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学 生 の 学 び の 深 まりを 中 心 に 矢 野 真 ( 児 童 学 科 准 教 授 ) 田 爪 宏 二 ( 京 都 教 育 大 学 教 育 学 部 准 教 授 ) 松 井 勅 尚 ( 岐 阜 県 立 森 林 文 化 アカデミー 教 授 ) 本 研 究 は, 保 育 者 養 成 における 木 育 の 実 践 がその 後 の 造 形 領 域 における 授 業 や 実 践,また 教 材 研 究 など, 学 生 にとってどのように 学 び の 深 まりへとつながっているか,その 有 効 性 につい て 明 らかにした 木 育 に 参 加 した 学 生 17 名 への 質 問 紙 調 査 を 中 心 に, 作 品 制 作 や 教 材 研 究 に 対 する 取 り 組 みについての 聞 き 取 り 調 査 および 行 動 観 察 を 行 った 結 果, 木 育 の 実 践 が, 自 然 や 人 とのふれあい 関 わり 方, 材 料 の 捉 え 方, 作 品 を 通 した 感 覚 の 大 切 さ, 表 現 力 の 大 切 さなどを 考 え て 取 り 組 むことが 明 らかとなり, 造 形 領 域 に 関 わる 実 践 的 教 材 として 有 効 であることが 導 出 された キーワード: 保 育 者 養 成 木 育 教 材 開 発 実 践 的 教 材 表 現 領 域 1. 本 研 究 の 背 景 と 目 的 本 研 究 は, 平 成 23~24 年 度 の 京 都 女 子 大 学 公 開 講 座 における 木 育 ワークショップを 通 じ て, 保 育 者 養 成 における 木 育 の 実 践 が, 造 形 領 域 に 関 わる 実 践 的 教 材 としてどのように 有 効 であるかということについて 考 察 するもので ある 近 年 の 保 育 者 養 成 において,より 高 い 保 育 士 の 専 門 性 が 語 られ, 保 育 所 内 外 の 空 間 や 物 的 環 境, 様 々な 遊 具 や 素 材, 自 然 環 境 や 人 的 環 境 を 生 かし, 保 育 の 環 境 を 構 成 していく 技 術 として, 表 現 技 術 を 保 育 との 関 連 で 修 得 する 必 要 性 が 保 育 所 保 育 指 針 においても 提 示 されてい る( 保 育 所 保 育 指 針 解 説 書,2008) 教 材 開 発 を 通 した 子 どもの 創 造 性 を 育 てる 表 現 教 育 のあ り 方 に 関 する 体 系 的 研 究 (2007-2009 年 度 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤 (C) 課 題 番 号 :19500655) を 中 心 に 表 現 教 育 のあり 方 の 調 査 および 研 究 を 進 めていくなかで, 表 現 領 域 を 通 して 高 い 保 育 士 の 専 門 性 をもった 保 育 者 を 育 成 するため には, 保 育 者 養 成 校 と 保 育 現 場 の 連 携,および 地 域 との 連 携,さらには 造 形 作 家 との 連 携 を 通 して, 具 体 的 な 造 形 領 域 の 実 践 や 教 材 開 発 を 提 示 していくことが 必 要 であるということが 明 ら かとなった( 矢 野,2011) このような 視 点 に 立 ち, 様 々な 造 形 領 域 の 実 践 や 教 材 開 発 を 具 体 的 に 検 討 する 研 究 が 行 われ ている 具 体 的 には, 矢 野 吉 津 (2011)は お ととかたち, 矢 野 松 井 は(2012) 保 育 者 養 成 校 における 木 育 実 践 の 可 能 性 に 配 慮 し た 木 育 による 造 形 ワークショップの 実 践 に 着 目 し, 先 