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平 成 7 年 に 発 生 した 阪 神 淡 路 大 震 災 では 地 震 による 直 接 的 な 死 者 数 の 約 9 割 が 住 宅 建 築 物 の 倒 壊 等 によるものであった 地 震 による 被 害 を 軽 減 するためには 住 宅 建 築 物 の 耐 震 化 が 重 要 であるが なかなか 進 んでいない 新 潟 県 中 越 地 震 の 発 生 や 東 海 東 南 海 南 海 地 震 等 の 発 生 の 切 迫 性 が 高 まっていることを 踏 まえ 国 土 交 通 省 は 平 成 18 年 を 耐 震 元 年 と 位 置 づけ 住 宅 建 築 物 の 耐 震 化 を 推 進 している 本 稿 では 住 宅 の 耐 震 化 をめぐる 施 策 と 耐 震 化 が 進 まない 理 由 について 整 理 する I 新 耐 震 基 準 と 既 存 不 適 格 住 宅 1 新 耐 震 基 準 建 築 基 準 法 は 建 築 物 が 地 震 等 に 対 して 安 全 な 構 造 でなければならないとし 安 全 上 必 要 な 技 術 的 基 準 については 同 法 施 行 令 で 定 めている 現 行 の 耐 震 基 準 は 昭 和 56 年 6 月 1 日 に 施 行 された 建 築 基 準 法 施 行 令 の 一 部 を 改 正 する 政 令 ( 昭 和 55 年 政 令 第 196 号 ) に 基 づくもので 新 耐 震 基 準 と 呼 ばれている 新 耐 震 基 準 では 2 段 階 の 耐 震 目 標 が 設 定 されている 1 耐 用 年 限 中 に 数 度 は 遭 遇 する 程 度 の 中 地 震 ( 震 度 5 強 程 度 )に 対 しては 建 築 物 の 機 能 を 保 持 し 2 耐 用 年 限 中 に 一 度 遭 遇 するかもしれない 程 度 の 大 地 震 ( 震 度 6 強 から 震 度 7 程 度 )に 対 しては 建 築 物 の 架 構 に 部 分 的 なひび 割 れ 等 の 損 傷 が 生 じても 最 終 的 に 崩 壊 からの 人 命 の 保 護 を 図 ること としている 1 2 耐 震 改 修 促 進 法 と 住 宅 阪 神 淡 路 大 震 災 の 死 者 の 大 半 は 住 宅 建 築 物 の 倒 壊 等 によるものであったことから 建 築 物 の 耐 震 性 向 上 の 必 要 性 が 強 く 認 識 された 一 方 新 耐 震 基 準 施 行 以 後 に 建 築 された 建 築 物 の 被 害 程 度 は 比 較 的 軽 く 新 耐 震 基 準 は 概 ね 妥 当 なものと 考 えられた そこで 新 耐 震 基 準 を 満 たさない 建 築 物 の 耐 震 改 修 を 図 るため 建 築 物 の 耐 震 改 修 の 促 進 に 関 する 法 律 ( 平 成 7 年 法 律 第 123 号 以 下 耐 震 改 修 促 進 法 という )が 制 定 された 同 法 では 1 多 数 の 者 が 利 用 する 建 築 物 で 耐 震 関 係 規 定 について 既 存 不 適 格 建 築 物 で あるもの( 以 下 特 定 建 築 物 という )の 所 有 者 に 耐 震 診 断 改 修 の 努 力 義 務 2 認 定 を 受 けた 建 築 物 の 耐 震 改 修 工 事 について 耐 震 関 係 規 定 以 外 の 不 適 格 事 項 の 不 遡 及 2 3 特 定 建 築 物 の 所 有 者 に 対 する 地 方 公 共 団 体 による 指 導 助 言 指 示 等 が 規 定 された 住 宅 については 3 階 以 上 かつ 床 面 積 の 合 計 が 1,000 m2 以 上 の 賃 貸 共 同 住 宅 が 特 定 建 築 物 に 含 まれ 地 方 公 共 団 体 が 必 要 な 指 導 及 び 助 言 を 行 うことができることとされた し かし 戸 建 住 宅 や 分 譲 マンションなどは 特 定 建 築 物 ではなく 耐 震 診 断 改 修 の 努 力 義 務 は 課 せられていない 1 日 本 建 築 センター 編 建 築 物 の 構 造 規 定 建 築 基 準 法 施 行 令 第 3 章 の 解 説 と 運 用 1997 年 版 1997, p.16. 2 建 築 基 準 法 第 3 条 第 3 項 第 3 号 及 び 第 4 号 では 既 存 不 適 格 建 築 物 について 増 築 改 築 大 規 模 の 修 繕 又 は 大 規 模 の 模 様 替 を 行 う 場 合 には すべての 不 適 格 事 項 を 適 法 にすべきことを 求 めているが 2の 規 定 は 耐 震 改 修 を 行 う 場 合 に 他 の 既 存 不 適 格 に 関 する 事 項 については 現 行 基 準 との 適 合 は 求 めないとしたものであ る なお この 規 定 の 適 用 は 特 定 建 築 物 に 限 らない 1
Ⅱ 住 宅 耐 震 化 の 現 状 1 耐 震 化 の 意 義 3 住 宅 を 耐 震 化 することの 意 義 は 地 震 災 害 での 人 的 被 害 を 減 らすだけではない 被 災 者 が 減 ることで 被 災 地 で 初 期 支 援 に 参 加 できる 人 が 増 加 する 火 災 延 焼 の 危 険 性 が 減 る また 倒 壊 住 宅 による 道 路 閉 塞 を 防 止 できるので 円 滑 な 救 援 消 火 活 動 が 可 能 となる さらに 発 災 後 の 瓦 礫 など 災 害 廃 棄 物 の 発 生 が 抑 制 されるため 処 分 に 要 する 経 費 や 労 力 などの 負 担 が 軽 減 され 早 期 の 復 旧 を 進 める 上 で 効 果 的 である 仮 設 住 宅 や 住 宅 再 建 に 係 る 経 費 負 担 も 軽 減 される 2 耐 震 化 の 現 状 表 1 住 宅 の 耐 震 化 の 現 状 ( 平 成 15 年 推 計 値 ) 住 宅 ( 共 同 住 宅 含 む) うち 戸 建 木 造 全 数 約 4,700 万 戸 約 2,450 万 戸 耐 震 性 が 不 十 分 約 1,150 万 戸 ( 約 25%) 約 1,000 万 戸 ( 約 40%) ( 出 典 ) 耐 震 診 断 改 修 の 状 況 国 土 交 通 省 HP <http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/taishin /05jokyo.pdf>より 作 成 国 土 交 通 省 は 平 成 15 年 現 在 で 共 同 住 宅 を 含 