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1 平 成 27 年 度 土 地 評 価 の 概 要 について 1 固 定 資 産 税 の 評 価 替 えとは 地 価 等 の 変 動 に 伴 う 固 定 資 産 の 資 産 価 値 の 変 動 に 応 じ その 価 格 を 適 正 で 均 衡 のとれたものに 見 直 す 制 度 である 3 年 ご

S7-2)わが国におけるHIV感染妊娠の動向と近年の特徴

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その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農


現 地 調 査 では 火 口 周 辺 の 地 形 や 噴 気 等 の 状 況 に 変 化 は 見 られませんでした また 赤 外 熱 映 像 装 置 5) による 観 測 では 2015 年 3 月 頃 から5 月 29 日 の 噴 火 前 に 温 度 上 昇 が 認 められていた 新 岳 火 口

個人住民税徴収対策会議

12 大 都 市 の 人 口 と 従 業 者 数 12 大 都 市 は 全 国 の 人 口 の 約 2 割 従 業 者 数 の 約 3 割 を 占 める 12 大 都 市 の 事 業 所 数 従 業 者 数 及 び 人 口 は 表 1 のとおりです これらの 12 大 都 市 を 合 わせると 全

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資 料 1 衆 議 院 議 員 小 選 挙 区 選 出 議 員 の 選 挙 区 の 改 定 案 の 概 要 都 道 府 県 別 定 数 の 異 動 (1) 定 数 1 増 埼 玉 県 (14 15) 千 葉 県 (12 13) 神 奈 川 県 (17 18) 滋 賀 県 (3 4) 沖 縄 県 (3

○00表紙

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( の 復 旧 ) 3. 南 相 馬 市 エリアの 避 難 指 示 解 除 準 備 区 域 及 び 居 住 制 限 区 域 内 の 路 線 数 ( ) 10 路 線 うち 被 災 した 路 線 ( 工 区 ) 数 10 路 線 52 箇 所 うち 応 急 対 策 を 実 施 した 路 線 ( 工 区

目 改 正 項 目 軽 自 動 車 率 の 引 上 げ 〇 国 及 び 地 方 を 通 じた 自 動 車 関 連 制 の 見 直 しに 伴 い 軽 自 動 車 の 標 準 率 が 次 のとおり 引 き 上 げられます 車 種 区 分 引 上 げ 幅 50cc 以 下 1,000 円 2,000 円

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の と す る (1) 防 犯 カ メ ラ を 購 入 し 設 置 ( 新 設 又 は 増 設 に 限 る ) す る こ と (2) 設 置 す る 防 犯 カ メ ラ は 新 設 又 は 既 設 の 録 画 機 と 接 続 す る こ と た だ し 録 画 機 能 付 防 犯 カ メ ラ は

目 次 第 1. 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 (1) 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 (2) 施 行 者 の 名 称 1 第 2. 施 行 区 1 (1) 施 行 区 の 位 置 1 (2) 施 行 区 位 置 図 1 (3) 施 行 区 の 区 域 1 (4) 施

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3 避 難 状 況 避 難 指 示 避 難 勧 告 都 道 府 県 名 市 区 町 村 名 指 示 日 時 勧 告 日 時 青 森 県 岩 手 県 山 形 県 埼 玉 県 千 葉 県 東 京 都 鰺 ヶ 沢 町 月 16 日 12 時 55 分 10 月 22 日 10 時 00 分


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する ( 評 定 の 時 期 ) 第 条 成 績 評 定 の 時 期 は 第 3 次 評 定 者 にあっては 完 成 検 査 及 び 部 分 引 渡 しに 伴 う 検 査 の 時 とし 第 次 評 定 者 及 び 第 次 評 定 者 にあっては 工 事 の 完 成 の 時 とする ( 成 績 評 定

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決 勝 を 行 う 予 選 での6 種 目 の 各 種 目 ベスト4の 得 点 総 合 計 により 上 位 18 チームを 選 び そのチームによって 決 勝 を 行 う 成 績 順 位 は 決 勝 における6 種 目 の 各 種 目 ベスト4の 得 点 総 合 計 によって 決 定 する 女 子

統 計 表 1 措 置 入 院 患 者 数 医 療 保 護 入 院 届 出 数, 年 次 別 措 置 入 院 患 者 数 ( 人 ) ( 各 年 ( 度 ) 末 現 在 ) 統 計 表 2 措 置 入 院 患 者 数 ( 人 口 10 万 対 ) ( 各 年 ( 度 ) 末 現 在 ) 主 な 生

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1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

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36 東 京 私 桜 美 林 大 学 大 学 院 心 理 学 研 究 科 37 東 京 私 大 妻 女 子 大 学 大 学 院 人 間 文 化 研 究 科 38 東 京 私 学 習 院 大 学 大 学 院 人 文 科 学 研 究 科 39 東 京 私 国 際 医 療 福 祉 大 学 大 学 院 医

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資 料 -6 平 成 20 年 度 第 2 回 北 陸 地 方 整 備 局 事 業 評 価 監 視 委 員 会 特 定 構 造 物 改 築 事 業 事 後 評 価 説 明 資 料 平 成 20 年 11 月 北 陸 地 方 整 備 局 -0-

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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じ 図 河 川 水 質 測 定 地 点 図 思 案 橋 川 河 口 上 の 出 橋 西 ノ 宮 橋 陣 屋 川 橋 大 城 橋 片 の 瀬 猿 尾 橋 中 原 橋 行 徳 北 橋 瀬 ノ 下 大 刀 洗 川 河 口 下 野 久 留 米 大 橋 神 代 橋 善 導 寺 山 橋 筒 川 河

別紙3

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静岡市の危機管理体制(案)

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1


Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

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01.活性化計画(上大久保)

6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

スライド 1

第 1 条 適 用 範 囲 本 業 務 方 法 書 は 以 下 の 性 能 評 価 に 適 用 する (1) 建 築 基 準 法 施 行 令 ( 以 下 令 という ) 第 20 条 の7 第 1 項 第 二 号 表 及 び 令 第 20 条 の 8 第 2 項 の 認 定 に 係 る 性 能 評

130117_『高齢社会をむかえた東京23区の将来 人口と建物の関係から見て

(2) 宿 泊 施 設 の 現 状 1 回 答 状 況 及 び 集 計 方 法 今 回 の 調 査 対 象 とした 174( 平 成 23 年 度 新 規 開 業 した 1 施 設 を 含 む) 施 設 のうち 調 査 で 廃 休 業 などが 判 明 した 4 施 設 を 除 く 170 施 設 を

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背 景 と 目 的 - 東 日 本 震 災 では の 上 部 構 造 の 流 出 が 多 発 - は 復 旧 に 時 間 を 要 する 一 方 交 通 機 能 の 回 復 は 待 ったなし 活 動 項 目 数 活 動 項 目 数 ( 全 体 ) 全 体 は24hで ピー

 

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m07 北見工業大学 様式①

16 日本学生支援機構

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入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

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(4) 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 との 連 携 1 市 は 国 の 現 地 対 策 本 部 長 が 運 営 する 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 に 職 員 を 派 遣 するなど 同 協 議 会 と 必 要 な 連 携 を 図 る

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

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中 等 野 球 編 [9 大 会 登 録 人 ] 岡 村 俊 昭 ( 平 安 中 学 京 都 ) 98( 昭 0) 第 回 優 勝 大 会 平 安 中 学 - 松 本 商 業 未 登 録 平 安 中 学 -0 平 壌 中 学 右 翼 99( 昭 0) 第 回 選 抜 大 会 平 安 中 学 0- 海

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

千 葉 市 資 源 循 環 部 千 葉 県 千 葉 市 中 央 区 千 葉 港 2-1 千 葉 中 央 コミュニティセンター3F 船 橋 市 千 葉 県 船 橋 市 湊 町 柏 市 産 業 277

2. 予 測 2.1. 予 測 項 目 予 測 項 目 は 以 下 のとおりとした 1 埋 設 廃 棄 物 の 掘 削 除 去 に 伴 う 廃 棄 物 2 造 成 等 の 施 工 の 一 時 的 な 影 響 による 建 設 工 事 に 伴 う 副 産 物 ( 建 設 発 生 土 建 設 廃 棄 物

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東日本大震災の被災地におけるアスベスト大気濃度調査(第2次モニタリング)の協力依頼について

18 国立高等専門学校機構

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の 提 供 状 況 等 を 総 合 的 に 勘 案 し 土 地 及 び 家 屋 に 係 る 固 定 資 産 税 及 び 都 市 計 画 税 を 減 額 せずに 平 成 24 年 度 分 の 固 定 資 産 税 及 び 都 市 計 画 税 を 課 税 することが 適 当 と 市 町 村 長 が 認 め

学校安全の推進に関する計画の取組事例

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区議会月報 平成19年4-5月

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

Transcription:

環 境 放 射 能 調 査 研 究 成 果 論 文 抄 録 集 ( 平 成 23 年 度 ) 平 成 25 年 3 月 文 部 科 学 省 科 学 技 術 学 術 政 策 局 放 射 線 対 策 課 放 射 線 環 境 対 策 室

目 次 [ 論 文 番 号 ] [ 題 目 ] [ 調 査 機 関 ] [ページ] Ⅰ. 環 境 に 関 する 調 査 研 究 ( 大 気 陸 ) Ⅰ-1 大 気 を 通 じた 人 工 放 射 性 核 種 の 陸 圏 国 土 交 通 省 気 象 庁 気 象 研 究 所 3 水 圏 への 沈 着 およびその 後 の 移 行 過 程 の 解 明 研 究 Ⅰ-2 高 空 における 放 射 能 塵 の 調 査 防 衛 省 技 術 研 究 本 部 5 Ⅰ-3 平 成 23 年 度 東 海 再 処 理 施 設 周 辺 の 環 境 独 立 行 政 法 人 日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 7 放 射 線 ( 能 )モニタリング 結 果 Ⅰ-4 土 壌 および 米 麦 子 実 中 の 放 射 能 調 査 独 立 行 政 法 人 農 業 環 境 技 術 研 究 所 9 Ⅰ-5 90 Sr 137 Cs の 土 壌 中 深 度 分 布 の 実 態 調 査 独 立 行 政 法 人 農 業 環 境 技 術 研 究 所 11 Ⅰ-6 土 壌 粒 子 吸 着 態 137 Cs の 土 壌 中 輸 送 時 間 独 立 行 政 法 人 農 業 環 境 技 術 研 究 所 13 推 定 手 法 の 開 発 Ⅰ-7 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 後 の 環 境 放 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 15 射 能 調 査 Ⅰ-8 環 境 試 料 中 の 90 Sr 及 び 137 Cs の 放 射 能 調 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 17 査 Ⅰ-9 環 境 放 射 線 等 モニタリング 調 査 結 果 に 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 21 ついて Ⅰ-10 大 気 中 放 射 性 希 ガス 濃 度 の 全 国 調 査 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 23 Ⅰ-11 月 間 降 水 中 のトリチウム 濃 度 調 査 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 25 Ⅰ-12 土 壌 中 プルトニウム 濃 度 の 全 国 調 査 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 27 Ⅱ. 環 境 に 関 する 調 査 研 究 ( 海 洋 ) Ⅱ-1 人 工 放 射 性 核 種 の 海 面 への 沈 着 とその 国 土 交 通 省 気 象 庁 気 象 研 究 所 31 後 の 継 続 的 な 監 視 および 極 低 レベル 測 定 技 術 を 応 用 した 海 洋 内 部 での 広 域 拡 散 の 実 態 把 握 Ⅱ-2 海 水 海 底 土 の 放 射 能 調 査 国 土 交 通 省 海 上 保 安 庁 海 洋 情 報 部 33 Ⅱ-3 深 海 の 海 水 海 底 土 の 放 射 能 調 査 国 土 交 通 省 海 上 保 安 庁 海 洋 情 報 部 35 Ⅱ-4 日 本 周 辺 海 域 海 底 土 の 放 射 能 調 査 独 立 行 政 法 人 水 産 総 合 研 究 センター 37 Ⅱ-5 海 産 生 物 放 射 能 調 査 独 立 行 政 法 人 水 産 総 合 研 究 センター 39 Ⅱ-6 平 成 23 年 度 原 子 力 発 電 所 等 周 辺 海 域 に 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 41 おける 海 洋 放 射 能 調 査 Ⅱ-7 平 成 23 年 度 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 43 域 における 海 洋 放 射 能 調 査 Ⅱ-8 ヒラメの 137 Cs 濃 縮 の 変 動 要 因 について 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 45 の 調 査 研 究 i

Ⅱ-9 海 産 生 物 (ヒラメ)への 137 Cs の 蓄 積 に 係 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 47 わる 研 究 - 餌 料 の 違 いによる 蓄 積 影 響 の 検 討 (2)- Ⅱ-10 成 長 に 伴 うスケトウダラの 137 Cs 濃 度 変 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 49 動 Ⅱ-11 海 産 生 物 の 3 H 濃 度 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 51 Ⅱ-12 スルメイカ 肝 臓 中 の 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 53 比 Ⅱ-13 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 周 辺 にお 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 55 ける 海 水 中 の 3 H 調 査 Ⅱ-14 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 の 129 I 濃 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 57 度 Ⅱ-15 海 水 海 底 土 の 239+240 Pu 濃 度 及 び 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 59 240 Pu / 239 Pu 原 子 数 比 Ⅱ-16 海 底 土 中 の 241 Pu 及 び 241 Am の 調 査 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 61 Ⅱ-17 海 底 土 中 の Pu 同 位 体 及 び 241 Am の 深 度 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 63 分 布 Ⅱ-18 海 水 中 の 放 射 性 核 種 の 移 行 解 析 手 法 の 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 65 検 討 - 平 成 20 年 度 春 季 調 査 結 果 の 再 評 価 と 周 辺 海 域 からの 流 入 評 価 - Ⅱ-19 沖 合 海 底 土 における 137 Cs の 分 布 特 性 に 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 67 関 する 解 析 Ⅱ-20 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 周 辺 の 海 域 モニ 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 69 タリング Ⅲ. 食 品 及 び 人 に 関 する 調 査 研 究 Ⅲ-1 輸 入 食 品 中 の 放 射 性 核 種 に 関 する 調 査 厚 生 労 働 省 国 立 保 健 医 療 科 学 院 73 研 究 ( 平 成 23 年 度 ) Ⅲ-2 食 用 野 草 等 からの 放 射 性 核 種 の 調 理 独 立 行 政 法 人 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 75 加 工 による 除 去 Ⅲ-3 有 機 資 材 の 添 加 が 葉 菜 類 のセシウム 吸 独 立 行 政 法 人 農 業 環 境 技 術 研 究 所 77 収 に 及 ぼす 影 響 Ⅲ-4 牛 乳 中 の 放 射 性 核 種 に 関 する 調 査 研 究 独 立 行 政 法 人 農 業 食 品 産 業 技 術 79 総 合 研 究 機 構 Ⅳ. 分 析 法 測 定 法 等 に 関 する 調 査 研 究 Ⅳ-1 環 境 水 中 ストロンチウムの 迅 速 分 離 方 法 の 検 討 独 立 行 政 法 人 農 業 環 境 技 術 研 究 所 83 ii

Ⅳ-2 新 しい 放 射 性 セシウム 吸 着 材 の 開 発 及 福 岡 県 保 健 環 境 研 究 所 85 びその 評 価 と 利 用 に 関 する 研 究 九 州 大 学 株 式 会 社 岡 部 マイカ 工 業 所 財 団 法 人 日 本 分 析 センター Ⅳ-3 環 境 放 射 能 水 準 調 査 の 相 互 比 較 分 析 に 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 87 おける 精 度 管 理 Ⅳ-4 財 団 法 人 日 本 分 析 センターにおける 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 89 ISO 取 得 について Ⅳ-5 環 境 放 射 能 分 析 研 修 について 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 91 Ⅴ. 都 道 府 県 における 放 射 能 調 査 Ⅴ-1 北 海 道 における 放 射 能 調 査 北 海 道 立 衛 生 研 究 所 95 Ⅴ-2 青 森 県 における 放 射 能 調 査 青 森 県 原 子 力 センター 99 Ⅴ-3 岩 手 県 における 放 射 能 調 査 岩 手 県 環 境 保 健 研 究 センター 105 Ⅴ-4 宮 城 県 における 放 射 能 調 査 宮 城 県 原 子 力 センター 110 Ⅴ-5 秋 田 県 における 放 射 能 調 査 秋 田 県 健 康 環 境 センター 113 Ⅴ-6 山 形 県 における 放 射 能 調 査 山 形 県 衛 生 研 究 所 117 Ⅴ-7 福 島 県 における 放 射 能 調 査 福 島 県 原 子 力 センター 122 Ⅴ-8 茨 城 県 における 放 射 能 調 査 茨 城 県 環 境 放 射 線 監 視 センター 126 Ⅴ-9 栃 木 県 における 放 射 能 調 査 栃 木 県 保 健 環 境 センター 130 Ⅴ-10 群 馬 県 における 放 射 能 調 査 群 馬 県 衛 生 環 境 研 究 所 134 Ⅴ-11 埼 玉 県 における 放 射 能 調 査 埼 玉 県 衛 生 研 究 所 139 Ⅴ-12 千 葉 県 における 放 射 能 調 査 千 葉 県 環 境 研 究 センター 144 Ⅴ-13 東 京 都 における 放 射 能 調 査 東 京 都 健 康 安 全 研 究 センター 149 Ⅴ-14 神 奈 川 県 における 放 射 能 調 査 神 奈 川 県 衛 生 研 究 所 153 Ⅴ-15 新 潟 県 における 放 射 能 調 査 新 潟 県 放 射 線 監 視 センター 158 Ⅴ-16 富 山 県 における 放 射 能 調 査 富 山 県 環 境 科 学 センター 163 Ⅴ-17 石 川 県 における 放 射 能 調 査 石 川 県 保 健 環 境 センター 167 Ⅴ-18 福 井 県 における 放 射 能 調 査 福 井 県 原 子 力 環 境 監 視 センター 172 Ⅴ-19 山 梨 県 における 放 射 能 調 査 山 梨 県 衛 生 環 境 研 究 所 178 Ⅴ-20 長 野 県 における 放 射 能 調 査 長 野 県 環 境 保 全 研 究 所 182 Ⅴ-21 岐 阜 県 における 放 射 能 調 査 岐 阜 県 保 健 環 境 研 究 所 186 Ⅴ-22 静 岡 県 における 放 射 能 調 査 静 岡 県 環 境 放 射 線 監 視 センター 191 Ⅴ-23 愛 知 県 における 放 射 能 調 査 愛 知 県 環 境 調 査 センター 195 Ⅴ-24 三 重 県 における 放 射 能 調 査 三 重 県 保 健 環 境 研 究 所 200 Ⅴ-25 滋 賀 県 における 放 射 能 調 査 滋 賀 県 衛 生 科 学 センター 206 Ⅴ-26 京 都 府 における 放 射 能 調 査 京 都 府 保 健 環 境 研 究 所 211 Ⅴ-27 大 阪 府 における 放 射 能 調 査 大 阪 府 立 公 衆 衛 生 研 究 所 216 Ⅴ-28 兵 庫 県 における 放 射 能 調 査 兵 庫 県 立 健 康 生 活 科 学 研 究 所 223 iii

Ⅴ-29 奈 良 県 における 放 射 能 調 査 奈 良 県 保 健 環 境 研 究 センター 227 Ⅴ-30 和 歌 山 県 における 放 射 能 調 査 和 歌 山 県 環 境 衛 生 研 究 センター 231 Ⅴ-31 鳥 取 県 における 放 射 能 調 査 鳥 取 県 衛 生 環 境 研 究 所 236 Ⅴ-32 島 根 県 における 放 射 能 調 査 島 根 県 保 健 環 境 科 学 研 究 所 239 Ⅴ-33 岡 山 県 における 放 射 能 調 査 岡 山 県 環 境 保 健 センター 242 Ⅴ-34 広 島 県 における 放 射 能 調 査 広 島 県 立 総 合 技 術 研 究 所 247 保 健 環 境 センター Ⅴ-35 山 口 県 における 放 射 能 調 査 山 口 県 環 境 保 健 センター 254 Ⅴ-36 徳 島 県 における 放 射 能 調 査 徳 島 県 立 保 健 製 薬 環 境 センター 258 Ⅴ-37 香 川 県 における 放 射 能 調 査 香 川 県 環 境 保 健 研 究 センター 263 Ⅴ-38 愛 媛 県 における 放 射 能 調 査 愛 媛 県 原 子 力 センター 267 Ⅴ-39 高 知 県 における 放 射 能 調 査 高 知 県 衛 生 研 究 所 270 Ⅴ-40 福 岡 県 における 放 射 能 調 査 福 岡 県 保 健 環 境 研 究 所 277 Ⅴ-41 佐 賀 県 における 放 射 能 調 査 佐 賀 県 環 境 センター 281 Ⅴ-42 長 崎 県 における 放 射 能 調 査 長 崎 県 環 境 保 健 研 究 センター 289 Ⅴ-43 熊 本 県 における 放 射 能 調 査 熊 本 県 保 健 環 境 科 学 研 究 所 293 Ⅴ-44 大 分 県 における 放 射 能 調 査 大 分 県 衛 生 環 境 研 究 センター 299 Ⅴ-45 宮 崎 県 における 放 射 能 調 査 宮 崎 県 衛 生 環 境 研 究 所 303 Ⅴ-46 鹿 児 島 県 における 放 射 能 調 査 鹿 児 島 県 環 境 放 射 線 監 視 センター 308 Ⅴ-47 沖 縄 県 における 放 射 能 調 査 沖 縄 県 衛 生 環 境 研 究 所 314 iv

Ⅰ. 環 境 に 関 する 調 査 研 究 ( 大 気 陸 ) -1-

-2-

1. 緒 言 大 気 を 通 じた 人 工 放 射 性 核 種 の 陸 圏 水 圏 への 沈 着 および その 後 の 移 行 過 程 の 解 明 研 究 * 気 象 研 究 所 環 境 応 用 気 象 研 究 部, 地 球 化 学 研 究 部 五 十 嵐 康 人, 財 前 祐 二, 直 江 寛 明, 梶 野 瑞 王, * 眞 木 貴 史, 関 山 剛, 田 中 泰 宙, 青 山 道 夫 気 象 研 究 所 では,1950 年 代 後 期 から 大 気 圏 の 人 工 放 射 性 核 種 の 時 間 変 動 とその 要 因 を 明 らかにすべく, 環 境 影 響 の 大 きい 90 Sr, 137 Cs( 半 減 期 約 30 年 ) 等 について 観 測 を 継 続 してきた 今 次 の 計 画 では, 解 明 が 遅 れている 局 地 的 な 人 工 放 射 性 核 種 の 陸 圏 水 圏 への 沈 着 過 程 なら びに, 沈 着 後 の 長 期 にわたる 移 行 過 程 の 実 態 解 明 に 重 点 をおいている 1986 年 のチェルノブイ リ 原 発 事 故 以 降, 重 大 事 故 は 発 生 しておらず, 大 気 環 境 中 での 人 工 放 射 性 核 種 の 濃 度 水 準 は, きわめて 低 いレベルで 推 移 してきた ところが,2011 年 3 月 の 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 によ り, 新 たに 大 気 環 境 へ 放 射 性 物 質 が 放 出 付 加 された この 大 規 模 な 汚 染 によって, 大 気 環 境 中 での 人 工 放 射 性 核 種 の 濃 度 水 準 も 大 きな 影 響 を 受 けた 本 報 告 ではこのうち 陸 圏 部 分 に 関 し て 報 告 するため, 福 島 原 発 事 故 後 の 大 気 降 下 量 についてまとめた 2. 調 査 研 究 の 概 要 茨 城 県 つくば 市 の 気 象 研 究 所 観 測 露 場 に 設 置 した 水 盤 で 月 ごとに 降 下 物 を 捕 集 し, 常 法 によ り 90 Sr と 137 Cs を 精 密 に 測 定 した 図 1に 気 象 研 で 観 測 された 2012 年 半 ばまでの 90 Sr, 137 Cs の 月 間 降 下 量 の 変 動 を 示 す これらの 核 種 は,1990 年 以 後,1985 年 に 記 録 した 水 準 以 下 で 推 移 しており, 再 浮 遊 の 寄 与 が 主 となっていた なお,2010 年 後 半 ~2011 年 2 月 までの 試 料 は, 濃 縮, 分 析 の 途 上 にあったが, 福 島 事 故 による 施 設 や 機 器 のコンタミネーションが 発 生 したため 作 業 が 中 断 し, 正 確 な 観 測 値 を 得 るための 努 力 を 継 続 している 状 況 である Radioactivity deposition (mbq/m 2 /month) 10 7 10 5 10 3 10 1 10-1 137 Cs 90 Sr Koenji, Tokyo Nuclear tests by former USSR, USA, etc. Nuclear tests by China Tsukuba Fukushima Accident Chernobyl Accident 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 Year 図 1 気 象 研 究 所 における 90 Sr および 137 Cs 月 間 降 下 量 の 推 移 図 1に 示 されるように,つくば 市 の 気 象 研 究 所 における 2011 年 3 月 の 137 Cs 降 下 量 は,(23.1-3-

±0.9) 10 3 Bq/m 2 であった( 表 1) この 月 間 降 下 量 は 福 島 原 発 事 故 前 の 水 準 よりも 6 ないし 7 桁 大 きい 単 純 な 福 島 事 故 以 前 の 137 Cs 降 下 量 の 積 算 量 はおおよそ 7 kbq/m 2 であり, 福 島 原 発 事 故 は 一 回 の 事 象 としてはこの 数 倍, 137 Cs の 放 射 壊 変 を 考 慮 した 現 存 量 と 比 較 したときにはお よそ 10 倍 量 をつくば 市 においてもたらした これに 加 えて 134 Cs がほぼ 同 量 降 下 しており, 両 核 種 併 せておおよそ 50 kbq/m 2 の 地 表 面 汚 染 となる このつくば 市 での 観 測 値 は 文 部 科 学 省 によ る 航 空 機 マッピングによる 値 とほぼ 整 合 する また,この 観 測 値 は 昨 年 度 一 部 試 料 から 求 めた 暫 定 値 ( 約 27 kbq/m 2 )よりわずかに 小 さいが, 放 射 性 Cs は 予 想 に 反 して 試 料 に 含 有 される 固 相 ( 表 土 ダスト)にそれほど 分 配 せず, 液 相 にとどまった( 溶 解 性 が 高 かった)ことを 示 唆 する 他 方,データがほとんど 報 告 されていない 2011 年 3 月 の 90 Sr 降 下 量 は 5.16±0.05 Bq/m 2 で あり, 同 月 の 137 Cs 降 下 量 の 約 0.02%(1/5000)だった この 降 下 量 水 準 は, 事 故 前 と 比 べると 2-3 桁 大 きいだけで, 環 境 への 影 響 は 放 射 性 Cs ほど 大 きくない 原 子 力 安 全 保 安 院 の 放 出 量 推 定 では, 90 Sr 放 出 量 は 137 Cs の 約 1/100 とされているが, 関 東 地 方 への 放 射 性 Sr の 影 響 は, 輸 送 途 中 の 分 別 によってさらに 小 さくなったと 推 定 できる 大 気 中 濃 度 についても 同 様 に 言 えること から,Cs や I に 比 し Sr の 被 ばくや 環 境 中 の 濃 度 水 準 への 影 響 も 相 対 的 に 小 さいと 推 定 される 表 1 つくば 市 における 人 工 放 射 性 核 種 の 月 間 降 下 量 (mbq/m 2 / 月 ) 90 Sr 年 月 137 Cs 137 Cs/ 90 Sr 降 水 量 残 渣 重 量 mbq/m 2 mbq/m 2 放 射 能 比 mm g/m 2 2011 1 月 未 測 定 未 測 定 - 0.0-2 月 - 104.5-3 月 5160 ± 46.6 23100000 ± 924000 4480 74.0 4.65 4 月 4660 ± 40.7 1780000 ± 1300 382 74.5 5.97 5 月 376 ± 14.9 330000 ± 273 878 210.0 3.90 6 月 152 ± 10.9 104000 ± 142 683 138.5 2.09 7 月 46.0 ± 7.13 82000 ± 125 1780 184.0 2.53 8 月 76.8 ± 6.18 32000 ± 99.1 417 142.5 1.17 9 月 25.7 ± 6.65 45900 ± 88.8 1780 186.0 2.76 10 月 31.3 ± 4.98 25800 ± 103 824 160.5 1.29 11 月 12.2 ± 4.12 5850 ± 47.4 478 79.0 0.73 12 月 31.0 ± 4.84 20300 ± 83.8 654 41.0 1.79 合 計 10571 25500000 2410 1394.5 26.9 2012 1 月 6.23 ± 4.70 33200 ± 75.2 5320 36.5 1.65 2 月 23.4 ± 4.97 23000 ± 92.9 982 50.0 1.62 3 月 未 測 定 11700 ± 69.7-127.5 2.18 4 月 34700 ± 81.8-124.5 1.85 5 月 35000 ± 73.5-228.5 3.27 6 月 6350 ± 29.2-175.0 1.16 7 月 36100 ± 38.5-112.5 1.26 8 月 17900 ± 45.4-14.5-9 月 28000 ± 68.8-193.5-10 月 未 測 定 - 170.5-11 月 - 92.0-12 月 - 70.5 - 合 計 29.6 225950 7620 1395.5 13.0 3. 結 語 2012 年 半 ばの 時 点 で 月 間 降 下 量 水 準 は, 事 故 発 生 月 に 比 べ,3 4 桁 低 下 したが, 依 然 として 最 後 の 中 国 大 気 圏 核 実 験 がおこなわれた 1970-80 年 代 の 水 準 にある 再 浮 遊 は 長 期 に 亘 り 継 続 するため, 今 後 の 推 移 をしっかり 見 守 る 必 要 がある H23 から 開 始 された 計 画 では, 90 Sr と 137 Cs 降 下 量 の 変 動 について 調 査 研 究 するだけでなく, 放 射 性 核 種 の 陸 圏 水 圏 への 不 均 一 な 分 布 の 状 況 の 把 握,そのメカニズムの 解 明 をめざし, 調 査 研 究 を 進 める -4-

高 空 に お け る 放 射 能 塵 の 調 査 防 衛 省 技 術 研 究 本 部 先 進 技 術 推 進 セ ン タ ー 増 田 陽 介 室 野 井 直 宏 御 堂 智 貴 小 林 美 香 小 野 貞 治 遠 藤 拡 武 田 仁 己 1. 緒 言 1961 年 以 来 放 射 能 に よ る 環 境 汚 染 調 査 の 一 環 と し て 我 が 国 上 空 の 大 気 浮 遊 塵 の 放 射 能 に 関 す る 資 料 を 得 る た め 航 空 機 を 用 い て 試 料 を 採 取 し 全 β 放 射 能 濃 度 及 び 含 有 核 種 の 分 析 を 行 っ て き た ま た 2010 年 度 か ら は 大 気 が 含 有 す る 希 ガ ス の 濃 度 分 析 も 行 っ た 本 稿 で は 2011 年 度 の う ち 東 京 電 力 株 式 会 社 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 及 び 福 島 第 二 原 子 力 発 電 所 に お け る 原 子 力 緊 急 事 態 ( 2011 年 3 月 11 日 以 下 原 子 力 災 害 と い う ) 以 降 に 得 た 測 定 結 果 に つ い て 報 告 す る 2. 調 査 研 究 の 概 要 1 ) 試 料 の 採 取 北 部 ( 宮 古 東 方 海 上 ~ 苫 小 牧 ) 中 部 ( 百 里 ~ 新 潟 並 び に 茨 城 県 及 び 福 島 県 沖 海 上 ) 及 び 西 部 ( 九 州 西 部 海 上 及 び 北 部 海 上 ) の 3 空 域 に お い て 航 空 機 ( T-4 中 等 練 習 機 ) に 装 着 し た 機 上 集 塵 器 ( Ⅱ 型 ) に よ り 試 料 を 採 取 し た 採 取 高 度 は 各 空 域 と も 10km 及 び 3km で あ る エ レ ク ト レ ッ ト フ ィ ル タ と 繊 維 状 活 性 炭 布 か ら 構 成 さ れ て い る 放 射 性 ガ ス 捕 集 用 ろ 材 を 使 用 し 高 空 に お け る 放 射 能 塵 と 同 時 に 放 射 性 ガ ス を 捕 集 し た 図 1 に 使 用 し た 機 上 集 塵 器 ( Ⅱ 型 ) の 概 要 を 示 す 捕 集 は 震 災 の 影 響 も あ り 2011 年 6 月 お よ び 2011 年 9 月 か ら 2012 年 3 月 に 行 っ た ま た 別 途 放 射 性 キ セ ノ ン の 補 集 も 行 っ た ヒ ン ジ 金 具 32cm 吊 り 金 具 電 気 配 線 後 部 フ ィ ン 空 気 φ 2 8 c m φ 47cm 電 動 空 気 弁 空 気 整 流 部 渦 検 出 部 放 射 性 ガ ス 捕 集 用 ろ 材 流 量 積 算 計 渦 発 生 体 2 9 5 c m 図 1 機 上 集 塵 器 ( Ⅱ 型 ) の 概 要 図 2 ) 測 定 方 法 試 料 の 採 取 に 用 い た ろ 材 の エ レ ク ト レ ッ ト フ ィ ル タ は 2 等 分 し 半 分 は 灰 化 し て 全 β 放 射 能 測 定 用 と し 残 り 半 分 は γ 線 核 種 分 析 用 と す る た め そ の ま ま 60mmφ 5.5mmh の 円 板 状 に 圧 縮 成 形 し た ま た ろ 材 の 繊 維 状 活 性 炭 布 は 100mmφ 50mmh の 円 柱 状 に 圧 -5-

縮 成 形 し て γ 線 核 種 分 析 の 試 料 と し た 全 β 放 射 能 測 定 に お け る 比 較 線 源 に は U 3 O 8 を 使 用 し た Ge 半 導 体 検 出 器 の ピ ー ク 効 率 は 寒 天 基 準 容 積 線 源 及 び 活 性 炭 基 準 容 積 線 源 を 用 い て 求 め た 3 ) 調 査 結 果 全 β 放 射 能 濃 度 の 測 定 結 果 を 表 1 に 示 す 表 1 全 β 放 射 能 濃 度 の 年 間 平 均 値 ( 単 位 : mbq/m 3 ) 北 部 10 km 北 部 3 km 中 部 10 km 中 部 3 km 西 部 10 km 西 部 3 km 2009 年 度 1.2 0.6 1.1 0.4 0.6 0.4 2010 年 度 1.1 0.6 1.2 0.7 0.8 0.7 2011 年 度 2.8 0.9 3.0 1.1 0.7 0.8 ( 但 し 2011 年 度 は 2011 年 4 月 5 月 7 月 8 月 を 除 く ) ま た 今 期 間 中 に 採 取 し た 単 一 試 料 の γ 線 核 種 分 析 か ら は 人 工 の 放 射 性 核 種 で あ る 1 3 7 Cs 及 び 1 3 4 Cs が 検 出 さ れ た そ の 年 間 推 移 を 図 2 に 示 す ま た ま た 放 射 性 ガ ス ( ガ ス 状 放 射 性 ヨ ウ 素 お よ び 放 射 性 キ セ ノ ン ) は い ず れ の 試 料 か ら も 検 出 さ れ な か っ た 図 2 人 工 放 射 性 核 種 の 放 射 能 濃 度 3. 結 語 全 β 放 射 能 測 定 お よ び γ 線 核 種 分 析 の 結 果 か ら 以 下 が 示 さ れ た す な わ ち 原 子 力 災 害 に よ り 放 出 さ れ 拡 散 し た 放 射 能 塵 が 浮 遊 し 特 に 中 部 空 域 の 高 度 10 km と 北 部 空 域 の 高 度 10 km で 全 β 放 射 能 濃 度 が 高 い レ ベ ル で 推 移 し て お り ま た 1 3 7 Cs や 1 3 4 Cs が 主 に 中 部 空 域 に お い て 残 存 し て い る 環 境 放 射 能 汚 染 及 び 原 子 力 災 害 に よ る 汚 染 レ ベ ル の 推 移 の 監 視 及 び バ ッ ク グ ラ ウ ン ド デ ー タ の 蓄 積 の た め 放 射 能 塵 の 測 定 を 継 続 し て い く -6-

Ⅰ-3 平 成 23 年 度 東 海 再 処 理 施 設 周 辺 の 環 境 放 射 線 ( 能 )モニタリング 結 果 独 立 行 政 法 人 日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 永 岡 美 佳 中 野 政 尚 藤 田 博 喜 渡 辺 均 住 谷 秀 一 1. 諸 言 日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 では 旧 原 子 力 安 全 委 員 会 が 定 める 環 境 放 射 線 モニタリン グ 計 画 に 基 づき 1) 周 辺 住 民 等 の 線 量 の 推 定 及 び 評 価 2) 環 境 における 放 射 性 物 質 の 蓄 積 状 況 の 把 握 3) 異 常 の 有 無 の 確 認 等 を 実 施 している この 調 査 における 環 境 放 射 線 ( 能 )モニタリング 結 果 は 過 去 のモニタリング 結 果 に 基 づく 平 常 の 変 動 幅 と 比 較 し この 変 動 幅 を 超 えた 場 合 には その 原 因 等 を 調 査 している ここでは 平 成 23 年 度 の 環 境 放 射 線 ( 能 )モニタリング 結 果 において 東 京 電 力 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 ( 以 下 事 故 という )の 影 響 により 平 常 の 変 動 幅 を 外 れた 測 定 対 象 試 料 並 びに 測 定 項 目 について 影 響 の 程 度 ( 線 量 あるいは 濃 度 期 間 )に 関 する 調 査 結 果 を 報 告 する 2. 調 査 の 概 要 東 海 再 処 理 施 設 周 辺 の 環 境 モニタリングは 海 洋 環 境 監 視 では 再 処 理 施 設 排 水 放 出 口 を 中 心 に 南 北 約 20 km を 陸 上 環 境 監 視 では 再 処 理 施 設 排 気 筒 を 中 心 に 約 10 km 圏 内 を 調 査 対 象 としている 平 成 23 年 度 の 海 洋 監 視 結 果 においては 事 故 の 影 響 により 平 常 の 変 動 幅 を 外 れた 試 料 ( 分 析 測 定 項 目 )は 海 水 ( 全 β 放 射 能 90 Sr 134 Cs 137 Cs) 海 底 土 ( 90 Sr 134 Cs 137Cs) 海 岸 水 ( 全 β 放 射 能 90 Sr 134 Cs 137 Cs) 海 岸 砂 (γ 線 量 率 及 びβ 線 計 数 率 ) シラス( 134 Cs 137 Cs) カレイ 又 はヒラメ( 134 Cs 137 Cs) 貝 類 ( 90 Sr 134 Cs 137 Cs) 褐 藻 類 ( 90 Sr 134 Cs 137 Cs)であった 一 方 陸 上 監 視 結 果 においては 表 1 に 記 載 した 試 料 項 目 で 測 定 値 が 事 故 の 影 響 により 平 常 の 変 動 幅 を 外 れた 本 報 告 では 陸 上 監 視 結 果 における 事 故 の 影 響 につい ての 調 査 結 果 を 詳 しく 述 べる 陸 上 試 料 においては 測 定 値 の 最 大 値 は 4 月 ~6 月 の 期 間 に 観 測 されており( 年 1 回 採 取 の 試 料 を 除 く)いずれも 事 故 の 影 響 によるものであ る その 後 いずれの 試 料 も 測 定 値 は 減 少 傾 向 にある 陸 上 監 視 結 果 の 中 でも 月 ごと に 採 取 している 降 下 じん 試 料 中 全 β 放 射 能 濃 度 結 果 の 変 動 を 図 1 に 示 す 比 較 のため 過 去 3 年 間 の 全 β 放 射 能 濃 度 の 変 動 も 記 載 した 平 成 23 年 3 月 に 事 故 の 影 響 により 最 大 値 11,000 Bq/m 2 月 を 観 測 し その 後 濃 度 は 減 少 傾 向 にある そこで 全 β 放 射 能 濃 度 が 上 昇 し た 平 成 23 年 3 月 ~6 月 の 期 間 に 降 下 じん 中 全 β 放 射 能 濃 度 (Bq/m 2 月 ) 1.E+05 1.E+04 1.E+03 1.E+02 1.E+01 1.E+00 定 量 下 限 値 :4 Bq/m2 月 H20.4 H21.4 H22.4 H23.4 H24.4 年 月 図 1 降 下 じん 中 全 β 放 射 能 濃 度 の 推 移 -7-

