EU総まとめ



Similar documents
弁護士報酬規定(抜粋)

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt

スライド 1

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

<4D F736F F D F8D828D5A939982CC8EF68BC697BF96B38F9E89BB82CC8A6791E52E646F63>

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

Microsoft PowerPoint - 基金制度

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

定款  変更

小山市保育所整備計画

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

Microsoft Word - 目次.doc

1 特 別 会 計 財 務 書 類 の 検 査 特 別 会 計 に 関 する 法 律 ( 平 成 19 年 法 律 第 23 号 以 下 法 という ) 第 19 条 第 1 項 の 規 定 に 基 づき 所 管 大 臣 は 毎 会 計 年 度 その 管 理 する 特 別 会 計 について 資 産

就 業 規 則 ( 福 利 厚 生 ) 第 章 福 利 厚 生 ( 死 亡 弔 慰 金 等 ) 第 条 法 人 が 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 民 間 社 会 福 祉 施 設 等 職 員 共 済 規 程 に 基 づき 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 との 間 において 締 結 す

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

Microsoft Word 第1章 定款.doc

要 な 指 示 をさせることができる ( 検 査 ) 第 8 条 甲 は 乙 の 業 務 にかかる 契 約 履 行 状 況 について 作 業 完 了 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする ( 発 生 した 著 作 権 等 の 帰 属 ) 第 9 条 業 務 によって 甲 が 乙 に


セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

損 益 計 算 書 ( 自 平 成 25 年 4 月 1 日 至 平 成 26 年 3 月 31 日 ) ( 単 位 : 百 万 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 75,917 取 引 参 加 料 金 39,032 上 場 関 係 収 入 11,772 情 報 関 係 収 入 13,352 そ

Taro-条文.jtd

代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

ほかに パート 従 業 員 らの 厚 生 年 金 加 入 の 拡 大 を 促 す 従 業 員 五 百 人 以 下 の 企 業 を 対 象 に 労 使 が 合 意 すれば 今 年 十 月 から 短 時 間 で 働 く 人 も 加 入 できる 対 象 は 約 五 十 万 人 五 百 人 超 の 企 業

<4D F736F F D C482C682EA817A89BA90BF8E7793B1834B A4F8D91906C8DDE8A A>


●電力自由化推進法案

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

大阪府電子調達システムの開発業務 (第一期)に係る仕様書案に対する意見招請のお知らせ

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

財政再計算結果_色変更.indd

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

<4D F736F F D208E9197BF A955B895E93AE82CC8B4B90A C982C282A282C42E646F6378>

●幼児教育振興法案

土 購 入 土 借 用 土 所 有 権 移 転 登 記 確 約 書 農 転 用 許 可 書 ( 写 ) 農 転 用 届 出 受 理 書 ( 写 ) 土 不 動 産 価 格 評 価 書 土 見 積 書 ( 写 ) 又 は 売 買 確 約 書 ( 写 ) 土 売 主 印 鑑 登 録 証 明 書 売 主

一般競争入札について

 

定款

Microsoft Word 役員選挙規程.doc

公表表紙

(3) その 他 市 長 が 必 要 と 認 める 書 類 ( 補 助 金 の 交 付 決 定 ) 第 6 条 市 長 は 前 条 の 申 請 書 を 受 理 したときは 速 やかにその 内 容 を 審 査 し 補 助 金 を 交 付 すべきものと 認 めたときは 規 則 第 7 条 に 規 定 す

第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

スライド 1

< EE597768E968BC688EA97972D372E786477>

税制面での支援

1. 決 算 の 概 要 法 人 全 体 として 2,459 億 円 の 当 期 総 利 益 を 計 上 し 末 をもって 繰 越 欠 損 金 を 解 消 しています ( : 当 期 総 利 益 2,092 億 円 ) 中 期 計 画 における 収 支 改 善 項 目 に 関 して ( : 繰 越

