外交・防衛の政策課題



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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

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Transcription:

外 交 防 衛 の 政 策 課 題 2015 年 の 情 勢 と 2016 年 の 展 望 外 交 防 衛 委 員 会 調 査 室 神 田 茂 中 内 康 夫 1.はじめに 2015 年 11 月 日 中 韓 サミットが3 年 半 ぶりに 開 かれ 同 月 半 ば 以 降 金 融 世 界 経 済 に 関 する 首 脳 会 合 (G20 サミット) アジア 太 平 洋 経 済 協 力 (APEC) 首 脳 会 議 東 ア ジアサミット 等 が 開 催 され 併 せて 日 米 首 脳 会 談 を 始 めとする 二 国 間 による 首 脳 会 談 等 が 行 われた これらの 機 会 を 通 じ 日 中 韓 関 係 環 太 平 洋 パートナーシップ(TPP) 協 定 の 大 筋 合 意 と 今 後 の 取 組 南 シナ 海 及 び 東 シナ 海 をめぐる 問 題 パリの 同 時 多 発 テロ 事 件 の 発 生 と 犯 行 声 明 を 発 したイスラム 過 激 派 組 織 ISIL に 対 する 国 際 社 会 の 取 組 等 に ついて 意 見 が 交 わされたが これらの 課 題 はG7 伊 勢 志 摩 サミットの 開 かれる 2016 年 に 引 き 継 がれていく 1 一 方 防 衛 政 策 においては 2015 年 9 月 に 成 立 した 平 和 安 全 法 制 関 連 法 案 及 び 日 米 新 ガイドラインの 下 での 防 衛 協 力 の 具 体 化 普 天 間 飛 行 場 の 移 設 を 始 めとする 在 日 米 軍 基 地 問 題 への 対 応 が 課 題 となる 本 稿 は 2016 年 の 国 際 情 勢 を 展 望 し これらの 課 題 について 論 ずることとしたい 2. 日 中 日 韓 関 係 2015 年 11 月 1 日 日 中 韓 サミットが3 年 半 ぶりにソウルで 行 われた 発 出 された 共 同 宣 言 は 3か 国 協 力 の 完 全 な 回 復 歴 史 を 直 視 し 未 来 に 向 かう 精 神 の 下 での 関 連 する 諸 課 題 への 対 処 二 国 間 関 係 の 改 善 による3か 国 協 力 の 強 化 を 訴 えた また 同 日 には 日 中 首 脳 会 談 が 安 倍 総 理 と 李 克 強 首 相 2 との 間 で 行 われ 日 中 外 相 会 談 も 行 われた 日 中 両 国 間 で は 更 なる 関 係 改 善 が 確 認 され ハイレベル 経 済 対 話 の 2016 年 早 期 の 再 開 防 衛 当 局 間 の 海 空 連 絡 メカニズムの 早 期 運 用 開 始 に 向 けた 努 力 等 で 一 致 した 一 方 翌 2 日 には 安 倍 総 理 と 朴 槿 恵 大 統 領 との 間 で 両 首 脳 就 任 後 初 の 日 韓 首 脳 会 談 が 実 現 した 日 韓 両 国 間 の 懸 案 である 慰 安 婦 問 題 への 対 応 については 協 議 を 継 続 し 2015 年 が 日 韓 国 交 正 常 化 50 周 年 という 節 目 の 年 であることを 念 頭 に 早 期 妥 結 のための 協 議 を 加 速 化 することで 合 意 した 安 倍 総 理 は 国 会 において 日 中 韓 サミットの 通 常 のプロセスへの 回 帰 を 歓 迎 し 三 国 の 首 脳 が 地 域 の 平 和 と 安 定 に 対 する 責 任 を 共 有 できたと 強 調 した 3 その 上 で 日 韓 両 国 間 に は 困 難 な 課 題 もあるが 朴 大 統 領 との 率 直 な 議 論 を 通 じ 経 済 朝 鮮 半 島 の 問 題 等 におけ 1 我 が 国 及 び 国 際 社 会 の 平 和 及 び 安 全 の 確 保 に 資 するための 自 衛 隊 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 案 及 び 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 に 際 して 我 が 国 が 実 施 する 諸 外 国 の 軍 隊 等 に 対 する 協 力 支 援 活 動 等 に 関 する 法 律 案 の 2 法 案 から 成 る 詳 細 は 本 稿 表 2(39 頁 )を 参 照 されたい 2 中 国 は 従 来 日 中 韓 サミットに 首 相 が 出 席 しており 首 脳 会 談 は 安 倍 総 理 と 李 克 強 首 相 との 間 で 行 われた 3 第 189 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 6~7 頁 ( 平 27.11.11) 32 立 法 と 調 査 2016.1 No. 373( 参 議 院 事 務 局 企 画 調 整 室 編 集 発 行 )

る 協 力 が 両 国 の 国 益 にかなうとの 認 識 を 基 本 的 に 共 有 できたと 述 べ 対 中 関 係 では 特 に 経 済 における 協 力 が 様 々な 可 能 性 を 引 き 出 す 点 で 一 致 したとの 認 識 を 示 した 4 日 中 関 係 の 動 きでは 11 月 22 日 にマレーシアで 開 かれた 東 アジア 首 脳 会 議 に 先 立 ち 安 倍 総 理 が 李 克 強 首 相 との 間 で 日 中 韓 サミットを 踏 まえ 日 中 関 係 や 日 中 韓 3か 国 関 係 の 改 善 を 進 めていくことで 一 致 した 5 また 11 月 30 日 に 第 21 回 国 連 気 候 変 動 枠 組 条 約 締 約 国 会 議 (COP21) 首 脳 会 議 がパリで 開 かれた 際 習 近 平 国 家 主 席 と 接 触 する 機 会 を 得 た 安 倍 総 理 は 日 中 関 係 を 戦 略 的 互 恵 関 係 に 基 づいて 進 めることで 李 克 強 首 相 と 一 致 したと 述 べ これに 対 して 習 近 平 国 家 主 席 は 日 中 関 係 の 方 向 は 発 展 しており お 互 いのセンシテ ィブな 問 題 について 正 しく 対 応 し 関 係 を 大 事 にしていきたいと 応 じたと 伝 えられている 6 一 方 日 韓 首 脳 会 談 における 合 意 を 受 け 11 月 11 日 (ソウル) 及 び 12 月 15 日 ( 東 京 ) に 外 務 省 局 長 級 協 議 が 開 かれ 慰 安 婦 問 題 等 についてお 互 いの 立 場 の 中 で 接 点 を 探 る 努 力 が 払 われたものの 具 体 的 な 進 展 は 見 られなかった 7 3. 