当 て 布 をしてスチームをあてるという 現 代 と 同 じ 方 法 が 行 われ ていた 着 古 したセーターやサイズが 合 わなくなったセーター 識 別 番 号 毛 糸 編 物 の 洗 い 方 表 1 表 2 内 で 掲 載 されていたコラム 内 容 一 覧 毛 糸 の 扱 い 方 仕 上 げ 方 法 毛 糸 の 巻 き 方 毛 糸 編 物 の 保 存 法 編 物 毛 糸 の 再 生 方 法 毛 糸 の 染 め 方 毛 糸 の つなぎ 方 海 外 モードの 紹 介 1 〇 〇 〇 〇 〇 - - - - 2 - - - 〇 - 〇 - - 〇 3 - - - - - - - - 〇 4 〇 - 〇 〇 - 〇 - 〇 - 5 〇 〇 〇 - - - 〇 - - 6 - - - - - - - - 〇 7 〇 - 〇 - - 〇 〇 - - 8 - - - - - - - - - 9 〇 - - - - 〇 〇 - - 1 - - - - - - - - 〇 11 - - - - - - - - 〇 12 - - - - - - - - 〇 13 - 〇 - - - - - - 〇 文 化 学 園 大 学 紀 要 第 47 集 59

の 糸 を 解 き 糸 を 再 利 用 する 編 物 毛 糸 の 再 生 方 法 が 行 われていた ほどいた 糸 は 糸 目 の 編 み 癖 がついてお り それを 戻 すための 専 用 の 機 器 や やかんを 活 用 する 方 法 を 紹 介 したコラムが 識 別 番 号 2 4 7 8 の 中 で 掲 載 されていた また 毛 糸 の 染 め 方 も 編 直 し 同 様 に 行 われ 糸 を 再 生 するための 染 色 を 行 う 方 法 が 3 件 掲 載 されていた 識 別 番 号 1 の 中 で 解 いた 毛 糸 を 四 十 センチくらいのかせにし ( 一 部 省 略 ) 好 みの 染 液 の 中 に 入 れて 染 め 充 分 に 乾 いたら 中 央 のくるんだ 木 綿 を とりはずし 染 めてないところを 染 めると 二 色 のぼかし 染 になる この 毛 糸 を 使 用 すると 更 生 したとは 思 えぬ 面 白 い 味 のものがある 16) と 記 載 されており 糸 を 工 夫 して 染 色 を 行 い 編 物 を 再 び 楽 しむ 様 子 がわかった 糸 の 巻 き 方 とは 毛 糸 巻 器 を 使 用 して 糸 を 玉 状 にす る 方 法 の 事 であり 当 時 はかせの 状 態 で 糸 が 販 売 されて いたり 糸 の 染 直 しをした 際 に 毛 糸 巻 機 を 使 用 するため このコラムが 掲 載 されていた また 図 1 のような 糸 巻 機 本 体 を 手 作 りする 方 法 も 識 別 番 号 2 の 中 に 掲 載 さ れていた しかし 195 年 代 前 半 にはこの 内 容 のコラ ムは 発 見 できず 家 庭 では 毛 糸 巻 器 の 必 要 性 がなくなっ た 可 能 性 がある 図 1 毛 糸 巻 器 の 作 り 方 考 察 5 年 代 では 最 新 の 編 物 の 流 行 や 海 外 のデザインが 定 期 的 ではないが 紹 介 されていた また 編 糸 の 準 備 から 編 物 の 仕 上 げ 方 法 などの 編 物 に 関 する 一 連 の 作 業 工 程 がコラムとして 掲 載 されていたこ とがわかった この 作 業 工 程 と 共 に 5 年 代 の 編 物 傾 向 として た だ 作 品 を 編 むだけでなく アフターフォローとして 糸 の 再 生 や 再 利 用 の 仕 方 も 紹 介 され 毛 糸 を 資 源 として 貴 重 に 扱 う 傾 向 があった この 時 代 的 背 景 には 1945 年 にアメリカ 軍 による 爆 撃 攻 撃 で 糸 問 屋 が 壊 滅 状 態 で 日 本 の 編 糸 の 在 庫 が 無 く なってしまったが 17) 5 年 代 に 紡 績 会 社 から 編 糸 の 再 販 が 開 始 されるが 18) 糸 はまだ 貴 重 であった しかし 編 物 は 編 直 しができることから 経 済 的 で 家 計 をやりくり する 当 時 の 主 婦 にとって 編 糸 の 再 利 用 に 関 するコラ ムは 人 気 があったのではないだろうか だが 1956 年 頃 から 編 物 や 糸 に 関 するコラム 数 が 減 少 し 1959 年 の 1 コラムのみとなってしまった 識 別 番 号 7 には ナイロン レーヨンの 手 編 み 糸 新 しい 手 編 糸 の 勉 強 の 中 で 大 量 生 産 ができるアクリルの 毛 糸 が 紹 介 されており 毛 糸 に 比 べ 扱 いやすく 糸 の 染 直 しがいらないほど 堅 牢 度 が 高 い 19) と 記 述 されている ことから 糸 の 再 生 や 染 色 が 以 前 より 必 要 性 がなくなっ たことが 考 えられる まとめ 本 調 査 では 