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

続 に 基 づく 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 再 認 定 を 受 けていること ) c) 会 社 更 生 法 に 基 づき 更 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなされている 者 又 は 民 事 再 生 法 に 基 づき 再 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなさ

4 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 若 しくはその 委 任 を 受 けた 者 又 は 監 査 委 員 の 監 査 に 応 じなければ ならない ( 状 況 報 告 ) 第 7 条 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 が 必 要 と 認 めるときは 交 付 金 事 業 の 遂 行 の

03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

Taro-契約条項(全部)

省 九 州 地 方 整 備 局 長 若 しくは 宮 崎 県 知 事 に 意 見 を 提 出 することができる ( 役 員 の 任 命 ) 第 8 条 理 事 長 及 び 監 事 は 宮 崎 県 知 事 が 任 命 する 2 理 事 は 理 事 長 が 任 命 する 3 副 理 事 長 は 理 事 長

J A K カ イ ロ プ ラ ク テ ィ ッ ク 協 同 組 合 規 約 ( 目 的 ) 第 1 条 組 合 員 の 権 利 義 務 等 は 定 款 に よ っ て 定 め ら れ て い る が 定 款 の 第 6 条 の 規 定 に よ り 定 款 に 記 載 さ れ な い 必 要 事 項

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

第 8 条 乙 は 甲 に 対 し 仕 様 書 に 定 める 期 日 までに 所 定 の 成 果 物 を 検 収 依 頼 書 と 共 に 納 入 する 2 甲 は 前 項 に 定 める 納 入 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする 3 検 査 不 合 格 となった 場 合 甲 は

第 40 回 中 央 近 代 化 基 金 補 完 融 資 推 薦 申 込 み 公 募 要 綱 1 公 募 推 薦 総 枠 30 億 円 一 般 物 流 効 率 化 促 進 中 小 企 業 高 度 化 資 金 貸 付 対 象 事 業 の 合 計 枠 2 公 募 期 間 平 成 28 年 6 月 20

( 補 助 金 等 交 付 決 定 通 知 に 加 える 条 件 ) 第 7 条 市 長 は 交 付 規 則 第 11 条 に 規 定 するところにより 補 助 金 の 交 付 決 定 に 際 し 次 に 掲 げる 条 件 を 付 するものとする (1) 事 業 完 了 後 に 消 費 税 及 び

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

Microsoft Word 行革PF法案-0概要

Taro-事務処理要綱250820

Taro-01 議案概要.jtd

<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

< DB8CAF97BF97A6955C2E786C73>

(2) 単 身 者 向 け 以 外 の 賃 貸 共 同 住 宅 等 当 該 建 物 に 対 して 新 たに 固 定 資 産 税 等 が 課 税 される 年 から 起 算 して5 年 間 とする ( 交 付 申 請 及 び 決 定 ) 第 5 条 補 助 金 の 交 付 を 受 けようとする 者 は

< F2D D D837C815B B8EC08E7B97768D80>

< F2D8AC493C CC81698EF3928D8ED2816A2E6A7464>

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

<817993FA967B8E E A E815B817A B F976C8EAE82502D322E786C73>

Microsoft Word - 全国エリアマネジメントネットワーク規約.docx

Microsoft Word - 奨学金相談Q&A.rtf

大 田 区 保 育 従 事 職 員 宿 舎 借 り 上 げ 支 援 事 業 Q&A 目 次 Ⅰ 補 助 事 業 全 般 について P3~P4 Ⅱ 補 助 対 象 施 設 について P5 Ⅲ 補 助 対 象 職 員 について P6~P10 Ⅳ 補 助 対 象 経 費 について P11~P13 2

連結計算書

(Microsoft Word - \212\356\226{\225\373\220j _\217C\220\263\201j.doc)

