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地 方 自 治 関 連 立 法 動 向 研 究 1 税 源 の 偏 在 と 地 域 間 格 差 地 方 法 人 税 法 ( 平 成 26 年 3 月 31 日 法 律 第 11 号 ) 森 稔 樹 1. はじめに 平 成 5 年 6 月 に 衆 参 両 院 において 地 方 分 権 の 推 進 に 関 する 決 議 がなされ 翌 年 2 月 15 日 に 政 府 の 行 政 改 革 大 綱 において 地 方 分 権 の 推 進 を 図 るため 国 地 方 の 関 係 等 の 改 革 に 関 する 大 綱 方 針 を 平 成 6 年 度 内 を 目 途 に 策 定 するものとする と 謳 われてから 今 年 ( 平 成 26 年 )で20 年 が 経 過 する 折 しも 今 年 は4 月 に 消 費 税 地 方 消 費 税 の 税 率 引 き 上 げ (1) が 実 施 されるとともに 12 月 には 来 年 ( 平 成 27 年 )の10 月 に 予 定 される 再 度 の 消 費 税 地 方 消 費 税 の 税 率 引 き 上 げ (2) について 内 閣 による 判 断 が 行 われることとなってい た (3) しかし 11 月 18 日 安 倍 晋 三 内 閣 総 理 大 臣 は 衆 議 院 の 解 散 とともに 消 費 税 地 方 消 費 税 の 税 率 引 き 上 げを 平 成 29 年 4 月 まで1 年 半 延 期 することを 正 式 に 表 明 した (4) これにより 税 率 引 き 上 げとともに 行 われることとなっていた 地 方 税 制 の 抜 本 的 改 革 の 機 会 も 先 送 りされることとなる (1) 消 費 税 の 税 率 ( 消 費 税 法 第 29 条 )は4%から6.3%となり 地 方 消 費 税 の 税 率 ( 地 方 税 法 第 72 条 の83 同 第 72 条 の77 第 2 号 第 3 号 )は 実 質 で1%から1.7%となった これに 伴 い 税 率 における 消 費 税 と 地 方 消 費 税 との 割 合 は 税 率 引 き 上 げ 前 の4:1=80:20から 今 年 4 月 に 6.3:1.7 78.75:21.25となる (2) 引 き 上 げが 行 われるならば 平 成 27 年 10 月 より 消 費 税 の 税 率 は7.8%に 地 方 消 費 税 の 税 率 は 実 質 で2.2%となるはずであった( 従 って 税 率 における 消 費 税 と 地 方 消 費 税 との 割 合 は 78:22となる) (3) 朝 日 新 聞 平 成 26 年 10 月 21 日 付 朝 刊 2 面 14 版 ( 時 時 刻 刻 )ダブル 辞 任 収 拾 優 先 松 島 氏 の 辞 任 首 相 が 促 す による (4) 朝 日 新 聞 平 成 26 年 11 月 19 日 付 朝 刊 1 面 14 版 21 日 解 散 首 相 表 明 消 費 増 税 先 送 り 信 を 問 う アベノミクスも 争 点 同 4 面 14 版 首 相 会 見 の 要 旨 による - 73 -

地 方 分 権 を 進 めるためには 国 はもとより 地 方 公 共 団 体 の 担 うべき 役 割 が 重 要 である これを 果 たすためには 地 方 公 共 団 体 の 税 財 源 の 確 保 ないし 充 実 が 不 可 欠 である その 一 方 で 税 源 の 偏 在 などに 起 因 する 地 域 間 格 差 という 問 題 も 存 在 し 可 能 な 限 りこれを 縮 小 する 方 向 に 是 正 することも 求 められる とくに 都 道 府 県 の 税 収 構 造 において 法 人 課 税 へ の 依 存 度 が 高 いことは 財 政 学 や 租 税 法 学 などにおいて 度 々 指 摘 されており (5) それだけ に 地 方 法 人 二 税 ( 法 人 道 府 県 民 税 法 人 市 町 村 民 税 および 法 人 事 業 税 のこと 以 下 同 じ) の 税 収 格 差 が 大 きい 状 態 のまま 放 置 することには 問 題 がある この 問 題 への 対 応 策 の 一 つが 平 成 20 年 度 税 制 改 正 の 一 環 として 制 定 施 行 された 地 方 法 人 特 別 税 等 に 関 する 暫 定 措 置 法 ( 平 成 20 年 4 月 30 日 法 律 第 25 号 以 下 地 方 法 人 特 別 税 法 )であるが 名 称 にも 端 的 に 示 されているように 抜 本 的 な 見 直 しを 先 送 りにしたも のであり 地 方 税 の 拡 充 がなされなかったこともあって 地 方 公 共 団 体 側 の 不 満 は 大 きいも のであった (6) 後 述 のように 社 会 保 障 の 安 定 財 源 の 確 保 等 を 図 る 税 制 の 抜 本 的 な 改 革 を 行 うための 消 費 税 法 の 一 部 を 改 正 する 等 の 法 律 ( 平 成 24 年 8 月 22 日 法 律 第 68 号 以 下 税 制 抜 本 改 革 法 )および 社 会 保 障 の 安 定 財 源 の 確 保 等 を 図 る 税 制 の 抜 本 的 な 改 革 を 行 うための 地 方 税 法 及 び 地 方 交 付 税 法 の 一 部 を 改 正 する 法 律 ( 平 成 24 年 8 月 22 日 法 律 第 69 号 )により 消 費 税 および 地 方 消 費 税 の 税 率 引 き 上 げを 期 に 地 方 法 人 二 税 および 地 方 法 人 特 別 税 の 改 革 が 再 び 浮 上 することになる その 後 1 年 ほどに 及 ぶ 政 府 内 での 検 討 を 踏 まえ 平 成 26 年 度 税 制 改 正 の 一 環 として 地 方 法 人 税 法 の 導 入 が 盛 り 込 まれ 第 186 回 国 会 会 期 中 の 平 成 26 年 3 月 20 日 参 議 院 の 可 決 により 地 方 法 人 税 法 が 成 立 した この 法 律 は 同 月 31 日 に 法 律 第 11 号 として 公 布 され 附 則 第 1 項 により 同 年 10 月 1 日 に 施 行 された 地 方 消 費 税 の 税 率 という 問 題 とも 絡 むこともあって 地 方 法 人 税 の 創 設 は 地 方 税 法 体 系 の 抜 本 的 改 革 を 何 ら 意 味 するものでない むしろ 既 存 の 地 方 法 人 特 別 税 を 縮 小 し 法 人 住 民 税 および 法 人 事 業 税 と 併 せて 暫 定 的 に 再 編 し 本 格 的 な 改 革 を 平 成 27 年 10 月 に 予 定 され ていた 地 方 消 費 税 の 税 率 引 き 上 げの 時 点 まで 先 送 りする 内 容 となっている また 地 方 法 人 特 別 税 に 続 いて 地 方 法 人 税 も 国 税 と 位 置 づけられたことは 今 後 地 方 (5) その 例 として 佐 藤 主 光 地 方 財 政 論 入 門 (2009 年 新 世 社 )180 頁 片 桐 正 俊 編 著 財 政 学 転 換 期 の 日 本 財 政 第 3 版 (2014 年 東 洋 経 済 新 報 社 )240 頁 [ 片 桐 正 俊 担 当 ] 306 頁 [ 沼 尾 波 子 担 当 ] 金 子 宏 租 税 法 第 十 九 版 (2014 年 弘 文 堂 )554 頁 (6) その 例 として 石 井 隆 一 平 成 26 年 度 地 方 税 制 改 正 について 地 方 税 65 巻 1 号 (2014 年 )3 頁 安 藤 範 行 歳 出 特 別 枠 別 枠 加 算 の 見 直 しと 地 方 法 人 税 の 交 付 税 原 資 化 平 成 26 年 度 地 方 財 政 対 策 立 法 と 調 査 349 号 (2014 年 )46 頁 も 参 照 - 74 -