む 住 宅 総 数 約 4,700 万 戸 の うち 約 25%に 相 当 する 約 1,150 万 戸 の 耐 震 性 が 不 十 分 であると 推 計 してい る( 表 1) 木 造 戸 建 住 宅 では 総 数 約 2,450 万 戸 のうち 耐 震 性 が 不 十 分 なも のは 約 1,000 万 戸 で 約 40%に 達 す る 住 宅 の 耐 震 改 修 は 年 に 約 5 万 戸 建 替 えは 年 に 約 40 万 戸 のペースで 行 われているが このペースでは 耐 震 性 が 不 十 分 な 住 宅 が 概 ね 解 消 されるまでには 20 年 以 上 かかることになる 4 Ⅲ 耐 震 化 促 進 への 取 り 組 み 1 国 の 取 り 組 み (1) 中 央 防 災 会 議 の 地 震 防 災 戦 略 と 耐 震 化 緊 急 対 策 方 針 中 央 防 災 会 議 ( 会 長 : 内 閣 総 理 大 臣 )では 平 成 17 年 3 月 東 海 地 震 東 南 海 南 海 地 震 の 地 震 防 災 戦 略 5 を 策 定 した そこでは 今 後 10 年 間 で 死 者 数 経 済 被 害 額 を 半 減 するという 減 災 目 標 を 掲 げている この 目 標 を 達 成 するために 住 宅 の 耐 震 化 率 90%が 挙 げられている 住 宅 の 耐 震 化 により 東 海 地 震 では 想 定 死 者 数 は 約 9,200 人 から 約 3,500 人 減 少 するという 東 南 海 南 海 地 震 では 想 定 死 者 数 は 約 17,800 人 から 約 3,700 人 減 3 防 災 に 関 してとった 措 置 の 概 況 第 159 回 国 会 ( 常 会 ) 提 出, p.9. ; 鍵 屋 一 地 域 防 災 力 強 化 宣 言 増 補 ぎょうせい, 2005, pp.67-69.など 4 住 宅 建 築 物 の 地 震 防 災 推 進 会 議 提 言 住 宅 建 築 物 の 地 震 防 災 対 策 の 推 進 のために 平 成 17 年 6 月, p.7. 国 土 交 通 省 HP<http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/07/070610/01.pdf> 5 地 震 防 災 戦 略 平 成 17 年 3 月 30 日 内 閣 府 防 災 担 当 HP <http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/taisaku_toukai/pdf/senryaku/honbun.pdf> 地 震 防 災 戦 略 は 大 規 模 地 震 について 被 害 想 定 をもとに 人 的 被 害 経 済 被 害 の 軽 減 について 達 成 時 期 を 含 めた 具 体 的 目 標 ( 減 災 目 標 )を 定 めたもの 2
少 するとされている 中 央 防 災 会 議 では 同 年 9 月 建 築 物 の 耐 震 化 緊 急 対 策 方 針 6 を 決 定 した そこでは 建 築 物 の 耐 震 化 を 社 会 全 体 の 国 家 的 な 緊 急 課 題 として 全 国 的 に 緊 急 かつ 強 力 に 実 施 することとし 住 宅 の 耐 震 化 率 を 今 後 10 年 間 で 90%まで 引 き 上 げることを 全 国 レベル の 目 標 としている (2) 耐 震 改 修 促 進 法 改 正 平 成 17 年 2 月 住 宅 建 築 物 の 耐 震 化 の 目 標 の 設 定 及 び 目 標 の 達 成 のための 施 策 につ いて 検 討 を 行 うために 国 土 交 通 省 に 住 宅 建 築 物 の 地 震 防 災 推 進 会 議 が 設 置 された 同 年 6 月 には 提 言 7 が 取 りまとめられた 提 言 では 住 宅 の 耐 震 化 率 を 9 割 とするため に 耐 震 改 修 を 現 状 の 2~3 倍 のペース 建 て 替 えを 現 状 から 5~10 万 戸 / 年 増 とするこ とが 必 要 とされた また 所 有 者 等 が 自 らの 問 題 地 域 の 問 題 として 意 識 を 持 って 取 り 組 むことが 必 要 であり 国 及 び 地 方 公 共 団 体 は これをできる 限 り 支 援 する 観 点 から 環 境 整 備 を 中 心 に 施 策 を 展 開 すべきとしている 耐 震 改 修 促 進 法 の 問 題 点 としては 地 方 公 共 団 体 が 計 画 的 な 耐 震 診 断 改 修 に 取 り 組 む 仕 組 みが 法 律 上 位 置 づけられていないことや 住 宅 が 耐 震 改 修 の 努 力 義 務 の 対 象 となっていないこと などが 指 摘 された この 提 言 を 踏 まえ 同 年 11 月 建 築 物 の 耐 震 改 修 の 促 進 に 関 する 法 律 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 ( 平 成 17 年 法 律 第 120 号 )により 耐 震 改 修 促 進 法 が 改 正 された 改 正 法 では 1 建 築 物 の 地 震 に 対 する 安 全 性 の 確 保 等 について 国 民 の 努 力 義 務 を 規 定 し( 第 3 条 ) 2 国 土 交 通 大 臣 は 建 築 物 の 耐 震 診 断 及 び 耐 震 改 修 の 促 進 を 図 るための 基 本 方 針 を 定 め( 第 4 条 ) 都 道 府 県 は 基 本 方 針 に 基 づき 耐 震 改 修 促 進 計 画 を 定 めること( 第 5 条 ) 3 倒 壊 に より 道 路 8 を 閉 塞 させる 建 築 物 等 を 特 定 建 築 物 に 追 加 ( 第 6 条 )するなどとした これによ り 道 路 を 閉 塞 させる 住 宅 は 特 定 建 築 物 となり 所 有 者 に 耐 震 改 修 の 努 力 義 務 が 課 せら れるとともに 地 方 公 共 団 体 の 指 導 及 び 助 言 の 対 象 となった 国 土 交 通 省 は 建 築 物 の 耐 震 診 断 及 び 耐 震 改 修 の 促 進 を 図 るための 基 本 的 な 方 針 ( 平 成 18 年 国 土 交 通 省 告 示 第 184 号 以 下 基 本 方 針 という)を 策 定 した 改 正 法 は こ の 基 本 方 針 と 併 せ 平 成 18 年 1 月 に 施 行 された 国 土 交 通 省 は 法 施 行 後 半 年 以 内 遅 くとも 1 年 以 内 を 目 途 に 都 道 府 県 