NFI リサーチ レビュー 2007 年 11 月 号 *** 論 文 *** 組 織 コミットメントと 離 転 職 意 識 (1) 社 会 システム 研 究 所 高 村 静 -------------------------------------------- 要 約 -------------------------------------------- 離 転 職 などを 抑 制 する 効 果 や 生 産 性 や 業 務 遂 行 能 力 の 向 上 との 関 係 で 研 究 されてきた 構 成 概 念 に 組 織 コミットメントがある 組 織 コミットメントは 個 人 と 組 織 の 関 係 を 互 酬 性 からとらえようとする 交 換 アプロ ーチ あるいは 価 値 の 一 致 や 共 有 でみる 価 値 アプローチ などの 立 場 があるが 現 在 で はそれらを 下 位 因 子 にもつ 多 次 元 モデルとして 捉 えられることが 主 流 となっている 関 本 花 田 (1985,1986,1987)の 研 究 は 日 本 の 大 企 業 に 勤 務 する 大 卒 男 性 ホワイトカラ ーを 対 象 に 1984 年 に 実 施 した 調 査 により 組 織 コミットメント( 帰 属 意 識 )が 目 的 意 欲 残 留 功 利 の 4 つの 下 位 因 子 から 計 量 的 に 捉 えられる 概 念 であることを 示 した 抽 出 された 4 因 子 を 対 象 としたクラスター 分 析 では 帰 属 意 識 が 5 類 型 に 集 約 されること 団 塊 の 世 代 以 降 では 自 己 実 現 や 功 利 を 示 すクラスターに 属 する 従 業 員 の 比 率 が 多 く 世 代 間 で 違 いが 見 られること 等 を 指 摘 している また 組 織 コミットメントを 高 め る 要 因 として 会 社 の 魅 力 仕 事 の 魅 力 給 与 の 公 平 感 などを 指 摘 した 本 稿 では この 関 本 花 田 (1987)の 実 証 研 究 をベースに 1980 年 代 半 ばと 現 在 では 日 本 人 従 業 員 の 組 織 コミットメントはどのように 変 化 したか また 組 織 コミットメントを 規 定 する 職 務 満 足 に 関 する 要 因 や 組 織 コミットメントから 影 響 を 受 けるとされる 離 転 職 意 識 労 働 意 欲 や 本 人 が 認 識 する 生 産 性 の 向 上 に 与 える 影 響 は 変 化 しているのか につい て 本 年 10 月 に 日 興 フィナンシャル インテリジェンスが 実 施 したアンケート 調 査 の 結 果 か ら 分 析 する その 結 果 被 調 査 者 の 属 性 の 違 いに 留 意 する 必 要 はあるが 関 本 花 田 (1987) が 5 類 型 を 検 出 したクラスター 分 析 では 2 クラスターの 検 出 にとどまり また 組 織 コ ミットメントを 高 める 要 因 とされた 仕 事 の 魅 力 ( 本 稿 では 仕 事 満 足 ) などは 組 織 コミットメントに 対 してマイナスとなる 可 能 性 も 見 出 された ただし 組 織 コミットメン トの 離 転 職 意 識 抑 制 や 労 働 意 欲 本 人 が 認 識 する 生 産 性 への 向 上 効 果 は 確 認 され 組 織 コミットメントが 企 業 にとって 重 要 な 構 成 概 念 である 可 能 性 に 変 わりはない 点 も 示 された 日 興 フィナンシャル インテリジェンス
NFI RESEARCH REVIEW NOVEMBER 2007 目 次 1. はじめに 2. 組 織 コミットメント 2.1 交 換 アプローチ 2.2 価 値 アプローチ 2.3 多 次 元 モデル 3. 先 行 研 究 4. 分 析 結 果 4.1 データ 4.2 組 織 コミットメントの 下 位 因 子 4.3 組 織 コミットメントの 類 型 4.4 組 織 コミットメントに 影 響 を 与 える 職 務 満 足 の 下 位 因 子 4.5 組 織 コミットメントが 離 転 職 意 識 等 に 与 える 影 響 5. 考 察 6. 今 後 の 課 題 1.はじめに 現 在 本 格 化 した 民 間 企 業 の 新 卒 採 用 就 職 活 動 は 報 道 によると 1991 年 にピークを つけた いわゆるバブル 期 採 用 を 上 回 る 求 人 数 および 有 効 求 人 倍 率 が 見 込 まれるという 景 気 回 復 生 産 年 齢 人 口 の 先 細 り 感 2000 年 前 後 の 採 用 手 控 えの 反 動 など 背 景 には いくつもの 理 由 が 考 えられる 各 社 の 関 心 が 採 用 (recruit)に 向 くのと 同 時 に 採 用 した 従 業 員 の 定 着 あるいは 引 きとめ(retain)にも 昨 今 かなりの 関 心 が 払 われている 少 なくとも 教 育 投 資 がプラス の 正 味 現 在 価 値 となるだけの 従 業 員 の 勤 務 期 間 を 確 保 できなければ 企 業 は 教 育 投 資 を することができない 組 織 コミットメント(organizational commitment ) 1 は 従 業 員 の 離 転 職 を 抑 制 する 効 果 生 産 性 や 業 務 遂 行 能 力 を 向 上 させる 効 果 との 関 係 で 1960 年 代 から 論 じら れてきた 構 成 概 念 である 日 本 においては 関 本 花 田 (1985,1986 1987)が 大 規 模 な 1 関 本 花 田 (1985,1986,1987)は Organizational Commitment を 帰 属 意 識 として 用 いているが 現 在 では 組 織 コミットメント との 表 現 が 広 まっている そのためここでは 主 に 組 織 コミットメント との 表 現 を 用 いること とする Nikko Financial Intelligence,Inc.