税 制 における 法 人 課 税 は 弱 められ 国 税 化 されるという 方 向 性 を 示 すものとも 考 えられる これは 地 方 分 権 に 逆 行 すると 言 えないのであろうか 本 稿 は このように 法 人 課 税 における 国 と 地 方 との 税 源 配 分 に 大 きな 影 響 を 与 えうる 地 方 法 人 税 法 について 立 法 段 階 から 検 討 し 内 容 を 概 観 するとともに 地 方 自 治 地 方 分 権 の 観 点 から 課 題 を 浮 かび 上 がらせ 考 察 をなすことを 目 的 とする 2. 法 律 案 が 提 出 されるまでの 動 向 税 源 の 偏 在 と 地 域 間 格 差 の 現 状 も 踏 まえて 既 に 平 成 8 年 12 月 20 日 地 方 分 権 推 進 委 員 会 が 第 一 次 勧 告 と 同 時 に 出 した 国 庫 補 助 負 担 金 税 財 源 に 関 する 中 間 とりまとめ は できるだけ 税 源 の 偏 在 性 が 少 なく 税 収 の 安 定 性 を 備 えた 地 方 税 体 系 の 構 築 に 配 慮 すべきである と 指 摘 していた しかし 平 成 13 年 6 月 14 日 の 地 方 分 権 推 進 委 員 会 最 終 報 告 に 現 れているように この 頃 は 地 方 消 費 税 の 充 実 法 人 事 業 税 について 外 形 標 準 課 税 の 導 入 の 必 要 性 を 唱 えることが 中 心 であり 地 方 公 共 団 体 間 の 税 収 格 差 や 税 源 の 偏 在 性 の 問 題 はあまり 深 く 取 り 上 げられていなかった しかし 前 述 のように いわゆる 三 位 一 体 改 革 を 経 て 地 方 税 財 源 の 充 実 確 保 はも とより 税 源 の 偏 在 性 などが 意 識 されるようになる 例 えば 地 方 六 団 体 による 地 方 分 権 の 推 進 に 関 する 意 見 豊 かな 自 治 と 新 しい 国 のかたちを 求 めて 地 方 財 政 自 主 のため の7つの 提 言 ( 平 成 18 年 6 月 7 日 )は 地 方 税 の 充 実 強 化 として 偏 在 性 の 少 ない 居 住 地 課 税 である 地 方 消 費 税 と 個 人 住 民 税 の 充 実 強 化 を 図 ること 地 方 交 付 税 を 地 方 共 有 税 に 改 めることを 主 張 した 翌 年 9 月 には 全 国 知 事 会 が 平 成 20 年 度 税 制 改 正 に 関 する 要 望 を 公 表 し 国 税 と 地 方 税 の 税 体 系 の 見 直 し などとともに 地 方 法 人 課 税 における 分 割 基 準 のあり 方 の 検 討 を 求 めた また 平 成 19 年 5 月 30 日 の 地 方 分 権 改 革 推 進 委 員 会 地 方 分 権 改 革 推 進 にあたっての 基 本 的 な 考 え 方 地 方 が 主 役 の 国 づくり は 国 から 地 方 への 税 源 移 譲 に 際 して 地 方 税 財 源 の 充 実 確 保 地 域 間 の 税 収 偏 在 の 是 正 などの 観 点 から 税 源 移 譲 国 庫 補 助 負 担 金 地 方 交 付 税 等 の 税 財 政 上 の 措 置 のあり 方 について 一 体 的 に 検 討 する 必 要 性 を 掲 げた 同 年 11 月 16 日 の 同 委 員 会 中 間 的 な 取 りまとめ も 地 域 の 活 性 化 のために 地 域 間 の 財 政 力 格 差 を 是 正 する 必 要 があり そのために 地 方 交 付 税 の 制 度 改 革 を 含 め 財 政 調 整 のあ り 方 についても 検 討 する 必 要 性 応 益 性 を 有 し かつ 地 域 的 な 偏 在 性 が 少 ない 地 方 税 源 - 75 -

< 図 1> 人 口 一 人 当 たり 税 収 額 の 偏 在 度 の 推 移 ( ) 最 大 ( 東 京 )/ 最 小 の 倍 率 は 各 都 道 府 県 ごとの 人 口 1 人 当 たり 税 収 額 の 最 大 値 ( 東 京 ) を 最 小 値 で 割 った 数 値 である ( 注 )1. 税 収 額 については 各 年 度 の 決 算 額 ( 各 年 度 とも 超 過 課 税 及 び 法 定 外 税 等 を 除 く)であり 人 口 は 平 成 25 年 3 月 31 日 現 在 の 住 民 基 本 台 帳 人 口 による 2. 地 方 税 収 計 は 地 方 法 人 特 別 譲 与 税 を 含 む 3. 地 方 法 人 二 税 の 税 収 額 は 法 人 道 府 県 民 税 法 人 市 町 村 民 税 及 び 法 人 事 業 税 の 合 計 額 である 4. 地 方 消 費 税 は 平 成 9 年 度 導 入 平 年 度 化 した 平 成 10 年 度 から 計 上 しており 税 収 額 は 清 算 後 の 額 である 出 典 : 総 務 省 のサイト 中 の 人 口 一 人 当 たり 税 収 額 の 偏 在 度 の 推 移 (http://www.soumu.go.jp/main_content/000309900.pdf)( 平 成 26 年 10 月 25 日 閲 覧 ) の 充 実 の 必 要 性 を 指 摘 した (7) その 背 景 には 平 成 15 年 度 に 底 を 打 った 地 方 法 人 二 税 の 税 収 が 回 復 の 傾 向 を 見 せ 地 域 間 の 税 収 格 差 が 増 大 したことがある 人 口 一 人 当 たり 税 収 額 の 偏 在 度 の 推 移 ( 図 1)にも 示 されているように 地 方 税 収 全 体 での 地 域 間 の 格 差 は 一 貫 して 縮 小 傾 向 にあるものの 地 方 法 人 二 税 の 偏 在 度 ( 最 大 : 最 小 の 格 差 )について は 平 成 11 年 度 に4.6 倍 と 底 を 打 った 後 平 成 13 年 度 に6.5 倍 にまで 上 昇 し 平 成 15 年 度 には 5.2 倍 にまで 下 がったが 平 成 16 年 度 には 再 び6.4 倍 にまで 上 昇 し 平 成 21 年 度 まで6 倍 を (7) 地 方 分 権 改 革 推 進 委 員 会 第 4 次 勧 告 自 治 財 政 権 の 強 化 による 地 方 政 府 の 実 現 へ ( 平 成 21 年 11 月 9 日 )も 同 旨 - 76 -