耐 震 改 修 促 進 計 画 を 策 定 することを 求 めている 計 画 の 策 定 は 遅 れているが 平 成 18 年 度 内 には 全 都 道 府 県 で 策 定 される 予 定 である また 耐 震 性 の 状 況 についての 情 報 を 開 示 する 仕 組 みを 整 備 するため 平 成 18 年 4 月 に 宅 地 建 物 取 引 業 法 施 行 規 則 ( 昭 和 32 年 建 設 省 令 第 12 号 )が 改 正 された 新 耐 震 基 準 施 行 前 に 建 築 された 建 物 については 耐 震 診 断 を 行 っている 場 合 は その 内 容 を 重 要 事 項 説 明 として 建 物 の 購 入 者 等 に 説 明 することとされた (3) 補 助 制 度 交 付 金 国 土 交 通 省 は 阪 神 淡 路 大 震 災 を 踏 まえ 平 成 7 年 度 に マンション 等 に 対 する 耐 震 診 断 改 修 に 対 する 補 助 制 度 を 創 設 した さらに 平 成 10 年 度 に 戸 建 住 宅 の 耐 震 診 断 の 補 助 制 度 を 平 成 14 年 度 に 戸 建 住 宅 の 耐 震 改 修 の 補 助 制 度 を 創 設 した しかし 平 6 建 築 物 の 耐 震 化 緊 急 対 策 方 針 平 成 17 年 9 月 27 日 内 閣 府 防 災 担 当 HP <http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/taisaku_kenchiku/pdf/houshin/honbun.pdf> 7 住 宅 建 築 物 の 地 震 防 災 推 進 会 議 前 掲 注 4 8 都 道 府 県 耐 震 改 修 促 進 計 画 において 対 象 となる 道 路 を 指 定 する( 耐 震 改 修 促 進 法 第 5 条 第 3 項 第 1 号 ) 3
成 16 年 度 末 までの 国 土 交 通 省 の 補 助 実 績 は マンション 戸 建 住 宅 合 わせて 耐 震 診 断 約 21 万 戸 耐 震 改 修 54 戸 に 過 ぎず 9 制 度 は 十 分 には 活 用 されていなかった そこで 国 土 交 通 省 は 既 存 の 補 助 制 度 をわかりやすくするとともに 地 方 公 共 団 体 の 状 況 等 に 応 じた 柔 軟 な 対 応 を 容 易 にするため 平 成 17 年 度 に 補 助 制 度 を 一 元 化 して 住 宅 建 築 物 耐 震 改 修 等 事 業 を 創 設 した( 表 2) 平 成 18 年 度 からは 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 内 等 という 地 域 要 件 を 撤 廃 し 全 国 で 耐 震 改 修 を 促 進 するとともに 緊 急 輸 送 道 路 沿 道 の 建 築 物 に 対 する 補 助 率 のかさ 上 げの 制 度 拡 充 も 行 った なお 平 成 19 年 度 からは 国 地 方 合 わせて 避 難 路 沿 道 等 分 譲 マンションの 耐 震 改 修 費 用 の 33.3%( 現 行 15.2%) を 助 成 する 方 針 である 10 表 2 住 宅 の 耐 震 診 断 改 修 に 対 する 補 助 制 度 ( 平 成 18 年 度 ) 住 宅 建 築 物 耐 震 改 修 等 事 業 耐 震 診 断 補 助 率 民 間 実 施 : 国 1/3 地 方 公 共 団 体 1/3 地 方 公 共 団 体 実 施 : 国 1/2 耐 震 改 修 ( 戸 建 住 宅 ) 地 域 要 件 次 のいずれかの 区 域 内 で 震 災 時 に 倒 壊 により 道 路 閉 塞 が 生 じ るおそれのある 地 区 全 国 の 既 成 市 街 地 換 算 老 朽 住 宅 の 割 合 の 高 い 密 集 市 街 地 計 画 要 件 耐 震 改 修 促 進 計 画 に 位 置 付 けたもの 補 助 率 民 間 実 施 : 国 7.6% 地 方 公 共 団 体 7.6% 地 方 公 共 団 体 実 施 : 国 7.6% 耐 震 改 修 (マンション) 地 域 要 件 全 国 のDID 地 区 等 * 地 域 防 災 計 画 に 位 置 付 けられた 避 難 地 避 難 路 又 は 緊 急 輸 送 道 路 に 面 する 区 域 計 画 要 件 耐 震 改 修 促 進 計 画 に 位 置 付 けたもの 補 助 対 象 耐 震 改 修 促 進 法 等 の 認 定 を 受 けて 行 う 耐 震 改 修 工 事 費 補 助 率 民 間 実 施 : 国 7.6% 地 方 公 共 団 体 7.6% 地 方 公 共 団 体 実 施 : 国 7.6% 緊 急 輸 送 道 路 沿 道 建 築 物 の 場 合 民 間 実 施 : 国 1/3 地 方 公 共 団 体 1/3 地 方 公 共 団 体 実 施 : 国 1/3 その 他 住 宅 の 補 助 対 象 耐 震 化 に 係 る 計 画 策 定 費 PR 費 等 耐 震 化 の 促 進 補 助 率 民 間 実 施 : 国 1/3 地 方 公 共 団 体 1/3 に 関 する 事 業 地 方 公 共 団 体 実 施 : 国 1/2 地 域 住 宅 交 付 金 耐 震 改 修 地 方 公 共 団 体 の 自 主 性 と 創 意 工 夫 に 基 づき 提 案 事 業 の 一 つとして 民 間 住 宅 の 耐 震 改 修 を 行 うことが 可 能 ( 助 成 要 件 助 成 率 等 は 地 方 公 共 団 体 が 独 自 に 決 定 ) ( 出 典 ) 国 土 交 通 政 策 研 究 会 編 著 国 土 交 通 行 政 ハンドブック 2006 大 成 出 版 社, 2006, pp.900-901.より 作 成 *DID 地 区 は 市 町 村 の 区 域 内 で 人 口 密 度 が 1 平 方 キロメートル 当 たり 4,000 人 以 上 の 地 区 が 互 いに 隣 接 し て それらの 隣 接 した 地 域 の 人 口 が 5,000 人 以 上 となる 人 口 集 中 地 区 9 耐 震 診 断 等 に 係 る 国 の 支 援 制 度 の 実 績 国 土 交 通 省 HP <http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/taishin/shien150331.pdf> 10 国 土 交 通 省 住 宅 局 平 成 19 年 度 住 宅 局 関 係 予 算 概 要 平 成 19 年 1 月, p.12. 4