南 シナ 海 東 シナ 海 問 題 と 海 洋 における 法 の 支 配 中 国 は 2014 年 以 降 南 シナ 海 の 南 沙 諸 島 において 急 速 かつ 大 規 模 な 埋 立 てや 施 設 建 設 を 進 めるなど 実 効 支 配 の 動 きを 強 めている これに 対 し 世 界 の 海 における 航 行 の 自 由 を 国 益 とする 米 国 や 海 における 法 の 支 配 を 重 視 する 日 本 南 シナ 海 沿 岸 の 東 南 アジア 諸 国 等 は 中 国 を 強 く 非 難 している 2015 年 9 月 25 日 に 行 われた 米 中 首 脳 会 談 において オバマ 大 統 領 は 南 シナ 海 の 係 争 地 域 の 軍 事 化 に 重 大 な 懸 念 を 伝 え 習 近 平 国 家 主 席 は 軍 事 化 の 意 図 はないと 反 論 した しか し 10 月 14 日 中 国 外 交 部 報 道 官 が 埋 立 地 に 軍 事 施 設 を 置 いていると 発 言 し その 後 の 同 月 26 日 米 海 軍 のミサイル 駆 逐 艦 が 南 シナ 海 で 中 国 の 造 成 した 人 工 島 から 12 海 里 の 境 界 内 に 派 遣 され 航 行 した( 航 行 の 自 由 作 戦 ) 翌 日 カーター 国 防 長 官 は 米 海 軍 の 作 戦 が 今 後 数 週 間 数 か 月 間 行 われるとの 意 向 を 示 した 11 月 18 日 アジア 太 平 洋 経 済 協 力 (APEC) 首 脳 会 議 がマニラで 始 まり 翌 19 日 に 行 われた 日 米 首 脳 会 談 において 安 倍 総 理 は 南 シナ 海 における 米 軍 の 航 行 の 自 由 作 戦 を 支 持 する 旨 を 述 べ 南 シナ 海 における 自 衛 隊 の 活 動 については 情 勢 が 日 本 の 安 全 保 障 に 与 える 影 響 を 注 視 しつつ 検 討 を 行 う との 従 来 の 立 場 を 説 明 した 8 これに 対 し オバマ 大 統 領 からは 航 行 の 自 由 作 戦 を 日 常 の 行 動 として 実 施 していく 旨 が 述 べられた 南 シナ 海 における 自 衛 隊 の 活 動 について 菅 官 房 長 官 は 翌 20 日 情 勢 が 日 本 の 安 全 保 障 に 与 える 影 響 を 注 視 しながら 十 分 に 検 討 を 行 いたいと 述 べる 一 方 現 時 点 では 自 衛 隊 は 南 シナ 海 で 継 続 的 な 警 戒 監 視 はしておらず 具 体 的 な 計 画 はないと 述 べ これに 関 連 し 岸 田 外 4 第 189 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 7 頁 ( 平 27.11.11) 5 読 売 新 聞 ( 平 27.11.23) 産 経 新 聞 ( 平 27.11.23) 6 朝 日 新 聞 ( 平 27.12.1) 日 本 経 済 新 聞 ( 平 27.12.1) 7 毎 日 新 聞 ( 平 27.11.12) 朝 日 新 聞 ( 平 27.11.19) 読 売 新 聞 ( 平 27.12.16) 8 この 発 言 については 南 シナ 海 への 自 衛 隊 派 遣 の 検 討 に 踏 み 込 んだもの 今 後 の 活 動 に 含 みを 持 たせたものと 受 け 取 られかねないものとの 報 道 もなされた( 日 本 経 済 新 聞 ( 平 27.11.20) 朝 日 新 聞 ( 平 27.11.20)) 33

務 大 臣 も 米 国 の 航 行 の 自 由 作 戦 に 参 加 する 具 体 的 な 計 画 はないと 説 明 した 9 APEC 首 脳 会 議 においては 中 国 が 関 係 国 に 積 極 的 に 働 きかけたことなどにより 南 シナ 海 の 問 題 は 首 脳 宣 言 に 言 及 されなかったが 米 国 は 個 別 の 首 脳 会 談 等 においてフィリ ピン 等 の 海 洋 安 全 保 障 への 支 援 を 表 明 し 中 国 へのけん 制 を 続 けた その 後 11 月 21 日 から 22 日 にかけてマレーシアで 行 われたASEAN 関 連 の 首 脳 会 議 及 び 東 アジア 首 脳 会 議 では 海 洋 における 航 行 及 び 上 空 飛 行 の 自 由 の 観 点 から 中 国 による 人 工 島 造 成 を 批 判 す る 日 米 両 国 に 加 え これまで 中 国 に 配 慮 して 中 立 的 な 立 場 をとってきたASEANの 国 か らも 南 シナ 海 問 題 をめぐる 発 言 がなされたと 報 じられている 10 これに 対 し 中 国 の 李 克 強 首 相 は 南 シナ 海 で 航 行 飛 行 の 自 由 の 問 題 は 存 在 しないとの 従 来 の 主 張 を 繰 り 返 し 人 工 島 の 施 設 建 設 は 航 行 の 自 由 を 守 るのに 役 立 ち 海 上 災 害 に 対 応 するものだなどと 反 論 し 南 シナ 海 問 題 で 域 外 国 は 情 勢 を 緊 張 させる 行 動 をとらないよう 求 めたと 伝 えられる 11 同 月 21 日 米 太 平 洋 軍 のハリス 司 令 官 は 人 工 島 12 海 里 内 における 米 艦 船 による 巡 視 活 動 を 再 び 実 施 すると 明 言 している 12 一 方 2015 年 7 月 には 東 シナ 海 の 日 中 間 でいまだ 境 界 が 画 定 していない 海 域 において 中 国 が 一 方 的 に 資 源 開 発 を 進 めている 現 状 が 我 が 国 の 外 務 省 により 明 らかにされた 同 海 域 については 2008 年 6 月 に 資 源 開 発 に 関 する 協 力 について 日 中 間 で 合 意 13 がなされてい るが この 合 意 後 も 油 ガス 田 開 発 のための 海 洋 プラットホームが 新 たに 建 設 され 2015 年 9 月 24 日 時 点 で 16 基 の 設 置 が 確 認 されている その 中 にはヘリポート 等 を 備 えているも のも 見 受 けられ 今 後 の 軍 事 利 用 の 可 能 性 を 指 摘 する 向 きもある 14 なお 日 中 両 国 政 府 は 12 月 7 日 から8 日 にかけ 高 級 事 務 レベル 海 洋 協 議 を 開 き 偶 発 的 な 衝 突 防 止 に 向 け 防 衛 当 局 間 で 連 絡 を 取 り 合 う 海 空 連 絡 メカニズム の 早 期 運 用 開 始 に 向 けた 協 議 の 継 続 で 一 致 したほか 東 シナ 海 の 油 ガス 田 開 発 問 題 について 協 議 した 15 4. 