超 える 水 準 のままであった (8) 以 上 のような 税 収 格 差 を 是 正 するために 平 成 20 年 度 税 制 改 正 の 一 環 として 地 方 法 人 特 別 税 法 が 制 定 され 施 行 された しかし 地 方 法 人 課 税 のあり 方 等 に 関 する 検 討 会 報 告 書 ( 平 成 25 年 11 月 6 日 以 下 検 討 会 報 告 書 )がまとめているように この 法 律 は 或 る 種 の 妥 協 の 産 物 である すなわち 経 済 財 政 諮 問 会 議 において 総 務 大 臣 側 は 地 方 消 費 税 の 充 実 などによって 税 収 が 安 定 的 で 偏 在 度 の 少 ない 地 方 税 体 系 を 構 築 する そのた めに 偏 在 度 の 小 さい 地 方 消 費 税 と 偏 在 度 の 大 きい 地 方 法 人 二 税 を 税 源 交 換 する 旨 の 提 案 を 行 った (9) これに 対 し 財 務 大 臣 側 からは 地 方 公 共 団 体 間 の 財 政 力 格 差 が 指 摘 され た 上 で 地 域 間 の 財 政 力 の 格 差 是 正 については 地 方 団 体 間 の 水 平 的 調 整 換 言 すれば 地 方 法 人 二 税 の 配 分 基 準 の 見 直 しによって 対 応 すべきであるという 見 解 が 示 された (10) 結 局 平 成 20 年 度 税 制 改 正 において 地 方 法 人 特 別 税 法 第 1 条 の 表 現 を 借 りるならば 税 制 の 抜 本 的 な 改 革 において 偏 在 性 の 小 さい 地 方 税 体 系 の 構 築 が 行 われるまでの 間 の 措 置 と して 地 方 法 人 特 別 税 が 設 けられた 地 方 特 別 法 人 税 は その 収 入 額 に 相 当 する 額 を 地 方 法 人 特 別 譲 与 税 として 都 道 府 県 に 対 して 譲 与 するため に 法 人 事 業 税 の 一 部 を 国 税 化 したものであり( 同 第 1 条 ) 法 人 の 基 準 法 人 所 得 割 額 及 び 基 準 法 人 収 入 割 額 に 課 するものである( 同 第 6 条 同 第 3 条 第 5 号 第 6 号 も 参 照 ) その 内 容 を 概 略 的 に 示 すと 次 の 通 りである 法 人 事 業 税 ( 所 得 割 収 入 割 )のうち 地 方 消 費 税 1%に 相 当 する2 兆 6,000 億 円 分 を 分 離 し 地 方 法 人 特 別 税 ( 国 税 )とする これに 伴 い 例 えば 付 加 価 値 割 額 資 本 割 額 及 び 所 得 割 額 の 合 算 額 によって 法 人 の 事 業 税 を 課 される 法 人 ( 地 方 法 人 特 別 税 法 第 9 条 第 1 号 )については 従 前 の 法 人 事 業 税 率 7.2%から 地 方 法 人 特 別 税 の 税 率 4.3% 法 人 事 業 税 の 税 率 2.9%に 改 められる なお 地 方 法 人 特 別 税 の 税 率 は 地 方 法 人 特 別 税 法 第 9 条 第 1 項 により 基 準 法 人 所 得 割 額 ( 同 第 3 条 第 5 号 同 第 2 条 も 参 照 )に148%を 乗 ずることによって 得 られるものである 地 方 法 人 特 別 税 の 課 税 標 準 は 法 人 事 業 税 ( 所 得 割 収 入 割 )の 税 額 ( 標 準 税 率 による) (8) 高 木 健 二 地 方 法 人 2 税 の 再 配 分 と 地 方 交 付 税 自 治 総 研 351 号 (2008 年 )37 頁 滝 陽 介 地 方 法 人 課 税 のあり 方 等 に 関 する 検 討 会 のとりまとめについて 地 方 税 65 巻 2 号 (2014 年 ) 58 頁 も 参 照 (9) 平 成 19 年 11 月 8 日 に 開 催 された 平 成 19 年 第 26 回 経 済 財 政 諮 問 会 議 の 議 事 録 (http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/minutes/2007/1108/minutes_s.pdf)12 頁 による 佐 藤 前 掲 注 (5)186 頁 高 木 前 掲 注 (8)32 頁 も 参 照 (10) 前 注 と 同 じ 議 事 録 の13 頁 による 佐 藤 前 掲 注 (5)186 頁 高 木 前 掲 注 (8)32 頁 も 参 照 - 77 -

とする( 同 第 8 条 ) 地 方 法 人 特 別 税 の 賦 課 徴 収 は 都 道 府 県 が 法 人 事 業 税 の 賦 課 徴 収 と 併 せて 行 う( 同 第 10 条 ) 地 方 法 人 特 別 税 の 収 入 額 に 相 当 する 額 を 地 方 法 人 特 別 譲 与 税 とし( 同 第 32 条 ) 地 方 法 人 特 別 譲 与 税 基 本 額 ( 同 第 33 条 第 1 項 )の2 分 の1に 相 当 する 額 を 各 都 道 府 県 の 人 口 で 按 分 し 残 る2 分 の1を 各 都 道 府 県 の 従 業 者 数 で 按 分 し 譲 与 する 地 方 法 人 特 別 税 については 国 税 通 則 法 および 国 税 犯 則 取 締 法 が 適 用 されず 国 税 徴 収 法 の 適 用 については 同 第 2 条 第 2 項 にいう 地 方 税 と 見 なされる( 地 方 法 人 特 別 税 法 第 7 条 ) このように 地 方 法 人 特 別 税 は 既 存 の 法 人 事 業 税 の 一 部 を 国 税 化 し その 収 入 額 を 譲 与 税 として 都 道 府 県 に 交 付 するものであることから 地 方 分 権 改 革 における 長 らくの 課 題 であった 地 方 税 の 抜 本 的 改 革 は 先 送 りされたことを 意 味 する また この 税 目 の 導 入 は 地 方 公 共 団 体 の 収 入 の 確 保 という 面 には 資 するものの 地 方 公 共 団 体 の 税 財 源 の 確 保 ない し 充 実 という 要 請 とは 矛 盾 するものである さらに 地 方 法 人 特 別 譲 与 税 は 地 方 交 付 税 不 交 付 団 体 にも 譲 与 されることとなるため 税 源 の 偏 在 の 是 正 という 目 的 を 実 現 するにも 不 十 分 であると 評 価 することも 可 能 であろう もっとも 地 方 法 人 特 別 税 地 方 法 人 特 別 譲 与 税 により 平 成 20 年 度 以 降 税 源 の 偏 在 財 政 力 の 格 差 については 緩 和 の 傾 向 がみられた (11) たしかに 図 1から 明 らかなように 地 方 法 人 二 税 の 偏 在 度 は 平 成 20 年 度 に6.6 倍 平 成 21 年 度 に6.1 倍 であったが 平 成 22 年 度 には5.4 倍 となっており 地 方 法 人 特 別 税 を 加 えると 平 成 21 年 度 に4 倍 台 平 成 22 年 度 および23 年 度 には3 倍 台 にまで 低 下 している (12) しかし 他 の 税 目 と 比 較 すると 依 然 高 く また 地 方 法 人 二 税 の 格 差 の 縮 小 はリーマン ショックを 基 因 とする 景 気 の 悪 化 によ る 減 収 の 影 響 も 含 まれている ここで 直 近 の 例 として 総 務 省 がまとめた 平 成 24 年 度 決 算 額 に 基 づく 人 口 一 人 当 たりの 税 収 額 の 指 数 ( 図 2)を 参 照 する 全 国 平 均 を100とした 場 合 地 方 税 収 総 計 で は 東 京 都 が 最 大 の164.6に 対 して 沖 縄 県 が 最 小 の64.7 格 差 は 約 2.5 倍 となり 都 道 府 県 間 (11) 地 方 法 人 課 税 のあり 方 等 に 関 する 検 討 会 地 方 法 人 課 税 のあり 方 等 に 関 する 検 討 会 報 告 書 ( 平 成 25 年 11 月 以 下 検 討 会 報 告 書 )10 頁 は 平 成 20 年 度 以 降 の 税 源 偏 在 財 政 力 格 差 の 状 況 は 人 口 一 人 当 たり 税 収 財 源 超 過 額 財 源 超 過 額 + 留 保 財 源 のいずれをみても そ れ 以 前 より 緩 和 されている 状 況 にある としている (12) 検 討 会 報 告 書 の 参 考 資 料 図 表 3による - 78 -

< 図 2> 人 口 一 人 当 たりの 税 収 額 の 指 数 ( 平 成 24 年 度 決 算 額 ) - 79 - ( ) 最 大 / 最 小 は 各 都 道 府 県 ごとの 人 口 一 人 当 たり 税 収 額 の 最 大 値 を 最 小 値 で 割 った 数 値 である ( 注 )1. 地 方 税 収 計 の 税 収 額 は 地 方 法 人 特 別 譲 与 税 の 額 を 含 まず 超 過 課 税 及 び 法 定 外 税 等 を 除 いたものである 2. 個 人 住 民 税 の 税 収 額 は 個 人 道 府 県 民 税 ( 均 等 割 及 び 所 得 割 ) 及 び 個 人 市 町 村 民 税 ( 均 等 割 及 び 所 得 割 )の 合 計 額 であり 超 過 課 税 分 を 除 く 3. 地 方 法 人 二 税 の 税 収 額 は 法 人 道 府 県 民 税 法 人 市 町 村 民 税 及 び 法 人 事 業 税 ( 地 方 法 人 特 別 譲 与 税 を 含 まない )の 合 計 額 であり 超 過 課 税 分 を 除 く 4. 固 定 資 産 税 の 税 収 額 は 道 府 県 分 を 含 み 超 過 課 税 分 を 除 く 5. 人 口 は 平 成 25 年 3 月 31 日 現 在 の 住 民 基 本 台 帳 人 口 による 出 典 : 総 務 省 のサイト 中 の 人 口 一 人 当 たりの 税 収 額 の 指 数 ( 平 成 24 年 度 決 算 額 ) (http://www.soumu.go.jp/main_content/000309899.pdf)( 平 成 26 年 10 月 21 日 閲 覧 ) - 自 治 総 研 通 巻 434 号 2014 年 12 月 号 -

