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体 細 胞 クローン 胚 における DNA のメチル 化 制 御 機 構 の 解 明 とその 評 価 高 橋 昌 志 阪 谷 美 樹 山 中 賢 一 農 研 機 構 九 州 沖 縄 農 業 研 究 センター 要 約 体 細 胞 クローン 牛 の 報 告 が 成 されて 以 降,10 年 を 超 え,その 作 成 手 法 や 胚 発 生 効 率 向 上 の 研 究 が 全 世 界 で 実 施 されてきている 我 が 国 においても 国 公 立 研 究 機 関, 民 間 や 大 学 で 精 力 的 に 遂 行 されている 特 に, 我 が 国 のクロー ン 研 究 は 他 の 国 とは 異 なり, 乳 肉 生 産 を 最 終 目 的 として,その 実 施 が 成 されており,これまでに 600 頭 近 い 産 子 個 体 の 作 出 数 が 報 告 されている しかしながら,その 作 出 効 率 は 依 然 として 低 く, 安 心 安 全 を 求 める 消 費 者 への 理 解 は 未 だ 遠 いという 状 況 にある 体 細 胞 クローン 個 体 作 出 効 率 向 上 は, 実 験 動 物 も 含 めてその 基 礎 的 研 究 が 進 んでおり, 新 たな 局 面 からのアプローチが 待 たれるところである 近 年, 体 細 胞 クローン 研 究 において, 分 化 した 体 細 胞 をドナーとすることで, 通 常 受 精 を 経 た 初 期 胚 に 見 られるようなゲノムの 初 期 化 が 十 分 に 起 こらな いために, 正 常 な 遺 伝 子 調 節 が 成 されていないことがその 原 因 の 一 つとしてとらえられている この 不 全 現 象 を 後 性 的 遺 伝 子 修 飾 機 構 :エピジェネティクス の 観 点 から DNA の 修 飾 発 現 機 構 不 全 を 解 明, 評 価,および 制 御 することで,より 受 精 胚 に 近 い 発 生 分 化 条 件 を 整 える 研 究 が 期 待 される 本 稿 では,クローン 胚 のエピジェ ネティクス 機 構 を DNA のメチル 化 の 観 点 から 検 出 し,その 状 況 を 評 価 することと 共 に,メチル 化 制 御 に 関 与 す る 因 子 を 制 御 する 手 法 としての RNA 干 渉 を 用 いた 新 たな 調 節 技 術 研 究 の 知 見 についての 紹 介 を 行 う キーワード: 体 細 胞 クローン 胚,メチル 化,DNA メチル 基 転 移 酵 素,RNA 干 渉 1.はじめに 1997 年 の 体 細 胞 クローン 羊 ドリー 誕 生 以 降, 核 移 植 技 術 の 飛 躍 的 な 発 展 により 国 内 においても 体 細 胞 ク ローン 産 子 の 産 生 例 が 数 多 く 報 告 されている しかし ながら, 移 植 した 際 の 低 受 胎 率, 胎 盤 形 成 異 常, 死 産 あるいは 分 娩 後 の 死 亡 等 の 問 題 が 依 然 として 残 されてお り( 図 1), 体 細 胞 クローン 産 子 の 安 定 的 生 産 のために は, 解 決 すべき 点 は 少 なくない クローン 胚 における 低 受 胎 率, 発 育 不 全 等 の 問 題 の 原 因 を 解 明 する 場 合, 核 移 植 によって 導 入 されたドナー 細 胞 由 来 の 遺 伝 子 情 報 およ び 機 能 が 通 常 に 働 くか 否 かの 検 証 がポイントの 一 つであ ると 考 えられる クローン 動 物 も 含 めた 個 体 発 生 に 関 わ る 研 究 分 野 において,エピジェネティクスという 研 究 領 域 が 近 年 注 目 されている このエピジェネティクスとは DNA 配 列 の 変 化 を 伴 わずに 子 孫 や 娘 細 胞 に 伝 達 される 遺 伝 子 機 能 の 変 化 と,この 現 象 を 探 求 する 学 問 と 定 義 されている( 牛 嶋 と 服 部 2008) 遺 伝 子 がその 機 能 を 発 揮 する 際 には,その 発 現 の 調 節 が 必 要 である クローン 胚 発 育 の 問 題 点 の 一 つとして 考 えられる 点 としては, 本 来 であれば, 受 精, 初 期 発 生 を 介 して 分 化 したゲノム 情 報 がリセットされ, 細 胞 増 殖 分 化 が 進 むにつれて 組 織 分 化 に 向 けての 新 たな 遺 伝 子 発 現 が 起 こるところ, 核 移 植 により 導 入 された DNA 情 報 により, 