また 平 成 17 年 度 に 創 設 された 地 域 住 宅 交 付 金 11 を 活 用 し 地 方 公 共 団 体 独 自 の 提 案 に よる 事 業 として 民 間 住 宅 の 耐 震 改 修 事 業 を 行 うことも 可 能 となっている (4) 税 制 平 成 14 年 度 税 制 改 正 においては 住 宅 ローン 減 税 の 適 用 対 象 に 耐 震 改 修 工 事 が 追 加 された しかし 耐 震 改 修 工 事 費 に 対 し 長 期 のローンを 組 む 場 合 は 少 なく 住 宅 ローン 減 税 の 効 果 は 限 定 されていた 平 成 18 年 度 税 制 改 正 では 耐 震 改 修 に 要 した 費 用 の 一 部 を 税 額 控 除 する 耐 震 改 修 促 進 税 制 が 創 設 され ローンを 組 まずに 耐 震 改 修 を 行 う 者 に 対 する 効 果 的 な 支 援 策 が 実 現 することとなった( 表 3) ただ 所 得 税 の 税 額 控 除 の 適 用 は 地 方 公 共 団 体 による 耐 震 改 修 に 係 る 補 助 制 度 12 の 対 象 となる 区 域 の 住 宅 に 限 定 されている 平 成 17 年 度 税 制 改 正 では 新 耐 震 基 準 に 適 合 する 中 古 住 宅 については 住 宅 ローン 減 税 の 築 後 経 過 年 数 要 件 を 撤 廃 した 中 古 住 宅 の 流 通 の 促 進 とともに 耐 震 診 断 耐 震 改 修 の 促 進 を 図 ったものである 表 3 住 宅 の 耐 震 改 修 に 対 する 税 制 面 での 支 援 措 置 耐 震 改 修 工 事 に 対 す る 住 宅 ローン 減 税 耐 震 改 修 工 事 に 対 する 住 宅 ローンについては 10 年 間 ローン 残 高 の 1%を 所 得 税 額 から 控 除 耐 震 改 修 促 進 税 制 所 得 税 平 成 20 年 12 月 31 日 までに 一 定 の 区 域 内 で 行 われる 耐 震 改 修 につい て 耐 震 改 修 費 用 の 10% 相 当 額 (20 万 円 を 上 限 )を 所 得 税 額 から 控 除 固 定 資 産 税 平 成 27 年 12 月 31 日 までに 行 われる 耐 震 改 修 (30 万 円 以 上 の 工 事 )に ついて 耐 震 改 修 を 行 った 住 宅 の 固 定 資 産 税 額 (120 m2 相 当 部 分 まで) を 最 大 3 年 間 2 分 の1に 減 額 中 古 住 宅 購 入 の 際 の 住 宅 ローン 減 税 住 宅 ローン 減 税 における 築 後 経 過 年 数 要 件 ( 耐 火 建 築 物 25 年 以 内 耐 火 建 築 物 以 外 20 年 以 内 )を 撤 廃 し 新 耐 震 基 準 への 適 合 を 要 件 化 ( 出 典 ) 防 災 に 関 してとった 措 置 の 概 況 平 成 18 年 度 の 防 災 に 関 する 計 画 第 164 回 国 会 ( 常 会 ) 提 出, p.132., 国 土 交 通 政 策 研 究 会 編 著 国 土 交 通 行 政 ハンドブック 2006 大 成 出 版 社, 2006, p.901.より 作 成 (5) 住 宅 性 能 表 示 制 度 と 地 震 保 険 平 成 12 年 10 月 から 住 宅 の 品 質 確 保 の 促 進 等 に 関 する 法 律 ( 平 成 11 年 法 律 第 81 号 )に 基 づく 住 宅 性 能 表 示 制 度 が 実 施 されている この 制 度 は 住 宅 の 性 能 を 表 示 するた めの 共 通 ルールを 定 め 第 三 者 機 関 が 性 能 評 価 を 行 い その 結 果 を 住 宅 性 能 評 価 書 とし て 交 付 するものである 耐 震 性 能 は 耐 震 等 級 13 として 評 価 される なお 平 成 18 年 10 月 には 免 震 建 築 物 であるか 否 かが 表 示 事 項 に 追 加 された( 平 成 19 年 4 月 1 日 から 適 11 地 方 公 共 団 体 が 作 成 した 地 域 住 宅 計 画 に 基 づき 実 施 される 事 業 の 費 用 に 充 てるため 国 が 交 付 する 交 付 金 12 1 地 域 住 宅 計 画 の 区 域 内 で 地 域 住 宅 交 付 金 を 充 てて 住 宅 耐 震 改 修 の 費 用 の 額 の 10% 以 上 かつ 1 戸 当 た り 20 万 円 以 上 を 補 助 する 事 業 2 都 道 府 県 耐 震 改 修 促 進 計 画 の 区 域 内 で 都 道 府 県 が 国 の 補 助 金 ( 住 宅 建 築 物 耐 震 改 修 等 事 業 による 補 助 金 )を 受 けて 行 う 補 助 事 業 3 住 宅 耐 震 改 修 促 進 計 画 ( 地 方 公 共 団 体 の 作 成 した 地 域 における 地 震 に 対 する 安 全 を 確 保 するための 住 宅 の 耐 震 改 修 の 促 進 に 関 する 事 業 を 定 めた 計 画 )の 区 域 内 で 地 方 公 共 団 体 が 住 宅 の 耐 震 改 修 を 行 う 居 住 者 に 対 して 補 助 金 を 交 付 する 事 業 市 町 村 が 市 町 村 耐 震 改 修 促 進 計 画 を 定 め 国 の 補 助 金 を 受 けて 補 助 事 業 を 実 施 する 場 合 地 方 公 共 団 体 が 地 方 単 独 事 業 として 補 助 事 業 を 実 施 している 場 合 は 3に 該 当 13 耐 震 等 級 には 耐 震 等 級 ( 構 造 躯 体 の 倒 壊 等 防 止 ) と 耐 震 等 級 ( 構 造 躯 体 の 損 傷 防 止 ) があり 地 震 保 険 割 引 の 対 象 となるのは 前 者 である なお 耐 震 等 級 1 は 建 築 基 準 法 に 定 められた 最 低 基 準 と 同 等 である 5