環 太 平 洋 パートナーシップ(TPP) 協 定 (1)2015 年 10 月 5 日 の 大 筋 合 意 とその 概 要 世 界 のGDPの 約 4 割 人 口 の1 割 強 を 占 める 経 済 圏 の 形 成 につながる 環 太 平 洋 パート ナーシップ(TPP) 協 定 は 2015 年 9 月 28 日 からアトランタで 開 かれた 閣 僚 会 合 の 結 果 10 月 5 日 5 年 に 及 んだ 交 渉 は 大 筋 合 意 に 至 った TPP 協 定 の 主 な 特 徴 の 一 つは 物 品 貿 易 に 加 え 原 則 全 てのサービス 投 資 分 野 を 自 由 化 の 対 象 とし 既 存 の 経 済 連 携 協 定 (EPA)と 比 較 し 高 水 準 の 市 場 アクセスを 目 指 し ていることである 物 品 貿 易 ( 品 目 数 ベース)での 関 税 撤 廃 率 は 日 本 以 外 の 11 か 国 平 均 9 日 本 経 済 新 聞 夕 刊 ( 平 27.11.20) 日 本 経 済 新 聞 ( 平 27.11.21) 10 読 売 新 聞 ( 平 27.11.23) 11 同 上 12 カナダにおける 講 演 における 発 言 ( 読 売 新 聞 ( 平 27.11.23)) 13 日 中 双 方 は 日 中 間 で 境 界 がいまだ 確 定 されていない 東 シナ 海 を 平 和 協 力 友 好 の 海 とするため 境 界 画 定 が 実 現 するまでの 過 渡 期 において 双 方 の 法 的 立 場 を 損 なうことなく 協 力 することで 一 致 し 共 同 開 発 等 が 約 束 されている( 東 シナ 海 における 日 中 間 の 協 力 について ( 日 中 共 同 プレス 発 表 )(2008.6.18)) 14 読 売 新 聞 ( 平 27.7.23) 15 日 本 経 済 新 聞 ( 平 27.12.9) 34

では 農 林 水 産 品 は 98.5% 工 業 製 品 は 99.9%であるが 日 本 については 農 林 水 産 品 が 81% と 相 対 的 に 低 い 一 方 工 業 製 品 は 100%であり 産 品 全 体 では 95%となっている 16 また TPP 協 定 は 税 関 手 続 知 的 財 産 電 子 商 取 引 国 有 企 業 等 の 各 章 に 見 られる とおり WTO 協 定 や 既 存 のEPAと 比 べて 高 水 準 で 包 括 的 なルールを 規 定 し サプライ チェーンのグローバル 化 17 に 資 するとされている さらに 多 様 な 発 展 段 階 にある 加 盟 国 や 中 小 企 業 による 協 定 の 利 用 を 支 援 する 規 定 が 盛 り 込 まれている なお 協 定 の 各 所 には その 内 容 を 定 期 的 に 見 直 すための 規 定 が 設 けられており 生 きている 協 定 と 称 される 18 交 渉 は 21 分 野 で 行 われ 30 章 にまとめられたが 主 な 内 容 は 表 1のとおりである 1. 冒 頭 の 規 定 及 び 一 般 的 定 義 用 語 の 定 義 6. 貿 易 救 済 表 1 TPP 協 定 の 章 立 てと 主 な 内 容 2. 内 国 民 待 遇 及 び 物 品 の 市 場 アクセス 関 税 撤 廃 削 減 の 方 法 等 内 国 民 待 遇 など 物 品 貿 易 の 基 本 ルール 7. 衛 生 植 物 検 疫 (SPS) 措 置 物 品 の 輸 入 急 増 による 国 内 産 業 の 被 害 等 に 対 し 一 時 的 にと 食 品 安 全 の 確 保 動 植 物 の ることのできるセーフガード 措 置 病 気 防 止 措 置 の 実 施 ルール 等 11. 金 融 サービス 金 融 分 野 の 国 境 を 越 えるサービ ス 提 供 に 特 有 の 定 義 とルール 16. 競 争 政 策 競 争 法 ( 独 禁 法 )の 整 備 等 21. 協 力 及 び 能 力 開 発 協 定 履 行 の 国 内 体 制 整 備 のた めの 技 術 人 材 育 成 支 援 26. 透 明 性 及 び 腐 敗 行 為 の 防 止 12.ビジネス 関 係 者 の 一 時 的 な 入 国 ビジネス 関 係 者 の 一 時 的 な 入 国 許 可 要 件 手 続 等 ルール と 各 締 約 国 の 約 束 17. 国 有 企 業 及 び 指 定 独 占 企 業 国 有 企 業 と 民 間 企 業 の 競 争 条 件 の 平 等 確 保 に 必 要 な 国 有 企 業 の 規 律 22. 競 争 力 及 びビジ ネスの 円 滑 化 サプライチェーン 発 展 強 化 と 中 小 企 業 の 参 加 支 援 27. 運 用 及 び 制 度 に 関 する 規 定 3. 原 産 地 規 則 及 び 原 産 地 手 続 関 税 減 免 の 対 象 となるTPP 域 内 原 産 品 と 認 められる 要 件 や 手 続 8. 貿 易 の 技 術 的 障 害 (TBT) 4. 繊 維 及 び 繊 維 製 品 繊 維 繊 維 製 品 の 貿 易 に 関 する 原 産 地 規 則 緊 急 措 置 等 9. 投 資 5. 税 関 当 局 及 び 貿 易 円 滑 化 通 関 手 続 きの 透 明 性 確 保 簡 素 化 等 10. 国 境 を 超 える サービスの 貿 易 安 全 環 境 保 全 等 を 目 的 に 定 投 資 家 間 の 無 差 別 原 則 ( 内 国 内 国 民 待 遇 最 恵 国 待 遇 市 める 製 品 の 特 性 や 生 産 工 程 等 民 待 遇 最 恵 国 待 遇 ) 投 資 に 場 アクセス( 数 量 制 限 等 )に 関 に 係 る 規 格 が 貿 易 の 不 必 要 関 する 紛 争 解 決 手 続 ( 投 資 家 対 するルール な 障 害 とならないためのルール 国 家 の 紛 争 解 決 (ISDS) 手 続 ) 13. 電 気 通 信 14. 電 子 商 取 引 15. 政 府 調 達 電 気 通 信 サービスの 分 野 で 通 信 インフラを 有 する 主 要 なサー ビス 提 供 者 の 義 務 等 電 子 商 取 引 の 環 境 ルールを 定 める 原 則 18. 知 的 財 産 19. 労 働 20. 環 境 特 許 権 商 標 権 意 匠 権 著 作 権 地 理 的 表 示 等 の 知 的 財 産 保 護 権 利 行 使 手 続 等 貿 易 投 資 の 促 進 のための 労 働 条 件 緩 和 の 禁 止 中 央 政 府 地 方 政 府 等 による 物 品 サービスの 調 達 に 係 るルー ル 貿 易 投 資 の 促 進 のための 環 境 基 準 緩 和 の 禁 止 23. 開 発 24. 中 小 企 業 25. 規 制 の 整 合 性 開 発 支 援 女 性 能 力 向 上 等 中 小 企 業 への 情 報 提 供 TPP 協 定 による 商 業 機 会 利 用 支 援 等 各 加 盟 国 の 複 数 分 野 にまたが る 規 制 規 則 の 透 明 性 向 上 等 28. 紛 争 解 決 29. 例 外 30. 