電 力 自 由 化 が 電 力 会 社 の 設 備 投 資 行 動 に 与 えた 影 響 に 関 す る 実 証 分 析 木 下 信 Shin Kinoshita 1 はじめに 日 本 では 1995 年 から 段 階 的 に 電 力 産 業 で 自 由 化 があった. 主 な 狙 いは 電 力 供 給 に 新 規 参 入 を 促 し, 市 場 をより 競 争 的 にし,その 結 果 電 気 料 金 の 低 下 を 促 そうというものであ る.これまで 電 力 産 業 をはじめとする 公 益 事 業 は 自 然 独 占 にあり, 電 力 については 10 電 力 による 地 域 独 占 にあった.そのため 電 気 料 金 は 他 の OECD 加 盟 国 と 比 べ 最 も 高 い 水 準 にあり, 消 費 者 便 益 が 少 ないと 言 われていた.さらに 日 本 の 電 力 産 業 は 高 コスト 体 質 にあ り, 特 に 資 本 関 連 費 用 が 高 い 水 準 にあった.つまり 労 働 に 比 べ 資 本 が 過 剰 であるという 配 分 上 の 非 効 率 の 問 題 が 指 摘 されていた.そのような 生 産 費 用 の 非 効 率 が 割 高 な 電 気 料 金 をもたらしたと 考 えられている.このような 観 点 から 政 府 は 1995 年 から 自 由 化 を 導 入 し, 競 争 により 非 効 率 な 費 用 の 削 減, 電 気 料 金 の 低 下 を 促 している.しかし, 競 争 が 激 しく なると, 既 存 電 気 事 業 者 が 設 備 投 資 して 電 力 を 生 産 しても, 需 要 を 新 規 参 入 者 や 他 地 域 の 電 気 事 業 者 に 奪 われ, 収 入 が 大 きく 減 少 する 可 能 性 がある.また 競 争 により 電 力 価 格 の 値 下 げ 競 争 が 起 こると 収 入 が 大 きく 減 少 し, 電 力 価 格 が 市 場 動 向 に 左 右 されるとなると, 価 格 の 変 動 が 大 きくなることも 考 えられる.つまり, 自 由 化 により 既 存 電 気 事 業 者 の 将 来 収 入 に 対 する 不 確 実 性 が 増 加 し, 設 備 投 資 を 過 度 に 控 えることが 考 えられる. 特 に 電 力 の ような 莫 大 な 設 備 投 資 を 必 要 とする 産 業 では, 投 資 後 のサンクコストが 大 きいため,その ような 傾 向 は 顕 著 に 見 られるものと 思 われる. 実 際, 設 備 投 資 額 は 自 由 化 前 の 1993 年 度 は4 兆 3071 億 円 であったが,2003 年 度 には1 兆 3247 億 円 にまで 減 少 した(10 電 力 合 計, 財 務 省 法 人 企 業 統 計, 第 1 図 参 照 ).10 年 間 で 約 4 分 の1に 減 少 したことになる. 同 じ ような 現 象 は,1990 年 代 日 本 より 先 に 電 力 自 由 化 を 実 施 したイギリス,ノルウエー,ドイ ツ,アメリカなどでも 見 られた. 自 由 化 の 目 的 は 自 然 独 占 下 での 非 効 率 な 過 剰 資 本 を 削 減 し, 高 コスト 体 質 を 改 善 することである.しかし, 過 剰 な 設 備 投 資 の 減 少 は 電 力 の 安 定 的 な 供 給 を 損 なうことになる.2000 年 のアメリカ カリフォルニア 州 での 電 力 危 機 や 2003 年 のニューヨークからカナダ 南 東 部 で 発 生 した 停 電 も 自 由 化 後 に 設 備 投 資 が 大 幅 に 削 減 され, 既 存 設 備 が 老 朽 化 し, 電 力 供 給 に 支 障 が 生 じたという 見 方 もある.そこで 日 本 に おける 最 近 30 年 間 の 電 力 需 要 量 (9 電 力 合 計 )を 見 た. 第 3 図 のとおりである.すると, 最 近 の 設 備 投 資 の 減 少 にも 関 わらず, 自 由 化 後 も 電 力 需 要 量 は 増 加 傾 向 にある. 日 本 でも 1
電 力 の 安 定 供 給 が 損 なわれる 可 能 性 も 考 えられる. 本 論 文 の 目 的 は, 日 本 での 電 力 自 由 化 において, 自 由 化 によって 生 じた 不 確 実 性 が 電 力 会 社 の 設 備 投 資 を 大 きく 減 少 させたことを 実 証 分 析 により 明 らかにすることである. 競 争 により 生 産 費 用 の 効 率 化 を 促 し, 電 気 料 金 を 下 げ, 消 費 者 余 剰 を 増 加 させることは 必 要 である.しかし, 電 力 産 業 のように 発 電 など 莫 大 な 設 備 投 資 を 要 する 公 益 事 業 では, 設 備 投 資 を 実 施 した 後 のサンクコストが 大 きく, 不 確 実 性 が 大 きくなると, 投 資 に 慎 重 にな らざるを 得 ない. 南 部 西 村 (2002)でも 公 益 事 業 の 自 由 化, 競 争 政 策 を 論 じる 際, 不 確 実 性 を 考 慮 することが 必 要 であると 主 張 している. 自 由 化 によって 価 格 の 規 制 が 廃 止 され, 自 由 に 価 格 が 変 動 することになると, 電 力 価 格 が 大 きく 上 昇 することも 考 えられる.また 価 格 の 変 動 が 不 確 実 であるとき, 不 確 実 な 環 境 下 で 将 来 の 設 備 投 資 計 画 を 立 てざるを 得 ず, 不 確 実 性 が 高 くなれば, 設 備 投 資 を 控 えることが 最 適 となるからである.これまでも 電 力 通 信 といった 公 益 事 業 の 自 由 化, 規 制 緩 和 の 効 果 を 実 証 した 論 文 は 存 在 する.しか し,ほとんどが 自 由 化 後 の 費 用 の 効 率 性 や 生 産 性 に 関 するもので, 例 えば 自 由 化 後 に 資 本 や 労 働, 燃 料 費 といった 生 産 費 用 に 技 術 効 率 性 や 配 分 効 率 性 が 見 られたといっているも のが 多 い.そのため 自 由 化 後 に 資 本 削 減 がどのように,どのような 理 由 で 行 われたかを 明 示 的 に 実 証 分 析 することは 意 義 があると 思 われる. 本 論 文 の 構 成 は 次 のとおりである.まず 第 2 節 で 日 本 での 電 力 自 由 化 の 経 緯 と 成 果 を 整 理 する. 第 3 節 では 不 確 実 性 が 設 備 投 資 に 負 の 影 響 をもたらす 理 論 的 な 背 景 を 考 察 する. 続 いて 第 4 節 では 実 証 分 析 をし, 第 5 節 で 結 論 と 今 後 の 研 究, 自 由 化 政 策 の 展 望 を 考 える. 2 日 本 での 電 力 自 由 化 の 経 緯 と 成 果 1 1990 年 代 の 世 界 的 な 規 制 緩 和 の 流 れの 中 で, 日 本 の 電 力 産 業 など 公 益 事 業 の 高 コス ト 体 質, 内 外 価 格 差 の 是 正 が 課 題 となった.その 流 れを 受 けて 1995 年, 電 気 事 業 法 が 改 正 (1995 年 12 月 施 行 )され, 電 力 産 業 における 自 由 化 が 始 まった.これまで 電 力 会 社 は 地 域 独 占 が 認 められていたが,このとき 発 電 事 業 への 新 規 参 入 が 認 められた.1995 年 の 改 正 の 内 容 と 成 果 を 整 理 する.その 内 容 は, 卸 発 電 事 業 に 独 立 系 発 電 事 業 者 (IPP, Independent Power Producer)の 参 入 が 認 められたこと. 電 力 の 卸 売 りに 入 札 制 度 が 導 入 されたこと. 特 定 電 気 事 業 者 が 創 設 されたことである.つまりこれまで 東 京 電 力 や 関 西 電 力 といった 一 般 電 気 事 業 者 にしか 認 められなかった 小 売 供 給 が 新 たな 事 業 者 ( 特 定 電 気 事 業 者 )に 認 められるというものである.1995 年 の 改 正 では, 卸 供 給 入 札 が 成 果 を 上 げ た.1996 年 から 1999 年 の 間 に 196 社 が 約 740 万 kw の 電 源 入 札 に 応 札 した.しかし, 特 定 電 気 事 業 者 の 参 入 は4 件 にとどまった. 1 近 年 の 日 本 の 電 力 自 由 化 についての 経 緯 は, 電 気 事 業 連 合 会 ホームページに 掲 載 されてある 解 説, 経 済 産 業 省 (2004a,b),(2005a,b)でまとめられてある 報 告 書 を 参 考 にした. 2
1999 年 の 電 気 事 業 法 改 正 (2000 年 3 月 施 行 )では, 高 コスト 体 質 をさらに 改 善 する ために 競 争 を 推 し 進 めた.1999 年 の 改 正 での 重 要 な 点 は, 小 売 りの 部 分 自 由 化 が 始 まっ たことである. 特 定 規 模 電 気 事 業 者 (PPS, Power Producer and Supplier)による 電 力 供 給 の 新 規 参 入 が 認 められた 2. 特 定 規 模 電 気 事 業 者 は 既 存 電 気 事 業 者 の 送 電 設 備 を 利 用 して, 自 由 化 対 象 となった 需 要 家 に 電 力 を 供 給 することが 可 能 となった.2000 年 の 自 由 化 の 時 点 では, 自 由 化 の 対 象 となった 需 要 家 は 特 別 高 圧 (2 万 V 以 上 ), 契 約 電 力 2 千 kw 以 上 の 大 口 需 要 家 (デパート, 大 病 院, 大 工 場 など)に 限 られ, 全 体 の 約 3 割 に 過 ぎなかっ た.しかし,これらの 需 要 家 はこれまでの 電 力 会 社 に 加 え, 新 規 参 入 した 特 定 規 模 電 気 事 業 者 からも 電 力 の 購 入 が 可 能 となった.さらに 自 由 化 対 象 の 需 要 家 に 対 しては 料 金 規 制 を 撤 廃 し, 既 存 電 気 事 業 者 と 特 定 規 模 電 気 事 業 者 が 料 金 競 争 することになった. 同 時 に 電 気 料 金 の 改 定 が 認 可 制 から 届 出 制 になり, 料 金 の 引 き 下 げが 容 易 になった. 2003 年 の 改 正 では, 小 売 自 由 化 範 囲 は 一 層 拡 大 した.2004 年 4 月 には 高 圧 (6 千 V 以 上 )のうち 契 約 電 力 500kW 以 上 の 需 要 家 に,2005 年 4 月 にはすべての 高 圧 の 需 要 家 ( 契 約 電 力 50kW 以 上 )に 拡 大 された.これは 電 力 10 社 の 販 売 電 力 量 の6 割 を 占 め る.2007 年 4 月 には, 家 庭 用 も 含 む 全 需 要 家 も 自 由 化 対 象 とすることが 検 討 されている. 競 争 を 促 進 するため, 他 にもいくつかの 改 革 が 行 われている.まず, 公 共 的 な 性 格 の 強 い 送 配 電 ネットワークの 利 用 に 関 する 基 本 的 ルールの 策 定 や 紛 争 処 理 などを 行 うため の 中 立 機 関 が 設 置 され, 送 配 電 ネットワークの 公 平 性 透 明 性 の 確 保 に 努 めることとな った. 発 電 部 門 は 新 規 参 入 を 認 めたものの, 送 配 電 部 門 はネットワーク 性 のため 自 然 独 占 性 が 強 く, 新 規 参 入 者 が 独 自 の 送 配 電 ネットワークを 設 置 するのが 困 難 であるため, 既 存 電 気 事 業 者 が 発 電 部 門 と 送 配 電 部 門 を 一 括 して 所 有 することを 認 めた.そのため 新 規 参 入 者 は 既 存 電 気 事 業 者 の 送 配 電 ネットワーク 設 備 を 使 って 電 力 を 供 給 せざるを 得 ず, 既 存 電 気 事 業 者 が 自 らの 利 益 を 守 るために, 新 規 参 入 者 にとって 不 利 な 行 動 を 取 ることも 予 想 される.そのため 中 立 機 関 による 送 配 電 ネットワークの 公 正 な 監 視 が 必 要 となった. 他 にも 需 要 家 が 区 域 外 から 電 力 を 調 達 する 場 合 の 課 金 の 仕 組 み( 振 替 供 給 制 度 )を 見 直 し, 域 外 からの 調 達 を 容 易 にした.その 結 果, 需 要 家 は 域 内 の 電 気 事 業 者 だけでなく 新 規 参 入 者 である PPS や 域 外 の 電 気 事 業 者 からも 電 力 を 調 達 することが 可 能 になった. 電 力 を 安 定 的 に 供 給 するための 改 革 も 行 われた. 全 国 規 模 での 供 給 量 確 保 を 効 率 的 に 達 成 するため,2005 年 4 月, 卸 電 力 取 引 所 が 創 設, 先 渡 し 市 場 とスポット 市 場 が 開 設 さ れた.さらに 電 力 の 需 給 を 常 にバランスさせ, 安 定 的 に 供 給 するために, 電 気 事 業 者 が 所 有 する 送 電 ネットワークを 利 用 する 事 業 者 は, 需 要 量 と 供 給 量 について 同 時 同 量 を 達 成 することが 求 められているが,その 送 電 サービス 契 約 電 力 の 同 時 同 量 を 求 める 変 動 範 囲 をより 弾 力 的 にした. ここまで, 日 本 での 改 革 の 様 子 を 見 てきた. 次 は 最 近 の 成 果 を 見 る. 経 済 産 業 省 は 電 力 市 場 の 競 争 を 促 進 するため 競 争 評 価 を 実 施 している.そのため 需 要 家 の 自 由 化 に 対 する 2 PPS には,2005 年 5 月 現 在,ダイヤモンドパワー,エネットなど 22 社 ある. 3