のワークショップを 通 した 学 生 の 学 びを 手 がかりに, 保 育 者 養 成 における 学 びとし ての 保 育 士 の 専 門 性 について 考 察 を 行 って いる 特 に, 矢 野 松 井 (2013)の 保 育 者 養 成 校 における 木 育 実 践 の 可 能 性 Ⅱ において, 学 生 が 木 育 の 実 践 を 通 して, 将 来 の 保 育 者 に 必 要 な 造 形 領 域 の 教 材 研 究 および 実 践 に 役 立 つという 具 体 的 意 識 をもつことができたことを 明 らかとした そこで 様 々な 造 形 領 域 の 実 践 や 教 材 開 発 を 具 体 的 に 検 討 する 一 つとして, 木 育 による 保 育 に 着 目 し, 保 育 者 養 成 における 木 育 実 践 の 可 能 性 について,ワークショップを 中 心 とし た 学 生 の 学 びを 手 がかりに 実 践 とその 考 察 を 113

行 った 木 育 推 進 プロジェクトチーム(2004) によると, 木 育 とは,すべての 人 が 木 とふれ あい, 木 に 学 び, 木 と 生 きる 取 り 組 みであり, 人 と 木 や 森 とのかかわりを 主 体 的 に 考 える 豊 か な 心 を 育 むこと を 目 的 としており, 生 活 やあ そび, 自 然 環 境 などと 関 連 付 けながら, 造 形 領 域 の 実 践 や 教 材 開 発 が 行 われる 必 要 があること を 考 えると, 木 育 による 授 業 実 践 は 保 育 の なかで 効 果 的 に 活 用 することができるのではな いだろうか こうしたことを 踏 まえ, 本 研 究 は 保 育 者 養 成 における 木 育 の 実 践 を 中 心 に,その 専 門 性 を 育 てるために 必 要 なことは 何 かということに ついて 検 討 を 行 う 2. 研 究 の 方 法 平 成 23~24 年 度 の 京 都 女 子 大 学 公 開 講 座 にお ける 木 育 ワークショップの 実 践 は, 以 下 の 通 りである らのお 守 りづくり を 具 体 的 なテーマとして, 平 成 23 年 度 同 様 の 目 的 をもって 実 施 した 日 時 : 平 成 24 年 6 月 30 日,13:00~17:00 場 所 : 京 都 女 子 大 学 B 校 舎 114 教 室 参 加 者 : 幼 児 および 児 童, 保 育 関 係 者, 学 生 計 35 名 実 践 内 容 は, 木 育 について, 講 義 形 式 に よる 京 都 の 現 状 や 文 化 を 通 じて 理 解 し, 参 加 者 が 自 己 紹 介 を 通 してコミュニケーションを 図 っ た( 図 1 ) 参 加 者 は 京 都 で 採 れた 北 山 杉 を 紙 やすりで 磨 きながら, 誰 のための どんな 願 いを 込 めて を 考 えたお 守 りづくりを 行 った また, 面 識 のない 参 加 者 同 士 でペアを 組 み, プレゼンシートをつくり, 学 びを 振 り 返 った 平 成 23 年 度 京 都 女 子 大 学 公 開 講 座 における 木 育 によるワークショップでは, 嗅 覚 を 育 むための 木 育 ペンダントづくり を 具 体 的 な テーマとし, 本 研 究 者 幼 児 保 育 関 係 者 学 生 との 関 わりを 通 じた 保 育 においてつくること の 可 能 性 を 明 らかにするための 実 践 を 行 った 日 時 : 平 成 23 年 7 月 2 日,13:00~17:00 場 所 : 京 都 女 子 大 学 B 校 舎 114 教 室 参 加 者 : 幼 児 および 児 童, 保 育 関 係 者, 学 生 計 34 名 実 践 内 容 は, 木 育 について, 講 義 形 式 に よる 日 本 の 現 状 や 文 化 を 通 じて 理 解 し, 