2014.5.19 医 療 者 のための 情 報 技 術 入 門 第 4 回 パブリックデータから 健 康 政 策 へ ( 健 康 な 社 会 のためのデータ 公 開 の 現 状 とありかたを 考 える) 日 紫 喜 光 良 概 要 1.はじめに 2. 問 題 の 所 在 を 考 えるために 3.データの 収 集 4.データの 利 用 1.はじめに データの 収 集 は 現 在 は 定 期 的 に 紙 の 調 査 票 を 用 いて(おそらくすぐにタブレットに 置 き 換 わると 思 われるが) 調 査 している しかし 調 査 コストを 減 少 させ 常 にデータが 収 集 されている 状 態 にすれば もっと 新 しいデータに 基 づいた 意 思 決 定 ができるだろう IC チップをもつ 個 人 識 別 カードの 活 用 によって データの 効 率 的 な 収 集 が 可 能 になるだろう SUICA や WAON のような FeliCa 技 術 にもとづくものを 個 人 識 別 カードとして 利 用 して 住 民 のニーズを 捕 捉 し 自 治 体 のサービスを 設 計 するために 活 用 してはどうだろうか 2. 問 題 の 所 在 を 考 えるために 公 共 の 問 題 は 数 量 的 に 提 示 されたほうが 説 得 力 が 大 きいと 思 われる ある 前 提 のもと 問 題 を 数 量 的 に 考 える 方 法 は フェルミ 推 定 と 呼 ばれる フェルミの 名 前 は 世 界 最 初 の 原 子 炉 を 作 った 原 子 物 理 学 者 のエンリコ フェルミがこの 手 の 計 算 が 得 意 で また シ カゴにピアノの 調 律 師 は 何 人 いるか という 問 題 をシカゴ 大 学 の 学 生 に 出 したと 伝 えられ ていることからきている フェルミ 推 定 を 行 うためには (1) 問 題 を 分 割 する (2) 対 数 をうまく 利 用 する (3) 基 本 的 な 数 量 は 知 っておく ことが 重 要 だとされている 問 題 の 分 割 とは 言 い 換 えれば 考 え 方 のフレームワーク( 枠 組 み) をつくることであり 典 型 的 なものとして 消 費 者 目 線 の 考 え 方 すなわち 人 口 と 頻 度 と 数 量 とのかけ 算 から 問 題 を 定 量 化 するとらえ 方 がある たとえば 今 日 本 で 何 人 の 人 が 風 邪 をひいているか? 推 定 したいときどうす るか? (1)Estimation Problems for Epidemiology http://rstudio-pubs-static.s3.amazonaws.com/1806_3a397241bab24f228329fd2161ef327
2.html Problem 0 に How many people in the US have a cold right now? とある (2) フェルミ 基 本 日 本 のコンビニ 弁 当 市 場 の 年 間 売 上 は?( 考 え 方 ) http://career.mods.jp/2013/03/27/466 消 費 者 目 線 の 考 え 方 と 供 給 者 目 線 の 考 え 方 とがある 消 費 者 目 線 の 考 え 方 のほうが 無 難 かつ 重 要 である (3) 平 成 22 年 国 民 生 活 基 本 調 査 の 概 況 より 統 計 表 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/toukei.html 第 11 表 通 院 者 率 ( 人 口 千 対 ), 年 齢 (10 歳 階 級 ) 性 傷 病 ( 複 数 回 答 ) 別 に 急 性 鼻 咽 頭 炎 (か ぜ)の 項 目 がある 推 定 してから 確 認 したほうが 面 白 い 3.データの 収 集 まったく 無 知 の 状 態 からデータを 探 しに 行 くとしたらどうするか? 国 立 国 会 図 書 館 の Web サイトからスタートするのは 効 率 的 な 方 法 のひとつだろう 国 立 国 会 図 書 館 の リサーチ ナビ は テーマごとに 基 本 的 な 資 料 の 場 所 を 示 している さまざまな 種 類 の 資 料 があるが 統 計 資 料 に 絞 って 使 い 方 の 一 例 を 示 す どのような 統 計 があるか 全 体 像 を 知 るには しらべるヒント (または 調 べ 方 案 内 )を 見 る 次 に 統 計 資 料 レファレンス ガイド を 見 ると キーワード 検 索 ができるほかに 次 のよう な 構 成 になっている 1. 現 在 の 統 計 を 検 索 するためのツール 2. 過 去 の 統 計 を 検 索 するためのツール 3. 総 合 統 計 書 4. 分 野 別 統 計 書 5. 長 期 統 計 書 6. 