満 足 度 や 価 格 動 向 などを 2000 年 度 以 降 調 査 している 3. 自 由 化 の 狙 いは 電 気 料 金 の 低 下 と 電 力 会 社 の 費 用 や 経 営 の 効 率 化 を 促 すことである. 経 済 産 業 省 が 2004 年 12 月 に 行 っ た 電 気 事 業 者 アンケートでは 以 下 のように 成 果 がまとめられている.まず, 電 気 料 金 につ いては, 過 去 10 年 間 で 値 下 がり 傾 向 にある. 主 に 一 般 家 庭 部 門 における 電 気 料 金 の 平 均 単 価 である 電 灯 料 金 は 1993 年 度 では 24.90 円 /kwh 4 であったが 2003 年 度 には 21.50 円 /kwh に 低 下 している. 自 由 化 対 象 需 要 分 を 含 み, 主 に 工 場,オフィスなどに 対 する 電 気 料 金 の 平 均 単 価 である 電 力 料 金 については,1993 年 度 では 17.55 円 /kwh であった が 2003 年 度 には 14.07 円 /kwh に 低 下 した. 特 に 自 由 化 対 象 部 門 に 限 れば,2000 年 の 小 売 自 由 化 直 後, 若 干 上 昇 したが,2002 年 以 降 電 力 会 社 の 料 金 引 き 下 げの 影 響 を 受 け, 大 きく 低 下 した. 特 にデパートや 病 院, 学 校 などを 対 象 とした 業 務 用 5 で 大 きく 低 下 した. 業 務 用 の 電 気 料 金 は, 小 売 自 由 化 直 後 の 2000 年 4-6 月 期 に 17.08 円 /kwh であった が,2004 年 7-9 月 期 には 12.83 円 /kwh に 低 下 した. 次 に, 費 用 削 減 効 果 を 見 る. 経 済 産 業 省 の 調 査 以 外 でも 自 由 化 後 の 電 力 会 社 の 費 用 効 率 化 を 扱 ったものは 多 い. 例 えば, 伊 藤 依 田 木 下 (2004)では,1995 年 と 2000 年 の 2 度 の 自 由 化 が 費 用 構 造 に 及 ぼす 影 響 を 実 証 分 析 している.その 結 果, 規 制 改 革 がなかっ た 場 合 に 想 定 された 費 用 水 準 に 比 べて 1996 年 から 1999 年 までの 規 制 改 革 第 1 期 に 7.5%,2000 年 から 2002 年 までの 規 制 改 革 第 2 期 に 11.8%それぞれ 低 いことが 分 かった. 特 に 2000 年 の 改 革 の 方 が 効 果 が 大 きいという 結 論 を 得 た.ただし,これは 技 術 効 率 性 を 検 証 したものである. 一 方, 経 済 産 業 省 の 調 査 では, 従 業 員 数, 修 繕 費 を 大 幅 に 削 減 してい ると 指 摘 している.10 電 力 合 計 で, 従 業 員 数 は 1995 年 に 約 15 万 人 であったが,2003 年 に は 約 13 万 人 に 減 少 した. 修 繕 費 は 1995 年 度 で2 兆 円 であったが,2003 年 度 には 1.5 兆 円 に 減 少 した. ここまでは 自 由 化 の 成 果 として 電 気 料 金 の 低 下 と 費 用 削 減 を 見 てきた. 今 度 は 新 規 参 入 による 競 争 の 進 展 度 合 いを 見 る.まず 全 国 規 模 において 販 売 電 力 量 の 新 規 参 入 者 で ある PPS の 占 めるシェアは,2000 年 度 は 0.05%であったが,2004 年 度 には 1.98%に 達 した.PPS の 占 めるシェアはまだ 少 ないものの 確 実 に 増 加 傾 向 にある.しかし,2000 年 か ら 自 由 化 の 対 象 となっていた 特 別 高 圧 の 需 要 家 に 限 っては,2004 年 度 で 2.94%を 占 め る. 次 に 特 別 高 圧 の 需 要 家 について 用 途 別 に 見 る. 産 業 用 では 0.2%に 過 ぎないが, 業 務 用 では 20.1%を 占 める.しかし, 高 圧 の 需 要 家 ではまだ 産 業 用, 業 務 用 とも1%に 満 たない. 地 域 別 に 見 ると, 特 別 高 圧 のうち 業 務 用 においては, 東 京 電 力 管 内 では PPS が 26.3%を 占 める. 中 部 電 力 管 内 では 16.0%, 関 西 電 力 管 内 では 15.0%, 全 国 平 均 では 20.1%である. 一 方 北 海 道, 東 北, 北 陸 では PPS の 参 入 実 績 はない.これは 単 に, 特 別 高 圧 の 需 要 家 が 東 京 や 関 西 に 集 中 しており,これらの 地 域 には 少 ないからと 考 えられる.しかし, 自 由 化 対 象 3 経 済 産 業 省 (2004a,b),(2005a,b)にまとめられている. 4 平 均 単 価 は, 電 灯 料 収 入, 電 力 料 収 入 をそれぞれ 電 灯, 電 力 の 販 売 電 力 量 (kwh)で 除 したもので ある. 5 一 方, 工 場 向 けの 電 力 は 産 業 用 と 呼 ばれる. 4
の 需 要 家 が 家 庭 用 も 含 めたすべての 需 要 家 に 及 べば,より PPS のシェアは 増 加 し, 競 争 が 促 進 されると 考 えられる. 最 後 に 需 要 家 の 自 由 化 に 対 する 意 識 調 査 の 結 果 を 見 る. 自 由 化 に 関 心 を 持 っている 需 要 家 は 約 8 割 存 在 する.その 理 由 として 電 気 料 金 の 水 準 が 低 下 するから と 考 えて いる 需 要 家 が8 割 存 在 する. 電 気 料 金 の 低 下 があったため,メリットがあったと 考 えてい る 需 要 家 が 多 い.また 特 別 高 圧 業 務 用 の 需 要 家 の 半 数 が 自 由 化 により 価 格 競 争 が 行 われ ていると 考 えている. 次 に, 需 要 家 の 契 約 する 電 気 事 業 者 の 切 り 替 えについての 調 査 を 見 る. 特 別 高 圧 業 務 用 需 要 家 の 25.7%が 電 気 事 業 者 を 切 り 替 えた 実 績 を 持 ち,その 約 9 割 が PPS に 変 更 している.その 理 由 として 約 9 割 が 価 格 水 準 としている. 一 方 で 電 力 供 給 の 安 定 性 としている 需 要 家 も 約 8 割 存 在 する.また 半 数 の 需 要 家 が 今 後,PPSか 地 域 外 の 一 般 電 気 事 業 者 に 変 更 を 考 えており, 自 由 化 の 効 果 はさらに 進 むと 考 えられる. 本 節 では 日 本 での 電 力 自 由 化 の 取 り 組 みとその 成 果 を 整 理 した. 次 節 では 本 論 文 の 目 的 である 自 由 化 がもたらす 不 確 実 性 に 焦 点 をあて, 不 確 実 性 の 設 備 投 資 への 効 果 を 理 論 的 に 考 察 する. 3 不 確 実 性 の 設 備 投 資 への 影 響 に 関 する 理 論 的 考 察 電 力 自 由 化 後, 各 電 気 事 業 者 がコストを 削 減 する 手 段 として 設 備 の 新 規 拡 張, 修 繕 と いった 設 備 関 連 費 用 を 削 減 し,その 結 果 電 力 の 安 定 的 供 給 が 損 なわれることは 以 前 から 指 摘 されていた. 先 述 したように 自 由 化 前 の 1993 年 度 と 比 べて 2003 年 度 には 設 備 投 資 額 ( 発 電 送 配 電 合 計 )は4 分 の 1 に 減 少 した. 自 由 化 の 対 象 となったのは 発 電 部 門 の みで 送 配 電 部 門 に 関 しては 設 備 の 性 質 上 依 然 として 既 存 の 電 気 事 業 者 に 独 占 が 認 めら れた.しかし, 発 電 設 備 投 資 額 が 1993 年 度 は 10 社 合 計 で 約 1 兆 5 千 億 円 であったの が,2003 年 度 には1 兆 円 弱 に 減 少 したのに 対 して, 送 配 電 設 備 投 資 額 は 約 3 兆 1 千 億 円 から 約 1 兆 円 に 減 少 した( 第 2-1 図, 第 2-2 図 参 照 ). 送 配 電 部 門 への 設 備 投 資 が 大 幅 に 削 減 されると, 設 備 に 大 きな 技 術 進 歩 でもない 限 り, 電 力 の 安 定 供 給 が 疑 問 視 される.こ のように 設 備 投 資 が 大 きく 減 少 した 原 因 として, 将 来 の 価 格 低 下 懸 念 や 自 由 化 の 下 での 価 格 の 大 きな 変 動, 需 要 家 を 新 規 参 入 者 や 他 地 域 の 一 般 電 気 事 業 者 に 奪 われ, 確 実 な 収 入 が 得 られないことによる 将 来 収 入 に 対 する 不 確 実 性 が 増 加 し, 巨 額 の 設 備 投 資 費 用 を 回 収 できない 可 能 性 が 増 加 したため, 設 備 投 資 を 大 きく 控 えたと 考 えられる. 先 述 したよう に, 新 規 参 入 者 である PPS は 発 電 した 電 力 を 既 存 電 気 事 業 者 の 送 配 電 ネットワークを 利 用 して 供 給 せざるを 得 ず, 既 存 電 気 事 業 者 の 行 動 により 競 争 が 阻 害 される 可 能 性 があ る.そのため 経 済 産 業 省 は 競 争 を 促 進 するため, 送 配 電 ネットワークの 公 平 性 透 明 性 を 確 保 するため, 中 立 機 関 を 設 立, 既 存 電 気 事 業 者 による 送 配 電 部 門 と 他 部 門 との 内 部 相 互 補 助 6 を 禁 止 し, 会 計 分 離 を 義 務 付 けた.これも 送 配 電 設 備 投 資 を 控 えた 原 因 であるとも 6 収 益 の 高 い 部 門 から 赤 字 部 門 に 利 益 を 補 填 すること. 独 占 を 認 められているある 部 門 での 価 格 5
考 えられる. 電 力 自 由 化 と 設 備 形 成 に 関 する 指 摘 はいくつか 存 在 する. 矢 島 (2004)では, 自 由 化 市 場 で 電 力 の 供 給 保 障 をいかに 確 保 するかが 問 題 であり, 十 分 な 供 給 力 が 存 在 しなけれ ば, 信 頼 性 が 確 保 されず, 有 効 な 競 争 も 機 能 しないとしている.また, 発 電 とバランスのと れた 送 電 設 備 投 資 も 必 要 としている. 送 電 投 資 を 確 保 するためには, 報 酬 率 規 制 といった 規 制 や 計 画 的 な 系 統 の 拡 張 を 義 務 付 けることが 必 要 であるとしている. 電 力 自 由 化 によ り 送 電 線 を 建 設 しても 十 分 利 用 されることがなく, 適 切 な 報 酬 率 を 受 取 ることができな いとき, 送 電 線 所 有 者 は 投 資 を 控 えることになる.しかし, 高 めの 報 酬 率 を 認 める と,Averch-Johnson 効 果 と 呼 ばれる 過 剰 な 投 資 をすることになり, 独 占 の 非 効 率 を 生 む ことになる.ノルウエーで 導 入 されたプライスキャップ 規 制 も 設 備 形 成 を 妨 げたと 指 摘 している. 送 電 設 備 の 確 保 には, 計 画 や 規 制 の 役 割 は 重 要 であり, 計 画 的 に 送 電 系 統 を 維 持 拡 張 していくことが 規 制 によって 義 務 付 けられ, 適 切 な 報 酬 が 規 制 当 局 によって 長 期 的 に 保 証 されることが 重 要 であるとしている. 南 部 (2003)でも 自 由 化 により 設 備 形 成 が 阻 害 されることを 指 摘 している. 自 由 化 の 下 でいかに 必 要 かつ 十 分 に 設 備 形 成 していくかは, 長 期 的 に 見 た 場 合, 自 由 化 の 成 否 を 左 右 する 最 も 重 要 な 課 題 の 一 つであるとしている.さらに 市 場 参 加 者 に 設 備 形 成 のための インセンティブをどのように 与 えるか, 制 度 面 からの 整 備 が 不 可 欠 であると 主 張 してい る.また, 電 力 系 統 の 特 質, 主 に 系 統 技 術 面 から, 設 備 形 成 には 様 々な 課 題 があり,つまり 設 備 形 成 は 単 に 需 要 を 満 たすための 量 を 確 保 することだけでは 十 分 ではないとしている. その 課 題 とは, 量, 時 間, 場 所 に 関 わる 問 題 である. 量 の 問 題 とは, 故 障 などを 考 慮 して 電 源 設 備 としては 最 大 需 要 よりも 多 くの 量 が 必 要 とするものである. 時 間 の 問 題 とは2つあ る. 一 つは 長 期 的 視 点 の 確 保 である. 電 源 は 完 成 までに 20 から 25 年 程 度, 送 電 線 は 10 か ら 15 年 程 度 必 要 であるとされている.しかし, 自 由 化 により 長 期 的 な 見 通 しでの 設 備 形 成 が 困 難 になる.もうひとつは 設 備 投 資 にサイクルが 生 じることである. 自 由 化 の 下 で, 需 給 が 逼 迫 し, 価 格 が 上 昇 すると, 設 備 投 資 を 増 やすインセンティブが 働 く, 逆 に 供 給 が 過 剰 となり, 今 度 は 価 格 が 低 下 すると, 設 備 投 資 を 減 らすようになる. 市 場 で 電 力 が 取 引 されるようになると, 設 備 投 資 行 動 が 価 格 に 大 きく 左 右 されるようになり, 常 に 安 定 した 電 力 を 供 給 することが 困 難 になる. 送 電 線 については 長 期 的 な 計 画 に 基 づいた 先 行 投 資 が 必 要 であるが, 自 由 化 の 下 では 将 来 収 益 に 対 する 見 通 しが 不 確 実 になるため 困 難 であ る. 最 後 に 場 所 の 問 題 とは, 発 電 と 送 電 線 のミスマッチと 考 えることができる. 大 規 模 な 発 電 設 備 を 建 設 しても 同 時 に 送 電 線 も 増 強 しない 限 り,その 電 源 を 使 い 切 ることはでき ない.また, 新 たな 場 所 に 発 電 設 備 を 建 設 すれば,これまでの 送 電 線 は 不 要 になる. 南 部 西 村 (2002)では, 自 由 化 による 不 確 実 性 の 増 加 を 明 示 的 に 取 り 上 げ, 設 備 投 資 への 影 響 を 分 析 している. 不 確 実 性 が 存 在 するときの 投 資 の 意 思 決 定 を 分 析 した 理 論 を 引 き 上 げて 利 益 を 捻 出 し, 赤 字 部 門 に 補 填 することが 考 えられる. 内 部 相 互 補 助 を 認 めると, 競 争 により 利 益 が 得 られない 可 能 性 がある. 6