本 来 の 遺 伝 子 機 能 が 十 分 に 機 能 し 得 ていないことに 起 因 するところが 多 いためと 考 えられる この DNA 配 列 変 化 を 伴 わない 遺 伝 子 発 現 調 節 の 観 点 から,クロマチンの 構 造 及 び DNA のメチル 化 修 飾 が 組 織 や 細 胞 特 異 的 な 制 御 に 大 きく 関 与 することが 近 年 の 研 究 により 明 らかになりつつある 本 項 では,クローン 胚 のメチル 化 調 節 に 関 わる 因 子 の 一 つ であるメチル 基 転 移 酵 素 の 発 現 制 御 とメチル 化 状 態 の 検 出 についての 紹 介 を 行 う 過 大 子 誕 生 分 娩 事 故 核 移 植 胚 移 植 胎 盤 形 成 不 全 胚 死 滅 図 1. 核 移 植 による 産 子 生 産 の 課 題 点 - 33 -

畜 産 草 地 研 究 所 研 究 資 料 第 10 号 (2010) Me Me Me Me Me 図 2. 核 移 植 胚 発 生 時 のメチル 化 状 態 変 化 とメチル 化 修 飾 による 遺 伝 子 発 現 調 節 模 式 図 2.DNA のメチル 化 制 御 機 構 と 遺 伝 子 発 現 制 御 真 核 生 物 のゲノム 中 では 構 成 塩 基 のうち,シトシンに メチル 基 が 修 飾 された5メチルシトシンがゲノム DNA の 機 能 を 制 御 する 生 理 的 に 重 要 な 役 割 を 担 っている 部 位 として 知 られている DNA 配 列 中 では,CG の2 塩 基 が 並 んだ 部 位 のシトシンについて5メチルシトシンの 修 飾 がなされ, CpG アイランド と 呼 ばれる CpG アイラ ンドのメチル 化 は 転 写 に 関 与 しており, 転 写 調 節 領 域 遺 伝 子 には, 非 メチル 化 CpG アイランドが 主 に 認 められる 分 化 した 組 織 では, 組 織 特 異 的 な CpG アイランドのメ チル 化 による 遺 伝 子 発 現 制 御 がなされているが, 哺 乳 動 物 の 初 期 発 生 については, 分 化 組 織 におけるメチル 化 制 御 とは 異 なるメチル 化 の 大 きな 変 動 が 見 られることが 知 られている(Jaenisch 1997) すなわち, 受 精 後, 初 期 発 生 の 過 程 において, 精 子 と 卵 子 ゲノムが 有 するメチル 化 シトシンの 大 半 が 胚 盤 胞 までに 失 われ, 着 床 後 細 胞 分 化 の 進 行 に 伴 ってゲノムメチル 化 レベルが 上 昇 する( 図 2) 発 生 に 伴 う 胚 ゲノムメチル 化 状 態 の 変 動 は,マウス, ウサギ,ウシ,ヒツジ 胚 で 解 析 され, 胚 盤 胞 期 に 至 ると 発 生 に 伴 って 減 少 したメチル 化 状 態 に 部 位 特 異 的 な 変 化 が 見 られる 栄 養 膜 細 胞 においてはメチル 化 が 低 い 状 態 であるが, 内 部 細 胞 塊 では 再 メチル 化 が 始 まっており, 内 部 細 胞 塊 における 分 化 開 始 の 制 御 状 態 を 反 映 している と 考 えられる(Dean ら 2001) しかしながら, 受 精 過 程 を 経 ず, 核 移 植 によって 作 成 されたクローン 胚 におい ては,メチル 化 の リセット が 見 られず, 高 いメチ ル 化 状 態 が 維 持 されることが 見 られる(Dean ら 2001) ゲノム 全 体 におけるメチル 化 に 加 えて, 特 定 の 遺 伝 子 に ついての 研 究 によっても 同 様 に, 受 精 胚 と 比 較 して,ク ローン 胚 でのメチル 化 変 動 パターンが 異 なることが 次 々 と 明 らかになっている(Kang ら 2001;Kang ら 2003) また,クローン 胚 栄 養 膜 細 胞 のサテライトI 領 域 DNA のメチル 化 状 態 が 高 い 状 態 が 残 され, 胎 盤 形 成 に 何 ら かの 影 響 をしていることが 示 唆 されている(Kang ら 2002) DNA 複 製 維 持 メチル 化 DNA メチル 基 転 移 酵 素 (Dnmt-1) 新 規 メチル 化 DNA メチル 基 転 移 酵 素 (Dnmt3a-3b) 図 3.DNA メチル 化 状 態 の 次 世 代 への 伝 達 - 34 -

