堆 肥 の 利 用 ガイド 堆 肥 の 施 用 効 果 堆 肥 は 作 物 への 養 分 供 給 だけでなく 土 壌 の 化 学 性 物 理 性 生 物 性 を 総 合 的 に 改 善 し 地 力 の 向 上 を 図 ることができます 1 養 分 供 給 土 壌 化 学 性 の 改 善 効 果 窒 素 リン 酸 カリの 他 石 灰 苦 土 等 の 多 量 要 素 やホウ 素 鉄 等 の 微 量 要 素 の 供 給 ができます ま た 堆 肥 が 分 解 されて 生 産 される 土 壌 有 機 物 により 土 壌 の 保 肥 力 が 向 上 します 2 土 壌 物 理 性 の 改 善 効 果 土 が 軟 らかくなり 通 気 性 や 水 持 ち 水 はけが 改 良 されます その 結 果 根 の 健 全 な 伸 張 や 養 水 分 の 吸 収 促 進 が 期 待 できます 3 土 壌 の 生 物 性 の 改 善 効 果 堆 肥 を 分 解 する 土 壌 動 物 や 菌 などの 多 種 多 様 な 生 物 が 増 えることで 土 壌 中 の 生 物 相 が 豊 かになり 害 虫 や 有 害 な 病 原 菌 が 優 先 するのを 防 ぎます 4 消 費 者 ニーズに 対 応 した 生 産 環 境 に 配 慮 し 安 全 安 心 で 高 品 質 な 農 産 物 を 求 める 消 費 者 ニーズに 対 応 した 農 産 物 を 生 産 できます 品 質 向 上 安 定 生 産 + 消 費 者 ニーズへの 対 応 物 理 性 + 化 学 性 + 生 物 性 = 地 力 の 向 上
堆 肥 の 種 類 と 特 性 堆 肥 は その 原 料 により 肥 料 供 給 効 果 の 高 い 堆 肥 と 土 壌 改 良 効 果 ( 化 学 性 物 理 性 生 物 性 ) の 高 い 堆 肥 とに 分 かれます 土 壌 養 分 の 過 剰 蓄 積 を 回 避 し 必 要 とする 効 果 を 得 るためにも 特 性 を 理 解 して 利 用 することが 大 切 です 1 堆 肥 の 特 性 を 表 す 数 値 (1) 窒 素 (N) リン 酸 (P) ) ) ) カリ カリ(K) 窒 素 については 原 料 の 種 類 によって 肥 効 率 (= 化 学 肥 料 代 替 率 )が 異 なります おおよそ C/N 比 から 推 定 できますので 成 分 量 と 併 せて 考 慮 してください りん 酸 カリは 長 期 的 な 視 野 に 立 った 場 合 は ほぼ 全 量 化 学 肥 料 の 代 替 となります このため これらの 土 壌 養 分 が 十 分 にあるほ 場 で 堆 肥 を 利 用 する 場 合 には 施 用 する 堆 肥 に 含 まれるリン 酸 カ リを 考 慮 して 基 肥 から 減 らす 必 要 があります (2) 炭 素 率 (C/N 比 ) 含 有 する 炭 素 と 窒 素 の 比 率 で 堆 肥 中 窒 素 の 肥 効 の 目 安 になります 値 が 大 きいほど 分 解 しにくく 窒 素 の 肥 効 は 低 くなり 値 が 小 さいほど 分 解 しやすく 窒 素 の 肥 効 が 高 くなる 特 性 を 示 します C/N 比 と 窒 素 の 肥 効 10 以 下 : 肥 効 が 高 く 値 が 小 さいほど 化 学 肥 料 に 近 い 性 質 10 ~ 20 : 牛 ふ ん 堆 肥 程 度 の 肥 効 (10~20%) 20 以 上 : 施 用 年 の 肥 効 はない 値 が 大 きくなるほど 分 解 時 に 窒 素 を 取 り 込 み 窒 素 飢 餓 の 恐 れが 出 てくるため 施 用 から 作 付 まで の 期 間 を 十 分 にあける 必 要 が ある 図 1 有 機 物 の 炭 素 率 と 窒 素 肥 効 の 関 係 の 概 念 図 2 原 料 の 種 類 による 特 性 堆 肥 は 原 料 となる 畜 種 に 加 え 添 加 される 副 資 材 によって 特 性 や 成 分 含 量 ( 表 1)が 異 なります (1) 鶏 ふん 堆 肥 肥 料 成 分 が 高 く 化 学 肥 料 代 替 効 果 が 大 きいため 有 機 質 肥 料 として 利 用 できますが 施 用 量 が 多 いと 過 剰 害 や 障 害 が 発 生 するので 注 意 が 必 要 です また 土 壌 中 に 有 機 物 があまり 残 らないため 土 壌 改 良 効 果 があまり 期 待 できない 堆 肥 です (2) 豚 ぷん 堆 肥 肥 料 成 分 は 鶏 ふん 堆 肥 と 同 程 度 で 化 学 肥 料 代 替 効 果 が 高 い 堆 肥 です 鶏 ふん 堆 肥 とほぼ 同 様 の 利 用 ができます (3) 牛 ふん 堆 肥 鶏 ふんや 豚 ぷん 堆 肥 と 比 べて 肥 料 成 分 が 低 いですが 多 量 に 施 用 する 場 合 には 特 にリン 酸 や 加