モデルとしてリアル オプションというものがある. リアル オプションとは 不 確 実 性 の 下 での 実 物 投 資 に 対 する 意 思 決 定 決 定 モデルとして, Dixit and Pindyck(1994)によ り 提 唱 された.これは 株 式 など 金 融 資 産 への 投 資 に 用 いられるオプション 理 論 を 実 物 投 資 に 応 用 したものである 7. 電 力 産 業 での 設 備 は 発 電 送 配 電 とも 巨 額 である.それも 分 割 して 投 資 することができず, 一 括 投 資 せざるを 得 ない 性 質 がある.しかも 一 度 投 資 を 実 施 すれば, 他 の 用 途 に 転 換 が 不 可 能 であり, 完 全 に 機 能 した 中 古 市 場 が 存 在 するわけでもな く, 設 備 を 他 企 業 に 売 却 するのも 困 難 である.さらに 設 備 の 処 分 にも 莫 大 な 費 用 がかかる であろう.つまり, 電 力 産 業 の 設 備 投 資 は 一 度 実 施 すればそれは 莫 大 なサンクコストにな り,さらに 設 備 投 資 の 不 可 逆 性 が 極 めて 強 いという 特 徴 が 他 の 産 業 以 上 に 強 い. 規 制 下 に あったときは, 原 油 など 原 材 料 価 格 に 多 少 不 確 実 性 があったものの, 安 定 的 に 供 給 先 を 確 保 することができ, 不 確 実 性 がないので,そのような 性 質 を 持 つ 設 備 投 資 でも 行 うことが できた.しかし, 自 由 化 の 下 では, 新 規 参 入 者 や 他 地 域 電 気 事 業 者 に 需 要 を 奪 われる 可 能 性 があり, 価 格 も 市 場 の 情 勢 を 反 映 して 大 きく 変 動 することも 考 えられる.つまり 収 益 面 で 大 きな 不 確 実 性 が 生 じる.このように 将 来 収 益 に 対 する 不 確 実 性 が 大 きくなると, 場 合 によっては 設 備 投 資 の 投 下 費 用 をすべて 回 収 できないこともあり 得 るため, 設 備 投 資 を 控 えることが 合 理 的 となる.Dixit and Pindyck(1994)により 提 唱 されたリアル オプシ ョン アプローチによると, 不 確 実 性 が 存 在 するとき, 今 すぐ 投 資 したときに 得 られる 期 待 収 益 より, 投 資 を 先 送 りして, 将 来 収 益 に 対 する 見 通 しが 良 くなる 時 期 まで 待 って 投 資 した 方 が 期 待 収 益 が 高 くなると 予 想 される 場 合, 投 資 を 先 送 りすることが 合 理 的 となる. つまり, 将 来 収 益 の 不 確 実 性 が 増 加 すると, 投 資 を 先 延 ばしすることを 可 能 にするオプシ ョンの 価 値 が 高 くなり, 投 資 を 実 施 した 時 の 価 値 が, 投 資 を 先 送 りしたときの 価 値 を 上 回 らない 限 り 設 備 投 資 は 実 施 されない.よって 設 備 投 資 を 控 えることになる.しかし, 新 規 参 入 者 に 収 益 機 会 を 奪 われる 可 能 性 が 生 じた 場 合, 既 存 企 業 は 投 資 を 急 ぐことになる. 本 節 では, 自 由 化 による 不 確 実 性 の 増 加 が, 電 力 会 社 の 設 備 投 資 を 抑 制 する 理 論 的 な 背 景 を 考 察 した. 次 節 では 自 由 化 後 の 不 確 実 性 の 増 加 が, 電 力 会 社 の 設 備 投 資 行 動 にどの ような 影 響 をもたらしたのか 実 証 分 析 する. 4 不 確 実 性 の 設 備 投 資 への 影 響 に 関 する 実 証 分 析 不 確 実 性 が 設 備 投 資 に 及 ぼす 影 響 を 実 証 分 析 した 研 究 はいくつか 存 在 する.Ogawa and Suzuki(2000)では, 日 本 の 製 造 業 のパネルデータを 使 い, 売 上 高 成 長 率 に 関 する 不 確 実 性 が 設 備 投 資 を 減 少 させる 影 響 をもたらすことを 実 証 した. 特 に 資 本 の 不 可 逆 性 の 強 い 産 業 では,その 影 響 がより 強 いことを 実 証 した. 鈴 木 (2001)では,Ogawa and Suzuki(2000)では 線 形 の 設 備 投 資 関 数 で 推 計 していたが,それを 非 線 形 設 備 投 資 関 数 で 7 リアル オプションについて 解 説 した 文 献 は 近 年 多 く 出 版 されている. 例 えば, 刈 屋 (2001), 代 田 馬 場 (2002)などを 参 照 にされたい. 7
推 計 した.その 理 由 として, 設 備 投 資 は 徐 々に 実 施 されるのではなく, 限 界 のqなど 設 備 投 資 に 影 響 する 要 因 がある 境 界 値 を 超 えるとはじめて,まとめて, 一 気 に, 非 連 続 的 に 実 施 されると 考 えられるからである. 不 確 実 性 の 増 加 が 境 界 値 に 影 響 し, 急 に 設 備 投 資 を 抑 制 すると 考 えられる.このモデルは 自 由 化 により 急 遽 設 備 投 資 計 画 の 変 更 を 余 儀 なくさ れ, 急 に 設 備 投 資 を 抑 制 した 電 力 産 業 のケースに 当 てはまるかもしれない. 田 中 (2004) では, Ogawa and Suzuki(2000)や 鈴 木 (2001)の 延 長 上 で, 特 に, 産 業 の 持 つ 特 殊 性 に 注 目 し, 実 証 分 析 している. 産 業 の 持 つ 特 殊 性 とは,1 製 品 の 市 場 競 争 度,2 不 可 逆 性 の 大 き さ,3 技 術 のライフサイクル,4 産 業 の 成 長 期 待 度,5 企 業 の 資 金 制 約 の 強 さの5つであ る. 実 証 分 析 によると, 市 場 集 中 度 が 高 い, 設 備 の 不 可 逆 性 が 大 きい, 技 術 のライフサイク ルが 短 い,つまり 技 術 が 短 命 で, 特 許 収 入 期 間 が 短 い, 期 待 成 長 度 の 高 い, 外 部 資 金 への 依 存 度 が 高 く, 資 金 制 約 が 強 い 産 業 ほど, 不 確 実 性 により 設 備 投 資 が 抑 制 されるという 結 果 を 得 ている. ただし, 推 計 モデルは Ogawa and Suzuki(2000)と 同 様, 線 形 モデルである. 粕 谷 (2003)では, 最 近 では 倒 産 変 数 が 設 備 投 資 に 負 の 影 響 を 与 えるとしている. 竹 田 小 巻 矢 島 (2005)では 線 形 の 設 備 投 資 関 数 を 仮 定 し,ハウスマン 検 定 を 行 った 結 果, 固 定 効 果 モデルあるいは, 変 量 効 果 モデルで 推 定 している.また, 西 岡 池 田 (2006)では, プロビットモデルとトービットモデルを 用 いて 分 析 している.このように 企 業 全 般 を 対 象 として 不 確 実 性 が 設 備 投 資 に 与 えた 影 響 を 実 証 分 析 したものは 存 在 する.しかし, 電 力 産 業 をはじめとする 公 益 産 業 での 設 備 投 資 行 動 を 実 証 した 先 行 研 究 はなく, 本 論 文 は 設 備 投 資 関 数 の 設 定 や 電 力 産 業 での 設 備 投 資 に 影 響 する 変 数 の 選 定, 推 計 方 法 や 不 確 実 性 の 扱 いなどでこれらの 先 行 研 究 を 電 力 産 業 に 合 うように 応 用 することになる.まずは 本 論 文 で 扱 うべき 変 数 を 考 察 する. 4-1 使 用 した 変 数 まず, 不 確 実 性 をどのように 考 え,どのようなデータを 用 い,どのように 計 測 するかが 問 題 である. 不 確 実 性 があるとは 将 来 の 収 益 の 変 動 が 大 きくなることと 考 え, 売 上 高 など 企 業 収 益 を 表 す 変 数 の 変 化 率 の 標 本 標 準 偏 差 が ま ず 考 え ら れ る. Ogawa and Suzuki(2000)では, 実 質 売 上 高 変 化 率 の 標 本 標 準 偏 差 以 外 にも 自 己 回 帰 方 程 式 の 回 帰 の 標 準 誤 差 や ARCH モデルでも 試 みている.これらの 方 法 はいずれも 同 じように 投 資 の 不 可 逆 性 が 強 い 産 業 で, 不 確 実 性 が 設 備 投 資 を 抑 制 しているという 結 論 を 得 ている. 鈴 木 (2001)では, 限 界 qの 分 子 を 採 用 している.それは Dixit and Pindyck(1994)で 利 潤 関 数 に 不 確 実 性 の 変 数 が 導 入 されているからである.この 限 界 qの 分 子 の 標 本 標 準 偏 差 と 自 己 回 帰 型 予 測 方 程 式 の 回 帰 の 標 準 誤 差 を 不 確 実 性 の 指 標 としている. 田 中 (2004)で は, 企 業 の 直 面 する 需 要 の 不 確 実 性 と 設 備 投 資 との 関 係 を 重 視 し, 実 質 売 上 高 変 化 率 の 標 本 標 準 偏 差, 自 己 回 帰 方 程 式 の 回 帰 の 標 準 誤 差, 自 己 回 帰 方 程 式 による 将 来 の 予 測 誤 差 を 計 算 し, 不 確 実 性 としている. 8
そこで 電 力 産 業 の 場 合,どのようなデータを 用 いるのが 適 切 かを 考 える 必 要 がある. 自 由 化 により 新 規 参 入 者 との 顧 客 の 奪 い 合 いが 激 しくなると 予 想 されるので, 将 来 の 収 益 が 不 安 定 になると 考 えられる.よって, 電 気 事 業 営 業 収 益 ( 売 上 高 ), 販 売 電 力 量, 契 約 電 力 量, 料 金 収 入, 電 力 需 要 量 が 考 えられる.また 先 述 したように 自 由 化 によって 価 格 が 大 きく 変 動 あるいは 低 下 するので, 価 格 に 関 する 不 確 実 性 も 考 慮 する 必 要 がある. 営 業 収 益 や 料 金 収 入 は 価 格 の 変 動 を 反 映 している. 価 格 に 関 する 変 数 として 電 力 単 価 がある.これ は 個 別 需 要 家 の 電 力 購 入 金 額 を 購 入 電 力 量 (kw)で 除 したものである.つまり 単 位 電 力 あたり 金 額 となる. 自 由 化 後, 電 力 単 価 が 大 きく 低 下 したため, 電 力 会 社 の 設 備 投 資 削 減 に 大 きく 影 響 したと 考 えられる.しかし, 個 別 需 要 家 のデータは 入 手 できないため, 代 理 変 数 として, 各 電 力 会 社 の 料 金 収 入 を 販 売 電 力 量 (kw)で 除 したものを 電 力 単 位 あたり 価 格 として 用 いる. 本 論 文 では,これらのデータの 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 を 求 め, 不 確 実 性 を 表 す 指 標 とした.さらに 何 年 間 のデータで 標 本 標 準 偏 差 を 求 めるかという 問 題 がある. これは 企 業 が 過 去 何 年 間 の 売 上 高 の 変 化 率 を 参 考 にして, 将 来 の 売 上 高 変 化 率 を 予 測 す るかに 依 存 する. 電 力 会 社 は 10 から 20 年 という 長 期 的 な 計 画 に 基 づいて 行 動 するが,こ こではデータ 期 間 の 都 合 上 7 年 間 とする. ここで,これらの 不 確 実 性 を 表 す 変 数 が 自 由 化 の 前 後 でどのような 動 きをするか 調 べてみた.すると 契 約 電 力 量 の 変 化 率 標 準 偏 差 だけが,2000 年 の 改 革 以 降, 各 社 とも 急 激 に 大 きくなっていた.これは 小 売 自 由 化 後 に 新 規 参 入 が 増 加 すると, 一 般 電 気 事 業 者 はこ れまでの 顧 客 を 大 きく 奪 われ, 以 降 顧 客 の 奪 い 合 いが 激 しくなり, 大 きく 変 動 したものと 考 えられる.よって 契 約 電 力 量 が 自 由 化 後 の 不 確 実 性 の 変 数 として 使 えそうである.その 他 は 自 由 化 前 後 で 各 社 とも 大 きな 変 化 は 見 られなかった. 次 に, 設 備 投 資 や 資 本 ストックの 扱 いについて 考 える. 自 由 化 対 象 は 発 電 部 門 だけで あり, 送 配 電 部 門 は 依 然 として 独 占 が 認 められた.しかし 自 由 化 により,それぞれどのよ うな 影 響 を 受 けたかを 見 るためそれぞれ 別 に 実 証 分 析 した. 発 電 部 門 はたとえ 既 存 の 一 般 電 気 事 業 者 の 設 備 投 資 が 抑 制 され 発 電 量 が 減 少 しても, 新 規 参 入 者 による 発 電 が 増 え れば, 全 体 として 需 要 を 賄 える 可 能 性 はある.しかし, 仮 に 送 配 電 部 門 の 設 備 投 資 が 抑 制 されれば, 新 規 参 入 者 による 設 備 投 資 はないので, 電 力 供 給 に 支 障 が 生 じるものと 思 われ る. 先 の 経 済 産 業 省 の 調 査 でも, 発 電 部 門 だけでなく 送 配 電 部 門 も 削 減 されていたとの 報 告 があった.なお, 発 電 設 備 は, 水 力, 汽 力, 原 子 力, 内 燃 力 の 各 設 備 の 合 計 とする.また 核 燃 料 も 発 電 設 備 に 含 めた. 一 方, 送 配 電 設 備 は, 送 電, 変 電, 配 電 といった 電 力 の 流 通 に 関 わる 設 備 であり,3つの 合 計 とする. 名 目 設 備 投 資 額 It は 伊 藤 依 田 木 下 (2004)と 同 様, 当 期 末 電 気 事 業 固 定 資 産 簿 価 - 前 期 末 電 気 事 業 固 定 資 産 簿 価 土 地 変 化 分 ΔLt+ 当 期 減 価 償 却 費 とした. 資 本 ストックも 伊 藤 依 田 木 下 (2004)と 同 様, 当 期 資 本 ストック Kt =(1 δt)( 前 期 資 本 ストック Kt-1 前 期 土 地 Lt-1)+ 当 期 設 備 投 資 額 It+ 当 期 土 地 Lt 9
