平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 の 法 令 等 に 準 拠 UP!Consulting Up Newsletter 事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 減 資 による 欠 損 填 補 と 資 本 金 等 の 額 http://www.up-firm.com 1
事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 事 業 税 は 都 道 府 県 が 所 得 ( 利 益 )に 対 して 課 税 します 1. 個 人 事 業 税 業 種 区 分 税 率 ( 標 準 税 率 ) 第 1 種 事 業 ( 物 品 販 売 業 製 造 業 金 銭 貸 付 業 飲 食 店 業 不 動 産 貸 付 業 等 ) 5% 第 2 種 事 業 ( 畜 産 業 水 産 業 等 ) 4% 第 3 種 事 業 ( 弁 護 士 弁 理 士 公 認 会 計 士 税 理 士 司 法 書 士 医 師 等 の 自 由 職 業 ) (あんま 鍼 灸 柔 道 整 復 助 産 師 その 他 の 医 業 等 ) 5% 3% 各 都 道 府 県 は 上 記 の 標 準 税 率 の 1.1 倍 の 範 囲 内 で 実 際 税 率 を 定 めることができます 不 動 産 貸 付 業 で 事 業 税 が 発 生 するのは 1 一 戸 建 住 宅 は 貸 付 棟 数 が 10 以 上 2 賃 貸 マンションは 貸 付 室 数 が 10 以 上 の 場 合 です 住 宅 用 の 土 地 については 貸 付 面 積 が 2,000 m2 以 上 か 貸 付 件 数 が 10 件 以 上 の 場 合 です 個 人 事 業 税 では 事 業 主 控 除 額 が 年 間 290 万 円 あります( 地 法 72 の 49 の 10) 通 常 は 所 得 税 の 確 定 申 告 書 を 提 出 してい れば 事 業 税 の 申 告 書 の 提 出 があったものとみなされますので 申 告 書 の 提 出 は 必 要 ありません 事 業 税 の 納 税 通 知 書 が 交 付 されるため 8/31 と 11/30 に 納 付 します 2. 法 人 事 業 税 区 分 税 率 ( 標 準 税 率 ) 1 所 得 割 ( 課 税 標 準 は 各 事 業 年 度 の 課 税 所 得 や 清 算 所 得 ) 年 間 所 得 金 額 400 万 円 以 下 の 部 分 年 間 所 得 金 額 400 万 円 超 800 万 円 以 下 の 部 分 年 間 所 得 金 額 800 万 円 超 の 部 分 改 正 前 5.0% 7.3% 9.6% 改 正 後 2.7% 4.0% 5.3% 2 付 加 価 値 割 ( 収 益 配 分 額 = 報 酬 給 与 額 純 支 払 利 子 純 支 払 賃 借 料 ) ( 上 記 の 収 益 配 分 額 + 単 年 度 損 益 ) 3 資 本 割 ( 資 本 金 等 の 額 ) 0.48% ( 東 京 都 大 阪 府 は 0.504%) 0.2% ( 東 京 都 大 阪 府 は 0.21%) 各 都 道 府 県 は 上 記 の 標 準 税 率 の 1.2 倍 の 範 囲 内 で 実 際 税 率 を 定 めることができます http://www.up-firm.com 2
3. 事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 法 人 事 業 税 には 平 成 16 年 度 から 外 形 標 準 課 税 制 度 が 導 入 されています( 地 法 72 条 の 21) 期 末 資 本 金 また は 出 資 金 が 1 億 円 超 の 法 人 は 所 得 割 以 外 にも 資 本 割 や 付 加 価 値 割 が 課 税 されます 所 得 が 赤 字 でも 資 本 割 や 付 加 価 値 割 は 課 税 されます 法 人 事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 の 対 象 となるかどうかの 判 定 時 期 は 事 業 年 度 終 了 日 時 点 での 資 本 金 または 出 資 金 によります( 地 法 72 条 の 22) 事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 の 資 本 割 の 計 算 は 資 本 金 ではなく 資 本 金 等 の 額 に 税 率 を 乗 じることで 計 算 します ( 地 法 721 二 ) 資 本 割 の 税 率 は 標 準 税 率 が 0.2%であり 東 京 都 や 大 阪 府 は 超 過 税 率 のため 0.21%です 資 本 金 2 億 円 の 会 社 では 年 間 42 万 円 となります 事 業 税 の 税 率 比 較 対 象 外 法 人 対 象 法 人 所 得 割 9.6% 7.2% 付 加 価 値 割 - 0.48% 資 本 割 ( 資 本 金 等 の 額 ) - 0.2% 上 記 の 通 り 課 税 所 得 が 多 額 に 見 込 める 事 業 の 場 合 は 外 形 標 準 課 税 を 適 用 した 方 が 有 利 となります 4. 