参 加 者 が 自 己 紹 介 を 通 してコミュニケーションを 図 っ た 参 加 者 は 用 意 された 木 材 (クス)を 紙 やすり で 磨 きながら, 誰 のための どんな 願 いを 込 めて 形 と 願 いとの 関 係 を, 具 体 的 な 形 に つくりながらペンダントにした また, 面 識 のない 参 加 者 同 士 でペアを 組 み, プレゼンシートをつくり, 学 びを 振 り 返 った 平 成 24 年 度 京 都 女 子 大 学 公 開 講 座 における 木 育 によるワークショップでは, 森 のかけ 図 1 具 体 的 に 木 について 学 ぶ 学 生 本 研 究 では,これら 木 育 の 実 践 がその 後 の 造 形 領 域 における 授 業 や 実 践,また 教 材 研 究 など, 学 生 にとってどのように 学 び の 深 ま りへとつながっているか,その 有 効 性 について 明 らかにする 具 体 的 には, 平 成 23~24 年 度 の 京 都 女 子 大 学 公 開 講 座 における 木 育 ワークショップに 参 加 した 学 生 17 名 への 質 問 紙 調 査 を 中 心 に, 作 品 制 作 や 教 材 研 究 に 対 する 取 り 組 みについての 聞 き 取 り 調 査 および 行 動 観 察 を 行 う 3. 結 果 と 考 察 3-1. 質 問 紙 調 査 の 結 果 設 問 1 2 木 育 ワークショップの 学 びの 効 果 114

発 達 教 育 学 部 紀 要 質 問 紙 調 査 の 設 問 1 では, 木 育 のワーク ショップで 学 んだことが, 現 在 の 授 業 や 課 外 活 動 などに いますか と 質 問 し, かな り いる/ いる/そんなに 役 立 っていない/ いない の 4 件 法 で 回 答 を 求 めた 回 答 の 分 布 を 表 1 に 示 す 対 象 者 17 名 中 16 名 (94. 1%)が いると 回 答 し ており,ワークショップは 一 定 の 効 果 があった と 思 われる なお, そんなに いない と 回 答 した 1 名 について,その 理 由 として 普 段 の 授 業 や 生 活 の 中 で 木 を 扱 う 機 会 が 少 ないか ら,ワークショップで 学 んだことを 活 かせる 機 会 がない と 述 べており, 授 業 の 内 容 を 実 際 の 場 面 で 活 用 することの 難 しさを 感 じているこ とがうかがわれる 表 1 木 育 ワークショップの 学 びの 効 果 ( 設 問 1 )に おける 回 答 の 分 布 以 下 の 通 り( 括 弧 内 (%)) かなり いる 人 数 2 (%) (11. 8) いる 14 (82. 4) そんなに いない 1 (5. 9) いない 0 (0. 0) 設 問 2 では, 設 問 1 で 質 問 した 学 びの 効 果 に ついて, それはどのような 点 から 思 いますか と 質 問 し, 自 由 記 述 により 回 答 を 求 めた ところで, 近 年, 授 業 の 目 標 および 評 価 にお いては, 観 点 として 知 識 理 解 ( 認 知 的 側 面 ) 意 欲 関 心 ( 動 機 付 けの 側 面 ), 感 性 表 現 ( 情 操 的 側 面 ), 将 来 の 進 路 への 応 用 (キャリ アデザイン) が 取 り 上 げられることが 多 い ここでは,それに 依 拠 し, 以 下 のカテゴリーを 設 定 し,それに 含 まれる 記 述 を 抽 出 した( 括 弧 内 は 各 カテゴリーに 該 当 する 記 述 が 見 られたも のの 人 数 および 割 合 (%)) A) 知 識 理 解 :ワークショップを 通 して 得 た 知 識 に 関 する 記 述 ( 4 名 (23. 5%)) B) 関 心 意 欲 :ワークショップを 通 した 興 味 や 関 心, 楽 しさを 感 じたことなど( 8 名 (47. 