とした.なおδは 当 期 の 減 価 償 却 率 で, 当 期 の 減 価 償 却 費 を 前 期 の 期 末 設 備 簿 価 で 除 した ものである 8.なお, 設 備, 資 本 ストックは 実 質 化 せず, 名 目 値 を 用 いた.それは 近 年 のデフ レの 影 響 で, 実 質 化 するとかえって 設 備 投 資 額, 資 本 ストックが 増 加 してしまい, 想 定 し ているような 分 析 ができないためである. 設 備 投 資 関 数 は 先 行 研 究 と 同 様,トービンqモデルを 採 用 した 9.トービンqは 小 川 北 坂 (1997)の 指 摘 にあるように, 限 界 qを 採 用 した. 株 式 市 場 の 評 価 に 基 づいて 計 算 さ れる 平 均 qが 設 備 投 資 に 負 の 影 響 をするという 矛 盾 した 実 証 結 果 を 導 くのに 対 して, 限 界 qは 期 待 収 益 に 基 づいて 設 備 投 資 がなされるという 考 え 方 であり, 投 資 に 正 の 影 響 を もたらすという 実 証 結 果 を 得 るからである. 限 界 qの 定 義 は 鈴 木 (2001)では, 当 期 に 据 え 付 けられた 資 本 ストックを1 単 位 追 加 したときに 将 来 にわたり 生 み 出 される 限 界 収 益 の 割 引 現 在 価 値 合 計 ( 資 本 のシャドー プライス)と 投 資 財 1 単 位 の 価 格 の 比 率 と している.つまり 現 存 資 本 の 価 格 に 対 する 限 界 収 益 の 比 率 である.この 値 が1より 大 きけ れば, 投 資 を 実 行 し, 小 さければ 投 資 を 実 行 しないことになる. 資 本 の 限 界 収 益 の 割 引 現 在 価 値 合 計 は, 資 本 コスト( 税 引 き 後 負 債 のコスト+ 償 却 率 )で 資 本 化 したものとして 定 義 される.よって 次 式 のようになる. 限 界 q=( 資 本 の 限 界 収 益 / 資 本 コスト)/ 投 資 財 価 格 限 界 qの 分 子 の 限 界 収 益 は 将 来 収 益 であり, 期 待 変 数 である.よって 厳 密 に 求 めるのは 困 難 である.ここでも 吉 川 (1984)と 同 様 に 生 産 関 数 の1 次 同 次 性 と 静 学 的 期 待 の 仮 定 を おき, 以 上 のように 定 義 する.これは 比 較 的 簡 単 な 定 式 化 であり, トービンqの 代 理 変 数 である. 本 論 文 でもこの 定 式 化 を 使 う 10. 資 本 の 限 界 収 益 は,Blanchard,Rhee and Summers(1993)に 従 い, 8 資 本 ストック, 土 地 などストックのデータ 構 築 には 注 意 が 必 要 である. 直 接 資 本 ストック 額 を 調 査 する 直 接 法, 始 めにベンチマークとなる 資 本 ストックを 直 接 計 測 し,これに 各 期 の 投 資 を 加 え, 最 後 に 資 本 の 減 価 分 を 差 し 引 くベンチマーク 法,ベンチマークを 用 いず 資 産 を 建 物, 構 築 物, 機 械 などに 分 け,それぞれの 資 産 について 物 理 的 減 耗 率 を 計 算 し 資 本 ストックを 計 算 する 恒 久 棚 卸 法 がある( 増 田 2000). 小 川 北 坂 (1998)をはじめとする 設 備 投 資 関 数 の 推 計 や Ogawa and Suzuki(2000), 田 中 (2004)など 先 行 研 究 では,Hayashi and Inoue(1991)にならい, 恒 久 棚 卸 法 に よって 作 成 している. 9 ただし, 先 に 紹 介 した 先 行 研 究 はいずれも 電 力 産 業 といった 規 制 により 設 備 投 資 が 決 められて いた 公 益 産 業 ではなく, 一 般 的 な 製 造 業 についてである.よって, 電 力 産 業 でも 一 般 的 な 製 造 業 と 同 様 にトービンqモデルが 成 立 すると 考 えるのは 早 計 である. 電 力 産 業 は 政 府 の 規 制 により 設 備 投 資 計 画 を 実 施 していたと 考 えられる.また, 最 大 需 要 量 を 賄 うだけの 電 力 供 給 を 確 保 するため に 設 備 投 資 をしていたと 考 えられる.よって, 電 力 産 業 の 設 備 投 資 行 動 を 分 析 するとき,まず 電 力 産 業 の 設 備 投 資 行 動 を 実 証 分 析 する 前 にある 程 度 モデル 化 し, 行 動 をよく 把 握 した 上 で 設 備 投 資 関 数 を 決 め, 実 証 分 析 をする 必 要 があるように 思 われる.しかし,ここではトービンqモデルを 取 り 上 げる. 後 に 電 力 産 業 でトービンqモデルが 成 立 するかを 確 認 した 上 で 実 証 分 析 を 行 った. 他 にもストック 調 整 モデルなどが 考 えられる. 自 由 化 前 の 規 制 期,あるいは 自 由 化 後 の 電 力 産 業 の 設 備 投 資 行 動 をより 反 映 した 上 での 実 証 分 析 は 今 後 の 課 題 である. 10 Abel and Blanchard(1986), 小 川 北 坂 (1994), 田 中 (2004)では, 将 来 収 益 を 計 測 している. 収 益 率 を 確 率 モデル(AR1 過 程 )で 特 定 化 し, 限 界 のqを 導 出 する.なお, 小 川 北 坂 (1994)では, 収 益 率 に 単 位 根 の 存 在 を 考 慮 している. 10
( 税 引 き 後 利 益 + 減 価 償 却 費 + 支 払 利 息 )/ 前 期 末 資 本 ストック とする.これは 資 本 の 限 界 収 益 を 計 測 するのが 困 難 であるため, 資 本 の 平 均 資 本 収 益 率 と して 代 替 したものである.また 減 価 償 却 費 と 支 払 利 息 を 含 めた 付 加 価 値 を 考 えている. 資 本 コストは, (1 法 人 税 率 ) 負 債 コスト+ 減 価 償 却 率 である. 法 人 税 率 は 法 人 税 率 の 留 保 分 と 配 当 分 の 平 均 値 を 用 いた. 負 債 コストは, ( 支 払 利 息 割 引 料 + 社 債 発 行 差 金 償 却 )/( 前 期 末 長 期 借 入 金 + 前 期 末 社 債 + 前 期 末 長 期 未 払 債 務 + 前 期 短 期 借 入 金 + 前 期 預 り 金 ) とした. これは 有 利 子 負 債 残 高 に 対 する 平 均 利 子 率 である. 電 力 会 社 は 設 備 の 性 質 上, 設 備 資 金 を 自 己 資 金 と 外 部 調 達 資 金 ではほとんどを 長 期 借 入 金 や 社 債 の 発 行 で 賄 ってい ると 考 えられるため 短 期 の 負 債 である 短 期 借 入 金 と 預 り 金 は 不 要 であると 思 われる.し かし, 支 払 利 息 を 長 期 と 短 期 で 分 けるのが 困 難 であるため, 短 期 の 負 債 も 含 めた. 投 資 財 価 格 は 企 業 物 価 指 数 ( 総 合 )を 用 いた.なお, トービンqの 定 式 化 は, 資 本 の 限 界 収 益 を 作 成 する 際,( 税 引 き 後 利 益 + 減 価 償 却 費 + 支 払 利 息 )を 前 期 末 資 本 ストックではなく, 再 調 達 価 格 で 評 価 した 資 本 ストック( 前 期 末 資 本 ストック 投 資 財 価 格 )で 除 した 場 合, 限 界 qの 代 理 変 数 は, 資 本 の 限 界 収 益 を 資 本 コストで 資 本 化 したものでよく, 投 資 財 価 格 で 除 す 必 要 はない.つまりそのときは, 限 界 q= 資 本 の 限 界 収 益 / 資 本 コスト ただし, 資 本 の 限 界 収 益 =( 税 引 き 後 利 益 + 減 価 償 却 費 + 支 払 利 息 )/( 前 期 末 資 本 ストッ ク 投 資 財 価 格 ) である. 発 電 設 備 と 送 配 電 設 備 それぞれについてトービンの Q を 求 めた. その 他, 用 いた 変 数 は 以 下 の 通 りである. 自 由 化 が 設 備 投 資 に 及 ぼす 影 響 を 調 べるため, 自 由 化 ダミーを 用 いた. 自 由 化 は 1995 年 からであるが,2000 年 の 小 売 自 由 化 が 特 に 影 響 が 大 きかったと 言 われているため,ダ ミー 変 数 を 1995 年 度 以 降 を1とするもの,2000 年 度 以 降 を1とするものの2 通 り 考 え た.さらに 定 数 項 ダミーと 係 数 ダミーが 考 えられるが, 自 由 化 後 の 関 数 のシフトよりも, 自 由 化 後, 不 確 実 性 の 増 加 が 設 備 投 資 をより 大 きく 減 少 させることを 調 べるため 係 数 ダ ミーを 用 いた. さらに, 地 域 間 によって 競 争 度 合 いに 格 差 があると 考 えられるため, 新 規 参 入 者 の 参 入 実 績 に 応 じて, 競 争 度 ダミー(PPS ダミー)を 設 け, 参 入 実 績 のある 東 京, 中 部, 関 西, 四 国, 九 州 について,PPS による 参 入 が 認 められた 2000 年 度 以 降 を1, 参 入 実 績 のない 北 海 道, 東 北, 北 陸, 中 国 は0とした.ただし, 中 国 は 参 入 実 績 はあるが, 規 模 が 小 さいため, 参 入 がないものとした. その 他, 設 備 投 資 の 変 動 を 説 明 する 変 数 として, 一 般 的 には 土 地 ストックや 内 部 資 金 (キャッシュ フロー)も 考 えられる. 土 地 ストックあればそれが 担 保 となり,エイジェ 11
ンシー コストが 低 下, 資 金 を 調 達 し 易 くなり, 設 備 投 資 を 増 やす 要 因 になる. 内 部 資 金 が 多 いと 設 備 投 資 資 金 になり, 設 備 投 資 が 促 されると 考 えられる. 内 部 資 金 については 電 力 産 業 の 設 備 投 資 は 内 部 資 金 量 に 大 きく 依 存 すると 考 えられるため 採 用 したが, 土 地 スト ックについては 今 回 採 用 しなかった. 4-2 設 備 投 資 関 数 の 推 定 推 定 する 設 備 投 資 関 数 は 次 のようになる. I t K = 0+ α1qt 1 t 1 α + αuncer + αuncer FREE + α PPS + αcash + ε 2 t 3 Q はトービンのq,UNCER は 不 確 実 性 の 変 数,FREE は 自 由 化 ダミー,PPS は 競 争 度 ダミー,CASH は 内 部 資 金 (キャッシュ フロー),εは 撹 乱 項 である. 一 般 的 な 企 業 の 設 備 投 資 の 動 きを 説 明 する 説 明 変 数 としてトービンのq,キャッシュ フローがよく 使 わ れる. 田 中 (2004)などトービンのqを 用 いる 設 備 投 資 関 数 を 推 定 するときは 一 般 的 に, トービンのqは 設 備 投 資 と 同 時 決 定 であることを 考 えると, 当 期 のqを 採 用 すべきであ るが,これを 最 小 二 乗 法 で 推 計 すると, 同 時 性 バイアスが 生 じ, 一 致 推 定 量 が 得 られない. そのため,1 期 前 のトービンのqを 用 いている. 本 論 文 でも 同 様 に1 期 前 のトービンのq を 用 いた 推 定 方 法 は 線 形 の 設 備 投 資 関 数 を 仮 定 するものと 非 線 形 の 設 備 投 資 関 数 を 仮 定 するものがある. Ogawa and Suzuki(2000), 田 中 (2004), 竹 田 小 巻 矢 島 (2005) では 線 形 の 設 備 投 資 関 数 で 推 定 している. 一 方, 鈴 木 (2001), 西 岡 池 田 (2006)では 非 線 形 モデルで 推 定 している.それは 不 確 実 性 の 増 加 がトービンの Q の 閾 値 に 影 響 を 与 え,ある 閾 値 を 超 えると 一 気 に, 非 連 続 的 に 設 備 投 資 がなされると 考 えられるからである. また 理 論 的 背 景 で 説 明 したリアルオプションアプローチとも 整 合 的 である. 鈴 木 (2001) ではロジスティック 関 数 を, 西 岡 池 田 では,プロビットモデルとトービットモデルで 推 計 している. 本 論 文 ではまず 線 形 モデルを 仮 定 し,パネルデータであることを 考 慮 して, ハウスマン 検 定 を 行 い, 固 定 効 果 モデル,あるいは 変 量 効 果 モデルで 推 定 した. 不 確 実 性 の 変 数 については, 先 述 した 電 力 事 業 営 業 収 益 ( 売 上 高 ), 契 約 電 力 量, 電 力 需 要 量, 販 売 電 力 量, 料 金 収 入, 電 力 単 価 を 用 いた.これは 収 益 を 表 す 変 数 をいくつか 取 り 上 げることで, 実 証 分 析 をより 強 固 なものにするためである.ある 意 味, 頑 健 性 を 保 障 するためである. 自 由 化 ダミーについても 1995 年 と 2000 年 でそれぞれ 推 定 した.キャッシュ フローの データは 1998 年 度 以 降 しか 有 価 証 券 報 告 書 に 記 載 されておらず, 田 中 (2004)と 同 様, 内 部 留 保 ( 税 引 き 後 当 期 純 利 益 役 員 賞 与 配 当 金 )+ 減 価 償 却 費 を 企 業 内 部 に 最 終 的 に 残 される 資 金 量 とした.ただし, 一 期 前 の 資 本 ストックで 除 すこと で 基 準 化 している. 推 計 期 間 は 1988 年 度 から 2004 年 度 とし, 沖 縄 電 力 を 除 く9 電 力 で 推 定 した. 電 気 事 業 に 関 するデータは, 各 社 有 価 証 券 報 告 書, 電 気 事 業 連 合 会 統 計 デー タベース より 入 手 した. ここで, 使 用 した 各 変 数 の 基 本 統 計 量 を 概 観 する. 結 果 は 第 1 表 のとおりである.まず, t t 4 t 5 t 12