5 年 代 に 発 刊 された 主 婦 を 読 者 層 とした 編 物 書 13 点 をアイテム 別 掲 載 数 性 別 年 代 別 アイテ ム 掲 載 数 使 用 号 数 性 別 年 代 別 使 用 号 数 使 用 技 法 編 物 に 関 するコラム 数 とその 内 容 について 編 物 に 関 する 基 礎 調 査 行 い 以 下 のような 結 果 となった (1)5 年 代 では 紡 績 会 社 による 販 売 促 進 の 為 の ファッションブックや 雑 誌 広 告 などの 宣 伝 効 果 により ウェア 類 の 人 気 が 高 まり 前 年 代 よりウェア 類 の 人 気 が 更 に 高 まった 結 果 となった (2) 当 時 使 用 されていた 編 物 針 は 2 号 棒 針 が 圧 倒 的 に 多 い 中 編 機 と 棒 針 の 併 用 が 日 常 的 に 行 われており ど ちらにも 対 応 できる 中 細 糸 が 性 別 年 代 別 に 問 わず 最 も 使 用 されていた (3)5 年 代 でも 様 々な 技 法 が 使 用 されていたが 手 芸 と 編 物 を 組 み 合 わせた 作 品 点 数 がメリヤス 編 作 品 数 の 次 に 多 く 編 まれており 刺 繍 をはじめ ビーズ 編 やコー ド 飾 り シャーリングなどの 様 々な 手 芸 技 法 が 編 物 と 組 み 合 わせられていた (4)5 年 代 のコラムは 海 外 モードの 紹 介 から 編 物 の 洗 濯 仕 上 げ 方 法 などの 編 物 制 作 に 関 する 様 々な 情 報 や 方 法 が 紹 介 されていた その 中 に 数 種 類 の 編 糸 の 再 生 方 法 が 提 案 されており 編 糸 が 貴 重 に 扱 われていたことが わかった しかし 5 年 代 半 ばには 扱 いやすいレーヨン 糸 などの 流 通 により 染 直 しや 再 利 用 の 必 要 性 がなくな り このようなコラムは 減 少 傾 向 になってきたことがわ かった 今 後 の 調 査 として 5 年 代 後 期 の 編 物 書 の 調 査 数 が 前 期 と 比 較 すると より 必 要 と 思 われるため 引 き 続 き 調 査 を 継 続 して 行 っていく また 同 様 の 調 査 を 6 年 代 で 行 い 5 年 代 と 6 年 代 では 編 物 デザインや 編 物 の 6 文 化 学 園 大 学 紀 要 第 47 集

状 況 に 変 化 があったのかを 明 らかにし 今 後 のニットデ ザインに 生 かして 行 きたいと 考 えている 引 用 参 考 文 献 1) 谷 本 きよ 編 物 の 変 遷 について 史 的 一 考 察 山 脇 学 園 短 期 大 学 紀 要 1964 2) 長 谷 川 綾 子 明 治 期 における 欧 風 手 芸 ( 編 物, 刺 繍 )の 女 子 教 育 の 導 入 について 第 1 報 聖 霊 女 子 短 期 大 学 紀 要 1993 no.21 3) 長 谷 川 綾 子 明 治 期 における 欧 風 手 芸 ( 編 物, 刺 繍 )の 女 子 教 育 の 導 入 について 第 2 報 聖 霊 女 子 短 期 大 学 紀 要 1994 no.24 4) 森 理 絵, 櫻 井 あゆみ 近 代 日 本 における 編 物 の 変 遷 の 一 側 面 - 明 治 後 期 から 昭 和 前 期 の 編 物 書 24 点 の 分 析 を 通 して- 日 本 家 政 学 会 誌 Vol.63 No5 p17 5) 増 田 美 子 日 本 服 飾 史 東 京 堂 出 版 13 p168 6) 5) p169 7) Lela Nargi Knitting Around The World Voyageur Press, 11, p165 8) 4) p9 9) 3) p29 1)4) p9 11) 松 下 義 弘 あみもの 毛 糸 いまむかし 日 本 手 編 み 糸 産 業 史 日 本 ヴォーグ 社 1986 pp124~129 12)11) p115 13)11) p115 14) 冬 の 編 物 新 型 集 大 日 本 雄 弁 会 講 談 社 1956 p42 15) 編 物 主 婦 の 友 社 1953 p248 16) 婦 人 の 編 物 主 婦 の 友 社 1953 p142 17)11) p94 18)11) p99 19)16) pp363~367 図 版 出 典 表 1 松 下 義 弘 あみもの 毛 糸 いまむかし 日 本 手 編 み 糸 産 業 史 日 本 ヴォーグ 社 1986 p115 図 4 松 下 義 弘 あみもの 毛 糸 いまむかし 日 本 手 編 み 糸 産 業 史 日 本 ヴォーグ 社 1986 p37 図 9 婦 人 の 編 物 主 婦 の 友 社 1953 p4 図 1 婦 人 世 界 秋 の 毛 糸 あみもの 大 全 集 p55 文 化 学 園 大 学 紀 要 第 47 集 61