表 4 地 震 保 険 の 割 引 制 度 割 引 制 度 割 引 率 免 震 建 築 物 割 引 ( 住 宅 性 能 表 示 制 度 の 免 震 建 築 物 ) 30% 耐 震 等 級 割 引 ( 住 宅 性 能 表 示 制 度 の 耐 震 等 級 1~3) 10~30% 耐 震 診 断 割 引 ( 耐 震 診 断 または 耐 震 改 修 により 現 10% 行 耐 震 基 準 に 適 合 していることが 確 認 された 住 宅 ) 建 築 年 割 引 ( 昭 和 56 年 6 月 1 日 以 後 に 新 築 された 10% 住 宅 ) ( 出 典 ) 損 害 保 険 料 率 算 出 機 構 地 震 保 険 基 準 料 率 表 平 成 18 年 9 月 26 日 届 出 <http://www.nliro.or.jp/service/ryoritsu /quake/quake180926.pdf>より 作 成 用 ) 地 震 保 険 では 平 成 13 年 10 月 から 耐 震 等 級 割 引 と 建 築 年 割 引 が 導 入 されている( 表 4) 平 成 18 年 9 月 には 新 た に 免 震 建 築 物 割 引 耐 震 診 断 割 引 を 追 加 する 届 出 があり 金 融 庁 による 審 査 期 間 経 過 後 の 同 年 12 月 変 更 が 告 示 されてい る 14 2 地 方 公 共 団 体 の 取 り 組 み (1) 地 方 公 共 団 体 における 補 助 制 度 の 整 備 状 況 表 5 耐 震 診 断 改 修 に 対 する 補 助 制 度 の 整 備 状 況 ( 平 成 19 年 1 月 1 日 現 在 ) 建 物 種 別 区 分 補 助 が 受 けられる 市 区 町 村 ( 全 国 1839 市 区 町 村 ) 市 区 町 村 数 戸 建 住 宅 耐 震 診 断 976 53.1% 率 耐 震 改 修 512 27.8% マンション 耐 震 診 断 188 10.2% 耐 震 改 修 74 4.0% ( 出 典 ) 地 方 公 共 団 体 における 耐 震 改 修 促 進 計 画 の 策 定 予 定 及 び 耐 震 改 修 等 に 対 する 補 助 制 度 の 整 備 状 況 国 土 交 通 省 HP <http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/07/070301/01.pdf>より 作 成 住 宅 の 耐 震 化 を 促 進 するた めに 地 方 公 共 団 体 では 国 が 創 設 した 補 助 制 度 の 導 入 や 独 自 の 補 助 制 度 の 整 備 を 進 めて いる( 表 5) しかし 財 政 負 担 を 伴 うこともあり 地 方 公 共 団 体 の 取 り 組 みには 差 が 見 ら れる 耐 震 改 修 に 係 る 所 得 税 の 税 額 控 除 の 適 用 は 地 方 公 共 団 体 による 耐 震 改 修 に 係 る 補 助 制 度 の 対 象 となる 区 域 の 住 宅 に 限 定 される そのため 国 土 交 通 省 は 住 宅 の 所 有 者 が 税 制 上 の 支 援 を 受 けるうえからも 補 助 制 度 の 整 備 を 求 めてい る 15 ただ 補 助 制 度 を 持 つ 地 方 公 共 団 体 においても その 利 用 が 少 ないことや 耐 震 診 断 を 行 っても 耐 震 改 修 には 結 びつかないなどの 問 題 点 が 指 摘 されている 16 戸 建 住 宅 についての 国 の 補 助 制 度 では 耐 震 診 断 には 地 域 要 件 を 設 けていない 一 方 で 私 的 財 産 への 公 費 投 入 となる 耐 震 改 修 については 道 路 閉 塞 等 の 厳 しい 条 件 を 設 けてい る 地 方 公 共 団 体 では 耐 震 診 断 に 関 しては 国 の 補 助 制 度 を 活 用 しつつ 耐 震 改 修 につ いては 地 域 要 件 を 課 さずに 独 自 制 度 によって 対 応 しているところが 多 い 17 以 下 では 木 造 住 宅 について 先 進 的 に 耐 震 改 修 助 成 を 行 ってきた 横 浜 市 静 岡 県 の 取 り 組 み 最 近 独 自 の 制 度 を 創 設 した 墨 田 区 中 野 区 の 取 り 組 みを 紹 介 する 14 金 融 庁 告 示 第 128 号 ( 平 成 18 年 12 月 27 日 ) 15 耐 震 改 修 促 進 計 画 の 策 定 及 び 耐 震 改 修 に 係 る 補 助 制 度 整 備 の 促 進 について 平 成 18 年 7 月 31 日 付 け 国 住 指 第 1157 号 住 宅 局 建 築 指 導 課 長 通 知 <http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/07/070731/01.pdf> 16 進 まぬ 木 造 住 宅 の 耐 震 化 求 められる 使 い 勝 手 のいい 助 成 制 度 地 方 行 政 9683 号, 2005.1.17, p.15.; 耐 震 診 断 木 造 住 宅 の 1.7% 助 成 利 用 低 く 朝 日 新 聞 ( 大 阪 版 )2005.12.30.など 17 日 本 木 造 住 宅 耐 震 補 強 事 業 者 協 同 組 合 特 定 非 営 利 活 動 法 人 環 境 災 害 対 策 研 究 所 木 造 住 宅 の 耐 震 性 に 係 わる 現 状 とあり 方 に 関 する 調 査 報 告 書 2006.1, pp.36-37. <http://www.mokutaikyo.com/data/200601.html> 6
(2) 横 浜 市 静 岡 県 - 耐 震 改 修 費 への 助 成 - 横 浜 市 では 戸 建 木 造 住 宅 について 平 成 7 年 10 月 から 無 料 耐 震 診 断 を 平 成 11 年 7 月 からは 耐 震 改 修 助 成 を 行 っている 耐 震 改 修 助 成 は 無 料 耐 震 診 断 で 総 合 評 点 18 0.7 未 満 の 住 宅 を 1.0 以 上 に 補 強 する 場 合 を 対 象 としてきた 助 成 額 は 所 得 に 応 じて 決 まるが 最 高 450 万 円 ( 補 助 率 10 分 の 9)であり 手 厚 い 補 助 内 容 として 注 目 された しかし 平 成 17 年 度 末 時 点 で 推 定 診 断 対 象 住 宅 数 20 万 戸 に 対 し 耐 震 診 断 の 申 し 込 み 件 数 は 約 18,000 戸 弱 にとどまった 受 診 率 が 低 いことや 耐 震 改 修 の 必 要 ありと 判 定 されても 耐 震 改 修 を 行 う 割 合 が 少 ないことが 課 題 として 挙 げられた 19 また 慎 重 な 審 査 をするため 決 定 までに 時 間 がかかることや 市 とのやりとりの 煩 雑 さが 指 摘 された 20 平 成 18 年 8 月 からは 市 民 の 負 担 軽 減 と 審 査 の 迅 速 化 を 図 るため 耐 震 改 修 の 補 助 内 容 を 見 直 し 総 合 評 点 1.0 未 満 の 住 宅 を 1.0 以 上 に 補 強 する 場 合 を 対 象 とした 新 制 度 を 施 行 した 新 