被 説 明 変 数 である 投 資 資 本 比 率 I/K は 最 大 と 最 小 に 極 めて 大 きな 差 が 見 られる.これ は 電 力 産 業 においては, 一 度 に 大 規 模 の 設 備 投 資 が 行 われていることを 反 映 しているも のと 考 えられる. 特 に, 発 電 設 備 では 標 準 偏 差 が 大 きい. 次 にトービンのqであるが, 推 定 期 間 を 通 じて,2 前 後 で 安 定 的 に 推 移 していた. 電 力 会 社 ごとに 大 きな 差 は 見 られなかっ た. 不 確 実 性 については, 先 述 したように, 契 約 電 力 量 については,2000 年 度 以 降, 標 本 標 準 偏 差 が 大 きく 上 昇 した. 営 業 収 益 と 料 金 収 入 標 本 標 準 偏 差 の 最 大 値 が 大 きく, 標 準 偏 差 がやや 大 きい. 次 に 推 定 結 果 を 考 察 する. 推 定 結 果 は 第 2 表 にある.まず 発 電 部 門 について 説 明 する. ここでは 設 備 投 資 関 数 としてトービンのqモデルを 採 用 したが,どの 不 確 実 性 の 変 数 に ついても,さらに 自 由 化 ダミーを 1995 年 度 としたときも,2000 年 度 としたときも,いず れも 符 号 が 正 でかつ 有 意 であった.よって 電 力 産 業 においてもトービンのqモデルが 成 立 すると 考 えてよさそうである. 他, 内 部 資 金 が 符 号 が 正 で 有 意 であった.よって 電 力 産 業 では 内 部 資 金 量 が 設 備 投 資 に 大 きく 影 響 すると 考 えられる. 次 は, 不 確 実 性 の 変 数 につ いてである. 不 確 実 性 が 増 加 すると, 設 備 投 資 を 控 えると 考 えられるため, 推 定 した 係 数 の 符 号 は 負 になるはずである.また, 自 由 化 前 は 競 争 環 境 になかったため, 仮 に 係 数 が 小 さく,かつ 有 意 性 が 低 ければ, 電 力 会 社 の 設 備 投 資 は 不 確 実 性 の 増 加 に 影 響 を 受 けなかっ たといえる.ここでは 特 に 自 由 化 後 に 収 益 に 関 する 不 確 実 性 が 増 加 し,それが 設 備 投 資 を 抑 制 させたことを 検 証 したいので, 内 部 資 金 を 説 明 変 数 に 入 れた 場 合 といれない 場 合 を 両 方 推 定 した. 不 確 実 性 の 変 数 については, 自 由 化 ダミーを 1995 年 度 にした 場 合 も 2000 年 度 にした 場 合 もともに, 符 号 は 負 であるものの, 値 は 小 さく, 有 意 性 はそれほど 高 くな いものが 多 い. 内 部 資 金 を 説 明 変 数 に 加 えたときも 加 えないときもほとんど 同 じ 傾 向 に ある.よって, 電 力 会 社 の 設 備 投 資 は 収 益 の 不 確 実 性 に 対 して, 大 きく 抑 制 させる 方 向 に 働 かなかったといえる. 最 後 に, 自 由 化 の 影 響 を 見 る.これは 不 確 実 性 の 項 と 不 確 実 性 と 自 由 化 ダミーの 積 で 表 される 係 数 ダミーの 項 を 見 る. 係 数 ダミーの 推 定 した 係 数 の 符 号 が 負 であり,かつ 有 意 であれば, 自 由 化 後, 不 確 実 性 が 増 加 し,それが 設 備 投 資 の 減 少 に 影 響 したと 言 える. 推 定 結 果 を 見 ると, 内 部 資 金 を 説 明 変 数 に 入 れたとき,いずれも 想 定 し ている 結 果 が 得 られなかった.そこで 内 部 資 金 を 説 明 変 数 から 除 いて 推 定 した.すると, 自 由 化 ダミーを 1995 年 度 としたときも,2000 年 度 としたときも, 係 数 の 符 号 が 負 である ものの, 有 意 性 はそれほど 高 いとは 言 えなかった. 不 確 実 性 の 変 数 に 電 力 需 要 量 を 用 いた ときのみ 有 意 性 が 高 かった.よって 自 由 化 後 の 不 確 実 性 の 増 加 は 発 電 設 備 の 抑 制 にはそ れほど 影 響 しなかったと 言 える. 今 度 は 送 配 電 部 門 を 見 る.すると,すべての 不 確 実 性 の 変 数 で, 自 由 化 ダミーを 1995 年 度 としたときも,2000 年 度 としたときも,さらに 内 部 資 金 を 説 明 変 数 に 加 えたときも, いずれも 係 数 ダミーの 符 号 が 負 であり,かつ 有 意 であった.ただし 自 由 化 ダミーを 2000 年 度 としたときの, 不 確 実 性 の 変 数 として 契 約 電 力 量 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 を 用 いたとき は 有 意 性 が 多 少 低 かった. 発 電 部 門 と 違 い, 送 配 電 設 備 については 自 由 化 による 不 確 実 13
性 の 増 加 が 設 備 投 資 を 大 きく 削 減 させたと 言 える.よって 新 規 参 入 のある 発 電 設 備 でな く, 依 然 既 存 電 気 事 業 者 による 一 括 独 占 の 認 められた 送 配 電 設 備 が 抑 制 されていること は 大 きな 技 術 進 歩 でもない 限 り, 電 力 の 供 給 に 支 障 が 出 る 可 能 性 がある. 他 の 変 数 につい て 見 る.まずトービンの Q については, 発 電 部 門 と 違 い, 符 号 は 正 であるものの, 有 意 性 が 低 かった. 内 部 資 金 については 発 電 部 門 と 同 様, 正 で 有 意 であった. 不 確 実 性 の 変 数 につ いては, 発 電 部 門 同 様, 有 意 性 の 低 いものが 多 く, 符 号 が 正 になるものも 見 られた.よって, 自 由 化 後 に 不 確 実 性 に 大 きく 反 応 するようになったと 言 える. 最 後 に, 地 域 ごとの 競 争 の 激 しさの 度 合 いが 設 備 投 資 に 影 響 したかを 調 べるため, 競 争 度 合 いを 表 す PPS ダミー 加 えて 推 計 した. 推 定 した 係 数 の 符 号 が 負 であれば, 競 争 の 激 しさが 設 備 投 資 を 削 減 させるように 働 いていると 言 える. 推 定 した 結 果, 発 電 部 門, 送 配 電 部 門 とも, 負 で 有 意 なものは 少 なかった.ここでも 送 配 電 部 門 の 方 がいくつかの 不 確 実 性 の 変 数 について, 競 争 度 の 進 展 度 合 いが 設 備 投 資 を 抑 制 させるように 働 いていた. 1995 年 あるいは 2000 年 に 設 備 投 資 行 動 に 構 造 変 化 があったかをそれぞれチョウテ ストで 検 証 した.その 結 果, 発 電 部 門, 送 配 電 部 門 ともに 1995 年,2000 年 いずれにおいて も 構 造 変 化 が 検 出 された.さらに 発 電 部 門 では 1995 年 における 構 造 変 化 の 方 が 有 意 性 が 高 く, 一 方 送 配 電 部 門 では,1995 年 では 有 意 ではないものの,2000 年 では 有 意 性 が 高 か った.これは 1995 年 には 発 電 部 門 において 設 備 投 資 に 構 造 変 化 があり, 競 争 が 進 展 した 2000 年 では 送 配 電 部 門 の 設 備 投 資 に 大 きな 構 造 変 化 があったと 言 える. 5 結 論 と 今 後 の 課 題 本 論 文 では,1995 年 以 降 行 われた 電 力 産 業 における 自 由 化 が, 将 来 収 益 の 不 確 実 性 を 増 加 させ, 設 備 投 資 を 減 少 させることを 検 証 した.その 結 果, 特 に 送 配 電 設 備 では 自 由 化 後 の 不 確 実 性 の 増 加 が 設 備 投 資 を 減 少 させる 効 果 があることが 分 かった. 依 然 として 独 占 が 認 められた 送 配 電 設 備 も 大 きく 削 減 していることは, 電 力 の 安 定 的 な 供 給 に 問 題 が 生 じるものと 懸 念 される.チョウテストの 結 果, 自 由 化 後 に 設 備 投 資 行 動 に 大 きな 構 造 変 化 があったことも 検 証 できた. 今 後 の 課 題 として Honda and Suzuki(2000)や 鈴 木 (2001)のようにロジスティック モデルなど 非 線 形 モデルを 用 いた 推 定 も 試 みる 必 要 がある.さらに, 今 回, 設 備 投 資 モデルとしてトービンのqモデルを 採 用 したが, 特 に 自 由 化 後 の 電 力 会 社 の 設 備 投 資 行 動 を 把 握 しモデル 化 した 上 での 実 証 分 析 が 必 要 である. 公 益 事 業 の 規 制 改 革 を 議 論 する 際,それが 企 業 に 与 える 不 確 実 性 の 影 響 を 考 えるこ とは 重 要 である. 電 力 価 格 のボラティリティが 上 昇 したために,リスクプレミアムが 上 昇 し, 電 気 料 金 が 上 昇 することも 考 えられる.そのような 自 由 化 による 不 確 実 性 を 抑 えるた め,2005 年 4 月 に 開 設 された 卸 電 力 市 場 の 整 備 が 必 要 である. 1990 年 代 に 世 界 的 に 行 われた 電 力, 通 信, 金 融 などの 規 制 改 革 の 目 的 は 生 産 性, 効 率 性 の 向 上,サービスの 改 善 多 様 化, 価 格 の 低 下 などにより, 潜 在 成 長 力 の 向 上 や 消 費 者 便 14
益 の 拡 大 をはかることにある.その 点 規 制 緩 和, 自 由 化 は 日 本 の 潜 在 成 長 力 を 引 き 上 げる 上 で 重 要 である.だからこそ 競 争 環 境 下 での 資 本 形 成 のあり 方, 資 本 形 成 を 促 進 する 制 度 設 計 を 考 えることは 重 要 である.さらには 様 々な 分 野 で 行 われている 市 場 競 争 を 導 入 し たときの 政 策 のあり 方 を 考 えることは 重 要 である. 一 方 向 的 な 規 制 改 革 により 弊 害 が 現 れては 消 費 者 便 益 の 拡 大 は 実 現 しない.それを 達 成 するための 多 方 面 からの 研 究 の 積 み 重 ねは 重 要 である. 参 考 文 献 1. Abel,A.B. and O.Blanchard,(1986) The Present Value of Profits and Cyclical Movements in Investment, Econometrica,Vol.54,No.2,pp.249-273. 2. Barnett,S.A. and P.Sakellaris,(1998) Nonlinear Response of Firm Investment to Q:Testing a Model of Convex and Non-convex Adjustment Costs, Journal of Monetary Economics, Vol.42,pp.261-288. 3. Blanchard, O. J.,C. Rhee and L. Summers,(1993) The Stock Market, Profit and Investment, Quarterly Journal of Economics,Vol.108,pp.115-136. 4. Cameron, A.C. and P.K. Trivedi,(2005) Microeconometrics Methods and Applications, Cambridge. 5. Cassimon,D., P.J. Engelen, H.Meersman and M.V.Wouwe,(2002) Investment, Uncertainty and Irreversibility; Evidence from Belgian Accounting Data, National Bank of Belgium, Working Paper No.23. 6. Dixit, A. K. and R. S. Pindyck,(1994) Investment under Uncertainty, Princeton University Press. 7. Hayashi, F. and T. Inoue,(1991) The Relation Between Firm Growth and Q with Multiple Capital Goods: Theory and Evidence from Panel Data on Japanese Firms, Economatrica, Vol.59, No.3, pp.731-753. 8. Honda, Y. and K. Suzuki,(2000) Estimation of the Investment Thresholds of Large Japanese Manufacturers, The Japanese Economic Review,Vol.51,No.4, December,pp.473-491. 9. Hsiao, C.,(2003) Analysis of Panel Data, Cambridge. 10. Ogawa, K. and K. Suzuki,(2000) Uncertainty and Investment : Some Evidence from the Panel Data of Japanese Manufacturing Firm, The Japanese Economic Review,Vol.51,No.2,June,pp.170-192. 11. Pattillo,C.,(1998) Investment, Uncertainty and Irreversibility in Ghana, IMF Staff Papers, Vol.45, pp.522-553. 12. White, H.,(1980) A Heteroskedasticity-Consistent Covariance Matrix Estimator 15