平 成 21 年 度 問 題 別 研 究 会 体 細 胞 クローン 技 術 の 現 状 と 将 来 展 望 クローン 胚 が 個 体 までの 発 生 能 を 獲 得 するためには, ドナー 細 胞 が 本 来 持 っていたエピジェネティック 修 飾 が 消 去 再 構 築 されることが 必 要 である しかしながら, 上 記 したようにクローン 胚 における DNA のメチル 化 お よびヒストンのアセチル 化 レベルは 通 常 の 受 精 胚 と 比 べ て 異 なる したがって,まずドナー 細 胞 のエピジェネ ティック 修 飾 の 特 徴 およびそれらに 関 連 する 酵 素 の 遺 伝 子 発 現 パターンがリプログラミングにどのように 影 響 を 及 ぼすのか,あるいは, 核 移 植 後 のドナー 細 胞 のエピジェ ネティック 修 飾 調 節 機 構 を 明 らかにすることが 重 要 であ る DNA のメチル 化 には, 細 胞 分 化 等 に 伴 って DNA 鎖 に 新 たにメチル 基 を 導 入 する 新 規 メチル 化 と, 同 じ 細 胞 種 等 の 遺 伝 子 発 現 機 能 を DNA 複 製 に 伴 ってもそれ を 維 持 する 維 持 メチル 化 の2 種 類 がある 哺 乳 類 で は 3 種 の 主 要 なメチル 基 転 移 酵 素 群 が 知 られ, 新 規 メチ ル 化 に 関 与 する DNA methyltransferase (Dnmt)3a および Dnmt3b の2 種 類 と, 維 持 メチル 化 に 関 与 する Dnmt1がそれらの 新 規, 維 持 メチル 化 を 調 節 している( 図 3) 分 化 したドナー 体 細 胞 における 高 いメチル 化 状 態 の DNA が 導 入 され, 通 常 の 受 精 現 象 における リセッ ト が 起 こらない 場 合, 維 持 型 メチル 基 転 移 酵 素 (Dnmt1) によって 胚 発 生 を 通 じてメチル 化 の 高 い 状 態 が 維 持 さ れることが 推 察 される 事 実, 受 精 卵 をドナー 細 胞 に 用 いた 受 精 卵 クローンの 胚 盤 胞 ではサテライト I 領 域 のメ チル 化 状 態 が 受 精 胚 と 同 レベルの 低 い 状 態 であることが 調 べられている( 澤 井 2006) 加 えて,クローン 胚 にお けるエピジェネティック 修 飾 の 異 常 を 回 避 するために は,リプログラミングされやすい 特 徴 を 持 つドナー 細 胞 の 選 別 が 重 要 であることが 報 告 されており(Blelloch ら 2006),ドナー 細 胞 のメチル 化 レベルがクローン 胚 のそ の 後 の 発 生 の 成 否 に 重 要 な 要 因 であり,DNA メチル 化 レベルが 低 い 状 態 を 有 する 細 胞 がドナー 細 胞 として 適 し ていることが 示 唆 されている また,ドナー 細 胞 における Dnmt1 の 遺 伝 子 発 現 量 の 違 いがクローン 胎 子 の 発 育 性 と 遺 伝 子 発 現 に 影 響 を 及 ぼ すことも 示 されている(Blelloch ら 2006) すなわち, Dnmt1 の 発 現 量 の 低 いドナー 細 胞 で 作 製 したクローン 胚 のほうが 通 常 の 受 精 胚 に 近 い 遺 伝 子 発 現 パターンを 示 すことが 明 らかとなっている さらに, 胚 盤 胞 期 胚 への 体 外 発 生 率 は Dnmt1 発 現 量 の 高 い 細 胞 を 用 いたほうが 良 好 であったが, 胚 移 植 後 の 胎 子 の 発 生 状 態 は 発 現 量 の 低 い 細 胞 を 用 いた 方 が 良 好 であったという 興 味 深 いもの である(Giraldo ら 2008) この 結 果 は,クローン 胚 の 体 外 発 生 率 が 必 ずしもクローン 胚 の 品 質 を 反 映 していな いということおよび 作 製 したクローン 胚 の 体 外 発 生 率 が 高 い 細 胞 がドナー 細 胞 として 適 しているとは 限 らないと いうことを 示 唆 しており, 高 生 存 クローン 胚 の 選 別 に 際 control Dnmt-1 sirna Dnmt-2 sirna Dnmt-3a sirna 図 4. 