1%)) C) 感 性 表 現 : 木 育 のワークショップを 通 し て 意 識 が 変 わったこと, 感 性 や 表 現 について の 気 づきなど( 6 名 (35. 5%)) D) 保 育 子 どもへの 応 用 : 木 育 のワーク ショップを 通 して, 保 育 者 の 役 割 や 子 どもへ の 活 用 について 考 えたこと( 7 名 (41. 2%)) 以 下 では, 各 カテゴリーの 記 述 内 容 について, 代 表 的 なものを 示 し,その 傾 向 について 述 べる A) 知 識 理 解 1 木 育 という 言 葉 を 知 ったことで 木 に 反 応 するようになった 2 木 や 木 材 についての 基 本 的 な 知 識 が,とて も います 3 日 常 生 活 で 身 近 なところにある 木 がどのよ うに 形 を 変 えるのかを 学 べる 点 4 木 によって 重 さが 違 ったり, 木 同 士 で 音 が 出 たり 様 々な 方 法 でモノの 感 じ 方 ができ ることを 知 りました 5 木 の 性 質 や 使 い 方 を 学 ぶことが 出 来 た 知 識 理 解 の 側 面 に 関 しては, 木 育 という 言 葉 を 知 ったこと(1), 形 や 音 といった 木 の 性 質 についての 知 識 が 深 まったことを 示 す 記 述 が 見 られている(2~5) B) 関 心 意 欲 1 木 が 日 本 の 文 化 に 根 づいている,という 事 で 木 に 対 する 親 しみを 私 自 身 が 持 つことが 出 来 た 事 2 木 育 を 通 して 実 際 に 木 について 学 び 触 れる ことで 木 に 対 して 興 味 をもつことができた 3どのようなにおいがするのかとにおってみ たり, 木 の 名 前 は 何 かと 疑 問 に 思 い 木 に 書 いているプレートに 目 を 配 ったりと 木 につ いての 興 味, 関 心 の 深 まりに 繋 がったこと 4どんな 木 を 使 っているのか 等, 興 味 を 持 っ たり, 机 や 椅 子 の 木 の 種 類 に 興 味 を 持 つ 様 になった 5また これは 何 の 木 で 出 来 ているのか? というふうに, 木 への 関 心 が 強 まりました 木 に 対 する 親 しみや 興 味 が 増 したことを 示 す 記 述 (1,2), 木 の 性 質 や 種 類 といった 具 体 115

的 な 興 味 に 関 する 記 述 が 見 られている(3~ 5 ) C) 感 性 表 現 1 他 の 素 材 でもそれをするようになりました し, 自 然 に 対 する 感 じ 方 も 変 わったように 思 います 2 道 を 歩 いていても 木 を 見 る 目 が 変 わったり, 世 界 が 豊 かになった! 3 身 近 にある 木 を 使 った 製 品 を 気 にするよう になったり, 街 路 樹 をみても 何 の 木 なのか 気 にするようになった 4 木 の 種 類 について 考 えるようになったり, 手 で 重 さを 感 じたり 匂 いをかいでみたり, 様 々な 観 点 から 木 に 触 れることが 出 来 るよ うになった 5 木 製 品 や 木 に 触 れる 機 会 があると,つい 触 り 心 地 を 確 かめたりにおいを 確 かめるよう になりました 日 常 生 活 において, 自 然 (1,2)や 生 活 で 触 れるモノ(3)の 見 方 が 変 わったことを 示 す 記 述, 木 を 触 ったりにおいをかぐという 木 に 対 する 感 性 の 高 まり(3~5)といった, 感 性 の 成 長 を 示 す 記 述 が 見 られている D) 保 育 子 どもへの 応 用 1 自 然 の 素 材 の 手 触 りや 香 りに, 子 どもたち が 興 味 をひかれると 知 り, 保 育 