設 例 1 事 業 年 度 終 了 日 現 在 の 資 本 金 が 1 億 2 千 万 円 で 当 該 事 業 年 度 中 に 自 己 株 式 4 千 万 円 を 市 場 取 得 したため 資 本 金 等 の 額 は 8 千 万 円 となる 場 合 があります このように 事 業 年 度 終 了 日 現 在 の 資 本 金 等 の 額 が 1 億 円 以 下 となった 場 合 でも 事 業 年 度 終 了 日 時 点 での 資 本 金 が 1 億 円 超 の 場 合 は 事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 が 適 用 され ます 2 事 業 年 度 終 了 日 現 在 の 資 本 金 の 額 は 1 億 円 だが 資 本 準 備 金 が 5 千 万 円 あるため 資 本 金 等 の 額 は 1 億 5 千 万 円 となっている 場 合 があります このように 事 業 年 度 終 了 日 現 在 の 資 本 金 等 の 額 が1 億 円 を 超 えていても 資 本 金 が 1 億 円 以 下 の 場 合 は 外 形 標 準 課 税 法 人 に 該 当 しません 5. 参 考 平 成 20 年 度 税 制 改 正 では 事 業 税 が 減 税 となり 地 方 法 人 特 別 税 が 新 設 されました 1 所 得 割 ( 平 成 20 年 10 月 1 日 以 降 開 始 事 業 年 度 より) 年 間 所 得 金 額 400 万 円 以 下 の 部 分 年 間 所 得 金 額 400 万 円 超 800 万 円 以 下 の 部 分 年 間 所 得 金 額 800 万 円 超 の 部 分 標 準 税 率 2.7% 4.0% 5.3% http://www.up-firm.com 3
減 資 による 欠 損 填 補 と 資 本 金 等 の 額 過 去 の 損 失 計 上 により 欠 損 金 がある 場 合 は 事 業 の 整 理 縮 小 目 的 や 財 務 体 質 を 健 全 化 するために 減 資 により 欠 損 填 補 をすることが 出 来 ます これにより 将 来 の 利 益 配 当 を 復 活 することも 出 来 ます 1. 会 社 法 上 の 手 続 き 減 資 する 場 合 は 原 則 として 株 主 総 会 の 特 別 決 議 が 必 要 となります( 会 447) ただし 資 本 金 減 尐 額 の 全 額 を 欠 損 填 補 に 充 てる 場 合 は 定 時 株 主 総 会 の 普 通 決 議 で 足 ります 臨 時 株 主 総 会 の 場 合 は 特 別 決 議 が 必 要 になりま す( 会 3092 九 ) 法 定 準 備 金 を 取 り 崩 す 方 法 で 欠 損 填 補 を 行 うことは 臨 時 株 主 総 会 の 普 通 決 議 で 可 能 です( 会 448) 商 業 登 記 上 は 株 主 総 会 議 事 録 が 必 要 となります また この 場 合 でも 公 告 等 の 債 権 者 保 護 手 続 が 必 要 となり ます( 会 4492) 2. 会 計 処 理 資 本 金 2,500 百 万 円 の 会 社 が 1,000 百 万 円 減 資 して 繰 越 利 益 剰 余 金 900 百 万 円 を 相 殺 する 場 合 の 会 計 処 理 は 以 下 の 通 りです ( 単 位 : 百 万 円 ) 資 本 金 1,000 その 他 資 本 剰 余 金 1,000 その 他 資 本 剰 余 金 1,000 繰 越 利 益 剰 余 金 1,000 まず 減 尐 した 資 本 金 の 額 をその 他 資 本 剰 余 金 に 振 り 替 えます( 会 447 会 計 規 271 一 ) 具 体 的 には その 他 の 資 本 剰 余 金 の 資 本 金 及 び 資 本 準 備 金 減 尐 差 益 となります( 自 己 株 式 会 計 基 準 20 59) そして 欠 損 金 つまりマ イナスの 繰 越 利 益 剰 余 金 と 相 殺 します( 会 452) マイナス 残 高 になった 利 益 剰 余 金 を 将 来 の 利 益 を 待 たずにその 他 資 本 剰 余 金 で 補 うのは 資 本 に 生 じている 毀 損 を 事 実 として 認 識 するものであり 資 本 と 利 益 の 混 同 にはあたらな いと 考 えます なお 資 本 金 を 原 資 としてその 他 資 本 剰 余 金 を 配 当 する いわゆる 減 資 払 い 戻 しも 可 能 です( 会 447 453) その 場 合 は 株 主 総 会 の 特 別 決 議 と 債 権 者 保 護 手 続 が 必 要 です 3. 税 務 処 理 法 人 税 法 上 は 減 尐 した 資 本 金 と 同 額 だけ 資 本 金 等 の 額 ( 旧 来 の 資 本 積 立 金 資 本 金 以 外 の 資 本 金 等 の 額 )が 増 加 します( 法 令 81 十 二 ) したがって 欠 損 填 補 により 資 本 金 が 減 尐 しても 資 本 金 等 の 額 や 利 益 積 立 金 は 増 減 し ません よって 会 計 上 の 欠 損 金 が 資 本 金 と 相 殺 されて 貸 借 対 照 表 から 消 去 されても 税 務 上 の 青 色 欠 損 金 は 有 効 のままで 将 来 の 課 税 所 得 と 相 殺 することが 出 来 ます 会 計 処 理 と 異 なり 税 務 上 は 資 本 と 利 益 の 混 同 は 認 められて いません ( 単 位 : 百 万 円 ) 資 本 金 1,000 資 本 金 等 の 額 1,000 http://www.up-firm.com 4