において 顕 著 な 地 域 間 格 差 が 存 在 していることがわかる さらに 都 道 府 県 間 の 税 収 の 格 差 を 個 人 住 民 税 地 方 法 人 二 税 (13) 地 方 消 費 税 ( 清 算 後 )および 固 定 資 産 税 について 概 観 すると 最 も 格 差 が 少 ないのが 地 方 消 費 税 ( 清 算 後 )であり 最 大 の138.6( 東 京 都 ) と 最 小 の75.4( 沖 縄 県 )との 格 差 は 約 1.8 倍 である 逆 に 最 も 格 差 が 大 きいのは 地 方 法 人 二 税 であり 最 大 の247.2( 東 京 都 )と 最 小 の43.5( 奈 良 県 )との 格 差 は 約 5.7 倍 である 東 京 都 の 突 出 が 目 立 つが 他 に 地 方 法 人 二 税 の 指 数 が100を 超 えているのは 宮 城 県 (107.2) 山 梨 県 (104.1) 愛 知 県 (118.0) 大 阪 府 (121.5)および 香 川 県 (103.2) のみである 以 上 について 地 方 法 人 特 別 税 地 方 法 人 特 別 譲 与 税 による 是 正 分 は 含 まれて いないが それだけに 地 方 法 人 二 税 の 税 収 格 差 が 大 きい 状 態 のまま 続 いていることが 明 ら かである 地 方 法 人 特 別 法 の 見 直 しの 転 機 となったのが 税 制 抜 本 改 革 法 である この 法 律 の 第 7 条 第 5 号 においては 地 方 法 人 特 別 税 及 び 地 方 法 人 特 別 譲 与 税 について 税 制 の 抜 本 的 な 改 革 において 偏 在 性 の 小 さい 地 方 税 体 系 の 構 築 が 行 われるまでの 間 の 措 置 であることを 踏 まえ 税 制 の 抜 本 的 な 改 革 に 併 せて 抜 本 的 に 見 直 しを 行 う こと( 同 イ) および 税 制 の 抜 本 的 な 改 革 による 地 方 消 費 税 の 充 実 と 併 せて 地 方 法 人 課 税 の 在 り 方 を 見 直 すことに より 税 源 の 偏 在 性 を 是 正 する 方 策 を 講 ずることとし その 際 には 国 と 地 方 の 税 制 全 体 を 通 じて 幅 広 く 検 討 する こと( 同 ロ)が 課 題 とされている これを 踏 まえ 平 成 24 年 9 月 地 方 財 政 審 議 会 に 地 方 法 人 課 税 のあり 方 等 に 関 する 検 討 会 ( 以 下 検 討 会 )が 設 置 され 約 1 年 の 間 に16 回 の 会 議 が 行 われ 議 論 がなされた その 結 果 が 検 討 会 報 告 書 としてまとめられる 検 討 会 報 告 書 は 税 制 抜 本 改 革 法 による 地 方 消 費 税 の 税 率 引 き 上 げを 社 会 保 障 財 源 の 確 保 と 地 方 財 政 の 健 全 化 を 目 的 として 行 われた 改 革 であって 地 方 税 の 税 源 偏 在 財 政 力 格 差 の 是 正 の 観 点 からみれば 偏 在 性 の 小 さい 地 方 消 費 税 が 充 実 することにより 人 口 一 人 当 たり 税 収 等 で 示 される 税 源 偏 在 が 緩 和 されることは 評 価 すべきことである と する (14) その 上 で 今 回 の 地 方 消 費 税 の 税 率 引 上 げに 併 せて 地 方 法 人 特 別 税 譲 与 税 を 廃 止 し 法 人 事 業 税 に 復 元 する 場 合 現 状 より 財 源 超 過 額 等 で 示 される 税 源 偏 在 財 政 力 格 差 は 拡 大 し 平 成 17 年 度 当 時 の 水 準 に 戻 ることとなる と 指 摘 し 平 成 20 年 度 税 制 改 正 において 当 時 の 直 近 の 決 算 である 平 成 17 年 度 決 算 における 税 源 偏 在 財 政 力 格 差 の 状 況 を 踏 まえて その 是 正 が 必 要 として 地 方 法 人 特 別 税 譲 与 税 制 度 を 成 立 させた 国 会 の (13) これらの 税 の 超 過 課 税 分 は 除 外 される また 地 方 法 人 特 別 譲 与 税 は 含 まれない (14) 検 討 会 報 告 書 10 頁 - 80 -

意 思 を 踏 まえれば 少 なくとも 今 回 の 地 方 消 費 税 の 税 率 引 上 げに 併 せて 単 に 地 方 法 人 特 別 税 譲 与 税 を 廃 止 し 法 人 事 業 税 に 復 元 する 状 況 にはないと 考 えられる と 述 べる (15) また 地 方 消 費 税 の 税 率 引 き 上 げによって 地 方 消 費 税 収 と 社 会 保 障 税 一 体 改 革 に 伴 う 社 会 保 障 関 係 費 の 支 出 増 との 間 に 不 均 衡 が 生 じることが 見 込 まれ 特 に 交 付 団 体 では 当 該 社 会 保 障 関 係 費 の 支 出 増 を 上 回 る 地 方 消 費 税 の 増 収 分 は 臨 時 財 政 対 策 債 等 の 減 少 と 相 殺 される 一 方 で 不 交 付 団 体 ではそのまま 財 源 超 過 額 の 増 となる すなわち 基 準 財 政 需 要 額 に 対 する 財 源 超 過 額 等 の 割 合 等 で 示 される 財 政 力 格 差 は 不 交 付 団 体 と 交 付 団 体 との 間 で むしろ 拡 大 する と 指 摘 される (16) このような 問 題 に 対 処 するためには 偏 在 性 が 小 さく 税 収 が 安 定 した 地 方 税 体 系 に 向 けた 改 革 が 必 要 となるが 日 本 の 場 合 は 社 会 保 障 などの 行 政 活 動 の 多 くが 地 方 公 共 団 体 によって 行 われていることから 検 討 会 は 限 界 を 認 めつつも 地 方 交 付 税 制 度 に よる 財 源 保 障 と 財 源 調 整 が 必 要 であ り 地 方 法 人 特 別 税 譲 与 税 制 度 は 異 例 の 措 置 で あ ると 述 べる (17) しかし 検 討 会 は 原 則 として 地 方 法 人 特 別 税 を 廃 止 して 法 人 事 業 税 に 復 元 すべきである 旨 を 述 べつつも 即 時 の 廃 止 を 求 めている 訳 ではない 従 って 地 方 法 人 二 税 のうち 一 部 を 地 方 交 付 税 の 原 資 に 改 めることができるものは 法 人 住 民 税 法 人 税 割 である 検 討 会 報 告 書 も 法 人 住 民 税 ( 法 人 税 割 )のほうが 法 人 事 業 税 より 偏 在 性 が 大 きいこと 法 人 住 民 税 法 人 税 割 の 課 税 ベースが 法 人 税 と 基 本 的 に 同 じであること を 理 由 として 一 部 を 地 方 交 付 税 の 原 資 に 改 めるべきであると 提 言 する (18) これでは 法 人 住 民 税 法 人 税 割 の 一 部 が 国 税 となり 地 方 分 権 の 趣 旨 に 反 するのではないかとも 考 えら れるが (19) 検 討 会 報 告 書 は 地 方 固 有 の 財 源 である 地 方 交 付 税 の 原 資 に 国 税 化 された 額 の 全 額 を 繰 り 入 れることにより 地 方 団 体 の 貴 重 な 税 財 源 であるという 性 格 が 失 われる (15) 検 討 会 報 告 書 11 頁 同 18 頁 には 地 方 法 人 特 別 税 を 廃 止 して 法 人 事 業 税 に 復 元 すべきで あるとする 東 京 都 税 制 調 査 会 の 見 解 および 地 方 法 人 特 別 税 の 復 元 と 地 方 交 付 税 も 含 めた 税 財 政 制 度 改 革 を 通 じた 偏 在 是 正 方 策 は 同 時 に 行 うべきである とする 全 国 知 事 会 地 方 財 政 制 度 研 究 会 の 見 解 も 紹 介 されている また 安 藤 前 掲 注 (6)49 頁 は 平 成 25 年 11 月 15 日 の 地 方 法 人 課 税 の 見 直 しに 関 する 緊 急 共 同 要 請 ( 東 京 都 神 奈 川 県 愛 知 県 および 大 阪 府 ) 同 月 21 日 の 平 成 26 年 税 制 改 正 に 関 する 指 定 都 市 市 長 会 緊 急 要 請 を 地 方 法 人 税 収 の 多 い 地 方 団 体 からの 反 発 として 紹 介 する (16) 検 討 会 報 告 書 11 頁 下 線 は 引 用 者 による( 以 下 についても 同 じ) なお このことは 全 国 知 事 会 地 方 財 政 制 度 研 究 会 も 指 摘 している( 検 討 会 報 告 書 19 頁 ) (17) 検 討 会 報 告 書 13 頁 14 頁 (18) 検 討 会 報 告 書 15 頁 21 頁 23 頁 (19) 安 藤 前 掲 注 (6)49 頁 も 参 照 - 81 -