採 取 した 降 下 じん 試 料 のγ 線 核 種 分 析 ( 137 Cs) 90 Sr 分 析 及 びプルトニウム 分 析 を 実 施 した その 結 果 を 表 2 に 示 す 137 Cs は 茨 城 県 内 の 過 去 の 変 動 幅 ( 環 境 放 射 線 データベ ース 参 照 )を 上 回 って 検 出 されたが 90 Sr 及 び 239,240 Pu は 過 去 の 変 動 幅 の 範 囲 内 であ った また 238 Pu については 検 出 されなかった 表 1 平 成 23 年 度 の 陸 上 監 視 結 果 において 事 故 影 響 が 見 られた 項 目 について 測 定 対 象 空 間 放 射 線 ( 平 常 の 変 動 幅 を 外 れた 項 目 ) 測 定 測 定 値 事 故 の 影 響 が 項 目 頻 度 最 小 ~ 最 大 単 位 みられている 期 間 モニタリングポ スト 平 成 23 年 度 全 期 間 2 線 量 率 γ 線 連 続 140~570 モニタリングス テーション 73~190 ngy/h 平 成 23 年 度 全 期 間 1 平 常 の 変 動 幅 42 ± 8 3 (35~47) 33 ± 5 3 (31~36) 積 算 線 量 80 ± 40 3 1 回 /3か 月 170~1600 μgy/3か 月 平 成 23 年 4 月 ~6 月 γ 線 (40~110) 全 β 放 射 能 1 回 / 週 ND~410 平 成 23 年 度 全 期 間 ND~0.93 空 気 中 90 Sr 1 回 /3か 月 ND~0.36 平 成 23 年 4 月 ~9 月 ND 浮 遊 じん mbq/m 3 137 Cs 1 回 /3か 月 0.076~910 平 成 23 年 度 全 期 間 ND 空 気 中 ヨウ 素 131 I 1 回 / 週 ND~640 mbq/m 3 平 成 23 年 4 月 ND 降 下 じん 全 β 放 射 能 1 回 / 月 18~1600 Bq/m 2 平 成 23 年 4 月 ~6 月 ND~65 飲 料 水 全 β 放 射 能 1 回 /3か 月 0.045~0.32 Bq/L 平 成 23 年 5 月 ~10 月 ND~0.087 葉 菜 131 I 1 回 /3か 月 ND~10 Bq/kg 生 平 成 23 年 5 月 ND Cs 1 回 / 年 0.12~0.64 Bq/kg 生 平 成 23 年 10 月 11 月 ND 表 土 137 Cs 1 回 / 年 160~770 Bq/kg 乾 平 成 23 年 11 月 2.9~33 河 底 土 全 β 放 射 能 1 回 /6か 月 520~850 Bq/kg 乾 平 成 23 年 5 月 450~780 1 平 常 の 変 動 幅 は 空 間 放 射 線 については 過 去 3 年 間 その 他 の 測 定 対 象 については 過 去 10 年 間 の 変 動 幅 である( 事 故 影 響 を 除 く) ND: 定 量 下 限 値 未 満 を 示 す 2 空 間 放 射 線 の 線 量 率 の 測 定 値 は1 時 間 値 の 月 平 均 値 を 示 す 3 空 間 放 射 線 については 上 段 の 数 値 は 平 均 ±3σを 下 段 の( ) 数 値 は 最 小 ~ 最 大 を 示 す 測 定 対 象 採 取 期 間 表 2 降 下 じん 中 放 射 性 核 種 分 析 結 果 134 Cs 濃 度 (Bq/m 2 月 ) 137 Cs 90 Sr 239,240 Pu 90 Sr/ 137 Cs 放 射 能 比 平 成 23 年 3 月 16000 14000 5.1 0.0093 1/2700 降 下 じん 平 成 23 年 4 月 2600 2200 3.2 0.0059 1/690 平 成 23 年 5 月 333 330 0.99 0.0045 1/330 平 成 23 年 6 月 106 100 0.14 0.0030 1/710 茨 城 県 の 過 去 の 変 動 幅 ND~59 ND~160 ND~130 全 国 の 過 去 の 変 動 幅 ND~100 ND~320 ND~360 ND~0.29 文 部 科 学 省 環 境 放 射 線 データベース 参 照 3. 結 語 平 成 23 年 度 東 海 再 処 理 施 設 周 辺 の 環 境 放 射 線 モニタリング 結 果 においては 海 洋 監 視 結 果 及 び 陸 上 監 視 結 果 の 多 数 の 試 料 で 事 故 影 響 により 過 去 10 年 間 ( 空 間 放 射 線 につ いては 過 去 3 年 間 )の 変 動 幅 を 外 れたが それらの 濃 度 は 減 少 傾 向 にある しかし 平 成 24 年 12 月 現 在 で 平 常 の 変 動 幅 の 範 囲 内 となった 試 料 がある 一 方 で 依 然 とし て 事 故 の 影 響 がみられている 試 料 もある 今 後 も 事 故 影 響 調 査 を 継 続 していく 必 要 が あると 考 える -8-

Ⅰ-4 土 壌 および 米 麦 子 実 中 の 放 射 能 調 査 独 立 行 政 法 人 農 業 環 境 技 術 研 究 所 木 方 展 治 井 上 恒 久 栗 島 克 明 大 瀬 健 嗣 1. 緒 言 昭 和 32 年 以 来 農 耕 地 ( 水 田 畑 ) 土 壌 およびそこに 栽 培 生 産 された 米 麦 子 実 を 対 象 とし 降 下 放 射 性 核 種 による 汚 染 状 況 とそれらの 経 年 変 化 の 定 点 調 査 を 実 施 してきた 平 成 23 年 3 月 に 起 こった 東 京 電 力 福 島 第 1 原 子 力 発 電 所 の 事 故 ( 以 下 福 島 原 発 事 故 と 記 す)は 広 く 東 日 本 の 農 地 を 放 射 能 汚 染 させた 汚 染 状 況 の 全 国 的 範 囲 や 経 年 変 化 をモニタリングすることは 現 在 の 放 射 能 汚 染 の 状 況 及 び 将 来 の 汚 染 予 測 を 行 う 上 の 重 要 な 基 礎 データとなるものである 今 回 は 平 成 23 年 度 に 収 穫 採 取 された 試 料 について 放 射 性 ストロンチウムと 放 射 性 セシウムの 分 析 を 行 った 結 果 を 報 告 する 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 調 査 方 法 北 海 道 から 九 州 まで 全 国 的 に 分 布 する 独 立 行 政 法 人 および 公 立 農 業 試 験 研 究 機 関 の 特 定 ほ 場 から それぞれの 収 穫 期 に 採 取 した 水 稲 小 麦 子 実 およびその 栽 培 土 壌 に 含 まれる 90 Sr, 89 Sr と 137 Cs, 134 Cs を 分 析 した( 麦 はAからG 地 点 までの7ヶ 所 水 稲 は a から n 地 点 までの 14 ヶ 所 ) 90 Sr, 89 Sr は 灰 化 した 水 稲 小 麦 子 実 及 び 有 機 物 を 燃 焼 した 風 乾 土 から 酸 抽 出 後 イオン 交 換 法 により 分 離 精 製 し 2πガスフロー 低 バックグラウンド 測 定 装 置 でβ 線 測 定 を 行 った 89 Sr 濃 度 は 炭 酸 ストロンチウム 沈 殿 全 体 の 計 測 値 から 90 Sr 相 当 の 計 測 値 を 差 し 引 いて 求 めた 137 Cs, 134 Cs は 水 稲 小 麦 子 実 については2Lマリネリ 容 器 土 壌 については2Lマリネリ 容 器 またはスチロール 製 平 板 容 器 に 充 填 後 γ 線 スペクトロメトリにより 2000~600,000 秒 かけて 測 定 した 2) 結 果 の 概 要 1 麦 および 畑 作 土 ; 小 麦 (G 地 点 のみ 大 麦 )および 畑 作 土 の 放 射 性 ストロンチウムと 放 射 性 セシ ウム 濃 度 を 表 1に 示 した 表 1において 90 Sr を 除 き 計 測 値 が 標 準 偏 差 σの3 倍 を 超 えなかった 場 合 に ND と 記 した ただし 90 Sr は 前 年 度 からの 継 続 性 もあり 標 準 偏 差 σの3 倍 に 満 たない 場 合 も 計 測 値 を 記 した ND の 意 味 は 表 2, 表 3においても 同 様 である 90 Sr 濃 度 の 平 均 値 は 玄 麦 が 64 mbq/kg 畑 土 壌 が 1.2 Bq/kg であり 22 年 度 平 均 と 有 意 差 はなかった また 半 減 期 約 50 日 の 89 Sr も 双 方 で 検 知 されなかったことから 福 島 原 発 事 故 から 放 出 された 放 射 性 ストロンチウムの 影 響 は 広 域 には 及 ばなかったことが 示 唆 された それに 対 し 放 射 性 セシウムは 137 Cs 濃 度 の 平 均 値 が 17,600 mbq/kg と 22 年 度 の 2,700 倍 になり 地 域 差 も 非 常 に 大 きかった 玄 麦 の 最 大 濃 度 は 42,200 mbq/kg であり 1963 年 の 核 実 験 最 盛 期 の 最 大 値 113,700 mbq/kg よりも 低 く この 年 のモニタリング 地 点 平 均 値 の 43,600 mbq/kg と 同 等 であった ND 地 点 を 除 く 137 Cs の 土 壌 からの 移 行 係 数 は 最 大 で 0.336 平 均 で 0.167 と 事 故 前 よりも 大 幅 に 高 く 事 故 初 期 に 茎 葉 に 沈 着 し た 137 Cs が 移 行 した 可 能 性 が 示 唆 された 2 米 および 水 田 作 土 ; 米 および 水 田 作 土 の 放 射 性 ストロンチウム 濃 度 を 表 2に 記 した 90 Sr 濃 度 の 平 均 値 は 白 米 が 3.8 mbq/kg 新 鮮 重 水 田 土 壌 が 0.58 Bq/kg 乾 土 であり 22 年 度 平 均 と 有 意 差 はなかった また 89 Sr も 双 方 で 検 知 されなかったことから 福 島 原 発 事 故 から 放 出 された 放 射 性 ストロンチウムの 影 響 は 麦 とその 栽 培 土 壌 と 同 様 に 広 域 には 及 ばなかったことが 示 唆 された 米 および 水 田 作 土 の 放 射 性 ストロンチウム 濃 度 を 表 3に 記 した 137 Cs 濃 度 の 平 均 値 は 白 米 が 346 mbq/kg 新 鮮 重 と 22 年 度 平 均 の 10 倍 ほど 高 く 最 大 値 は 1,960 mbq/kg 新 鮮 重 であった こ れは 1963 年 の 最 大 値 8,140 mbq/kg 新 鮮 重 平 均 値 4,180 mbq/kg 新 鮮 重 と 比 べると 低 かった しかし 水 田 作 土 は 最 大 値 205 Bq/kg 乾 土 と 畑 作 土 の 141 Bq/kg 乾 土 よりも 高 く 1960 年 代 の 畑 作 土 で 記 録 された 最 大 値 116 Bq/kg 乾 土 よりも 高 濃 度 であった ND 地 点 を 除 く 137 Cs の 土 壌 から の 移 行 係 数 は 平 均 0.011 と 22 年 度 と 同 レベルであった また ND 地 点 を 除 く 137 Cs の 玄 米 に 対 す る 白 米 の 濃 度 比 は 0.41 から 0.59 の 範 囲 で 平 均 0.47 であった 3その 他 核 種 ; 放 射 性 ヨウ 素 は 全 試 料 について ND であった 放 射 性 カリウム 濃 度 の 平 均 は 玄 麦 127±23 玄 米 75.0±11 白 米 29.4±14 畑 土 壌 380±253 水 田 土 壌 466±201 Bq/kg 乾 土 で 放 射 性 セシウム 濃 度 よりも 高 かった -9-

表 1 玄 麦 および 畑 作 土 の 放 射 性 ストロンチウムと 放 射 性 セシウム 濃 度 玄 麦 放 射 性 ストロンチウム 放 射 性 セシウム 放 射 性 ストロンチウム 放 射 性 セシウム 試 料 採 取 地 土 壌 採 取 日 Csの 移 作 物 採 取 日 Sr Sr Cs Cs Sr Sr Cs 134 Cs 行 係 数 mbq/kg 新 鮮 mbq/kg 新 鮮 重 mbq/kg 新 鮮 重 mbq/kg 新 鮮 重 Bq/kg 乾 土 Bq/kg 乾 土 Bq/kg 乾 土 Bq/kg 乾 土 重 A H23.7.25 84 ± 7.8 ND 103 ± 24 90 ± 24 H23.7.28 1.5 ± 0.09 ND 5.1 ± 0.2 ND 0.020 B H23.7.12 86 ± 6.7 ND 4570 ± 139 3670 ± 139 H23.7.15 2.1 ± 0.11 ND 25 ± 1.1 11 ± 0.9 0.186 C H23.6.23 70 ± 5.6 ND 42200 ± 878 36800 ± 878 H23.9.12 1.1 ± 0.09 ND 126 ± 2.6 97 ± 2.3 0.336 D H23.6.22 54 ± 4.6 ND 38900 ± 271 35600 ± 271 H23.6.20 1.7 ± 0.10 ND 141 ± 3.2 132 ± 3.3 0.276 E H23.6.29 92 ± 8.7 ND 31100 ± 424 29200 ± 424 H23.7.12 1.0 ± 0.08 ND 106 ± 1.8 89 ± 1.8 0.293 F H23.6.16 50 ± 5.1 ND 6600 ± 82 6170 ± 82 H23.7.4 0.53 ± 0.08 ND 85 ± 1.3 75 ± 1.3 0.078 G H23.5.31 13 ± 4.9 ND ND ND H23.6.3 0.36 ± 0.05 ND 6.4 ± 0.3 ND 平 均 ---- 64 ± 28 ND 17600 ± 18900 15900 ± 17100 ---- 1.2 ± 0.6 ND 71 ± 58 58 ± 53 0.167 22 年 度 平 均 ---- 57 ± 25 未 測 定 6.5 ± 17.2 未 測 定 ---- 1.1 ± 0.7 未 測 定 6.4 ± 2.1 未 測 定 0.006 畑 土 壌 試 料 採 取 地 作 物 採 取 日 表 2 白 米 および 水 田 作 土 の 放 射 性 ストロンチウム 濃 度 白 米 水 田 土 壌 90 Sr 89 Sr 土 壌 採 取 日 90 Sr 89 Sr mbq/kg 新 鮮 重 mbq/kg 新 鮮 重 Bq/kg 乾 土 Bq/kg 乾 土 a H23.10.25 2.5 ± 1.5 ND H23.10.25 1.0 ± 0.1 ND b H23.9.22 3.8 ± 1.4 ND H23.9.13 0.7 ± 0.1 ND c H23.9.16 7.4 ± 2.1 ND H23.10.8 0.8 ± 0.1 ND d H23.9.7 6.1 ± 1.6 ND H23.9.7 1.2 ± 0.1 ND e H23.9.14 1.4 ± 1.4 ND H23.11.24 0.6 ± 0.1 ND f H23.9.13 3.4 ± 1.6 ND H23.9.7 0.5 ± 0.1 ND g H23.9.28 3.2 ± 1.6 ND H23.10.3 0.3 ± 0.1 ND h H23.9.22 5.0 ± 1.5 ND H23.9.27 0.6 ± 0.1 ND i H23.9.28 4.8 ± 1.5 ND H23.9.30 0.9 ± 0.1 ND j H23.9.13 3.2 ± 1.4 ND H23.9.14 0.5 ± 0.1 ND k H23.9.20 4.7 ± 1.0 ND H23.9.30 0.4 ± 0.1 ND l H23.8.29 1.6 ± 1.3 ND H24.11.16 0.1 ± 0.0 ND m H23.9.27 2.0 ± 1.4 ND H23.9.27 0.3 ± 0.1 ND n H23.10.3 3.6 ± 1.7 ND H23.10.12 0.3 ± 0.1 ND 平 均 3.8 ± 1.7 ND 0.58 ± 0.31 ND 22 年 度 平 均 3.6 ± 1.8 未 測 定 0.54 ± 0.34 未 測 定 表 3 玄 米 白 米 および 水 田 作 土 の 放 射 性 セシウム 濃 度 *;ぬか 白 米 の 分 析 値 から 推 定 玄 米 水 田 土 壌 137 Csの 移 行 係 数 137 Cs Cs Cs Cs 白 米 中 の 137 Cs Cs Cs mbq/kg 新 鮮 重 mbq/kg 新 鮮 重 mbq/kg 新 鮮 重 mbq/kg 新 鮮 重 玄 米 中 の 137 Cs Bq/kg 乾 土 Bq/kg 乾 土 玄 米 白 米 a ND ND ND ND 6.3 ± 0.1 0.3 ± 0.1 b 88 ± 17 ND 51 ± 15 ND 0.59 5.7 ± 0.3 1.2 ± 0.3 0.015 0.009 c 283 ± 31 142 ± 24 139 ± 21 78 ± 23 0.49 8.2 ± 0.2 3.0 ± 0.2 0.034 0.017 d ND ND ND ND 16 ± 0.3 ND e ND ND ND ND 4.6 ± 0.0 ND f ND ND ND ND 13 ± 0.5 ND g 191 ± 24 ND 74 ± 14 ND 5.8 ± 0.3 ND h 2500 ± 93 2040 ± 86 1050 ± 44 810 ± 45 0.42 46 ± 0.9 31 ± 0.8 0.055 0.023 i 685 ± 44 557 ± 43 281 ± 25 270 ± 26 0.41 124 ± 2.6 101 ± 2.4 0.006 0.002 j 2660 ± 65 2290 ± 61 1290 ± 56 959 ± 57 0.48 157 ± 3.6 125 ± 3.3 0.017 0.008 k 4730 ± 71 4080 ± 64 1960 ± 47 1660 ± 43 0.41 205 ± 1.3 172 ± 1.2 0.023 0.010 l 66 ± 20 67 ± 22 ND ND 4.3 ± 0.3 1.3 ± 0.2 m ND ND ND ND 3.9 ± 0.2 ND n ND * ND * ND ND 5.8 ± 0.1 ND 平 均 800 ± 1450 655 ± 1250 346 ± 622 270 ± 511 0.47 43 ± 67 31 ± 58 0.025 0.011 22 年 度 平 均 未 測 定 未 測 定 35 ± 35.4 未 測 定 未 測 定 35 ± 35 未 測 定 未 測 定 0.013 3. 結 語 福 島 原 発 事 故 の 広 域 的 影 響 について 議 論 を 深 めるためには 極 力 放 射 性 物 質 による 汚 染 が 起 こ らないように 放 射 能 測 定 を 行 っていく 必 要 がある -10-

Ⅰ-5 90 Sr 137 Cs の 土 壌 中 深 度 分 布 の 実 態 調 査 独 立 行 政 法 人 農 業 環 境 技 術 研 究 所 木 方 展 治 大 瀬 健 嗣 井 上 恒 久 福 囿 康 志 1. 緒 言 昭 和 32 年 以 来 農 耕 地 ( 水 田 畑 ) 土 壌 の 作 土 層 の 降 下 放 射 性 核 種 による 汚 染 状 況 と それらの 経 年 変 化 の 定 点 調 査 を 実 施 してきた 平 成 23 年 3 月 に 起 こった 東 京 電 力 福 島 第 1 原 子 力 発 電 所 の 事 故 ( 以 下 福 島 原 発 事 故 と 記 す)は 広 く 東 日 本 の 農 地 を 放 射 能 汚 染 さ せた 福 島 原 発 事 故 が 農 地 土 壌 の 放 射 能 に 与 えた 影 響 を 明 らかにするため 福 島 原 発 事 故 の 前 に 調 査 した 土 壌 を 再 度 調 査 し 放 射 性 セシウムの 垂 直 分 布 の 比 較 を 行 った 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 調 査 方 法 茨 城 県 桜 川 市 に 近 接 して 分 布 する 林 地 畑 地 水 田 を 調 査 地 点 とした これらの 地 点 は 図 1の 模 式 図 に 示 す 林 地 水 田 畑 を 通 過 する 水 路 に 沿 って 2km の 距 離 内 に 分 布 している 水 田 及 び 畑 は 2 ヶ 所 ず 図 1 調 査 地 点 の 模 式 図 つ 調 査 地 点 とし それ ぞれ 水 路 の 流 下 位 置 により 上 流 側 を 上 部 下 流 側 を 下 部 とした 事 故 以 前 の 2008 年 9 月 から 2009 年 1 月 に 土 壌 断 面 調 査 を 行 い 深 度 別 の 土 壌 試 料 を 採 取 した また 事 故 後 の 2011 年 11 月 に 同 様 の 調 査 を 行 った. 試 料 は 風 乾 し ゲルマニウム 半 導 体 分 析 器 で 土 壌 中 の 放 射 性 セシウム 濃 度 を 分 析 した 2) 結 果 の 概 要 事 故 以 前 に 降 下 した 137 Cs の 残 存 量 は 浸 食 の 少 ない 林 地 で 2.49 kbq/m 2 であった( 表 1) 畑 地 では 1.74 kbq/m 2 および 0.38 kbq/m 2 と 浸 食 による 地 点 間 の 差 が 大 きかった ま た 水 田 では 0.81 kbq/m 2 および 0.58 kbq/m 2 と 低 く また 作 土 層 より 次 表 層 に 多 いこと から( 図 2) 用 水 による 流 入 よりも 作 付 期 間 中 の 流 出 が 大 きいことが 示 唆 された 事 故 後 の 134 Cs 存 在 量 は 畑 地 および 水 田 では 4.1~5.3 kbq/m 2 の 範 囲 にあったが 林 地 では 1.86 kbq /m 2 と 低 く 降 下 した 放 射 性 Cs のかなりの 部 分 が 樹 木 やリターに 沈 着 し 無 機 質 土 壌 に 到 達 していないことが 示 唆 された.また 林 地 および 事 故 後 に 耕 作 をしなかった 畑 地 では 放 射 性 Cs の 大 部 分 が 3 cmまでの 深 さに 分 布 し 作 付 した 水 田 では 十 数 cmまで 分 布 し ていた -11-

2/2 図 2 福 島 原 発 前 後 の 土 壌 中 放 射 性 セシウムの 鉛 直 分 布 表 1 福 島 第 一 原 発 事 故 前 後 の 土 地 利 用 ごとの 放 射 性 セシウム 存 在 量 土 地 利 用 存 在 量 (Bq/m 2 ) Cs-134/ 原 発 事 故 以 前 の 2011 年 11 月 の 2008 年 9 月 ~2009 年 1 月 2011 年 11 月 事 Cs-137 故 後 に 増 加 Cs-137 Cs-137 検 出 深 度 Cs-134 検 出 深 度 Cs-137 Cs-134 Cs-137 した 137 Cs (cm) (cm) 林 地 2490 1860 4480 1990 0.93 32 11 畑 地 ( 上 部 ) 1740 4130 6200 4460 0.93 33 7 畑 地 ( 下 部 ) 380 4690 6270 5890 0.80 27 14 水 田 ( 上 部 ) 810 5340 7180 6370 0.84 32 17 水 田 ( 下 部 ) 580 4360 5920 5340 0.82 40 16 3. 結 語 草 地 土 壌 等 他 の 土 地 利 用 も 含 め さらに 別 の 地 点 においても 福 島 原 発 事 故 前 後 の 放 射 性 セシウムの 鉛 直 分 布 を 調 査 していく 必 要 がある -12-

Ⅰ-6 土 壌 粒 子 吸 着 態 137 Cs の 土 壌 中 輸 送 時 間 推 定 手 法 の 開 発 独 立 行 政 法 人 農 業 環 境 技 術 研 究 所 江 口 定 夫 藤 原 英 司 1. 緒 言 農 地 土 壌 では 土 壌 粒 子 に 強 く 吸 着 した 放 射 性 セシウムの 一 部 が 懸 濁 態 のまま 浸 透 水 と 共 に 土 壌 中 を 流 下 する 場 合 のあることが 知 られている(Eguchi et al 2010) 農 地 土 壌 中 における 放 射 性 セシウムの 輸 送 過 程 の 実 態 およびそれにかかる 時 間 を 明 らかにす ることは 農 業 環 境 中 における 放 射 性 セシウムの 動 態 を 把 握 し 将 来 予 測 をするために 必 要 不 可 欠 であるが ほとんど 知 見 がない 本 課 題 は 農 地 土 壌 を 対 象 として 農 地 からの 表 面 排 水 中 に 含 まれる 懸 濁 態 の 人 工 及 び 天 然 放 射 性 核 種 の 濃 度 比 に 基 づき 土 壌 粒 子 に 強 く 吸 着 した 放 射 性 セシウムの 土 壌 中 輸 送 時 間 を 推 定 する 手 法 を 開 発 することを 目 的 として 実 施 する これは 半 減 期 の 異 な る 放 射 性 核 種 の 濃 度 比 に 着 目 し それらの 放 射 性 核 種 が 易 動 性 の 土 壌 粒 子 に 強 く 吸 着 し たまま 土 壌 中 を 輸 送 されることを 前 提 に 土 壌 表 層 ( 田 面 水 や 表 面 排 水 )における 濃 度 比 と 暗 渠 排 水 (あるいは 浅 層 地 下 水 など) 中 における 濃 度 比 の 違 いから 土 壌 粒 子 の 輸 送 時 間 を 推 定 するものである(Eguchi et al 2010) 今 年 度 は 東 電 原 発 事 故 の 起 き た 福 島 県 内 の 水 田 圃 場 に 調 査 地 を 設 定 し 表 面 排 水 等 に 含 まれる 各 種 放 射 性 核 種 濃 度 を 測 定 し 本 手 法 開 発 のための 基 礎 的 知 見 を 得 ることを 試 みた 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 方 法 調 査 地 は 福 島 県 農 業 総 合 センター( 郡 山 市 日 和 田 ) 内 の 水 田 圃 場 に 設 定 した 2011 年 4 月 末 より 灌 漑 水 表 面 排 水 及 び 暗 渠 排 水 の 流 量 を それぞれ パーシャルフリュ ーム 三 角 堰 及 び 水 道 メータによって 自 動 観 測 した 降 水 代 かき 及 び 落 水 などの 各 イベント 毎 に 表 面 排 水 等 の 水 試 料 を 各 々20 L 以 上 採 取 した なお 暗 渠 排 水 は 非 灌 漑 期 も 含 めてほとんど 流 出 することがなく サンプル を 得 ることが 出 来 なかった 各 水 試 料 は 孔 径 0.025 μm のメンブレンフィルターで 全 量 を 濾 過 後 濾 紙 上 の 残 存 物 を 懸 濁 物 質 (suspended solid, SS)として 回 収 し 乾 燥 後 に ガンマ 線 分 析 (ウエル 型 )に 供 した 放 射 性 核 種 は 210 Pb( 半 減 期 22.3 年 ) 214 Pb( 同 26.8 分 ) 7 Be( 同 53.3 日 ) 134 Cs( 同 2.07 年 ) 137 Cs( 同 30.1 年 ) 及 び 40 K( 同 12.5 億 年 ) 等 の 濃 度 を 測 定 した また 210 Pb と 214 Pb の 間 の 放 射 平 衡 に 基 づき 210 Pb ex 濃 度 を 算 出 した なお 214 Pb 濃 度 が 検 出 限 界 以 下 の 場 合 は 210 Pb 濃 度 = 210 Pb ex 濃 度 とした 大 気 降 下 物 は 面 積 1 m 2 の 水 盤 内 に 蒸 留 水 を 張 り 約 1 ヶ 月 毎 に 水 盤 内 に 溜 まっ た 水 の 全 量 を 回 収 した 水 試 料 は 全 量 をホットプレート 上 で 蒸 発 乾 固 した 後 他 の 試 料 と 同 様 にガンマ 線 分 析 に 供 した 2) 結 果 表 1 は 水 田 灌 漑 期 間 中 の 大 気 降 下 物 ( 全 量 ) 及 び 水 田 からの 表 面 排 水 中 の 懸 濁 物 質 (SS)に 含 まれる 各 種 放 射 性 核 種 の 濃 度 の 測 定 結 果 である 大 気 降 下 物 及 び 表 面 排 水 SS 中 に 含 まれる 134+137 Cs 濃 度 と 天 然 の 放 射 性 核 種 ( 210 Pb ex 及 び 7 Be) 濃 度 との 間 に 明 瞭 な 関 係 は 見 いだされなかった 大 気 降 下 物 に 含 まれる 7 Be/ 134+137 Cs 濃 度 比 及 び 210 Pb ex / 134+137 Cs 濃 度 比 は それぞれ 0.2 から 0.8 及 び 0.06 から 0.2 の 範 囲 内 で 変 動 し いずれも 月 日 と 共 に 上 昇 する 傾 向 にあった 表 面 排 水 SS に 含 まれる 210 Pb ex / 134+137 Cs 濃 度 比 は 0.002 から 0.005 の 範 囲 内 で 変 動 し 同 じイベント 内 の 水 試 料 でも 採 取 す るタイミングにより 2 倍 以 上 の 変 動 が 見 られた 今 回 暗 渠 排 水 サンプルが 得 られな かったため 懸 濁 態 134+137 Cs の 土 壌 中 輸 送 時 間 を 試 算 することは 出 来 なかった -13-

3) 問 題 点 など 課 題 遂 行 上 の 問 題 点 として 所 内 では 東 電 原 発 事 故 緊 急 対 応 用 等 の 分 析 サンプルを 優 先 的 にガンマ 線 分 析 に 回 す 必 要 があり 本 課 題 用 のマシンタイム( 試 料 一 点 当 たり 数 十 万 秒 が 必 要 )をほとんど 確 保 することが 出 来 なかったこと また 非 常 に 高 濃 度 の 放 射 性 セシウム 濃 度 のため 7 Be 210 Pb 及 び 214 Pb の 高 精 度 分 析 が 出 来 なかったこと 等 が 主 な 原 因 となり 表 面 排 水 SS については 7 Be 及 び 210 Pb ex 濃 度 データを 同 一 試 料 について 得 ることが 出 来 ていない また 今 回 の 調 査 圃 場 は 非 灌 漑 期 も 含 めてほとんど 暗 渠 排 水 が 得 られないことが 明 らかとなったため 次 年 度 は 暗 渠 排 水 が 恒 常 的 に 得 られる 農 地 を 調 査 地 として 設 定 する 予 定 である 3. 結 語 福 島 県 内 の 水 田 圃 場 を 対 象 に 大 気 降 下 物 に 含 まれる 7 Be/ 134+137 Cs 濃 度 比 及 び 210 Pb ex / 134+137 Cs 濃 度 比 表 面 排 水 SS に 含 まれる 210 Pb ex / 134+137 Cs 濃 度 比 の 変 動 傾 向 につい て 基 礎 的 知 見 を 得 ることが 出 来 た しかし 本 圃 場 では 暗 渠 排 水 サンプルが 得 られな かったため 懸 濁 態 134+137 Cs の 土 壌 中 輸 送 時 間 の 試 算 には 至 らなかった 次 年 度 は 暗 渠 排 水 が 恒 常 的 に 得 られる 農 地 を 新 たに 調 査 地 として 設 定 することを 予 定 している 表 1 大 気 降 下 物 ( 全 量 ) 及 び 水 田 からの 表 面 排 水 中 の 懸 濁 物 質 (SS)に 含 まれる 人 工 ( 134+137 Cs) 及 び 天 然 放 射 性 核 種 ( 7 Be 210 Pb ex )の 濃 度 イベント-1 イベント-2 採 取 日 2011/6/11 2011/7/13 2011/8/18 2011/9/13 2011/6/28 Mean (±SD) 2011/7/5 Mean (±SD) ph 3 6.97 6.48 5.21 4.97 7.25 (±0.26) 7.45 (±0.17) EC 3 ds/m 0.072 0.022 0.024 0.015 0.211 (±0.030) 0.150 (±0.024) SS 濃 度 3 大 気 降 下 物 _Total 1 表 面 排 水 _SS 2 mg/l n.d. 4 n.d. n.d. n.d. 416 (±131) 81 (±24) 7 Be kbq/kg 18.9 37.9 (39.4) 5 (24.8) <d.l. 6 <d.l. 210 Pb ex kbq/kg 4.67 7.37 7.28 7.79 0.053 (±0.004) 0.167 (±0.040) 134+137 Cs kbq/kg 80.5 96.1 50.2 35.2 16.3 (±7.5) 49.6 (±5.4) 7 Be/ 134+137 Cs 0.235 0.394 (0.786) (0.706) - - 210 Pb ex / 134+137 Cs 0.058 0.077 0.145 0.222 0.0033 (±0.0019) 0.0034 (±0.0004) 1 2011 年 5 月 16 日 より 約 1ヶ 月 毎 に 水 盤 中 の 全 量 を 蒸 発 乾 固 して 測 定 2 降 水 や 落 水 などのイベント 毎 に 表 面 排 水 中 の 懸 濁 物 質 (SS)を 濾 過 ( 孔 径 >0.025 μm)により 分 離 して 測 定 3 各 水 試 料 のpH 電 気 伝 導 度 (EC) 及 びSS 濃 度 4 not determined 5 134 Csピークが 7 Beピークに 重 なり 両 ピークを 分 離 できず 7 Beピークを 過 大 評 価 しているため 参 考 値 6 <detection limit -14-

福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 後 の 環 境 放 射 能 調 査 財 団 法 人 日 本 分 析 セ ン タ ー 池 内 嘉 宏 金 子 健 司 大 橋 直 之 渡 邉 右 修 岸 本 武 士 前 山 健 司 室 井 隆 彦 1. 緒 言 日 本 分 析 セ ン タ ー に お け る 平 成 23 年 3 月 11 日 の 発 電 所 事 故 後 の 環 境 放 射 能 調 査 の 内 容 と そ の 体 制 に つ い て 主 に 平 成 23 年 4 月 以 降 平 成 23 年 度 に 実 施 した 内 容 を 記 載 す る 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 空 間 放 射 線 量 率 とそ れ に 寄 与 す る 放 射 性 核 種 当 セ ン タ ーでは 3 月 15 日 の 午 後 4 時 に 空 間 放 射 線 量 率 が 0.732μ Sv/h と 最 高 値 を 示 し た 3 月 21 日 の 早 朝 に 降 雨 があり 午 前 8 時 に 空 間 放 射 線 量 率 が 1 時 間 あ た り 0.417μ Sv/h と 急 に 高 い 値 を 示 し た そ の 後 空 間 放 射 線 量 率 は 時 間 と と も に 徐 々 に 下 が り 空 間 放 射 線 量 率 に 影 響 を 及 ぼ す 核 種 は 134 Cs 及 び 137 Cs のみとなった 1 年 後 の 空 間 線 量 率 は 0.1μ Sv/h 程 度 で 事 故 前 の 0.02μSv/h 程 度 ま で は 下 が っ て い な い 1 年 が 経 過 し た 平 成 24 年 3 月 の 結 果 を 図 1 に 示 す 1.0000 空 間 放 射 線 量 率 Xe-133 Te-132 Te-129 I-131 I-132 Cs-134 Cs-137 Cs-136 Tc-99m Bi-214( 自 然 ) 雨 量 50 40 0.1000 線 量 率 (μ SV/h) 30 20 雨 量 (mm) 0.0100 10 0.0010 3/1 3/3 3/5 3/7 3/9 3/11 3/13 3/15 3/17 3/19 3/21 3/23 3/25 3/27 3/29 3/31 日 時 ( 本 データは1μ Gy/h =1μ Sv/hとして 算 出 ) 図 1 日 本 分 析 センターにおける 空 間 放 射 線 量 率 の 測 定 結 果 2012/4/20 日 本 分 析 センター 調 べ 0 2) 当 センターにおける 大 気 浮 遊 じ ん 等 の 分 析 結 果 平 成 23 年 3 月 14 日 か ら 大 気 浮 遊 じ ん 降 下 物 の 分 析 を 18 日 から 水 道 水 -15-