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

(6) Qualification for participating in the tendering procedu

Ⅰ 元 請 負 人 を 社 会 保 険 等 加 入 建 設 業 者 に 限 定 平 成 28 年 10 月 1 日 以 降 に 入 札 公 告 指 名 通 知 随 意 契 約 のための 見 積 依 頼 を 行 う 工 事 から 以 下 に 定 める 届 出 の 義 務 ( 以 下 届 出 義 務 と

はファクシミリ 装 置 を 用 いて 送 信 し 又 は 訪 問 する 方 法 により 当 該 債 務 を 弁 済 す ることを 要 求 し これに 対 し 債 務 者 等 から 直 接 要 求 しないよう 求 められたにもかか わらず 更 にこれらの 方 法 で 当 該 債 務 を 弁 済 するこ

【労働保険事務組合事務処理規約】

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

4 乙 は 天 災 地 変 戦 争 暴 動 内 乱 法 令 の 制 定 改 廃 輸 送 機 関 の 事 故 その 他 の 不 可 抗 力 により 第 1 項 及 び 第 2 項 に 定 める 業 務 期 日 までに 第 1 条 第 3 項 の 適 合 書 を 交 付 することができない 場 合 は

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

Microsoft Word 利子補給金交付要綱

平成16年度

m07 北見工業大学 様式①

2 導 入 に 係 る 各 課 の 役 割 部 署 名 危 機 管 理 室 主 な 事 務 番 号 法 に 規 定 さ れ た 事 務 へ の 個 人 番 号 の 導 入 に 関 す る こ と 制 度 導 入 に 向 け た 事 務 の 総 括 に 関 す る こ と 個 人 番 号 の 独 自

16 日本学生支援機構

2 前 項 に 定 める 日 に 支 給 する 給 与 は 総 額 給 与 を12 分 割 した 額 ( 以 下 給 与 月 額 という ) 扶 養 手 当 住 居 手 当 通 勤 手 当 単 身 赴 任 手 当 寒 冷 地 手 当 及 び 業 績 手 当 並 びに 前 月 分 の 超 過 勤 務

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便

入札公告 機動装備センター

<4D F736F F D C8E9688D993AE82C994BA82A492F18F6F8F9197DE81698DC58F49816A2E646F6378>

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

Transcription:

平 成 28 年 5 月 号 改 めて EU とは 何 か を 考 える 千 葉 銀 行 ロンドン 支 店

英 国 では 先 月 エリザベス 女 王 が 90 歳 の 誕 生 日 を 迎 えました 昨 年 9 月 に 歴 代 君 主 で 在 位 最 長 期 間 (63 年 )を 更 新 した 女 王 ですが 今 なお 精 力 的 に 公 務 をこなし ています 英 国 では 6 月 10 日 11 日 に 公 式 祝 賀 式 典 が 開 催 される 予 定 ですが そ の 日 はパブ( 酒 場 )が 営 業 時 間 の 延 長 を 許 可 されており お 祝 い 騒 ぎは 深 夜 にまで 及 ぶことが 予 想 されます さて 今 回 の EU インサイトでは 改 めて EU とは 何 か を 考 えていきます 1.はじめに 英 国 の 欧 州 連 合 (European Union 以 下 EU) 離 脱 の 是 非 を 問 う 国 民 投 票 が 6 月 23 日 に 行 われます この 英 国 の EU 離 脱 問 題 は 英 国 (Britain) と 離 脱 (Exit) を 組 み 合 わせた 造 語 Brexit(ブレグジット) と 呼 ばれ 連 日 当 地 の 新 聞 やニュー スをにぎわせています 実 は 2010 年 に 起 きた 欧 州 債 務 危 機 においても ギリシャ (Greece)の EU 離 脱 が 懸 念 され その 際 も Grexit(グレグジット) という 造 語 が 広 まり 大 きな 話 題 となりました 離 脱 問 題 ばかりが 取 り 沙 汰 される EU ですが 一 方 で 今 もなお トルコを 始 めとす る 6 カ 国 が 新 規 加 盟 を 目 指 して 交 渉 を 続 けています これらの 国 々がなぜ 離 脱 加 盟 を 希 望 するのか その 理 由 を 理 解 するには そもそも EU とは 何 なのか を 理 解 す ることが 欠 かせません そこで 今 回 の EU インサイトでは EU の 始 まりから 今 抱 え ている 問 題 までを 再 確 認 する EU 総 まとめ をお 送 りします 2.EU の 歴 史 (1) 欧 州 統 合 のはじまり 年 略 史 加 盟 国 数 1952 年 欧 州 石 炭 鉄 鋼 共 同 体 (ECSC) 設 立 原 加 盟 国 :フランス 西 ドイツ イタリア オランダ ベルギー ルクセンブルク 6 1958 年 欧 州 経 済 共 同 体 (EEC) 欧 州 原 子 力 共 同 体 (Euratom) 設 立 1963 年 仏 独 相 互 協 力 条 約 締 結 1967 年 3 共 同 体 が 欧 州 共 同 体 (EC)に 統 合 1968 年 関 税 同 盟 完 成 1973 年 英 国 アイルランド デンマーク 加 盟 9 1981 年 ギリシャ 加 盟 10 1986 年 スペイン ポルトガル 加 盟 12 1992 年 域 内 市 場 統 合 完 成 1993 年 マーストリヒト 条 約 発 効 EU 発 足 1995 年 オーストリア スウェーデン フィンランド 加 盟 15 1998 年 欧 州 中 央 銀 行 (ECB) 設 立 1999 年 ユーロ 導 入 アムステルダム 条 約 発 効 2004 年 東 欧 10カ 国 加 盟 25 2007 年 ブルガリア ルーマニア 加 盟 27 2009 年 リスボン 条 約 発 効 2013 年 クロアチア 加 盟 28 1