NFI リサーチ レビュー 2007 年 11 月 号 調 査 をもとに 実 証 分 析 を 行 っているが その 調 査 から 約 20 年 を 経 た 現 在 日 本 人 従 業 員 のコミットメントはどのように 変 化 しているであろうか 本 稿 では 本 年 10 月 に 民 間 企 業 の 従 業 員 を 対 象 に 日 興 フィナンシャル インテリジェ ンスが 実 施 した 調 査 ( 以 下 本 調 査 という)をもとに 現 在 の 日 本 人 従 業 員 の 組 織 コ ミットメントおよび 離 転 職 意 識 自 己 評 価 による 生 産 性 や 労 働 意 欲 の 向 上 への 影 響 を 分 析 することとする 2. 組 織 コミットメント 2.1 交 換 アプローチ 交 換 アプローチには 経 済 的 交 換 アプローチ と 社 会 的 交 換 アプローチ がある 経 済 的 交 換 アプローチ は 報 酬 獲 得 のために 貢 献 している 状 態 をコミットメント とみなしている( 西 脇 (1998)) 例 えば Rusbult and Farrell(1983)は 組 織 コミットメン トを 組 織 と 個 人 の 誘 因 (inducement) と 貢 献 (contribution) の 経 済 的 交 換 関 係 とみなし 誘 因 が 報 酬 として 具 体 的 に 支 払 われるまでの 時 間 的 なラグの 間 従 業 員 は 組 織 に 拘 束 される(Scholl(1981))と 考 えた このアプローチにおいては 個 人 が 組 織 に 対 して 行 う 貢 献 は 投 資 または 費 用 とみなされる 社 会 的 交 換 アプローチ は 信 用 や 義 理 といった 人 や 社 会 との 互 酬 性 をもとにコミ ットメントを 捉 える( 西 脇 (1998)) このアプローチは Becker(1960)の side-bed 理 論 をベースとしており 長 年 の 組 織 との 交 換 関 係 を 通 じて 形 成 蓄 積 された 社 会 的 信 用 や 地 位 あるいは 家 庭 の 平 和 など(side-bed 2 )を 失 うことが 離 職 に 対 する 大 きすぎる 代 償 となり 組 織 にとどまらせるコミットメントとなると 考 える 2.2 価 値 アプローチ 交 換 アプローチに 対 し 価 値 アプローチは 組 織 コミットメントは 組 織 と 個 人 の 価 値 の 一 致 や 共 有 によって 生 じると 捉 える Mowday, Steers and Porter(1979)は 組 織 コミットメントを 組 織 への 情 緒 的 愛 着 と 定 義 した 彼 らがコミットメントのレベ ルを 測 定 する 尺 度 として 開 発 した OCQ(Organizational Commitment Questionnaire) 2 現 在 の 行 為 に 直 結 するが その 行 為 と 本 来 無 関 係 な 利 益 を 指 す 日 興 フィナンシャル インテリジェンス
NFI RESEARCH REVIEW NOVEMBER 2007 は 1 組 織 の 価 値 や 目 標 の 共 有 2 組 織 に 残 りたいという( 積 極 的 ) 願 望 3 組 織 の 代 表 として 努 力 したいという 強 い 意 欲 の 3 要 因 15 項 目 から 構 成 される 2.3 多 次 元 モデル 組 織 コミットメントを 多 次 元 的 に 測 定 しようとするアプローチは 80 年 代 半 ばからと られるようになった 愛 着 がなくても 組 織 から 離 れられない 現 実 的 な 状 況 など 価 値 ア プローチだけでは 説 明 できない 事 象 や あるいは 交 換 アプローチだけでも 説 明 できない 事 象 もあることから 組 織 コミットメントはそれらの 二 者 択 一 ではなく それらを 含 む 多 次 元 モデルとして 捉 えるのが 妥 当 ではないかとの 議 論 を 背 景 に 開 発 されてきた 多 次 元 アプローチのなかでもっとも 評 価 されたのは Allen and Meyer(1990)による 情 緒 的 (affective) 存 続 的 (continuance) 規 範 的 (normative) の 3 要 素 によるも のであった( 高 木 (1998)) Allen and Meyer(1990)の 3 要 素 のうち 情 緒 的 コミットメント は 感 情 的 な 愛 着 の ことであり Mowday et al.(1979)の OCQ による 組 織 コミットメントの 概 念 との 相 関 が 高 く 組 織 に 対 する 感 情 的 方 向 性 を 測 定 するよう 作 られていたが 存 続 的 コミット メント は 転 職 先 がない( 労 働 市 場 の 問 題 自 身 の 能 力 の 問 題 )など 転 職 に 伴 う 個 人 的 な 犠 牲 の 大 きさに 対 する 従 業 員 の 知 覚 から 形 成 されており 仕 方 がないからいる といった 消 極 的 意 識 を 内 包 する どちらかと 言 うとマイナス 方 向 のコミットメントであ る 規 範 的 コミットメント は 理 屈 ぬきに 組 織 にコミットすべきという 忠 誠 心 を 意 味 する これらの 要 素 のうち 感 情 的 コミットメントと 規 範 的 コミットメントには 多 少 の 相 関 がみられるものの 存 続 的 コミットメントはかなり 独 立 した 要 素 であり この 3 要 素 はコミットメントの 類 型 (タイプ)ではなく 成 分 (components)と 考 えられるべきで 組 織 コミットメントはこれらの 総 和 として 捉 えるべきであるとされた(Allen and Meyer(1990)) このような 考 え 方 が 現 在 主 流 となっている 多 次 元 アプローチである 3. 先 行 研 究 日 本 人 従 業 員 を 対 象 とした 実 証 的 な 組 織 コミットメント 研 究 には 関 本 花 田 (1985 Nikko Financial Intelligence,Inc.