里 の 基 肥 施 用 量 を 加 減 する 必 要 がありま す また C/N 比 が 高 く 肥 効 が 緩 やかな ため 地 力 窒 素 の 増 加 や 物 理 性 の 改 善 に 有 効 です (4)バーク 堆 肥 樹 皮 だけを 堆 積 発 酵 させたものと 樹 皮 に 家 畜 ふんを 加 えて 堆 積 発 酵 させたも のがあります C/N 比 が 高 く 肥 料 成 分 は 牛 ふん 堆 肥 よりもさらに 低 い 堆 肥 で 主 に 物 理 性 改 善 に 有 効 です 高 肥 料 供 給 効 果 低 鶏 ふんたい 肥 豚 ぷんたい 肥 牛 ふんたい 肥 バークたい 肥 土 壌 改 良 効 果 高 図 2 堆 肥 の 種 類 別 の 効 果 のイメージ 図 表 1 主 要 な 堆 肥 の 成 分 例 ( 現 物 %) 鶏 ふん 堆 肥 ( 発 酵 鶏 ふん) 水 分 C/N 比 石 灰 苦 土 40 1.9 2.8 1.6 11 6.3 0.8 豚 ぷん 堆 肥 36 2.1 2.6 1.7 12 2.2 0.9 牛 ふん 堆 肥 69 0.6 0.4 0.6 18 0.5 0.2 バーク 堆 肥 60 0.5 0.3 0.3 33 1.1 0.2 平 成 14 年 度 岩 手 農 研 研 究 成 果 藤 原 著 堆 肥 の 作 り 方 使 い 方 3 堆 肥 の 熟 度 作 物 によって 堆 肥 に 要 求 される 熟 度 が 異 なります 例 えば 水 田 に 秋 施 用 する 場 合 などには 多 少 未 熟 の 堆 肥 でも 問 題 は 少 ないですが 雨 よけほうれん そう 等 の 施 設 野 菜 では 未 熟 な 堆 肥 により 障 害 の 発 生 が 懸 念 されるますので できるだけ 腐 熟 した 堆 肥 を 施 用 します 堆 肥 の 熟 度 は 色 や 手 触 りなどの 外 観 でおおよそ 判 定 できます( 表 2) 表 2 外 観 による 堆 肥 の 熟 度 の 判 定 判 定 項 目 未 熟 中 熟 完 熟 臭 い ふん 尿 臭 が 強 い (アンモニア 臭 ) ふん 尿 臭 が 弱 い 堆 肥 臭 原 料 の 現 物 の 形 状 が 形 状 残 っている 指 で 簡 単 に 崩 れる ほとんどない 水 分 強 く 握 ると 手 の 平 に 強 く 握 っても 手 の 平 に 強 く 握 ると 水 が 滴 る かなり 付 着 する あまり 付 着 しない (70%) (60% 前 後 ) (50% 前 後 ) 平 成 13 年 度 岩 手 農 研 研 究 成 果 より 一 部 引 用
品 目 別 の 堆 肥 の 使 い 方 1 水 田 での 堆 肥 施 用 近 年 水 田 においては 畑 作 との 輪 換 利 用 により 有 機 物 の 分 解 が 進 み 土 壌 の 腐 植 含 量 や 地 力 窒 素 の 低 下 が 指 摘 されています このような 水 田 では 堆 肥 等 の 有 機 物 施 用 が 土 づくりに 非 常 に 有 効 です 一 方 堆 肥 の 種 類 によっては 成 分 的 に 高 濃 度 で 多 量 施 用 により 養 分 の 過 剰 蓄 積 を 引 き 起 こすものも ありますので 施 用 には 注 意 が 必 要 です (1) 堆 肥 の 種 類 と 施 用 量 水 田 では 野 菜 ほど 完 熟 な 堆 肥 は 必 要 ありませんが あまり 未 熟 な 堆 肥 は 避 けます また 堆 肥 の 成 分 濃 度 は 種 類 によって 異 なるため( 表 1) 施 用 量 を 調 節 する 必 要 があります (2) 堆 肥 を 施 用 する 場 合 の 減 肥 堆 肥 