最 終 規 定 協 定 の 透 明 性 腐 敗 行 為 の 防 止 協 定 の 実 施 運 用 ルール 発 協 定 解 釈 の 不 一 致 等 による 締 締 約 国 に 対 する 協 定 適 用 の 例 協 定 の 改 正 加 入 発 効 脱 退 に 必 要 な 措 置 等 に 係 るルール 効 後 の 見 直 しのための 協 議 約 国 間 の 紛 争 解 決 手 続 外 等 の 手 続 等 等 ( 出 所 ) 内 閣 官 房 TPP 政 府 対 策 本 部 環 太 平 洋 パートナーシップ 協 定 (TPP 協 定 )の 概 要 ( 平 27.10.5)をもとに 作 成 (2)TPP 協 定 の 意 義 TPP 協 定 の 意 義 について 政 府 はアジア 太 平 洋 地 域 における 物 品 サービス 貿 易 及 び 投 資 の 自 由 化 知 的 財 産 国 有 企 業 等 に 係 る 広 範 な 21 世 紀 型 のルールの 構 築 に 加 え 世 界 16 日 豪 EPA(2015 年 1 月 発 効 )における 日 本 側 の 品 目 全 体 の 関 税 撤 廃 率 89%に 比 べると 大 幅 に 高 い( 内 閣 官 房 TPP 政 府 対 策 本 部 TPPにおける 関 税 交 渉 の 結 果 ( 平 27.10.20)) 17 国 境 を 越 えて 物 品 の 製 造 やサービスの 供 給 を 展 開 することをいう 18 第 27 章 運 用 及 び 制 度 に 関 する 規 定 には 発 効 後 3 年 以 内 の 見 直 しの 検 討 が 規 定 され 複 数 の 章 で 協 定 の 見 直 しが 義 務 付 けられている 35

全 体 の 貿 易 投 資 ルールの 新 たなスタンダードを 提 供 していく 可 能 性 とともに 中 小 企 業 や 国 内 の 地 域 等 を 含 めた 内 外 の 成 長 促 進 を 挙 げている また オバマ 大 統 領 が 10 月 5 日 の 大 筋 合 意 について 地 域 の 協 力 国 同 盟 国 との 戦 略 的 関 係 を 強 める 意 義 を 強 調 している 19 の と 同 様 に 普 遍 的 価 値 を 共 有 する 国 々との 間 での 経 済 的 相 互 依 存 の 高 まりが 地 域 の 繁 栄 安 定 にもつながっていくとの 長 期 的 戦 略 的 な 意 義 を 挙 げている 20 (3) 大 筋 合 意 を 受 けた 内 外 の 動 き 2015 年 11 月 18 日 から 19 日 まで 開 かれたAPECフィリピン 会 合 に 際 し TPP 参 加 12 か 国 の 首 脳 会 合 が 18 日 に 開 かれ 協 定 の 早 期 発 効 と 参 加 国 拡 大 に 向 け 各 国 が 努 力 を 続 けることが 確 認 された 大 筋 合 意 以 前 から 関 心 を 示 していた 韓 国 10 月 下 旬 に 参 加 の 意 向 を 表 明 したインドネシアに 加 え APECの 会 合 に 際 しては 台 湾 フィリピン 及 びタ イが 関 心 を 表 明 した 一 方 中 国 は 新 たな 枠 組 みによる 地 域 の 分 断 を 懸 念 し ロシアも 閉 鎖 的 な 性 格 が 地 域 の 持 続 的 な 発 展 に 資 するか 疑 わしいと 警 戒 を 強 めた このような 事 情 も あり 19 日 に 採 択 されたAPEC 首 脳 宣 言 には アジア 太 平 洋 全 域 の 貿 易 自 由 化 を 目 指 す FTAAPの 実 現 に 向 け TPPの 大 筋 合 意 を 含 む 最 近 の 合 意 への 留 意 が 記 される 一 方 で 東 アジア 地 域 包 括 的 経 済 連 携 協 定 (RCEP) 21 の 早 期 妥 結 への 期 待 も 明 記 された TPP 協 定 の 大 筋 合 意 は 世 界 各 地 域 で 進 められている 広 域 FTA/EPA 交 渉 の 早 期 妥 結 を 促 し 物 品 サービス 貿 易 及 びその 他 の 自 由 化 レベルの 引 上 げにつながるのではな いかとの 見 方 も 示 されているが 2013 年 5 月 に 交 渉 が 開 始 され 2015 年 中 の 妥 結 を 目 指 し てきたRCEPは 高 い 自 由 化 率 を 求 める 国 と 自 由 化 に 慎 重 なインド 等 の 主 張 の 隔 たりが 大 きく 11 月 22 日 妥 結 目 標 時 期 が 2016 年 中 へと 正 式 に 先 延 ばしされた 22 また 日 中 韓 FTAは 11 月 1 日 の 日 中 韓 サミットにおいて 交 渉 の 加 速 に 向 け 一 層 努 力 すること が 確 認 されたが 包 括 的 かつハイレベルな 協 定 の 締 結 を 求 める 日 本 と 中 韓 との 思 惑 の 違 い から 関 税 撤 廃 に 向 けた 枠 組 み 自 体 がいまだまとまっていない 他 方 2015 年 6 月 に 署 名 されていた 中 韓 FTAは 韓 国 国 会 が 11 月 30 日 に 批 准 同 意 案 を 可 決 し 12 月 20 日 に 発 効 した TPP 協 定 をアジア 太 平 洋 地 域 に 一 層 広 げてFTAAPを 実 現 し 投 資 競 争 政 策 知 的 財 産 権 政 府 調 達 等 の 経 済 ルールの 確 立 を 図 る 米 国 の 動 き RCEPを 推 進 してASE ANをつなぎ 留 め 地 域 の 経 済 ルールを 描 こうとする 中 国 の 動 き 欧 州 を 始 め 他 の 地 域 経 済 圏 との 連 携 に 及 ぼす 影 響 等 を 踏 まえ 我 が 国 は 通 商 政 策 を 進 めていくことが 求 められる なお 大 筋 合 意 後 のTPP 協 定 締 結 をめぐる 米 国 内 の 動 きを 見 ると 協 定 締 結 にはTP P 協 定 実 施 法 案 23 の 議 会 による 審 議 可 決 が 必 要 であり 2015 年 6 月 29 日 に 成 立 した 貿 易 19 2015 年 10 月 5 日 の 大 筋 合 意 を 受 けたオバマ 大 統 領 声 明 による 同 声 明 は 世 界 経 済 のルールを 中 国 のよう な 国 に 書 かせるわけにはいかない 我 々がルールを 書 く とも 述 べている( 読 売 新 聞 ( 平 27.10.6)) 20 内 閣 官 房 TPP 政 府 対 策 本 部 環 太 平 洋 パートナーシップ 協 定 (TPP 協 定 )の 概 要 ( 平 27.10.5)3 頁 21 ASEAN10 か 国 に 日 中 韓 豪 NZ インドの 16 か 国 が 目 指 す 包 括 的 経 済 連 携 協 定 22 交 渉 参 加 16 か 国 首 脳 による 共 同 声 明 (2015.11.22) 23 FTA 等 の 通 商 協 定 は 条 約 として 上 院 の 承 認 を 得 るのではなく 1 協 定 を 承 認 する 条 項 を 含 む 法 律 2 通 商 協 定 を 実 施 するための 法 改 正 条 項 等 を 含 む 法 律 ( 実 施 法 )を 上 下 両 院 が 審 議 成 立 させる 形 で 議 会 の 承 認 を 得 る 36