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33. 八 田 達 夫 田 中 誠 編 著,(2004) 電 力 自 由 化 の 経 済 学 東 洋 経 済 新 報 社. 34. 増 田 宗 人,(2000) 資 本 ストック 統 計 の 見 方 - 市 場 評 価 資 本 ストックの 試 算 - 日 本 銀 行 調 査 局 Working Paper 00-5. 35. 松 浦 克 己 コリン マッケンジー,(2001) Eviews による 計 量 経 済 分 析 実 践 的 活 用 法 と 日 本 経 済 の 実 証 分 析 東 洋 経 済 新 報 社. 36. 中 村 保,(2003) 設 備 投 資 行 動 の 理 論 東 洋 経 済 新 報 社. 37. 南 部 鶴 彦 編,(2003) 電 力 自 由 化 の 制 度 設 計 系 統 技 術 と 市 場 メカニズム 東 京 大 学 出 版 会. 38. 南 部 鶴 彦 西 村 陽 エナジー エコノミクス 電 力 ガス 石 油 : 理 論 政 策 融 合 の 視 点 日 本 評 論 社. 39. 西 岡 慎 一 池 田 大 輔,(2006) 不 確 実 性 下 における 企 業 の 設 備 投 資 行 動 :リアルオプ ション 理 論 に 基 づいた 実 証 分 析 日 本 銀 行 調 査 統 計 局 日 本 銀 行 ワーキングペーパ ーシリーズ, 06-J-09. 40. 矢 島 正 之,(2004a) 電 力 改 革 再 考 東 洋 経 済 新 報 社. 41.,(2004b) 電 力 自 由 化 と 設 備 形 成, 公 益 事 業 研 究 ( 公 益 事 業 学 会 ) 第 56 巻 第 2 号,pp.69-74. 42. 山 本 哲 三,(1994) 市 場 か 政 府 か 日 本 経 済 評 論 社 43.,(2003) 規 制 改 革 の 経 済 学 -インセンティブ 規 制, 構 造 規 制,フランチャ イズ 入 札 文 真 堂. 44. 山 本 哲 三 佐 藤 英 善 編 著,(2001) ネットワーク 産 業 の 規 制 改 革 欧 米 の 経 験 から 何 を 学 ぶか 日 本 評 論 社. 45. 吉 川 洋,(1984) マクロ 経 済 学 研 究 東 京 大 学 出 版 会 17
5000000 4500000 4000000 3500000 3000000 2500000 2000000 1500000 1000000 500000 0 1990 年 度 1991 年 度 第 1 図 設 備 投 資 1992 年 度 1993 年 度 1994 年 度 1995 年 度 1996 年 度 1997 年 度 1998 年 度 ( 出 所 ) 財 務 省 法 人 企 業 統 計 より 作 成.10 電 力 合 計. 単 位 : 百 万 円. 第 2-1 図 発 電 設 備 の 推 移 1999 年 度 2000 年 度 2001 年 度 2002 年 度 2003 年 度 14000000 12000000 10000000 8000000 6000000 4000000 2000000 1989 年 度 1990 年 度 1991 年 度 1992 年 度 1993 年 度 1994 年 度 1995 年 度 1996 年 度 1997 年 度 1998 年 度 1999 年 度 2000 年 度 2001 年 度 2002 年 度 2003 年 度 2004 年 度 0 ( 出 所 ) 電 気 事 業 連 合 会 データベースより 作 成.10 電 力 合 計 単 位 : 百 万 円. 18
第 2-2 図 送 配 電 設 備 の 推 移 25000000 20000000 15000000 10000000 5000000 0 1989 年 度 1990 年 度 1991 年 度 1992 年 度 1993 年 度 1994 年 度 1995 年 度 1996 年 度 1997 年 度 1998 年 度 1999 年 度 2000 年 度 2001 年 度 2002 年 度 2003 年 度 2004 年 度 ( 出 所 ) 電 気 事 業 連 合 会 データベースより 作 成.10 電 力 合 計. 単 位 : 百 万 円 80000000 70000000 60000000 50000000 第 3 図 電 力 需 要 量 (9 電 力 計 ) MWh 40000000 30000000 20000000 10000000 0 1976 年 度 末 1978 年 度 末 1980 年 度 末 1982 年 度 末 1984 年 度 末 1986 年 度 末 1988 年 度 末 1990 年 度 末 1992 年 度 末 1994 年 度 末 ( 出 所 ) 電 気 事 業 連 合 会 データベースより 作 成.9 電 力 合 計. 19 1996 年 度 末 1998 年 度 末 2000 年 度 末 2002 年 度 末 2004 年 度 末
第 1 表 基 本 統 計 量 変 数 名 観 測 数 平 均 標 準 偏 差 最 小 値 最 大 値 I/K( 発 電 ) 153 0.1201 0.1526 0.0001 0.9945 I/K( 送 配 電 ) 153 0.0947 0.0471 0.0107 0.2494 トービンのq( 発 電 ) 153 2.0309 0.3856 1.4503 3.4199 トービンのq( 送 配 電 ) 153 2.0520 0.3271 1.5215 3.1215 不 確 実 性 1 営 業 収 益 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 153 0.0447 0.0423 0.0147 0.3231 2 契 約 電 力 量 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 153 0.0327 0.0364 0.0038 0.1416 3 電 力 需 要 量 変 化 率 標 準 偏 差 153 0.0405 0.0111 0.0186 0.0678 4 電 力 単 価 変 化 率 標 準 偏 差 153 0.0255 0.0090 0.0082 0.0577 5 販 売 電 力 量 変 化 率 標 準 偏 差 153 0.0251 0.0070 0.0108 0.0487 6 料 金 収 入 変 化 率 標 準 偏 差 153 0.0391 0.0432 0.0175 0.5659 内 部 資 金 ( 資 本 あたり) 153 0.0951 0.0111 0.0739 0.1265 第 2 表 推 定 結 果 :パネル 分 析 (1) 発 電 部 門 1 自 由 化 ダミー:1995 年 度 回 帰 式 1 不 確 実 性 変 数 : 営 業 収 益 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 0.0002 0.0751 0 0.997 トービンq 0.0792 0.0349 2.27 0.023 不 確 実 性 -0.5205 0.3433-1.52 0.129 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.0406 0.7852-1.33 0.185 変 量 効 果 1.79 0.6169 0.0705 0.1167 0.0649 定 数 項 -0.9657 0.1430-6.75 0 トービンq 0.1185 0.0371 3.19 0.002 不 確 実 性 -0.5008 0.3356-1.49 0.138 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 1.5668 0.8272 1.89 0.06 内 部 資 金 8.8828 1.0960 8.11 0 固 定 効 果 11.85 0.0185 0.3688 0.6965 0.3179 20
回 帰 式 2 不 確 実 性 変 数 : 契 約 電 力 量 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 0.0150 0.0652 0.23 0.819 トービンq 0.0588 0.0325 1.81 0.071 不 確 実 性 1.0297 2.1404 0.48 0.63 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.7162 1.9736-0.87 0.385 変 量 効 果 0.56 0.9065 0.0861 0.357 0.0872 定 数 項 -1.0093 0.1435-7.03 0 トービンq 0.0743 0.0334 2.24 0.027 不 確 実 性 -1.1348 2.0453-0.55 0.58 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 1.8716 1.8921 0.99 0.324 内 部 資 金 10.1914 1.2976 7.85 0 固 定 効 果 9.64 0.0469 0.3662 0.7428 0.3281 回 帰 式 3 不 確 実 性 変 数 : 電 力 需 要 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0750 0.0733 1.02 0.306 トービンq 0.0771 0.0333 2.32 0.021 不 確 実 性 -2.0958 1.1472-1.83 0.068 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.2811 0.6153-2.08 0.037 変 量 効 果 1.02 0.7964 0.0944 0.5302 0.0946 定 数 項 -1.0221 0.1546-6.61 0 トービンq 0.0889 0.0355 2.5 0.013 不 確 実 性 -0.2156 1.1996-0.18 0.858 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 1.7178 0.6561 2.62 0.01 内 部 資 金 9.8774 1.2720 7.76 0 固 定 効 果 10.18 0.0375 0.3682 0.7232 0.3243 21
回 帰 式 4 不 確 実 性 変 数 : 電 力 単 価 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0510 0.0802 0.64 0.524 トービンq 0.0664 0.0335 1.98 0.048 不 確 実 性 -1.6945 1.5124-1.12 0.263 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.9353 1.1617-1.67 0.096 変 量 効 果 1.19 0.7561 0.0659 0.0968 0.064 定 数 項 -1.0563 0.1560-6.77 0 トービンq 0.1141 0.0340 3.36 0.001 不 確 実 性 -1.2108 1.3487-0.9 0.371 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 3.3880 1.2400 2.73 0.007 内 部 資 金 9.8821 1.1693 8.45 0 固 定 効 果 14.23 0.0066 0.3822 0.7441 0.3249 回 帰 式 5 不 確 実 性 変 数 : 販 売 電 力 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 -0.0078 0.0904-0.09 0.931 トービンq 0.0649 0.0341 1.9 0.057 不 確 実 性 0.4011 1.7355 0.23 0.817 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.0741 1.1737-0.92 0.36 変 量 効 果 0.07 0.9953 0.0456 0.3896 0.0495 定 数 項 -0.8658 0.1299-6.66 0 トービンq 0.8520 0.0335 2.55 0.012 不 確 実 性 -4.7781 1.6099-2.97 0.004 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 0.9954 1.0578 0.94 0.348 内 部 資 金 9.7334 1.1075 8.79 0 固 定 効 果 14.27 0.0065 0.385 0.6637 0.3301 22
回 帰 式 6 不 確 実 性 変 数 : 料 金 収 入 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0238 0.0781 0.3 0.761 トービンq 0.0596 0.0338 1.76 0.078 不 確 実 性 -0.0754 0.2731-0.28 0.782 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.2854 0.9035-1.42 0.155 変 量 効 果 0.03 0.0086 0.0516 0.3813 0.0555 定 数 項 -1.0082 0.1477-6.83 0 トービンq 0.1015 0.0345 2.94 0.004 不 確 実 性 -0.0054 0.2394-0.02 0.982 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 2.1734 0.9138 2.38 0.019 内 部 資 金 9.3815 1.1307 8.3 0 固 定 効 果 10.44 0.0336 0.3643 0.7683 0.3186 2 自 由 化 ダミー:2000 年 度 回 帰 式 1 不 確 実 性 変 数 : 営 業 収 益 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 -0.0321 0.0645-0.5 0.618 トービンq 0.0916 0.0327 2.8 0.005 不 確 実 性 -0.5183 0.3412-1.52 0.129 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.2797 0.8114-1.58 0.115 変 量 効 果 1.75 0.6255 0.0749 0.178 0.0694 定 数 項 -1.0481 0.1293-8.11 0 トービンq 0.0914 0.0320 2.86 0.005 不 確 実 性 -0.4212 0.3262-1.29 0.199 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 2.8435 0.8359 3.4 0.001 内 部 資 金 10.3276 1.1837 8.73 0 固 定 効 果 15.7 0.0034 0.4021 0.7097 0.3452 23