NFI リサーチ レビュー 2007 年 11 月 号 1986 1987)がある 彼 らは OCQ を 基 にした 24 項 目 の 組 織 帰 属 意 識 の 尺 度 を 開 発 し 10 業 種 11 企 業 の 従 業 員 4,539 名 を 対 象 に 大 規 模 な 調 査 を 実 施 した 調 査 の 対 象 となっ たのは 大 企 業 11 社 に 勤 務 する 将 来 のエリート 予 備 軍 としての 大 卒 男 子 ホワイト カラー 従 業 員 であった 調 査 の 結 果 から 残 留 3 働 く 意 欲 4 目 的 ( 価 値 の 内 在 化 ) 5 功 利 6 の 4 因 子 が 下 位 因 子 として 抽 出 されている 彼 らは 抽 出 した 4 因 子 をクラスター 分 析 することによって 5 つのクラスターを 得 年 齢 層 別 企 業 別 にクラスターの 構 成 比 率 の 特 徴 をまとめた それによると クラスタ ーの 構 成 比 率 は 年 齢 間 格 差 および 企 業 間 格 差 が 大 きく 例 えば 年 齢 別 では 団 塊 の 世 代 を... 境 に それより 上 の 世 代 では 伝 統 型 ( 目 標 意 欲 残 留 の 帰 属 意 識 が 高 く 功... 利 が 低 い いわゆるモーレツ 会 社 人 間 ) および 企 業 従 属 型 ( 意 欲 残 留 の 帰 属 意 識 が 高 く 目 標 功 利 が 低 い) が 多 いのに 対 し 団 塊 世 代 よりも 若 い 世 代 には...... 自 己 実 現 型 ( 目 標 功 利 の 因 子 得 点 が 高 く 残 留 がマイナス) 功 利 型 ( 功 利 の 因 子 得 点 のみ 高 い) のコミットメントを 示 す 従 業 員 の 比 率 が 高 かった また 企...... 業 別 では これら 自 己 実 現 型 や 功 利 型 のコミットメントをもつ 従 業 員 の 比 率 は 革 新 的 な 社 風 をもつ 企 業 で 高 かった...... この 自 己 実 現 型 ( あるいは 功 利 型 )コミットメントについて 関 本 花 田 (1985,1986) は 企 業 が 厳 しい 競 争 環 境 を 生 き 抜 くためには 今 後 これらのタイプのコミットメント が 求 められるであろうと 述 べている なぜならば 革 新 的 社 風 をもつ 企 業 に 多 いこれらの タイプのコミットメントは 自 律 的 な 自 我 の 確 立 を 前 提 に 自 己 の 権 利 主 張 考 えをよ り 積 極 的 に 実 現 させていこうとする 帰 属 意 識 であり 新 しい 時 代 にふさわしい 帰 属 意 識 だから( 関 本 花 田 (1986,P57)) だという またこれらのタイプの 帰 属 意 識 を 育 てるに は 組 織 中 心 のマネジメントから 個 人 中 心 の 組 織 の 在 り 方 への 切 り 替 えが 必 要 であと 主 張 し 具 体 的 には 1 敗 者 復 活 の 道 を 用 意 し 2それがシステマティックに 活 用 され 3( 減 点 主 義 ではなく) 加 点 主 義 に 根 差 した 昇 進 システム そして 個 々の 個 人 の 興 味 関 心 活 動 をひとつのベクトルに 向 かわせるための 企 業 の 価 値 や 文 化 (コーポレートカ ルチャー)の 醸 成 などが 必 要 であると 述 べている 高 木 (1998)は Allen and Meyer(1990)の 理 論 に 基 礎 をおきつつ Mowday, Streers, 3 組 織 にとどまりたいとする 残 留 意 欲 を 表 すと 考 えられる 因 子 ( 同 上 ) 4 組 織 のために 働 きたいという 積 極 的 意 欲 を 表 すと 考 えられる 因 子 ( 同 上 ) 5 組 織 の 目 標 規 範 価 値 観 を 受 け 入 れようとする 意 欲 を 表 すと 考 えられる 因 子 ( 関 本 花 田 (1985,1986,1987)) 6 組 織 から 得 るものがある 限 り 組 織 に 帰 属 する 功 利 的 帰 属 意 識 を 表 すと 考 えられる 因 子 ( 同 上 ) 日 興 フィナンシャル インテリジェンス
NFI RESEARCH REVIEW NOVEMBER 2007 and Porter(1979) Cook and Wall(1980) Werbel and Gould(1984) 関 本 花 田 (1986) Alvi and Ahmed(1987) Meyer, Allen and Smith(1993) 高 木 石 田 益 田 (1997)な どその 後 の 研 究 成 果 や 日 本 的 要 素 も 加 え 情 緒 的 組 織 的 存 続 的 功 利 的 の 4 要 素 30 項 目 からなる 尺 度 を 開 発 した この 高 木 (1998)の 尺 度 の 信 頼 性 妥 当 性 を 確 認 しつつ 心 理 的 契 約 (psychological contract)に 関 する 尺 度 (Millward and Hopkins(1998))と 組 織 コミットメントの 弁 別 的 妥 当 性 と 構 成 概 念 妥 当 性 を 検 証 したものに 青 木 (2001)がある 青 木 は 最 終 的 に 心 理 的 契 約 と 組 織 コミットメントに 関 する 因 子 とが 弁 別 されること また 組 織 コミットメン トは 離 職 意 思 を 抑 制 する 有 意 な 効 果 のあることを 報 告 している 4. 分 析 結 果 4.1 データ データは 日 興 フィナンシャル インテリジェンスが 本 年 10 月 1 日 ~2 日 にかけて 実 施 した 民 間 企 業 に 勤 務 する 従 業 員 7 を 対 象 としたアンケート 調 査 の 結 果 を 用 いる 調 査 はインターネットにより 実 施 され 8 有 効 回 答 数 は 1,034 件 となった 女 性 サンプ ルには 約 30%の 非 正 規 従 業 員 を 含 んでいる 既 婚 者 比 率 は 58% 子 供 有 の 比 率 は 46% などとなっている サンプルの 性 別 年 齢 別 業 種 別 の 構 成 は 図 表 1 に 示 す 図 表 1 サンプルの 性 別 年 齢 別 業 種 別 の 構 成 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 ~ 全 体 男 性 女 性 事 務 管 理 営 業 販 売 専 門 技 術 職 現 業 職 その 他 事 務 管 理 営 業 販 売 専 門 技 術 職 現 業 職 その 他 7 6 22 6 1 42 52 13 12 4 3 84 ( 16.7%) ( 14.3%) ( 52.4%) ( 14.3%) ( 2.4%) ( 100.0%) ( 61.9%) ( 15.5%) ( 14.3%) ( 4.8%) ( 3.6%) ( 100.0%) 37 47 92 25 14 215 118 18 25 3 11 175 ( 17.2%) ( 21.9%) ( 42.8%) ( 11.6%) ( 6.5%) ( 100.0%) ( 67.4%) ( 10.3%) ( 14.3%) ( 1.7%) ( 6.3%) ( 100.0%) 5046 59 22 9 186 138 23 27 1015 213 ( 26.9%) ( 24.7%) ( 31.7%) ( 11.8%) ( 4.8%) ( 100.0%) ( 64.8%) ( 10.8%) ( 12.7%) ( 4.7%) ( 7.0%) ( 100.0%) 15 15 25 107 72 29 5 7 2 2 45 ( 20.8%) ( 20.8%) ( 34.7%) ( 13.9%) ( 9.7%) ( 100.0%) ( 64.4%) ( 11.1%) ( 15.6%) ( 4.4%) ( 4.4%) ( 100.0%) 0 0 0 1 0 1 1 0 0 0 0 1 ( 0.0%) ( 0.0%) ( 0.0%) ( 100.0%) ( 0.0%) ( 100.0%) ( 100.0%) ( 0.0%) ( 0.0%) ( 0.0%) ( 0.0%) ( 100.0%) 109 114 198 64 31 516 338 59 71 19 31 518 ( 21.1%) ( 22.1%) ( 38.4%) ( 12.4%) ( 6.0%) ( 100.0%) ( 65.3%) ( 11.4%) ( 13.7%) ( 3.7%) ( 6.0%) ( 100.0%) 7 現 在 の 勤 務 先 への 勤 続 期 間 が 3 年 以 上 の 人 を 対 象 とした Nikko Financial Intelligence,Inc.