計 画 の 幅 が 広 がった 2 将 来 自 分 が 保 育 士 になったときに, 子 ども たちに 木 について 学 びながら,お 守 り 等, ちょっとしたものを 作 ってみたいと 思 って いる 3 身 近 な 物 ではあるが, 保 育 における 制 作 の 場 面 では 使 う 機 会 が 少 ないのではと 思 う そして, 珍 しい 素 材 のように 私 は 感 じる それは, 子 どもも 同 じようで, 紙 や 廃 材 を 使 う(ペットボトルなど 身 近 で,よく 使 う もの) 制 作 活 動 と 比 べて, 好 奇 心 旺 盛 な 様 子 が 見 られた そのような 子 どもの 様 子 を 見 ることができ, 子 どもの 声 を 聞 け,とて も 勉 強 になった 4 外 活 動 において, 実 際 に 子 どもたちに 体 験 してもらうのに,どのようにすれば 興 味 を もつことができるかなど 様 々な 工 夫 の 方 法 が 学 べた 点 5 自 然 に 目 を 向 けるきっかけにもなり 子 ども が 不 思 議 に 思 うだろうという 子 ども 目 線 で 物 事 を 考 えるようになったこと 6 子 どもたちに 図 工 として 木 に 触 れてもらう のは 準 備 や 子 どもの 作 業 が 難 しいと 思 う 特 別 な 時 間 を 設 けたり, 時 間 を 何 日 間 に 分 けるなどしてゆとりを 持 ってとる 必 要 があ ると 思 うが, 今 後 保 育 現 場 に 立 って 木 育 を 行 っていきたいと 思 う 保 育 への 活 用 として, 教 材 のアイデアを 得 る ことが 出 来 たこと(1,2), 保 育 における 木 育 の 意 味 を 考 えたこと(3)を 示 す 記 述 が 見 ら れている また,ワークショップを 通 して 子 ど もの 視 点 について 考 える 事 が 出 来 たことをうか がわせる 記 述 も 見 られている(4.5) さら には, 実 際 に 保 育 に 導 入 する 際 の 難 しさを 感 じ たことを 示 す 記 述 も 見 られている(6) 設 問 3 木 育 の 保 育 現 場 への 応 用 設 問 3 では, 木 育 の 保 育 現 場 への 応 用 につい ての 意 見 を 問 うため, 木 育 は, 保 育 現 場 で どのような 可 能 性 があると 思 いますか と 質 問 し, 自 由 記 述 により 回 答 を 求 めた 分 析 におい ては, 設 問 2 と 同 様 に, 認 知 的 側 面, 動 機 付 け の 側 面, 情 操 的 側 面 から 以 下 のカテゴリーを 設 定 し,それに 含 まれる 記 述 を 抽 出 した A) 知 識 理 解 : 子 どもの 知 識 に 対 する 効 果 に 関 する 記 述 ( 7 名 (41. 2%)) B) 関 心 意 欲 : 子 どもが 興 味 や 関 心 をもつこ とや, 楽 しさを 感 じることなどに 関 する 記 述 ( 9 名 (52. 9%)) C) 感 性 表 現 : 子 どもの 五 感 や 感 性 や 表 現 に 対 する 効 果 に 関 する 記 述 (15 名 (88. 2%)) 以 下, 各 カテゴリーの 記 述 内 容 について, 代 116

発 達 教 育 学 部 紀 要 表 的 なものを 示 し,その 傾 向 について 述 べる A) 知 識 理 解 1 木 に 関 する 知 識 をつけることができる 2 保 育 者 が, 木 の 種 類 ごとによって 特 徴 があ ることを 子 どもが 気 づけるように 働 きかけ たり 3 木 育 を 通 して 道 具 の 使 い 方 を 覚 えることが でき 4 自 然 の 大 切 さを 学 ぶことが 出 来 る 5 木 の 大 切 さを 知 り, 環 境 問 題 ( 紙 のムダづ かいについてなど)について 考 える 機 会 