の 分 析 を 開 始 し た 大 気 浮 遊 じんは 一 日 で 100m 3 程 度 吸 引 降 下 物 は 0.028 m 2 の 面 積 に 一 日 集 め 水 道 水 は 2L を そ れそれ 毎 日 ゲ ル マ ニ ウム 半 導 体 検 出 器 で 1 時 間 測 定 し た 平 成 23 年 3 月 31 日 までの 大 気 浮 遊 じんの 134 Cs 137 Cs 131 I の 最 大 値 は そ れ ぞ れ 9.6Bq/m 3 12 Bq/m 3 47 Bq/m 3 降 下 物 は そ れ ぞ れ 2,900 Bq/m 2 2,900 Bq/m 2 17,000 Bq/m 2 水 道 水 は そ れ ぞ れ 2.1Bq/L 2.2Bq/L 43Bq/L であった 平 成 23 年 度 では 3 試 料 とも 4 月 上 旬 に 最 大 値 が 測 定 さ れ 大 気 浮 遊 じ んの 134 Cs 137 Cs 131 I の 最 大 値 は そ れ ぞ れ 0.064Bq/m 3 0.073 Bq/m 3 0.44 Bq/m 3 降 下 物 は そ れ ぞ れ 88 Bq/m 2 86 Bq/m 2 32 Bq/m 2 水 道 水 は それぞれ 0.91Bq/L 0.91Bq/L 22Bq/L で 134 Cs 及 び 131 I は 5 月 上 旬 以 降 ND となっている 4 月 以 降 各 試 料 とも 放 射 能 濃 度 は 急 激 に 減 少 している 3) 福 島 県 内 の 河 川 水 井 戸 水 の 放 射 能 調 査 文 部 科 学 省 に よ る 放 射 性 物 質 の 分 布 状 況 等 に 関 す る 調 査 研 究 で 当 セ ンターは 平 成 23 年 の 6 月 下 旬 と 8 月 初 旬 に そ れ ぞ れ 河 川 水 50 箇 所 井 戸 水 50 箇 所 を 採 取 し γ 線 ス ペ ク ト ロメトリーを 河 川 水 に つ い て は そ の う ち それぞれ 10 箇 所 について Sr Pu を 井 戸 水 に つ い て は それぞれ 6 箇 所 の Sr 分 析 を 実 施 した 図 2 に 河 川 水 の 134 Cs 結 果 を 示 す ほとん ど の 箇 所 で 8 月 に 採 取 し た 試 料 の 方 が 低 い 値 を 示 している 最 大 濃 度 の 河 川 水 を 仮 に 1 年 間 飲 み 続 けると 134 Cs と 137 Cs の 合 計 で 0.060mSv/y 89 Sr と 90 Sr の 合 計 で 0.00063mSv/y Pu は 全 試 料 検 出 限 界 値 以 下 で あ ったが 検 出 限 界 値 で 計 算 す る と 0.0000037mSv/y であった 最 大 濃 度 の 井 戸 水 を 仮 に 1 年 間 飲 み 続 けると 134 Cs と 137 Cs の 合 計 で 0.030mSv/y 89 Sr と 90 Sr の 合 計 で 0.000048mSv/y であった 3. 結 語 得 ら れ た 成 果 を 基 に 今 後 も 放 射 性 物 質 の 移 行 状 況 を 確 認 す る た め 定 期 的 に 環 境 放 射 能 調 査 を 継 続 す る 必 要 が あ る と 考 える -16-

Ⅰ-8 環 境 試 料 中 の 90 Sr 及 び 137 Csの 放 射 能 調 査 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 樫 原 陽 子 松 田 秀 夫 庄 子 隆 岸 本 武 士 1. 緒 言 本 調 査 は 環 境 放 射 能 水 準 調 査 の 一 環 として 日 本 各 地 で 採 取 した 環 境 試 料 ( 大 気 浮 遊 じん 降 下 物 陸 水 土 壌 海 水 海 底 土 及 び 農 畜 水 産 物 ) 中 の 90 Sr 及 び 137 Cs 濃 度 を 把 握 することを 目 的 として 実 施 している ここでは 平 成 23 年 度 の 調 査 結 果 を 報 告 する 2. 調 査 研 究 の 概 要 平 成 23 年 度 に47 都 道 府 県 の 衛 生 研 究 所 等 が 採 取 し 所 定 の 前 処 理 を 施 した 後 に 日 本 分 析 センターに 送 付 された 各 種 試 料 及 び 日 本 分 析 センターが 採 取 購 入 した 試 料 について 90 Sr 及 び 137 Cs 分 析 を 行 った 1) 分 析 対 象 試 料 大 気 浮 遊 じん 降 下 物 陸 水 土 壌 精 米 野 菜 茶 牛 乳 粉 乳 海 水 海 底 土 海 産 生 物 及 び 淡 水 産 生 物 2) 分 析 方 法 文 部 科 学 省 放 射 能 測 定 法 シリーズ2 放 射 性 ストロンチウム 分 析 法 ( 平 成 15 年 改 訂 ) 及 び 同 シリーズ3 放 射 性 セシウム 分 析 法 ( 昭 和 51 年 改 訂 )に 準 じた 方 法 で 行 った 3) 調 査 結 果 各 種 試 料 中 の 90 Sr 及 び 137 Cs 放 射 能 濃 度 の 平 均 値 及 び 最 小 最 大 値 を 以 下 に 示 す なお nは 分 析 試 料 数 右 端 カッコ 内 は 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 事 故 前 の 平 成 22 年 度 の 平 均 値 ( 大 気 浮 遊 じんの 平 成 23 年 1~3 月 採 取 分 その 他 の 試 料 の 平 成 23 年 3 月 採 取 分 の 結 果 は 含 まない)である 1 大 気 浮 遊 じん 36 府 県 で 四 半 期 毎 に 採 取 した 試 料 Sr : 0.0023 ( 0.00000 ~ 0.17 ) mbq/m 3 n=144 (0.00057) 137 Cs : 0.40 ( 0.00000 ~ 30 ) mbq/m 3 n=144 (0.00048) 2 降 下 物 45 都 道 府 県 及 び 日 本 分 析 センターにおける 月 間 降 下 物 90 Sr : 0.047 ( 0.0000 ~ 4.4 ) MBq/km 2 n=552 (0.016) -17-

137 Cs : 35 ( 0.0000 ~ 3500 ) MBq/km 2 n=552 (0.096) 3 陸 水 44 都 道 府 県 で 年 1 回 採 取 した 上 水 ( 源 水 蛇 口 水 ) 及 び9 道 府 県 で 採 取 した 淡 水 上 水 90 Sr : 1.0 ( 0.033 ~ 2.3 ) mbq/l n=54 (1.0) 137 Cs : 25 ( 0.000 ~ 710 ) mbq/l n=54 (0.053) 淡 水 90 Sr : 1.6 ( 0.065 ~ 3.2 ) mbq/l n= 9 (1.4) 137 Cs : 32 ( 0.12 ~ 270 ) mbq/l n= 9 (0.21) 4 土 壌 46 都 道 府 県 で 年 1~2 回 採 取 した 試 料 ( 深 さ0~5cm 5~20cmの2 種 類 ) 0 ~ 5cm 90 Sr : 45 ( 0.0 ~ 190 ) MBq/km 2 n=48 ( 41) 1.4 ( 0.000 ~ 6.8) Bq/kg 乾 土 ( 1.4) 137 Cs :2900 ( 1.6 ~ 51000 ) MBq/km 2 n=48 (300) 93 ( 0.028 ~ 1500 ) Bq/kg 乾 土 ( 11) 5 ~20cm Sr :130 ( 6.2 ~ 760 ) MBq/km 2 n=48 (130) 1.3 ( 0.065 ~ 7.0 ) Bq/kg 乾 土 ( 1.3) 137 Cs :760 ( 4.3 ~ 4100 ) MBq/km 2 n=48 (550) 9.7 ( 0.079 ~ 98 ) Bq/kg 乾 土 ( 5.7) 5 精 米 31 道 県 で 年 1 回 採 取 した 試 料 Sr : 0.0053 ( 0.0000 ~ 0.016 ) Bq/kg 生 n=31 (0.0054) 0.13 ( 0.000 ~ 0.43 ) Bq/gCa (0.13) 137 Cs : 0.37 ( 0.0020 ~ 5.9 ) Bq/kg 生 n=31 (0.011) 0.49 ( 0.0021 ~ 7.5 ) Bq/gK (0.012) 6 野 菜 40 道 府 県 で 年 1~2 回 採 取 した 根 菜 類 及 び 葉 菜 類 根 菜 類 ( 主 にダイコン) 90 Sr : 0.043 ( 0.0006 ~ 0.28 ) Bq/kg 生 n= 41 (0.045) 0.22 ( 0.003 ~ 1.1 ) Bq/gCa (0.23) 137 Cs : 0.10 ( 0.0000 ~ 1.7 ) Bq/kg 生 n= 41 (0.013) 0.054 ( 0.0000 ~ 0.70 ) Bq/gK (0.0063) 葉 菜 類 ( 主 にホウレンソウ) -18-

90 Sr : 0.073 ( 0.0006 ~ 1.3 ) Bq/kg 生 n= 41 (0.045) 0.10 ( 0.002 ~ 0.72 ) Bq/gCa (0.091) 137 Cs : 0.15 ( 0.0000 ~ 2.1 ) Bq/kg 生 n= 41 (0.022) 0.036 ( 0.00000 ~ 0.37 ) Bq/gK (0.0057) 7 茶 10 府 県 で 年 1~2 回 採 取 した 試 料 Sr : 0.20 ( 0.011 ~ 0.60 ) Bq/kg n=19 (0.23) 0.091 ( 0.018 ~ 0.25 ) Bq/gCa (0.093) 137 Cs : 29 ( 0.40 ~ 240 ) Bq/kg n=19 (0.21) 3.5 ( 0.021 ~ 45 ) Bq/gK (0.012) 8 牛 乳 ( 原 乳 ) 36 都 道 府 県 で 年 1~2 回 採 取 した 試 料 90 Sr : 0.012 ( 0.0000 ~ 0.032 ) Bq/L n=38 (0.016) 0.010 ( 0.0000 ~ 0.029 ) Bq/gCa (0.014) 137 Cs : 0.36 ( 0.0029 ~ 10 ) Bq/L n=38 (0.011) 0.24 ( 0.0019 ~ 6.8 ) Bq/gK (0.0069) 9 粉 乳 日 本 分 析 センターが2 道 県 で 年 1 回 購 入 した 試 料 90 Sr : 0.098 ( 0.0062 ~ 0.29 ) Bq/kg 粉 乳 n=12 (0.091) 0.011 ( 0.0017 ~ 0.024 ) Bq/gCa (0.010) 137 Cs : 0.37 ( 0.066 ~ 1.2 ) Bq/kg 粉 乳 n=12 (0.17) 0.038 ( 0.013 ~ 0.092 ) Bq/gK (0.012) 10 海 水 13 道 府 県 で 年 1~2 回 採 取 した 試 料 90 Sr : 1.3 ( 0.86 ~ 3.0 ) mbq/l n=14 (1.2) 137 Cs : 27 ( 1.3 ~ 200 ) mbq/l n=14 (1.4) 11 海 底 土 13 道 府 県 で 年 1~2 回 採 取 した 試 料 Sr : 0.098 ( 0.000 ~ 0.30 ) Bq/kg 乾 土 n=14 (0.075) 137 Cs :17 ( 0.13 ~ 210 ) Bq/kg 乾 土 n=14 (1.2) 12 海 産 生 物 24 都 道 県 で 年 1~2 回 採 取 した 試 料 ( 魚 類 貝 類 藻 類 ) 魚 類 90 Sr : 0.0082 ( 0.0000 ~ 0.026 ) Bq/kg 生 n= 22 (0.0075) -19-

0.015 ( 0.000 ~ 0.057 ) Bq/gCa (0.015) 137 Cs : 0.42 ( 0.039 ~ 4.8 ) Bq/kg 生 n= 22 (0.088) 0.10 ( 0.011 ~ 1.2 ) Bq/gK (0.023) 貝 類 90 Sr : 0.0085 ( 0.0000 ~ 0.018 ) Bq/kg 生 n= 11 (0.0087) 0.018 ( 0.000 ~ 0.095 ) Bq/gCa (0.026) 137 Cs : 0.098 ( 0.014 ~ 0.41 ) Bq/kg 生 n= 11 (0.016) 0.041 ( 0.0047 ~ 0.15 ) Bq/gK (0.0067) 藻 類 90 Sr : 0.020 ( 0.0085 ~ 0.041 ) Bq/kg 生 n= 12 (0.024) 0.021 ( 0.0053 ~ 0.035 ) Bq/gCa (0.029) 137 Cs : 0.062 ( 0.014 ~ 0.19 ) Bq/kg 生 n= 12 (0.030) 0.0089 ( 0.0014 ~ 0.021 ) Bq/gK (0.0041) 13 淡 水 産 生 物 9 道 府 県 で 年 1 回 採 取 した 試 料 (フナ イワナ アメリカナマズ ニジマス ワ カサギ コイ)の 平 均 値 及 び 最 小 最 大 値 は 次 のとおりである 90 Sr : 0.12 ( 0.0023 ~ 0.46 ) Bq/kg 生 n= 9 (0.12 ) 0.033 ( 0.0067 ~ 0.063 ) Bq/gCa (0.050) 137 Cs : 7.2 ( 0.020 ~ 56 ) Bq/kg 生 n= 9 (0.093) 2.1 ( 0.0057 ~ 17 ) Bq/gK (0.030) 3. 結 語 平 成 23 年 度 の 環 境 試 料 の 90 Srと 137 Csの 濃 度 は 平 成 23 年 3 月 に 発 生 した 東 京 電 力 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 事 故 の 影 響 により 東 北 関 東 地 方 で 採 取 された 試 料 を 中 心 に 多 くの 試 料 で 平 成 22 年 度 と 比 べて 高 い 値 を 示 した 90 Srについては 主 に4~6 月 及 び7~9 月 に 採 取 された 大 気 浮 遊 じん 及 び 主 に 平 成 23 年 4 月 5 月 に 採 取 された 降 下 物 の 一 部 で 高 い 値 が 確 認 された 137 Csについては 大 気 浮 遊 じん 降 下 物 陸 水 土 壌 海 水 海 底 土 及 び 農 畜 水 産 物 の 多 くで 高 い 値 が 確 認 された なお 本 調 査 は 文 部 科 学 省 の 委 託 により 実 施 したものである -20-

環 境 放 射 線 等 モニタリング 調 査 結 果 について 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 川 辺 勝 也 式 見 純 一 荒 木 滋 成 前 山 健 司 1. 緒 言 本 調 査 では 平 成 12 年 度 から 離 島 等 を 含 む 10 ヶ 所 * の 国 設 酸 性 雨 測 定 所 に 空 間 γ 線 線 量 率 測 定 装 置 並 びに 大 気 浮 遊 じんの 全 α 全 β 放 射 能 測 定 装 置 を 設 置 し そのデー タを 気 象 データとともにオンラインで 収 集 し 自 動 モニタリングを 行 っている また 数 ヶ 所 の 測 定 所 周 辺 において 環 境 試 料 ( 大 気 浮 遊 じん 大 気 降 下 物 土 壌 及 び 陸 水 ) を 採 取 し 核 種 分 析 を 行 っている ここでは 自 動 モニタリングによる 測 定 データの 監 視 結 果 ( 平 23 年 1 月 から 12 月 測 定 分 ) 及 び 環 境 試 料 中 の 核 種 分 析 結 果 ( 平 成 22 年 10 月 から 平 成 23 年 9 月 採 取 分 ) について 報 告 する * 利 尻 ( 北 海 道 ) 竜 飛 岬 ( 青 森 県 ) 佐 渡 関 岬 ( 新 潟 県 ) 越 前 岬 ( 福 井 県 ) 隠 岐 蟠 竜 湖 ( 島 根 県 ) 檮 原 ( 高 知 県 ) 対 馬 五 島 ( 長 崎 県 ) 辺 戸 岬 ( 沖 縄 県 ) 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 分 析 測 定 項 目 自 動 モニタリングの 測 定 項 目 を 表 1 に 環 境 試 料 の 種 類 等 を 表 2 に 示 す 空 間 γ 線 線 量 率 の 測 定 には NaI(Tl)シンチレーション 検 出 器 を 用 い 全 α 全 β 放 射 能 濃 度 の 測 定 には ZnS(Ag)シンチレータ(α 線 検 出 用 ) 及 びプラスチックシンチレータ(β 線 検 出 用 )を 用 いた また 環 境 試 料 については Ge 半 導 体 検 出 器 を 用 いたγ 線 スペクトロメトリーとと もに 放 射 化 学 分 析 により 90 Sr 及 び 137 Cs を 分 析 した 表 1 自 動 モニタリングの 測 定 項 目 測 定 項 目 空 間 γ 線 線 量 率 ( 連 続 測 定 ) *1 データ 1 時 間 毎 のデータ 及 び2 分 間 毎 のデータ 大 気 浮 遊 じんの 全 α 全 β 放 射 能 濃 度 *3 集 じん 中 10 分 間 毎 のデータ (6 時 間 毎 の 連 続 集 じん) *2 *4 2ステップ 後 10 分 間 毎 のデータ 気 象 データ( 風 向 風 速 降 水 量 感 雨 ) 1 時 間 毎 のデータ *1 通 常 は1 時 間 毎 のデータについて 監 視 を 行 っており 必 要 に 応 じて2 分 間 毎 のデータについて 監 視 を 行 う *2 通 常 は6 時 間 毎 の 連 続 集 じん( 第 1モード)を 行 うが 対 応 基 準 値 を 超 えると1 時 間 毎 の 連 続 集 じん( 第 2モー ド)に 運 転 が 切 り 替 わる *3 大 気 浮 遊 じんの 集 じん 中 の 測 定 データ *4 集 じん 終 了 後 6 時 間 後 に 測 定 開 始 表 2 環 境 試 料 の 核 種 分 析 試 料 名 対 象 測 定 所 採 取 頻 度 大 気 浮 遊 じん 全 測 定 所 3 ヶ 月 に 1 回 大 気 降 下 物 4 測 定 所 ( 利 尻 佐 渡 関 岬 隠 岐 五 島 ) 3 ヶ 月 に 1 回 土 壌 全 測 定 所 陸 水 ( 平 成 23 年 度 : 利 尻 越 前 岬 蟠 竜 湖 檮 原 ) 3 年 に1 回 -21-

2) 自 動 モニタリングによる 測 定 データの 監 視 結 果 ( 平 成 23 年 1 月 ~12 月 測 定 分 ) 空 間 γ 線 線 量 率 の 結 果 について 対 応 基 準 値 (200nGy/h)を 超 えた 結 果 はなく 変 動 範 囲 は 過 去 3 年 間 の 変 動 範 囲 とほぼ 同 程 度 であった( 図 1) また γ 線 通 過 率 にも 異 常 は 見 られず 人 工 放 射 性 核 種 の 影 響 は 認 められなかった 全 α 全 β 放 射 能 濃 度 の 6 時 間 測 定 値 については 対 応 基 準 値 ( 全 β/ 全 α 比 が 通 常 の 1.5 倍 )を 超 えた 結 果 はなく 人 工 放 射 性 核 種 の 影 響 は 認 められなかった 空 間 γ 線 線 量 率 (ngy/h) 150 125 100 75 50 最 大 値 平 均 値 最 小 値 平 成 23 年 1 月 ~12 月 平 成 20 年 1 月 ~22 年 12 月 25 0 利 尻 竜 飛 岬 佐 渡 関 岬 越 前 岬 隠 岐 蟠 竜 湖 檮 原 対 馬 五 島 辺 戸 岬 図 1 空 間 γ 線 線 量 率 の 変 動 範 囲 3) 環 境 試 料 中 の 核 種 分 析 結 果 ( 平 成 22 年 10 月 ~ 平 成 23 年 9 月 採 取 分 ) γ 線 スペクトロメトリーによる 環 境 試 料 中 の 134 Cs, 137 Cs 濃 度 は 大 気 浮 遊 じんは 134 Cs 濃 度 は ND~0.36 mbq/m 3 137 Cs 濃 度 は ND~0.36 mbq/m 3 であった 大 気 降 下 物 は 134 Cs 濃 度 が ND~5.3 MBq/(km 2 月 ) 137 Cs 濃 度 は 0.022~5.3 MBq/(km 2 月 )であった 土 壌 (0~5cm)は 134 Cs 濃 度 は ND 137 Cs 濃 度 は 1.0~87 Bq/kg 乾 土 土 壌 (5~20cm) は 134 Cs 濃 度 は ND 137 Cs 濃 度 は ND~26 Bq/kg 乾 土 であった 陸 水 は 134 Cs 濃 度 は ND~ 1.3 mbq/l 137 Cs 濃 度 は 0.36~5.8 mbq/l であった また 放 射 化 学 分 析 による 90 Sr 濃 度 は 大 気 浮 遊 じんは ND 大 気 降 下 物 は ND~0.16 MBq/(km 2 月 ) 土 壌 (0~5cm)は 0.41~13 Bq/kg 乾 土 土 壌 (5~20cm)は ND~2.5 Bq/kg 乾 土 陸 水 は 0.61~4.2 mbq/l であった 3. 結 語 自 動 モニタリングによる 測 定 監 視 を 継 続 して 行 った 結 果 人 工 放 射 性 核 種 の 影 響 は 認 められず その 変 動 範 囲 は 過 去 3 年 間 と 同 程 度 であった また 環 境 試 料 について 核 種 分 析 を 行 った 結 果 γ 線 スペクトロメトリーでは 極 めて 微 量 ではあるが 人 工 放 射 性 核 種 の 134 Cs 及 び 137 Cs が 検 出 された また 90 Sr 分 析 の 結 果 は 文 部 科 学 省 が 日 本 全 国 の 水 準 を 把 握 するために 実 施 している 環 境 放 射 能 水 準 調 査 結 果 等 の 過 去 3 年 間 の 結 果 と 同 程 度 であった 今 後 も 引 き 続 き 環 境 放 射 線 等 モニタリングによる 調 査 を 継 続 して 実 施 する 予 定 で ある なお 本 調 査 は 環 境 省 の 委 託 により 実 施 したものである 謝 辞 本 調 査 を 実 施 するにあたり ご 協 力 いただいた 北 海 道 青 森 県 新 潟 県 福 井 県 島 根 県 高 知 県 長 崎 県 沖 縄 県 の 方 々に 感 謝 申 し 上 げます -22-

大 気 中 放 射 性 希 ガス 濃 度 の 全 国 調 査 財 団 法 人 日 本 分 析 センター 新 田 済 真 田 哲 也 磯 貝 啓 介 池 内 嘉 宏 1. 緒 言 本 調 査 は 文 部 科 学 省 の 委 託 により 環 境 放 射 能 水 準 調 査 の 一 環 として 平 成 18 年 度 より 開 始 された 青 森 県 における 大 型 再 処 理 施 設 の 稼 動 に 伴 い 大 気 中 に 放 出 される 85 Kr 及 び 原 子 炉 施 設 から 大 気 中 に 放 出 される 133 Xe の 大 気 中 濃 度 について 調 査 を 実 施 し その 放 射 能 水 準 を 把 握 することを 目 的 とし 85 ている 今 回 は 平 成 23 年 度 に 実 施 した 大 気 中 Kr 及 び 133 Xe 濃 度 の 調 査 結 果 について 報 告 する 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 大 気 試 料 の 採 取 地 点 日 本 全 国 を 緯 度 別 に 5 地 区 (1 北 海 道 地 区 : 札 幌 市 2 東 北 地 区 : 秋 田 市 3 関 東 中 部 近 畿 中 国 地 区 : 千 葉 市 4 四 国 九 州 地 区 : 太 宰 府 市 5 沖 縄 地 区 : 南 城 市 )に 分 割 し 平 成 23 年 度 は 昨 年 度 より 調 査 を 継 続 している 3 地 区 (1 札 幌 市 2 秋 田 市 3 千 葉 市 )において 大 気 の 連 続 捕 集 を 1 週 間 毎 に 実 施 し 大 気 中 のクリプトンを 採 取 した また 原 子 炉 施 設 から 比 較 的 遠 く 離 れた 千 葉 市 に おいて 大 気 中 のキセノンを 採 取 した 大 気 試 料 の 採 取 地 点 を 図 1 に 示 す 85 Kr 観 測 地 点 85 Kr 及 び 133 Xe 観 測 地 点 再 処 理 施 設 東 北 地 区 四 国 九 州 地 区 沖 縄 地 区 北 海 道 地 区 関 東 中 部 近 畿 中 国 地 区 2) 分 析 方 法 図 1 大 気 試 料 の 採 取 地 点 大 気 中 の 希 ガスを 液 体 窒 素 温 度 に 冷 却 した 活 性 炭 に 吸 着 捕 集 し その 活 性 炭 を 加 熱 するこ とにより 希 ガスを 回 収 した 共 存 する 空 気 成 分 ( 窒 素 酸 素 ) 及 び 二 酸 化 炭 素 をガスクロ マトグラフにより 分 離 除 去 し クリプトン 及 びキセノン を 精 製 した 85 Kr のベータ 線 を GM カウンターにより 測 定 し また 全 クリプトン 量 をガスクロマトグ ラフにより 定 量 し 放 射 能 濃 度 ( Bq/m 3 )に 換 算 した 同 様 にして 1 3 3 Xe のベータ 線 を 比 例 計 数 管 により 測 定 し また 全 キセノン 量 をガスクロマトグラフにより 定 量 し 放 射 能 濃 度 (mbq/m 3 )に 換 算 した 3) 調 査 結 果 平 成 18 年 7 月 から 平 成 24 年 2 月 までの 札 幌 市 秋 田 市 千 葉 市 太 宰 府 市 及 び 南 城 市 の 85 大 気 中 Kr 濃 度 (Bq/m 3 )を 図 2 に 示 す 平 成 23 年 3 月 11 日 の 東 日 本 大 震 災 後 に 発 生 し た 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 事 故 により 直 後 の 千 葉 市 の 大 気 において 通 常 のバックグラ ウンドレベル(1.3~1.6Bq/m 3 )と 比 較 して 10 倍 以 上 の 85 Kr 濃 度 が 観 測 された 事 故 後 から 3 週 間 にわたり 高 い 85 Kr 濃 度 が 観 測 され その 後 バックグラウンドレベルで 推 移 した 一 方 他 の 調 査 地 点 である 札 幌 市 及 び 秋 田 市 については 有 意 な 85 Kr 濃 度 の 上 昇 は 観 測 されず 調 査 期 間 全 体 にわたり バックグラウンドレベルで 推 移 した 133 平 成 20 年 11 月 から 平 成 24 年 2 月 までの 千 葉 市 における 大 気 中 Xe 濃 度 ( mbq/m 3 )を 図 3 に 示 す 85 Kr 濃 度 と 同 様 に 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 事 故 後 に 133 Xe 濃 度 として 1.3 10 6 mbq/m 3 という 結 果 を 得 た 85 Kr の 場 合 と 異 なり 事 故 後 3 ヶ 月 程 度 の 間 事 故 以 前 の 濃 度 範 囲 と 比 較 して 有 意 に 高 い 濃 度 で 推 移 した その 後 の 133 Xe 濃 度 は バックグ -23-

ラウンド(1~100 mbq/m 3 ; Auer(2004), Saey(2007))まで 減 少 し 不 検 出 ~4.6mBq/m 3 の 範 囲 内 で 推 移 した なお 事 故 後 の 大 気 には 133 Xe 以 外 の 放 射 性 キセノン( 131m Xe( 半 減 期 11.84 日 ), 133m Xe( 半 減 期 2.19 日 ), 135 Xe( 半 減 期 9.14 時 間 ))も 存 在 していたと 考 えられるが 本 調 査 で 得 られた 放 射 性 キセノン 濃 度 は 全 て 133 Xe として 計 算 した 結 果 で ある 3. 結 語 平 成 23 年 度 の 調 査 結 果 より 東 日 本 大 震 災 後 の 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 事 故 の 影 響 と 推 測 される 85 Kr 及 び 133 Xe 濃 度 の 上 昇 を 観 測 した 85 Kr は 事 故 後 3 週 間 程 度 133 Xe は 事 故 後 3 ヶ 月 程 度 の 間 有 意 に 高 い 濃 度 を 観 測 した その 後 は バックグラウンドレベル で 推 移 した 謝 辞 本 調 査 の 実 施 にあたり 希 ガス 捕 集 装 置 の 設 置 及 び 採 取 作 業 には 北 海 道 立 衛 生 研 究 所 秋 田 県 健 康 環 境 センターの 方 々に 多 大 なるご 協 力 を 頂 きました この 場 をお 借 りして 感 謝 申 し 上 げます 20 20 20 採 取 地 点 : 札 幌 市 ( 北 海 道 ) 採 取 地 点 : 秋 田 市 ( 秋 田 県 ) 採 取 地 点 : 千 葉 市 ( 千 葉 県 ) 千 葉 1 85 Kr 濃 度 (Bq/m 3 ) 15 10 5 千 葉 1 85 Kr 濃 度 (Bq/m 3 ) 15 10 5 千 葉 1 85 Kr 濃 度 (Bq/m 3 ) 15 10 5 福 島 第 一 原 発 事 故 0 20 H19 H20 H21 H22 H23 H24 0 H19 H20 H21 H22 H23 H24 0 H19 H20 H21 H22 H23 H24 20 採 取 地 点 : 太 宰 府 市 ( 福 岡 県 ) 採 取 地 点 : 南 城 市 ( 沖 縄 県 ) 千 葉 1 85 Kr 濃 度 (Bq/m 3 ) 15 10 5 千 葉 1 85 Kr 濃 度 (Bq/m 3 ) 15 10 5 0 0 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H19 H20 H21 H22 H23 H24 図 2 大 気 中 85 Kr 濃 度 調 査 結 果 10 7 10 6 採 取 地 点 : 千 葉 市 ( 千 葉 県 ) 133 Xe 濃 度 (mbq/m 3 ) 10 5 10 4 10 3 10 2 10 1 カ ート カウンターの 不 具 合 の 影 響 福 島 第 一 原 発 事 故 10 0 10-1 H21 H22 H23 図 3 大 気 中 133 Xe 濃 度 調 査 結 果 H24-24-

月 間 降 水 中 のトリチウム 濃 度 調 査 財 団 法 人 日 本 分 析 センター むつ 分 析 科 学 研 究 所 石 川 清 正 真 田 哲 也 磯 貝 啓 介 1. 緒 言 本 調 査 は 環 境 放 射 能 水 準 調 査 の 一 環 として 平 成 19 年 度 から 開 始 した 千 葉 市 で 採 取 する 月 間 降 水 に 含 まれるトリチウム 濃 度 を 把 握 し 原 子 力 発 電 所 再 処 理 施 設 等 周 辺 の 放 射 線 監 視 結 果 との 比 較 検 討 に 資 することを 目 的 としている 今 回 は 平 成 23 年 度 に 実 施 した 調 査 結 果 を 報 告 する 2. 調 査 研 究 の 概 要 (1) 試 料 の 採 取 ( 財 ) 日 本 分 析 センター 本 部 内 の 建 屋 屋 上 ( 地 上 3.5m)に 設 置 した 降 水 採 取 装 置 ( 直 径 200mm)を 用 い 文 部 科 学 省 放 射 能 測 定 法 シリーズ 16 環 境 試 料 採 取 法 ( 昭 和 58 年 )に 準 じて 平 成 23 年 2 月 から 平 成 24 年 1 月 までの 1 年 間 に 採 取 した 採 取 期 間 は 1 ヶ 月 毎 とした (2) 分 析 の 実 施 トリチウムの 分 析 は 文 部 科 学 省 放 射 能 測 定 法 シリーズ 9 トリチウム 分 析 法 ( 平 成 14 年 改 訂 )の 電 解 濃 縮 法 に 準 じて 実 施 した (3) 放 射 能 測 定 測 定 試 料 を 低 バックグラウンド 液 体 シンチレーションカウンタ(LSC)で 原 則 として 500 分 間 (50 分 10 回 ) 測 定 した (4) 分 析 結 果 月 間 降 水 中 のトリチウムの 分 析 結 果 (トリチウム 濃 度 及 び 降 下 量 )を 表 1 及 び 図 1に 示 す この 期 間 におけるトリチウム 濃 度 は 0.20~1.5Bq/L( 平 均 値 0.47Bq/L)であっ た また 降 下 量 ( 単 位 面 積 あたりのトリチウム 濃 度 )は 16~110Bq/m( 2 平 均 値 46Bq/m 2 ) であり 日 本 分 析 センターが 本 調 査 を 始 めた 平 成 19 年 度 以 降 の 結 果 と 比 較 すると いず れも 平 成 23 年 3 月 分 の 試 料 がその 範 囲 を 超 えていた これは 他 の 調 査 等 でも 報 告 されているように 平 成 23 年 3 月 に 発 生 した 東 京 電 力 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 の 影 響 によるものと 考 えられる 月 間 降 水 中 のトリチウム 濃 度 及 び 降 下 量 を 図 1 に 示 す :たとえば 1) 静 岡 県 環 境 放 射 能 測 定 技 術 会 浜 岡 原 子 力 発 電 所 周 辺 環 境 放 射 能 調 査 結 果 第 150 号 ( 平 成 23 年 9 月 ) 2) 日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 東 海 研 究 開 発 センター 核 燃 料 サイクル 工 学 研 究 所 ( 平 成 23 年 12 月 改 訂 ) 日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 再 処 理 施 設 周 辺 の 環 境 放 射 線 モニタリ ング 結 果 に 係 る 補 足 説 明 資 料 ( 平 成 22 年 度 ) 平 成 23 年 11 月 -25-

3. 結 語 千 葉 市 における 月 間 降 水 中 のトリチウム 濃 度 を 測 定 し その 降 下 量 も 把 握 した その 結 果 東 京 電 力 福 島 第 一 事 故 の 影 響 によるものと 考 えられる 値 が 得 られた 今 後 も 調 査 を 継 続 し 原 子 力 発 電 所 再 処 理 施 設 等 周 辺 の 放 射 線 監 視 結 果 を 評 価 する 際 のバックグ ラウンドデータとして 蓄 積 することが 必 要 である なお 本 調 査 は 文 部 科 学 省 の 委 託 により 実 施 したものである 表 1 千 葉 市 における 月 間 降 水 中 のトリチウム 濃 度 及 び 降 下 量 ( 平 成 23 年 度 ) 採 取 した 月 間 降 水 採 水 期 間 注 1) 降 水 の 量 放 射 能 濃 度 降 下 量 (L) Bq/L Bq/m 2 平 成 23 年 23. 2. 1 2 月 分 ~23. 3. 1 4.17 0.35 ± 0.023 46 ± 3.1 平 成 23 年 23. 3. 1 3 月 分 ~23. 4. 1 2.33 1.5 ± 0.03 110 ± 2 平 成 23 年 23. 4. 1 4 月 分 ~23. 5.2 1.54 0.60 ± 0.025 29 ± 1.2 平 成 23 年 23. 5.2 5 月 分 ~23. 6. 1 7.05 0.47 ± 0.024 110 ± 5 平 成 23 年 23. 6. 1 6 月 分 ~23. 7. 1 4.15 0.40 ± 0.023 53 ± 3.0 平 成 23 年 23. 7. 1 7 月 分 ~23. 8. 1 1.00 0.50 ± 0.024 16 ± 0.8 平 成 23 年 23. 8. 1 8 月 分 ~23. 9. 1 4.58 0.38 ± 0.022 55 ± 3.2 平 成 23 年 23. 9. 1 9 月 分 ~23.10. 3 5.14 0.20 ± 0.021 33 ± 3.4 平 成 23 年 23.10. 3 10 月 分 ~23.11. 1 5.06 0.24 ± 0.021 39 ± 3.4 平 成 23 年 23.11. 1 11 月 分 ~23.12. 1 2.72 0.23 ± 0.020 20 ± 1.7 平 成 23 年 23.12. 1 12 月 分 ~24. 1. 4 1.70 0.34 ± 0.021 18 ± 1.1 平 成 24 年 24. 1. 4 1 月 分 ~24. 2. 1 1.68 0.38 ± 0.022 20 ± 1.2 注 1) 受 水 面 積 314cm 2 注 2) 誤 差 は 計 数 誤 差 のみを 示 した 800 9 700 降 下 量 トリチウム 濃 度 8 600 7 降 下 量 (Bq/m 2 ) 500 400 300 NIRS JCAC 6 5 4 3 トリチウム 濃 度 (Bq/L) 200 2 100 1 0 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 採 取 年 図 1 月 間 降 水 中 のトリチウム 濃 度 及 び 降 下 量 (2007 年 3 月 までのデータは 放 医 研 の 調 査 結 果 をデータベースより 引 用 ) -26-0

土 壌 中 プルトニウム 濃 度 の 全 国 調 査 財 団 法 人 日 本 分 析 センター むつ 分 析 科 学 研 究 所 阿 部 剛 佐 野 友 一 真 田 哲 也 磯 貝 啓 介 1. 緒 言 本 調 査 は 環 境 放 射 能 水 準 調 査 の 一 環 として 文 部 科 学 省 の 委 託 により 平 成 12 年 度 から 実 施 しており 核 爆 発 実 験 等 に 起 因 する 放 射 性 降 下 物 (フォ ールアウト)に 伴 う 土 壌 中 プルトニウムの 放 射 能 濃 度 を 把 握 することを 目 的 としている プルトニウムの 調 査 に 用 いる 土 壌 は 90 Sr 及 び 137 Cs の 調 査 と 同 一 試 料 であるため 前 年 度 に 採 取 された 土 壌 について 調 査 を 行 っている したがって 今 回 は 平 成 22 年 度 に 日 本 各 地 で 採 取 された 土 壌 の 調 査 結 果 に ついて 報 告 する 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 概 要 土 壌 試 料 は 47 都 道 府 県 の 各 衛 生 研 究 所 等 が 採 取 し 乾 燥 細 土 とした 後 に 日 本 分 析 センターに 送 付 された 47 都 道 府 県 各 1 地 点 ( 青 森 県 は 2 地 点 )で 採 取 された 表 層 (0~5cm) 及 び 下 層 (5~20cm)の 土 壌 合 計 96 試 料 について 文 部 科 学 省 放 射 能 測 定 法 シリ ーズ 12 プルトニウム 分 析 法 ( 平 成 2 年 改 訂 )に 準 じて 分 析 した 分 析 法 の 概 略 は 以 下 の 通 りである 試 料 50g を 分 取 し 242 Pu トレーサーを 添 加 後 硝 酸 を 加 えてプルトニウ ムを 加 熱 抽 出 した 陰 イオン 交 換 樹 脂 カラムを 用 いてプルトニウムを 分 離 精 製 後 ステンレス 板 に 電 着 し α 線 スペクトロメトリーによりプルトニウ ム( 238 Pu 239+240 Pu)を 定 量 した 2) 調 査 結 果 土 壌 中 のプルトニウムの 分 析 結 果 ( 平 均 値 最 小 値 及 び 最 大 値 )を 平 成 12 年 度 から 21 年 度 までに 採 取 された 土 壌 の 分 析 結 果 と 合 わせて 表 1に 示 す 平 成 22 年 度 における 採 取 深 さ 0~5cm の 各 地 点 の 238 Pu 濃 度 は ND( 検 出 されず)~0.10Bq/kg 乾 土 239+240 Pu 濃 度 は ND~3.1Bq/kg 乾 土 であり 採 取 深 さ 5~20cm の 238 Pu 濃 度 は ND( 検 出 されず)~0.042Bq/kg 乾 土 239+240 Pu 濃 度 は ND~1.3Bq/kg 乾 土 の 範 囲 であった いずれも 平 成 12 年 度 から 21 年 度 の 調 査 結 果 と 差 は 見 られなかった 採 取 地 点 毎 の 239+240 Pu 濃 度 を 図 1に プルトニウム 同 位 体 ( 238 Pu 239+240 Pu) の 放 射 能 比 を 図 2に 示 す 例 年 同 様 数 地 点 ( 岩 手 県 茨 城 県 長 野 県 熊 本 県 大 分 県 )の 239+240 Pu 濃 度 がやや 高 い 値 を 示 したが これらのプルト ニウム 同 位 体 の 放 射 能 比 ( 238 Pu/ 239+ 240 Pu)については 他 と 同 様 の 値 であっ た -27-