ことはないことに 留 意 する 必 要 がある と 述 べ 地 方 分 権 の 趣 旨 に 反 しないと 理 解 するよ うである 検 討 会 報 告 書 によって 打 ち 出 された 法 人 住 民 税 法 人 税 割 の 一 部 国 税 化 は 平 成 25 年 12 月 12 日 の 平 成 26 年 度 税 制 改 革 大 綱 ( 自 由 民 主 党 公 明 党 )に 地 方 法 人 税 として 盛 り 込 ま れる 大 綱 は 税 源 の 偏 在 性 が 小 さく 税 収 が 安 定 的 な 地 方 税 体 系 を 構 築 すること などを 地 方 税 制 に 関 する 中 長 期 的 な 課 題 としてあげた 上 で 次 のように 提 案 した 1 消 費 税 地 方 消 費 税 の 税 率 が8%の 段 階 において 法 人 住 民 税 法 人 税 割 の 税 率 を 引 き 下 げ その 引 き 下 げ 分 に 相 当 する 課 税 標 準 を 法 人 税 額 とする 地 方 法 人 税 を 創 設 する その 税 収 の 全 額 は 交 付 税 及 び 譲 与 税 配 付 金 特 別 会 計 に 直 接 繰 り 入 れ 地 方 交 付 税 原 資 とする 2 地 方 法 人 特 別 税 譲 与 税 の 規 模 を 縮 小 し 法 人 事 業 税 に 復 元 する 3 消 費 税 地 方 消 費 税 の 税 率 が10%となった 段 階 において 法 人 住 民 税 法 人 税 割 の 地 方 交 付 税 原 資 化 をさらに 進 め 地 方 法 人 特 別 税 譲 与 税 を 廃 止 する 3. 法 律 案 の 審 議 状 況 このようにして 立 案 された 地 方 法 人 税 法 案 は 第 186 回 国 会 会 期 中 の 平 成 26 年 2 月 4 日 に 内 閣 提 出 法 案 第 8 号 として 衆 議 院 に 提 出 受 理 された (20) その 後 の 経 過 について 概 略 を 示 すと 次 の 通 りである 衆 議 院 議 案 受 理 年 月 日 平 成 26 年 2 月 4 日 衆 議 院 付 託 年 月 日 平 成 26 年 2 月 24 日 ( 財 務 金 融 委 員 会 ) 衆 議 院 審 査 終 了 年 月 日 平 成 26 年 2 月 28 日 ( 可 決 ) 衆 議 院 審 議 終 了 年 月 日 平 成 26 年 2 月 28 日 ( 可 決 ) 参 議 院 予 備 審 査 議 案 受 理 年 月 日 平 成 26 年 2 月 4 日 参 議 院 議 案 受 理 年 月 日 平 成 26 年 2 月 28 日 (20) 地 方 法 人 税 法 案 に 関 連 する 地 方 税 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 案 ( 閣 法 10 号 )および 地 方 交 付 税 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 案 ( 閣 法 11 号 )は いずれも 同 月 7 日 に 衆 議 院 に 提 出 受 理 され 同 月 18 日 に 衆 議 院 総 務 委 員 会 に 付 託 された いずれの 法 案 も 平 成 26 年 2 月 28 日 に 衆 議 院 本 会 議 で 可 決 され 3 月 20 日 に 参 議 院 本 会 議 で 可 決 され 成 立 した 同 月 31 日 に 地 方 税 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 は 法 律 第 4 号 として 地 方 交 付 税 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 案 は 法 律 第 5 号 として 公 布 された - 82 -

参 議 院 付 託 年 月 日 平 成 26 年 3 月 7 日 ( 財 務 金 融 委 員 会 ) 参 議 院 審 査 終 了 年 月 日 平 成 26 年 3 月 20 日 ( 可 決 ) 参 議 院 審 議 終 了 年 月 日 平 成 26 年 3 月 20 日 ( 可 決 ) 公 布 年 月 日 平 成 26 年 3 月 31 日 法 律 番 号 第 11 号 施 行 年 月 日 平 成 26 年 10 月 1 日 ( 附 則 第 1 項 ) 地 方 法 人 税 法 案 の 提 案 理 由 は 平 成 二 十 六 年 度 の 税 制 改 正 の 一 環 として 法 人 の 道 府 県 民 税 及 び 市 町 村 民 税 の 法 人 税 割 の 税 率 の 引 下 げにあわせて 地 方 団 体 の 税 源 の 偏 在 性 を 是 正 しその 財 源 の 均 衡 化 を 図 ることを 目 的 として 地 方 交 付 税 の 財 源 を 確 保 するための 地 方 法 人 税 を 創 設 するため その 課 税 標 準 税 率 等 の 計 算 方 法 を 定 めるとともに 地 方 法 人 税 の 申 告 及 び 納 付 の 手 続 その 他 納 税 義 務 の 適 正 な 履 行 を 確 保 するための 必 要 な 事 項 を 定 める 必 要 がある と 述 べられる これを 受 けて 財 務 金 融 委 員 会 ( 衆 議 院 ) 財 政 金 融 委 員 会 ( 参 議 院 )の 審 査 が 行 われたのであるが 所 得 税 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 案 ( 以 下 所 得 税 法 等 改 正 法 案 )と 一 括 審 議 されており 関 心 も 所 得 税 法 等 改 正 法 案 のほうが 高 かったこ とは 否 定 できない 審 査 は 平 成 26 年 2 月 25 日 の 衆 議 院 財 務 金 融 委 員 会 ( 第 3 号 )から 開 始 された 大 熊 利 昭 委 員 (みんなの 党 以 下 同 じ)は 地 方 法 人 税 による 法 人 住 民 税 法 人 税 割 の 引 き 下 げ 分 (4.4%)について 基 本 的 な 理 解 としては いわゆる 都 市 部 と 地 方 の 格 差 が 広 がっているんだ こういうところに 背 景 があるというふうに 考 えて 差 し 支 えないものなの かと 質 問 している これに 対 し 上 川 陽 子 総 務 副 大 臣 ( 当 時 )は 地 方 消 費 税 率 引 き 上 げ によりまして 地 方 税 そのものは 充 実 する と 述 べた 上 で 交 付 税 におきましては こ の 増 収 分 が 基 準 財 政 収 入 額 に 算 入 されることとなるということでありますので 交 付 団 体 においては これが 地 方 交 付 税 の 減 となって 相 殺 される また 一 方 不 交 付 団 体 では そ のまま 超 過 財 源 の 増 というふうになるわけで 委 員 御 指 摘 のとおり 交 付 団 体 と 不 交 付 団 体 との 間 の 財 政 力 の 格 差 の 拡 大 というところにつながる ので 今 回 の 改 正 におきまして は 地 方 団 体 間 の 財 政 力 格 差 の 縮 小 を 図 るため 法 人 住 民 税 の 一 部 を 交 付 税 原 資 化 する と 答 弁 している 関 連 して 政 府 参 考 人 の 平 嶋 彰 英 総 務 省 大 臣 官 房 審 議 官 は リーマン ショック 以 前 に 都 市 部 と 地 方 部 の 格 差 が 拡 大 しており ここ 数 年 法 人 関 係 税 が 少 し 回 復 してきており 再 び 格 差 が 拡 大 傾 向 にある 旨 を 述 べている また 鈴 木 克 昌 委 員 ( 生 活 の 党 )が 都 道 府 県 間 で 地 方 法 人 税 導 入 について 見 解 が 分 か れることを 指 摘 したのに 対 し 伊 藤 忠 彦 総 務 大 臣 政 務 官 は 偏 在 性 の 大 きい 法 人 住 民 税 - 83 -