EU の 歴 史 を 紐 解 くと そのはじまりは 第 二 次 世 界 大 戦 直 後 までさかのぼります 二 度 の 世 界 大 戦 で 疲 弊 しきった 欧 州 は 冷 戦 体 制 下 で 東 西 に 二 分 され 世 界 政 治 経 済 への 発 言 力 は 大 きく 弱 まっていました その 一 方 で 米 国 とソ 連 という 両 超 大 国 の 力 は 日 に 日 に 増 していくばかりであり この 両 国 に 対 抗 するため 欧 州 各 国 が 力 を 合 わせる 必 要 性 が 認 識 されはじめました 欧 州 の 統 合 にあたっては 二 大 大 国 であるフランスと 西 ドイツの 対 立 解 消 が 不 可 欠 でした この 両 国 には その 国 境 近 くに 位 置 し 鉄 鉱 石 と 石 炭 を 算 出 するアルザ ス=ロレーヌ 地 方 の 領 有 権 を 経 済 的 な 理 由 から 奪 いあった 歴 史 があります そのた め 二 国 間 の 対 立 を 解 消 するには まず 資 源 や 市 場 の 共 同 利 用 といった 経 済 統 合 を 図 ることが 欧 州 各 国 が 協 力 関 係 を 結 ぶ 第 一 歩 として 重 要 視 されました 1952 年 フ ラ ン ス の 外 相 シ ュ ー マ ン の 提 案 に よ っ て 欧 州 石 炭 鉄 鋼 共 同 体 (European Coal and Steel Community 以 下 ECSC)がフランス 西 ドイツを 含 む 6 カ 国 により 設 立 され 欧 州 は 統 合 に 向 けた 第 一 歩 を 踏 み 出 しました ECSC に 加 盟 し た 国 家 は 共 通 の 市 場 の 中 で 自 由 に 生 産 量 の 調 整 や 価 格 制 限 を 行 うことができ 同 時 期 に 行 われた 米 国 によるマーシャル=プラン( 欧 州 への 経 済 援 助 )の 効 果 もあり 加 盟 国 の 経 済 は 急 速 に 回 復 しました 1958 年 にはより 広 範 囲 に 渡 る 経 済 統 合 をめざ すべく 欧 州 経 済 共 同 体 (European Economic Community)と 新 たなエネルギーの 共 同 開 発 共 同 管 理 を 目 的 とした 欧 州 原 子 力 共 同 体 (Euratom)が 設 立 されました 1963 年 経 済 的 な 豊 かさを 取 り 戻 したフランスと 西 ドイツは 仏 独 相 互 協 力 条 約 を 締 結 し 歴 史 的 な 和 解 を 果 たしました この 二 国 の 和 解 により 欧 州 の 統 合 は 加 速 し 前 述 の 3 つの 組 織 は 1967 年 に 単 一 組 織 である 欧 州 共 同 体 (European Community 以 下 EC)に 統 一 されました EC では 加 盟 国 間 の 関 税 や 貿 易 の 制 限 を 撤 廃 し 域 内 貿 易 を 活 発 化 することで 経 済 統 合 への 歩 みを 進 めていきました その 後 1973 年 の 英 国 アイルランド デン マークの EC への 加 盟 を 皮 切 りに 次 々と 加 盟 国 が 増 加 していくと 経 済 的 な 統 合 だ けではなく 共 通 の 外 交 安 全 保 障 政 策 警 察 や 司 法 における 国 家 間 協 力 といった 新 たな 次 元 での 統 合 が 求 められるようになりました 1991 年 前 述 の 2 つの 分 野 における 欧 州 統 合 と 従 来 からの EC による 経 済 協 力 と いった 3 つの 要 素 を 統 合 の 柱 とする 欧 州 連 合 条 約 が オランダのマーストリヒトで 開 かれた EC 首 脳 会 議 で 合 意 に 至 り 1993 年 に EU が 発 足 しました (2)EU の 歩 み 12 カ 国 の 加 盟 国 によって 発 足 した EU は その 後 急 速 に 勢 力 を 拡 大 していきます 1995 年 にはオーストリア スウェーデン フィンランドが 加 盟 し 2004 年 には ソ 連 崩 壊 によって 民 主 化 した 東 欧 10 カ 国 が 加 わりました その 後 2007 年 にルーマ ニア ブルガリアが 加 盟 し 2013 年 にクロアチアが 直 近 の 加 盟 国 となり 合 計 28 2