牛 ドナー 細 胞 における Dnmt 遺 伝 子 の RNA 干 渉 しての 指 標 としての 今 後 の 利 用 可 能 性 が 期 待 される 同 様 にウシにおいては,ドナー 細 胞 の 培 養 時 にヒストン 脱 アセチル 化 阻 害 剤 である Trichostatin A(TSA)を 添 加 することでドナー 細 胞 の Dnmt およびヒストン 脱 アセチ ル 化 酵 素 (HDAC)のタンパク 質 量 の 低 下 や 反 復 配 列 で あるサテライト I における DNA メチル 化 レベルが 低 下 し,クローン 胚 の 胚 盤 胞 期 までの 発 生 率 が 向 上 すること が 報 告 されている(Wee ら 2007) このように,TSA 添 加 によるエピジェネティック 修 飾 の 改 変 はドナー 細 胞,クローン 胚 どちらに 用 いても 効 果 があり, 非 常 に 簡 便 かつ 安 価 な 方 法 であるといえる さらに,TSA と 同 様 の HDAC 阻 害 剤 である sodium butyrate によるド ナー 細 胞 の 処 理 によるエピジェネティック 修 飾 も 報 告 さ れている(Mohana Kumar ら 2007) 我 々は,RNA 干 渉 を 用 いた Dnmt 1の 遺 伝 子 発 現 を 抑 制 する 系 を 確 立 (Yamanaka ら 2010)し( 図 4),ドナー 細 胞 あるいは クローン 胚 におけるエピジェネティック 修 飾 の 解 析 も 現 在 実 施 している 3. 初 期 胚 メチル 化 状 態 の 検 出 前 記 したように,クローン 胚 の 作 成 効 率 を 上 げる 場 合 には,メチル 化 の 制 御 ならびに 検 出 が 重 要 な 鍵 を 握 ると もいえる 近 年,メチル 化 状 態 の 解 析 手 法 にはめざまし いものがあり, 網 羅 的 なメチル 化,あるいは 特 定 の 遺 伝 子 配 列 におけるメチル 化 解 析 等, 発 生 分 化,あるいは 細 胞 のガン 治 療 とも 相 まって 様 々な 手 法 が 日 進 月 歩 で 開 発 されている( 図 5) しかし, 高 価 格 の 分 析 機 器 を 必 要 とする 手 法 もあり,クローン 胚 のような 構 成 細 胞 が 少 なく, 十 分 な DNA を 確 保 しにくいサンプルを 用 いる 場 合 には PCR による 解 析 を 併 用 した 手 法 がとりやすいと 考 えられる 近 年, 遺 伝 子 特 異 的 にメチル 化 状 態 を 比 較 的 容 易 に 解 析 できる 手 法 として, 亜 硫 酸 水 素 (bisulfite) 法 によ る 検 出 手 法 が 簡 便 で 信 頼 性 の 高 い 手 法 として 広 範 囲 に わたって 利 用 されている Bisulfite 法 は 早 津 らによっ て 開 発 されたメチル 化 を 解 析 する 手 法 である(Hayatsu - 35 -

畜 産 草 地 研 究 所 研 究 資 料 第 10 号 (2010) ら 1970) 基 本 原 理 としては,メチル 化 を 受 けていない シトシンは 亜 硫 酸 水 素 ナトリウムで 処 理 することで,ウ ラシルに 置 換 されるが,メチル 化 を 受 けているメチルシ トシンは 置 換 されない このため,bisulfite 処 理 後, 鋳 型 の 段 階 でメチル 化 された DNA とメチル 化 されない DNA で 全 く 異 なった 塩 基 組 成 に 変 換 される この 原 理 を 利 用 した 様 々な 解 析 法 が 開 発 されている bisulfite 処 理 後,PCR により CpG アイランドを 有 する 特 定 領 域 を 増 幅 し,メチル 化 を 受 け, 変 換 されていない 部 位 につ いての 配 列 決 定 による bisulfite sequencing や,メチル 化 感 受 性 制 限 酵 素 の 処 理 を 行 うことで, 鋳 型 でのメチ ル 化 状 態 を 反 映 した 定 量 的 な 解 析 方 法 である combined bisulfate restriction analysis(cobra)(bird と Southern 1978)が 有 効 な 手 法 として 細 胞 分 化 やガン 化 におけるメチル 化 解 析 に 広 く 用 いられている また,シー クエンシングにより, 塩 基 配 列 中 のどの CpG アイラン ドがメチル 化 されているかということも 解 析 が 可 能 とな る(Clark ら 1994) 本 手 法 を 使 った 牛 クローン 胚 での メチル 化 状 態 検 出 の 有 効 性 が 報 告 され,クローン 胚 にお ける 異 常 の 早 期 検 出 とその 評 価 手 法 への 利 用 が 広 まって いる(Kang ら 2001) 我 々も 改 変 COBRA 法 ( 高 橋 ら 2006)( 図 6a)および bisulfite sequencing( 図 6b)によっ てクローン 胚 盤 胞 のメチル 化 がほぼドナー 