国 際 統 計 書 総 務 省 と 厚 生 労 働 省 さらに 政 府 統 計 の 総 合 窓 口 (e-stat)が 健 康 政 策 を 考 えるための 基 本 的 な 統 計 の 提 供 者 であることがわかる 例 えば 現 在 の 統 計 を 検 索 するためのツール か らは 総 務 省 統 計 局 へのリンクがある また 分 野 別 統 計 書 で 示 している 分 類 では 人 口 医 療 保 健 国 民 生 活 社 会 保 障 などが 健 康 政 策 に 関 わってくるであろう さらに 医 療 保 健 では 厚 生 労 働 省 の 統 計 データベースへのリンクの 他 国 会 図 書 館 ナビ 内 の 医 療 保 健 統 計 ( 各 論 : 疾 病 別 患 者 数 ) へのリンクがある 医 療 保 健 統 計 ( 各 論 : 疾 病 別 患 者 数 )では 病 気 ごとの 統 計 として 政 府 統 計 の 総 合 窓 口 (e-stat)が 提
供 する 病 院 を 対 象 とした 患 者 調 査 へのリンクとならんで 患 者 の 側 からみた 頭 痛 や 腰 痛 などの 主 訴 の 統 計 も 含 んだ 国 民 生 活 基 礎 調 査 へのリンクがある (1) 国 立 国 会 図 書 館 リサーチ ナビ http://rnavi.ndl.go.jp/rnavi/ (2) 総 務 省 統 計 局 http://www.stat.go.jp/ (3) 厚 生 労 働 省 厚 生 労 働 統 計 一 覧 http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/ (4) 患 者 調 査 (e-stat) http://www.e-stat.go.jp/sg1/estat/newlist.do?tid=000001031167 (5)e-Stat http://www.e-stat.go.jp/ これらの 調 査 官 庁 などが 発 表 した 統 計 等 の 資 料 は 一 次 資 料 とよばれる 一 次 資 料 に 基 づき 作 成 した 資 料 さらにはそういった 資 料 に 基 づいて 作 成 された 資 料 はすべて 二 次 資 料 とよばれる 例 : 社 会 実 情 データ 図 録 ( 本 川 裕 氏 ) http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/ 地 方 自 治 体 については データを 一 元 的 に 管 理 しているところはない 地 方 自 治 体 の Web ページごとに 探 すのが 最 善 の 方 法 と 考 えられる しかし 前 掲 の 統 計 データから 該 当 する 地 方 のデータだけを 利 用 できる 場 合 もあると 考 えられる 医 療 法 に 基 づき 都 道 府 県 は 医 療 計 画 を 立 案 している 医 療 計 画 では 医 療 圏 が 設 定 され とくに 二 次 医 療 圏 内 でたいていの 医 療 が 完 結 することを 目 標 としている 二 次 医 療 圏 内 に おける 医 療 計 画 を 実 行 する 手 段 として 病 床 数 の 制 限 など 供 給 体 制 への 規 制 誘 導 がお こなわれている 医 療 法 ( 昭 和 二 十 三 年 七 月 三 十 日 法 律 第 二 百 五 号 ) http://law.e-gov.go.jp/htmldata/s23/s23ho205.html 第 一 条 この 法 律 は 医 療 を 受 ける 者 の 利 益 の 保 護 及 び 良 質 かつ 適 切 な 医 療 を 効 率 的 に 提 供 する 体 制 の 確 保 を 図 り もつて 国 民 の 健 康 の 保 持 に 寄 与 することを 目 的 とする 第 一 条 の 三 国 及 び 地 方 公 共 団 体 は 国 民 に 対 し 良 質 かつ 適 切 な 医 療 を 効 率 的 に 提 供 す る 体 制 が 確 保 されるよう 努 めなければならない
医 療 保 健 データは 都 道 府 県 レベルで 管 理 され 一 部 は 厚 生 労 働 省 に 集 約 されている 厚 生 労 働 省 から 発 表 されるデータは 主 に 都 道 府 県 単 位 のもの( 一 部 二 次 医 療 圏 )だが 都 道 府 県 からのデータは 二 次 医 療 圏 単 位 で 発 表 されている 地 域 保 健 医 療 基 礎 統 計 ( 厚 生 労 働 省 ) http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/142-1.html ところが 都 道 府 県 によって 医 療 計 画 の 存 在 する 場 所 だけでなく どの 程 度 意 味 のある 構 造 をもって 構 成 されているかも 異 なる 栃 木 県 の 場 合 脳 卒 中 ( 脳 出 血 脳 梗 塞 くも 膜 下 出 血 を 含 む)の 二 次 医 療 圏 ごとの 現 状 データは ホーム > 福 祉 医 療 > 医 療 > 医 療 施 策 > 栃 木 県 保 健 医 療 計 画 (6 期 計 画 ) の 順 にリンクをたどって Ⅱ 現 状 把 握 指 標 の 項 から 2 脳 卒 中 (PDF:210KB) を 選 ぶ 神 奈 川 県 の 場 合 同 様 のデータは ホー ム > 健 康 福 祉 子 育 て > 医 療 > 医 療 計 画 > 神 奈 川 県 保 健 医 療 計 画 とたどって V 資 料 167~249 ページ [PDF ファイル/6.07MB] の 中 に 他 の 種 類 の 情 報 といっしょに 押 し 込 められている (1) 栃 木 県 栃 木 県 保 健 医 療 計 画 (6 期 計 画 ) http://www.pref.tochigi.lg.jp/e02/pref/keikaku/bumon/hokeniryou.html (2) 神 奈 川 県 神 奈 川 県 保 健 医 療 計 画 http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f742/ データの 形 式 について 簡 単 にまとめておく まず データが PDF 形 式 の 場 合 人 間 が 読 む 際 の 読 みやすさという 利 点 はあるが プログラムに 取 りこむためのデータとしては 不 便 で あり Adobe Acrobat アンテナハウス 社 瞬 簡 PDF 変 換 等 で Excel の 表 の 形 式 を 抽 出 可 能 な 場 合 もあるが しばしば 手 作 業 でエクセル 等 の 表 形 式 にすることを 必 要 とする データが HTML (Hypertext Markup Language)の 表 (<table> </table>) 形 式 である 場 合 Web スクレイピング (Web scraping)とよばれる 方 法 が 有 効 である 場 合 がある Web スクレ イピングで 表 を 抽 出 する 場 合 は HTML の タグ を 用 いて 表 を 記 述 する 際 の 文 法 に 従 っ て 表 の 列 や1つ1つのセルを 認 識 する (1) 最 強 の 情 報 収 集 術! 初 心 者 向 け Ruby+Nokogiri で Web スクレイピング 徹 底 解 説 http://sideb.hatenablog.com/entry/ruby_scraping_nokogiri
データ 形 式 として XML(eXtended MarkupLanguage)を 選 べる 場 合 もある(e-Stat など) エクセルは 文 書 を 書 くのにもつかわれてきたので 提 供 されたデータがプログラムによる 処 理 にはそのままでは 利 用 できない 場 合 も 多 い しかし XML で 書 かれたものは データ 部 分 を 正 確 に 取 り 出 すことができる XML から 他 のフォーマットの 変 換 はプログラムでお こなう 必 要 があるが エクセルが 使 える 場 合 もある (1)XML ファイルから CSV へ EXCEL のみを 使 い 1 分 で 変 換 する 方 法 http://aquablue7.blogspot.jp/2013/04/xmlcsv.html (2)2.75 mxml2csv xml から csv への 変 換 http://www.nysol.sakura.ne.jp/mcmd/jp/sect-mxml2csv.html CSV ファイル 処 理 システム M のマニュアルから また データ 形 式 には JSON (JavaScript Object Notation)も 使 われている この 形 式 で 読 み 込 めば プログラミングをする 際 にオブジェクト(ある 型 として 定 義 されたもの(クラ ス)の 具 体 物 (インスタンス)として 生 成 され まとまって 操 作 されるデータのかたまり) としてそのまま 利 用 できる 4. 収 集 したデータの 利 用 複 数 のデータ 源 からのデータを 抽 出 統 合 して ある 地 域 の 全 体 像 を 見 せることが 試 みら れている その 一 例 が スマートフォンアプリ アプリ De 統 計 である 総 務 省 統 計 局 及 び 独 立 行 政 法 人 統 計 センターは スマートフォンによる 統 計 情 報 提 供 アプリ アプリ De 統 計 を 開 発 し 試 行 版 として 提 供 を 開 始 した アプリ DE 統 計 の 試 行 版 は Android OS4.0.3 以 上 で 利 用 可 能 である 提 供 機 能 は 次 の3 点 である (1) City Stat : 今 自 分 がいる 場 所 の 市 区 町 村 の 統 計 データをスマートフォンの GPS と 統 計 API 機 能 を 連 動 させ 表 示 (2) ポケット 統 計 : 基 本 的 な 統 計 データを 手 軽 に 表 示 (3) とうけいどけい : 様 々な 日 にちなんだ 統 計 情 報 や 統 計 にまつわるクイズ ちょっとした 統 計 グラフの 作 成 API 機 能 を 活 用 したスマートフォンアプリ アプリ De 統 計 の 提 供 を 開 始 しました