法 人 税 割 の 一 部 を 地 方 法 人 税 として 国 税 化 し その 税 収 全 額 を 地 方 交 付 税 の 原 資 に 繰 り 入 れること が 地 方 分 権 に 逆 行 するという 声 も あることを 認 めつつ 国 税 化 され る 税 収 の 全 額 は 地 方 の 固 有 の 財 源 である 地 方 交 付 税 の 原 資 となる ので 地 方 全 体 とし て 地 方 税 の 充 実 を 図 りつつ 地 域 間 の 税 源 の 偏 在 性 を 是 正 いたしまして 財 政 力 格 差 の 縮 小 を 図 る 今 回 の 改 正 の 内 容 につきましては 地 方 分 権 のさらなる 推 進 に 資 することである 大 変 重 要 な 改 革 であるというふうに 認 識 をいたしております と 答 弁 した 次 に 翌 日 の 衆 議 院 財 務 金 融 委 員 会 ( 第 4 号 )である まず 桜 内 文 城 委 員 ( 日 本 維 新 の 会 )は 地 方 法 人 税 が 地 方 の 住 民 税 を 四 四 % 分 減 税 するかわりに これを 国 税 とし て 徴 収 して それを 交 付 税 特 会 を 経 由 して 地 方 に 偏 在 なくお 配 りするという 仕 組 みであ ると 指 摘 した 上 で 法 人 事 業 税 の 一 部 を 国 税 化 した 地 方 法 人 特 別 税 法 人 住 民 税 の 一 部 を 国 税 化 する 地 方 法 人 税 のいずれも 損 金 不 算 入 であると 質 したのに 対 し 古 川 禎 久 財 務 副 大 臣 は 地 方 法 人 特 別 税 譲 与 税 を 金 額 を 圧 縮 していって 今 後 それをなくしていくという こと あるいは 今 回 の 地 方 法 人 税 にしましても 税 調 の 方 針 としては 経 過 的 な 位 置 づけ だというふうに 受 けとめ るが 将 来 的 にはもっと 整 理 される 形 で 議 論 がなされるべきも のだ とする 旨 を 述 べている 鈴 木 委 員 は 我 が 国 の 法 人 実 効 税 率 については 国 際 的 には 国 税 よりも 地 方 税 の 方 が 高 いというふうに 指 摘 されており 今 後 の 法 人 実 効 税 率 引 き 下 げ 論 議 では 地 方 法 人 二 税 の 軽 減 も 議 論 の 対 象 になるのではないか と 地 方 法 人 課 税 の 見 直 しを 含 めた 法 人 実 効 税 率 の 引 き 下 げ 議 論 の 方 向 性 を 質 した 今 後 の 税 制 改 革 の 方 向 性 に 関 わる 重 要 な 論 点 を 示 したものと 評 価 しうるが それだけに 回 答 は 難 しいであろう 麻 生 財 務 大 臣 も 今 後 政 府 税 制 調 査 会 において 検 討 するなどと 応 答 したにすぎない 結 局 平 成 26 年 2 月 28 日 の 衆 議 院 財 務 金 融 委 員 会 ( 第 5 号 )の 冒 頭 に 動 議 が 提 出 されて 質 疑 は 終 局 した 田 沼 隆 志 委 員 ( 日 本 維 新 の 会 )は 地 方 法 人 税 法 案 が 地 方 税 を 国 税 に するもので 地 方 分 権 の 原 則 に 逆 行 しており この 税 は 直 接 地 方 交 付 税 特 会 に 入 ると 言 いますけれども 依 然 として 交 付 税 制 度 の 存 続 中 央 集 権 的 制 度 を 前 提 とし 地 方 の 自 立 そのための 消 費 税 地 方 税 化 と 地 方 共 有 税 創 設 とは 全 く 相 入 れ ないとして 反 対 討 論 を 行 った また 佐 々 木 憲 昭 委 員 ( 日 本 共 産 党 )は 地 方 法 人 税 法 案 が 消 費 税 増 税 に 伴 う 地 方 消 費 税 の 増 収 によって 拡 大 する 地 方 自 治 体 間 の 税 収 格 差 を 法 人 住 民 税 等 の 見 直 しで 是 正 するために 地 方 法 人 税 を 新 たに 創 設 するもので 消 費 税 増 税 と 一 体 のもの であり 消 費 税 を 地 方 財 政 の 主 要 財 源 として 整 備 定 着 させるものであ るなどとして 反 対 討 論 を 行 った しかし 同 法 案 は 起 立 多 数 により 可 決 された - 84 -

同 日 に 行 われた 本 会 議 ( 第 7 号 )においては 古 本 伸 一 郎 議 員 ( 民 主 党 無 所 属 クラブ) および 佐 々 木 議 員 の 反 対 討 論 が 行 われたが 同 法 案 は 起 立 多 数 により 可 決 された 参 議 院 財 政 金 融 委 員 会 による 審 査 は 3 月 13 日 に 開 始 された( 第 3 号 )が この 時 は 麻 生 財 務 大 臣 による 法 律 案 の 説 明 のみがなされ 18 日 ( 第 5 号 )に 質 疑 が 行 われているが 地 方 法 人 税 法 案 に 関 して 明 確 な 質 疑 を 行 ったのは 平 野 達 男 委 員 ( 民 主 党 )のみである 同 委 員 は 地 方 消 費 税 についても 地 方 交 付 税 不 交 付 団 体 に 税 源 が 集 中 する 傾 向 があると 指 摘 した 上 で 地 方 法 人 特 別 税 の 縮 減 と 地 方 法 人 税 の 導 入 ( 法 人 住 民 税 法 人 税 割 の 国 税 化 )の 関 係 に 関 する 総 務 省 の 説 明 に 苦 言 を 呈 していた (21) 同 月 20 日 の 参 議 院 財 政 金 融 委 員 会 ( 第 6 号 )においては 礒 崎 哲 史 委 員 ( 民 主 党 新 緑 風 会 )および 大 門 実 紀 史 委 員 ( 日 本 共 産 党 )の 反 対 討 論 がなされたが 礒 崎 委 員 は 地 方 法 人 税 法 案 に 対 する 具 体 的 な 反 対 理 由 を 述 べておらず 大 門 委 員 は 衆 議 院 における 佐 々 木 委 員 と 同 旨 を 述 べたに 留 まる 同 日 に 行 われた 本 会 議 ( 第 9 号 )においては 安 井 美 沙 子 議 員 ( 民 主 党 新 緑 風 会 )の 反 対 討 論 が 行 われたが 同 法 案 は 賛 成 投 票 多 数 により 可 決 した これにより 地 方 法 人 税 法 が 成 立 した 4. 法 律 の 内 容 地 方 法 人 税 法 は 全 37 箇 条 および 附 則 から 構 成 される 第 1 条 に 示 されるように 法 律 の 内 容 は 納 税 義 務 者 課 税 の 対 象 税 額 の 計 算 の 方 法 申 告 及 び 納 付 の 手 続 並 びにその 納 税 義 務 の 適 正 な 履 行 を 確 保 するため 必 要 な 事 項 を 定 めるもの であるが 本 稿 は 租 税 法 の 論 文 や 解 説 ではないので 地 方 自 治 地 方 分 権 の 観 点 から 必 要 最 小 限 の 事 項 を 取 り 上 げ 概 観 した 上 で 若 干 の 検 討 を 行 う 地 方 法 人 税 の 趣 旨 は 第 1 条 に 地 方 交 付 税 の 財 源 を 確 保 するため と 明 定 されている これを 受 ける 形 で 地 方 交 付 税 法 第 6 条 第 1 項 は 地 方 法 人 税 の 収 入 額 を 地 方 交 付 税 の 構 成 部 分 とし 第 2 項 は 地 方 法 人 税 の 収 入 見 込 額 に 相 当 する 額 を 交 付 すべき 総 額 に 合 算 する 旨 を 定 める 使 途 を 特 定 の 経 費 に 充 てることが 予 定 されているとまでは 言 えないの (21) なお 5 月 13 日 の 参 議 院 総 務 委 員 会 ( 第 18 号 )において 片 山 虎 之 助 委 員 ( 日 本 維 新 の 会 ) は 法 人 事 業 税 の 所 得 割 収 入 割 についてはその 一 部 を 地 方 法 人 特 別 税 として 国 税 化 した 上 で 譲 与 税 とし 法 人 住 民 税 の 法 人 税 割 については 地 方 法 人 税 として 国 税 とした 上 で 地 方 交 付 税 の 一 部 とすることにつき こんなややこしいことを 何 でするのか などと 批 判 する - 85 -