回 帰 式 2 不 確 実 性 変 数 : 契 約 電 力 量 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 0.0054 0.0667 0.08 0.936 トービンq 0.0694 0.0307 2.26 0.024 不 確 実 性 -0.6596 0.7665-0.86 0.39 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -0.1517 0.6991-0.22 0.828 変 量 効 果 1.03 0.7928 0.0853 0.3454 0.0829 定 数 項 -0.7913 0.1201-6.59 0 トービンq 0.0395 0.0265 1.49 0.136 不 確 実 性 -0.1293 0.6578-0.2 0.844 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 0.7603 0.6086 1.25 0.212 内 部 資 金 8.6585 1.1500 7.53 0 変 量 効 果 9.16 0.0572 0.3682 0.7097 0.3369 回 帰 式 3 不 確 実 性 変 数 : 電 力 需 要 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0168 0.0671 0.25 0.802 トービンq 0.0873 0.0323 2.7 0.007 不 確 実 性 -1.4854 1.2376-1.2 0.23 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.1137 0.6121-1.82 0.069 変 量 効 果 0.91 0.8234 0.0884 0.4979 0.0885 定 数 項 -1.0262 0.1372-7.51 0 トービンq 0.0833 0.0340 2.45 0.016 不 確 実 性 -1.7019 1.2351-1.38 0.17 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 2.3341 0.6601 3.54 0.001 内 部 資 金 10.7400 1.2891 8.33 0 固 定 効 果 14.2 0.0067 0.3916 0.7427 0.3338 24
回 帰 式 4 不 確 実 性 変 数 : 電 力 単 価 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0035 0.0674 0.05 0.958 トービンq 0.0803 0.0315 2.55 0.011 不 確 実 性 -1.2918 1.4743-0.88 0.381 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -2.1306 0.0674-1.93 0.053 変 量 効 果 0.92 0.8216 0.0697 0.2416 0.0699 定 数 項 -1.0660 0.1348-7.91 0 トービンq 0.0797 0.0296 2.69 0.008 不 確 実 性 -1.9673 1.2746-1.54 0.125 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 4.3622 1.1686 3.37 0 内 部 資 金 11.0493 1.2363 8.94 0 固 定 効 果 25.62 0 0.4081 0.7404 0.3558 回 帰 式 5 不 確 実 性 変 数 : 販 売 電 力 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0030 0.7712 0.04 0.969 トービンq 0.0738 0.0307 2.4 0.016 不 確 実 性 -0.6567 1.8071-0.36 0.716 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -2.8867 1.4113-2.05 0.041 変 量 効 果 0.22 0.9744 0.068 0.3305 0.0703 定 数 項 -1.0174 0.1326-7.67 0 トービンq 0.0751 0.0288 2.61 0.01 不 確 実 性 -4.0527 1.5959-2.54 0.012 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 3.7322 1.4019 2.66 0.009 内 部 資 金 11.2767 0.1326-7.67 0 固 定 効 果 19.68 0.0006 0.4109 0.6806 0.3419 25
回 帰 式 6 不 確 実 性 変 数 : 料 金 収 入 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 -0.0125 0.0645-0.19 0.846 トービンq 0.0736 0.0307 2.4 0.016 不 確 実 性 -0.0483 0.2663-0.18 0.856 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.7292 0.8736-1.98 0.048 変 量 効 果 0.04 0.9976 0.0516 0.3813 0.0555 定 数 項 -1.0650 0.1350-7.89 0 トービンq 0.0682 0.0291 2.34 0.02 不 確 実 性 -0.0704 0.2281-0.31 0.758 不 確 実 性 自 由 化 ダミー 3.2418 0.9294 3.49 0.001 内 部 資 金 10.8128 1.2452 8.68 0 固 定 効 果 13.85 0.0078 0.3915 0.7514 0.3391 (2) 送 配 電 部 門 1 自 由 化 ダミー:1995 年 度 回 帰 式 1 不 確 実 性 変 数 : 営 業 収 益 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 0.1075 0.0257 4.19 0 トービンq 0.0008 0.0125 0.06 0.949 不 確 実 性 0.0879 0.1069 0.82 0.411 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.1579 0.2243-5.16 0 変 量 効 果 2.42 0.4905 0.2001 0.0285 0.1905 定 数 項 -0.1840 0.0539-3.42 0.001 トービンq 0.0253 0.0183 1.39 0.168 不 確 実 性 0.1062 0.1007 1.05 0.294 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -0.4199 0.2565-1.64 0.104 内 部 資 金 2.4079 0.3313 7.27 0 固 定 効 果 11.88 0.0183 0.4211 0.0305 0.3565 26
回 帰 式 2 不 確 実 性 変 数 : 契 約 電 力 量 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 0.0943 0.0202 4.67 0 トービンq 0.0540 0.0100 0.54 0.591 不 確 実 性 0.8196 0.5603 1.46 0.144 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.4294 0.5167-2.7 0.006 変 量 効 果 5.19 0.1584 0.4163 0.1459 0.3763 定 数 項 -0.0287 0.0385-0.75 0.456 トービンq 0.0063 0.0096 0.65 0.515 不 確 実 性 0.5955 0.5413 1.1 0.271 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.0252 0.5079-2.02 0.044 内 部 資 金 1.2415 0.3358 3.7 0 固 定 効 果 10.21 0.0371 0.4723 0.0064 0.429 回 帰 式 3 不 確 実 性 変 数 : 電 力 需 要 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.1503 0.0221 6.8 0 トービンq 0.0008 0.0100 0.08 0.934 不 確 実 性 -0.7061 0.2867-2.46 0.014 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.4597 0.1593-9.17 0 変 量 効 果 2.79 0.4244 0.4272 0.0352 0.4103 定 数 項 0.0192 0.0425 0.45 0.651 トービンq 0.0009 0.0096 0.09 0.926 不 確 実 性 -0.3845 0.2904-1.32 0.185 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.1090 0.1822-6.09 0 内 部 資 金 1.1701 0.3282 3.57 0 変 量 効 果 6.29 0.1786 0.482 0.0574 0.457 27
回 帰 式 4 不 確 実 性 変 数 : 電 力 単 価 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.1209 0.2508 4.82 0 トービンq -0.0034 0.0105-0.32 0.747 不 確 実 性 0.2607 0.4062 0.64 0.521 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -2.2883 0.3137-7.29 0 変 量 効 果 1.08 0.782 0.3155 0.0912 0.3097 定 数 項 -0.0462 0.0378-1.22 0.222 トービンq -0.0012 0.0096-0.12 0.901 不 確 実 性 0.1896 0.3711 0.51 0.609 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.5889 0.3129-5.08 0 内 部 資 金 1.6477 0.2969 5.55 0 変 量 効 果 3.6 0.4623 0.4395 0.163 0.4286 回 帰 式 5 不 確 実 性 変 数 : 販 売 電 力 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0553 0.0264 2.1 0.036 トービンq 0.0021 0.0113 0.19 0.851 不 確 実 性 1.8828 0.5080 3.71 0 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.1253 0.3214-3.5 0 変 量 効 果 1.7 0.6362 0.2211 0.1019 0.2086 定 数 項 -0.1132 0.0359-3.16 0.002 トービンq 0.0038 0.0101 0.37 0.71 不 確 実 性 1.0885 0.4712 2.31 0.021 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -0.7058 0.2948-2.39 0.017 内 部 資 金 1.9009 0.3050 6.23 0 変 量 効 果 7.07 0.1321 0.4014 0.0213 0.3731 28
回 帰 式 6 不 確 実 性 変 数 : 料 金 収 入 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.1219 0.2472 4.93 0 トービンq 0.0000 0.0110 0 1 不 確 実 性 -0.0662 0.0770-0.86 0.39 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.6087 0.2486-6.47 0 変 量 効 果 1.26 0.7394 0.2605 0.218 0.2464 定 数 項 -0.0633 0.0381-1.66 0.097 トービンq 0.0021 0.0099 0.21 0.835 不 確 実 性 -0.0575 0.0693-0.83 0.407 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.0376 0.2433-4.27 0 内 部 資 金 1.8094 0.3021 5.99 0 変 量 効 果 7.69 0.1038 0.4232 0.0113 0.3934 2 自 由 化 ダミー:2000 年 度 回 帰 式 1 不 確 実 性 変 数 : 営 業 収 益 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 0.0962 0.0204 4.71 0 トービンq 0.0045 0.0105 0.43 0.669 不 確 実 性 0.0946 0.0915 1.03 0.302 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.9444 0.2070-9.39 0 変 量 効 果 5.43 0.1428 0.4163 0.0073 0.4007 定 数 項 -0.1063 0.0448-2.37 0.019 トービンq 0.0257 0.0148 1.73 0.086 不 確 実 性 0.0765 0.0923 0.83 0.408 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.2679 0.2441-5.19 0 内 部 資 金 1.6308 0.3389 4.81 0 固 定 効 果 10.34 0.0351 0.5053 0.0142 0.4543 29