3. 結 語 平 成 22 年 度 に 採 取 された 土 壌 中 のプルトニウム 濃 度 は 平 均 値 及 び 範 囲 と もに 平 成 12 年 度 から 平 成 21 年 度 までの 結 果 と 同 程 度 の 値 であった また 従 来 から 見 られていたように 長 崎 に 投 下 されたプルトニウム 型 原 子 爆 弾 の 影 響 を 含 むと 推 定 された 熊 本 県 の 値 を 除 いたプルトニウム 同 位 体 の 放 射 能 比 ( 238 Pu/ 239+240 Pu)は 約 0.021 であり UNSCEAR1982 報 告 書 による 北 半 球 におけ るグローバルフォールアウトの 値 (0.026)を 238 Pu について 減 衰 補 正 した 値 (0.021)と 同 程 度 であることを 確 認 した 表 1 土 壌 中 238 Pu 及 び 239+240 Pu 放 射 能 濃 度 単 位 :Bq/kg 乾 土 238 Pu 239+240 Pu 深 さ (cm) 0-5 5-20 0-5 5-20 平 均 値 最 小 値 ~ 最 大 値 平 均 値 最 小 値 ~ 最 大 値 平 均 値 最 小 値 ~ 最 大 値 平 均 値 最 小 値 ~ 最 大 値 平 成 22 年 度 採 取 分 0.012 ND~0.10 0.0071 ND~0.042 0.44 ND~3.1 0.25 ND~1.3 平 成 12 年 度 ~21 年 度 採 取 分 0.014 ND~0.16 0.0058 ND~0.042 0.48 ND~5.1 0.22 ND~1.2 3.5 3.0 0~5cm 239+240 Pu 濃 度 (Bq/kg 乾 土 ) 2.5 2.0 1.5 1.0 5~20cm (NDは 白 抜 き) 0.5 0.0 北 青 青 岩 宮 秋 山 福 茨 栃 群 埼 千 東 神 新 富 石 福 山 長 岐 静 愛 三 滋 京 大 兵 奈 和 鳥 島 岡 広 山 徳 香 愛 高 福 佐 長 熊 大 宮 鹿 沖 海 森 森 手 城 田 形 島 城 木 馬 玉 葉 京 奈 潟 山 川 井 梨 野 阜 岡 知 重 賀 都 阪 庫 良 歌 取 根 山 島 口 島 川 媛 知 岡 賀 崎 本 分 崎 児 縄 道 1 2 川 山 島 都 道 府 県 図 1 土 壌 中 の 239+240 Pu 濃 度 238 Pu 濃 度 (Bq/kg 乾 土 ) 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 y = 0.0205x + 0.0053 R 2 = 0.7714 熊 本 県 ( 白 抜 き)を 除 く 0.02 0.00 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 239+240 Pu 濃 度 (Bq/kg 乾 土 ) 図 2 土 壌 中 の 238 Pu と 239+240 Pu 放 射 能 比 -28-

Ⅱ. 環 境 に 関 する 調 査 研 究 ( 海 洋 ) -29-

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人 工 放 射 性 核 種 の 海 面 への 沈 着 とその 後 の 継 続 的 な 監 視 および 極 低 レベル 測 定 技 術 を 応 用 した 海 洋 内 部 での 広 域 拡 散 の 実 態 把 握 気 象 研 究 所 青 山 道 夫 五 十 嵐 康 人 1. 緒 言 海 洋 環 境 における 人 工 放 射 性 核 種 は 1945 年 以 前 には 全 く 存 在 しなかったものである これらの 人 工 放 射 性 核 種 が 数 十 年 という 期 間 に 海 洋 環 境 においてどのように 振 る 舞 う かについて 気 象 研 究 所 では 約 60 年 間 の 長 期 にわたり 研 究 を 実 施 してきた 今 回 は 放 射 能 調 査 研 究 費 大 気 を 通 じた 人 工 放 射 性 核 種 の 陸 圏 水 圏 への 沈 着 およびその 後 の 移 行 過 程 の 解 明 研 究 のサブ 課 題 2 において 平 成 23 年 度 に 行 った 人 工 放 射 性 核 種 の 海 面 への 沈 着 とその 後 の 継 続 的 な 監 視 および 極 低 レベル 測 定 技 術 を 応 用 した 海 洋 内 部 での 広 域 拡 散 の 実 態 把 握 について 研 究 の 概 要 を 報 告 する 過 去 の 研 究 成 果 は 環 境 における 人 工 放 射 能 の 研 究 2011 の 研 究 成 果 概 要 と 全 論 文 リスト および 気 象 研 究 所 ホームページを 参 照 されたい 2. 調 査 研 究 の 概 要 2011 年 4 月 から2012 年 3 月 にかけて 東 電 福 島 第 一 原 発 事 故 による 放 射 性 セシウム 同 位 体 ( 134 Csと 137 Cs)の 広 が りを 知 るため 北 太 平 洋 全 域 で 観 測 を 実 施 した( 図 1) コンテナ 船 や 自 動 車 輸 送 船 のような 篤 志 船 に 依 頼 した 場 合 は 表 面 水 のみの 採 取 であり 試 料 量 は 通 常 2リットルとしている 観 測 船 / 図 1 試 料 採 取 地 点 研 究 船 の 場 合 は 海 洋 内 部 への 広 がり を 把 握 するために 鉛 直 方 向 にも 採 取 し 試 料 の 量 は10-20リットルである 3. 結 語 134 Cs の 半 減 期 は 2 年 であり 過 去 の 大 気 圏 核 実 験 や 原 子 力 事 故 等 で 海 洋 に 放 出 された 134 Cs 濃 度 は 東 電 福 島 第 一 原 発 事 故 以 前 では 検 出 限 界 以 下 となっていたこ と および 検 出 された 134 Cs と 137 Cs の 放 射 能 比 はほぼ 1( 図 2)であり 東 電 福 島 第 一 原 発 事 故 サイト 近 傍 での 134 Cs と 137 Cs の 放 射 能 比 は 0.99 ± 0.03 であったことか ら 検 出 された 134 Cs は 東 電 福 島 第 一 原 発 事 故 由 来 であると 判 断 した 134 Cs/ 137 Cs activity ratio 134 Cs activity Bq/m 3 図 2 134 Cs と 137 Cs の 放 射 能 比 -31-

2011 年 4-6 月 に 観 測 された 表 層 の 134 Cs 濃 度 の 分 布 を 図 3 に 示 す 東 電 福 島 第 一 原 発 から 大 気 に 放 出 され た 放 射 性 セシウムが 日 本 から 主 に 東 や 北 東 方 向 へ 大 気 経 由 で 輸 送 された 結 果 を 反 映 し 西 部 北 太 平 洋 高 緯 度 域 で 濃 度 が 高 い また 日 本 海 側 や 日 本 の 北 方 海 域 および 南 方 海 域 では 濃 度 が 低 いことがわかる また 北 太 平 洋 の ところどころに 大 気 経 由 で 輸 送 され 図 3 2011 年 4-6 月 の 表 層 の 134 Cs 濃 度 たものが 局 所 的 に 降 下 してできたと 単 位 Bq/m 3 考 えられる 周 辺 より 高 濃 度 となっている 領 域 が 北 緯 40 度 と 北 緯 50 度 の 間 日 付 変 更 線 付 近 や 西 経 140 度 から 150 度 付 近 に 見 える これらの 周 辺 より 高 濃 度 となっている 領 域 は 大 気 中 を 輸 送 されている 間 に 降 水 に 伴 って 局 地 的 に 降 下 した 結 果 と 判 断 できる また 直 接 漏 洩 の 結 果 により 東 電 福 島 第 一 原 発 事 故 サイト 近 傍 での 濃 度 上 昇 が 著 しい ことが 分 かる 表 層 での 137 Cs の 濃 度 が 10 Bq/m 3 を 超 えていることを 指 標 として 東 電 福 島 第 一 原 発 事 故 起 源 の 放 射 性 セシウム 同 位 体 の 東 への 広 がりを 見 てみると 表 層 での 137 Cs の 濃 度 が 10 Bq/m 3 を 越 える 領 域 は 2011 年 6 月 には 東 経 160 度 までしか 到 達 してい なかったが その 後 海 洋 表 層 での 輸 送 により 東 に 移 動 し 2011 年 10-12 月 には 東 経 170 度 程 度 まで 広 がっていることが 分 かった さらにその 東 側 の 東 経 170 度 から 西 経 170 度 の 領 域 でも わずかな 表 層 137 Cs 濃 度 の 上 昇 が 見 出 されている 海 洋 内 部 への 輸 送 については 2011 年 10 月 の 段 階 の 東 経 165 度 線 上 北 緯 40 度 では 134 Cs の 海 水 中 蓄 積 量 は 2710 ± 210 Bq/m 2 であり そのうち 80%は 200m 以 浅 に 存 在 し ていた しかし 2012 年 6 月 のほぼ 同 じ 地 点 では 134 Cs の 海 水 中 蓄 積 量 は 2350 ± 190 Bq/m 2 であり そのうち 20%しか 200 m 以 浅 に 存 在 していなかった これは 冬 季 のモー ド 水 形 成 によって 深 さ 300 m に 極 大 をもつ 分 布 へと 変 化 したためである -32-

海 水 海 底 土 の 放 射 能 調 査 海 上 保 安 庁 海 洋 情 報 部 環 境 調 査 課 茂 木 由 夫 片 桐 学 勝 呂 文 弘 大 友 裕 之 植 田 弘 1. 緒 言 本 調 査 は 日 本 近 海 における 放 射 性 核 種 の 濃 度 分 布 及 びその 経 年 変 化 を 把 握 することを 目 的 とし 海 水 については 1959 年 より 海 底 土 については 1973 年 より 調 査 を 開 始 し 以 降 毎 年 継 続 して 実 施 している 今 回 は 2010 年 の 調 査 結 果 について 報 告 する 2. 調 査 の 概 要 試 料 の 採 取 は 海 上 保 安 庁 海 洋 情 報 部 及 び 管 区 海 上 保 安 本 部 が 分 担 し て 実 施 した 採 取 試 料 の 分 析 計 測 は 海 洋 情 報 部 環 境 調 査 課 海 洋 汚 染 調 査 室 において 実 施 した (1) 試 料 の 採 取 図 1 のとおり 海 水 試 料 として 沿 岸 域 及 び 日 本 近 海 の 各 海 域 で 表 面 海 水 を 海 底 土 試 料 として 沿 岸 域 で 表 層 海 底 土 を 採 取 した (2) 分 析 項 目 海 水 については 90 Sr, 137 Cs, 60 Co, 106 Ru の 4 核 種 海 底 土 については N 45 40 35 30 凡 例 : 海 水 : 海 底 土 90 Sr, 137 Cs, 60 Co の 3 核 種 である (3) 測 定 結 果 海 水 中 における 90 Sr, 137 Cs の 放 射 能 濃 度 の 経 年 変 化 を 図 2 に 海 25 125 130 135 140 145 E 図 1 海 水 海 底 土 の 試 料 採 取 点 底 土 中 における 90 Sr, 137 Cs の 放 射 能 濃 度 の 経 年 変 化 を 図 3 に 示 す 海 水 中 の 60 Co, 106 Ru 及 び 海 底 土 中 の 60 Co は 検 出 下 限 値 未 満 であった 3. 結 語 日 本 近 海 における 海 水 及 び 海 底 土 の 放 射 能 濃 度 は 各 核 種 とも 長 期 的 にみて 減 少 傾 向 に ある 今 後 も 継 続 して 海 水 及 び 海 底 土 における 放 射 性 核 種 の 濃 度 分 布 及 び 経 年 変 化 を 監 視 する -33-

10.0 放 射 能 濃 度 (mbq/l) 8.0 6.0 4.0 90 Sr 最 大 平 均 最 小 2.0 0.0 25 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 試 料 採 取 年 137 Cs 放 射 能 濃 度 (mbq/l) 20 15 10 最 大 平 均 最 小 5 0 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 試 料 採 取 年 1.0 図 2 海 水 中 の 90 Sr 137 Cs の 経 年 変 化 放 射 能 濃 度 (Bq/kg- 乾 土 ) 0.8 0.6 0.4 0.2 90 Sr 最 大 平 均 最 小 0.0 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 試 料 採 取 年 10.0 放 射 能 濃 度 (Bq/kg- 乾 土 ) 8.0 6.0 4.0 2.0 137 Cs 最 大 平 均 最 小 0.0 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 試 料 採 取 年 図 3 海 底 土 中 の 90 Sr 137 Cs の 経 年 変 化 -34-

深 海 の 海 水 海 底 土 の 放 射 能 調 査 海 上 保 安 庁 海 洋 情 報 部 環 境 調 査 課 茂 木 由 夫 片 桐 学 勝 呂 文 弘 大 友 裕 之 植 田 弘 1. 緒 言 本 調 査 は 1993 年 に 日 本 海 オホーツク 海 において 旧 ソ 連 ロシアが 放 射 性 廃 棄 物 を 金 属 製 コンテナに 詰 めて 海 洋 放 棄 していたことが 明 らかになったことから 放 射 性 物 質 の 海 洋 環 境 への 影 響 を 把 握 することを 目 的 とし 1993 年 より 日 本 海 等 の 深 海 において 海 水 海 底 土 の 放 射 能 調 査 を 実 施 している 今 回 は 2010 年 の 調 査 結 果 について 報 告 する 2. 調 査 の 概 要 試 料 の 採 取 は 海 上 保 安 庁 海 洋 情 報 部 所 属 の 測 量 船 により 実 施 した 採 取 試 料 の 分 析 計 測 は 海 洋 情 報 部 環 境 調 査 課 海 洋 汚 染 調 査 室 において 実 施 した N (1) 試 料 の 採 取 図 1に 示 す 測 点 において 試 45 : 調 査 点 NO-9 NO-10 料 採 取 を 行 った 海 水 試 料 につ NO-8 いては 100L 型 採 水 器 を 用 いて 実 施 し 採 取 深 度 は 0m 以 下 1000 NO-6 NO-7 m 間 隔 及 び 海 底 上 50mの 各 層 で 100L 採 取 した 海 底 土 試 料 については スミ 40 NO-4 NO-3 (St-6) NO-2 (St-3) St-1 St-4 NO-5 TR-1 ス マッキンタイヤ 改 良 型 採 泥 器 を 用 いて 実 施 し 表 層 海 底 土 2 cmを 分 取 した 35 NO-1 (St-2) St-5 (2) 分 析 項 目 海 水 海 底 土 とも 90 Sr, 137 Cs, 60 Co, 239+240 Pu の4 核 種 である (3) 測 定 結 果 海 水 及 び 海 底 土 の 調 査 結 果 を それぞれ 表 1,2 に 示 す 海 水 及 び 海 底 土 中 の 60 Co は 検 出 下 限 値 未 満 であった 30 127 132 137 142 147 E 図 1 深 海 の 海 水 海 底 土 の 試 料 採 取 点 3. 結 語 今 回 までの 測 定 結 果 については 旧 ソ 連 ロシアによる 海 洋 投 棄 された 放 射 性 廃 棄 物 に よる 海 洋 環 境 への 影 響 は 認 められなかった 今 後 も 同 規 模 の 調 査 を 毎 年 1 回 継 続 し 日 本 海 オホーツク 海 の 放 射 性 核 種 を 調 査 測 定 し その 濃 度 分 布 及 び 経 年 変 化 を 監 視 する -35-

表 1 深 海 の 放 射 能 調 査 結 果 (2010 年 ) - 海 水 測 点 番 号 採 取 位 置 採 取 年 月 日 緯 度 (N) 経 度 (E) NO-1 (St-2) 36-35.0 NO-2 (St-3) NO-3 (St-6) NO-4 39-59.9 NO-5 39-59.7 NO-6 41-00.4 136-00.1 2010.6.7 NO-7 41-26.7 137-25.9 2010.6.8 NO-8 131-29.9 2010.9.9 134-34.2 2010.6.6 136-19.6 2010.6.4 42-59.9 137-30.2 2010.6.3 NO-9 44-20.0 140-50.1 2010.4.22 NO-10 44-50.1 143-59.7 2010.4.23 St-1 39-00.0 135-18.1 St-4 St-5 TR-1 水 深 (m) 1,973 38-00.0 132-00.0 2010.9.10 1,706 38-43.0 132-55.9 2010.9.11 38-00.0 36-57.0 2,852 1,326 1,430 3,387 3,666 3,697 258 188 2010.9.12 1,920 135-00.1 2010.9.13 2,980 133-50.0 2010.9.14 1,595 39-52.5 143-35.1 2010.6.9 2,344 採 取 深 放 射 能 濃 度 (mbq/l) 度 (m) Sr Cs Co 239+240 Pu 0 1.7 ± 0.03 1.3 ± 0.05 * 0.004 ± 0.001 998 1.0 ± 0.03 1.1 ± 0.04 * 0.040 ± 0.002 1,900 0.31 ± 0.02 0.33 ± 0.03 * 0.030 ± 0.002 0 1.2 ± 0.03 1.4 ± 0.04 * 0.003 ± 0.001 994 0.91 ± 0.03 0.99 ± 0.06 * 0.042 ± 0.003 1,629 0.58 ± 0.03 0.54 ± 0.05 * 0.043 ± 0.003 0 1.1 ± 0.03 1.4 ± 0.06 * 0.003 ± 0.001 995 1.0 ± 0.03 1.1 ± 0.07 * 0.047 ± 0.003 1,990 0.45 ± 0.02 0.45 ± 0.03 * 0.033 ± 0.002 2,773 0.30 ± 0.02 0.27 ± 0.03 * 0.033 ± 0.002 0 0.77 ± 0.02 1.7 ± 0.05 * 0.006 ± 0.001 977 0.54 ± 0.02 0.96 ± 0.04 * 0.032 ± 0.003 1,209 0.15 ± 0.02 0.75 ± 0.04 * 0.032 ± 0.002 0 1.0 ± 0.02 1.5 ± 0.05 * 0.005 ± 0.001 977 0.67 ± 0.02 0.95 ± 0.04 * 0.033 ± 0.003 1,348 0.48 ± 0.02 0.66 ± 0.03 * 0.033 ± 0.002 0 1.1 ± 0.03 1.4 ± 0.04 * 0.006 ± 0.001 980 0.85 ± 0.02 1.1 ± 0.04 * 0.032 ± 0.003 1,955 0.33 ± 0.02 0.42 ± 0.03 * 0.005 ± 0.001 3,284 0.19 ± 0.01 0.28 ± 0.03 * 0.033 ± 0.002 0 1.0 ± 0.02 1.4 ± 0.04 * 0.034 ± 0.003 983 0.77 ± 0.02 1.0 ± 0.04 * 0.033 ± 0.003 1,962 0.65 ± 0.02 0.49 ± 0.03 * 0.035 ± 0.003 2,937 0.66 ± 0.02 0.27 ± 0.03 * 0.028 ± 0.002 3,574 0.21 ± 0.01 0.26 ± 0.03 * 0.025 ± 0.002 2 0.94 ± 0.02 1.5 ± 0.05 * 0.008 ± 0.001 983 0.68 ± 0.02 1.0 ± 0.04 * 0.034 ± 0.003 1,935 0.28 ± 0.02 0.48 ± 0.03 * 0.031 ± 0.002 2,913 0.27 ± 0.02 0.25 ± 0.03 * 0.031 ± 0.002 3,601 0.22 ± 0.01 0.25 ± 0.03 * 0.029 ± 0.002 0 0.85 ± 0.02 1.4 ± 0.04 * 0.006 ± 0.001 201 1.3 ± 0.03 1.5 ± 0.04 * 0.014 ± 0.002 2 0.67 ± 0.03 0.96 ± 0.04 * 0.005 ± 0.001 134 0.76 ± 0.04 0.89 ± 0.04 * 0.006 ± 0.001 0 1.1 ± 0.02 1.5 ± 0.04 * 0.004 ± 0.001 995 1.1 ± 0.03 1.0 ± 0.04 * 0.037 ± 0.002 1,841 0.27 ± 0.01 0.29 ± 0.03 * 0.033 ± 0.002 0 0.90 ± 0.02 1.4 ± 0.04 * 0.003 ± 0.001 996 0.54 ± 0.02 0.45 ± 0.03 * 0.038 ± 0.002 1,990 0.35 ± 0.02 0.89 ± 0.04 * 0.035 ± 0.002 2,896 0.30 ± 0.02 0.34 ± 0.03 * 0.039 ± 0.003 0 1.1 ± 0.03 1.3 ± 0.04 * 0.004 ± 0.001 995 0.82 ± 0.03 0.79 ± 0.04 * 0.039 ± 0.003 1,516 0.46 ± 0.03 0.48 ± 0.03 * 0.040 ± 0.002 0 0.85 ± 0.02 1.1 ± 0.04 * 0.007 ± 0.001 971 0.16 ± 0.02 0.13 ± 0.03 * 0.022 ± 0.002 2,223 0.07 ± 0.02 * * 0.015 ± 0.002 測 定 値 が 検 出 下 限 値 未 満 の 場 合 は *を 付 記 した 測 点 番 号 表 2 深 海 の 放 射 能 調 査 結 果 (2010 年 ) - 海 底 土 採 取 位 置 水 深 採 取 年 月 日 緯 度 (N) 経 度 (E) (m) ( 供 試 量 : 90 Sr, 60 Co;300g 137 Cs;100g 239+240 Pu;50g) 放 射 能 濃 度 (Bq/kg- 乾 土 ) 90 Sr 137 Cs 60 Co 239+240 Pu NO-1(St-2) 36-35.0 131-29.9 2010.09.09 1,978 0.50 ± 0.016 4.8 ± 0.09 * 1.71 ± 0.08 NO-2(St-3) 38-00.0 132-00.0 2010.09.10 1,693 0.29 ± 0.008 2.2 ± 0.07 * 0.87 ± 0.04 NO-3(St-6) 38-43.0 132-55.9 2010.09.11 2,852 0.045 ± 0.006 * * 0.015 ± 0.004 NO-4 39-59.9 134-24.8 2010.06.06 1,324 0.26 ± 0.007 2.8 ± 0.07 * 0.69 ± 0.05 NO-5 39-59.9 136-00.0 2010.06.07 1,433 0.31 ± 0.008 2.5 ± 0.07 * 0.54 ± 0.04 NO-6 41-00.4 136-19.6 2010.06.04 3,389 0.40 ± 0.010 2.0 ± 0.06 * 0.41 ± 0.03 NO-7 41-26.5 137-25.8 2010.06.08 3,664 0.31 ± 0.008 0.18 ± 0.04 * 0.036 ± 0.005 NO-8 43-00.5 137-30.3 2010.06.03 3,695 0.026 ± 0.005 * * 0.018 ± 0.003 NO-9 44-20.0 140-50.1 2010.04.22 256 0.33 ± 0.010 2.7 ± 0.07 * 1.7 ± 0.07 NO-10 44-50.0 144-00.0 2010.04.23 187 0.13 ± 0.007 1.8 ± 0.06 * 0.93 ± 0.05 St-1 39-00.0 135-18.1 2010.09.12 1,919 0.44 ± 0.009 3.0 ± 0.08 * 0.81 ± 0.04 St-4 38-00.0 135-00.1 2010.09.13 2,979 0.27 ± 0.010 * * 0.012 ± 0.002 St-5 36-57.0 133-50.0 2010.09.14 1,596 0.65 ± 0.014 4.0 ± 0.08 * 1.17 ± 0.08 TR-1 39-52.6 143-35.0 2010.06.09 2,312 0.12 ± 0.005 2.0 ± 0.06 * 1.8 ± 0.10 測 定 値 が 検 出 下 限 値 未 満 の 場 合 は *を 付 記 した -36-

Ⅱ-4 日 本 周 辺 海 域 海 底 土 の 放 射 能 調 査 ( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 中 央 水 産 研 究 所 藤 本 賢 皆 川 昌 幸 北 海 道 区 水 産 研 究 所 葛 西 広 海 日 下 彰 川 崎 康 寛 西 海 区 水 産 研 究 所 西 内 耕 岡 慎 一 郎 長 谷 川 徹 岡 村 和 麿 日 本 海 区 水 産 研 究 所 本 多 直 人 渡 邊 達 郎 井 桁 庸 介 1. 緒 言 日 本 周 辺 海 域 の 漁 場 環 境 中 に 蓄 積 されている 人 工 放 射 性 核 種 の 分 布 および 変 動 傾 向 を 知 るために 昭 和 60 年 度 から 日 本 周 辺 の 沿 岸 沖 合 さらに 外 洋 域 海 底 土 の 放 射 性 核 種 分 析 を 行 ってきた 平 成 6 年 度 から 旧 ソ 連 ロシアによる 放 射 性 廃 棄 物 の 海 洋 投 棄 が 明 らかになったことから 日 本 海 側 とオホーツク 海 側 の 調 査 地 点 を 拡 充 し 比 較 対 象 域 として 東 シナ 海 及 び 北 西 太 平 洋 海 域 側 の 地 点 の 調 査 も 随 時 行 うことにした 2. 調 査 研 究 の 概 要 1 調 査 海 域 と 試 料 海 底 土 試 料 は 平 成 22 年 度 に ( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 調 査 船 蒼 鷹 丸 (892 トン) みずほ 丸 (156 トン)および 陽 光 丸 (499 トン)を 用 いて 太 平 洋 側 の 常 磐 沖 相 模 湾 駿 河 湾 日 本 海 側 の 増 毛 沖 佐 渡 海 盆 大 和 海 嶺 日 本 海 盆 大 和 海 盆 東 シナ 海 大 陸 棚 の 各 地 点 から 柱 状 採 泥 器 を 使 用 して 採 取 した 2 核 種 分 析 試 料 は 表 層 から 2 cm または 4 cm 毎 に 分 画 乾 燥 処 理 し 各 区 分 の 試 料 について ゲルマニウム 半 導 体 検 出 器 によるγ 線 核 種 を 分 析 した また 一 部 地 点 の 試 料 については Pu 同 位 体 と 90 Sr の 放 射 化 学 分 析 を 行 った 3 分 析 結 果 各 地 点 における 8cm 層 までの 分 析 結 果 の 一 部 を 表 -1 に 示 した γ 線 核 種 の 中 で 有 意 に 検 出 されたのは 従 来 と 同 じく 137 Cs であった 表 層 の 0~4 cm 層 における 137 Cs の 濃 度 は 北 海 道 太 平 洋 側 の 2 地 点 では 検 出 下 限 値 未 満 ~1.4 Bq/kg- 乾 土 日 本 海 側 の 10 地 点 では 0.93~8.1 Bq/kg- 乾 土 オホーツク 海 の 2 点 で は 2.4 4.1 Bq/kg- 乾 土 東 シナ 海 の 5 点 では 検 出 下 限 値 未 満 ~1.8 Bq/kg- 乾 土 であった 各 地 点 で 各 核 種 の 濃 度 と 分 布 の 特 徴 はこれまでと 同 様 な 傾 向 であった また 各 層 の 濃 度 を 含 めたこれ らの 値 は 中 央 水 産 研 究 所 および 諸 機 関 による 従 来 の 調 査 結 果 の 範 囲 内 であった 3. 結 語 平 成 22 年 度 の 調 査 結 果 では 特 に 異 常 と 思 われる 放 射 能 の 値 は 検 出 されず 旧 ソ 連 ロシアによる 海 洋 投 棄 の 影 響 は 認 められなかった 今 後 も 引 き 続 き 変 動 傾 向 の 監 視 を 行 うとともに 汚 染 の 評 価 につなが る 必 要 な 基 礎 データの 蓄 積 を 行 っていく 予 定 である -37-

表 -1. 海 底 土 の 核 種 分 析 結 果 ( 抜 粋 ) 緯 度 深 さ 水 深 経 度 (cm) 43º 00' N 66 m 0 4 137 Cs 濃 度 (Bq/kg- 乾 土 ) N. D. 145º 20' E 4 8 0.61 ± 0.20 42º 10' N 222 m 0 4 1.4 ± 0.22 141º 15' E 4 8 1.9 ± 0.20 44º 00' N 92 m 0 4 2.4 ± 0.29 141º 20' E 4 8 1.3 ± 0.31 43º 00' N 53 m 0 4 140º 28' E 4 8 N. D. N. D. 44º 35' N 192 m 0 4 2.4 ± 0.33 144º 00' E 4 8 1.2 ± 0.33 45º 20' N 125 m 0 4 4.1 ± 0.32 142º 55' E 4 8 4.2 ± 0.30 31º 30' N 91 m 0 4 1.8 ± 0.32 127º 00' E 4 8 1.8 ± 0.31 37º 34' N 62 m 0 4 0.93 ± 0.23 138º 38' E 4 8 0.99 ± 0.24 37º 36' N 96 m 0 4 2.2 ± 0.28 138º 38' E 4 8 2.7 ± 0.27 37º 38' N 201 m 0 4 1.9 ± 0.20 138º 37' E 4 8 1.5 ± 0.21 37º 48' N 522 m 0 4 8.1 ± 0.36 138º 31' E 4 8 4.1 ± 0.30-38-

Ⅱ-5 海 産 生 物 放 射 能 調 査 ( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 中 央 水 産 研 究 所 藤 本 賢 皆 川 昌 幸 北 海 道 区 水 産 研 究 所 葛 西 広 海 船 本 鉄 一 郎 小 埜 恒 夫 西 海 区 水 産 研 究 所 西 内 耕 岡 慎 一 郎 山 田 東 也 種 子 田 雄 日 本 海 区 水 産 研 究 所 本 多 直 人 廣 瀬 太 郎 渡 邊 達 郎 井 桁 庸 介 水 産 工 学 研 究 所 山 崎 慎 太 郎 藤 田 薫 高 山 剛 1. 緒 言 日 本 周 辺 海 域 ( 北 海 道 周 辺 海 域 太 平 洋 沿 岸 海 域 東 シナ 海 海 域 日 本 海 沿 岸 海 域 北 千 島 オホーツ ク 海 北 海 道 北 部 沖 合 域 と 日 本 海 深 海 域 )に 生 息 する 主 要 海 産 生 物 の 放 射 能 水 準 とその 経 年 変 化 を 把 握 す ることにより 水 産 資 源 の 安 全 性 を 確 認 し 不 測 の 事 態 に 備 え 本 調 査 を 継 続 している 平 成 22 年 度 に 実 施 した 生 物 調 査 の 概 要 を 報 告 する 2. 調 査 研 究 の 概 要 1 採 取 試 料 北 海 道 周 辺 海 域 ( 魚 類 4 種 頭 足 類 1 種 と 貝 類 2 種 ) 太 平 洋 沿 岸 海 域 ( 魚 類 5 種 頭 足 類 2 種 貝 類 2 種 甲 殻 類 1 種 と 海 藻 類 1 種 ) 東 シナ 海 海 域 ( 魚 類 5 種 貝 類 1 種 頭 足 類 1 種 と 甲 殻 類 1 種 ) 日 本 海 沿 岸 海 域 ( 魚 類 9 種 頭 足 類 4 種 貝 類 1 種 甲 殻 類 2 種 と 海 藻 類 1 種 ) 北 千 島 オホーツク 海 北 海 道 北 部 沖 合 域 ( 魚 類 5 種 ) 日 本 海 深 海 域 ( 魚 類 2 種 と 甲 殻 類 1 種 )の 合 計 51 種 (160 検 体 )の 調 査 を 行 った 東 シナ 海 産 マダコ 試 料 は 沖 合 および 沿 岸 で 採 取 された 試 料 を 複 数 入 手 した 2 核 種 分 析 試 料 は 採 集 年 月 日 採 集 位 置 平 均 体 長 体 重 などを 記 録 して 必 要 に 応 じて 各 部 位 ( 筋 肉 内 臓 肝 臓 等 )に 分 別 し 摂 氏 450 度 以 下 で 所 定 の 操 作 を 行 い 灰 化 物 を 調 製 し 分 析 に 供 した ガンマ 線 放 出 核 種 分 析 はゲルマニウム 半 導 体 検 出 器 を 用 い 計 測 時 間 16 32 x 10 4 秒 で 行 った 分 析 対 象 核 種 は 科 学 技 術 庁 放 射 能 測 定 法 シリ-ズ7に 記 載 されている 対 象 核 種 の 中 から 半 減 期 が 30 日 を 越 え る 13 核 種 7 Be, 54 Mn, 58 Co, 60 Co, 65 Zn, 95 Zr, 95 Nb, 103 Ru, 106 Ru, 125 Sb, 134 Cs, 137 Cs, 144 Ce およびこれに 108m Ag 110m Ag 207 Bi の 3 核 種 を 加 え 16 核 種 とした 3 分 析 結 果 分 析 した 大 部 分 の 試 料 から 137 Cs ( 半 減 期 :30.1 年 )が 検 出 されている 軟 体 類 の 肝 臓 もしくは 内 臓 およ び 甲 殻 類 の 肝 膵 臓 からは 108m Ag (418 年 )が 検 出 されているが より 短 寿 命 核 種 の 110m Ag(249.8 日 )が 検 出 さ れない このことから 108m Ag の 汚 染 源 は 過 去 の 核 実 験 やチェルノブイリ 事 故 などであると 考 えられる 検 出 された 137 Cs と 108m Ag の 濃 度 は 昨 年 度 までの 調 査 結 果 と 同 程 度 もしくは 減 少 傾 向 にあった 日 本 周 辺 海 域 で 採 取 されるベニズワイとズワイガニ 試 料 からはこれまでも 低 い 濃 度 で 137 Cs が 検 出 されて きたが 昨 年 度 は 釧 路 沖 および 太 平 洋 海 山 頂 上 で 採 取 されたゴカクエゾイバラガニで 不 検 出 となった 本 年 度 は 日 本 海 のズワイガニ 筋 肉 試 料 から 137 Cs が 検 出 されているが 魚 類 試 料 と 比 較 して 低 い 濃 度 で 推 移 し ている カニ 類 の 肝 膵 臓 から 検 出 された 108m Ag はこれまでの 濃 度 の 範 囲 内 であった 海 域 差 や 経 年 変 化 につ いては 今 後 もデータを 蓄 積 することにより 明 らかとしたい 東 シナ 海 産 マダコ 試 料 の 肝 臓 からは 平 成 7 年 度 から 平 成 20 年 度 まで 継 続 的 に 60 Co(5.27 年 )が 検 出 され てきたが 昨 年 に 続 き 本 年 度 の 試 料 からも 検 出 されなかった 本 調 査 において 検 出 された 人 工 放 射 性 核 種 の 濃 度 は 食 しても 人 体 へは 全 く 影 響 を 及 ぼすものではない 3. 結 語 検 出 された 人 工 放 射 性 核 種 は 過 去 の 大 気 圏 内 核 実 験 由 来 のものが 大 部 分 であり その 濃 度 は 極 めて 低 く 食 しても 人 体 に 全 く 影 響 を 及 ぼすものではない しかしながら 日 本 周 辺 の 海 域 には 国 内 外 の 原 子 力 関 連 施 設 旧 ソ 連 ロシアによる 放 射 性 廃 棄 物 そして 原 子 力 潜 水 艦 の 往 来 などの 潜 在 的 な 放 射 能 汚 染 源 が 複 数 存 在 している 放 射 能 汚 染 が 生 じた 場 合 それを 正 しく 評 価 するためには 平 常 時 の 調 査 結 果 の 蓄 積 が 重 要 であり 本 調 査 の 必 要 性 は 不 測 の 事 態 に 備 えるものとして 今 後 益 々 増 加 すると 考 えられる 本 調 査 試 料 採 集 の 一 部 は ( 独 ) 水 産 総 合 研 究 センター 東 北 区 水 産 研 究 所 八 戸 庁 舎 北 海 道 機 船 漁 業 協 同 組 合 連 合 会 小 樽 稚 内 釧 路 の 各 機 船 漁 業 協 同 組 合 および 網 走 勝 浦 漁 業 協 同 組 合 の 協 力 のもと 行 われ ており 関 係 者 に 感 謝 する -39-