で 普 通 税 として 位 置 づけられており この 点 は 地 方 法 人 特 別 税 と 同 様 である (22) 地 方 法 人 税 の 納 税 義 務 者 は 法 人 税 を 納 める 義 務 がある 法 人 であり( 地 方 法 人 税 法 第 4 条 ) 法 人 税 と 同 一 である また 課 税 物 件 は 法 人 の 各 課 税 事 業 年 度 の 基 準 法 人 税 額 であり( 同 第 5 条 ) 課 税 標 準 は 各 課 税 事 業 年 度 の 課 税 標 準 法 人 税 額 = 各 課 税 事 業 年 度 の 基 準 法 人 税 額 である( 同 第 9 条 ) ここで 基 準 法 人 税 額 は 地 方 法 人 税 法 第 6 条 各 号 に 定 義 されるものであり 第 1 号 を 例 にとるならば 法 人 税 法 第 二 条 第 三 十 一 号 に 規 定 する 確 定 申 告 書 を 提 出 すべき 内 国 法 人 については 当 該 内 国 法 人 の 法 人 税 の 課 税 標 準 である 各 事 業 年 度 の 所 得 の 金 額 につき 同 法 その 他 の 法 人 税 の 税 額 の 計 算 に 関 する 法 令 の 規 定 ( 同 法 第 六 十 八 条 から 第 七 十 条 の 二 までの 規 定 を 除 く )により 計 算 した 法 人 税 の 額 ( 附 帯 税 の 額 を 除 く ) である (23) 従 って 地 方 法 人 税 の 課 税 要 件 に 関 する 規 定 は 表 現 に 若 干 の 相 違 はあるものの 法 人 住 民 税 法 人 税 割 に 関 する 地 方 税 法 の 規 定 と 同 じ 趣 旨 である( 地 方 税 法 第 23 条 第 1 項 第 3 号 第 4 号 同 第 292 条 第 1 項 第 3 号 第 4 号 を 参 照 ) 立 法 の 趣 旨 からすれば 最 も 関 心 を 呼 ぶものは 税 率 であろう 地 方 法 人 税 法 第 10 条 第 1 項 は 地 方 法 人 税 の 額 は 各 課 税 事 業 年 度 の 課 税 標 準 法 人 税 額 に 百 分 の 四 四 の 税 率 を 乗 じて 計 算 した 金 額 とする と 定 める( 同 第 2 項 も 参 照 ) (24) これに 伴 い 平 成 26 年 10 月 1 日 以 後 に 開 始 する 事 業 年 度 より 道 府 県 民 税 法 人 税 割 の 標 準 税 率 ( 地 方 税 法 第 51 条 第 1 項 本 文 )は5.0%から3.2%に 制 限 税 率 ( 同 ただし 書 き)は6.0%から4.2%に 改 められる ( 地 方 税 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 第 1 条 ) また 市 町 村 民 税 法 人 税 割 の 標 準 税 率 ( 地 方 税 法 第 314 条 の4 第 1 項 )は12.3%から9.7%に 制 限 税 率 ( 同 ただし 書 き)は14.7%か ら12.1%に 改 められる( 地 方 税 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 第 1 条 以 上 につき 表 1も 参 照 ) これにより 法 人 税 + 住 民 税 法 人 税 割 の 納 税 負 担 は 改 正 の 前 後 で 変 わらないことと なる (25) (22) 金 子 前 掲 注 (5)15 頁 石 村 耕 治 編 税 金 のすべてがわかる 現 代 税 法 入 門 塾 第 7 版 (2014 年 清 文 社 )22 頁 [ 浅 羽 隆 史 担 当 ] (23) 従 って 所 得 税 額 控 除 外 国 税 額 控 除 および 仮 装 経 理 に 基 づく 過 大 申 告 の 場 合 の 更 正 に 伴 う 法 人 税 額 の 控 除 は 行 われない 但 し 地 方 法 人 税 の 外 国 税 額 控 除 および 仮 装 経 理 に 基 づく 過 大 申 告 の 場 合 の 更 正 に 伴 う 地 方 法 人 税 額 の 控 除 は 行 われる( 地 方 法 人 税 法 第 12 条 第 13 条 ) (24) また 法 人 税 法 に 定 められる 特 定 同 族 会 社 等 の 特 別 税 率 の 適 用 がある 法 人 については 地 方 法 人 税 法 第 11 条 により 法 人 税 法 第 六 十 七 条 第 一 項 又 は 第 八 十 一 条 の 十 三 第 一 項 に 規 定 する 合 計 額 に 百 分 の 四 四 を 乗 じて 計 算 した 金 額 を 加 算 した 金 額 とされる (25) この 点 については 村 木 慎 吾 法 人 課 税 (Q&Aでわかる 大 綱 の 項 目 別 解 説 ) 税 務 弘 報 62 巻 3 号 (2014 年 )64 頁 の 図 表 がわかりやすい - 86 -

< 表 1> 法 人 住 民 税 法 人 税 割 の 税 率 の 改 正 ( 平 成 26 年 10 月 1 日 以 後 に 開 始 する 事 業 年 度 より) 税 目 改 正 前 改 正 後 標 準 税 率 制 限 税 率 標 準 税 率 制 限 税 率 道 府 県 民 税 法 人 税 割 5.0% 6.0% 3.2% 4.2% 市 町 村 民 税 法 人 税 割 12.3% 14.7% 9.7% 12.1% 出 典 : 平 成 26 年 度 税 制 改 正 大 綱 ( 自 由 民 主 党 公 明 党 平 成 25 年 12 月 12 日 )79 頁 < 表 2> 地 方 特 別 法 人 税 法 の 税 率 の 改 正 ( 平 成 26 年 10 月 1 日 以 後 に 開 始 する 事 業 年 度 より) 区 分 改 正 前 改 正 後 付 加 価 値 割 額 資 本 割 額 および 所 得 割 額 の 合 算 額 ( 外 形 標 準 課 税 ) によって 法 人 事 業 税 を 課 税 される 法 人 の 所 得 割 額 に 対 する 税 率 148% 67.4% 所 得 割 額 によって 法 人 事 業 税 を 課 税 される 法 人 の 所 得 割 額 に 対 する 税 率 81% 43.2% 収 入 割 額 によって 法 人 事 業 税 を 課 税 される 法 人 の 収 入 割 額 に 対 する 税 率 81% 43.2% 出 典 : 平 成 26 年 度 税 制 改 正 大 綱 ( 自 由 民 主 党 公 明 党 平 成 25 年 12 月 12 日 )80 頁 < 表 3> 法 人 事 業 税 の 所 得 割 収 入 割 の 税 率 の 改 正 ( 平 成 26 年 10 月 1 日 以 後 に 開 始 する 事 業 年 度 より) 区 分 法 人 の 種 類 所 得 等 の 区 分 外 形 標 準 課 税 法 人 所 得 課 税 法 人 所 得 課 税 法 人 収 入 金 額 課 税 法 人 資 本 金 等 の 額 が 1 億 円 超 の 普 通 法 人 普 通 法 人 公 益 法 人 等 特 別 法 人 ( 農 協 信 用 金 庫 医 療 法 人 等 ) 電 気 ガス 供 給 業 保 険 業 法 人 所 得 割 所 得 割 所 得 割 軽 減 税 率 適 用 法 人 軽 減 税 率 適 用 法 人 軽 減 税 率 適 用 法 人 標 準 税 率 改 正 前 改 正 後 年 400 万 円 以 下 1.5% 2.2% 年 400 万 円 超 年 800 万 円 以 下 2.2% 3.2% 年 800 万 円 超 2.9% 4.3% 軽 減 税 率 不 適 用 法 人 2.9% 4.3% 付 加 価 値 割 資 本 割 改 正 なし 改 正 なし 年 400 万 円 以 下 2.7% 3.4% 年 400 万 円 超 年 800 万 円 以 下 4.0% 5.1% 年 800 万 円 超 5.3% 6.7% 軽 減 税 率 不 適 用 法 人 5.3% 6.7% 年 400 万 円 以 下 2.7% 3.4% 年 400 万 円 超 3.6% 4.6% 軽 減 税 率 不 適 用 法 人 3.6% 4.6% 収 入 割 0.7% 0.9% 出 典 : 平 成 26 年 度 税 制 改 正 大 綱 ( 自 由 民 主 党 公 明 党 平 成 25 年 12 月 12 日 )81 頁 より 筆 者 が 作 成 - 87 -