細 胞 の 状 態 を 反 映 していることを 確 認 している Bisulfite 法 を 利 用 することで, 少 数 胚 におけるメチル 化 解 析 が 可 能 であり, 特 に,クローン 胚 における 作 出 過 程 あるいは 培 養 過 程 における 操 作 の 影 響 等, 胚 正 常 性 評 価 への 利 用 が 考 えられる しかしながら,ゲノム DNA 中 の 反 復 配 列 であるサテライトI 領 域 のような 増 幅 が 容 易 な 配 列 についてのみならず, 発 現 遺 伝 子 やプロモー ター 領 域 のような 単 一 遺 伝 子 配 列 をバイオプシー 等 に よって 胚 から 得 た 少 数 の 細 胞 DNA 試 料 から 正 確 に 解 析 するためには,さらなる 増 幅 条 件 やプライマー 配 列 設 計 等 の 条 件 検 討 が 必 要 である 加 えて,クローン 胚 の 異 常 を 引 き 起 こす 原 因 遺 伝 子 は 未 だ 解 明 されておらず,どの 領 域 におけるメチル 化 状 態 をもって 遺 伝 子 機 能 発 現 の 正 常 性 を 判 断 するかが 確 定 されていないし, メチル 化 正 常 性 評 価 の 基 準 といえる 数 値 も 未 だ 確 定 していない このことから,より 精 密 な 評 価 を 行 う 際 には, 複 数 の 遺 伝 子 領 域 におけるメチル 化 解 析 を 実 施 すると 同 時 に,ど のレベルを 持 って 正 常, 異 常 と 判 断 するかの 基 準 データ を 蓄 積 していくことも 必 要 であろう 4.おわりに クローン 胚 の 効 率 的 な 作 出 に 向 けての エピジェネ ティック の 観 点 からの 検 出 解 析 研 究 と 制 御 調 節 研 究 が 進 行 している 遺 伝 子 情 報 の 初 期 化 おびその 後 のト レーシングを 正 確 に 実 施 することにより 効 率 に 産 子 を 得 感 度 図 5.メチル 化 解 析 手 法 牛 嶋 ら(2008)の 図 を 引 用 改 変 - 36 -

平 成 21 年 度 問 題 別 研 究 会 体 細 胞 クローン 技 術 の 現 状 と 将 来 展 望 (a) (b) - IVF 胚 盤 胞 NT 胚 盤 胞 胚 1 胚 2 胚 3 胚 1 胚 2 胚 3 - + - + - + - + - + - + ドナー 細 胞 + IVF 胚 盤 胞 NT 胚 盤 胞 ドナー 細 胞 -: 制 限 酵 素 Aci I 消 化 なし +: 制 限 酵 素 Aci I 消 化 あり (19.9% a ) (61.7% b ) (80% b ) 黒 丸 がメチル 化 を 受 けている 配 列 aとbとの 間 で 有 意 差 あり(P<0.01) 図 6.COBRA 法 (a)および bisulfite sequencing 法 (b)による 体 外 受 精 胚 とクローン 胚 の Satellite I 領 域 における 図 6 メチル COBRA 化 法 状 (A)およびBisulfite 態 の 解 析 sequence 法 (B)による 体 外 受 精 胚 とクローン 胚 のsatellite I 領 域 におけるメチル 化 状 態 の 解 析 られる 系 の 確 立 に 向 けて, 着 実 に 進 みつつある 加 えて, 正 常 に 生 まれたクローン 個 体 における 生 殖 細 胞 形 成 の 正 常 化 や,この 後 代 個 体 では 全 くの 異 常 が 見 られないとい うデータが 蓄 積 されてきており, 発 生 過 程 での 生 殖 細 胞 へのリプログラミングによる 個 体 発 生 の 正 常 化 も 注 目 さ れている(Fulka ら 2004) 実 際 に, 牛 においてもクロー ン 個 体 やその 後 代 個 体 における 正 常 性 が 明 らかにされて おり(Watanabe と Nagai 2009),いかにクローン 個 体 を 正 常 に 生 ませることができるかという 部 分 での 研 究 が 待 たれる 今 後,さらなる 簡 易 かつ 高 感 度 の 検 出 法 の 開 発 により 複 数 の 遺 伝 子 メチル 化 解 析 が 可 能 になり,かつ,それら のデータ 蓄 積 によるドナー 細 胞 およびクローン 胚 におけ るメチル 化 調 節 と 正 常 産 子 性 の 評 価 手 法 が 確 立 されるこ とで, 生 産 効 率 につながる 技 術 の 開 発 が 期 待 される 文 献 Bird AP, Southern EM. 1978. Use of restriction