NFI リサーチ レビュー 2007 年 11 月 号 4.2 組 織 コミットメントの 下 位 因 子 組 織 コミットメントは 関 本 花 田 (1987)に 依 拠 し 4 つの 下 位 因 子 から 構 成 されるこ とを 前 提 とした 彼 らの 因 子 分 析 の 結 果 を 参 考 に 各 因 子 に 含 まれる 項 目 のうち 因 子 負 荷 量 の 高 さを 参 考 にそれぞれ 2 項 目 計 8 項 目 を 調 査 対 象 項 目 として 選 択 した 分 析 ではまず この 組 織 コミットメントに 関 する 8 項 目 の 質 問 に 対 する 回 答 を 因 子 分 析 ( 最 尤 法 斜 交 プロマックス 回 転 )した( 図 表 2) 因 子 数 は 4 因 子 の 抽 出 を 想 定 したため 4 を 指 定 した 因 子 分 析 の 結 果 当 初 想 定 どおりの 目 的 意 欲 残 留 功 利 に 相 当 する 4 因 子 にわかれたが 功 利 に 相 当 する 因 子 の 信 頼 度 は 低 く 因 子 としての 妥 当 性 につい ては 疑 問 も 残 るが この 後 に 行 うクラスター 分 析 の 結 果 を 関 本 花 田 (1987)と 比 較 する ため あえてここでは 因 子 として 扱 うこととした 4.3 組 織 コミットメントの 類 型 関 本 花 田 (1987)に 倣 い 図 表 2 の 因 子 分 析 の 結 果 算 出 された 因 子 得 点 を 対 象 に クラスター 分 析 (ウォード 法 )による 組 織 コミットメントの 類 型 化 を 行 った 関 本 花 田 (1987)は 前 述 のとおり 5 つのクラスターを 検 出 したが 本 調 査 データに 基 づく 分 析 で 抽 出 されたクラスターは 2 クラスターのみであった 各 クラスターにおける 組 織 コミットメントの 下 位 因 子 の 平 均 値 による 特 徴 は 図 表 3 のとおりである 図 表 2 組 織 コミットメントに 関 する 因 子 分 析 目 的 意 欲 残 留 功 利 会 社 の 社 風 や 組 織 風 土 は 自 分 の 価 値 観 や 考 え 方 によく 合 っている 1.03-0.04-0.02 0.00 会 社 のトップ 経 営 者 の 考 え 方 や 経 営 施 策 には 共 鳴 できるものが 多 い 0.61 0.15 0.09-0.04 他 の 社 員 よりもはるかに 会 社 のために 尽 くそうという 気 持 ちが 強 い 0.03 0.80 0.05-0.02 会 社 を 発 展 させるためならば 人 並 み 以 上 の 努 力 をすることをいとわない 0.02 0.93-0.05 0.02 現 在 の 会 社 でこのまま 働 いていれば 安 心 なので よその 会 社 に 移 ることなど 考 えられない 0.05 0.04 0.89-0.17 よその 会 社 に 移 ってもどのような 処 遇 を 受 けるか 分 からないのでこの 会 社 にとどまる -0.02-0.05 0.88 0.05 現 在 の 会 社 から 得 るものがあるうちは 現 在 の 会 社 に 勤 めていようと 思 う 0.10 0.07 0.39 0.38 自 分 の 貢 献 に 見 合 う 処 遇 を 受 けていなければ 働 く 意 欲 はわいてこない -0.04 0.00-0.11 0.40 信 頼 度 (α) 0.83 0.87 0.86 0.24 8 調 査 は マクロミル 社 に 委 託 した 日 興 フィナンシャル インテリジェンス
NFI RESEARCH REVIEW NOVEMBER 2007 図 表 3 クラスター 別 に 見 た 因 子 得 点 の 平 均 値 1 0.5 クラスター1( 高 コミットメント 群 ) クラスター2( 低 コミットメント 群 ) 0 目 的 意 欲 残 留 功 利 -0.5-1 図 表 3 をみると 組 織 コミットメントは 全 ての 因 子 において 高 得 点 なグループ( 高 コミットメント 群 と 名 付 ける)と 反 対 に 全 ての 因 子 得 点 において 低 得 点 なグループ ( 低 コミットメント 群 と 名 付 ける)の 2 つに 類 型 化 されることが 分 かる 20 数 年 前 に 実 施 された 関 本 花 田 (1987)による 分 析 から 日 本 の 高 度 経 済 成 長 期 を... 支 えたと 言 われる 伝 統 型 (モーレツ 社 員 型 目 的 意 欲 残 留 が 高 く 功 利... は 極 めて 低 い) 企 業 従 属 型 ( 意 欲 残 留 のみ 高 い) の 2 つのタイプのコミット メント 類 型 が 姿 を 消 し 今 回 の 2 類 型 に 収 束 したとも 解 釈 できそうである 高 コミッ... トメント 群 は 20 年 前 の 自 己 実 現 型 ( 目 標 意 欲 功 利 が 高 い) が 企 業 による 大 胆 なリストラや 就 職 氷 河 期 の 採 用 手 控 えなどの 事 象 を 経 て 残 留 因 子 をも 高... めたものと 解 釈 できるし 低 コミットメント 群 は 欠 如 型 について 目 的 の 得 点 をも 低 めたものと 解 釈 できる ただし 関 本 花 田 (1987)の 調 査 対 象 が 大 企 業 の 男 性 従 業 員 のみであったことに 対 し 今 回 の 調 査 対 象 には 大 企 業 以 外 の 従 業 員 や 女 性 従 業 員 非 正 規 従 業 員 が 含 まれているなど 調 査 対 象 に 違 いがある 従 って このようなクラ スターの 変 化 は 経 年 的 な 変 化 のみでなく サンプルの 構 成 の 違 いによるものである 可 能 性 も 排 除 できない なお 男 女 別 年 齢 区 分 別 正 規 非 正 規 の 雇 用 形 態 別 職 位 別 職 種 別 企 業 規 模 区 分 別 年 収 区 分 別 の 各 クラスター 構 成 は 図 表 4 のとおりである Nikko Financial Intelligence,Inc.