表 -1. 海 産 生 物 放 射 能 調 査 結 果 ( 一 部 ) -40-

平 成 23 年 度 原 子 力 発 電 所 等 周 辺 海 域 における 海 洋 放 射 能 調 査 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 森 薗 繁 光, 小 嶋 純 一, 磯 山 直 彦, 及 川 真 司, 稲 富 直 彦, 御 園 生 淳, 日 下 部 正 志, 渡 部 輝 久, 鈴 木 千 吉, 中 原 元 和, 宮 本 霧 子 1. 緒 言 本 調 査 は, 漁 場 の 安 全 の 確 認 及 び 風 評 被 害 防 止 に 資 することを 目 的 として, 昭 和 58 年 度 か ら, 全 国 の 原 子 力 発 電 所 等 の 沖 合 漁 場 において 海 洋 放 射 能 調 査 を 実 施 しているものである 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 調 査 方 法 原 子 力 発 電 所 等 周 辺 海 域 である 北 海 道, 青 森, 宮 城, 福 島 第 一, 福 島 第 二, 茨 城, 静 岡, 新 潟, 石 川, 福 井 第 一, 福 井 第 二, 島 根, 愛 媛, 佐 賀 及 び 鹿 児 島 海 域 の 計 15 海 域 の 主 要 漁 場 で 漁 獲 された 主 要 な 海 産 生 物 を, 各 海 域 3 種 ずつ 年 2 回 (4 下 旬 ~10 月 中 旬 及 び 10 月 上 旬 ~ 翌 1 月 下 旬 ) 収 集 した また 各 海 域 に 設 けた 4 測 点 において, 海 底 土 ( 海 底 表 面 から 深 さ 3cm までの 表 層 土 ) 及 び 海 水 ( 表 層 及 び 下 層 水 )を 年 1 回 (4 月 下 旬 ~6 月 上 旬 ) 採 取 した 海 産 生 物 試 料 ( 肉 部 )は 乾 燥 灰 化 後,また 海 底 土 試 料 は 乾 燥 後 に,それぞれγ 線 放 出 核 種 をγ 線 スペクトロメトリーにより 定 量 した 一 方, 海 水 試 料 は 化 学 分 離 後, 90 Sr, 放 射 性 Cs( 134 Cs と 137 Cs の 分 離 測 定 ができないため, 137 Cs の 計 数 効 率 で 測 定 した 値 を 便 宜 上, 放 射 性 Cs とした)をβ 線 計 測 するとともに, 表 層 水 の 一 部 試 料 について 134 Cs 及 び 137 Cs をγ 線 スペクトロメトリーにより 定 量 した 2) 結 果 1 海 産 生 物 試 料 全 海 産 生 物 試 料 ( 計 90 試 料 )の 内, 魚 類,イカ タコ 類 及 びエビ 類 の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 を 表 1 に 示 す 検 出 された 人 工 放 射 性 核 種 の 内, 110m Ag は 青 森, 宮 城, 福 島 第 一, 福 島 第 二 及 び 茨 城 海 域 の 計 5 海 域 より 収 集 した 12 試 料 ( 魚 類 8 試 料,イカ タコ 類 4 試 料 )から 検 出 さ れた また 134 Cs は 全 15 海 域 より 収 集 した 63 試 料 ( 魚 類 55 試 料,イカ タコ 類 6 試 料,エ ビ 類 2 試 料 )から 検 出 された 一 方 137 Cs は, 青 森, 宮 城, 福 島 第 一, 福 島 第 二, 茨 城 及 び 静 岡 海 域 の 幾 つかの 試 料 で, 事 故 以 前 の 過 去 5 年 間 の 平 均 的 な 放 射 能 濃 度 の 10 倍 以 上 の 値 が 検 出 された さらに 北 海 道, 島 根, 愛 媛, 佐 賀 及 び 鹿 児 島 海 域 の 一 部 試 料 でも, 過 去 5 年 間 の 測 定 値 の 範 囲 を 超 えたが, 調 査 開 始 以 来 のそれぞれの 最 高 値 を 超 えるものではなかった なおその 他 の 海 域 では 過 去 5 年 間 の 範 囲 内 であった 2 海 底 土 試 料 全 海 底 土 試 料 ( 計 60 試 料 )の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 を 表 2に 示 す 検 出 された 人 工 放 射 性 核 種 の 内, 134 Csは 宮 城, 福 島 第 一, 福 島 第 二, 茨 城 及 び 新 潟 海 域 の5 海 域 で 検 出 された これに 対 して 137 Csは, 宮 城, 福 島 第 一, 福 島 第 二 及 び 茨 城 海 域 の 全 試 料,ならびに 新 潟 及 び 鹿 児 島 海 域 の 一 部 試 料 で 過 去 5 年 間 の 範 囲 を 超 える 値 が 検 出 された この 内, 福 島 第 一 及 び 福 島 第 二 海 域 では, 過 去 5 年 間 の 平 均 的 な 値 と 比 較 して 最 大 230 倍 程 度, 宮 城 及 び 茨 城 海 域 で -41-

は 最 大 80 倍 程 度 の 高 い 値 が 検 出 されたが, 新 潟 海 域 では 過 去 最 高 値 の1.2 倍 程 度,また 鹿 児 島 海 域 では 過 去 5 年 間 の 平 均 的 な 値 の1.5 倍 程 度 であった なおその 他 の 海 域 では, 過 去 5 年 間 の 範 囲 内 であった 3 海 水 試 料 全 海 水 試 料 ( 計 60 試 料 )の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 を 表 3に 示 す 各 海 域 4 測 点 の 内, 測 点 1の 表 層 水 試 料 のみγ 線 計 測 ( 計 15 試 料 )を 行 っており, 青 森, 宮 城, 福 島 第 一, 福 島 第 二, 茨 城 及 び 静 岡 海 域 の6 海 域 で 134 Csが 検 出 された 表 層 水 試 料 の 放 射 性 Csに 関 しては, 北 海 道, 青 森, 宮 城, 福 島 第 一, 福 島 第 二, 茨 城, 静 岡, 新 潟 及 び 佐 賀 海 域 において 過 去 5 年 間 の 範 囲 を 超 える 値 ( 福 島 第 一 海 域 にて 最 高 値 )が 測 定 された また 下 層 水 試 料 に 関 しても, 北 海 道, 宮 城, 福 島 第 一, 福 島 第 二, 茨 城, 静 岡, 新 潟 及 び 愛 媛 海 域 において 過 去 5 年 間 の 範 囲 を 超 え た( 茨 城 海 域 にて 最 高 値 ) 一 方 90 Srは, 福 島 第 一, 福 島 第 二 ( 表 層 水 のみ) 及 び 茨 城 海 域 で 過 去 5 年 間 の 平 均 的 な 値 を 上 回 った( 福 島 第 一 海 域 にて 最 高 値 )が,その 他 の 海 域 では 過 去 5 年 間 の 範 囲 内 であった 3. 結 語 本 調 査 では, 海 産 生 物, 海 底 土 及 び 海 水 試 料 の 一 部 から, 平 成 23 年 3 月 の 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 に 起 因 する 放 射 性 核 種 や 近 年 に 見 られない 放 射 能 濃 度 が 検 出 測 定 された 表 1 原 子 力 発 電 所 等 周 辺 海 域 における 海 産 生 物 試 料 の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 年 度 試 料 名 試 料 数 110m Ag 134 Cs 137 Cs 魚 類 077 ND ~ 0.62 ND ~ 110 0.092 ~ 140 平 成 23 年 度 イカ タコ 類 010 ND ~ 1.8 ND ~ 8.7 0.031 ~ 9.4 エビ 類 003 ND ND ~ 0.10 0.079 ~ 0.13 魚 類 375 ND ND 0.034 ~ 0.24 平 成 18~22 年 度 イカ タコ 類 060 ND ND ND ~ 0.045 エビ 類 015 ND ND 0.031 ~ 0.071 ND は 検 出 下 限 値 以 下 を 示 す ( 単 位 :Bq/kg 生 鮮 物 ) 表 2 原 子 力 発 電 所 等 周 辺 海 域 における 海 底 土 試 料 の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 年 度 試 料 数 134 Cs 137 Cs 平 成 23 年 度 060 ND ~ 200 ND ~ 220 平 成 18~22 年 度 300 ND ND ~ 7.7 ND は 検 出 下 限 値 以 下 を 示 す ( 単 位 :Bq/kg 乾 燥 土 ) 表 3 原 子 力 発 電 所 等 周 辺 海 域 における 海 水 試 料 の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 年 度 試 料 名 試 料 数 90 Sr 134 Cs 137 Cs( 放 射 性 Cs) 平 成 23 年 度 平 成 18~22 年 度 表 層 水 060(15) 0.84 ~ 24 ND ~ 520 1.4 ~ 1,400 下 層 水 060(00) 0.24 ~ 3.6-0.47 ~ 360 表 層 水 300(75) 0.85 ~ 1.8 ND 1.1 ~ 2.4 下 層 水 300(00) 0.33 ~ 2.0-0.49 ~ 2.3 () 内 は 134 Cs の 試 料 数 を 示 す ND は 検 出 下 限 値 以 下 を 示 す -は 調 査 対 象 外 を 示 す ( 単 位 :mbq/l) -42-

平 成 23 年 度 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 における 海 洋 放 射 能 調 査 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 森 薗 繁 光, 小 嶋 純 一, 磯 山 直 彦, 及 川 真 司, 稲 富 直 彦, 御 園 生 淳, 日 下 部 正 志, 渡 部 輝 久, 鈴 木 千 吉, 中 原 元 和, 宮 本 霧 子 1. 緒 言 本 調 査 は, 漁 場 の 安 全 の 確 認 及 び 風 評 被 害 防 止 に 資 することを 目 的 として, 平 成 2 年 度 か ら, 核 燃 料 サイクル 施 設 の 沖 合 漁 場 において 海 洋 放 射 能 調 査 を 実 施 しているものである 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 調 査 方 法 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 ( 以 下, 核 燃 海 域 )の 主 要 漁 場 で 漁 獲 された 主 要 な 海 産 生 物 15 種 を 4~10 月 及 び 10~12 月 の 年 2 回 収 集 した また, 当 該 海 域 に 設 けた 22 測 点 において, 海 底 土 ( 海 底 表 面 から 深 さ 3cm までの 表 層 土 )を 5 月 中 ~ 下 旬 の 年 1 回, 海 水 ( 表 層 水 及 び 下 層 水 )を 5 月 中 ~ 下 旬 及 び 10 月 上 ~ 中 旬 の 年 2 回 採 取 した 海 産 生 物 試 料 ( 肉 部 )は 乾 燥 灰 化 後,また 海 底 土 試 料 は 乾 燥 後 に, 90 Sr, 239+240 Pu 及 びγ 線 放 出 核 種 を 測 定 した 海 水 試 料 については 化 学 分 離 後 に, 3 H, 90 Sr, 239+240 Pu 及 びγ 線 放 出 核 種 を 測 定 した 2) 結 果 1 海 産 生 物 試 料 核 燃 海 域 において 収 集 した 海 産 生 物 試 料 ( 年 2 回 収 集, 計 30 試 料 )の 魚 類 及 びイカ タコ 類 の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 を 表 1 に 示 す 検 出 された 人 工 放 射 性 核 種 は 90 Sr, 110m Ag, 134 Cs, 137 Cs 及 び 239+240 Pu であり, 90 Sr は 過 去 5 年 間 の 測 定 値 の 範 囲 内 であったものの, 110m Ag, 134 Cs 及 び 137 Cs は 過 去 5 年 間 の 範 囲 を 上 回 った 110m Ag は, 魚 類 で 2 試 料,イカ タコ 類 で 4 試 料 検 出 された また 134 Cs は 全 ての 試 料 で 検 出 され, 137 Cs は 魚 類 5 試 料 を 除 いた 25 試 料 で 過 去 5 年 間 の 範 囲 を 上 回 っていた これまで 検 出 されなかった 110m Ag, 134 Cs が 検 出 されていることなどから, 110m Ag, 134 Cs 及 び 137 Cs の 放 射 性 核 種 濃 度 の 上 昇 は, 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 に 起 因 すると 考 えられる 一 方 239+240 Pu では,イカ タコ 類 の 1 試 料 のみ, 過 去 5 年 間 の 範 囲 を 上 回 る 試 料 があった が, 過 去 に 検 出 されたイカ タコ 類 の 最 高 濃 度 ( 平 成 4 年 度 の 0.0014Bq/kg 生 鮮 物 )を 考 慮 すると, 自 然 変 動 の 範 囲 と 考 えられる 2 海 底 土 試 料 核 燃 海 域 の 22 測 点 において 採 取 した 全 海 底 土 試 料 ( 計 22 試 料 )の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 を 表 2 に 示 す 検 出 された 人 工 放 射 性 核 種 は 90 Sr, 137 Cs 及 び 239+240 Pu であり,これらの 濃 度 は 過 去 5 年 間 の 範 囲 内 であった 3 海 水 試 料 全 海 水 試 料 ( 計 88 試 料 )の 内, 表 層 水 及 び 下 層 水 ( 各 44 試 料 )の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 を 表 3 に 示 す また 参 考 として,アクティブ 試 験 開 始 以 前 の 平 成 13~17 年 度 の 3 H 濃 度 範 囲 も 合 わせて 示 す 検 出 された 人 工 放 射 性 核 種 は 3 H, 90 Sr, 134 Cs, 137 Cs 及 び 239+240 Pu であり, 3 H, -43-

90 Sr の 下 層 水 及 び 239+240 Pu は,それぞれ 過 去 5 年 間 の 範 囲 内 であったものの, 90 Sr の 表 層 水, 134 Cs 及 び 137 Cs は 過 去 5 年 間 の 範 囲 を 上 回 った 90 Sr, 134 Cs 及 び 137 Cs の 表 層 水 で 最 も 高 い 値 を 示 したのは 5 月 に 採 取 した 測 点 22 であり,それぞれ 13±0.4,360±3 及 び 370±2mBq/L であった 一 方, 134 Cs 及 び 137 Cs の 下 層 水 で 最 も 高 い 値 を 示 したのは 10 月 に 採 取 した 測 点 19 であり,それぞれ 5.4±0.45,7.8±0.36mBq/L であった このような 放 射 性 核 種 濃 度 の 上 昇 は,これまで 検 出 されなかった 134 Cs が 検 出 されているから, 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 に 起 因 すると 考 えられる なお, 3 H はアクティブ 試 験 開 始 前 の 平 成 13~17 年 度 の 3 H 濃 度 範 囲 内 であった 3. 結 語 本 調 査 では, 海 産 生 物 及 び 海 水 試 料 の 一 部 から, 平 成 23 年 3 月 の 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 に 起 因 する 放 射 性 核 種 や 近 年 に 見 られない 放 射 能 濃 度 が 検 出 測 定 された 表 1 核 燃 海 域 における 海 産 生 物 試 料 の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 年 度 試 料 名 試 料 数 90 Sr 110m Ag 134 Cs 137 Cs 239+240 Pu 平 成 23 年 度 平 成 18 ~ 22 年 度 魚 類 24 ND ~ 0.0098 ND ~ 0.23 0.069 ~ 10 0.12 ~ 11 ND ~ 0.00053 イカ タコ 類 06 ND 0.080 ~ 0.44 0.042 ~ 0.24 0.064 ~ 0.32 ND ~ 0.00058 魚 類 110 ND ~ 0.010 ND ND ND ~ 0.18 ND ~ 0.0010 イカ タコ 類 030 ND ND ND ND ~ 0.041 ND ~ 0.00051 ND は 検 出 下 限 値 以 下 を 示 す ( 単 位 :Bq/kg 生 鮮 物 ) 表 2 核 燃 海 域 における 海 底 土 試 料 の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 年 度 試 料 数 90 Sr 134 Cs 137 Cs 239+240 Pu 平 成 23 年 度 022 ND ~ 0.51 ND ND ~ 4.6 0.37 ~ 4.1 平 成 18 ~ 22 年 度 104 ND ~ 0.78 ND ND ~ 5.2 0.39 ~ 5.1 ND は 検 出 下 限 値 以 下 を 示 す ( 単 位 :Bq/kg 乾 燥 土 ) 表 3 核 燃 海 域 における 海 水 試 料 の 放 射 性 核 種 濃 度 範 囲 年 度 試 料 名 試 料 数 3 H 90 Sr 134 Cs 137 Cs 239+240 Pu 平 成 23 年 度 平 成 18 ~ 22 年 度 表 層 水 44 ND ~ 0.15 0.78 ~ 13 ND ~ 360 2.2 ~ 370 ND ~ 0.0095 下 層 水 44 ND ~ 0.15 ND ~ 1.3 ND ~ 5.4 ND ~ 7.8 0.0024 ~ 0.03 表 層 水 208 ND ~ 1.3 0.73 ~ 1.6 ND 0.81 ~ 2.4 ND ~ 0.013 下 層 水 208 ND ~ 0.27 ND ~ 1.7 ND ND ~ 2.1 ND ~ 0.029 ND は 検 出 下 限 値 以 下 を 示 す ( 単 位 :mbq/l,ただし 3 H は Bq/L) 参 考 アクティブ 試 験 開 始 以 前 の 3 H 濃 度 年 度 試 料 名 試 料 数 3 H 平 成 13 ~ 17 年 度 表 層 水 160 ND ~ 0.24 下 層 水 160 ND ~ 0.21 ND は 検 出 下 限 値 以 下 を 示 す ( 単 位 :Bq/L) -44-

ヒラメの 137 Cs 濃 縮 の 変 動 要 因 についての 調 査 研 究 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 中 原 元 和 磯 山 直 彦 鈴 木 千 吉 及 川 真 司 渡 部 輝 久 御 園 生 淳 森 園 繁 光 1. 緒 言 原 子 力 施 設 周 辺 海 域 の 海 水 海 底 土 海 産 魚 の 放 射 能 調 査 を 行 っているが 魚 の 筋 肉 中 の 137 Cs 濃 度 は 同 一 魚 種 であっても 採 取 海 域 の 違 いや 採 取 年 度 季 節 の 違 いなどに より 変 動 するのが 観 察 される 海 域 の 環 境 放 射 能 評 価 には これらの 変 動 の 要 因 を 解 明 することが 必 要 不 可 欠 と 考 えられるので ほぼ 日 本 全 国 の 沿 岸 海 域 に 普 遍 的 に 生 息 するヒラメについて 変 動 要 因 の 推 定 を 試 みた 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 方 法 本 邦 のヒラメは 成 長 速 度 や 産 卵 時 期 回 遊 経 路 の 違 い 等 で 幾 つかの 系 群 に 分 けられ るが 太 平 洋 北 部 系 群 に 分 けられる 茨 城 海 域 のヒラメと 日 本 海 西 部 東 シナ 海 系 群 に 分 けられる 島 根 海 域 のヒラメについてこれまでの 調 査 結 果 をもとにヒラメの 137 Cs 濃 度 の 変 動 と 海 水 海 底 土 の 137 Cs の 変 動 との 関 連 を 検 討 し 両 海 域 の 違 いを 比 較 した 2) 結 果 茨 城 海 域 及 び 島 根 海 域 で 採 取 されたヒラメの 筋 肉 の 137 Cs 濃 度 の 経 年 変 化 を 図 1 に 示 した 1996 年 頃 までは 両 海 域 とも 近 似 した 値 で 減 少 しているが それ 以 降 島 根 が 茨 城 より 高 い 傾 向 が 見 られる 次 に 両 海 域 の 表 層 水 の 137 Cs 濃 度 の 経 年 変 化 を 図 2 に 示 したが -45-

両 海 域 で 差 は 見 られなかった 下 層 水 海 底 土 でも 同 様 に 海 域 の 差 は 無 かった ヒラメの 採 取 年 度 の 海 水 の 137 Cs 濃 度 で 筋 肉 の 137 Cs 濃 度 を 割 って 濃 縮 係 数 を 求 め 魚 体 重 との 関 係 で 図 3 に 示 した 茨 城 のヒラメは 体 重 の 増 加 につれて 濃 縮 係 数 も 増 加 した 一 方 島 根 のヒラメは 3kg 以 上 のサンプルが 無 いので 明 確 な 傾 向 は 見 えない が サンプルの 多 い 2kg 以 下 のサイズで 両 海 域 のヒラメを 比 較 すると 島 根 のヒラメは 茨 城 のヒラメより 濃 縮 係 数 が 高 く 両 海 域 で 差 が 見 られた 2kg 以 下 のサンプルの 平 均 体 重 は 茨 城 838±465g(32) 島 根 877±263g(42)で 137 Cs の 濃 縮 係 数 の 平 均 は 茨 城 60.3±17(32) 島 根 80.3±12(42)であった カッコの 数 字 はサンプル 数 である 3. 結 語 島 根 と 茨 城 の 海 水 海 底 土 の 137 Cs 濃 度 の 経 年 変 化 には 両 海 域 で 大 きな 差 が 無 かった が ヒラメの 137 Cs 濃 度 濃 縮 係 数 に 差 が 見 られ これらの 環 境 要 因 の 変 動 で 両 海 域 の ヒラメの 137 Cs 濃 度 の 違 いを 説 明 できなかった 今 後 は 摂 取 する 餌 生 物 の 違 いや 系 群 に よる 生 理 代 謝 の 違 いなど 生 物 自 身 の 要 因 との 関 係 などについても 検 討 する 必 要 が あると 思 われる -46-

海 産 生 物 (ヒラメ)への 137 Csの 蓄 積 に 係 わる 研 究 - 餌 料 の 違 いによる 蓄 積 影 響 の 検 討 (2)- 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 稲 富 直 彦 土 田 修 二 伊 藤 康 男 瀬 戸 熊 卓 見 吉 野 幸 恵 中 原 元 和 1. 緒 言 ヒラメの 魚 肉 中 の 137 Cs 濃 度 変 動 の 原 因 解 明 の 一 環 として 天 然 海 水 の 流 水 式 水 槽 にて 海 水 温 摂 餌 量 水 質 等 を 調 整 した 環 境 下 にてヒラメを 飼 育 し 137 Cs および 安 定 Cs の 魚 体 中 の 濃 度 変 化 を 観 察 する 平 成 23 年 度 は 22 年 度 に 引 き 続 き 餌 料 の 影 響 を 調 べるため 異 なる 餌 料 を 与 える 水 槽 ( 以 下 餌 料 区 という)を 2 つ 設 定 し 平 均 体 重 250g~550g までの 成 長 過 程 について 蓄 積 実 験 を 行 った 2. 調 査 研 究 の 概 要 平 均 体 重 約 250gのヒラメを 水 温 20 程 度 に 調 温 した 二 つの 水 槽 中 に 各 33 尾 収 容 し 72 日 飼 育 した 2 種 類 の 餌 料 (A 餌 料 B 餌 料 それぞれ 原 料 として 使 用 するサバを 異 なる 産 地 から 選 定 )を 用 意 し 各 水 槽 に 一 方 の 餌 料 みを 与 えて 飼 育 した 一 定 期 間 毎 にヒラメを 取 り 上 げ 体 長 体 重 等 を 測 定 後 三 枚 に 下 ろし 肉 部 の 安 定 Cs 濃 度 を 測 定 し 137 Cs 濃 度 分 析 用 検 体 は 凍 結 保 存 した なお 飼 育 水 中 の 安 定 Cs 濃 度 は これまでの 結 果 から 変 動 が 極 めて 少 ないことが 確 認 されているため 飼 育 期 間 中 1 回 の 採 取 のみとした 3. 結 語 平 成 23 年 度 は 22 年 度 に 引 き 続 き 飼 育 餌 料 の 異 なる 2 区 をもうけ 平 均 重 量 約 250 gのヒラメを 各 区 33 尾 収 容 し 72 日 飼 育 した その 間 各 区 ともに 平 均 体 重 500g 程 度 ま で 順 調 に 成 長 した( 図 1) 何 れの 餌 料 区 も 体 重 増 加 に 対 して 安 定 Cs 濃 度 はほぼ 一 定 の 値 であり 餌 料 区 間 の 差 は 顕 著 も 顕 著 では 無 かった また 同 一 体 重 で 比 較 すると 蓄 積 濃 度 は 22 年 度 の 試 験 結 果 より 30% 程 度 低 い 値 となった これまでの 結 果 から 体 重 300 以 上 の 個 体 については 体 重 に 対 する 濃 度 変 化 が 鈍 化 する 状 況 にあるが 餌 料 中 濃 度 の 違 いを 反 映 し 魚 体 中 の 濃 度 が 異 なることが 示 唆 され た ( 図 2) 今 後 は さらに 成 長 したヒラメについて 餌 料 の 違 いによる 蓄 積 影 響 の 検 討 を 実 施 する とともに その 他 の 魚 種 として スズキについて 同 様 の 評 価 手 法 の 展 開 を 検 討 する -47-

図 1 体 重 の 増 加 曲 線 図 2 体 重 と 安 定 Cs 濃 度 の 関 係 -48-

成 長 に 伴 うスケトウダラの 137 Cs 濃 度 変 動 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 磯 山 直 彦, 御 園 生 淳, 及 川 真 司, 鈴 木 千 吉 1. 緒 言 原 子 力 発 電 所 等 周 辺 海 域 及 び 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 における 海 洋 放 射 能 調 査 では, 全 国 から 多 くの 種 類 の 魚 介 類 を 海 産 生 物 試 料 として 収 集 し, 放 射 能 核 種 の 分 析 を 行 っている 放 射 能 レベルは 生 物 種 によって 異 なるが,その 要 因 として, 生 息 環 境 中 の 放 射 能 濃 度 の 違 い, 餌 生 物 の 違 い 等 によるものとされている さらに, 同 じ 海 域, 同 じ 生 物 種 でも 成 長 ( 年 齢 やサイズ)により 筋 肉 中 の 137 Cs 濃 度 が 異 なる 種 類 があることが 明 らかにされ, 魚 体 のサ イズを 成 長 の 指 標 として 筋 肉 中 の 137 Cs 濃 度 との 関 係 を, 個 体 別 の 安 定 Cs 濃 度 を 用 いて 詳 細 に 調 査 してきた これまでに 詳 細 に 調 査 したスズキ,アカガレイ,マダイ,ヒラメ,ソウハチ,ホッケ,ア カエイ,イシガレイ,マコガレイ,マダラの10 種 の 内,アカガレイを 除 く9 種 で, 魚 体 が 大 き くなるに 伴 い 筋 肉 中 の 安 定 Cs( 及 び 137 Cs) 濃 度 が 高 くなることがわかり, 濃 度 の 増 加 率 はイ シガレイで 最 も 大 きく,ソウハチで 最 も 小 さかった 逆 にアカガレイでは, 魚 体 が 大 きくな るに 伴 い 筋 肉 中 の 安 定 Cs( 及 び 137 Cs) 濃 度 は 低 くなる またいずれの 魚 種 も, 魚 体 が 同 じ 大 きさであっても, 安 定 Cs( 及 び 137 Cs) 濃 度 にはバラツキが 認 められ, 特 にスズキはバラツキ が 大 きい 本 調 査 では,これまでに 詳 細 な 調 査 を 行 っていない 生 物 種 の 内,スケトウダラについて, これまでに 得 られた 海 洋 放 射 能 調 査 の 海 産 生 物 試 料 の 137 Cs 濃 度 データを 用 いて, 魚 体 のサイ ズと 筋 肉 中 の 137 Cs 濃 度 の 関 係 について 検 討 した 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 方 法 解 析 には, 同 一 海 域 でスケトウダラの 筋 肉 中 137Cs 濃 度 が 得 られている 平 成 3 年 度 (1991 年 )~ 平 成 22 年 度 (2010 年 )に 実 施 した 海 洋 放 射 能 調 査 の 内, 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 のデータ( 海 産 生 物 試 料 及 び 海 水 試 料 の 測 定 結 果 )を 用 いた なお 魚 体 のサイズは, 分 析 試 料 の 前 処 理 時 に 測 定 した 全 個 体 の 平 均 全 長 を,それぞれ 用 いた 2) 結 果 スケトウダラは 主 に 水 深 200~500m に 生 息 し, 産 卵 期 には 水 深 70~250m 付 近 に 浮 上 する そこで 当 該 海 域 調 査 の 全 22 測 点 の 内,スケトウダラの 生 息 場 所 に 合 わせた 6 測 点 ( 測 点 2, 3,5,6,7,8)の 海 水 試 料 ( 下 層 水 )の 平 均 137 Cs 濃 度 を, 図 1 に 示 した また, 当 該 海 域 におけるスケトウダラの 137 Cs 濃 度 を, 図 2 に 示 した 図 1 に 示 すように 海 水 中 の 137 Cs 濃 度 は 緩 やかな 漸 減 が 示 され,また 海 産 生 物 に 取 り 込 ま れた 137 Cs の 実 効 半 減 期 は 物 理 的 半 減 期 より 早 く 変 化 するため, 図 2 に 示 すように 20 年 間 に およぶスケトウダラの 137 Cs 濃 度 を 同 一 条 件 で 比 較 するには, 物 理 的 半 減 期 補 正 では 不 十 分 である そこでスケトウダラの 137 Cs 濃 度 を, 海 水 中 の 137 Cs 濃 度 で 除 して 濃 縮 係 数 を 算 出 し, 採 取 年 度 毎 の 値 を 直 接 比 較 できるよう 考 慮 した スケトウダラの 平 均 全 長 と 濃 縮 係 数 の 関 係 を, 図 3 に 示 す -49-

これまで 核 燃 海 域 では, 平 均 全 長 45cm 程 度 のスケトウダラが 多 く 得 られているが, 採 取 年 度 によっては 魚 体 の 大 きさが 異 なり, 平 均 全 長 は 36.4~60.6cmにわたっている デー タ 数 が 多 い 平 均 全 長 45cm 程 度 のス ケトウダラの 濃 縮 係 数 は,58~120 と 幅 があり, 大 きなバラツキがみら れた しかしながら, 全 体 的 には 緩 やかではあるものの, 平 均 全 長 の 増 加 に 伴 い 137 Csのスケトウダラへの 濃 縮 係 数 の 増 加 が 認 められた 3. 結 語 本 調 査 では,これまでに 実 施 して きた 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 における 海 洋 放 射 能 調 査 によって 得 られた20 年 間 のスケトウダラの データに 基 づき, 平 均 全 長 と 137 Cs の 濃 縮 係 数 を 比 較 し, 魚 体 の 大 きさ と 137 Cs 濃 度 の 関 係 を 検 討 した 同 一 137 Cs 濃 度 (Bq/kg-wet) 137 Cs 濃 度 (mbq/l) 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 ND 0.0 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 採 取 年 度 図 1 海 水 試 料 ( 下 層 水 )の 平 均 137 Cs 濃 度 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 ND 0.0 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 採 取 年 度 図 2 スケトウダラの 137 Cs 濃 度 平 均 全 長 における 濃 縮 係 数 のバラツキは 大 きいものの,スケトウダラでは 魚 体 が 大 きくなる とともに, 緩 やかながら 濃 縮 係 数 が 高 くなる 傾 向 が 認 められた 魚 体 のサイズによる 137 Cs 濃 度 変 動 は 魚 種 ごとに 異 なり, 同 じサイズでも 137 Cs 濃 度 のバラツ キが 異 なる 本 調 査 のように 継 続 的 に 実 施 している 海 洋 放 射 能 調 査 において 収 集 された 海 産 生 物 試 料 の 全 長 等 といった 生 物 データや, 測 定 された 137 Cs 濃 度 を 活 用 解 析 することによっ て, 魚 体 のサイズと 137 Cs 濃 度 の 関 係 を 把 握 することは, 生 物 への 移 行 解 析 にとって 基 礎 的 知 見 となりうる 150 120 90 濃 縮 係 数 60 30 0 30 35 40 45 50 55 60 65 平 均 全 長 (cm) 図 3 スケトウダラの 平 均 全 長 と 濃 縮 係 数 -50-

海 産 生 物 の 3 H 濃 度 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 御 園 生 淳 磯 山 直 彦 及 川 真 司 鈴 木 千 吉 1. 緒 言 当 研 究 所 は 平 成 3 年 度 から 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 ( 以 下 核 燃 海 域 と 言 う)を 対 象 と して 海 洋 環 境 放 射 能 レベルを 知 るための 調 査 を 行 ってきた 海 産 生 物 については 平 成 13 年 度 より 組 織 自 由 水 及 び 有 機 結 合 型 3 H 濃 度 の 測 定 を 行 っている 平 成 15 年 度 に 東 通 原 子 力 発 電 所 沖 合 を 対 象 として 設 定 した 青 森 海 域 の 海 産 生 物 試 料 についても 3 H 濃 度 の 測 定 を 行 った また 平 成 19 年 度 に 核 燃 海 域 を 拡 張 し 岩 手 県 沖 でも 採 水 採 泥 を 行 うことにしたのにとも ない この 海 域 で 漁 獲 された 魚 種 も 調 査 対 象 に 含 めた 平 成 23 年 度 前 期 の 調 査 結 果 について 報 告 する 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 試 料 と 方 法 核 燃 海 域 及 び 青 森 海 域 の 調 査 で 収 集 した 海 産 生 物 試 料 のそれぞれから 一 部 を 取 り 文 部 科 学 省 放 射 能 測 定 法 シリーズ 9 トリチウム 分 析 法 ( 平 成 14 年 度 改 訂 )に 準 じて 分 析 し 組 織 自 由 水 3 H 濃 度 及 び 有 機 結 合 型 3 H 濃 度 を 求 めた なお 有 機 結 合 型 3 H 濃 度 の 測 定 精 度 を 向 上 させるために 液 体 シンチレーションカウンターによる 測 定 時 間 を 組 織 自 由 水 3 H 濃 度 測 定 の 場 合 の 2 倍 (60,000 秒 )とした アクティブ 試 験 開 始 にともない 調 査 海 域 を 拡 張 したため 従 来 の 核 燃 海 域 と 拡 張 され た 核 燃 海 域 で 同 魚 種 を 収 集 せざるを 得 ない 例 が 増 えたが その 場 合 は 前 者 を(1) 後 者 を(2)と 表 記 した また 漁 況 等 により 2 か 所 で 同 魚 種 を 収 集 した 場 合 は 本 来 の 収 集 予 定 地 を(1)と 表 記 した 比 較 のため 茨 城 海 域 の 定 常 調 査 で 採 取 しているミズダコ マコガレイ 及 びヒラメについ ても 調 査 した 2) 結 果 平 成 23 年 度 の 調 査 結 果 を 表 1 に 示 す 海 産 生 物 試 料 の 組 織 自 由 水 3 H 濃 度 は ND~0.23 Bq/L (0.14±0.04 Bq/L)である 前 期 の 海 水 の 3 H 濃 度 は 表 層 ND~0.15 Bq/L(0.11±0.024 Bq/L) 500m 以 浅 の 下 層 で ND~0.15 Bq/L(0.10±0.024 Bq/L)であるから 海 産 生 物 の 組 織 自 由 水 3 H 濃 度 はほぼ 海 水 の 3 H 濃 度 を 反 映 した 値 とみなせよう 因 みに アクティブ 試 験 開 始 前 の 海 産 生 物 試 料 の 組 織 自 由 水 3 H 濃 度 は 0.19±0.05Bq/L 海 水 の 3 H 濃 度 は 0.20±0.065Bq/L であった 茨 城 海 域 で 得 られた 海 産 生 物 の 3 H 濃 度 は 核 燃 海 域 の 海 産 生 物 の 3 H 濃 度 と 同 程 度 であった 平 成 13 年 度 からの 組 織 自 由 水 3 H 濃 度 の 推 移 を 図 1 に 表 層 海 水 の 3 H 濃 度 の 推 移 を 図 2 に 示 す 両 者 の 間 には 良 い 対 応 が 見 られている 平 成 23 年 度 前 期 海 産 生 物 試 料 の 組 織 自 由 水 濃 度 はおおむねアクティブ 試 験 開 始 以 前 と 同 程 度 であり 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 の 影 響 3 H -51-

はなかったと 考 えられる 表 1 海 産 生 物 の 3 H 濃 度 海 域 生 物 種 採 取 日 3 H 濃 度 (Bq/L) H 濃 度 (Bq/kg-wet) 組 織 自 由 水 有 機 結 合 型 組 織 自 由 水 有 機 結 合 型 スルメイカ(1) 2011.7.27 0.12 ± 0.021 (0.25 ± 0.10) 0.094 ± 0.016 (0.039 ± 0.016) スルメイカ(2) 2011.9.26 0.17 ± 0.022 (0.028 ± 0.083) 0.13 ± 0.017 (0.004 ± 0.012) ミズダコ(1) 2011.4.30 0.16 ± 0.022 (0.16 ± 0.10) 0.13 ± 0.018 (0.016 ± 0.0097) ミズダコ(2) 2011.10.18 0.23 ± 0.028 (0.13 ± 0.074) 0.19 ± 0.023 (0.013 ± 0.0072) カタクチイワシ 2011.6.3 0.16 ± 0.022 0.36 ± 0.085 0.12 ± 0.016 0.066 ± 0.016 サクラマス 2011.5.9 0.096 ± 0.021 0.43 ± 0.084 0.068 ± 0.015 0.08 ± 0.02 マトウダイ 2011.7.14 0.17 ± 0.022 0.34 ± 0.085 0.13 ± 0.017 0.048 ± 0.012 ウスメバル 2011.7.3-9.17 0.092 ± 0.021 0.29 ± 0.075 0.070 ± 0.016 0.043 ± 0.011 核 燃 クロソイ 2011.5.10 0.12 ± 0.028 (0.15 ± 0.084) 0.094 ± 0.022 (0.023 ± 0.012) 前 期 アイナメ(1) 2011.5.16 0.13 ± 0.022 (0.24 ± 0.086) 0.10 ± 0.017 (0.034 ± 0.012) アイナメ(2) 2011.6.20-23 0.17 ± 0.022 (0.044 ± 0.084) 0.13 ± 0.017 (0.007 ± 0.013) マダラ(1) 2011.4.27 0.14 ± 0.021 (0.30 ± 0.010) 0.11 ± 0.017 (0.034 ± 0.012) マダラ(2) 2011.6.13 0.15 ± 0.021 0.25 ± 0.084 0.12 ± 0.017 0.030 ± 0.010 スケトウダラ 2011.5.6 (0.062 ± 0.021) 0.24 ± 0.077 (0.050 ± 0.017) 0.028 ± 0.0092 ヒラメ 2011.6.23 (0.055 ± 0.020) (0.23 ± 0.084) (0.041 ± 0.016) (0.033 ± 0.012) マコガレイ 2011/6/7 0.18 ± 0.022 0.41 ± 0.085 0.14 ± 0.017 0.054 ± 0.011 キアンコウ(1) 2011.5.7 0.097 ± 0.021 (0.094 ± 0.085) 0.081 ± 0.018 (0.091 ± 0.0083) キアンコウ(2) 2011.5.22 0.11 ± 0.021 0.29 ± 0.083 0.091 ± 0.018 0.028 ± 0.0079 ヒラメ 2011.4.18-5.6 0.10 ± 0.028 (0.19 ± 0.085) 0.079 ± 0.021 (0.028 ± 0.012) 茨 城 マコガレイ 2011.5.13-6.30 0.12 ± 0.028 (0.17 ± 0.084) 0.094 ± 0.022 (0.024 ± 0.012) 前 期 ミズダコ 2011.5.7 0.11 ± 0.028 (0.11 ± 0.075) 0.094 ± 0.023 (0.011 ± 0.0075) 測 定 値 が 検 出 下 限 値 以 下 の 場 合 は( ) 内 に 表 示 した 100.000 10.00 10.000 組 織 自 由 水 3 H (Bq/L) 1.000 0.100 3 H 濃 度 (Bq/L) 1.00 0.10 0.010 0.001 1991/1/1 1995/1/1 1999/1/1 2003/1/1 2007/1/1 2011/1/1 2015/1/1 0.01 1991/1/1 1995/1/1 1999/1/1 2003/1/1 2007/1/1 2011/1/1 2015/1/1 図 1 海 産 生 物 の 組 織 自 由 水 3 H 濃 度 の 推 移 図 2 核 燃 海 域 表 層 海 水 の3H 濃 度 の 推 移 3. 結 語 平 成 23 年 度 前 期 の 核 燃 海 域 海 産 生 物 の 組 織 自 由 水 3 H 濃 度 はバックグラウンドレベルであ った しかし 平 成 25 年 度 に 再 処 理 施 設 の 竣 工 が 予 定 されており 今 後 も 引 き 続 き 調 査 を 継 続 し バックグラウンドデータを 蓄 積 する 必 要 があろう -52-