カ 国 による 国 家 連 合 へと 拡 大 しました EU は 加 盟 国 の 受 け 入 れにより 国 家 連 合 としての 骨 格 を 強 化 するとともに 経 済 に おける 一 段 の 統 合 を 目 指 す 手 段 として 1999 年 統 合 通 貨 ユーロ を 導 入 しました EC 時 代 の 1989 年 から 検 討 されてきた 欧 州 の 通 貨 統 合 は 1998 年 に 欧 州 中 央 銀 行 (European Central Bank 以 下 ECB)が 設 立 され 翌 年 1 月 にユーロの 導 入 といっ た 形 で 実 現 しました EU 加 盟 国 のうち 基 準 を 満 たした 11 カ 国 への 導 入 でスター トしたユーロは その 他 の EU 加 盟 国 が 次 々と 導 入 基 準 を 満 たし 現 在 では 28 の EU 加 盟 国 のうち 19 カ 国 がユーロを 導 入 しています また ユーロの 導 入 と 比 肩 する EU の 重 要 施 策 として EU 域 内 において 国 境 検 査 なしで 国 境 を 越 えることを 許 可 する シェンゲン 協 定 があります 1985 年 当 時 の EC 加 盟 国 のうち フランス 西 ドイツ オランダ ベルギー ルクセンブルクの 5 カ 国 間 を 自 由 に 移 動 することを 許 可 する シェンゲン 協 定 が 結 ばれ EU 発 足 後 の 1997 年 に 署 名 されたアムステルダム 条 約 により この 協 定 が EU の 法 律 として 取 り 入 れられました 現 在 では 英 国 とアイルランドを 除 く 全 ての EU 加 盟 国 において 国 境 をまたいで の 移 動 がパスポートなしで 自 由 に 行 えます また EU 基 本 法 では 労 働 者 の 移 動 の 自 由 を 定 めており EU 市 民 はビザなしで 別 の 加 盟 国 に 移 住 し 就 労 することも 可 能 で す こうして EC 時 代 における 関 税 同 盟 と 単 一 市 場 の 実 現 EU 発 足 後 の ユーロの 導 入 と シェンゲン 協 定 の 実 施 といった 施 策 を 実 行 に 移 し ヒト モノ カネ が 自 由 に 移 動 できる 開 かれた EU といった 基 本 理 念 を 実 現 した EU は 2009 年 に 署 名 されたリスボン 条 約 によって EU からの 離 脱 規 定 を 定 めた 条 文 の 追 加 や 既 存 の 条 約 の 集 約 修 正 がなされ 現 在 に 至 っています 3