NFI リサーチ レビュー 2007 年 11 月 号 図 表 4 各 種 区 分 によるクラスター 構 成 年 齢 別 ( 男 性 従 業 員 ) 高 コミットメント 群 低 コミットメント 群 年 齢 別 ( 女 性 従 業 員 ) 高 コミットメント 群 低 コミットメント 群 50 代 55.6 44.4 50 代 57.8 42.2 40 代 54.8 45.2 40 代 63.4 36.6 30 代 59.1 40.9 30 代 71.4 28.6 20 代 57.1 42.9 20 代 70.2 29.8 0% 50% 100% 0% 50% 100% 雇 用 形 態 別 高 コミットメント 群 低 コミットメント 群 職 位 別 高 コミットメント 群 低 コミットメント 群 正 規 60.1 39.9 管 理 職 48.9 51.1 非 正 規 71.2 28.9 非 管 理 職 64.7 35.3 0% 50% 100% 職 種 別 高 コミットメント 群 低 コミットメント 群 0% 50% 100% 業 種 別 高 コミットメント 群 低 コミットメント 群 そのほか 64.5 35.5 その 他 62.4 37.6 技 能 現 業 職 67.5 32.5 運 輸 情 報 61.4 38.6 専 門 技 術 職 62.5 37.6 電 気 ガス 36.4 63.6 営 業 販 売 職 53.2 46.8 金 融 55.7 44.3 事 務 管 理 的 職 種 63.3 36.7 製 造 63.9 36.1 0% 50% 100% 0% 50% 100% 企 業 規 模 区 分 別 年 収 区 分 別 高 コミットメント 群 低 コミットメント 群 高 コミットメント 群 低 コミットメント 群 3,000 名 ~ ~2,999 名 ~999 名 ~499 名 49.3 69.6 60.5 64.6 50.8 30.4 39.5 35.5 1,000 万 円 以 上 ~1,000 万 円 未 満 ~700 万 円 未 満 ~500 万 円 未 満 300 万 円 未 満 36.4 47.1 57.6 66.6 68.9 63.6 52.9 42.4 33.4 31.1 0% 50% 100% 0% 50% 100% 日 興 フィナンシャル インテリジェンス
NFI RESEARCH REVIEW NOVEMBER 2007 図 表 4 からは 年 齢 が 高 いほど 女 性 より 男 性 ほど 非 正 社 員 より 正 規 社 員 ほど 非 管 理 職 より 管 理 職 ほど また 年 収 が 低 いより 高 いほど 高 コミットメント 群 の 割 合 が 少 ないという 点 がみてとれる 図 表 5 には 図 表 4 と 同 じ 区 分 で 各 因 子 の 平 均 得 点 をそれぞれ 示 した 図 表 5 各 種 区 分 による 各 因 子 の 平 均 得 点 0.4 0.2 年 齢 別 ( 男 性 従 業 員 ) 年 齢 別 ( 女 性 従 業 員 ) 0.4 目 的 意 欲 残 留 功 利 0.2 0 20 代 30 代 40 代 50 代 0 20 代 30 代 40 代 50 代 -0.2-0.2 目 的 意 欲 -0.4 0.4 0.2 雇 用 形 態 別 目 的 残 留 意 欲 功 利 -0.4 0.4 0.2 残 留 功 利 職 位 別 目 的 意 欲 残 留 功 利 0 非 正 規 社 員 正 規 社 員 0 管 理 職 非 管 理 職 -0.2-0.2-0.4-0.4 0.4 0.2 職 種 別 目 的 残 留 意 欲 功 利 0.4 0.2 業 種 別 目 的 意 欲 残 留 功 利 0-0.2-0.4 事 務 管 理 的 職 種 営 業 販 売 職 専 門 技 術 職 0-0.2-0.4-0.6 製 造 金 融 電 気 ガス 運 輸 情 報 Nikko Financial Intelligence,Inc.
NFI リサーチ レビュー 2007 年 11 月 号 0.4 0.2 0-0.2-0.4 企 業 規 模 区 分 別 目 的 意 欲 残 留 功 利 ~499 名 ~999 名 ~2,999 名 3,000 名 ~ 0.4 0.2 0-0.2-0.4-0.6-0.8 年 収 区 分 別 ~300 万 円 未 ~500 満 万 円 未 ~700 満 万 円 未 ~1,000 満 万 円 未 1,000 満 万 円 以 上 ~ 目 的 意 欲 残 留 功 利 4.4 組 織 コミットメントに 影 響 を 与 える 職 務 満 足 の 下 位 因 子 組 織 コミットメントの 各 因 子 に 影 響 を 与 える 職 務 職 場 経 験 について 関 本 花 田 (1987)は 目 標 因 子 に 対 しては 会 社 の 魅 力 の 高 さが 意 欲 因 子 に 関 しては 仕 事 の 魅 力 が 残 留 因 子 に 関 しては 給 与 福 利 厚 生 の 公 平 感 が 寄 与 することを 分 析 により 示 している 同 様 の 観 点 から 職 務 満 足 に 関 する 変 数 を 用 いて 組 織 コミットメントの 各 因 子 に 対 する 影 響 を 分 析 したのが 図 表 6 である 職 務 満 足 は 組 織 コミットメントよりも 古 く 1930 年 代 から 主 に 組 織 の 生 産 性 と の 関 わりを 焦 点 に 研 究 されてきた 構 成 概 念 である 詳 細 な 説 明 は 他 の 機 会 に 譲 るが こ こではよく 知 られる 尺 度 基 準 の 一 つである ミネソタ 満 足 度 質 問 票 (MSQ; Minnesota Satisfaction Questionnaire) のショートバージョンをもとに 永 井 (2001)が 作 成 した 尺 度 をもとに 独 自 項 目 を 加 えて 作 成 した 質 問 票 より 計 測 したものを 用 いる 今 回 計 測 さ れた 職 務 満 足 は 図 表 5 に 示 したとおり 4 つの 因 子 から 構 成 される 報 酬 満 足 は 仕 事 遂 行 により 得 られる 報 酬 が 仕 事 内 容 などに 見 合 ったものかを 仕 事 満 足 は 仕 事 遂 行 がどれだけ 個 人 的 な 興 味 や 新 たな 知 識 や 能 力 の 獲 得 につながるか 同 等 な 立 場 に 置 かれた 他 者 と 比 べて 公 平 な 処 遇 かを 上 司 満 足 は 上 司 の 指 導 監 督 は 適 切 で 公 平 なものであるかを 同 僚 満 足 は 同 じ 職 場 で 仕 事 をする 同 僚 が 友 好 的 で 必 要 に 応 じ て 相 互 に 支 援 ができるかを 表 している 日 興 フィナンシャル インテリジェンス