http://statdb.nstac.go.jp/info/smartphone-app/ データを 見 せるだけでなく 将 来 のシミュレーションに 用 いることもできる 中 でも 人 口 データは 医 療 福 祉 の 需 要 を 予 測 して 健 康 政 策 を 考 えるためには もっとも 基 本 となる データである 多 くの 疾 患 や 障 害 は 加 齢 に 伴 って 出 現 しやすくなるからである また 多 くの 地 域 で 人 口 減 少 によって 将 来 はあらゆるサービスが 成 り 立 たなくなる 可 能 性 がある 人 口 の 年 齢 別 分 布 データを 用 いたシミュレーションを 人 口 減 少 が 既 に 切 実 な 問 題 となっ ている 島 根 県 が 提 供 している しまねの 郷 づくりカルテ は 人 口 だけでなくさまざまな 種 類 のデータを 市 町 村 ごとに まとめたものである しまねの 郷 づくりカルテ の 中 には 現 在 の 年 齢 別 人 口 分 布 を 示 し 現 在 の 傾 向 が 続 いた 場 合 の 10 年 後 の 予 測 年 齢 別 人 口 分 布 ( 人 口 ピラミッド)を 示 すととも に 外 部 からの 人 口 流 入 (または 外 部 への 人 口 流 出 )が 3 種 類 の 年 齢 層 (20 代 30 代 ( 子 供 1 人 ) 60 代 )の 夫 婦 が1 年 あたり 何 組 あったら どのように 年 齢 別 人 口 分 布 が 変 化 する と 予 想 されるかも 示 している このプログラムは 特 に 若 い 夫 婦 向 けの 施 策 が 社 会 の 維 持 に 必 須 だということを 人 々に 意 識 させるための 良 いツールだと 思 われる しまねの 郷 づくりカルテ http://web-gis.pref.shimane.lg.jp/sato/karute こうしたシミュレーション 等 のプログラムを 作 成 するための 環 境 として 例 えば フリー 統 計 ソフトウェア R がある ダウンロードしたデータの 用 途 として こうしたソフトウ ェアに 読 み 込 み 利 用 することもある Rのダウンロード インストール データの 読 み 込 みについて 筑 波 大 学 のミラーサイト(http://cran.md.tsukuba.ac.jp/)からダウンロードする ダブルクリックしてインストールする Rの 利 用 には スタートメニューからRを 選 択 (Windows7.x の 場 合 )して 立 ち 上 げる R を 立 ち 上 げたら データがあるフォルダに ディレクトリを 変 更 する( 作 業 スペースを 移 動 する) [ 操 作 ]ファイル ディレクトリの 変 更 メニューでも 使 えるコマンドもあるが 主 にコマンドラインからデータの 操 作 を 行 う 例 えば setwd()で カレントディレクトリの 確 認 (どのフォルダが 作 業 スペースかを 確 認 する)
を 行 い quit()で 終 了 する ファイルの 読 み 書 きなどをするための R プログラム(パッケージ)を 追 加 してインストー ルするために CPAN mirror サイトを 指 定 する [ 操 作 ] 1 パッケージ メニュー CPAN mirror Tsukuba または Tokyo 次 に 例 えば エクセルファイルの 読 み 込 みのために xlsx パッケージをインストールする ためには Java というプログラム 言 語 で 書 かれたプログラムを R で 動 かすためのパッケー ジ rjava が 必 要 なので これをインストールする [ 操 作 ] 1 パッケージ メニュー パッケージのインストール rjava 2 パッケージ メニュー パッケージのインストール xlsx 3コマンドラインから library(xlsx)のコマンドを 入 力 して xlsx ライブラリを 使 えるよう にする こうして エクセルファイルの 読 み 込 みができるようになる ( 例 :j001.xlsx の 12 行 目 か ら 読 み 込 み) [ 操 作 ] 1 以 下 のコマンドを 入 力 ( 先 頭 の > はコマンドプロンプト) > data <- read.xlsx("j0001.xlsx",1,startrow=12,encoding="utf-8")