を 設 けることができる 6 木 のおもちゃ, 身 近 にある 木 で 出 来 たもの を 通 して, 日 本 の 文 化 や, 自 然 の 素 材 のも つ 良 さを 知 ってもらえると 思 います 木 に 関 する 知 識 (1,2),さらには 活 動 を 通 した 道 具 の 使 い 方 (3), 自 然 (4), 環 境 (5), 文 化 (6)に 対 する 知 識 の 獲 得 ができると 考 え ていることを 示 す 記 述 が 見 られている じる 事 により, 子 ども 達 の 感 覚 が 刺 激 され ると 思 う そのことにより, 子 ども 達 の 感 性 を 豊 かに 育 てられると 思 う 3 五 感 で 感 じることで, 身 近 な 環 境 に 対 して の 気 づきや 感 覚 が 生 まれるような 事 が 続 け る 事 で 生 まれるかと 思 います 4 木 という 天 然 の 素 材 にふれることで 木 のぬ くもりを 知 ることができる 5 木 のおもちゃのにおいや, 手 触 りを 大 きく なっても 子 どもたちは 憶 えていると 思 う 6においや 手 ざわりのちがい, 重 さの 違 いな ど,プラスチックのおもちゃとちがって, 同 じ 大 きさでも 木 の 種 類 によって, 様 々に 楽 しむことができるなど 7 経 験 をしながら 感 じたことを 言 葉 に 表 した り 人 に 伝 えたりすることで 表 現 する 力 8 皆 で 同 じ 木 から 生 まれたお 守 りを 持 つこと で, 自 分 たちが 繋 がっていると 感 じること も 出 来 る 9 幼 少 期 から 自 然 にたくさん 触 れることで 心 が 豊 かに 育 っていくと 思 う B) 関 心 意 欲 1 日 常 にありふれている 木 について 子 ども 達 が 興 味 を 持 つきっかけになると 思 う 2 木 という 身 近 な 素 材 について, 子 どもが 興 味 を 持 つことができ 3 自 分 で 物 を 作 る 楽 しさに 気 付 けるように 思 う 4 園 内 の 自 然 はもちろん,その 地 域 や 家 の 周 りなどの 身 近 な 自 然 に 興 味 をもつ 木 に 関 する 興 味 (1,2),さらにはつくる という 活 動 の 楽 しさ(3), 自 然 や 環 境 (5) に 対 する 興 味 が 高 まると 考 えていることを 示 す 記 述 が 見 られている C) 感 性 表 現 1 紙 やすりで 木 を 磨 く 音 に 反 応 していたり, 磨 くことによって 変 化 する 木 の 色 にも 子 ど もたちは 驚 いていた 2 子 ども 達 が 木 の 肌 触 りやにおい, 色 等 を 感 木 育 の 活 動 が 子 どもの 感 性 に 訴 えかけ(1), 五 感 を 刺 激 すること(2,3)を 示 す 記 述 が 見 られている また, 木 の 温 もりや 手 触 り,にお いなどの 感 覚 に 働 きかける(4~6)と 考 えて いることを 示 す 記 述 が 見 られる さらには 子 ど もの 表 現 力 を 伸 ばすこと(7), 情 操 を 豊 かに する 効 果 があると 考 えていること(8,9)を 示 す 記 述 が 見 られる 以 上, 質 問 紙 調 査 の 結 果 を 総 合 すると, 学 生 の 多 くは 本 研 究 で 取 り 上 げた 木 育 のワーク ショップを 有 効 なものであると 捉 えていた( 問 1 ) 問 2 より, 特 に, 木 そのものについての 知 識 を 獲 得 する 以 上 に, 木 に 対 する 興 味, 感 性 や 表 現 についての 気 づきに 関 する 記 述 が 多 く 見 られており, 本 ワークショップが 素 材 としての 木 に 対 する 学 生 の 動 機 づけを 向 上 させたことが うかがえる また, 保 育 者 志 望 の 学 生 を 対 象 に していることから, 木 育 のワークショップを 通 した 感 想 として, 保 育 教 材 のアイデアや 子 ども 117