権 限 促 進 (TPA) 法 24 に 基 づき オバマ 大 統 領 は 11 月 5 日 TPP 協 定 の 合 意 内 容 を 議 会 に 通 知 した これにより 2016 年 2 月 3 日 以 降 に 大 統 領 による 署 名 TPP 協 定 実 施 法 案 の 提 出 と 議 会 による 審 議 可 決 が 可 能 となる しかし 民 主 党 支 持 母 体 の 労 働 組 合 などの 反 発 からオバマ 政 権 与 党 の 民 主 党 議 員 の 多 くが 懸 念 を 表 明 しているほか 2016 年 大 統 領 選 挙 の 民 主 党 候 補 者 を 目 指 すクリントン 前 国 務 長 官 が 反 対 の 意 を 表 明 している また TP A 法 案 の 可 決 を 推 進 した 議 会 共 和 党 指 導 部 も ハッチ 上 院 財 政 委 員 長 がバイオ 医 薬 品 のデ ータ 保 護 期 間 をめぐる 不 満 から 必 要 なら 修 正 ( 再 交 渉 )を 求 めると 警 告 し マコネル 院 内 総 務 も 大 統 領 選 挙 前 の 実 施 法 案 提 出 は 大 きな 過 ちと 述 べるなど 実 施 法 案 をめぐっては 時 期 の 大 幅 なずれ 込 みや 難 航 も 予 想 されている 25 我 が 国 においては 従 来 のEPAに 比 してハイレベルの 市 場 開 放 を 求 めているTPPが 農 業 を 始 めとする 国 内 産 業 へ 及 ぼす 影 響 や 広 範 な 分 野 にわたる 自 由 化 非 関 税 分 野 のル ール 形 成 などを 通 じ 経 済 社 会 国 民 生 活 等 に 及 ぼす 影 響 に 懸 念 を 示 す 意 見 もある 政 府 は 10 月 9 日 全 閣 僚 から 成 る TPP 総 合 対 策 本 部 を 設 置 し TPPの 活 用 促 進 を 新 たな 市 場 開 拓 等 につなげ その 影 響 に 対 する 国 民 の 不 安 を 払 拭 する 観 点 から 11 月 25 日 には TPP 関 連 政 策 大 綱 を 決 定 し TPP 協 定 及 び 必 要 な 国 内 法 の 国 会 提 出 施 策 の 実 施 に 必 要 な 経 費 の 確 保 に 向 けた 取 組 を 進 めている 5.ISILに 対 する 空 爆 とパリ 同 時 多 発 テロ 事 件 2014 年 6 月 にイラク 北 部 のモスルを 制 圧 するなど イラクやシリアで 勢 力 を 拡 大 するイ スラム 過 激 派 組 織 ISIL に 対 し 同 年 8 月 8 日 米 国 はイラク 領 内 のISIL 拠 点 への 限 定 的 な 空 爆 を 9 月 22 日 にはサウジアラビアなど 中 東 諸 国 とともにシリア 領 内 のI SIL 拠 点 への 空 爆 を 開 始 した( 有 志 連 合 の 形 成 ) フランスは9 月 19 日 にイラクへの 空 爆 に 参 加 し 2015 年 に 入 りシリア 難 民 が 欧 州 に 殺 到 すると シリアへの 空 爆 にも 参 加 し た 我 が 国 は 米 国 を 含 む 国 際 社 会 のISILとの 闘 いを 支 持 し 軍 事 的 貢 献 でない 形 で 人 道 支 援 等 を 行 ってきたが 2015 年 1 月 から2 月 にかけ シリアでISILに 拘 束 されてい た2 人 の 邦 人 が 相 次 いで 殺 害 された 2015 年 11 月 13 日 パリの7か 所 で 同 時 多 発 テロ 事 件 が 発 生 し 100 名 を 超 える 死 者 が 発 生 し(2015 年 11 月 20 日 時 点 ) ISILが 犯 行 声 明 を 発 出 した 26 翌 14 日 オランド 大 統 領 は 緊 急 事 態 を 宣 言 し テロは ISILにより 実 施 された とし 戦 争 行 為 で あると 非 難 した さらに 翌 15 日 シリア 北 部 ラッカのISIL 拠 点 の 空 爆 によりテロに 屈 しない 姿 勢 を 強 調 し 16 日 には フランスは 戦 争 状 態 にあると 述 べ ISIL 撲 滅 の ための 国 連 安 保 理 決 議 の 採 択 米 露 両 国 への 協 力 要 請 等 に 言 及 した 27 24 米 国 では 通 商 交 渉 の 権 限 は 議 会 にあり TPAとは 通 商 協 定 の 交 渉 権 限 を 大 統 領 に 付 与 する 一 方 で 大 統 領 の 議 会 等 への 説 明 責 任 を 規 定 する 法 律 をいう 議 会 はこの 法 律 の 有 効 期 限 内 に 署 名 された 通 商 協 定 の 実 施 法 案 が 提 出 されてから 最 大 90 議 会 日 以 内 に 上 下 両 院 で 賛 否 を 決 する 必 要 があり この 手 続 の 下 では 議 会 によ る 法 案 修 正 は 認 められない 25 読 売 新 聞 ( 平 27.10.9) 朝 日 新 聞 ( 平 27.11.7) 日 本 経 済 新 聞 夕 刊 ( 平 27.12.12) 26 ISIL 傘 下 組 織 フランスのイスラム 国 が 翌 14 日 インターネット 上 で 犯 行 声 明 を 発 出 した( 読 売 新 聞 ( 平 27.11.15)) 27 毎 日 新 聞 夕 刊 ( 平 27.11.16) 37

11 月 15 日 にはトルコのアンタルヤでG20 サミット( 金 融 世 界 経 済 に 関 する 首 脳 会 合 ) が 始 まり 最 大 の 課 題 となったテロ 対 策 について テロとの 闘 いに 関 するG20 声 明 が 発 出 され 資 金 源 対 策 国 境 管 理 等 の 重 要 性 が 改 めて 明 記 された また 同 月 19 日 に 発 出 されたAPEC 首 脳 宣 言 においても 国 際 社 会 が 結 束 してテロと 闘 う 必 要 性 が 強 調 された 我 が 国 は 各 国 のテロ 対 処 能 力 の 向 上 支 援 過 激 主 義 を 生 み 出 さない 社 会 の 構 築 難 民 支 援 等 を 通 し テロの 未 然 防 止 に 積 極 的 に 取 り 組 んでいくとしている 一 方 シリアのアサド 政 権 を 支 持 するロシアは9 月 30 日 独 自 にシリア 領 内 への 空 爆 を 開 始 していたが ウクライナ 問 題 による 国 際 的 孤 立 から 脱 却 する 狙 いもあり 対 ISIL 大 連 合 を 唱 え シリア 領 内 のISIL 拠 点 攻 撃 には 米 国 欧 州 ロシアによる 連 携 の 可 能 性 も 見 え 始 めた 28 しかし 11 月 24 日 ロシア 軍 機 がトルコ 軍 機 に 撃 墜 され ロシア を 含 む 対 ISIL 