NFI RESEARCH REVIEW NOVEMBER 2007 図 表 6 職 務 満 足 に 関 する 因 子 分 析 報 酬 満 足 仕 事 満 足 上 司 満 足 同 僚 満 足 仕 事 内 容 に 比 べた 報 酬 の 額 0.92-0.01 0.01-0.05 同 僚 と 比 べた 報 酬 の 額 0.64 0.12-0.05 0.11 仕 事 の 量 に 比 べた 報 酬 の 額 0.91-0.10 0.02 0.00 同 業 他 社 の 社 員 と 比 べた 報 酬 の 額 0.71 0.09 0.04-0.04 仕 事 から 得 られるチャレンジ 感 0.07 0.87 0.04-0.05 仕 事 から 得 られる 達 成 感 -0.02 0.92-0.02 0.02 個 人 的 な 成 長 と 能 力 開 発 -0.02 0.69 0.16 0.05 上 司 から 受 ける 援 助 や 指 示 -0.02 0.10 0.86 0.00 上 司 の 指 導 力 -0.04 0.02 0.99-0.08 上 司 から 受 ける 処 遇 の 公 平 0.11-0.02 0.70 0.14 同 僚 から 受 ける 援 助 やアドバイス 0.02 0.05 0.19 0.68 同 僚 との 人 間 関 係 -0.02-0.01-0.04 0.80 信 頼 度 (α) 0.61 0.91 0.91 0.76 この 職 務 満 足 の 4 因 子 に 相 当 する 被 調 査 者 のそれぞれの 回 答 ( 素 点 )の 合 計 点 を 説 明 変 数 とし 個 人 属 性 に 関 するダミー 変 数 等 をコントロール 変 数 として 投 入 し 組 織 コ ミットメントの 4 因 子 を 回 帰 させた 結 果 9 を 図 表 6 に 示 す 図 表 7 職 務 満 足 の 組 織 コミットメント に 対 する 影 響 Intercept 職 務 満 足 コントロール 変 数 仕 事 満 足 報 酬 満 足 上 司 満 足 同 僚 満 足 C1 C2 C3 C4 C5 C6 C7 _RSQ_ 目 的 1.73-0.10 0.00-0.09 0.00-0.01 0.00-0.01-0.02-0.22-0.04-0.05 0.27 OC_1 (***) (***) (***) (***) ( *) ( **) 意 欲 0.53-0.11 0.10-0.04 0.00-0.06 0.00-0.11 0.03-0.32-0.02-0.01 0.25 OC_2 (***) (***) (***) (***) ( *) (***) 残 留 2.18-0.06-0.04-0.05-0.02 0.15-0.01-0.23 0.05-0.01-0.04-0.07 0.21 OC_3 (***) (***) (***) (***) ( **) (***) (***) ( *) (***) 功 利 0.34-0.04 0.03 0.00-0.04-0.03 0.00-0.03-0.04-0.10 0.00-0.05 0.08 OC_4 ( **) (***) (***) (***) ( *) (***) (***);p 値 <1% ( **);p 値 <5% ( *);p 値 <10% (コントロール 変 数 の 定 義 ) C1: 男 性 ダミー C2: 年 齢 区 分 C3: 子 供 有 ダミー C4: 共 働 きダミー C5: 管 理 職 ダミー C6: 年 収 区 分 C7: 企 業 規 模 区 分 20 年 前 の 関 本 花 田 (1987)の 同 様 の 分 析 と 比 較 してみると その 傾 向 にはいくつか 9 関 本 花 田 (1985 1986,1987)の 調 査 は 大 卒 男 子 のホワイトカラーのみを 調 査 対 象 としていたが 本 調 査 は 対 象 者 に 多 様 な 属 性 をもつ 被 調 査 者 を 含 むため その 影 響 を 調 整 するためコントロール 変 数 を 用 いた なお 関 本 花 田 (1985 1986,1987)の 調 査 が 対 象 を 大 卒 男 子 ホワイトカラー に 絞 った 理 由 は 彼 らがその 属 性 を 将 来 のエリート 予 備 軍 と 認 識 していたからであった Nikko Financial Intelligence,Inc.
NFI リサーチ レビュー 2007 年 11 月 号 の 差 異 がみられる 報 酬 や 報 酬 の 公 平 性 に 対 する 満 足 が 組 織 コミットメントの 下 位 因 子 に 影 響 するのは 同 様 の 傾 向 といえるが 内 容 をみてみると 20 年 前 はこの 満 足 ( 公 平 ) 感 が 残 留 因 子 を 高 めていたのに 対 し 今 回 の 調 査 では 報 酬 満 足 には 意 欲 と 功 利 の 因 子 を 高 める 影 響 が 認 められる 一 方 で 残 留 にはむしろマイナスの 影 響 が 認 められる より 大 きな 違 いは 20 年 前 には ( 積 極 的 に 働 く) 意 欲 を 高 めていた 仕 事 の 魅 力 度 (ここでは 仕 事 満 足 )が 今 回 は 組 織 コミットメントの 4 つの 下 位 因 子 すべてに 対 して 有 意 にマイナスに 影 響 している 可 能 性 が 認 められた 点 である 10 仕 事 自 体 の 面 白 さや 上 司 の 指 導 力 など 非 物 質 的 な 報 酬 ( 内 的 報 酬 )よりも 物 質 的 金 銭 的 な 報 酬 ( 外 的 報 酬 )のほうが 組 織 コミットメントを 高 める 効 果 が 強 まってきていると の 見 方 もできる しかし この 解 釈 には 20 年 の 間 に 多 様 化 している 他 の 人 的 資 源 管 理 策 との 関 係 など より 複 雑 な 要 因 が 関 係 していることも 考 えられるので 追 加 的 な 分 析 が 必 要 となろう またこれらの 傾 向 は この 20 年 の 間 に 起 こった 労 働 市 場 の 流 動 化 や 業 務 のモジュ ール 化 による 業 務 特 性 の 一 般 化 などとも 無 関 係 ではないだろう どの 企 業 においても 必 要 とされるスキルや 能 力 が 標 準 化 しつつある 現 在 職 務 能 力 を 向 上 させ 高 い 評 価 と 報 酬 を 受 け 取 っている 者 