への 活 用 など, 自 分 が 保 育 現 場 でどのように 木 育 を 活 用 するのか,という 点 について 考 察 がな されていた 木 育 の 保 育 現 場 での 可 能 性 について 質 問 した 問 3 においては, 子 どもの 感 性 や 表 現 力 を 伸 ば すことを 指 摘 する 意 見 が 多 く 見 られた これは, 多 くの 学 生 が 木 育 を 知 的 側 面 よりも 子 どもの 情 操 的 側 面 に 対 して 効 果 を 持 つものとしてとらえ ていたことを 示 していると 考 えられる また, 聞 き 取 り 調 査 および 行 動 観 察 からは, 木 育 の 実 践 後 の 学 生 が 制 作 する 作 品 や, 造 形 ワークショップなどの 教 材 研 究 に 対 する 取 り 組 み 姿 勢 において, 具 体 的 変 化 が 見 られるよう になった 3-2. 作 品 にみる 学 生 の 学 び の 深 まり 以 下 は, 特 に 変 化 の 見 られた 2 名 の 学 生 につ いて, 研 究 作 品 を 具 体 例 として 取 り 上 げる 作 品 事 例 A 木 育 実 践 前 の 学 生 Aは, 木 材 を 使 った 手 先 を 動 かす 手 づくりおもちゃ をテーマとし て, 完 成 する 作 品 のクオリティや 動 きの 面 白 さ などに 着 目 して 研 究 を 行 っていたため, 素 材 の 持 つ 効 果 や 地 域 との 関 わりなどは 考 慮 していな かった 実 践 後, 学 生 Aは 自 分 が 住 む 門 真 市 に ある 天 然 記 念 物 の 楠 の 大 木 を 取 り 上 げ,この 楠 の 大 木 を 使 って 子 どもたちと 地 域 を 理 解 してい く 教 材 研 究 へと 変 化 していった 楠 の 強 い 香 り や, 葉 枝 板 材 などの 手 触 りなど,あそびを 通 して 視 覚 触 覚 嗅 覚 聴 覚 を 中 心 とした 五 感 を 育 むことを 目 的 とした 作 品 に 変 化 していっ た ピースごとに 紙 やすりの 番 数 を 変 えること により, 子 どもたちが 手 触 りによる 違 いを 発 見 するなどの 工 夫 が 見 られる 作 品 となった( 図 2 ) 作 品 事 例 B 木 育 実 践 前 の 学 生 Bは, 子 どもの 感 性 に 働 きかける 保 育 室 の 装 飾 をテーマとしてお り, 季 節 感 や 視 覚 的 な 効 果 のみに 着 目 し 研 究 を 行 っていた しかし, 木 育 が 自 然 環 境 を 重 視 することや, 地 産 地 消 がコンセプトにあるこ 図 2 にこにこボックス ( 材 質 : 楠 ) とを 学 び, 学 生 B 自 身 が 住 む 京 都 を 取 り 上 げ, 京 都 で 採 れる 杉 材 の 利 用 へと 変 化 していった 自 然 の 大 切 さを 子 どもたちと 共 有 することや, 板 材 スリット( 板 目 材 に 切 れ 目 隙 間 をあけ, 木 口 が 多 く 露 出 するように 加 工 )による 空 気 清 浄 作 用 など, 園 内 の 環 境 を 考 え, 取 り 付 けパー ツ( 季 節 ごと)で 子 どもたちが 壁 面 構 成 に 参 加 できる 作 品 として 仕 上 げた 地 域 や 自 然, 環 境 について 配 慮 された 作 品 となった( 図 3 ) 図 3 なかよし ( 材 質 : 杉 ) どちらの 学 生 も, 実 践 前 は 単 なる 興 味 から 作 品 を 考 えていたが, 実 践 後 は 具 体 的 な 作 品 に 対 する 意 識 が 高 まり, 保 育 者 養 成 における 研 究 作 品 としては, 作 品 のコンセプトや 技 能, 工 夫 す る 知 恵 が 高 いレベルまで 達 したことが 伺 える また, 実 際 の 保 育 者 となったときに 木 育 を 活 かしていこうと 考 えるなど, 教 材 研 究 の 上 でも 前 向 きな 姿 勢 がみられるようになった このように 木 育 の 実 践 が, 自 然 や 人 との ふれあい 関 わり 方, 材 料 の 捉 え 方, 作 品 を 通 118