協 調 は 困 難 な 情 勢 となった また イラクやシリアへの 米 軍 地 上 部 隊 派 遣 を 否 定 してきた 米 国 においても 12 月 2 日 カリフォルニア 州 で 銃 乱 射 事 件 が 発 生 し 米 当 局 は 事 件 をテロと 断 定 した オバマ 大 統 領 は 同 月 6 日 テロの 脅 威 は 新 たな 段 階 に 移 った ISILを 壊 滅 させる と 訴 えたが 米 軍 地 上 部 隊 派 遣 は 改 めて 否 定 しており その 対 応 は 手 詰 まり の 様 相 も 呈 している 29 我 が 国 はテロ 対 策 の 強 化 を 目 的 として 12 月 8 日 テロ 情 報 の 収 集 に 当 たる 国 際 テロ 情 報 収 集 ユニット を 外 務 省 に 設 置 し 国 際 テロ 情 報 収 集 担 当 を 在 外 公 館 に 派 遣 するとと もに 国 際 テロ 情 報 の 集 約 と 共 有 化 に 当 たる 国 際 テロ 情 報 収 集 集 約 幹 事 会 及 び 国 際 テロ 情 報 集 約 室 を 内 閣 官 房 に 発 足 させた 30 パリ 同 時 多 発 テロ 事 件 を 起 因 として シリア 問 題 31 やISILへの 対 応 をめぐる 米 欧 と ロシア 等 との 食 い 違 い 大 量 に 発 生 した 難 民 への 取 組 国 際 テロへの 各 国 の 連 携 した 対 応 などの 課 題 が 一 層 浮 き 彫 りとなる 中 にあって 2016 年 のG7 伊 勢 志 摩 サミットにおいては 議 長 国 を 務 める 我 が 国 の 姿 勢 が 問 われることとなる 6. 平 和 安 全 法 制 の 成 立 とその 後 の 動 き 安 全 保 障 法 制 の 見 直 しに 向 けて 検 討 を 進 めてきた 安 倍 内 閣 は 2015 年 5 月 14 日 平 和 安 全 法 制 関 連 法 案 を 閣 議 決 定 し 翌 15 日 国 会 に 提 出 した 同 法 案 は 集 団 的 自 衛 権 32 の 28 毎 日 新 聞 ( 平 27.11.19) 29 オバマ 大 統 領 は 12 月 14 日 に 国 家 安 全 保 障 会 議 を 開 き 対 IS 軍 事 作 戦 の 成 果 を 強 調 し 作 戦 を 加 速 させる ため 各 国 に 軍 事 的 な 貢 献 を 一 層 求 めていくこととした( NHKニュース ( 平 27.12.15 午 前 5 時 54 分 )) 30 国 際 組 織 犯 罪 等 国 際 テロ 対 策 推 進 本 部 は 2015 年 5 月 29 日 1 国 際 テロ 情 報 収 集 ユニット の 外 務 省 へ の 新 設 2 拠 点 となる 在 外 公 館 への 国 際 テロ 情 報 収 集 担 当 の 派 遣 3 官 邸 幹 部 等 による 国 際 テロ 情 報 の 共 有 集 約 の 仕 組 みを 設 けることを 決 定 した( 邦 人 殺 害 テロ 事 件 等 を 受 けた 主 なテロ 対 策 の 強 化 について ( 平 27.5.29)) 12 月 4 日 パリ 同 時 多 発 テロ 事 件 等 を 受 け これらの 措 置 が 前 倒 しで 実 施 されることとなった ( パリにおける 連 続 テロ 事 案 等 を 受 けたテロ 対 策 の 強 化 加 速 化 について ( 平 27.12.4)) 読 売 新 聞 ( 平 27.12.5) 産 経 新 聞 ( 平 27.12.9) 31 国 連 安 保 理 は 2015 年 12 月 18 日 1アサド 政 権 と 反 体 制 派 による 政 権 移 行 プロセス の 交 渉 開 始 2 自 由 で 公 正 な 選 挙 の 実 施 等 を 内 容 とする 決 議 を 採 択 した これまでシリア 問 題 の 決 議 に 拒 否 権 を 行 使 してきた ロシアも 初 めて 賛 成 したが アサド 政 権 の 処 遇 に 触 れていない 等 の 問 題 も 指 摘 されている ( 朝 日 新 聞 ( 平 27.12.20)) 32 集 団 的 自 衛 権 とは 自 国 と 密 接 な 関 係 にある 外 国 に 対 する 武 力 攻 撃 を 自 国 が 直 接 攻 撃 されていないにもか かわらず 実 力 をもって 阻 止 する 権 利 のことをいう 従 来 の 政 府 見 解 では 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 は 憲 法 第 38

限 定 行 使 容 認 ( 存 立 危 機 事 態 への 対 処 ) 他 国 軍 隊 への 後 方 支 援 の 在 り 方 の 見 直 し( 重 要 影 響 事 態 及 び 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 への 対 処 )など 多 岐 にわたる 内 容 を 含 むものであった が( 法 律 の 主 な 内 容 については 表 2 参 照 ) 国 会 の 大 幅 な 会 期 延 長 を 経 て 衆 参 両 院 での 約 4か 月 にわたる 審 議 の 後 同 年 9 月 19 日 に 成 立 した 33 表 2 平 和 安 全 法 制 関 連 法 の 主 な 内 容 憲 法 第 9 条 の 下 で 許 容 される 自 衛 の 措 置 武 力 行 使 の 新 三 要 件 による 集 団 的 自 衛 権 の 限 定 行 使 ( 存 立 危 機 事 態 への 対 処 ) 自 衛 隊 法 事 態 対 処 法 米 軍 行 動 関 連 措 置 法 海 上 輸 送 規 制 法 捕 虜 取 扱 い 法 及 び 特 定 公 共 施 設 利 用 法 の 改 正 他 国 軍 隊 への 支 援 活 動 等 我 が 国 の 平 和 と 安 全 に 資 する 活 動 を 行 う 他 国 軍 隊 への 支 援 活 動 ( 重 要 影 響 事 態 への 対 処 ) 周 辺 事 態 安 全 確 保 法 の 改 正 ( 重 要 影 響 事 態 安 全 確 保 法 に 変 更 ) 国 際 社 会 の 平 和 と 安 全 のために 活 動 する 他 国 軍 隊 への 支 援 活 動 ( 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 へ の 対 処 ) 新 たな 恒 久 法 ( 一 般 法 )の 制 定 ( 国 際 平 和 支 援 法 ) 重 要 影 響 事 態 及 び 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 における 船 舶 検 査 活 動 船 舶 検 査 活 動 法 の 改 正 国 際 的 な 平 和 協 力 活 動 の 実 施 国 連 統 括 外 の 人 道 復 興 支 援 活 動 や 安 全 確 保 活 動 等 の 国 際 的 な 平 和 協 力 活 動 への 参 加 国 連 PKO 等 において 実 施 できる 業 務 の 拡 大 ( 安 