にとって 現 状 と 同 等 あるいは 同 等 以 上 の 処 遇 で 転 職 を 行 う 機 会 は 増 加 しており 転 職 がキャリアアップにつながるとの 認 識 をもつ 従 業 員 に 対 し 企 業 に 対 するコミットメントを 引 き 出 そうとするのであれば 仕 事 の 魅 力 のみでは それを 達 成 するのはもはや 難 しくなっている 可 能 性 のあることを この 分 析 結 果 は 示 している といえそうである 4.5 組 織 コミットメントが 離 転 職 意 識 等 に 与 える 影 響 今 回 測 定 された 組 織 コミットメントが 離 転 職 の 意 識 や 生 産 性 などに 与 える 影 響 は どのようなものであろうか 離 転 職 の 意 識 があるからといって 必 ずしも 離 転 職 行 動 に 結 び 付 くわけではないし 本 人 が 自 覚 する 労 働 意 欲 や 生 産 性 が 向 上 しているからといっ て 必 ずしも 組 織 の 生 産 性 が 高 まるわけでもないが これらの 個 人 の 意 識 や 認 識 は 個 人 の 行 動 や 組 織 の 方 向 性 を 決 める 少 なくともきっかけとはなる 離 転 職 意 識 労 働 意 欲 や 本 人 が 自 覚 する 生 産 性 の 向 上 を 従 属 変 数 とし 今 回 抽 出 された 組 織 コミットメントの 10 ただし 特 に 功 利 については 決 定 係 数 (RSQ)の 水 準 が 極 めて 低 く モデル 自 体 の 有 効 性 が 問 題 である 日 興 フィナンシャル インテリジェンス
NFI RESEARCH REVIEW NOVEMBER 2007 各 因 子 を 説 明 変 数 として 回 帰 させた 結 果 が 図 表 8 図 表 9 である 図 表 8 組 織 コミットメントが 離 転 職 意 識 に 与 える 影 響 Intercept 組 織 コミットメント コントロール 変 数 目 的 意 欲 残 留 功 利 C1 C2 C3 C4 C5 C6 C7 _RSQ_ 今 の 会 社 にそう 先 まではいない 3.06-0.04-0.03-0.77 0.09 0.07-0.01 0.22 0.07 0.02 0.02 0.00 0.46 Q16S7 (***) (***) ( *) ( **) (***) 今 より 処 遇 がアップするなら 転 職 したい 1.66-0.10 0.02-0.58 0.47-0.04 0.02 0.04-0.12 0.07 0.04-0.02 0.32 Q16S8 (***) ( **) (***) (***) (***) ( *) 今 より 私 生 活 との 両 立 ができるなら 転 職 したい 1.80-0.09 0.03-0.50 0.41 0.06 0.02 0.03-0.06 0.09 0.03-0.04 0.25 Q16S9 (***) ( **) (***) (***) (***) ( *) 今 より 自 分 を 活 かせる 仕 事 なら 転 職 したい 1.85-0.12 0.06-0.57 0.49 0.07 0.01 0.14-0.08 0.05 0.03-0.06 0.30 Q16S10 (***) (***) (***) (***) (***) ( **) ( **) (***);p 値 <1% ( **);p 値 <5% ( *);p 値 <10% (コントロール 変 数 の 定 義 ) C1: 男 性 ダミー C2: 年 齢 区 分 C3: 子 供 有 ダミー C4: 共 働 きダミー C5: 管 理 職 ダミー C6: 年 収 区 分 C7: 企 業 規 模 区 分 図 表 8 は 離 転 職 意 識 への 影 響 を 分 析 しているが 切 片 項 はいずれもプラスに 1% 水 準 で 有 意 であり 基 本 的 に 今 回 のサンプルは 離 転 職 の 意 識 を 持 つ 傾 向 があるといえそうで あるが しかたがないからいる というタイプのコミットメントといえる 残 留 因 子 のほか 目 標 因 子 に 5%から 10% 水 準 の 有 意 度 で 離 転 職 意 識 を 低 下 させる 効 果 がみられる 功 利 の 因 子 は 離 転 職 意 識 を 上 昇 させる 可 能 性 が 高 いといえそうである 3 年 前 と 比 較 した 仕 事 に 対 する 意 欲 満 足 度 や 自 己 認 識 の 生 産 性 など パフォーマン スへの 影 響 を 同 様 に 分 析 したのが 図 表 9 である 図 表 9 組 織 コミットメントがパフォーマンス 変 数 に 与 える 影 響 Intercept 組 織 コミットメント コントロール 変 数 目 的 意 欲 残 留 功 利 C1 C2 C3 C4 C5 C6 C7 _RSQ_ 意 欲 が 高 まった( 注 ) 2.81 0.26 0.22 0.22-0.03 0.01 0.01-0.07 0.08-0.01 0.01-0.04 0.27 Q16S1 (***) (***) (***) (***) (***) 仕 事 や 会 社 への 満 足 度 が 高 まった( 注 ) 2.94 0.32 0.15 0.26-0.08 0.12 0.01-0.06 0.10 0.01 0.00-0.06 0.30 Q16S2 (***) (***) (***) (***) ( *) ( *) (***) ( **) 自 分 の 時 間 当 り 生 産 性 は 高 まった( 注 ) 2.06 0.14 0.17-0.01 0.21 0.12 0.02-0.08 0.10 0.06-0.03-0.02 0.13 Q16S3 (***) (***) (***) (***) (***) 総 合 的 にみて 仕 事 に 満 足 している 2.91 0.30 0.11 0.34 0.03 0.15 0.01 0.00 0.01 0.13-0.02-0.02 0.33 Q16S4 (***) (***) (***) (***) ( **) ( *) ( 注 )3 年 前 の 自 身 との 比 較 で 回 答 を 求 めた (***);p 値 <1% ( **);p 値 <5% ( *);p<10% (コントロール 変 数 の 定 義 ) C1: 男 性 ダミー C2: 年 齢 区 分 C3: 子 供 有 ダミー C4: 共 働 きダミー C5: 管 理 職 ダミー C6: 年 収 区 分 C7: 企 業 規 模 区 分 Nikko Financial Intelligence,Inc.