は 化 成 肥 料 に 比 べて 多 量 に 施 用 するため そのものの 成 分 含 量 が 低 くても 投 入 される 成 分 量 は 多 くなります 窒 素 供 給 が 多 いと 生 育 過 多 や 食 味 低 下 につながりますし 近 年 は リン 酸 やカリが 土 壌 改 良 目 標 値 を 超 えて 蓄 積 している 水 田 も 多 く 見 られます 表 3は 表 1の 成 分 例 を 用 いて 算 出 した 減 肥 例 です 堆 肥 は 畜 種 や 副 資 材 によって 成 分 や 肥 効 率 が 異 なりますので 土 壌 養 分 の 過 剰 蓄 積 を 回 避 するためにも 使 用 する 堆 肥 の 特 性 を 把 握 して 必 要 に 応 じて 減 肥 しましょう 表 3 ( 参 考 ) 堆 肥 の 種 類 別 の 基 肥 減 肥 の 目 安 例 施 用 量 (t/10a) 堆 肥 の 窒 素 含 量 ( 乾 物 %) 堆 肥 から 供 給 される 成 分 量 = 減 肥 量 (kg/10a) 牛 ふん 堆 肥 0.9 0~2% 3.6 5.4 豚 ぷん 堆 肥 0.2 2~4% 1.2 5.2 3.4 鶏 ふん 堆 肥 0.2 2~4% 1.9 5.6 3.2 表 1の 現 物 あたり 成 分 量 に 肥 効 率 を 乗 じて 算 出 した なお 窒 素 の 肥 効 率 は 下 表 ( 千 葉 県 農 試 1999) リン 酸 カリは 肥 効 率 100%で 算 出 した 鶏 ふん 堆 肥 豚 ぷん 堆 肥 牛 ふん 堆 肥 窒 素 成 分 量 ( 乾 物 %) 窒 素 の 肥 効 率 (%) 0~2% 20 2~4% 50 4% 以 上 60 0~2% 2~4% 4% 以 上 10 30 40
2 園 芸 品 目 での 堆 肥 施 用 堆 肥 施 用 は 土 づくりの 中 心 的 な 技 術 ですが 多 量 施 用 や 未 熟 な 堆 肥 の 施 用 は 生 育 障 害 等 の 原 因 にな ります 目 的 とする 効 果 作 物 や 栽 培 条 件 に 適 した 堆 肥 や 施 用 量 を 選 びましょう また より 効 果 的 に 利 用 するために 排 水 対 策 や 深 耕 などを 組 み 合 わせたり 土 壌 診 断 をして 施 肥 量 を 調 節 しながら 利 用 しましょう (1) 堆 肥 の 種 類 と 施 用 量 園 芸 品 目 では 腐 熟 の 進 んだ 堆 肥 の 利 用 が 基 本 です 特 に 施 設 栽 培 や 直 播 をする 品 目 では 未 熟 な 堆 肥 によって 障 害 が 発 生 しやすくなりますので できるだけ 腐 熟 の 進 んだ 堆 肥 を 施 用 しましょう また 園 芸 品 目 では 水 田 に 比 べ 養 分 蓄 積 が 進 んでいる 傾 向 があります 窒 素 に 加 え 近 年 特 に も 養 分 蓄 積 が 進 んでいるリン 酸 やカリのほ 場 蓄 積 を 考 慮 して 堆 肥 施 用 の 判 断 や 施 用 量 の 調 節 を 行 い ましょう (2) 堆 肥 を 施 用 する 場 合 の 減 肥 近 年 野 菜 花 きでは 土 壌 養 分 の 過 剰 蓄 積 や 養 分 バランスの 悪 化 に 起 因 する 生 理 障 害 の 発 生 が 見 られます 品 目 に 合 わせて 施 用 量 を 決 め 堆 肥 から 供 給 される 成 分 量 を 基 肥 から 減 肥 しましょう 表 4は 表 1の 成 分 例 を 用 いて 算 出 した 減 肥 例 です 堆 肥 は 畜 種 や 副 資 材 によって 成 分 や 肥 効 率 が 異 なりますので 土 壌 養 分 の 過 剰 蓄 積 を 回 避 するためにも 使 用 する 堆 肥 の 特 性 を 把 握 して 必 要 に 応 じて 減 肥 しましょう また 土 壌 改 良 が 進 んだほ 場 では 土 壌 養 分 の 過 剰 蓄 積 を 避 けるため 堆 肥 から 供 給 される 成 分 量 を 考 慮 して 堆 肥 の 施 用 量 を 加 減 する 必 要 があります 表 4は リン 酸 が 補 給 型 施 肥 基 準 (10kg/10a) を 超 えないように 堆 肥 の 施 用 量 を 算 出 したものです 