発 達 教 育 学 部 紀 要 した 感 覚 の 大 切 さ, 表 現 力 の 大 切 さなど, 造 形 領 域 に 関 わる 実 践 的 教 材 として 有 効 であること が 導 出 された またこの 実 践 は, 広 く 他 の 表 現 領 域 につながる 学 び に 深 まることが 期 待 さ れるため, 引 き 続 き 実 践 事 例 を 積 み 重 ねていく ことにより, 実 践 的 教 材 としての 可 能 性 を 明 ら かにすることを 今 後 の 課 題 としたい 付 記 本 研 究 は, 平 成 24~26 年 度 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤 (C) 研 究 課 題 ( 課 題 番 号 :24531033) 保 育 者 養 成 に 関 わる 造 形 領 域 における 実 践 的 教 材 の 研 究 ( 研 究 代 表 者, 矢 野 真 )の 補 助 を 受 け て 行 われたものである 参 考 文 献 矢 野 真 (2007), 子 どもに 対 する 造 形 支 援 向 上 の ための 直 取 り 技 法 研 究 Ⅰ 自 然 の 石 を 型 に 用 いた 教 材 研 究 を 中 心 として, 美 術 教 育 研 究 No. 12:1-13 厚 生 労 働 省 編 (2008) 保 育 所 保 育 指 針 解 説 書, フレーベル 館,(pp. 19-20,pp. 199-213) 矢 野 真, 田 爪 宏 二, 高 垣 マユミ(2008), 造 形 ワー クショップを 通 した 大 学 と 行 政, 地 域 の 連 携 による 子 育 て 支 援 に 関 する 実 践 的 研 究, 鎌 倉 女 子 大 学 学 術 研 究 所 報 Vol. 8:45-56 矢 野 真, 吉 津 晶 子, 田 爪 宏 二 (2009), 教 材 開 発 を 通 した 表 現 教 育 のあり 方 に 関 する 実 践 研 究, 全 国 保 育 士 養 成 協 議 会 第 48 回 研 究 大 会 研 究 発 表 論 文 集 :192 矢 野 真 (2011), 教 材 開 発 を 通 した 子 どもの 創 造 性 を 育 てる 表 現 教 育 のあり 方 に 関 する 研 究, 大 学 造 形 美 術 教 育 研 究 第 9 :20-25 矢 野 真, 吉 津 晶 子 (2011), 造 形 と 音 楽 を 中 心 と した 表 現 領 域 の 再 考 に 関 する 実 践 研 究 お ととかたち ワークショップを 通 した 学 生 の 学 びを 手 がかりに, 日 本 保 育 学 会 第 64 回 大 会 発 表 要 旨 集 :289 矢 野 真, 松 井 勅 尚 (2012), 保 育 者 養 成 校 におけ る 木 育 実 践 の 可 能 性 ~ワークショップに よる 学 生 の 学 びを 手 がかりに, 日 本 保 育 学 会 第 65 回 大 会 発 表 要 旨 集 :629 矢 野 真, 松 井 勅 尚 (2013) 保 育 者 養 成 校 における 木 育 実 践 の 可 能 性 Ⅱ~ 学 生 の 学 び か ら 見 る 表 現 領 域 に 関 わる 実 践 的 教 材 として, 日 本 保 育 学 会 第 66 回 大 会 発 表 要 旨 集 :746 文 部 科 学 省 (2008) 幼 稚 園 教 育 要 領 119