また 地 方 法 人 税 法 の 成 立 施 行 に 伴 い 法 人 事 業 税 および 地 方 法 人 特 別 税 の 税 率 は 地 方 税 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 第 4 条 により 変 更 される その 概 略 を 表 2および 表 3に 示 したが 先 に 例 とした 付 加 価 値 割 額 資 本 割 額 及 び 所 得 割 額 の 合 算 額 によって 法 人 の 事 業 税 を 課 される 法 人 ( 地 方 法 人 特 別 税 法 第 9 条 第 1 号 )によって 示 すならば 地 方 法 人 特 別 税 の 税 率 は4.3%から2.9% (26) に 法 人 事 業 税 の 税 率 は2.9%から4.3%に 改 められる すなわち 法 人 事 業 税 の 税 率 は 引 き 上 げられ 地 方 法 人 特 別 税 の 税 率 は 引 き 下 げられ そ の 結 果 として 法 人 事 業 税 + 地 方 法 人 特 別 税 の 納 税 負 担 は 改 正 の 前 後 でほとんど 変 わらな いこととなる (27) 納 税 義 務 者 の 納 税 負 担 に 変 化 が 生 じないように 工 夫 された 訳 であるが 少 なくとも 消 費 税 地 方 消 費 税 の 税 率 が10%に 引 き 上 げられるまでは 地 方 法 人 特 別 税 と 地 方 法 人 税 とが 併 存 することとなる また 地 方 法 人 特 別 税 の 賦 課 徴 収 が 都 道 府 県 が 当 該 都 道 府 県 の 法 人 の 事 業 税 の 賦 課 徴 収 の 例 により 当 該 都 道 府 県 の 法 人 の 事 業 税 の 賦 課 徴 収 と 併 せて 行 うものとする ( 地 方 法 人 特 別 税 法 第 10 条 )とされているのに 対 し 地 方 法 人 税 の 場 合 は 納 税 義 務 者 たる 法 人 が 所 轄 税 務 署 長 に 申 告 し 納 付 することとされている( 地 方 法 人 税 法 第 16 条 第 19 条 ない し 第 21 条 ) このことから 今 後 地 方 税 制 における 法 人 課 税 は 弱 められ 国 税 化 される という 方 向 性 を 示 すものとも 考 えられる (28) 5. おわりに 前 述 のように 地 方 法 人 税 法 案 は 第 186 回 国 会 において 所 得 税 法 等 改 正 法 案 と 併 せて 審 議 されたが 後 者 と 比 較 しても 十 分 に 審 議 されたものとは 言 い 難 い しかし 両 法 案 の 審 議 とは 言 え ほとんどが 所 得 税 法 等 改 正 法 案 に 関 する 内 容 であったが において 度 々 法 人 税 の 税 率 引 き 下 げ さらに 法 人 住 民 税 法 人 事 業 税 を 併 せた 実 効 税 率 の 引 き 下 げ (26) 地 方 法 人 特 別 税 法 第 9 条 第 1 項 により 基 準 法 人 所 得 割 額 ( 同 第 3 条 第 5 号 同 第 2 条 も 参 照 )に 新 しい 税 率 の67.4%を 乗 ずることによって 得 られる (27) やはり 村 木 前 掲 注 (25) 頁 の 図 表 がわかりやすい 厳 密 には 改 正 の 前 後 で 法 人 事 業 税 + 地 方 法 人 特 別 税 の 納 税 負 担 が 全 く 変 わらない 訳 ではなく 付 加 価 値 割 額 資 本 割 額 及 び 所 得 割 額 の 合 算 額 によって 法 人 の 事 業 税 を 課 される 法 人 については 7.192%から7.198%に 僅 かながら 引 き 上 げられることになる (28) 多 田 雄 司 地 方 公 共 団 体 の 自 主 財 源 と 歳 入 格 差 の 是 正 税 経 通 信 69 巻 7 号 (2014 年 )3 頁 も 参 照 - 88 -

に 関 する 質 疑 応 答 がなされていたことに 注 意 を 向 けるべきである 現 在 の 第 二 次 安 倍 内 閣 は 法 人 課 税 の 実 効 税 率 引 き 下 げを 重 要 政 策 として 掲 げており 国 会 での 質 疑 応 答 におい ても 内 閣 が 法 人 税 率 の 引 き 下 げを 目 指 すことが 明 言 されている 平 成 26 年 度 与 党 税 制 改 革 大 綱 も わが 国 経 済 の 競 争 力 の 向 上 のために 様 々な 対 応 を 行 う 中 で 法 人 実 効 税 率 を 引 き 下 げる 環 境 を 作 り 上 げることも 重 要 な 課 題 である と 述 べている 法 人 実 効 税 率 の 引 き 下 げが 実 現 されるならば 法 人 課 税 への 依 存 度 が 高 い 都 道 府 県 財 政 に 対 する 負 の 影 響 は 否 定 できない 第 一 に 地 方 交 付 税 法 第 6 条 に 定 められる 地 方 交 付 税 の 総 額 の 算 定 に 影 響 を 及 ぼす 同 条 に 定 められる( 地 方 法 人 税 を 除 く)5 税 の 収 入 ( 見 込 ) 額 の 構 成 比 率 を 見 直 す などの 措 置 がとられたものの( 地 方 交 付 税 法 第 6 条 を 参 照 ) 抜 本 的 な 改 革 が 行 われる 際 に は 再 検 討 が 求 められるであろう 少 なくとも 法 人 税 の 収 入 ( 見 込 ) 額 に 関 しては 修 正 を 必 要 とすることとなる 第 二 に 法 人 税 法 第 158 条 が 地 方 公 共 団 体 は 法 人 税 の 附 加 税 を 課 することができな い と 定 めるにも 関 わらず 法 人 住 民 税 の 法 人 税 割 および 法 人 事 業 税 の 所 得 割 が 実 質 的 に 法 人 税 の 付 加 税 としての 位 置 づけを 与 えられることから 法 人 課 税 そのものの 再 検 討 を 行 わざるをえない とくに 法 人 住 民 税 の 法 人 税 割 は 法 人 税 額 又 は 個 別 帰 属 法 人 税 額 を 課 税 標 準 として 課 する ものであり( 地 方 税 法 第 23 条 第 1 項 第 3 号 同 第 292 条 第 1 項 第 3 号 ) 法 人 税 率 と 法 人 税 割 の 税 額 は 連 動 する また 法 人 事 業 税 の 所 得 割 の 課 税 標 準 は 各 事 業 年 度 の 所 得 額 であり( 同 第 72 条 の12 第 1 号 ハ) その 算 定 は 当 該 各 事 業 年 度 の 法 人 税 の 課 税 標 準 である 所 得 の 計 算 の 例 によ る( 同 第 72 条 の23 第 1 項 )から やはり 法 人 税 率 の 引 き 下 げが 法 人 事 業 税 にも 影 響 を 及 ぼすこととなる 今 後 抜 本 的 な 改 革 がどの 程 度 まで 行 われうるのか 不 明 瞭 な 部 分 もあるが 地 方 法 人 特 別 税 地 方 法 人 税 と 進 んできた 過 程 に 鑑 みるならば 地 方 税 制 についても 法 人 所 得 課 税 から 消 費 課 税 へ という 傾 向 が 強 められる 可 能 性 は 高 いものと 思 われる また 検 討 会 報 告 書 においても 指 摘 されているように 今 後 法 人 住 民 税 均 等 割 法 人 事 業 税 付 加 価 値 割 などの 充 実 も 検 討 されるものと 思 われる いずれにせよ 地 方 税 制 における 所 得 課 税 が 縮 小 の 方 向 性 をたどる 可 能 性 があることは 否 定 できないであろう (もり としき 大 東 文 化 大 学 法 学 部 教 授 ) キーワード: 地 方 法 人 税 法 / 地 方 法 人 特 別 税 法 / 税 源 の 偏 在 度 / 税 収 格 差 / 地 方 消 費 税 / 地 方 法 人 二 税 - 89 -