なお 有 償 での 減 資 払 い 戻 しの 場 合 は 税 務 上 は 減 資 資 本 金 等 の 額 を 超 える 部 分 がみなし 配 当 となります( 法 法 241 三 ) すなわち 利 益 積 立 金 を 減 尐 させます 4. 申 告 調 整 利 益 積 立 金 1,000 資 本 金 等 の 額 1,000 借 方 貸 方 ともに 別 表 四 を 経 由 せずに 別 表 五 に 計 上 5. 別 表 四 五 の 記 載 例 < 別 表 四 > 処 理 必 要 なし < 別 表 五 ( 一 )> Ⅰ 利 益 積 立 金 額 の 計 算 に 関 する 明 細 書 区 分 期 首 利 益 積 立 金 期 中 増 減 期 末 減 少 増 加 利 益 準 備 金 資 本 金 等 の 額 1,000 1,000 繰 越 損 益 金 900 1,000 100 合 計 900 900 Ⅱ 資 本 金 等 の 額 の 計 算 に 関 する 明 細 書 区 分 期 首 資 本 金 等 の 額 期 中 増 減 期 末 減 少 増 加 資 本 金 2,500 1,000 1,500 資 本 準 備 金 利 益 積 立 金 1,000 1,000 差 引 合 計 額 2,500 2,500 上 記 の 通 り 資 本 金 が 減 尐 するため 事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 の 適 用 除 外 となる 場 合 もあります なお 平 成 22 年 度 税 制 改 正 により 欠 損 填 補 のために 無 償 減 資 した 場 合 には その 金 額 が 法 人 事 業 税 の 資 本 割 の 課 税 標 準 ( 資 本 金 等 の 額 )から 控 除 されることになりました( 新 地 法 72 条 の 211) 資 本 金 1 億 円 超 の 法 人 の 法 人 事 業 税 においては 外 形 標 準 課 税 の 適 用 があります 資 本 金 等 の 額 に 対 して 資 本 割 部 分 が 課 税 されます( 原 則 0.2% 東 京 都 0. 21%) この 資 本 金 等 の 額 について 事 業 再 生 等 により 欠 損 填 補 のために 無 償 減 資 をした 場 合 でも 税 務 上 は 減 尐 し ません 会 計 上 の 自 己 資 本 が 尐 額 でも 資 本 割 の 課 税 標 準 が 多 額 になる 実 務 上 の 問 題 がありました これまでは 附 則 の 改 正 で 2 年 毎 の 延 長 が 行 われていたのですが 本 則 で 恒 久 化 されました ただし 住 民 税 均 等 割 の 課 税 標 準 に ついてはこのような 免 除 措 置 はありません http://www.up-firm.com 5
6. 事 業 再 生 再 編 への 影 響 持 株 会 社 の 設 立 や 会 社 分 割 などの 事 業 再 編 に 影 響 する 場 合 があります 例 えば 分 社 化 の 場 合 で 事 業 を 分 割 し 資 本 金 1 億 円 以 下 の 子 会 社 を 設 立 すれば 子 会 社 は 外 形 標 準 課 税 の 適 用 対 象 外 となるため 分 社 事 業 に 係 る 付 加 価 値 割 と 資 本 割 の 事 業 税 負 担 はなくなります なお 会 社 分 割 を 行 った 場 合 は 金 銭 出 資 や 現 物 出 資 の 場 合 と 異 なり 増 加 する 純 資 産 の 2 分 の 1 以 上 を 資 本 金 に 組 み 入 れなければならないという 制 限 がありません( 会 4455 会 計 規 37) このため 増 加 資 本 金 を 0 円 資 本 準 備 金 又 はその 他 資 本 剰 余 金 に 全 額 を 計 上 することも 可 能 です これを 利 用 すれば 事 業 に 悪 影 響 を 与 えない 限 り 事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 の 適 用 を 回 避 できます Reference Purpose Only 本 レターに 掲 載 している 情 報 は 一 般 的 なガイダンスに 限 定 されています この 文 書 は 個 別 具 体 的 ケースに 対 する 会 計 税 務 のア ドバイスをするものではありません 会 計 上 の 判 断 や 税 法 の 適 用 結 果 は 事 実 認 定 や 個 別 事 情 によって 大 幅 に 異 なることがありえます また 解 説 の 前 提 となる 会 計 規 則 や 税 制 が 変 更 されている 可 能 性 もあります 実 際 に 企 画 実 行 される 場 合 は 当 事 務 所 の 担 当 者 にご 確 認 ください http://www.up-firm.com 6