NFI リサーチ レビュー 2007 年 11 月 号 組 織 コミットメントに 関 する 4 つの 下 位 因 子 の 全 てが ほとんどすべてのパフォー マンス 変 数 に 対 してプラスに 有 意 な 影 響 を 与 えている 類 型 が 変 化 したり 内 容 が 変 容 したとしても 組 織 コミットメントは 従 業 員 の 離 転 職 の 抑 制 や 生 産 性 向 上 において 重 要 な 構 成 概 念 である 可 能 性 の 高 いことをこの 結 果 は 示 し ていると 考 える 5. 考 察 組 織 コミットメントの 概 念 を 組 織 と 個 人 の 関 係 を 議 論 する 手 段 ( 西 脇 (1998))と 捉 えるならば バブル 期 前 後 でその 内 容 や 類 型 が 大 きく 変 容 していることは 十 分 考 えられ 1984 年 に 実 施 された 調 査 をもとにした 関 本 花 田 (1985,1986,1987)と バブル 期 後 の 本 調 査 の 結 果 にいくつかの 差 異 のあることは むしろ 妥 当 なことも 受 け 取 れる 20 年 前 には 30 代 後 半 の 課 長 層 であった 団 塊 の 世 代 は 現 在 リタイアの 年 齢 にさしか かっているが その 間 大 規 模 なリストラや 早 期 退 職 勧 奨 を 経 験 し 人 員 削 減 の 対 象 と もなってきた 終 身 雇 用 のもとで 会 社 の 発 展 が 自 己 の 満 足 や 生 活 の 向 上 に 繋 がるとの 企 業 と 個 人 の 一 体 感 は 薄 れ 本 調 査 でも かつては 年 齢 とともに 高 まった 企 業 への 愛 着 や 忠 誠 心 が 年 齢 とともにむしろ 減 退 している 傾 向 のあることが 示 された また 業 務 のモジュール 化 標 準 化 は 企 業 特 殊 的 能 力 の 相 対 的 な 価 値 を 低 下 させると ともに 人 材 の 流 動 化 を 促 進 してきた 側 面 がある 企 業 の 人 的 資 源 管 理 は 内 部 労 働 市 場 を 中 心 とした 人 材 の 調 達 から 外 部 人 材 の 活 用 も 視 野 にいれた 人 材 ポートフォリオ( 守 島 (2004)) の 考 え 方 を 取 り 入 れつつあり 仕 事 自 体 へのコミットメントは 高 めるが 組 織 へのコミットメントは 低 いタイプの コスモポリタン( 太 田 (1999)) といわれるよ うな 層 の 存 在 も 指 摘 される 企 業 特 殊 的 能 力 の 相 対 的 な 価 値 の 低 下 を 背 景 にこのような タイプの 人 材 が 増 加 するならば かつては 高 い 相 関 が 指 摘 された 職 務 満 足 特 に 仕 事 自 体 への 満 足 と 組 織 へのコミットメントとの 関 係 が 希 薄 化 していることは 十 分 考 えられ 本 調 査 が 示 すような 逆 方 向 の 関 係 についても 解 釈 の 余 地 があるものと 考 える しかし 今 回 の 分 析 結 果 には 企 業 の 人 的 資 源 管 理 策 に 関 する 他 の 変 数 が 密 接 に 関 連 し ている 可 能 性 も 考 えられる 関 本 花 田 (1987)の 調 査 は 大 企 業 に 勤 務 する 大 卒 ホ ワイトカラー というある 意 味 同 一 属 性 の 従 業 員 を 対 象 にしていたが 今 回 の 調 査 は 対 象 者 の 属 性 が 多 様 化 しているだけでなく 被 調 査 者 が 適 用 されている 各 企 業 の 人 的 資 源 日 興 フィナンシャル インテリジェンス
NFI RESEARCH REVIEW NOVEMBER 2007 管 理 策 も 20 年 前 と 比 較 すると 相 当 に 多 様 化 しているものと 思 われる 本 調 査 は 組 織 コミットメントは 現 在 も 企 業 の 離 転 職 意 識 抑 制 や 特 定 のパフォーマ ンスに 対 し 関 連 の 深 い 重 要 な 概 念 であることも 示 している 他 の 人 的 資 源 諸 施 策 との 関 連 についても 分 析 し それらの 変 数 との 構 造 的 な 関 連 について 示 すことが 今 後 の 企 業 と 個 人 とのよりよい 関 係 を 考 える 上 で 重 要 なものとなるだろう 6. 今 後 の 課 題 関 本 花 田 (1987)の 研 究 は それまで 忠 誠 心 滅 私 奉 公 運 命 共 同 体 など 日 本 的 な 情 緒 に 倫 理 的 価 値 を 付 与 して 論 じられることの 多 かった 日 本 の 帰 属 意 識 を 複 数 の 下 位 因 子 からを 計 量 的 に 捉 えられる 概 念 であることを 示 し 団 塊 世 代 ( 当 時 35~37 歳 ) を 境 に 自 己 実 現 や 功 利 などの 概 念 を 伴 ったものに 変 化 していることも 示 した し かし 彼 らの 研 究 の 出 発 点 は 企 業 と 個 人 との 関 係 を 正 確 に 把 握 すること そしてそれに 影 響 を 与 える 要 因 を 把 握 し 帰 属 意 識 に 対 して 効 率 的 に 機 能 する 人 的 資 源 システムを 検 討 することであった 関 本 花 田 (1987)をベースとする 本 研 究 も 同 様 に 組 織 コミットメントに 影 響 を 与 え る 人 事 制 度 や 新 しい 人 的 資 源 管 理 策 として 米 国 を 中 心 に 実 証 研 究 も 行 われているワー ク ライフ バランス 諸 施 策 またそれらの 影 響 を 規 定 するであろう 組 織 の 風 土 などが 最 終 的 な 関 心 ごとである それらの 点 について 分 析 を 行 うことを 本 稿 の 後 編 における 課 題 としたい 参 考 文 献 青 木 恵 之 祐 (2001) 従 業 員 の 心 理 的 契 約 と 組 織 コミットメントが 退 職 意 思 に 及 ぼす 影 響 に ついて 産 業 組 織 心 理 学 研 究 Vol.15 No.1 pp13-25 関 本 昌 秀 花 田 光 世 (1985) 11 社 の 調 査 分 析 にもとづく 帰 属 意 識 の 研 究 ( 上 ) ダイヤモン ド ハーバードビジネス 11 月 号 pp84-86 関 本 昌 秀 花 田 光 世 (1985) 11 社 の 調 査 分 析 にもとづく 帰 属 意 識 の 研 究 ( 下 ) ダイヤモン ド ハーバードビジネス 1 月 号 pp53-62 関 本 昌 秀 花 田 光 世 (1987) 企 業 帰 属 意 識 の 構 造 化 と 影 響 要 因 の 研 究 産 業 組 織 心 理 学 研 究 Vol.1 No.1 pp9-20 Nikko Financial Intelligence,Inc.
NFI リサーチ レビュー 2007 年 11 月 号 高 木 浩 人 (1998) 雇 用 構 造 の 変 化 と 組 織 コミットメント 日 本 労 働 研 究 雑 誌 455, pp2-11 永 井 裕 久 (2001) 日 本 企 業 の 海 外 派 遣 者 職 業 と 生 活 の 実 態 日 本 労 働 研 究 機 構 西 脇 暢 子 (1998) コミットメント 研 究 の 課 題 と 展 望 産 業 組 織 心 理 学 研 究 Vol.11 No.1 pp51-59 太 田 肇 (1999) 仕 事 人 と 組 織 -インフラ 型 への 企 業 革 新 有 斐 閣 守 島 基 博 (2004) 人 材 マネジメント 入 門 日 本 経 済 新 聞 社 Becker, H.S.(1960) Notes on the concept of commitment. American Journal of Sociology, 66, pp32-40 Allen, N.J., & Meyer, J.P.(1990) The measurement and antecedents of affective, continuous and normative commitment to the organization Journal of Occupational Psychology, 63 pp1-18 Mowday, R.T., Steers, R.M. & Poter, L.W. (1979) The Measurement of Organizational Commitment Journal of Vocational Behavior,14 pp224-247 Rusbult, G.C., & Farrell, D.(1983) A longitudinal test of the investment model: The impact on job satisfaction, and turn over variations in rewards, costs, alternatives, and investment Journal of Applied Psychology, 68, pp429-438 Scholl, R.W.(1981) Differentiation organizational commitment from expectancy as a motivational force Academy of Management Review, 6, pp589-599 日 興 フィナンシャル インテリジェンス
NFI RESEARCH REVIEW NOVEMBER 2007 This page intentionally left blank Nikko Financial Intelligence,Inc.