制 度 では 補 助 限 度 額 を 一 般 世 帯 で 150 万 円 非 課 税 世 帯 で 225 万 円 として 全 額 を 助 成 する こととしている 静 岡 県 では プロジェクト TOUKAI-0 を 平 成 13 年 度 から 立 ち 上 げ 市 町 村 と 一 体 となった 木 造 住 宅 の 耐 震 化 を 推 進 している 平 成 14 年 度 からは 都 道 府 県 レベルでは 全 国 に 先 駆 けて 耐 震 改 修 助 成 制 度 を 実 施 している 耐 震 診 断 の 総 合 評 点 1.0 未 満 の 住 宅 を 1.0 以 上 に 補 強 する 場 合 に 耐 震 補 強 工 事 に 要 した 経 費 ( 上 限 30 万 円 )を 助 成 する 平 成 16 年 度 には 高 齢 者 等 の 世 帯 に 対 し 県 と 市 町 村 で 計 20 万 円 を 割 増 支 給 する 制 度 を 創 設 した 平 成 18 年 度 までの 5 年 間 に 1 万 棟 の 耐 震 補 強 工 事 を 目 標 にプロジェクトを 進 めて きたが 平 成 18 年 12 月 末 までの 実 績 は 耐 震 診 断 47,111 戸 耐 震 補 強 6,121 戸 であっ た 21 対 象 住 宅 は 約 38 万 戸 あり この 事 業 は 平 成 20 年 度 まで 延 長 することとしている 横 浜 市 静 岡 県 の 耐 震 改 修 助 成 制 度 は 現 在 は 地 域 住 宅 交 付 金 ( 表 2 参 照 )を 活 用 し ている (3) 墨 田 区 - 簡 易 改 修 借 家 への 助 成 墨 田 区 では 平 成 17 年 9 月 に 墨 田 区 木 造 住 宅 耐 震 改 修 促 進 助 成 条 例 ( 平 成 17 年 墨 田 区 条 例 第 42 号 )を 制 定 し 平 成 18 年 1 月 から 木 造 住 宅 の 耐 震 改 修 促 進 助 成 事 業 を 行 っている 地 域 住 宅 交 付 金 を 活 用 して 木 造 住 宅 を 所 有 しかつ 居 住 する 者 や 所 有 者 の 承 諾 を 得 ている 居 住 者 が 耐 震 改 修 を 行 った 場 合 に 耐 震 改 修 に 要 した 経 費 の 一 部 を 助 成 して いる 耐 震 改 修 には 耐 震 改 修 工 事 と 簡 易 改 修 工 事 がある( 表 6) 簡 易 改 修 工 事 は 寝 室 や 居 間 のみの 補 強 でも 利 用 可 能 である この 助 成 制 度 の 特 徴 は 借 家 人 でも 助 成 対 象 になることと 最 低 限 の 改 修 でも 助 成 対 象 になることである 多 くの 地 方 公 共 団 体 の 助 成 制 度 では 助 成 対 象 を 総 合 評 点 1.0 以 上 に 補 強 する 場 合 に 限 っている しかし 補 強 の 必 要 性 が 高 い 住 宅 ほど 多 額 の 費 用 がかかるため 耐 震 改 修 を 躊 躇 してしまう この 18 財 団 法 人 日 本 建 築 防 災 協 会 の 診 断 方 法 に 基 づく 基 準 1.5 以 上 が 倒 壊 しない 1.0 以 上 1.5 未 満 が 一 応 倒 壊 しない 0.7 以 上 1.0 未 満 が 倒 壊 する 可 能 性 がある 0.7 未 満 が 倒 壊 する 可 能 性 が 高 い とされる 総 合 評 点 1.0 は 建 築 基 準 法 で 求 める 水 準 に 相 当 する 19 平 成 17 年 度 まちづくり 調 整 局 運 営 方 針 期 末 振 り 返 り p.18. 横 浜 市 HP <http://www.city.yokohama.jp/me/machi/torikumi/unei/pdf/17nendo/17edfuri.pdf> 20 戸 建 て 住 宅 耐 震 化 (1) 助 成 許 可 時 間 かかり 過 ぎ 毎 日 新 聞 2006.7.4. 21 プロジェクト TOUKAI-0 の 平 成 18 年 度 第 3 四 半 期 末 の 活 用 実 績 静 岡 県 HP <http://www.taishinnavi.pref.shizuoka.jp/download/pdf/toukai-0 平 成 18 年 度 第 3 四 半 期 実 績.pdf> 7
表 6 墨 田 区 の 耐 震 改 修 助 成 制 度 耐 震 改 修 工 事 簡 易 改 修 工 事 工 事 内 容 総 合 評 点 を 1.0 以 上 に する 改 修 工 事 耐 震 性 能 が 改 修 前 に 比 較 して 向 上 する 改 修 工 事 緊 急 対 応 一 般 50 万 円 (1/2) 一 般 25 万 円 (1/2) 助 成 限 地 区 内 高 齢 者 等 70 万 円 (2/3) 高 齢 者 等 30 万 円 (2/3) 度 額 緊 急 対 応 一 般 15 万 円 (1/3) ( 補 助 率 ) - 地 区 外 高 齢 者 等 30 万 円 (2/3) ( 出 典 ) 墨 田 区 木 造 住 宅 耐 震 改 修 促 進 助 成 条 例 および 同 条 例 施 行 規 則 より 作 成 * 緊 急 対 応 地 区 は 区 長 が 指 定 する 大 地 震 時 に 危 険 性 の 高 い 地 区 助 成 制 度 は 比 較 的 軽 い 負 担 で 少 しでも 耐 震 性 を 高 め 区 民 の 生 命 を 守 ること を 最 低 目 標 としている 平 成 18 年 6 月 には 住 民 が 一 体 となって 耐 震 補 強 に 取 り 組 むよう 町 会 自 治 会 地 元 設 計 事 務 所 工 事 施 工 者 財 団 法 人 墨 田 ま ちづくり 公 社 等 を 構 成 員 と する 墨 田 区 耐 震 補 強 推 進 協 議 会 が 設 立 された 区 と 連 携 して 耐 震 化 を 円 滑 に 進 める 役 割 を 担 っており 設 計 手 法 の 検 討 審 査 や 工 法 の 開 発 施 工 状 況 のチェック 等 を 行 っている また よりよい 制 度 づくりのために 現 行 の 助 成 制 度 についての 現 場 の 声 をまとめ 行 政 との 情 報 交 換 も 行 う 22 (4) 中 野 区 - 資 産 活 用 型 助 成 と 建 物 補 償 型 助 成 - 中 野 区 では 平 成 16 年 4 月 から 事 業 実 施 期 間 10 年 の 中 野 区 木 造 住 宅 等 の 耐 震 性 確 保 に 係 る 総 合 支 援 事 業 を 開 始 し 新 耐 震 基 準 施 行 以 前 に 建 築 