全 確 保 業 務 駆 け 付 け 警 護 等 ) 及 び 業 務 の 実 施 に 必 要 な 武 器 使 用 権 限 の 見 直 し 国 際 平 和 協 力 法 (PKO 法 )の 改 正 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 への 対 処 (グレーゾーン 事 態 対 処 ) 我 が 国 の 防 衛 に 資 する 活 動 を 行 う 米 軍 等 の 部 隊 の 武 器 等 防 護 自 衛 隊 法 の 改 正 離 島 周 辺 などでの 不 法 行 為 への 対 処 等 については 自 衛 隊 の 治 安 出 動 や 海 上 警 備 行 動 の 発 令 手 続 の 迅 速 化 のため 電 話 による 閣 議 決 定 を 導 入 ( 法 改 正 なし) その 他 の 法 改 正 事 項 在 外 邦 人 等 の 保 護 措 置 ( 警 護 救 出 等 ) 自 衛 隊 法 の 改 正 情 報 収 集 活 動 時 など 平 時 における 米 軍 に 対 する 物 品 役 務 の 提 供 の 拡 大 自 衛 隊 法 の 改 正 上 官 命 令 反 抗 部 隊 不 法 指 揮 等 に 係 る 罰 則 について 国 外 犯 処 罰 規 定 を 整 備 自 衛 隊 法 の 改 正 存 立 危 機 事 態 重 要 影 響 事 態 等 への 対 処 を 国 家 安 全 保 障 会 議 の 審 議 事 項 に 追 加 国 家 安 全 保 障 会 議 設 置 法 の 改 正 ( 出 所 ) 筆 者 作 成 9 条 の 下 で 許 容 される 必 要 最 小 限 度 の 自 衛 の 措 置 の 範 囲 を 超 えるものであり 憲 法 上 許 されないとしていた ( 憲 法 国 際 法 と 集 団 的 自 衛 権 に 関 する 質 問 に 対 する 答 弁 書 ( 内 閣 衆 質 94 第 32 号 昭 56.5.29)) 33 平 和 安 全 法 制 関 連 法 案 の 概 要 と 国 会 における 審 議 のポイント 等 については 中 内 康 夫 横 山 絢 子 小 檜 山 智 之 平 和 安 全 法 制 関 連 法 案 の 国 会 審 議 4か 月 にわたった 安 保 法 制 論 議 を 振 り 返 る 立 法 と 調 査 第 372 号 (2015( 平 27).12.14)3~30 頁 を 参 照 されたい 39

その 後 平 和 安 全 法 制 関 連 法 は 同 月 30 日 に 公 布 された 法 律 の 定 めにより 公 布 の 日 から6 月 を 超 えない 範 囲 内 (2016 年 3 月 末 まで)において 政 令 の 定 める 日 から 施 行 され ることとなっている 平 和 安 全 法 制 の 施 行 に 向 け 防 衛 省 は 自 衛 隊 が 武 器 を 使 用 する 際 の 基 準 などを 定 めた 部 隊 行 動 基 準 (ROE)の 見 直 しを 進 めている 34 また 日 米 両 政 府 は 11 月 3 日 4 月 に 改 定 した 日 米 防 衛 協 力 のための 指 針 (ガイドライン)に 明 記 された 常 設 の 協 議 機 関 とな る 同 盟 調 整 メカニズム を 立 ち 上 げ 運 用 を 開 始 した これは 日 米 同 盟 として 対 応 す る 可 能 性 のあるあらゆる 状 況 に 切 れ 目 のない 形 で 実 効 的 に 対 処 することを 目 的 とし 平 時 から 日 米 間 の 様 々なレベルでの 協 議 を 行 うためのものであり 同 時 に 自 衛 隊 と 米 軍 の 共 同 計 画 を 策 定 するための 共 同 計 画 策 定 メカニズム も 立 ち 上 げている さらに 政 府 は 平 和 安 全 法 制 の 内 容 を 反 映 し 平 時 の 情 報 収 集 活 動 時 や 重 要 影 響 事 態 存 立 危 機 事 態 等 への 対 処 の 際 にも 米 軍 に 弾 薬 などの 物 品 や 役 務 の 提 供 を 行 うことを 可 能 とするため 日 米 物 品 役 務 相 互 提 供 協 定 (ACSA)の 改 定 を 目 指 し 米 側 と 協 議 を 行 っていると 報 じられている 35 合 意 署 名 に 至 れば 協 定 の 承 認 案 件 が 国 会 に 提 出 され 審 議 が 行 われることとなる また 南 スーダンの 国 連 PKO(UNMISS)に 派 遣 している 陸 上 自 衛 隊 の 部 隊 に 対 して 離 れた 場 所 で 武 装 勢 力 などに 襲 われた 他 国 軍 部 隊 やNGO 職 員 等 を 要 請 に 応 じて 救 援 するいわゆる 駆 け 付 け 警 護 の 任 務 が 2016 年 の 秋 以 降 に 付 与 される 見 通 しであるとの 報 道 も 見 られる 36 なお 自 民 党 及 び 公 明 党 の 与 党 と 日 本 を 元 気 にする 会 次 世 代 の 党 及 び 新 党 改 革 の 野 党 3 党 は 法 律 の 施 行 に 当 たり 国 会 の 関 与 強 化 の 措 置 を 採 ることなどで 一 致 し 2015 年 9 月 16 日 5 党 の 党 首 が 平 和 安 全 法 制 についての 合 意 書 に 署 名 しているが 37 その 中 には 平 和 安 全 法 制 に 基 づく 自 衛 隊 の 活 動 に 対 する 常 時 監 視 及 び 事 後 検 証 のための 国 会 の 組 織 の 在 り 方 重 要 影 響 事 態 及 びPKO 派 遣 の 国 会 関 与 の 強 化 については 今 後 各 党 間 で 検 討 を 行 い 結 論 を 得 る との 項 目 も 置 かれており 今 後 の 推 移 が 注 目 される また 民 主 党 と 維 新 の 党 が 同 年 12 月 11 日 に 結 んだ 合 意 書 では 両 党 間 で 協 議 を 重 ねて きた 基 本 的 政 策 合 意 を 共 有 する としており 同 政 策 合 意 の 中 には 今 般 可 決 された 安 全 保 障 法 制 については 憲 法 違 反 など 問 題 のある 部 分 をすべて 白 紙 化 するとともに 我 が 国 周 辺 における 厳 しい 環 境 に 対 応 できる 法 案 を 提 出 する との 記 載 がある 38 34 中 谷 防 衛 大 臣 は 9 月 28 日 防 衛 省 内 で 開 催 された 安 全 保 障 法 制 整 備 検 討 委 員 会 において あらゆる 場 面 を 想 定 し 拙 速 を 避 けて 周 到 な 準 備 を 行 うことが 必 要 不 可 欠 である 旨 を 訓 示 し ROEの 見 直 し 等 法 施 行 に 向 けての 具 体 的 な 検 討 を 指 示 した( 朝 日 新 聞 ( 平 27.9.29) 大 臣 記 者 会 見 ( 平 成 27 年 9 月 29 日 ) http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2015/09/29.html ( 平 27.12.18 最 終 アクセス) 35 毎 日 新 聞 ( 平 27.12.5) 等 36 産 経 新 聞 ( 平 27.10.12) 朝 日 新 聞 ( 平 27.12.7) 37 翌 17 日 の 参 議 院 の 特 別 委 員 会 において 平 和 安 全 法 制 関 連 法 案 が 採 決 された 際 5 党 合 意 の 内 容 を 反 映 した 附 帯 決 議 も 行 われている 38 民 主 党 ホームページ https://www.dpj.or.jp/article/108012/ ( 平 27.12.18 最 終 アクセス) 40