enzymes to study eukaryotic DNA methylation: I. The methylation pattern in ribosomal DNA from Xenopus laevis. Journal of Molecular Biology 118, 27-47. Blelloch R, Wang Z, Meissner A, Pollard S, Smith A, Jaenisch R. 2006. Stem Cells 24(9), 2007-2013. Clark SJ, Harrison J, Paul CL, Frommer M. 1994. High sensitivity mapping of methylated cytosines. Nucleic Acids Research 22, 2990-2997. Dean W, Santos F, Stojkovic M, Zakhartchenko V, Walter J, Wolf E, Reik W. 2001. Conservation of methylation reprogramming in mammalian development: aberrant reprogramming in cloned embryos. Proceedings of National Academy of Sciences of the USA 98, 13734-13738. Fulka Jr. D, Miyashita N, Nagai T, Ogura A. 2004. Do cloned mammals skip a reprogramming step? Nature Biotech 22, 25-26. Giraldo AM, Hylan DA, Ballard CB, Purpera MN, Vaught TD, Lynn JW, Godke RA, Bondioli KR. 2008. Effect of epigenetic modifications of donor somatic cells on the subsequent chromatin remodeling of cloned bovine embryos. Biology of Reproduction 78(5), 832-840. Hayatsu H, Wataya Y, Kai K. 1970. The addition of sodium bisulfite to uracil and to cytosine. Journal of the American Chemical Society 92, 724 726. Jaenisch R. 1997. DNA methylation and imprinting: why bother? Trends in Genetics 13, 323-329. Kang YK, Koo DB, Park JS, Choi YH, Chung AS, Lee KK, Han YM. 2001. Aberrant methylation of donor genome in cloned bovine embryos. Nature Genetics 28, 173-177. Kang YK, Park JS, Koo DB, Choi YH, Kim SU, Lee KK, Han YM. 2002. Limited demethylation leaves mosaic-type methylation states in cloned bovine pre-implantation embryos. EMBO Journal 21, 1092-1100. Kang YK, Yeo S, Kim SH, Koo DB, Park JS, Wee G, Han JS, Oh KB, Lee KK, Han YM. 2003. Precise recapitulation of methylation change in early cloned embryos. Molecular Reproduction and Development 66, 32-37. Mohana Kumar B, Song HJ, Cho SK, Balasubramanian S, Choe SY, Rho GJ. 2007. Effect of histone acetylation modification with sodium butyrate, - 37 -

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