された 木 造 住 宅 を 対 象 に 無 料 耐 震 診 断 を 行 っている 診 断 の 結 果 耐 震 改 修 が 必 要 な 場 合 には 区 の 登 録 耐 震 施 工 者 を 紹 介 するほか 1 資 産 活 用 型 耐 震 改 修 助 成 ( 平 成 16 年 10 月 から 実 施 ) 2 木 造 共 同 住 宅 耐 震 改 修 工 事 費 補 償 助 成 ( 平 成 18 年 4 月 から 実 施 )を 設 けている なお 耐 震 改 修 工 事 に 対 する 直 接 助 成 は 私 有 財 産 に 公 費 を 投 入 することの 不 公 平 性 や 対 象 となる 住 宅 に 対 する 相 当 額 の 補 助 は 財 政 的 に 成 り 立 たないこと 等 から 行 っていない 23 資 産 活 用 型 耐 震 改 修 助 成 24 は 手 元 資 金 がない 高 齢 者 が 耐 震 改 修 工 事 を 行 うのを 支 援 する 制 度 である 木 造 戸 建 住 宅 に 居 住 する 60 歳 以 上 の 区 民 が 住 宅 金 融 公 庫 のリフォー ム 融 資 の 高 齢 者 向 け 返 済 特 例 制 度 25 の 融 資 決 定 を 受 け 耐 震 改 修 工 事 を 行 う 場 合 住 宅 及 び 敷 地 を 担 保 に 区 が 融 資 の 諸 費 用 と 利 息 返 済 分 などを 無 利 子 で 貸 し 付 ける 居 室 の みを 耐 震 補 強 する 工 事 も 対 象 であり 返 済 は 利 用 者 の 死 亡 時 に 一 括 返 済 となる この 制 度 を 利 用 することにより 生 前 の 費 用 なしで 耐 震 改 修 工 事 が 可 能 となる 木 造 共 同 住 宅 耐 震 改 修 工 事 費 補 償 助 成 26 は 木 造 共 同 住 宅 の 耐 震 改 修 の 促 進 を 図 るもの である 区 が 実 施 する 耐 震 診 断 を 受 けた 木 造 共 同 住 宅 で 総 合 評 点 1.0 未 満 を 1.0 以 上 に なるよう 改 修 するものが 対 象 である 所 有 者 が 区 登 録 の 耐 震 改 修 施 工 者 による 耐 震 改 修 22 渡 会 順 久 地 域 ぐるみの 住 宅 耐 震 改 修 ~ 墨 田 区 の 取 り 組 み~ 第 8 回 都 市 防 災 推 進 セミナー 平 成 18 年 11 月 8 日 財 団 法 人 日 本 都 市 センターHP<http://www.nihon-toshi.jp/training/hosoku8.pdf> 23 田 中 大 輔 命 を 守 る 防 災 対 策 中 野 区 における 住 宅 耐 震 補 強 の 取 組 み 消 防 防 災 11 号, 2005. 冬 季, p.8. 24 中 野 区 資 産 活 用 木 造 住 宅 耐 震 改 修 工 事 費 等 融 資 利 息 等 資 金 貸 付 条 例 ( 平 成 16 年 10 月 29 日 中 野 区 条 例 第 33 号 )により 規 定 25 高 齢 者 の 居 住 の 安 定 確 保 に 関 する 法 律 ( 平 成 13 年 法 律 第 26 号 ) 第 76 条 の 規 定 に 基 づき 平 成 13 年 10 月 から 実 施 された 制 度 対 象 工 事 は バリアフリー 工 事 及 びその 他 のリフォーム 工 事 であり 月 々の 返 済 は 利 息 のみである 元 金 は 利 用 者 死 亡 時 の 一 括 償 還 となる 26 耐 震 改 修 工 事 を 施 工 した 木 造 共 同 住 宅 が 地 震 により 全 損 した 場 合 における 耐 震 改 修 工 事 に 要 した 費 用 の 助 成 に 関 する 要 綱 ( 要 綱 第 129 号 平 成 18 年 4 月 1 日 )により 規 定 8
工 事 を 行 ったにもかかわらず 工 事 の 竣 工 後 10 年 以 内 に 震 度 6 強 以 下 の 地 震 で 全 損 し た 場 合 耐 震 改 修 費 用 と 建 物 評 価 額 相 当 分 を 合 算 した 額 ( 上 限 600 万 円 )を 助 成 する 耐 震 改 修 工 事 前 に 区 の 認 定 を 受 け 工 事 完 了 後 には 地 震 保 険 契 約 締 結 の 証 明 書 類 等 を 添 付 した 工 事 完 了 報 告 書 を 提 出 する 必 要 がある また 毎 年 現 況 報 告 書 の 提 出 が 必 要 である 全 損 した 場 合 の 助 成 金 交 付 申 請 は 保 険 会 社 などが 発 行 する 全 損 を 証 明 する 書 類 を 添 付 し て 行 う 区 では 震 度 6 強 以 下 で 全 損 ということは 限 りなくない としており あらか じめ 予 算 措 置 はせず あった 場 合 に 補 正 予 算 等 で 対 応 することを 想 定 している 27 Ⅳ 耐 震 化 が 進 まない 理 由 1 戸 建 住 宅 28 (1) 費 用 の 負 担 まず 費 用 負 担 が 大 きいことが 挙 げられる 耐 震 改 修 工 事 の 費 用 は 住 宅 の 建 築 年 代 規 模 補 強 工 法 などによって 異 なるが 静 岡 県 による H15 年 度 補 強 補 助 に 係 る 工 事 費 の 概 算 調 査 によると 工 事 費 の 平 均 は 178 万 円 である 29 各 地 方 公 共 団 体 では 補 助 制 度 を 設 け 支 援 を 行 っている しかし 総 合 評 点 1.0 以 上 にする 工 事 に 対 して 補 助 するため 経 済 状 況 に 合 わせて 効 果 的 な 箇 所 から 改 修 していくというやり 方 では 補 助 が 受 けられな いことが 多 い この 点 最 低 限 人 命 を 守 るという 意 味 で 墨 田 区 の 取 り 組 みは 注 目 される さらに 安 価 な 工 法 の 開 発 普 及 も 重 要 である また 住 宅 リフォーム 時 に 併 せて 耐 震 改 修 を 行 うことで 費 用 も 抑 えられる しかし 現 在 リフォーム 需 要 は 必 ずしも 耐 震 性 の 強 化 に 結 びついておらず リフォーム 時 に 耐 震 性 の 確 保 が 図 られるよう 環 境 を 整 えていくことが 必 要 であろう 30 (2) 生 活 面 での 煩 わしさ 工 事 の 煩 わしさも 耐 震 化 が 進 まない 理 由 として 挙 げられる 耐 震 改 修 の 効 果 は 地 震 が 起 きるまでわからないが 日 常 生 活 では 窓 などの 