スルメイカ 肝 臓 中 の 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 御 園 生 淳 磯 山 直 彦 鈴 木 千 吉 及 川 真 司 1. 緒 言 当 研 究 所 は 平 成 3 年 来 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 の 海 域 ( 以 下 核 燃 海 域 と 言 う)で 漁 獲 される 種 々の 海 産 生 物 の 可 食 部 について 放 射 性 核 種 濃 度 を 調 べて 来 た 調 査 対 象 核 種 の 中 239+240 Pu は 骨 等 の 硬 組 織 に 沈 着 する 核 種 であるため 通 常 筋 肉 部 から 検 出 されることは 稀 であるが スル メイカの 肉 部 からはしばしば 検 出 される スルメイカ 肝 臓 の 239+240 Pu 濃 度 はさらに 高 いが 核 燃 海 域 に 来 遊 する 時 季 によって 差 が 認 められる 今 後 再 処 理 施 設 の 本 格 稼 働 後 にスルメイカの 239+240 Pu レベルに 変 動 が 見 られた 場 合 それが 従 来 見 られた 来 遊 時 季 等 による 変 化 であるか 否 かを 判 断 する 必 要 が 生 じよう 核 兵 器 由 来 と 使 用 済 み 原 子 燃 料 由 来 では Pu の 同 位 体 存 在 比 が 異 なることから 239+240 Pu 濃 度 の 高 い 肝 臓 について 240 Pu/ 239 Pu の 比 を 調 べた 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 試 料 と 方 法 核 燃 海 域 等 で 漁 獲 されたスルメイカを 収 集 し 肝 臓 の 239+240 Pu 濃 度 を 測 定 した 測 定 は 文 部 科 学 省 放 射 能 測 定 法 シリーズ12 プルトニウム 分 析 法 に 準 拠 して 行 い シリコン 半 導 体 検 出 器 で160,00 0 秒 間 計 測 した また 239+240 Pu 濃 度 測 定 済 みの 電 着 板 から 酸 によりPuを 溶 離 し ICP-MSにより 239 Pu 及 び 240 Puそれぞれの 濃 度 を 求 め 240 Pu/ 239 Pu 同 位 体 比 を 算 出 した 2) 結 果 1 239+240 Pu 濃 度 図 1に 核 燃 海 域 のスルメイカ 肝 臓 の 239+240 Pu 濃 度 の 経 年 変 動 を 示 す スルメイカ 肝 臓 の 239+240 Pu 濃 度 は 概 ね 同 レベルで 推 移 してきた しかし 平 成 22 年 度 までの 前 期 に 漁 獲 された 群 では0.0059±0.0036 Bq/kg-wet 後 期 に 漁 239+240 Pu (Bq/kg-wet) 1.0000 獲 された 群 で は 0.0033±0.0024Bq/kgwetであり 0.1000 前 期 に 漁 獲 された 群 の 濃 0.0100 度 がやや 高 い 傾 向 があった 0.0010 平 成 23 年 度 に 核 燃 沖 で 漁 獲 された 0.0001 2001 年 1 月 2005 年 1 月 2009 年 1 月 2013 年 1 月 スルメイカ 肉 部 か 前 期 後 期 らは 福 島 第 一 原 子 図 1 核 燃 沖 スルメイカの 肝 臓 のPu 濃 度 力 発 電 所 事 故 に 由 来 すると 考 えられ -53-

240 Pu/ 239 Pu ( 原 子 数 比 ) 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 る 110 Am 134 Csが 検 出 されている が 肝 臓 の 239+240 Pu 濃 度 は 過 去 の 値 と 比 べて 大 差 ない( 図 1) 海 水 の 239+240 Pu 濃 度 にも 変 化 が 見 られなかったことから 239+240 P uに 関 しては 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 の 影 響 を 受 けていないと みなせよう 0.0 2001/1/1 2005/1/1 2009/1/1 2013/1/1 図 2 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 の 推 移 2 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 平 成 23 年 度 に 分 析 したスルメ イカ 肝 臓 の 239 Pu 240 Pu 濃 度 及 び 両 者 の 原 子 数 比 を 表 1 に 原 子 数 比 の 推 移 を 図 2 に 示 す 図 1 で 見 られたように 239+240 Pu 濃 度 には 変 動 が 見 られるが 原 子 数 比 はほぼ 同 程 度 で 推 移 している 海 域 別 に 見 ても 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 はほぼ 同 程 度 となった 平 成 10 年 に 釧 路 等 全 国 9 港 に 水 揚 げされたスルメイカ 肝 臓 中 の 240 Pu/ 239 Pu 比 0.216±0.021(Oikawa and Yamamoto 2007)ともほぼ 同 程 度 である 20 年 度 から 当 所 が 分 析 した 海 水 の 240 Pu/ 239 Pu 比 も 0.219~0.243 の 範 囲 であった したがって 本 調 査 で 検 出 されたスルメイカの Pu は 過 去 の 核 実 験 の 名 残 であるとみなすことができよう 海 域 試 料 採 取 日 表 1 スルメイカ 肝 臓 の 240 Pu/ 239 Pu 比 239 Pu (Bq/kg 生 鮮 物 ) (Bq/kg 生 鮮 物 ) ( 原 子 数 比 ) 四 国 沖 2011.8.1 0.0018 ± 0.00005 0.0015 ± 0.00003 0.227 ± 0.0069 2011.7.27 0.0028 ± 0.00004 0.0023 ± 0.00003 0.226 ± 0.0025 核 燃 海 域 2011.11.6 0.0016 ± 0.00001 0.0014 ± 0.00009 0.231 ± 0.015 2011.9.26 0.0028 ± 0.00007 0.0024 ± 0.00004 0.230 ± 0.0057 2011.11.25 0.0014 ± 0.00003 0.0012 ± 0.00002 0.231 ± 0.0067 襟 裳 沖 2011.10.19 0.0022 ± 0.00004 0.0018 ± 0.00008 0.223 ± 0.010 羅 臼 沖 2011.10.14 0.0021 ± 0.00004 0.0017 ± 0.00007 0.226 ± 0.0092 津 軽 海 峡 越 前 岬 沖 2011.10.25 2011.5.23 0.0014 0.0014 ± 0.00003 ± 0.00003 0.0011 0.0011 ± 0.00002 ± 0.00002 0.215 0.215 ± 0.0061 ± 0.0061 2011.12.7 2011.10.6 0.0013 0.0017 ± 0.00001 ± 0.00002 0.0011 0.0014 ± 0.00006 ± 0.00005 0.227 0.228 ± 0.013 ± 0.0087 大 和 堆 2011.7.26 0.0051 ± 0.00007 0.0043 ± 0.00004 0.232 ± 0.0036 240 Pu 240 Pu/ 239 Pu 3. 結 語 核 燃 海 域 で 漁 獲 されたスルメイカの 肝 臓 の 239+240 Pu 濃 度 には 漁 獲 時 期 によりばらつきが 見 られ るが 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 はほぼ 同 程 度 である 他 海 域 で 漁 獲 されたスルメイカの 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 とも 同 程 度 であることを 勘 案 すると ここで 検 出 された 239+240 Pu は 過 去 の 核 実 験 の 名 残 であり 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 影 響 は 認 められないことを 示 している -54-

核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 周 辺 における 海 水 中 の 3 H 調 査 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 磯 山 直 彦, 御 園 生 淳, 及 川 真 司, 鈴 木 千 吉 1. 緒 言 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 ( 以 下, 核 燃 海 域 )における 海 洋 放 射 能 調 査 は, 平 成 2 年 度 か ら 青 森 県 太 平 洋 岸 の 沖 合 漁 場 を 対 象 として 開 始 され, 平 成 19 年 度 からは 再 処 理 施 設 の 本 格 稼 動 に 備 えて 岩 手 県 沖 合 に 海 域 を 拡 大 し, 年 2 回, 全 22 測 点 で 実 施 されている アクティブ 試 験 開 始 後 の 平 成 19 年 度 調 査 では, 一 部 測 点 の 表 層 水 で, 平 成 18 年 度 (アクテ ィブ 試 験 開 始 ) 以 前 の 濃 度 範 囲 (ND~0.24Bq/L)を 上 回 る 3 Hが 観 測 され, 同 様 に 平 成 20 年 度 にも, 一 部 測 点 の 表 層 水 で, 平 成 19 年 度 の 濃 度 範 囲 をさらに 上 回 る 3 Hが 観 測 された そこで 再 処 理 施 設 が 本 格 稼 働 した 際, 放 出 された 3 Hが 陸 沿 いの 南 下 流 によって 拡 散 し, 核 燃 海 域 外 に 達 する 可 能 性 を 確 認 するため, 平 成 20 年 度 に 調 査 範 囲 をさらに 広 げ, 表 層 水 中 の 3 Hを 測 定 した 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 試 料 と 方 法 1 試 料 核 燃 海 域 からの 南 下 流 の 広 がりを 考 慮 し, 核 燃 海 域 の 南 側 に 位 置 する 大 船 渡 市 の 沖 合 に 新 たに3 測 点 ( 核 燃 沖 S26~S28),また 核 燃 海 域 沖 合 方 向 の 3 H 濃 度 を 把 握 するために, 津 軽 海 峡 の 東 側 出 口 に 核 燃 沖 T2を 設 け, 表 層 水 ( 海 面 下 1m)を 採 取 した さらに 他 海 域 の 3 H 濃 度 を 把 握 するため, 原 子 力 発 電 所 等 周 辺 海 域 ( 以 下, 発 電 所 海 域 )における 海 洋 放 射 能 調 査 の 内, 核 燃 海 域 と 同 じ 太 平 洋 側 に 位 置 する 青 森 海 域 ( 測 点 3,4), 宮 城 海 域 ( 測 点 1~4), 福 島 第 一 海 域 ( 測 点 3,4), 福 島 第 二 海 域 ( 測 点 1,2), 茨 城 海 域 ( 測 点 1~4), 対 照 海 域 として 大 和 堆 YR1, 四 国 沖 KC1, 襟 裳 沖 E11において 採 取 した 表 層 水 も 試 料 とした 2 方 法 3 H 分 析 は 海 洋 放 射 能 調 査 の 分 析 法 と 同 様 に, 試 料 を 電 解 濃 縮 し, 低 バックグラウンド 液 体 シンチレーションカウンタで500 分 (50 分 10 回 測 定 ) 測 定 した 試 料 を 電 解 濃 縮 したため, 0.1Bq/L 程 度 の 低 い 濃 度 レベルの 3 Hも 検 出 可 能 となった 2) 結 果 1 平 成 23 年 度 の 核 燃 海 域 周 辺 等 における 表 層 水 中 3 H 濃 度 核 燃 海 域 の 南 側 に 設 けた 核 燃 沖 S26~S28における 表 層 水 中 3H 濃 度 は, 測 点 による 濃 度 の 大 きな 違 いは 見 られず,ND~0.083Bq/Lであった これらの3 測 点 の 3 H 濃 度 は, 核 燃 海 域 の 最 も 南 側 に 位 置 する 測 点 21 及 び22で 採 取 した 表 層 水 の 濃 度 (ND~0.12Bq/L)と 同 程 度 であった 津 軽 海 峡 の 東 側 出 口 に 設 けた 核 燃 沖 T2における 表 層 水 の 3 H 濃 度 は,0.083 及 び0.11Bq/Lで, 同 測 点 における 平 成 14~22 年 度 の 表 層 水 中 3 H 濃 度 (0.089~0.18Bq/L)と 同 程 度 であった ま た, 青 森 海 域 の 測 点 3 及 び4では0.083~0.13Bq/Lとなり, 核 燃 海 域 の 内,これら2 測 点 の 周 辺 に 位 置 する 測 点 11,12,14で 採 取 した 表 層 水 中 3 H 濃 度 (0.074~0.14Bq/L)とほぼ 同 程 度 であ った 同 様 に, 対 照 海 域 である 大 和 堆 YR1, 四 国 沖 KC1 及 び 襟 裳 沖 E11における 表 層 水 の 3 H 濃 度 は, -55-

それぞれ0.13Bq/L,0.098Bq/L,0.13Bq/Lであった これら 対 象 海 域 では,これまで 継 続 的 に 調 査 しており, 平 成 22 年 度 までの 表 層 水 の 3 H 濃 度 は, 大 和 堆 YR1で0.098~0.21Bq/L( 平 成 15 年 度 ~), 四 国 沖 KC1でND~0.20Bq/L( 平 成 16 年 度 ~), 襟 裳 沖 E11で0.067~0.19Bq/L( 平 成 14 年 度 ~)の 濃 度 範 囲 であった いずれも 平 成 23 年 度 の 3 H 濃 度 は, 過 去 の 濃 度 とほぼ 同 程 度 であった 平 成 20 年 度 から 開 始 した 本 調 査 において,これまで 実 施 した 核 燃 海 域 とそれら 周 辺 海 域 等 における 表 層 水 中 の 3 H 濃 度 と, 核 燃 海 域 における 濃 度 を 比 較 した( 図 1) 核 燃 海 域 の 3 H 濃 度 は, 平 成 20 年 度 前 期 の 測 点 2, 測 点 4, 測 点 8においてアクティブ 試 験 開 始 前 の 濃 度 範 囲 (ND ~0.24Bq/L)を 上 回 る 値 が 観 測 されたものの,それらを 除 くとほぼ 同 程 度 であった 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 1.3 0.56 0.45 0.2 ND0 核 燃 海 域 st.1 st.2 st.3 st.4 st.5 st.6 st.7 st.8 st.9 st.10 st.11 st.12 st.13 st.14 st.15 st.16 st.17 st.18 st.19 st.20 st.21 st.22 核 燃 沖 S26 S27 S28 核 燃 沖 T2 襟 裳 沖 E11 3 H 濃 度 (Bq/L) 青 森 海 域 測 点 3 測 点 4 大 和 堆 YR1 四 国 沖 KC1 平 成 20~22 年 度 平 成 23 年 度 図 1 平 成 20~23 年 度 における 核 燃 海 域 と 周 辺 海 域 等 との 表 層 水 中 3H 濃 度 の 比 較 2その 他, 発 電 所 海 域 における 表 層 水 中 3H 濃 度 前 述 の 青 森 海 域 を 除 いた 発 電 所 海 域 の 宮 城 海 域, 福 島 第 一 海 域, 福 島 第 二 海 域 及 び 茨 城 海 域 における 表 層 水 中 3 H 濃 度 は,ND~0.15Bq/Lであった 同 海 域 では, 平 成 14 及 び20~22 年 度 に 3 Hを 測 定 しており, 平 成 14 年 度 は0.13~0.19Bq/L, 平 成 20 年 度 は0.068~0.14Bq/L, 平 成 21 年 度 はND~0.16Bq/L, 平 成 22 年 度 は0.058~0.18Bq/Lであった 平 成 23 年 度 の 3 H 濃 度 は, 過 去 の 濃 度 とほぼ 同 程 度 であり, 平 成 23 年 3 月 に 発 生 した 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 に 伴 う 3 H 濃 度 上 昇 は, 本 調 査 の 結 果 では 見 られていない 3. 結 語 平 成 23 年 度 に 測 定 した 核 燃 海 域 及 び 周 辺 海 域 における 表 層 水 中 の 3 H 濃 度 (ND~0.15Bq/L) は, 過 去 に 測 定 した 値 とほぼ 同 程 度 であった また, 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 に 伴 う 明 ら かな 表 層 水 中 の 3 H 濃 度 上 昇 も 認 められないことから, 本 年 度 測 定 値 は,これら 海 域 における 表 層 水 中 3 H 濃 度 のバックグラウンドレベルを 示 していると 考 えられる 本 調 査 結 果 では, 再 処 理 施 設 からの 放 出 時 に 合 わせて 調 査 していないため, 拡 散 範 囲 の 推 定 は 困 難 であったが,バックグラウンドレベルが 明 確 となったことで, 今 後 の 調 査 にとって 有 効 であると 考 えられる -56-

核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 の 129 I 濃 度 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 御 園 生 淳 磯 山 直 彦 及 川 真 司 鈴 木 千 吉 1. 緒 言 核 燃 料 再 処 理 施 設 の 稼 働 に 備 え 海 洋 の 現 在 の 129 I の 濃 度 レベルとその 変 動 幅 を 知 るた めに 平 成 22 年 度 までに 引 き 続 き 核 燃 料 サイクル 施 設 沖 合 海 域 ( 以 下 核 燃 海 域 と 言 う) 等 で 採 水 し 加 速 器 質 量 分 析 計 (Accelerator Mass Spectrometer: 以 下 AMS と 記 す) により 129 I の 分 析 を 行 ったので 報 告 する 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 試 料 と 方 法 核 燃 海 域 (AM01~22) 核 燃 沖 (S26~28 T02) 青 森 海 域 (HG03 HG04) 等 で 採 取 し た 海 水 を 分 析 に 供 した 129 I は アスコルビン 酸 還 元 法 により 海 水 中 のヨウ 素 酸 イオンをヨウ 化 物 イオンに 還 元 し た 後 溶 媒 抽 出 法 によりヨウ 化 銀 として 回 収 し 測 定 に 供 した 測 定 には( 独 ) 日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 青 森 研 究 開 発 センターむつ 事 業 所 に 設 置 されている AMS を 用 いた また 安 定 ヨウ 素 はアスコルビン 酸 還 元 法 を 用 いたイオンクロマトグラフィーにより 測 定 した 2) 結 果 1 核 燃 海 域 の 海 水 の 安 定 ヨウ 素 及 び 129 I の 濃 度 各 測 点 表 層 水 の 安 定 ヨウ 素 濃 度 は 前 後 期 を 通 じておおむねこれまでの 値 と 同 程 度 であ った( 表 1) 前 期 の 表 層 水 ( 採 水 :5 月 12-27 日 )の 129 I 濃 度 は 12 試 料 が 25-30 10-9 Bq/L 8 試 料 が 30-35 10-9 Bq/L であったが AM04 05 22 S26 27 で 70 10-9 Bq/L を 超 した 従 来 再 処 理 施 設 から 129 I が 放 出 された 期 間 を 除 き 表 層 水 の 129 I 濃 度 は 20-40 10-9 Bq/L で 推 移 して 来 た 採 水 期 間 直 近 及 び 期 間 中 に 再 処 理 施 設 からの 129 I 放 出 は 認 められていないので こ れらは 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 にともない 大 気 中 に 放 出 された 129 I の 影 響 と 考 えられる ( 表 1) 後 期 の 表 層 水 ( 採 水 :10 月 4-13 日 )は 27.4±3.7 10-9 Bq/L(22.1-38.6 10-9 Bq/L)となり 通 常 レベルの 値 を 示 した 2その 他 の 海 域 の 安 定 ヨウ 素 及 び 129 I 濃 度 宮 城 海 域 福 島 海 域 茨 城 海 域 でも 安 定 ヨウ 素 濃 度 は 平 成 22 年 度 までと 大 差 なかったが 129 I 濃 度 は FSN03 04 FSS01 02 で 100 10-9 Bq/L を 超 した 他 IB01 で 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 の 影 響 をうかがわせる 値 となった MI02-04 の 値 も 従 来 と 比 較 して 高 めであった ( 表 2) 襟 裳 沖 測 点 の 値 も 従 来 の 約 20-30 10-9 Bq/L に 比 べて 高 く 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 の 影 響 を 受 けた 可 能 性 がある しかし 四 国 沖 の 14.3 10-9 Bq/L 大 和 堆 の 約 30 10-9 Bq/L はこれまでの 調 査 で 観 察 された 黒 潮 系 水 及 び 大 和 堆 の 範 囲 (それぞれ 約 10-20 10-9 Bq/L 約 30-40 10-9 Bq/L)であり 129 I に 関 しては 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 の 影 響 は 受 けていな いと 考 えられる 3. 結 語 核 燃 海 域 を 主 に 海 水 の 安 定 ヨウ 素 及 び 129 I の 分 析 を 行 った 核 燃 海 域 の 一 部 及 び 福 島 海 域 等 で 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 の 影 響 と 見 られる 129 I 濃 度 の 上 昇 が 観 察 されたが 四 -57-

国 沖 大 和 堆 は 影 響 を 受 けなかったと 考 えられる 表 1 核 燃 海 域 表 層 水 の 安 定 ヨウ 素 及 び 129 I 濃 度 ( 前 期 ) 海 域 核 燃 青 森 核 燃 沖 測 点 129 I/ 127 I 安 定 ヨウ 素 濃 度 129 I 濃 度 I 濃 度 ( 10-12 ) ( 10-6 g/l) ( 10 6 atoms/l) ( 10-9 Bq/L) AM01 2.49 ± 0.27 46.1 ± 0.21 24.3 ± 2.9 34.0 ± 4.0 AM02 2.22 ± 0.19 52.0 ± 0.27 21.8 ± 2.0 30.6 ± 2.8 AM03 2.22 ± 0.16 51.0 ± 0.24 21.9 ± 1.7 30.6 ± 2.4 AM04 10.7 ± 0.5 51.1 ± 0.24 110 ± 5 154 ± 7 AM05 4.93 ± 0.16 51.0 ± 0.23 50.3 ± 1.7 70.4 ± 2.4 AM06 2.06 ± 0.11 52.3 ± 0.25 20.0 ± 1.2 28.1 ± 1.6 AM07 1.96 ± 0.24 51.7 ± 0.24 19.3 ± 2.5 27.0 ± 3.5 AM08 2.45 ± 0.17 51.7 ± 0.23 24.0 ± 1.8 33.7 ± 2.5 AM09 2.27 ± 0.10 52.0 ± 0.24 22.1 ± 1.1 31.0 ± 1.6 AM10 2.02 ± 0.31 50.5 ± 0.23 19.8 ± 3.3 27.8 ± 4.6 AM11 2.01 ± 0.08 52.0 ± 0.19 19.7 ± 0.9 27.5 ± 1.3 AM12 2.02 ± 0.05 51.9 ± 0.18 19.6 ± 0.6 27.4 ± 0.9 AM13 2.05 ± 0.04 51.9 ± 0.15 19.9 ± 0.5 27.8 ± 0.8 AM14 2.11 ± 0.15 51.9 ± 0.19 20.6 ± 1.6 28.8 ± 2.2 AM15 2.18 ± 0.07 51.9 ± 0.16 21.3 ± 0.8 29.8 ± 1.2 AM16 1.99 ± 0.15 51.9 ± 0.15 19.4 ± 1.6 27.2 ± 2.3 AM17 2.40 ± 0.14 51.7 ± 0.14 23.5 ± 1.5 32.9 ± 2.1 AM18 2.08 ± 0.16 52.5 ± 0.14 20.1 ± 1.7 28.2 ± 2.3 AM19 2.20 ± 0.12 52.6 ± 0.13 21.5 ± 1.3 30.1 ± 1.8 AM20 2.65 ± 0.09 53.0 ± 0.12 25.9 ± 1.0 36.2 ± 1.4 AM21 2.47 ± 0.28 52.2 ± 0.16 24.2 ± 2.9 33.9 ± 4.1 AM22 15.1 ± 0.4 54.8 ± 0.20 154 ± 4 216 ± 6 HG03 2.15 ± 0.10 52.7 ± 0.15 21.0 ± 1.1 25.8 ± 1.5 HG04 1.95 ± 0.12 52.4 ± 0.16 19.3 ± 1.3 25.9 ± 1.8 S26 20.8 ± 0.6 54.9 ± 0.14 214 ± 6 300 ± 9 S27 27.9 ± 1.0 54.7 ± 0.20 290 ± 10 406 ± 15 S28 3.22 ± 0.11 55.2 ± 0.19 31.9 ± 1.2 44.7 ± 1.6 T02 2.05 ± 0.32 51.9 ± 0.22 19.0 ± 3.3 26.6 ± 4.7 表 2 他 海 域 表 層 水 の 安 定 ヨウ 素 濃 度 及 び 129 I 濃 度 海 域 測 点 129 I/ 127 I 安 定 ヨウ 素 濃 度 129 I 濃 度 I 濃 度 ( 10-12 ) ( 10-6 g/l) ( 10 6 atoms/l) ( 10-9 Bq/L) MI01 2.69 ± 0.16 50.1 ± 0.22 26.2 ± 1.7 36.6 ± 2.4 宮 城 MI02 3.19 ± 0.28 50.4 ± 0.23 30.4 ± 2.8 42.6 ± 4.0 MI03 3.56 ± 0.18 50.8 ± 0.20 34.6 ± 2.0 48.5 ± 2.7 MI04 3.28 ± 0.27 51.3 ± 0.21 32.4 ± 2.8 45.3 ± 3.9 福 島 第 1 福 島 第 2 FSN03 FSS01 2.81 5.49 ± 0.09 ± 0.16 53.9 53.4 ± 0.19 ± 0.21 91.6 181 ± 3.1 ± 5 128 253 ± 4 ± 7 FSN04 FSS02 6.88 5.17 ± 0.18 ± 0.16 52.7 52.6 ± 0.21 ± 0.19 227 169 ± 6 ± 5 318 237 ± 8 ± 8 IB01 1.27 ± 0.12 53.2 ± 0.19 40.3 ± 4.1 56.4 ± 5.7 茨 城 IB02 0.695 ± 0.147 54.3 ± 0.20 21.8 ± 5.0 30.5 ± 7.0 IB03 0.650 ± 0.036 54.4 ± 0.20 19.9 ± 1.3 27.9 ± 1.8 IB04 0.565 ± 0.110 54.3 ± 0.20 16.9 ± 3.7 23.6 ± 5.1 襟 裳 沖 E11 2.95 ± 0.11 46.3 ± 0.18 29.2 ± 1.2 40.9 ± 1.7 E11 1.99 ± 0.11 51.2 ± 0.17 30.3 ± 2.6 42.4 ± 3.7 四 国 沖 KC01 1.19 ± 0.10 54.8 ± 0.18 10.2 ± 1.2 14.3 ± 1.7 大 和 堆 YR01 2.24 ± 0.05 53.7 ± 0.26 21.1 ± 0.9 29.6 ± 1.2 YR04 2.22 ± 0.13 53.7 ± 0.23 21.0 ± 1.5 29.4 ± 2.1-58-

海 水 海 底 土 の 239+240 Pu 濃 度 及 び 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 及 川 真 司 渡 部 輝 久 御 園 生 淳 鈴 木 千 吉 森 薗 繁 光 1. 緒 言 当 所 では 平 成 3 年 以 来 文 部 科 学 省 からの 委 託 事 業 の 一 環 として 漁 場 環 境 保 全 と 漁 獲 物 への 風 評 被 害 防 止 のた めに 使 用 済 核 燃 料 再 処 理 施 設 沖 合 の 海 域 ( 以 下 核 燃 海 域 という)に おいて 海 水 および 海 底 土 に 含 まれる Pu の 調 査 を 実 施 してきた( 図 1 参 照 ) 近 年 においては 239+240 Pu 濃 度 に 加 え ICP 質 量 分 析 計 による 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 の 測 図 1 調 査 対 象 海 域 と 測 点 定 などを 加 えた 調 査 を 開 始 し その 成 果 の 一 部 を 本 調 査 研 究 発 表 会 等 で 公 表 してきた 一 方 全 国 の 原 子 力 発 電 所 前 面 海 域 ( 以 下 発 電 所 海 域 という)では Pu は 対 象 としておらず 核 燃 海 域 に 限 った 調 査 研 究 に 留 まり 比 較 のためにも 全 国 規 模 の 海 域 における Pu について 濃 度 および 原 子 数 比 の 知 見 を 得 る 必 要 があった 従 来 実 施 している 核 燃 海 域 での Pu 調 査 に 加 え 発 電 所 海 域 で 実 施 している 調 査 ( 海 水 および 海 底 土 : 90 Sr 137 Cs およびガンマ 線 放 出 核 種 )のために 採 取 した 海 水 海 底 土 試 料 を 用 い 全 国 規 模 での 239+240 Pu 濃 度 および 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 についてバックグラ ウンドとなる 知 見 を 得 ることを 主 たる 目 的 とし 平 成 20 年 度 から 引 き 続 きこれらの 調 査 を 行 ってきた 本 稿 では 東 京 電 力 福 島 第 一 発 電 所 事 故 後 にあたる 平 成 23 年 度 前 期 に 採 取 した 試 料 についての 結 果 を 記 載 した 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 239+240 Pu の 定 量 および 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 の 測 定 文 部 科 学 省 放 射 能 測 定 法 シリーズ 12 プルトニウム 分 析 法 ( 平 成 2 年 改 訂 )に 準 じ 海 水 試 料 100L, 海 底 土 試 料 ( 乾 燥 細 土 )50g を 放 射 化 学 分 析 に 供 し アルファ 線 スペクトロメトリーにより 239+240 Pu を 定 量 した 239+240 Pu の 定 量 を 終 えた 電 着 板 につい て 再 度 化 学 分 離 精 製 を 経 て 約 5ml の 1M 硝 酸 に 完 全 溶 解 させ ICP 測 定 用 溶 液 を 得 た 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 の 測 定 には 二 重 収 束 型 ICP 質 量 分 析 計 (Finnigan ELEMENT2)を -59-

用 いた 2) 結 果 表 層 水 に 含 まれる 239+240 Pu 濃 度 は ND ~ 0.0095mBq/L の 範 囲 にあ った 下 層 水 においては す べ て の 試 料 か ら 239+240 Pu が 検 出 され 0.0035 ~ 0.030mBq/L の 範 囲 にあった 表 層 水 およ び 下 層 水 の 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 については 0.191 ~0.255の 範 囲 にあり 平 均 値 とその 標 準 偏 差 は 0.224±0.015であった( 図 2 参 照 ) 海 底 土 に 含 まれる 239+240 Pu の 濃 度 は0.37 ~ 4.1Bq/kg 乾 燥 土 の 範 囲 にあ った 239+240 Puの 濃 度 は 泥 質 によって 変 化 すること が 前 年 度 と 同 様 に 認 めら れ これらの 結 果 は 通 常 の 濃 度 範 囲 にあると 考 えら れる 一 方 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 は0.199~0.267の 範 囲 にあり 平 均 値 とその 標 準 偏 差 は0.234±0.014 であっ た( 図 3 参 照 ) 図 2 図 3 日 本 周 辺 海 域 の 海 水 に 含 まれる 239+240 Pu 濃 度 および 240 Pu/ 239 P 原 子 数 比 日 本 周 辺 海 域 の 海 底 土 に 含 まれる 239+240 Pu 濃 度 および 240 Pu/ 239 P 原 子 数 比 3. 結 語 平 成 23 年 3 月 に 起 きた 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 に 際 してPuが 近 傍 の 陸 域 環 境 から 検 出 されたとの 報 道 もあった しかし 本 調 査 を 行 った 海 洋 環 境 においては 239+240 Pu 濃 度 並 びに 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 ともに 過 去 3 年 間 と 同 様 の 変 動 範 囲 にあり Puが 付 加 さ れた 事 実 は 確 認 できない 参 考 文 献 1) 文 部 科 学 省 放 射 能 測 定 法 シリーズ12 プルトニウム 分 析 法 ( 平 成 2 年 改 訂 ) 2) 文 部 科 学 省 放 射 能 測 定 法 シリーズ16 環 境 試 料 採 取 法 ( 昭 和 58 年 ) -60-

海 底 土 中 の 241 Pu 及 び 241 Am の 調 査 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 及 川 真 司 渡 部 輝 久 御 園 生 淳 鈴 木 千 吉 森 薗 繁 光 1. 緒 言 環 境 中 に 存 在 する 241 Amは 過 去 の 大 気 圏 核 爆 発 実 験 で 環 境 に 付 加 され た 241 Pu( 半 減 期 14.4 年 β - decay)か ら 生 長 したものと 推 測 される 現 在 の ところ 主 に 土 壌 等 の 一 般 環 境 で 見 出 される 241 Amは その 報 告 例 はあまり ない 表 層 土 壌 について Kreyら 1) に よ れ ば 1974 年 時 点 で の 241 Am/ 239+240 Pu 放 射 能 比 は22% 程 度 と 見 積 もられ 241 Puからの 生 長 分 を 加 味 すると 2037 年 頃 に42% 程 度 まで 上 昇 すると 試 算 されている 一 方 日 本 海 沿 岸 の 海 底 土 について Yamamoto ら 2) によれば 2030 年 頃 に41% 程 度 ま で 上 昇 すると 試 算 されている 使 用 済 核 燃 料 の 再 処 理 に 際 しては 241 Puか 図 1 調 査 対 象 海 域 ら 241 Amが 生 長 することを 考 慮 し Pu 同 位 体 のみならず 海 洋 環 境 における 241 Pu 及 び 241 Am の 調 査 も 重 要 な 課 題 になると 考 えられる しかしながら 当 該 施 設 の 本 格 稼 働 をまえに 漁 場 海 洋 環 境 における 241 Puはもとより 241 Am 調 査 に 関 する 知 見 もほとんどなかった 一 方 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 の 影 響 を 評 価 するために 陸 域 で 241 Puや 241 Amに 関 する 調 査 研 究 も 行 われている 3) 海 洋 環 境 でのこれら 核 種 についての 調 査 研 究 の 必 要 性 が 高 まりつつあるなか 当 所 では 平 成 11 年 度 から 平 成 17 年 度 にかけて 核 燃 茨 城 新 潟 大 和 堆 及 び 四 国 沖 海 域 で 採 取 した 表 層 海 底 土 を 対 象 とした 241 Am 調 査 を 実 施 し その 濃 度 について0.2~4Bq/kg-dry 程 度 であることを 明 らかにした 本 稿 では 本 調 査 事 業 の 各 種 分 析 結 果 を 補 完 し また 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 の 影 響 を 評 価 するために 平 成 23 年 度 に 原 子 力 発 電 所 前 面 海 域 ( 図 1 参 照 )で 採 取 した 海 底 土 を 調 査 対 象 とし 表 層 海 底 土 に 含 まれる 241 Puと 241 Amを 調 査 分 析 した 結 果 を 報 告 する 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 対 象 試 料 対 象 とした 海 底 土 試 料 は 平 成 20 年 度 に 採 取 した 表 層 海 底 土 とした 本 試 料 は 当 該 年 -61-

度 において 定 常 調 査 に 資 するため 前 処 理 を 経 てその 余 剰 分 を 適 切 に 保 管 していたもの である 2) 241 Pu 及 び 241 Amの 定 量 海 底 土 に 含 まれる 241 Puは 陰 イオン 交 換 樹 脂 カラムによりPuを 精 製 後 フッ 化 ネオ ジムに 共 沈 させ 沈 殿 物 を 希 塩 酸 に 溶 解 させた 次 いで 乳 化 シンチレータを 加 えて 測 定 用 試 料 とし 241 Puを 液 体 シンチレーションカウンタで 定 量 した また 241 Amについて は 文 部 科 学 省 放 射 能 測 定 法 シリーズ21 アメリシウム 分 析 法 ( 平 成 2 年 )に 準 じ 海 底 土 試 料 ( 乾 燥 細 土 )50gを 放 射 化 学 分 析 に 供 し アルファ 線 スペクトロメトリーによ り 定 量 した 3) 結 果 調 査 結 果 を 図 2 に 示 し た 海 底 土 に 含 まれる 241 Puの 濃 度 は 試 料 採 取 日 に 減 衰 補 正 した 値 とし てND~3.9 Bq/kg 乾 燥 土 の 範 囲 にあり 239+240 Puと 同 様 に 泥 質 の 発 達 している 測 点 で 高 い 傾 向 にあった 241 Puが 検 出 された 試 料 の 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 Pu-241 Am-241 241 Pu/ 239+240 Pu 放 射 能 比 は 海 域 図 2 調 査 結 果 一 定 ではなく0.75~1.2の 範 囲 にあり 幅 を 持 った 値 であった 一 方 241 Amの 濃 度 は0.22~2.1 Bq/kg 乾 燥 土 の 範 囲 にあり 241 Puと 同 様 に 泥 質 の 発 達 した 測 点 で 高 い 傾 向 を 示 した 241 Am/ 239+240 Pu 放 射 能 比 は 静 岡 海 域 試 料 を 除 き0.6 前 後 で 全 国 ほぼ 一 定 であったが 陸 域 で 予 測 されている 大 気 圏 核 爆 発 実 験 に 由 来 する 241 Am/ 239+240 Pu 放 射 能 比 (2042 年 に 最 大 値 0.36になる 2) )と 比 較 す ると 明 らかに 高 い 傾 向 が 見 られた 3. 結 語 平 成 15 年 度 に 茨 城 海 域 及 び 新 潟 海 域 で 採 取 した 表 層 海 底 土 に 含 まれる 241 Am/ 239+240 Pu 放 射 能 比 がほぼ0.6であることから 海 洋 環 境 における 大 気 圏 核 爆 発 実 験 に 起 因 する 241 Am/ 239+240 Pu 放 射 能 比 は0.6 前 後 であると 推 測 され また 平 成 23 年 3 月 に 発 生 した 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 に 起 因 する 241 Puや 241 Amの 増 加 も 認 められない 結 果 となった 参 考 文 献 1) Yamamoto M. et al. Radiochimica Acta 51, 85-95(1990). 2) Livingston et al. Earth Planet. Sci. Lett. 25, 361-367(1975). 3) Zheng J. et al. Sci. Rep. 2, 304; DOI:10.1038/srep00304(2012). -62-