表 4 ( 参 考 ) 土 壌 改 良 目 標 値 を 満 たしたほ 場 における 減 肥 の 目 安 ( 雨 よけトマトの 例 ) 施 用 量 2 (t/10a) 堆 肥 の 窒 素 含 量 ( 乾 物 %) 堆 肥 から 供 給 される 成 分 量 1 = 減 肥 量 (kg/10a) 牛 ふん 堆 肥 2.5 0~2% 1.5 10.0 15.0 豚 ぷん 堆 肥 0.4 2~4% 2.5 10.1 6.6 鶏 ふん 堆 肥 0.4 2~4% 3.4 10.1 5.8 1 表 3と 同 様 に 算 出 2 リン 酸 の 堆 肥 から 供 給 される 成 分 量 が 補 給 型 施 肥 基 準 (リン 酸 :10kg/10a)を 超 えない 様 に 堆 肥 の 施 用 量 を 調 整 した 例
やってみよう! 堆 肥 の 施 用 量 と 基 肥 減 肥 の 計 算 方 法 牛 ふん 堆 肥 を 土 づくり 資 材 として 利 用 し 雨 よけトマトを 栽 培 する 場 合 の 例 を 用 いて 施 肥 量 を 計 算 してみましょう A 使 用 する 牛 ふん 堆 肥 の 成 分 ( 現 物 %) 水 分 C/N 比 69 0.6 0.4 0.6 18 1 土 壌 診 断 結 果 を 基 に 施 肥 基 準 を 確 認 土 壌 診 断 結 果 を 確 認 し どの 施 肥 基 準 で 栽 培 するべきかを 確 認 しましょう B 土 壌 診 断 結 果 項 目 窒 素 リン 酸 カリ 2 施 肥 基 準 に 合 わせ 堆 肥 の 施 用 量 を 決 定 施 肥 基 準 から 投 入 成 分 量 が 一 番 低 いリン 酸 に 合 わせて 堆 肥 の 施 用 量 を 算 出 します(リン 酸 の 肥 効 率 100%で 算 出 ) 診 断 結 果 適 正 範 囲 内 です 土 壌 改 良 目 標 値 を 満 たしていま す 補 給 型 施 肥 をしましょう 土 壌 改 良 目 標 値 を 満 たしていま す 補 給 型 施 肥 をしましょう 窒 素 の 乾 物 成 分 量 (%) = 窒 素 の 現 物 成 分 量 (%) 100 (100 水 分 )(%) =1.9% 窒 素 の 肥 効 率 は 10% ( 表 3の 脚 注 の 付 表 参 照 ) C 雨 よけトマトの 補 給 型 施 肥 基 準 (kg/10a) 基 肥 追 肥 12 18 合 計 30 10 30 岩 手 県 農 作 物 施 肥 栽 培 管 理 指 針 表 6-5-1 野 菜 の 施 肥 基 準 より( 県 HP 掲 載 ) 堆 肥 の 投 入 量 (kg/10a) = C リン 酸 の 施 肥 量 (kg/10a) A 堆 肥 中 のリン 酸 成 分 量 (%) 100 =10 0.4 =2, 500(kg/10a kg/10a) 100 3 堆 肥 から 供 給 される 肥 料 成 分 を 算 出 窒 素 表 3の 脚 注 の 付 表 の 肥 効 率 ( 乾 物 %で 判 断 )を 用 いて 算 出 します 窒 素 の 供 給 量 (kg/10a) = 堆 肥 の 投 入 量 (kg/10a) A 堆 肥 の 窒 素 成 分 量 (%) 肥 効 率 (%) =2, 500(kg/10a) 0.6(%) 10(%) = 1.5(kg/10a kg/10a) カリ カリ 肥 効 率 100%で 算 出 します カリの 供 給 量 (kg/10a) = 堆 肥 の 投 入 量 (kg/10a) A 堆 肥 の 現 物 成 分 量 (%) 肥 効 率 (%) =2, 500(kg/10a) 0.6(%) 100(%) = 15(kg/10a kg/10a) 4 基 肥 の 施 用 量 を 決 定 施 肥 基 準 から 堆 肥 から 供 給 される 成 分 量 ( 上 記 3)を 差 し 引 いて 施 肥 量 を 算 出 します 堆 肥 からの 養 分 供 給 を 考 慮 した 元 肥 施 用 量 (kg/10a) 基 肥 追 肥 10.5 18.0 窒 素 とカリの 施 肥 だ けで 栽 培 できそうだ ね 合 計 28.5 0 15 平 成 28 年 2 月 お 問 い 合 わせ 先 : 農 業 普 及 技 術 課 (TEL 019-629 629-5654 5654)