EU 加 盟 ユーロ 導 入 国 (19カ 国 ) EU 加 盟 ユーロ 非 導 入 国 (9カ 国 ) 加 盟 候 補 国 (6カ 国 ) 3.EU の 主 な 組 織 (1) 欧 州 理 事 会 (European Council) 各 加 盟 国 の 首 脳 陣 によって 構 成 される EU の 最 高 意 思 決 定 機 関 年 に 4 回 以 内 の 頻 度 でサミット(EU 首 脳 会 議 )を 開 催 し EU に 関 わる 重 要 な 意 思 決 定 を 結 論 (Conclusion) という 形 で 発 表 します 現 議 長 はポーランドの 元 首 相 であるドナル ド トゥスク 氏 であり 後 述 する 英 国 の EU 離 脱 問 題 においては 英 キャメロン 首 相 と の 交 渉 に 当 たる 等 EU の 元 首 として 重 要 な 役 割 を 担 っています (2) 欧 州 委 員 会 (European Commission) EU における 行 政 執 行 機 関 各 加 盟 国 の 政 府 から 一 人 ずつ 委 員 が 選 出 され 28 人 の 委 員 によって 構 成 されています 現 委 員 長 は 元 ルクセンブルク 首 相 のジャン=クロ ード ユンケル 氏 であり 行 政 の 長 として 実 務 面 で 大 きな 権 限 を 持 っています 欧 州 委 員 会 は EU 域 内 に 適 用 される 法 案 の 提 出 や 決 定 条 約 の 実 施 といった 役 割 を 担 っており 委 員 会 の 傘 下 には 約 23,500 人 のスタッフを 擁 し 委 員 会 が 掲 げた 政 策 の 実 施 や 予 算 の 執 行 といった 日 常 的 業 務 を 担 当 する 総 局 を 抱 えています また 総 局 における 部 局 のひとつに ユーロ 圏 の 統 計 を 担 当 するユーロスタット (Eurostat 欧 州 統 計 局 )があり ここから 発 表 されるユーロ 圏 における 経 済 人 4