海 底 土 中 の Pu 同 位 体 及 び 241 Am の 深 度 分 布 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 及 川 真 司 渡 部 輝 久 御 園 生 淳 鈴 木 千 吉 森 薗 繁 光 1. 緒 言 漁 場 海 洋 環 境 にお ける 241 Am 調 査 に 関 する 知 見 はほとんど なく 全 国 規 模 の 調 査 研 究 の 必 要 性 が 高 ま りつつあるなか 平 成 11 年 度 から 平 成 17 年 度 にかけて 核 燃 茨 城 新 潟 大 和 堆 及 び 四 国 沖 海 域 で 採 取 した 海 底 土 を 対 象 とした 調 査 を 実 施 し 表 層 海 底 土 中 の 241 Am 濃 度 に 図 1 調 査 対 象 海 域 ついて 0.2~ 4Bq/kg-dry 程 度 であることを 明 らかにし た しかしながら 限 定 された 調 査 海 域 であることや 239+240 Pu 241 Pu 及 び 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 などを 交 えた 調 査 ま でに 至 っておらず 調 査 解 析 を 行 う 必 要 があった 本 稿 では 核 燃 料 再 処 理 施 設 の 本 格 稼 働 を 前 に 近 年 の 239+240 Pu 調 査 で 比 較 的 高 い 濃 度 を 観 測 している 核 燃 海 域 測 点 15( 水 深 約 1000m)で 採 取 した 柱 状 採 泥 試 料 について まず 239+240 Pu 濃 度 と 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 の 深 度 分 布 を 調 査 す るとともに 平 成 15 年 度 に 茨 城 海 域 及 び 新 潟 海 域 で 採 取 した 柱 状 採 泥 試 料 ( 239+240 Pu 分 析 測 定 を 終 えた Pu 電 着 板 ) について 241 Pu 及 び 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 の 分 析 を 行 った 結 果 を 記 載 した 図 2 核 燃 海 域 測 点 15 で 採 取 した 柱 状 採 泥 試 料 の 239+240 Pu 濃 度 及 び 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 の 深 度 分 布 -63-

2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 対 象 試 料 対 象 とした 海 底 土 試 料 は 平 成 23 年 度 に 核 燃 海 域 で 採 取 した 表 層 海 底 土 とした これに 加 え 平 成 15 年 度 に 茨 城 海 域 及 び 新 潟 海 域 で 採 取 した 柱 状 採 泥 試 料 から 239+240 Pu 分 析 のために 分 離 精 製 した Pu 電 着 板 は 適 切 に 保 管 していたものも 対 象 とし た 2) 結 果 平 成 23 年 度 に 核 燃 海 域 測 点 15 で 採 取 した 柱 状 海 底 土 試 料 に 含 まれる 239+240 Pu 及 び 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 の 分 析 測 定 結 果 を 図 2 に 示 した 239+240 Pu 濃 度 は 海 底 土 中 で 均 質 でなく 表 層 付 近 で 最 も 高 く 深 度 ととも に 減 少 する 傾 向 が 見 られたが 16cm 程 度 の 中 層 において 若 干 の 濃 度 上 昇 が 観 測 され 最 下 層 に 至 るすべての 層 で 検 出 された 各 層 における 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 は 239+240 Pu 濃 度 に 準 じて 変 動 が 見 られた 表 層 付 近 の 高 い 239+240 Pu 濃 度 における 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 は 0.22 程 度 と 高 い 値 を 示 した 一 方 10.5-12.0cm 層 及 び 21cm 以 深 の 層 において は 239+240 Pu 濃 度 は 低 く 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 についても 0.21 程 度 を 観 測 した 平 成 15 年 5 月 に 茨 城 海 域 で 採 取 した 柱 状 採 泥 試 料 について 平 成 15 年 度 に 239+240 Pu 及 び 241 Am の 分 析 を 行 った 試 料 (Pu 図 3 茨 城 海 域 ( 平 成 15 年 5 月 )で 採 取 した 柱 状 採 泥 試 料 の 239+240 Pu 濃 度 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 の 深 度 分 布 電 着 板 )から Pu を 再 度 分 離 精 製 し 241 Pu 及 び 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 を 測 定 した 結 果 を 図 3 に 示 した また 平 成 15 年 5 月 に 新 潟 海 域 で 採 取 した 柱 状 採 泥 試 料 についても 同 様 に 241 Pu 及 び 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 を 測 定 図 4 新 潟 海 域 ( 平 成 15 年 5 月 )で した 結 果 を 図 4 に 示 した 採 取 した 柱 状 採 泥 試 料 の 239+240 Pu 濃 度 及 び 240 Pu/ 239 Pu 原 子 数 比 の 深 度 分 布 3. 結 語 核 燃 海 域 測 点 15 の 深 度 分 布 から Pu について 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 等 の 影 響 は 確 認 できない また 241 Am を 交 えた 解 析 を 検 討 中 である -64-

海 水 中 の 放 射 性 核 種 の 移 行 解 析 手 法 の 検 討 - 平 成 20 年 度 春 季 調 査 結 果 の 再 評 価 と 周 辺 海 域 からの 流 入 評 価 - 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 稲 富 直 彦 森 薗 繁 光 磯 山 直 彦 御 園 生 淳 1. 緒 言 本 解 析 では 核 燃 海 域 におけるモニタリングデータの 解 釈 に 資 するため JODC の 水 温 塩 分 等 の 基 礎 情 報 を 収 集 整 理 するともに 核 燃 料 サイクル 施 設 におけるアクティブ 試 験 に よる 3 H 放 出 が 確 認 された 平 成 20 年 度 ~22 年 度 は JCOPE データを 利 用 した 移 行 解 析 手 法 を 検 討 改 良 を 加 えてきた 平 成 23 年 度 は 平 成 20 年 度 春 に 実 施 された 観 測 結 果 につい て 再 解 析 するとともに 福 島 原 発 事 故 後 のモニタリングデータ 評 価 を 行 うための 試 行 とし て 核 燃 海 域 を 中 心 とした より 広 域 における 粒 子 追 跡 を 実 施 した 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 平 成 20 年 度 春 期 調 査 の 再 評 価 平 成 20 年 春 季 の 調 査 期 間 前 後 (2008 年 4/20~5/25)について JCOPE データ(グリッ ドは 7km 7km 計 算 海 域 141~145 E 38~42 N)の 5m 層 ~1000m 層 の 流 速 を 用 いて 核 燃 料 再 処 理 施 設 の 3 H 放 出 実 績 にあわせた 幾 つかのパターンの 粒 子 追 跡 を 行 った 拡 散 効 果 については ランダム 歩 行 の 項 を 入 れた 計 算 とし 水 平 渦 動 拡 散 係 数 値 は スマゴリンス キーの 式 を 用 いた 流 速 場 依 存 型 とした 鉛 直 移 行 については 水 平 流 速 場 の 収 支 から 推 定 した 鉛 直 流 速 に 従 うものとした 粒 子 の 投 入 は 原 則 放 出 時 から 毎 時 5 千 個 ずつ 5 回 の 間 で 調 整 した 2) 平 成 23 年 度 春 秋 期 調 査 における 広 域 影 響 評 価 のための 粒 子 追 跡 JCOPE データ(グリッドは 7km 7km 計 算 海 域 140~146 E 34~44 N)の 5m 層 ~1000m 層 の 流 速 を 用 いて 核 燃 沖 海 域 への 広 域 の 影 響 を 評 価 した 拡 散 効 果 水 平 渦 動 拡 散 係 数 鉛 直 移 行 については 前 述 の 1)と 同 様 に 設 定 した 粒 子 の 投 入 は 2011 年 3 月 1 日 から 11 月 末 日 まで 毎 0 時 原 則 1 分 四 方 に 1 粒 子 以 上 を 均 等 に 配 置 し 経 過 を 観 察 した 3. 結 語 1)22 年 度 型 粒 子 追 跡 モデルによる 平 成 20 年 度 春 期 調 査 の 再 評 価 3 H は 北 東 から 親 潮 の 勢 力 に 押 される 格 好 で 次 第 に 拡 散 しながら 沿 岸 部 を 南 下 10 日 後 には 岩 手 付 近 にまで 広 がり 20 日 後 には 三 陸 沖 に 配 置 した 暖 水 渦 の 影 響 で 沿 岸 方 向 と 沖 合 方 向 へ 分 岐 した( 図 1) また 評 価 された 濃 度 のオーダーは 調 査 結 果 と 類 似 した 結 果 であった 2) 平 成 23 年 度 春 秋 期 調 査 における 広 域 影 響 評 価 のための 粒 子 追 跡 2011 年 3 月 1 日 に 海 表 面 に 一 様 に 単 位 量 の 仮 想 核 種 が 負 荷 された 場 合 の 表 層 の 濃 度 分 布 を 図 2 に 示 した 核 燃 沖 海 域 の 表 面 に 配 置 された 粒 子 は 親 潮 津 軽 暖 流 の 流 入 により 希 釈 されながら 南 東 方 向 へ 排 出 される 掃 出 し 効 果 が 顕 著 に 認 められ 3 か 月 後 には 親 潮 津 軽 暖 流 系 の 表 面 水 に 置 き 換 わる 様 子 が 示 され 三 陸 沖 には 常 磐 沖 を 北 上 した 黒 潮 系 の 断 水 渦 が 配 置 し 核 燃 沖 及 び 常 磐 沖 から 粒 子 が 収 束 し ぐるぐると 還 流 を 形 成 する 様 子 が -65-

認 められた 以 上 から 広 域 に 均 等 に 配 置 された 負 荷 は 三 陸 沖 に 収 束 する 傾 向 があり ま た 核 燃 沖 には 親 潮 及 び 津 軽 暖 流 による 系 外 からの 負 荷 の 影 響 が 強 いことが 推 察 された 今 後 様 々な 情 報 を 収 集 し 再 解 析 することにより 核 燃 海 域 を 中 心 とした 東 日 本 太 平 洋 岸 のモニタリング 海 域 における 濃 度 推 移 の 評 価 を 検 討 する 図 1 六 ヶ 所 再 処 理 施 設 沖 合 の 表 層 3 H 濃 度 分 布 (2008 年 4 月 20 日 放 出 ) 図 2 広 域 における 表 層 の 仮 想 核 種 濃 度 分 布 (2011 年 3 月 1 日 に 海 広 表 面 沈 着 量 を 単 位 量 として 与 えた 場 合 ) -66-

沖 合 海 底 土 における 137 Cs の 分 布 特 性 に 関 する 解 析 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 渡 部 輝 久 及 川 真 司 御 園 生 淳 稲 富 直 彦 鈴 木 千 吉 中 原 元 和 森 薗 繁 光 小 嶋 純 一 1. 緒 言 本 課 題 は 昭 和 58 年 度 より 原 子 力 発 電 所 等 周 辺 海 域 で 実 施 してきた 海 洋 放 射 能 調 査 結 果 に 基 づき 137 Cs 等 の 放 射 性 核 種 の 海 水 から 海 底 土 への 移 行 蓄 積 過 程 を 明 らかにし 放 出 放 射 能 の 漁 場 での 滞 留 予 測 に 資 することを 目 的 とし 平 成 21 年 度 より 開 始 した 本 課 題 の 最 終 年 度 となる 平 成 23 年 度 は 本 調 査 で 得 られてきた 海 底 土 中 の 137 Cs 濃 度 分 布 の 全 体 像 並 びにその 時 間 的 推 移 について 解 析 を 行 った 2. 調 査 研 究 の 概 要 海 底 土 中 の 137 Cs 濃 度 は 海 域 間 また 同 海 域 においても 測 点 間 で ばらつき が 大 きく 平 均 的 な 濃 度 を 得 ること あるいはその 全 体 像 を 把 握 することは 容 易 ではな い ここでは 各 年 度 において 得 られた 濃 度 値 の 出 現 頻 度 パターンから 中 央 値 を 誘 導 し 海 底 土 中 137 Cs 濃 度 の 全 測 点 の 平 均 的 な 値 を 求 めることを 試 み その 経 年 変 動 につ いて 検 討 を 加 えた 海 底 土 中 137 Cs 濃 度 は 一 般 に 底 質 により 大 きく 変 化 し 砂 質 で 低 く 泥 質 で 高 い 傾 向 があり 砂 質 の 海 底 土 では 不 検 出 の 結 果 を 得 ることもしばしば である そこで 各 年 度 の 海 底 土 中 137 Cs 濃 度 の 中 央 値 を 次 のような 手 順 を 用 いて 求 めた すなわち 測 定 結 果 を 不 検 出 データも 含 めて 昇 順 に 並 べ 有 意 な 測 定 値 の 出 現 確 率 ( 順 位 を n+1 で 除 した 値 ) を 得 たのちこの 確 率 に 相 当 する 標 準 正 規 分 布 曲 線 の 中 央 値 0 からの 距 離 を 標 準 偏 差 で 規 格 化 し た 値 を Microsoft 社 製 Excel の NORMSINV 関 数 で 求 めた そして NORMSINV 値 と 出 現 確 率 との 直 線 性 を 調 べる ことにより(χ 2 検 定 ) 測 定 結 果 の 正 規 性 を 判 断 した 正 規 確 率 用 紙 上 でその 正 規 性 を 調 べることと 同 義 である 累 積 出 現 頻 度 2.5 2 1.5 1 0.5 0-0.5-1 -1.5 0.1 1 10 137 Cs 濃 度 (Bq/kg- 乾 土 ) 図 1 平 成 19 年 度 に 得 られた 海 底 土 中 137 Cs 濃 度 の 累 積 出 現 頻 度 -67-

海 底 土 中 137 Cs 濃 度 の 累 積 出 現 頻 度 の 解 析 結 果 の 一 例 ( 平 成 19 年 度 デ ータ)を 図 1 に 示 す 昭 和 58 年 度 から 現 在 に 至 るほとんど すべての 年 度 で 海 底 土 中 137 Cs 濃 度 正 規 分 布 することは 棄 却 されるが 対 数 正 規 分 布 すること は 必 ずしも 棄 却 さ れない すなわち 海 底 土 中 137 Cs 濃 度 は 対 象 とする 海 域 137 Cs 濃 度 (Bq/kg- 乾 土 ) 10 1 0.1 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 試 料 採 取 年 度 図 2 海 底 土 中 Cs 濃 度 の 経 時 的 推 移 では 対 数 正 規 分 布 するものと 考 えられる このようにして 得 られた 採 取 各 年 度 中 央 値 の 経 時 的 な 推 移 を 表 すと 図 2 のとおり である 図 には 中 央 値 とともに 標 準 偏 差 1σ(データの 約 68%が 含 まれる 範 囲 )を 挿 入 した 海 底 土 中 137 Cs 濃 度 は 時 間 とともに 緩 やかに 減 少 し その 見 かけの 減 少 の 半 減 期 は 約 25 年 と 計 算 される この 値 は 137 Cs の 物 理 壊 変 速 度 の 半 減 期 よりは 短 く 海 底 土 中 の 137 Cs 濃 度 は 137 Cs の 物 理 壊 変 とともに 海 底 環 境 での 何 かしらの 要 因 によ る 減 少 がもたらされていることが 推 測 される 海 底 土 試 料 の 137 Cs 分 析 は 海 底 度 表 層 3cm を 対 象 として 行 っているが 137 Cs のそれより 深 部 への 移 行 が 起 こっている 可 能 性 も 考 えられる また 海 底 土 上 部 での 海 水 の 流 れにより 海 底 度 より 再 浮 遊 した 分 画 の 水 平 移 行 の 可 能 性 も 否 定 できない 海 底 土 中 の 137 Cs の 消 長 についてはさらなる 検 討 が 必 要 である 3. 結 語 平 成 21 年 度 より 沖 合 海 底 土 における 137 Cs の 分 布 特 性 に 関 する 解 析 を 実 施 してきた これまでは 海 水 ( 表 層 海 水 下 層 海 水 )から 海 底 土 への 137 Cs の 移 行 について 速 度 論 的 観 点 から 解 析 を 行 ってきた 本 課 題 の 最 終 年 度 にあたる 本 年 度 は 海 底 土 中 137 Cs 分 布 の 全 体 像 を 把 握 しその 平 均 的 な 値 について 経 時 的 な 推 移 を 解 析 した その 結 果 いず れの 解 析 においても 対 象 海 域 での 海 底 土 中 137 Cs は 物 理 壊 変 以 外 の 海 底 環 境 要 因 による 減 少 が 起 こっていることが 示 唆 された -68-

福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 周 辺 の 海 域 モニタリング 公 益 財 団 法 人 海 洋 生 物 環 境 研 究 所 日 下 部 正 志 小 嶋 純 一 森 薗 繁 光 磯 山 直 彦 及 川 真 司 稲 富 直 彦 御 園 生 淳 渡 部 輝 久 鈴 木 千 吉 1. 緒 言 平 成 23 年 3 月 に 発 生 した 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 以 降 宮 城 福 島 茨 城 県 沖 の 海 域 に おいて 海 水 及 び 堆 積 物 表 層 を 採 取 し 131 I やセシウム 同 位 体 ( 134 Cs 137 Cs) 等 原 発 起 源 の 放 射 性 核 種 を 測 定 した 本 稿 では 成 果 のハイライトを 報 告 する 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 方 法 事 故 直 後 の 3 月 4 月 は 原 発 より 30km 圏 の 近 傍 において 海 水 のみの 採 取 分 析 を 行 なった 5 月 以 降 は 観 測 海 域 を 宮 城 県 及 び 茨 城 県 まで 拡 大 すると 同 時 に 堆 積 物 の 採 取 も 行 なった 9 月 以 降 は 更 に 観 測 点 を 増 やして 観 測 を 行 なった 2) 結 果 1 海 水 海 水 試 料 中 の 131 I 濃 度 は 4 月 15 日 に 測 点 4( 福 島 原 発 の 東 30km 圏 の 外 側 )の 表 層 にお いて 最 大 161 Bq/L が 検 出 されたが 以 後 急 激 に 減 少 し 5 月 3 日 から 検 出 限 界 以 下 になって いる 131 I の 半 減 期 が 8 日 と 短 く かつ 大 気 経 由 の 放 出 が 減 少 したことによるものと 考 えられ る 検 出 した 131 I はほとんどが 表 層 に 存 在 するが 一 部 下 層 でも 見 つかっている 海 水 の 活 発 な 上 下 混 合 及 び 粒 状 物 への 吸 着 による 下 方 への 急 速 な 移 動 が 考 えられる 海 洋 表 層 の 137 C 濃 度 は 事 故 後 3 月 下 旬 より 濃 度 の 上 昇 がはじまり 131 I と 同 様 4 月 15 日 の 測 点 4 において 最 大 186 Bq/L に 達 した( 図 1) 中 下 層 の 濃 度 の 変 動 パターンも 表 層 のそれ にほぼ 連 動 しており 速 い 下 方 移 動 速 度 が 考 えられる 4 月 中 旬 より 137 Cs 濃 度 は 全 体 的 に 減 少 に 転 じている 観 測 海 域 の 南 側 黒 潮 の 影 響 を 受 けている 所 では 平 成 24 年 2 月 現 在 137 Cs に 関 しては 元 のバックグラ ウンド 値 (~ 0.002Bq/L )に 戻 っている 所 もあるが 大 部 分 の 観 測 点 で は 戻 っておら ず 減 少 も 緩 や かである 水 平 的 な 分 布 の 変 動 としては 定 性 的 には 5 月 上 旬 137 Cs は 海 水 中 を 北 に 移 動 その 後 一 部 は 南 に 向 かっ 図 1 海 洋 表 層 における 137 Cs 濃 度 の 時 間 変 化 た 2 つの 高 濃 -69-

度 のコアは 仙 台 湾 と 茨 城 沖 に 濃 度 を 時 間 とともに 減 少 させつつも 少 なくとも 7 月 まではそ こに 滞 留 した 2 堆 積 物 堆 積 物 表 層 の 131 I 濃 度 は 5 月 9 日 の 観 測 点 G1( 原 発 の 南 東 約 40km)において 最 大 6.1 Bq/kg まで 上 昇 したが 海 水 同 様 時 間 とともに 減 少 し 6 月 8 日 の 観 測 点 J1( 茨 城 県 沖 :1.3 Bq/kg) を 最 後 に 以 後 検 出 されていない 堆 積 物 表 層 の 137 Cs 濃 度 の 時 間 変 化 は 海 水 や 塵 埃 のようなパ ターンを 必 ずしも 示 していない 注 目 すべき 特 徴 の 一 つに 宮 城 県 沖 での 特 異 的 な 高 濃 度 点 や 茨 城 県 沖 での 上 昇 傾 向 などの 地 域 毎 のばらつきがある 一 般 的 に 海 底 土 中 のセシウム 濃 度 は 有 機 物 濃 度 や 粘 土 鉱 物 の 濃 度 に 比 例 して 増 え 砂 質 では 比 較 的 少 ない 沿 岸 の 海 底 環 境 は 極 めて 複 雑 で 海 底 土 の 組 成 もそれに 対 応 して 位 置 的 に 大 きく 変 化 する 時 には 同 じ 観 測 点 でも 試 料 採 取 毎 に 堆 積 組 成 が 変 化 することもあった 海 底 土 のセシウム 濃 度 のばらつき はこのような 海 底 土 組 成 の 不 均 一 性 を 反 映 していることが 一 因 と 思 われる 更 に 沿 岸 流 の 変 動 も 堆 積 物 中 の 濃 度 の 時 空 間 的 変 化 に 影 響 を 与 えると 考 えられる モニタリング 海 域 にお ける 137 Cs の 存 在 量 は 海 水 のように 減 少 傾 向 を 示 していない 底 生 生 物 から 食 物 連 鎖 を 通 して の 水 産 物 への 濃 縮 も 懸 念 される 図 2 堆 積 物 表 層 の 137 Cs 濃 度 の 時 空 間 変 化 3. 結 語 表 面 水 中 の 137 Cs 濃 度 は 事 故 直 後 の 最 大 値 と 比 べると 一 万 分 の 一 のオーダーまで 減 少 が 見 られたが 依 然 として 福 島 事 故 起 源 の 人 工 放 射 性 核 種 は 検 出 される 更 に 堆 積 物 中 の 存 在 量 は 明 らかな 減 少 の 傾 向 を 示 していない 今 後 更 なる 継 続 したモニタリングが 必 要 で ある -70-

Ⅲ. 食 品 及 び 人 に 関 する 調 査 研 究 -71-

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Ⅲ-1 輸 入 食 品 中 の 放 射 性 核 種 に 関 す る 調 査 研 究 ( 平 成 23 年 度 ) 国 立 保 健 医 療 科 学 院 寺 田 宙 山 口 一 郎 1. 緒 言 わ が 国 の 食 品 摂 取 状 況 は 多 様 化 や 複 雑 化 が 進 ん で お り そ の 摂 取 量 の 30-40%( 重 量 ベース) 60-70%(カ ロ リ ー ベ ー ス )を 輸 入 食 品 に 依 存 し て い る ま た そ の 輸 出 国 も 広 域 かつ 変 化 している このため 本 研 究 では 輸 入 重 量 の 大 き い 諸 外 国 や 近 隣 諸 国 からの 輸 入 食 品 を 対 象 と し て 原 子 力 発 電 所 等 の 核 関 連 施 設 に 関 連 す る 人 工 の 放 射 性 核 種 である 放 射 性 セ シ ウ ム ス ト ロ ン チ ウ ム 90 プ ル ト ニ ウ ム ウ ラ ン と 天 然 放 射 性 核 種 の 中 で も 被 ば く 寄 与 が 大 き い ポ ロ ニ ウ ム 210 カ リ ウ ム 40の 濃 度 実 態 を 調 査 し て い る 過 去 の 調 査 研 究 から 被 ばく 線 量 に お い て 水 産 物 の 寄 与 が 比 較 的 高 いことが 分 かりつつあるため 平 成 23 年 度 は 輸 入 食 品 の 中 で も 水 産 物 を 重 点 的 に 調 査 す る こ と と した 他 方 平 成 23 年 3 月 に 発 生 し た 東 京 電 力 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 で は 環 境 中 に 大 量 の 放 射 性 核 種 が 放 出 される 事 態 に 至 り 放 出 量 はチェルノブイリ 原 子 力 発 電 所 事 故 には 及 ばないものの その 影 響 は 日 本 に 留 ま ら な い と 考 え ら れ る そこで 特 に 人 工 放 射 性 核 種 に 着 目 し 過 去 の 結 果 と の 比 較 から 原 発 事 故 の 影 響 の 有 無 を 検 証 し た 2. 調 査 研 究 の 概 要 (1 ) 試 料 : 過 去 の 調 査 結 果 と の 比 較 検 討 の た め こ れ ま で に 本 調 査 で 対 象 と し た 中 国 産 のマグロ ロシア 産 ズ ワ イ ガ ニ 韓 国 産 ノ リ 等 の 近 隣 諸 国 産 の 水 産 物 を 中 心 に 26 試 料 とした こ れ ら 試 料 は 日 本 国 内 の 輸 入 業 者 等 よ り 直 接 購 入 し た (2 ) 分 析 方 法 : 各 食 品 は 可 食 部 を 対 象 と し た 放 射 性 セ シ ウ ム は 試 料 を 450 で 灰 化 後 灰 化 物 を U-8 容 器 に 充 填 し Ge 半 導 体 検 出 器 を 用 い た γ 線 ス ペ ク ト ロ メ ト リ に よ り 定 量 した 90 Sr 238 Uの 測 定 は 文 部 科 学 省 の 放 射 能 測 定 法 に 従 った 210 Poについては 試 料 ( 生 )に 回 収 率 補 正 用 の ト レ ー サ と し て ポ ロ ニ ウ ム 209を 添 加 後 酸 分 解 し ストロンチウムレジンカラムによりポロニウムを 分 離 精 製 した 精 製 後 ス テ ン レ ス 板 上 に 電 着 し て 測 定 試 料 と した 測 定 試 料 は Si 半 導 体 検 出 器 を 用 いた アルファ 線 スペクトロメトリにより 定 量 した (3 ) 分 析 結 果 : 結 果 を 表 1 に 示 す 放 射 性 セシウムが 検 出 さ れ た の は 8 試 料 で あ っ た 最 大 値 は4.17 Bq/kg( マグロ)で 本 調 査 に お け る こ れ ま で の 水 産 物 の 最 大 値 ( 0.243 Bq/kg)よ り も 高 く さらに 原 発 事 故 に 由 来 する 134 Cs が 検 出 さ れ た こ と か ら 当 該 試 料 については 東 電 福 島 第 一 原 発 事 故 の 影 響 で あ る と 考 え ら れ た 90 Sr が 検 出 さ れ た の はワカメ1 試 料 の み で そ の 値 も 0.053 Bq/kgと 過 去 の 結 果 と 同 じ レベルであった 238 U についてはいずれの 試 料 からも 検 出 されたものの 過 去 の 調 査 結 果 と の 違 い は 認 め ら れなかった 238 Uは も と も と 広 く 天 然 に 存 在 す る 核 種 で 今 回 の 結 果 は バ ッ ク グ ラ ウ ンドレベルにあるといえる 一 方 自 然 放 射 性 核 種 で あ る 40 Kは 品 目 に よ っ て 大 き な 差 が あ る も の の 濃 度 範 囲 が 47.1-613 Bq/kgと 人 工 放 射 性 核 種 で あ る 放 射 性 セ シ ウ ム 90 Srよ り も 著 し く 高 く 過 去 の 調 査 結 果 と 同 様 の 傾 向 が 認 められた 210 Poについても 全 試 料 から 検 出 され 最 大 値 は8.5 Bq/kg( ハ マ グ リ ) であった 3. 結 語 今 回 対 象 と し た 輸 入 食 品 か ら 人 工 放 射 性 核 種 で あ る 137 Cs 90 Srが 検 出 さ れ た し か し ながら ほ と ん ど の 試 料 は 過 去 の 本 調 査 の 結 果 と 同 じ レ ベ ル に あ り 東 電 福 島 第 一 原 発 事 故 で は な く 過 去 の 大 気 圏 内 核 実 験 に 由 来 す る も の と 考 え ら れ た 原 発 事 故 に 特 徴 的 な 核 種 である 134 Csが 検 出 さ れ た の は マ グ ロ 1 試 料 の み で あ っ た 当 該 試 料 は 放 射 性 セシウムが 最 も 高 く これまでの 水 産 物 の 結 果 を 上 回 ることから 原 発 事 故 の 影 響 が 認 めら れた ただし 平 成 24 年 4 月 に 施 行 された 食 品 中 の 放 射 性 物 質 に 係 る 規 格 基 準 ( 一 般 食 品 に 対 して100 Bq/kg) を 大 幅 に 下 回 っ た こ の マ グ ロ 100gを 1 年 間 摂 取 し 続 け た 場 合 の 預 託 実 効 線 量 は 約 2μ Svで 規 格 基 準 を 設 定 する 上 で 飲 食 品 に 対 する 線 量 限 度 年 間 1mSvよりも 十 分 小 さい -73-

表 1. 輸 入 食 品 中 の 放 射 性 核 種 濃 度 ( 平 成 23 年 度 ) 単 位 : B q / k g * 品 目 Cs- 137 Cs- 134 Sr- 90 U - 2 3 8 Po- 210 K - 40 ウ ナ ギ 蒲 焼 ( 中 国 ) 0. 0 4 9 ± 0. 0 1 2 < 0. 0 3 3 < 0. 0 2 8 0. 0 0 4 8 ± 0. 0 0 0 0 3 0. 5 1 ± 0. 0 2 4 8 1. 2 ± 0. 4 3 ウ ナ ギ 蒲 焼 ( 中 国 ) < 0. 0 2 8 < 0. 0 3 1 < 0. 0 3 4 0. 0 0 4 1 ± 0. 0 0 0 0 6 0. 3 7 ± 0. 0 3 3 7 4. 5 ± 0. 4 9 ウ ナ ギ 蒲 焼 ( 台 湾 ) < 0. 0 3 9 < 0. 0 2 9 < 0. 0 2 5 0. 0 0 3 9 ± 0. 0 0 0 0 5 0. 2 1 ± 0. 0 3 6 7 1. 7 ± 0. 5 6 ウ ナ ギ 蒲 焼 ( 台 湾 ) < 0. 0 2 1 < 0. 0 2 5 < 0. 0 2 1 0. 0 0 5 0 ± 0. 0 0 0 0 4 0. 1 1 ± 0. 0 2 7 7 6. 2 ± 0. 4 7 マ グ ロ ( 中 国 ) 0. 1 1 4 ± 0. 0 1 0 < 0. 0 0 8 < 0. 0 1 7 0. 0 0 0 7 0 ± 0. 0 0 0 0 2 4. 2 ± 0. 2 0 7 9. 4 ± 0. 4 8 マ グ ロ ( 中 国 ) 0. 2 1 7 ± 0. 0 0 9 < 0. 0 0 9 < 0. 0 1 1 0. 0 0 0 5 8 ± 0. 0 0 0 0 3 3. 1 ± 0. 1 9 112± 0. 5 9 マ グ ロ ( 中 国 ) 2. 5 3 ± 0. 0 1 2 1. 6 4 ± 0. 0 1 3 < 0. 0 2 2 0. 0 0 0 7 4 ± 0. 0 0 0 0 1 3. 6 ± 0. 1 5 129± 0. 5 4 マ グ ロ ( 台 湾 ) 0. 1 5 6 ± 0. 0 0 8 < 0. 0 0 8 < 0. 0 1 9 0. 0 0 0 6 5 ± 0. 0 0 0 0 2 3. 7 ± 0. 2 3 117± 0. 4 8 マ グ ロ ( 台 湾 ) 0. 2 7 1 ± 0. 0 0 7 < 0. 0 0 7 < 0. 0 1 0 0. 0 0 0 6 2 ± 0. 0 0 0 0 3 3. 5 ± 0. 1 7 109± 0. 5 1 マ グ ロ ( 台 湾 ) 0. 1 2 5 ± 0. 0 0 9 < 0. 0 1 1 < 0. 0 2 5 0. 0 0 0 5 7 ± 0. 0 0 0 0 2 3. 0 ± 0. 2 5 125± 0. 5 3 ス ケ ソ ウ ダ ラ ( ロ シ ア ) < 0. 0 5 1 < 0. 0 5 5 < 0. 0 2 3 0. 0 0 0 4 6 ± 0. 0 0 0 0 5 3. 2 ± 0. 2 0 7 5. 7 ± 0. 4 9 ス ケ ソ ウ ダ ラ ( ロ シ ア ) < 0. 0 4 7 < 0. 0 5 1 < 0. 0 3 0 0. 0 0 0 6 1 ± 0. 0 0 0 0 4 1. 3 ± 0. 1 8 9 1. 3 ± 0. 7 9 ス ケ ソ ウ ダ ラ ( ロ シ ア ) 0. 0 5 8 ± 0. 0 1 2 < 0. 0 4 8 < 0. 0 2 5 0. 0 0 0 3 9 ± 0. 0 0 0 0 2 4. 5 ± 0. 1 6 8 3. 7 ± 0. 4 7 ハ マ グ リ ( 中 国 ) < 0. 0 6 9 < 0. 0 6 1 < 0. 0 3 1 0. 1 2 ± 0. 0 0 5 8. 5 ± 0. 3 1 5 2. 6 ± 0. 9 4 ハ マ グ リ ( 中 国 ) < 0. 0 7 8 < 0. 0 7 2 < 0. 0 2 6 0. 1 7 ± 0. 0 0 8 6. 7 ± 0. 4 3 4 7. 1 ± 0. 7 6 ハ マ グ リ ( 中 国 ) < 0. 0 5 4 < 0. 0 5 9 < 0. 0 3 5 0. 1 0 ± 0. 0 0 7 7. 4 ± 0. 3 9 4 9. 4 ± 0. 8 3 ズ ワ イ ガ ニ ( ロ シ ア ) < 0. 0 3 8 < 0. 0 3 5 < 0. 0 2 9 0. 0 1 2 ± 0. 0 0 0 0 8 5. 3 ± 0. 3 2 9 0. 5 ± 0. 8 0 ズ ワ イ ガ ニ ( ロ シ ア ) < 0. 0 3 1 < 0. 0 3 4 < 0. 0 2 0 0. 0 1 5 ± 0. 0 0 0 0 9 4. 8 ± 0. 2 9 8 5. 2 ± 0. 7 7 タ ラ バ ガ ニ ( 米 国 ) < 0. 0 2 7 < 0. 0 3 0 < 0. 0 2 7 0. 0 0 7 8 ± 0. 0 0 0 1 0 1. 2 ± 0. 1 4 6 3. 2 ± 0. 5 5 タ ラ バ ガ ニ ( 米 国 ) < 0. 0 2 4 < 0. 0 3 8 < 0. 0 1 9 0. 0 0 6 6 ± 0. 0 0 0 0 9 0. 8 9 ± 0. 1 1 8 7. 1 ± 0. 6 7 ワ カ メ ( 中 国 ) < 0. 0 7 3 < 0. 0 6 6 < 0. 0 4 5 5. 1 ± 0. 2 0 3. 2 ± 0. 1 6 150± 0. 4 6 ワ カ メ ( 中 国 ) < 0. 0 6 1 < 0. 0 6 4 0. 0 5 3 ± 0. 0 1 1 3. 9 ± 0. 1 7 2. 4 ± 0. 2 0 114± 0. 3 8 ワ カ メ ( 中 国 ) < 0. 0 5 9 < 0. 0 6 2 < 0. 0 4 1 4. 3 ± 0. 2 1 2. 1 ± 0. 1 9 136± 0. 3 2 ノ リ ( 韓 国 ) < 0. 0 6 7 < 0. 0 7 1 < 0. 0 3 4 0. 3 3 ± 0. 0 0 7 0. 8 6 ± 0. 1 1 526± 2. 4 ノ リ ( 韓 国 ) < 0. 0 5 8 < 0. 0 6 3 < 0. 0 4 3 0. 4 1 ± 0. 0 0 6 0. 7 7 ± 0. 1 0 487± 3. 2 ノ リ ( 韓 国 ) < 0. 0 7 7 < 0. 0 6 9 < 0. 0 4 1 0. 5 4 ± 0. 0 0 9 0. 9 2 ± 0. 1 4 613± 3. 5 * 単 位 は 生 重 量 ベ ー ス -74-

Ⅲ-2 食 用 野 草 等 からの 放 射 性 核 種 の 調 理 加 工 による 除 去 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 廃 棄 物 技 術 開 発 研 究 チーム 田 上 恵 子, 石 井 伸 昌, 鄭 建, 内 田 滋 夫 1. 緒 言 環 境 中 に 放 出 された 放 射 性 核 種 が 食 用 野 菜 に 直 接 沈 着 や 経 根 吸 収 によって 移 行 した 場 合, 調 理 加 工 によりどの 程 度 放 射 性 核 種 を 除 去 できるのかを 調 査 することは, 内 部 被 ばく 線 量 を 評 価 する 上 で 重 要 である 特 に, 我 が 国 で 食 用 にされている 野 草 については,その 種 類 や 食 べ 方 が 独 特 であり, 調 理 加 工 によりどの 程 度 除 去 できるのかについての 情 報 がない 放 医 研 では 昨 年 度, 放 射 性 核 種 が 直 接 沈 着 した 食 用 野 草 ( 平 成 23 年 3 月 採 取 )を 用 いて, 調 理 加 工 後 の 残 存 割 合 について 調 査 を 行 った 結 果 を 報 告 した 1) 本 年 度 は, 経 根 吸 収 により 植 物 体 内 に 移 行 した 放 射 性 Cs の 調 理 加 工 後 の 残 存 割 合 について 調 査 を 行 い, 直 接 沈 着 による 残 存 割 合 との 比 較 を 行 った 2. 調 査 研 究 の 概 要 植 物 試 料 は, 平 成 23 年 度 秋 以 降 に 採 取 されたフキ,ヨモギ,ギシギシ,ツクシ 及 びフキノトウ である なお, 平 成 23 年 度 春 に 採 取 されたタケノコのデータも 加 えた タケノコは 直 接 沈 着 を 受 けていなかったものの, 主 に 直 接 沈 着 を 受 けた 地 上 部 からの 転 流 によってタケノコに 移 行 した 放 射 性 セシウムが 含 まれていたことから,これについても 経 根 吸 収 と 同 様 に 内 部 に 吸 収 されたものとし て 扱 うことができる 試 料 は 可 能 な 限 り3 等 分 して,1 生 試 料,2 水 洗 浄,3 水 洗 浄 - 茹 で,の3 種 類 を 作 成 した 水 洗 浄 は 水 道 水 で 洗 浄 した 後,RO 水 でリンスした 茹 でる 場 合 には RO 水 を 用 いたが,ヨモギの 場 合 は 重 曹 を 少 量 加 え,ツクシ,フキ,およびフキノトウでは 湯 だけを 使 用 した 茹 で 時 間 は2 分 半 で ある タケノコの 場 合 には 湯 に 米 糠 を 加 え, 竹 串 が 通 るまで 茹 でた それぞれ 茹 でた 後 に RO 水 に 移 し 入 れ, 粗 熱 がとれるまでさらした フキの 葉 柄 部 はさらに 皮 を 剥 いた 各 試 料 中 の 放 射 性 Cs 濃 度 は 低 いと 予 想 されたため, 減 容 濃 縮 を 行 うために 電 気 乾 燥 機 を 用 いて 80 2 日 以 上 乾 燥 させ て 恒 量 に 達 した 後,これを 粉 砕 してU8 容 器 に 詰 め,Ge 半 導 体 検 出 装 置 (Seiko EG&G)で 20,000-40,000 秒 測 定 を 行 った 検 出 されたのは, 134 Cs および 137 Cs の 2 核 種 である 平 成 23 年 度 産 のタケノコ には 131 I は 検 出 されなかった 平 成 23 年 度 秋 以 降 に 採 取 された 食 用 野 草 についても, 平 成 23 年 春 に 検 出 された 131 I, 132 Te 及 び 132 I は 検 出 されなかった 放 射 性 核 種 の 残 存 割 合 (F R )は, 昨 年 度 と 同 様, 次 式 により 求 めた F R = 調 理 加 工 後 の 放 射 性 核 種 の 量 / 生 試 料 の 放 射 性 核 種 の 量 137 Cs のデータを 表 1に 示 す 水 洗 浄 では 8 割 以 上 が 植 物 体 に 残 った 茹 でた 後 の F R はタケノコ(0.7) やフキの 葉 柄 (0.85)で 高 く, 一 方,ヨモギ(0.43)やフキの 葉 (0.31)で 低 い このことから 葉 の 様 に 厚 みが 薄 いものは 放 射 性 Cs が 溶 出 し 易 いが, 厚 みがあると 溶 出 しにくいことがわかった なお, 花 野 菜 であるフキノトウはその 中 間 程 度 の 残 存 割 合 であった 得 られた 結 果 を 昨 年 度 の F R データと 比 較 するために,フキ( 葉, 葉 柄 ),ヨモギ,ギシギシ 及 び ツクシに 着 目 した 水 洗 い 後 の 平 均 の 残 存 割 合 は, 本 実 験 のように 経 根 吸 収 により 植 物 体 内 に 取 り -75-