開 口 部 が 減 り 壁 が 増 えるなど 居 住 性 が 悪 くなることが 多 い 改 修 工 事 には 一 定 期 間 かかるため 工 事 期 間 中 の 引 っ 越 しが 煩 わ しいということもある (3) 耐 震 改 修 工 事 の 効 果 に 対 する 信 頼 性 の 欠 如 耐 震 改 修 の 効 果 が 見 えにくいこともある 耐 震 改 修 をしても 地 震 が 起 きたら 壊 れるかも しれないと 考 え 耐 震 改 修 を 躊 躇 することも 多 い 31 耐 震 性 の 違 いを 補 強 前 後 で 正 しく 評 価 し それを 一 般 市 民 にもわかりやすく 提 示 できない 限 りは 適 切 な 耐 震 補 強 法 も 認 知 さ 27 中 野 区 議 会 平 成 18 年 第 1 回 定 例 会 建 設 委 員 会 会 議 録 ( 平 成 18 年 3 月 15 日 ) 28 住 宅 における 地 震 被 害 軽 減 方 策 検 討 委 員 会 ( 第 1 回 ) 平 成 15 年 10 月 27 日 資 料 3 内 閣 府 防 災 担 当 HP <http://www.bousai.go.jp/oshirase/h15/031027siryou/siryou3.pdf> 静 岡 県 住 宅 耐 震 改 修 等 促 進 方 策 検 討 委 員 会 報 告 書 ( 平 成 13 年 1 月 ) 静 岡 県 HP<http://www.e-quakes.pref.shizuoka.jp/data/toukei/sakamoto-rep.htm> 等 で 分 析 がなされている 29 防 災 に 関 してとった 措 置 の 概 況 平 成 18 年 度 の 防 災 に 関 する 計 画 第 164 回 国 会 ( 常 会 ) 提 出, p.20. 30 前 掲 注 17, p.29. 31 池 田 浩 敬 小 澤 徹 木 造 住 宅 耐 震 化 支 援 制 度 に 関 する 利 用 者 ニーズの 分 析 地 域 安 全 学 会 論 文 集 6 号, 2004.11, p.20. 9
れないのではないか との 指 摘 がある 32 新 工 法 の 効 果 については 財 団 法 人 日 本 建 築 防 災 協 会 が 平 成 16 年 11 月 から 住 宅 等 防 災 技 術 評 価 制 度 をスタートさせた 民 間 等 で 研 究 開 発 された 戸 建 住 宅 の 耐 震 改 修 技 術 について 技 術 性 能 評 価 設 計 施 工 方 法 の 明 確 性 消 費 者 への 説 明 内 容 品 質 保 証 体 制 等 を 審 査 評 価 し 技 術 評 価 書 を 交 付 している (4) 情 報 不 足 耐 震 改 修 の 必 要 性 を 認 識 しても 誰 に 相 談 したらよいのか どのような 工 事 を 行 ったら よいのか 費 用 がどのくらいかかるのかわからないことが 理 由 として 挙 げられている 悪 徳 業 者 によるリフォーム 詐 欺 が 横 行 する 中 で 信 頼 して 相 談 できる 仕 組 みが 必 要 である 基 本 方 針 では 市 町 村 に 耐 震 診 断 改 修 に 関 する 相 談 窓 口 を 設 置 することを 求 めてい る 静 岡 県 などでは 施 工 業 者 の 登 録 制 度 を 設 け 業 者 の 紹 介 を 行 うなどしている 情 報 不 足 を 解 消 するためには 市 民 建 築 士 建 設 業 者 自 治 体 など 関 係 者 が 協 議 会 を 設 置 し 連 携 して 取 り 組 むことが 有 効 との 指 摘 もある 33 2 マンション (1) 費 用 の 負 担 耐 震 診 断 改 修 に 多 額 の 費 用 を 要 することがある 東 京 建 設 業 協 会 が 出 している 目 安 で は 床 面 積 1 平 方 メートル 当 たりの 耐 震 診 断 費 用 は 500~2,000 円 34 耐 震 改 修 費 用 は 15,000~50,000 円 35 である 通 常 耐 震 診 断 改 修 には 修 繕 積 立 金 をあてるが 積 立 金 に 余 裕 のないマンションでは 難 しい マンションに 対 し 耐 震 改 修 の 補 助 制 度 を 設 けている 地 方 公 共 団 体 は 少 なく 補 助 率 は 国 の 負 担 分 を 合 わせて 15.2%である 36 (2) 合 意 形 成 の 難 しさ 耐 震 診 断 改 修 を 行 う 場 合 共 有 部 分 も 対 象 に 含 まれるため 管 理 組 合 の 総 会 での 決 議 が 必 要 となる 37 しかし 多 額 の 費 用 を 必 要 とすることなどから 反 対 者 を 説 得 して 合 意 形 成 するのは 容 易 なことではない ボランティアで 任 期 の 短 い 管 理 組 合 の 役 員 では 限 界 が あるため 住 民 の 意 見 を 調 整 し 自 治 体 との 橋 渡 しをするようなコンサルタントの 人 材 育 成 が 必 要 ではないか との 指 摘 もある 38 32 田 中 仁 史 ほか 耐 震 補 強 を 促 進 するためには? 建 築 雑 誌 121 集 1553 号, 2006.11, p.5. 33 鍵 屋 一 木 造 住 宅 の 耐 震 補 強 推 進 政 策 に 関 する 基 本 的 考 察 地 域 安 全 学 会 論 文 集 6 号, 2004.11, p.14. 34 耐 震 診 断 費 用 の 目 安 東 京 建 設 業 協 会 HP<http://www.token.or.jp/taishin/cost1.htm> 35 耐 震 改 修 工 事 費 用 の 目 安 東 京 建 設 業 協 会 HP<http://www.token.or.jp/taishin/cost2.htm> 36 平 成 19 年 度 から 避 難 路 沿 道 等 分 譲 マンションについては 補 助 率 を 引 き 上 げる 方 針 である(Ⅲ1(3) 参 照 ) 37 建 物 の 区 分 所 有 等 に 関 する 法 律 ( 昭 和 37 年 法 律 第 69 号 ) 第 17 18 条 共 有 部 分 の 変 更 の 程 度 により 4 分 の 3 の 特 別 多 数 決 議 が 必 要 か 過 半 数 の 普 通 決 議 で 足 りるか 判 断 される ( 吉 田 徹 編 著 一 問 一 答 改 正 マン ション 法 商 事 法 務, 2003, p.27.) 38 進 まぬ 耐 震 診 断 改 修 マンション 高 齢 化 の 壁 朝 日 新 聞 2007.1.7. 10