回 帰 式 2 不 確 実 性 変 数 : 契 約 電 力 量 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 0.0637 0.0332 1.92 0.057 トービンq 0.0250 0.0154 1.62 0.107 不 確 実 性 -0.4187 0.2129-1.97 0.051 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -0.3578 0.1846-1.94 0.057 固 定 効 果 16.87 0.0008 0.413 0.1131 0.3603 定 数 項 -0.1046 0.0508-2.06 0.041 トービンq 0.0311 0.0146 2.13 0.035 不 確 実 性 -0.2347 0.2059-1.14 0.256 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -0.2502 0.1763-1.42 0.158 内 部 資 金 1.5565 0.3694 4.21 0 固 定 効 果 32.72 0 0.479 0.0045 0.4111 回 帰 式 3 不 確 実 性 変 数 : 電 力 需 要 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0842 0.0194 4.35 0 トービンq 0.0093 0.0094 1 0.318 不 確 実 性 0.2173 0.3007 0.72 0.47 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.5203 0.0194-4.35 0 変 量 効 果 3.32 0.3454 0.4606 0.114 0.4456 定 数 項 -0.0182 0.0369-0.49 0.623 トービンq 0.0074 0.0091 0.82 0.415 不 確 実 性 0.3134 0.2932 1.07 0.285 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.2049 0.1777-6.78 0 内 部 資 金 1.0414 0.0369-0.49 0.623 変 量 効 果 3.15 0.5323 0.5008 0.0001 0.4819 30
回 帰 式 4 不 確 実 性 変 数 : 電 力 単 価 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0833 0.0195 4.28 0 トービンq 0.0034 0.0089 0.38 0.707 不 確 実 性 0.8514 0.3469 2.45 0.014 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -2.8361 0.0195-4.28 0 変 量 効 果 1.88 0.5972 0.473 0.0043 0.4648 定 数 項 -0.0154 0.0346-0.45 0.655 トービンq 0.0037 0.0086 0.43 0.665 不 確 実 性 0.6953 0.3383 2.05 0.04 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -2.2479 0.3115-7.22 0 内 部 資 金 1.0362 0.3045 3.4 0.001 変 量 効 果 5.09 0.2784 0.5178 0.0456 0.5036 回 帰 式 5 不 確 実 性 変 数 : 販 売 電 力 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0475 0.0308 1.54 0.125 トービンq 0.0223 0.0148 1.51 0.134 不 確 実 性 0.6369 0.4861 1.31 0.192 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -2.9925 0.3670-8.15 0 固 定 効 果 10.18 0.0171 0.4418 0.3511 0.4107 定 数 項 -0.0425 0.0348-1.22 0.222 トービンq 0.0102 0.0089 1.14 0.252 不 確 実 性 0.5469 0.4469 1.22 0.221 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -2.2210 0.3865-5.75 0 内 部 資 金 1.1916 0.3133 3.8 0 変 量 効 果 1.45 0.8346 0.4904 0.0284 0.4676 31
回 帰 式 6 不 確 実 性 変 数 : 料 金 収 入 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0904 0.0190 4.76 0 トービンq 0.0108 0.0090 1.2 0.23 不 確 実 性 -0.0362 0.0658-0.55 0.583 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -2.2192 0.2168-4.76 0 変 量 効 果 -20.75 0.4552 0.278 0.4332 定 数 項 -0.0212 0.0348-0.61 0.542 トービンq 0.0098 0.0087 1.13 0.259 不 確 実 性 -0.0371 0.0631-0.59 0.557 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.7039 0.2488-6.85 0 内 部 資 金 1.1577 0.3072 3.77 0 変 量 効 果 5.76 0.2182 0.5058 0.0064 0.4828 第 3 図 競 争 度 合 の 影 響 (1) 発 電 部 門 回 帰 式 1 不 確 実 性 変 数 : 営 業 収 益 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 -0.0326 0.0647-0.5 0.615 トービンq 0.0921 0.0328 2.81 0.005 不 確 実 性 -0.5244 0.3427-1.53 0.126 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.0431 1.0938-0.95 0.34 PPS -0.0139 0.0429-0.32 0.746 変 量 効 果 1.77 0.775 0.0759 0.1988 0.0701 回 帰 式 2 不 確 実 性 変 数 : 契 約 電 力 量 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 0.0056 0.0673 0.08 0.934 トービンq 0.0694 0.0309 2.25 0.025 不 確 実 性 -0.6629 0.7774-0.85 0.394 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -0.1440 0.7501-0.19 0.848 PPS -0.0011 0.0369-0.03 0.977 変 量 効 果 1.08 0.8982 0.0852 0.3473 0.0829 32
回 帰 式 3 不 確 実 性 変 数 : 電 力 需 要 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0152 0.0676 0.22 0.822 トービンq 0.0868 0.0324 2.68 0.007 不 確 実 性 -1.4246 1.2626-1.13 0.259 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.2444 0.7882-1.58 0.114 PPS 0.0107 0.0405 0.26 0.791 変 量 効 果 0.92 0.9223 0.089 0.4794 0.0889 回 帰 式 4 不 確 実 性 変 数 : 電 力 単 価 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0034 0.0676 0.05 0.96 トービンq 0.0802 0.0316 2.53 0.011 不 確 実 性 -1.2780 1.4818-0.86 0.388 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -2.2879 1.4959-1.53 0.126 PPS 0.0067 0.0431 0.16 0.876 変 量 効 果 0.89 0.926 0.0698 0.2342 0.07 回 帰 式 5 不 確 実 性 変 数 : 販 売 電 力 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 0.0094 0.0810 0.12 0.907 トービンq 0.0740 0.0308 2.4 0.016 不 確 実 性 -0.8962 2.0212-0.44 0.657 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -2.7308 1.5306-1.78 0.074 PPS -0.0110 0.0411-0.27 0.789 変 量 効 果 0.23 0.9939 0.0684 0.3477 0.0707 回 帰 式 6 不 確 実 性 変 数 : 料 金 収 入 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 -0.0126 0.0648-0.19 0.846 トービンq 0.0736 0.0308 2.39 0.017 不 確 実 性 -0.0478 0.2676-0.18 0.858 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.7485 1.0770-1.62 0.104 PPS 0.0012 0.0393 0.03 0.975 変 量 効 果 0.006 0.9995 0.0637 0.3935 0.0672 33
(2) 送 配 電 部 門 回 帰 式 1 不 確 実 性 変 数 : 営 業 収 益 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 -0.1097 0.0451-2.43 0.016 トービンq 0.0282 0.0152 1.86 0.065 不 確 実 性 0.0753 0.0924 0.81 0.417 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.0887 0.3267-3.33 0.001 内 部 資 金 1.6140 0.3399 4.75 0 PPS -0.0101 0.0123-0.83 0.41 固 定 効 果 16.99 0.0045 0.5077 0.0122 0.4442 回 帰 式 2 不 確 実 性 変 数 : 契 約 電 力 量 変 化 率 標 本 標 準 偏 差 定 数 項 -0.0151 0.0395-0.38 0.702 トービンq 0.0087 0.0093 0.94 0.35 不 確 実 性 -0.3271 0.1942-1.68 0.092 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -0.1151 0.1869-0.62 0.538 内 部 資 金 1.1312 0.3407 3.32 0.001 PPS -0.0211 0.0097-2.18 0.03 変 量 効 果 -48.99 0.4894 0.0002 0.4393 回 帰 式 3 不 確 実 性 変 数 : 電 力 需 要 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 -0.0154 0.0380-0.41 0.685 トービンq 0.0069 0.0092 0.75 0.454 不 確 実 性 0.3012 0.2965 1.02 0.31 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.1728 0.2046-5.73 0 内 部 資 金 1.0288 0.3266 3.15 0.002 PPS -0.0032 0.0099-0.32 0.748 変 量 効 果 9.19 0.1018 0.5014 0.0005 0.4822 34
回 帰 式 4 不 確 実 性 変 数 : 電 力 単 価 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 -0.0182 0.0353-0.51 0.607 トービンq 0.0043 0.0088 0.49 0.621 不 確 実 性 0.6972 0.3395 2.05 0.04 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -2.3245 0.3769-6.17 0 内 部 資 金 1.0501 0.3073 3.42 0.001 PPS 0.0038 0.0102 0.37 0.71 変 量 効 果 5.13 0.3996 0.518 0.0419 0.5041 回 帰 式 5 不 確 実 性 変 数 : 販 売 電 力 量 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 -0.0993 0.0464-2.14 0.034 トービンq 0.0378 0.0147 2.58 0.011 不 確 実 性 -0.4175 0.5560-0.75 0.454 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.6449 0.4661-3.53 0.001 内 部 資 金 1.4607 0.3626 4.03 0 PPS -0.0250 0.0122-2.05 0.043 固 定 効 果 11.99 0.0349 0.5126 0.0037 0.4274 回 帰 式 6 不 確 実 性 変 数 : 料 金 収 入 変 化 率 標 準 偏 差 定 数 項 -0.0148 0.0360-0.41 0.681 トービンq 0.0086 0.0089 0.97 0.334 不 確 実 性 -0.0388 0.0632-0.61 0.539 不 確 実 性 自 由 化 ダミー -1.6195 0.2774-5.84 0 内 部 資 金 1.1208 0.3124 3.59 0 PPS -0.0066 0.0096-0.69 0.489 変 量 効 果 7.5 0.1862 0.5075 0.0023 0.4845 35