込 まれている 場 合,0.97±0.19 であったのに 対 し, 直 接 沈 着 では 0.68±0.25 であり, 体 内 に 取 り 込 まれた 場 合 には 水 洗 いではほとんど 除 去 することができないことがわかった さらに 茹 でた 結 果, 経 根 吸 収 では 0.59±0.20 に 対 し, 直 接 沈 着 は 0.35±0.04 であった 水 洗 いの 差 分 が 反 映 されてい たと 考 えられる これらの 結 果 から, 経 根 吸 収 により 放 射 性 核 種 が 植 物 体 内 に 取 り 込 まれた 場 合 に は, 調 理 加 工 後 の 残 存 割 合 が 高 くなるといえる また, 植 物 体 に 取 り 込 まれた 放 射 性 Cs の 茹 で ることによる 残 存 率 はカリウムと 同 じであることから, 食 品 成 分 表 に 記 載 されているデータより 葉 菜 類 のカリウムについて F R を 算 出 したところ, 平 均 0.52( 範 囲 :0.28-0.75)が 得 られた 2) この 結 果 は, 今 回 の 野 草 データとほぼ 同 じである 3. 結 語 食 用 野 草 について, 経 根 吸 収 により 植 物 体 内 に 移 行 した 放 射 性 セシウムの 調 理 加 工 後 の 食 品 中 の 残 存 の 程 度 を 測 定 した 東 電 福 島 第 一 原 発 事 故 からしばらく 経 過 の 後 には, 直 接 沈 着 により 表 面 汚 染 した 食 用 野 草 はなくなり, 新 たに 発 芽 した 植 物 には 土 壌 からの 経 根 吸 収 により 放 射 性 核 種 が 入 ることになる 農 作 物 でも 同 様 に, 植 物 体 内 が 汚 染 した 場 合 には 直 接 沈 着 の 時 よりも 放 射 性 セシ ウムが 除 去 しにくくなっていると 考 えられる なお, 放 射 性 セシウムの 溶 出 には 調 理 する 食 材 の 厚 みが 影 響 していると 考 えられた したがって 調 理 時 の 切 り 方 についても 検 討 する 必 要 がある 表 1 食 用 野 草 の 調 理 加 工 後 における 放 射 性 核 種 の 残 存 割 合 (F R ) 野 草 採 取 日 試 料 数 水 洗 い 137 Cs 水 洗 い+ 煮 沸 タケノコ 2011.4.28 1-0.70±0.05 フキ( 葉 ) 2011.10.20 1 1.02±0.11 0.31±0.05 フキ( 葉 柄 ) 2011.10.20 1 1.24±0.22 0.85±0.17 フキ 全 体 2012.3.28 1-0.48±0.12 ヨモギ 2011.11.10 & 2012.3.27 2 0.86±0.03 0.43± 0.08 フキノトウ 2012.3.12 & 19 2-0.54±0.05 ギシギシ 2012.3.19 1 0.81±0.15 0.51±0.14 ツクシ 2012.3.19, 27 & 28 3-0.58±0.09 参 考 文 献 1) 田 上 恵 子, 石 井 伸 昌, 鄭 建, 内 田 滋 夫 : 食 用 野 草 へ 直 接 沈 着 した 放 射 性 核 種 の 調 理 加 工 に よる 除 染, 第 54 回 環 境 放 射 能 調 査 研 究 成 果 論 文 抄 録 集, pp.77-78, 2011. 2)K. Tagami, S. Uchida: Comparison of food processing retention factors of 137 Cs and 40 K in vegetables. J. Radioanal. Nucl. Chem. 295, 1627-1634 (2013). -76-

Ⅲ-3 有 機 資 材 の 添 加 が 葉 菜 類 のセシウム 吸 収 に 及 ぼす 影 響 1. 緒 言 独 立 行 政 法 人 農 業 環 境 技 術 研 究 所 木 方 展 治 大 瀬 健 嗣 東 京 電 力 福 島 第 1 原 子 力 発 電 所 の 事 故 により 東 日 本 の 広 範 囲 で 放 射 性 セシウムによる 汚 染 が 認 められ 農 作 物 の 放 射 性 セシウム 濃 度 の 変 動 要 因 の 探 索 が 急 務 となっている 本 年 度 は 有 機 物 及 びアルカリ 資 材 の 影 響 を みるために 葉 菜 類 のポット 試 験 を 行 った 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 試 料 および 方 法 つくば 市 の 畑 土 壌 ( 表 層 腐 植 質 黒 ボク 土 )から 表 層 2~3cmの 表 土 を 採 取 し 混 合 の 後 1/5000 アールの ワグネルポットに 充 填 した 各 ポットには 表 1に 示 した 有 機 資 材 及 びアルカリ 資 材 を 添 加 した( 各 処 理 3 反 復 ) 葉 菜 類 としてチンゲンサイを 播 種 し 各 ポット 1 本 立 ちにして 42 日 栽 培 した 地 上 部 のみを 収 穫 し 封 筒 に 入 れて 乾 燥 機 で 乾 燥 した 手 で 揉 んで 粉 砕 した 後 約 6mL 容 のポリエチレン 容 器 に 充 填 し 井 戸 型 の 検 出 部 を 備 え たゲルマニウム 半 導 体 検 出 器 で 放 射 性 セシウム 濃 度 を 測 定 した また 栽 培 前 の 土 壌 を 約 100mL 容 のスチロール 製 容 器 に 充 填 し 同 軸 型 ゲルマニウム 半 導 体 検 出 器 で 放 射 性 セシウム 濃 度 を 測 定 した 2) 結 果 の 概 要 表 1 試 験 に 用 いた 有 機 資 材 とアルカリ 資 材 1. 表 2 に 各 処 理 区 毎 の 資 材 投 入 量 (g/ポット) 処 理 収 穫 量 チンゲンサイ 栽 化 成 肥 料 バ-ク 堆 肥 牛 ふん 堆 肥 鶏 ふん 堆 肥 水 酸 化 カルシウム A 8 - - - - 培 土 壌 の 放 射 性 Cs 濃 度 B 8 20 - - - 放 射 性 137 Cs の 移 行 係 数 を C 8 60 - - - D 8-20 - - 記 した 全 42 ポットを 対 E 8-60 - - 象 に 計 算 した 結 果 も 同 様 F 8 - - 20 - であり ポット 試 験 に 用 い G 8 - - 60 - H 8 - - - 2 た 土 壌 の 放 射 性 セシウム I 8 20 - - 2 濃 度 はチンゲンサイ 収 穫 J 8 60 - - 2 時 換 算 で 平 均 2783( 処 理 K 8-20 - 2 L 8-60 - 2 区 2783 以 下 括 弧 内 は 処 M 8 - - 20 2 理 区 間 の 数 値 ) 最 小 2490 N 8 - - 60 2 (2541) 最 大 3017(2941) * 全 14 処 理 3 連 =42ポット Bq/kg 乾 土 であった 採 取 したチンゲンサイの 放 射 性 セシウム 濃 度 は 平 均 226(226) 最 小 105(129) 最 大 531(396)Bq/kg 乾 物 であった 土 壌 から 作 物 ( 乾 物 )への 放 射 性 セシウムの 移 行 係 数 は 平 均 0.081(0.081) 最 小 0.041(0.051) 最 大 0.176(0.135) であった 乾 物 率 8.8%とし 新 鮮 物 換 算 の 移 行 係 数 を 算 出 すると 0.0037~0.015(0.0045~0.012)となり 福 島 県 の 淡 色 黒 ボク 土 畑 で 報 告 されている 野 菜 類 のほ 場 における 移 行 係 数 ( 新 鮮 重 換 算 )( 各 種 夏 作 野 菜 への 土 壌 中 の 放 射 性 セシウムの 移 行 係 数 独 立 行 政 法 人 農 業 食 品 産 業 技 術 総 合 研 究 機 構 東 北 農 業 研 究 センター2011 年 度 成 果 情 報 )の 0.0004~0.0055 に 比 し 高 かった なお 2011 年 3 月 12 日 の 事 故 当 時 に 半 減 期 補 正 した 134 Cs と 137 Cs の 濃 度 比 の 平 均 値 はチンゲンサイ 土 壌 ともに 1.01(1.01)であった 2. 有 機 資 材 の 添 加 により 収 穫 量 の 上 昇 が 認 め 見 られた( 表 1 図 1) 137 Cs の 移 行 係 数 は 収 穫 量 が 増 加 す るとやや 高 くなるが さらに 収 穫 量 が 増 加 すると 低 下 する 傾 向 にあった 全 体 として 収 穫 量 と 137 Cs の 移 行 係 数 とは 負 の 弱 い 相 関 が 認 められた(1 次 相 関 関 係 -0.31 5% 水 準 で 有 意 ) 水 酸 化 カルシウムの 添 加 が 移 行 係 数 に 及 ぼす 影 響 は 有 意 には 認 められなかった -77-

処 理 区 収 穫 量 表 2 チンゲンサイと 栽 培 土 壌 の 放 射 性 Cs 濃 度 チンゲンサイ 土 壌 ( 収 穫 日 換 算 ) 134 Cs 137 Cs * 移 行 係 数 g 新 鮮 物 Bq/kg 乾 物 Bq/kg 乾 物 Bq/kg 乾 土 Bq/kg 乾 土 A 7.7 ± 3.3 78 ± 50 156 ± 72 1109 ± 50 1776 ± 60 0.070 ± 0.043 0.087 ± 0.038 B 13.7 ± 3.9 124 ± 17 195 ± 95 1089 ± 41 1742 ± 79 0.114 ± 0.018 0.114 ± 0.060 C 12.0 ± 0.9 151 ± 41 245 ± 89 1103 ± 61 1757 ± 77 0.136 ± 0.031 0.138 ± 0.045 D 14.3 ± 1.3 80 ± 20 143 ± 52 1088 ± 11 1734 ± 37 0.073 ± 0.019 0.083 ± 0.032 E 17.8 ± 1.0 89 ± 15 131 ± 7 1094 ± 29 1832 ± 38 0.081 ± 0.012 0.071 ± 0.003 F 24.7 ± 8.6 94 ± 6 138 ± 16 1085 ± 56 1712 ± 82 0.087 ± 0.005 0.081 ± 0.012 G 20.6 ± 0.9 49 ± 13 79 ± 16 990 ± 18 1551 ± 46 0.050 ± 0.014 0.051 ± 0.011 H 7.4 ± 1.3 68 ± 18 131 ± 19 1070 ± 35 1738 ± 87 0.064 ± 0.018 0.075 ± 0.013 I 12.2 ± 2.9 107 ± 32 205 ± 68 1088 ± 70 1765 ± 119 0.099 ± 0.032 0.116 ± 0.038 J 12.4 ± 3.3 88 ± 30 155 ± 80 1063 ± 49 1728 ± 45 0.084 ± 0.031 0.090 ± 0.048 K 11.1 ± 2.1 64 ± 15 88 ± 30 1059 ± 24 1738 ± 89 0.061 ± 0.014 0.050 ± 0.016 L 16.8 ± 4.0 79 ± 15 134 ± 36 1003 ± 46 1633 ± 42 0.078 ± 0.012 0.082 ± 0.021 M 19.6 ± 6.6 59 ± 4 98 ± 24 1055 ± 25 1752 ± 72 0.056 ± 0.005 0.056 ± 0.013 N 18.4 ± 3.4 56 ± 6 88 ± 7 1012 ± 49 1593 ± 94 0.056 ± 0.008 0.055 ± 0.007 処 理 区 平 均 14.9 85 142 1065 1718 0.079 0.082 処 理 区 最 小 7.4 49 79 990 1551 0.050 0.050 処 理 区 最 大 24.7 151 245 1109 1832 0.136 0.138 134 Cs 137 Cs 134 Cs 137 Cs 土 壌 - 作 物 137 Cs 移 行 係 数 0.2 0.15 0.1 0.05 A H C I J K B D 水 酸 化 カルシウム 無 添 加 水 酸 化 カルシウム 添 加 L F E N M G 0 0 5 10 15 20 25 30 35 収 穫 量 g 新 鮮 重 図 1 チンゲンサイの 収 穫 量 と 137 Cs の 移 行 係 数 3. 結 語 有 機 資 材 の 添 加 が 放 射 性 Cs の 吸 収 に 及 ぼす 直 接 的 効 果 は 今 回 の 試 験 では 判 然 としなかった これ を 解 明 するためのさらなる 試 験 をほ 場 も 含 め 行 っていく 必 要 がある -78-

Ⅲ-4 牛 乳 中 の 放 射 性 核 種 に 関 する 調 査 研 究 ( 独 ) 農 業 食 品 産 業 技 術 総 合 研 究 機 構 畜 産 草 地 研 究 所 小 林 美 穂 西 村 宏 一 小 松 正 憲 武 田 久 美 子 宮 本 進 北 海 道 農 業 研 究 センター 早 坂 貴 代 史 田 鎖 直 澄 上 田 靖 子 伊 藤 文 彰 九 州 沖 縄 農 業 研 究 センター 田 中 正 仁 神 谷 裕 子 野 中 最 子 ( 独 ) 農 業 環 境 技 術 研 究 所 木 方 展 治 藤 原 英 司 栗 島 克 明 井 上 恒 久 1. 緒 言 牛 乳 中 の 人 工 放 射 性 核 種 の 濃 度 は 過 去 の 核 実 験 等 により 影 響 を 受 けた 後 漸 減 し 近 年 では 非 常 に 低 いレベルで 推 移 していた しかし 平 成 23 年 3 月 東 京 電 力 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 に 伴 う 放 射 性 物 質 の 飛 散 が 発 生 し その 後 福 島 県 および 茨 城 県 で 3 月 下 旬 迄 に 採 取 された 原 乳 から 暫 定 規 制 値 を 超 える 放 射 性 ヨウ 素 の 検 出 報 告 があ っ た ま た 平 成 23 年 3 月 20 日 には 福 島 県 で 採 取 された 原 乳 1 件 か ら 暫 定 規 制 値 を 超 える 放 射 性 セシウムが 検 出 された 本 研 究 では こ れ ま で 継 続 し て き た 札 幌 市 ( 北 海 道 ) つ く ば 市 ( 本 州 ) 合 志 市 ( 九 州 ) 国 頭 郡 島 尻 郡 ( 沖 縄 ) の 牛 乳 中 およ び 乳 牛 飼 料 中 の 90 Sr および 137 Cs 濃 度 測 定 を 平 成 23 年 度 も 実 施 し 人 工 放 射 性 核 種 の 地 域 的 分 布 季 節 変 動 を 把 握 し 残 留 減 衰 状 況 の 実 態 を 明 確 に すると と も に 原 子 炉 事 故 等 の 緊 急 事 態 におけるリファレンスデータとして 活 用 することを 目 的 とする 2. 調 査 研 究 の 概 要 (1) 牛 乳 中 の 90 Sr および 137 Cs 濃 度 の 測 定 試 料 用 の 牛 乳 は 独 立 行 政 法 人 農 業 食 品 産 業 技 術 総 合 研 究 機 構 ( 農 研 機 構 ) 北 海 道 農 業 研 究 センター( 札 幌 市 ) 畜 産 草 地 研 究 所 (つくば 市 ) 九 州 沖 縄 農 業 研 究 センター( 合 志 市 ) および 沖 縄 県 酪 農 農 業 協 同 組 合 ( 島 尻 郡 )の 4 カ 所 から 年 4 回 (6 8 11 2 月 ) 採 取 した 各 地 の 牛 乳 は 採 取 後 直 ちにクール 便 にて 畜 産 草 地 研 究 所 に 輸 送 し 防 腐 剤 としてホ ルムアルデヒドを 最 終 濃 度 1%となるように 添 加 し 試 料 乳 とした 90 Sr 濃 度 は 試 料 乳 2L を 濃 縮 した 後 450 以 下 で 灰 化 して 測 定 試 料 を 調 製 し イオン 交 換 法 により 分 離 精 製 した 後 に 低 バックグラウンドβ 線 測 定 装 置 で 測 定 した 137 Cs 濃 度 は 試 料 乳 4L を 濃 縮 した 後 450 以 下 で 灰 化 して 試 料 としたものを 規 定 の 測 定 用 容 器 に 充 填 し ガンマ 線 核 種 分 析 装 置 で 測 定 した 牛 乳 中 の 90 Sr 濃 度 ( 表 1)は 全 ての 測 定 試 料 が 30 mbq/l 以 下 で 前 年 度 までと 同 様 に 低 い 値 であった いずれの 採 取 地 においても 季 節 による 変 動 はみられなかった 一 方 137 Cs 濃 度 ( 表 2)は 福 島 第 一 原 発 事 故 から 約 3 カ 月 後 の 平 成 23 年 6 月 には 全 ての 測 定 試 料 で 1 00 mbq/l 以 上 検 出 された しかし 平 成 24 年 2 月 には つくば 市 以 外 の 地 点 から 収 集 した 試 料 で 100 mbq/l を 下 回 った (2) 飼 料 中 の 137 Cs 濃 度 の 測 定 飼 料 中 の 137 Cs 濃 度 は 札 幌 市 つくば 市 合 志 市 島 尻 郡 に 所 在 する 牛 乳 の 提 供 農 場 か ら 11 月 に 給 与 飼 料 を 採 取 し 各 々の 飼 料 を 乾 燥 粉 砕 した 後 マリネリ 容 器 (2L)に 詰 め ガンマ 線 核 種 分 析 装 置 にて 測 定 した( 表 3) その 結 果 混 合 飼 料 (TMR) (- *1 5.50 0.33 - Bq/kg 乾 物 ) 濃 厚 飼 料 (0.26 0.32 0.37 0.13 Bq/kg 乾 物 ) コーンサイレー ジ(N.D. *2 12.86 0.61 - Bq/kg 乾 物 ) グラスサイレージ(3.84-0.64 - Bq/kg 乾 物 ) 乾 草 (5.01 11.64 0.34 0.77 Bq/kg 乾 物 )であった つくば 市 では コーンサイ レージおよび 乾 草 で 12.86 11.64 (Bq/kg 乾 物 )の 137 Cs が 検 出 されたが 同 飼 料 中 の 134 Cs -79-

濃 度 は 10.51 9.67 (Bq/kg 乾 物 )だった これまでに 報 告 された 環 境 モニタリングの 結 果 から 福 島 第 一 原 発 事 故 によって 飛 散 した 137 Cs と 134 Cs の 比 はおよそ1:1であったとされ ている 137 Cs と 134 Cs の 半 減 期 から 飼 料 調 製 日 (11 月 24 日 )における 137 Cs と 134 Cs の 比 を 推 定 すると 1:0.80 となり 今 回 検 出 した 飼 料 中 137 Cs および 134 Cs の 存 在 比 とよく 一 致 した したがって 飼 料 から 検 出 された 放 射 性 セシウムは 福 島 第 一 原 発 事 故 に 由 来 すると 推 定 され た *1 当 該 地 点 の 試 料 なし *2 検 出 限 界 値 未 満 表 1. 平 成 23 年 度 牛 乳 中 90 Sr 濃 度 の 測 定 表 2. 平 成 23 年 度 牛 乳 中 137 Cs 濃 度 の 測 定 (mbq/l 測 定 値 ± 計 数 誤 差 ) (mbq/l 測 定 値 ± 計 数 誤 差 ) N.D. 検 出 限 界 値 未 満 N.D. 検 出 限 界 値 未 満 表 3. 平 成 23 年 度 飼 料 中 137 Cs 濃 度 の 測 定 (Bq/ 乾 物 kg 測 定 値 ± 計 数 誤 差 ) *1 - 当 該 地 点 の 試 料 なし *2 N.D. 検 出 限 界 値 未 満 3. 結 語 我 が 国 における 自 給 飼 料 生 産 および 牛 乳 生 産 の 安 全 性 を 担 保 するために 全 国 各 地 の 牛 乳 および 飼 料 中 の 放 射 性 核 種 濃 度 モニタリングを 継 続 し 人 工 放 射 性 核 種 の 残 留 減 衰 状 況 を 正 確 に 把 握 しておくことがきわめて 重 要 である 次 年 度 以 降 は 経 常 調 査 として 札 幌 市 つくば 市 合 志 市 の 3 地 点 で 牛 乳 飼 料 牧 草 土 壌 を 採 取 し 牛 乳 については 137 Cs お よび 90 Sr 濃 度 を その 他 の 試 料 については 137 Cs 濃 度 を 調 査 する 予 定 である また 福 島 第 一 原 発 事 故 の 影 響 調 査 として 那 須 塩 原 市 を 中 心 とした 3 地 点 の 調 査 を 予 定 している -80-

Ⅳ. 分 析 法 測 定 法 等 に 関 する 調 査 研 究 -81-

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Ⅳ-1 環 境 水 中 ストロンチウムの 迅 速 分 離 方 法 の 検 討 独 立 行 政 法 人 農 業 環 境 技 術 研 究 所 川 崎 晃 1. 緒 言 ストロンチウム(Sr)の 放 射 性 同 位 体 はβ 核 種 であるため Sr を 分 離 して 測 定 する 必 要 がある また Sr の 娘 核 種 であるイットリウム(Y)も 分 離 しておく 必 要 がある 現 在 の 分 析 法 はイオン 交 換 樹 脂 による 分 離 法 を 採 用 しているが 時 間 がかかるという 欠 点 が あり より 迅 速 な 分 離 方 法 の 開 発 が 求 められている 近 年 の 分 子 認 識 化 学 の 進 展 により 特 定 の 元 素 と 結 合 する 分 離 剤 が 開 発 されており Sr の 分 離 にはクラウンエーテル 骨 格 を 有 する 樹 脂 が 用 いられる これまでに 農 環 研 では 農 作 物 や 土 壌 から 抽 出 した Sr の 安 定 同 位 体 を 分 離 する 目 的 で これらの 樹 脂 の 適 用 を 検 討 してきた そこで 本 課 題 では こ れまでに 蓄 積 してきた Sr 分 離 の 知 見 を 環 境 水 に 適 用 し 環 境 水 から Sr を 迅 速 に 分 離 する 手 法 を 検 討 する 2. 調 査 研 究 の 概 要 1) 試 料 および 分 離 剤 実 際 の 環 境 水 の 分 析 においては 蒸 発 もしくはカラムクロマト 法 などにより 濃 縮 を 行 い その 後 に Sr の 分 離 を 行 うことが 想 定 される そこで 試 験 には 平 均 的 な 河 川 水 が 50 倍 に 濃 縮 された 場 合 を 想 定 し 表 1 に 示 した 組 成 の 水 溶 液 ( 以 下 模 擬 濃 縮 河 川 水 という)を 用 いた Sr の 分 離 剤 として Sr 樹 脂 (Eichrom Technologies 社 ) 高 選 択 性 分 子 認 識 ゲル Sr-01 (AnaLig(R)) エムポアラドディスクストロンチウム( 住 友 スリーエム)を 供 試 した 2) 分 離 方 法 の 概 要 1Sr 樹 脂 による Sr の 分 離 方 法 カートリッジ 充 填 の Sr 樹 脂 (2 ml)を 利 用 した 樹 脂 に 含 まれている 鉛 等 の 不 純 物 を 除 去 するため 事 前 に 8M 硝 酸 6M 塩 酸 と 水 で 繰 り 返 し 洗 浄 した カートリッジ に 2M 硝 酸 を 40 ml 流 してコンディショニングした 後 2M 硝 酸 に 調 整 した 模 擬 濃 縮 河 川 水 を 100 ml 流 した 次 に Y 等 を 除 去 するため 8M 硝 酸 を 50 ml 流 し 0.05M 硝 酸 で Sr を 回 収 した 2 分 子 認 識 ゲル Sr-01 による Sr の 分 離 方 法 分 子 認 識 ゲル 1 ml または 2 ml をミニカラムに 充 填 し カラムに 0.03M-EDTA4Na を 流 して 洗 浄 後 2M 硝 酸 を 40 ml 流 してコンディショニングした 2M 硝 酸 に 調 整 し た 模 擬 濃 縮 河 川 水 を 100 ml 流 し 2M 硝 酸 100 ml で Y 等 を 流 出 させた 後 0.03M-EDTA4Na で Sr を 回 収 した 3エムポアラドディスクによる Sr の 分 離 方 法 ディスクを 吸 引 マ ニホールドにセットし 表 1. 使 用 した 模 擬 濃 縮 河 川 水 の 元 素 組 成 と 濃 度 0.03M-EDTA4Na を 流 Na Mg K Ca Sr Y して 洗 浄 後 2M 硝 酸 を 濃 度 [mg/l] 200 200 50 500 5 0.05-83-

Sr [ug/ml] Y [ug/ml] Sr [ug/ml] Y [ug/ml] Sr [ug/ml] Y [ug/ml] 40 ml 流 してコンディショニ ングした 2M 硝 酸 に 調 整 し た 模 擬 濃 縮 河 川 水 を 100 ml 流 し 2M 硝 酸 100 ml で Y 等 を 流 出 さ せ た 後 0.03M-EDTA4Na で Sr を 回 収 した 3) 分 離 状 況 3. 結 語 供 試 した 3 種 類 の 分 離 剤 のいずれにおいても K Ca 等 はカラムから 容 易 に 流 出 し 分 離 することができた Sr 樹 脂 を 利 用 した 場 合 8M 硝 酸 を 50 ml 流 して Y 等 を 抽 出 さ せる 過 程 で 一 部 の Sr も 流 出 し Sr の 回 収 率 が 40% 程 度 に 低 下 した( 図 1 上 段 ) 分 子 認 識 ゲル Sr-01 を 2mL 充 填 し た 場 合 2M 硝 酸 を 100 ml で Y を 除 去 している 間 の Sr の 流 出 はほとんど 認 められず Sr の 回 収 率 は 95% 程 度 になった ( 図 1 中 段 ) ラドディスク を 利 用 した 場 合 2M 硝 酸 を 100 ml 流 して Y を 除 去 して いる 間 に Sr の 流 出 は 認 められず Sr の 回 収 率 は 99% 程 度 になった( 図 1 下 段 ) 今 回 の 分 離 条 件 では Sr 樹 脂 の 回 収 率 が 最 も 悪 かったが この 樹 脂 には 少 量 の 0.05M 硝 酸 で 効 率 的 に Sr が 回 収 できるというメリットがある 今 後 樹 脂 の 充 填 量 や 通 水 量 など Sr 樹 脂 に 適 した 分 離 条 件 が 明 らかになれば 活 用 の 道 が 開 かれると 考 え られる 分 子 認 識 ゲル 2mL 充 填 カラムを 用 いた 場 合 Y と Sr を 分 離 し かつ Sr の 回 収 率 も 高 いという 結 果 になったが 充 填 量 が 1mL の 場 合 は Sr の 損 失 が 認 められ Sr の 回 収 率 は 80% 程 度 にとどまった したがって 河 川 水 の 通 水 量 や Sr 濃 度 によって は 充 填 量 を 調 節 する 必 要 が 考 えられた ラドディスクの 場 合 吸 引 濾 過 を 行 ってい ることから 全 工 程 にかかる 時 間 が 非 常 に 短 く たくさんの 試 料 を 処 理 するのに 適 し ていると 考 えられた また 30mL の 0.03M-EDTA4Na で 97%の Sr がディスクから 溶 出 できるので 濃 縮 にも 適 していると 考 えられた 40 0.05 35 Sr 0.04 30 Sr 樹 脂 Y 25 2mL 0.03 20 15 0.02 10 5 0.01 0 0 0 100 200 300 400 40 0.05 30 20 10 0 0 0 100 200 300 400 40 0.05 30 20 10 分 子 認 識 ゲル 2mL ディスク 0 0 0 100 200 300 400 環 境 水 から Sr を 分 離 する 目 的 で 3 種 類 の Sr 分 離 剤 (Sr 樹 脂 高 選 択 性 分 子 認 識 ゲ ル Sr-01 エムポアラドディスク)を 供 試 し Sr を Ca や Y などから 分 離 するスキームを 検 討 した Sr の 回 収 率 が 高 く かつ 迅 速 なラドディスクの 利 用 が 有 望 と 考 えられた Sr Y Sr Y 0.04 0.03 0.02 0.01 0.04 0.03 0.02 0.01 図 1. 各 種 分 離 剤 を 利 用 したときの Sr と Y の 溶 出 曲 線 横 軸 は 累 積 の 通 液 量 [ml] -84-

Ⅳ -2 新 しい 放 射 性 セシウム 吸 着 材 の 開 発 及 びその 評 価 と 利 用 に 関 する 研 究 楢 崎 幸 範 1, 鳥 羽 峰 樹 1, 和 田 信 一 郎 2, 池 田 敏 彦 3, 松 本 孝 継 3 4, 天 野 光 1 福 岡 県 保 健 環 境 研 究 所, 2 九 州 大 学, 3 ( 株 ) 岡 部 マ イ カ 工 業 所 4 ( 財 ) 日 本 分 析 セ ン タ ー 1. 緒 言 放 射 能 で 被 災 し た 地 域 の 復 興 と 復 旧 及 び 再 生 に 貢 献 す る 目 的 で, 選 択 性 が 高 く, 吸 着 容 量 の 大 き い 新 し い セ シ ウ ム 吸 着 材 ( 活 性 化 雲 母 鉱 物 Activated Micaceous Mineral: A M 2 ) を 開 発 し, 増 え 続 け る 汚 染 水 の 処 理 や 除 染 に よ っ て 排 出 さ れ る 処 理 水 中 の 放 射 性 セ シ ウ ム を 回 収 除 去 固 定 化 す る 低 減 技 術 と 環 境 修 復 に 幅 広 く 役 立 て る 2. 研 究 の 概 要 A M 2 の 合 成 は KMg 3 Si 3 AlO 10 (OH) 2 の 単 位 胞 組 成 を 持 つ 天 然 金 雲 母 ( プ ロ ゴ パ イ ト ) を 原 料 に 用 い, 平 均 粒 径 2 5 μ m に 粉 砕 し た 後, 1 M NaCl- 0.2 M テ ト ラ フ ェ ニ ル ホ ウ 酸 ナ ト リ ウ ム - 0. 0 1 M E D T A 溶 液 中 で 24 時 間 攪 拌 し て 生 成 し た セ シ ウ ム の 吸 着 試 験 は セ シ ウ ム 1000μ g/l を 含 む 溶 液 30ml に 吸 着 材 ( A M 2, ゼ オ ラ イ ト ) 0.5g を 加 え, 10 分 間 振 と う し た 後 に 0.45μ m の メ ン フ ラ ン フ ィ ル タ ー で ろ 過 し, ろ 液 中 の セ シ ウ ム を ICP- MS 法 で 定 量 し た セ シ ウ ム の 溶 出 試 験 は 精 製 水 で 調 整 し た セ シ ウ ム 1000μ g/l を 上 記 と 同 様 に 振 と う し て 吸 着 さ せ た 後, 遠 心 分 離 を 行 い 上 澄 み 液 を 捨 て る 0.5M 塩 化 ナ ト リ ウ ム 溶 液 あ る い は 海 水 溶 液 を 加 え て 再 び 振 と う し た 後 に ろ 過 し て ろ 液 中 の セ シ ウ ム 濃 度 を 測 定 し た ま た, A M 2 の 層 間 状 態 を X 線 回 折 装 置 で 分 析 し た 3. 結 果 ( 1 ) セ シ ウ ム の 吸 着 試 験 A M 2 及 び ゼ オ ラ イ ト へ の セ シ ウ ム の 吸 着 能 力 を 精 製 水, 0. 1 ~ 0.5M 塩 化 ナ ト リ ウ ム 溶 液 及 び 5 段 階 の 海 水 希 釈 溶 液 に セ シ ウ ム を 溶 解 し て 比 較 検 討 し た 精 製 水 で は A M 2 及 び ゼ オ ラ イ ト の い ず れ も 良 く セ シ ウ ム を 吸 着 し, 未 図 1 海 水 希 釈 溶 液 中 セ シ ウ ム の 吸 着 試 験 吸 着 の セ シ ウ ム 濃 度 は 1 ~ 4 μ g / L で あ っ た 塩 化 ナ ト リ ウ ム 溶 液 で は 塩 化 ナ ト リ ウ ム 濃 度 が 低 い ほ ど 吸 着 材 に 吸 着 す る セ シ ウ ム 量 は 多 く, 塩 化 ナ ト リ ウ ム 濃 度 の 上 昇 に 伴 い セ シ ウ ム の 吸 着 能 力 は 低 下 し た セ シ ウ ム の 吸 着 能 力 は A M 2 の 方 が 2 ~ 3 倍 高 か っ た 海 水 希 釈 溶 液 で は, 塩 分 濃 度 及 び 電 気 伝 導 率 の 上 昇 に 伴 い 未 吸 着 の セ シ ウ ム 濃 度 は 増 加 し た セ シ ウ ム 濃 度 は 希 釈 し な い 海 水 溶 液 で 最 大 と な り, 吸 着 能 力 は A M 2 の 方 が 各 希 釈 濃 度 を 通 し て 2 ~ 4 倍 高 か っ た( 図 1 ) -85-

回 折 強 度 (2) セ シ ウ ム の 溶 出 試 験 精 製 水 で 調 整 し た セ シ ウ ム を 吸 着 さ せ た A M 2 及 び ゼ オ ラ イ ト に, 0.5M 塩 化 ナ ト リ ウ ム 及 び 海 水 溶 液 を 加 え, 溶 出 す る セ シ ウ ム 濃 度 を 測 定 し た ( 図 2 ) A M 2 で は 塩 分 溶 液 中 に 残 存 す る セ シ ウ ム 図 2 塩 分 溶 液 に よ る セ シ ウ ム の 溶 出 試 験 濃 度 は 僅 か で, セ シ ウ ム の ほ と ん ど は 溶 出 し な い こ と が 分 か っ た ゼ オ ラ イ ト は 0.5M 塩 化 ナ ト リ ウ ム 溶 液 及 び 海 水 溶 液 に よ っ て セ シ ウ ム の 溶 出 が み ら れ, セ シ ウ ム 濃 度 は A M 2 よ り 3 ~ 30 倍 高 く, 吸 着 し た セ シ ウ ム の 溶 出 が 確 認 さ れ た 特 に 海 水 溶 液 に よ る セ シ ウ ム の 溶 出 が 顕 著 で あ っ た ( 3 ) 粉 末 X 線 回 折 解 析 X 線 回 折 測 定 に よ っ て, 金 雲 母 及 び A M 2 の 層 間 間 隔 を 調 べ た 回 折 強 度 と 回 折 角 度 と の 関 係 を 表 し た 粉 末 X 線 回 折 パ タ ー ン を 図 3 に 示 す 原 料 で あ る 金 雲 母 中 に は 10.0 A 位 置 に 雲 母 の 001 回 折 線 が み ら れ,2 次 ( 4.99A ) 及 び 3 次 ( 3.32 A ) 反 射 も 認 め ら れ た 一 方, A M 2 で は 10.0A の 回 折 線 は 消 失 し, 代 わ っ て そ の 14.8A 及 び 2 次 反 射 と 考 え ら れ る ピ ー ク が 出 現 し た 14.8 A と い う 値 は, 単 位 層 と 単 位 層 の 間 に 正 味 4. 8 A の 間 隙 が あ る こ と を 意 味 し て い る こ れ は, ナ ト リ ウ ム が 少 な く と も 6 分 子 の 水 和 水 を 配 位 し た 形 で 層 間 に 入 り 込 ん だ 積 層 構 造 に 変 化 し た こ と を 示 し て お り, イ オ ン の 直 径 が 0 5 10 15 20 25 30 35 3.6A の セ シ ウ ム が 容 易 に 入 り 込 め て, ナ ト リ ウ ム と 容 易 く 置 換 で き る 距 離 に 相 当 し て い る 図 回 折 角 度 (CuKα2 Θ) 3 粉 末 X 線 回 折 解 析 Phlogopite AM2 4. 結 語 本 研 究 で は 新 し い セ シ ウ ム 吸 着 材 A M 2 を 用 い て セ シ ウ ム の 吸 着 除 去 効 果 を 検 討 し た A M 2 は セ シ ウ ム 選 択 性 が 極 め て 高 く, セ シ ウ ム を 特 異 的 に 吸 着 す る た め 塩 分 濃 度 が 増 加 し て も 吸 着 能 力 が 低 下 し に く い 特 徴 を 有 し た ま た, 一 旦 吸 着 し た セ シ ウ ム は 高 濃 度 の 塩 分 溶 液 を 加 え て も 容 易 に 脱 着 し な い こ と も 明 ら か に な っ た こ れ は, 電 気 的 に 負 に 帯 電 し て い る A M 2 の 単 位 層 表 面 に は セ シ ウ ム イ オ ン の 大 き さ と 同 等 サ イ ズ の 窪 み が あ り, こ の 部 分 に 吸 着 さ れ る と 静 電 気 的 に 強 固 に 保 持 さ れ 外 れ に く く な る た め と 考 え ら れ る -86-