39 7. 在 日 米 軍 基 地 をめぐる 問 題 (1) 普 天 間 飛 行 場 移 設 問 題 2014 年 11 月 の 沖 縄 県 知 事 選 挙 において 米 海 兵 隊 が 使 用 する 普 天 間 飛 行 場 の 名 護 市 辺 野 古 への 移 設 の 反 対 を 掲 げて 当 選 した 翁 長 知 事 は 翌 15 年 1 月 仲 井 眞 前 知 事 が 2013 年 12 月 に 行 った 普 天 間 飛 行 場 代 替 施 設 建 設 事 業 に 係 る 公 有 水 面 埋 立 承 認 ( 辺 野 古 沿 岸 部 の 埋 立 承 認 )が 適 切 なものであったかを 検 証 するため 有 識 者 による 第 三 者 委 員 会 を 設 置 した その 後 検 証 を 進 めた 同 委 員 会 は 7 月 16 日 埋 立 承 認 手 続 に 法 的 瑕 疵 がある 旨 の 報 告 書 を 提 出 し これを 受 けて 沖 縄 県 による 検 討 が 行 われた 結 果 10 月 13 日 翁 長 知 事 は 埋 立 承 認 の 取 消 しを 行 った これに 対 して 防 衛 省 沖 縄 防 衛 局 は 翌 14 日 埋 立 承 認 の 手 続 に 瑕 疵 はないとして 行 政 不 服 審 査 法 に 基 づく 審 査 請 求 と 効 力 停 止 を 石 井 国 土 交 通 大 臣 に 申 し 立 て 同 月 27 日 石 井 大 臣 は 沖 縄 県 による 埋 立 承 認 取 消 し 処 分 の 効 力 を 停 止 した 同 時 に 政 府 は 27 日 の 閣 議 において 地 方 自 治 法 に 基 づき 国 が 知 事 に 代 わって 埋 立 承 認 を 行 う 行 政 代 執 行 の 手 続 に 着 手 することを 了 解 した その 後 石 井 大 臣 による 是 正 勧 告 指 示 に 翁 長 知 事 が 応 じなか ったため 11 月 17 日 石 井 大 臣 は 埋 立 承 認 を 取 り 消 した 処 分 の 撤 回 を 翁 長 知 事 に 求 め る 訴 訟 を 福 岡 高 裁 那 覇 支 部 に 起 こした 普 天 間 飛 行 場 の 辺 野 古 移 設 をめぐる 国 と 県 の 対 立 は 法 廷 闘 争 に 発 展 しており 今 後 の 展 開 が 注 目 される 他 方 その 間 に 政 府 は 辺 野 古 移 設 に 向 けての 動 きを 進 め 10 月 29 日 には 辺 野 古 沿 岸 部 で 本 体 工 事 に 着 手 した また 政 府 は 11 月 27 日 建 設 予 定 地 に 隣 接 する 名 護 市 の 久 辺 三 区 に 補 助 金 を 直 接 交 付 する 新 たな 制 度 を 創 設 したが 稲 嶺 名 護 市 長 は 市 の 頭 越 し で 地 方 自 治 をないがしろにする と 強 く 反 発 している 40 さらに 12 月 4 日 には 日 米 両 政 府 は 返 還 で 合 意 していた 嘉 手 納 飛 行 場 以 南 の 米 軍 施 設 のうち 普 天 間 飛 行 場 の 東 側 など 2か 所 を 先 行 返 還 することで 合 意 した 基 地 負 担 軽 減 への 努 力 をアピールする 狙 いとされ るが 翁 長 知 事 は 合 意 は 一 定 の 評 価 ができるとした 上 で 普 天 間 飛 行 場 で 返 還 されるの は 全 体 のわずか 0.8%にすぎず 直 接 危 険 性 の 除 去 につながらないとの 認 識 を 示 しており 41 これにより 沖 縄 県 民 の 理 解 が 広 がっていくのか 現 時 点 では 不 透 明 である (2) 日 米 地 位 協 定 の 環 境 補 足 協 定 2015 年 9 月 28 日 岸 田 外 務 大 臣 とカーター 米 国 防 長 官 は 米 国 防 総 省 において 在 日 米 軍 基 地 内 で 環 境 調 査 を 実 施 できるようにすることなどを 定 めた 日 米 地 位 協 定 の 環 境 補 足 協 定 に 署 名 した( 即 日 発 効 ) 漏 出 といった 周 囲 の 環 境 に 影 響 を 及 ぼす 事 故 が 発 生 した 場 合 や 米 軍 の 施 設 区 域 の 返 還 に 先 立 つ 現 地 調 査 のための 立 入 りを 日 本 政 府 や 地 元 自 治 体 に 認 めることが 明 記 されている 在 日 米 軍 基 地 をめぐる 沖 縄 の 負 担 軽 減 の 一 環 と 位 置 付 けら 39 2015 年 12 月 16 日 中 谷 防 衛 大 臣 は 在 日 米 軍 駐 留 経 費 に 係 る 新 たな 特 別 協 定 等 について 日 米 間 で 実 質 合 意 したと 発 表 した 協 定 の 期 間 は 2016 年 度 から5 年 間 で 日 本 側 負 担 は 各 年 度 の 平 均 で 1,893 億 円 となり 現 行 (2015 年 度 )とほぼ 同 水 準 であるとしている 同 協 定 の 概 要 等 は 次 号 以 降 で 紹 介 することとする 40 東 京 新 聞 ( 平 27.11.28) 41 日 本 経 済 新 聞 ( 平 27.12.5) 41

れ また 補 足 協 定 の 締 結 は 1960 年 の 地 位 協 定 発 効 以 降 初 めてのことであることから 政 府 は 従 来 の 運 用 改 善 とは 異 なる 歴 史 的 意 義 を 有 するものと 説 明 している 他 方 沖 縄 県 の 翁 長 知 事 は 協 定 締 結 は 評 価 するとした 上 で 県 が 要 望 していた 少 な くとも 施 設 区 域 の 返 還 3 年 前 からの 立 入 り 調 査 の 実 現 が 明 記 されていない 点 や 事 故 時 の 立 入 りについて 米 軍 の 運 用 に 左 右 されるなど 十 分 とは 言 えない 部 分 もある ことな どについて 懸 念 を 示 している 42 今 後 同 協 定 に 基 づく 環 境 調 査 がどの 程 度 実 効 性 のある ものとして 行 われるのか 運 用 の 在 り 方 が 問 われることになるであろう (かんだ しげる なかうち やすお) 42 毎 日 新 聞 ( 平 27.9.30) 42