口 等 の 様 々なデータは 多 くの 投 資 家 の 投 資 判 断 に 欠 かせない 重 要 な 指 標 となってい ます (3) 欧 州 中 央 銀 行 (ECB) ドイツのフランクフルトに 本 店 を 構 える ECB は ユーロ 導 入 国 における 金 融 政 策 の 決 定 権 を 持 つ 唯 一 の 中 央 銀 行 です ユーロの 排 他 的 発 行 権 限 を 有 するほか 金 融 政 策 ではユーロ 圏 における 物 価 の 安 定 を 第 一 目 標 とし それを 妨 げない 範 囲 で EU の 経 済 政 策 を 支 援 するといった 指 針 を 掲 げています 後 述 の 欧 州 債 務 危 機 では ドラギ 総 裁 の 指 揮 の 下 事 態 の 収 拾 に 大 きな 役 割 を 果 たしましたが 出 口 戦 略 にはまだ 至 っておらず 現 在 も 大 きな 問 題 を 抱 えています 4.EU を 巡 る 懸 念 (1) 欧 州 債 務 危 機 順 調 な 発 展 を 続 けていた EU ですが ここ 数 年 は 大 きな 試 練 に 見 舞 われています 最 初 に 訪 れたのが 2010 年 の 欧 州 債 務 危 機 と 呼 ばれる 欧 州 国 債 とユーロへの 信 用 が 大 きく 揺 らいだ 金 融 危 機 です 危 機 の 発 端 は ギリシャが 財 政 赤 字 の 粉 飾 を 公 表 した 2009 年 10 月 でした これ により 格 付 会 社 はギリシャの 格 付 を 投 資 不 適 格 級 まで 引 き 下 げ これがスペイン アイルランド ポルトガル イタリアといった 財 政 基 盤 が 弱 い EU 諸 国 に 波 及 しまし た これまで 安 全 資 産 とされていた 国 債 のデフォルト( 債 務 不 履 行 ) 懸 念 の 引 き 金 と なり ユーロ 圏 の 国 債 市 場 は 大 きく 動 揺 しましたが この 懸 念 は EU や IMF による 多 額 の 金 融 支 援 によって 沈 静 化 が 図 られました しかし ギリシャが 支 援 を 受 ける 条 件 として 受 け 入 れた 緊 縮 財 政 に 国 民 は 強 い 反 発 を 示 します 2011 年 の 第 二 次 支 援 交 渉 では 国 民 からの 強 い 反 発 が 予 想 される と 判 断 した 政 府 が 支 援 の 受 入 れに 当 たり 国 民 投 票 実 施 を 表 明 しました 市 場 はこの 国 民 投 票 を 実 質 的 にはギリシャの EU 残 留 を 問 うものと 受 け 止 め 否 決 されれば EU そのものの 枠 組 みが 崩 壊 しかねないとの 懸 念 が 広 がり ユーロ 圏 の 国 債 株 式 が 大 きく 売 り 込 まれました この 事 態 に 対 し 就 任 したばかりのドラギ ECB 総 裁 は 民 間 金 融 機 関 への 資 金 供 給 制 度 の 導 入 を 決 定 することで 金 融 市 場 の 安 定 化 を 図 りました また ギリシャの 第 二 次 支 援 問 題 も EU 側 からの 説 得 により 国 民 投 票 の 実 施 は 見 送 られ 緊 縮 財 政 を 受 け 入 れる 形 で 正 式 合 意 に 至 ったため 欧 州 債 務 危 機 はひとまず 危 機 を 脱 しました 欧 州 債 務 危 機 はユーロの 通 貨 としての 限 界 を 示 す 事 案 であり 異 なる 経 済 情 勢 の 5

国 家 間 で 同 一 の 通 貨 を 使 う 歪 みはいまだに 解 消 されていません また ギリシャの 財 政 再 建 についても 改 革 に 進 展 は 見 られるものの 今 年 7 月 に 期 限 が 到 来 する 金 融 支 援 への 対 応 はいまだ 協 議 中 であることから 今 後 も 注 目 していく 必 要 があると 考 えられます (2)シリア 難 民 問 題 EU を 取 り 巻 くもう 一 つの 大 きな 懸 念 事 項 が 近 年 大 きくクローズアップされてい る 難 民 問 題 です 2010 年 にチュニジアから 始 まった アラブの 春 と 呼 ばれる 民 主 化 運 動 は 多 くの 独 裁 政 権 を 倒 したものの 不 安 定 な 中 東 情 勢 を 生 み 出 しました アサド 家 による 支 配 が 40 年 以 上 続 いていたシリアも 例 外 ではなく 政 府 派 反 政 府 派 の 戦 闘 が 日 を 追 って 激 しくなる 中 2013 年 頃 より イスラム 国 (IS) を 名 乗 るイスラム 過 激 派 組 織 が 台 頭 しました この 新 たな 勢 力 が 加 わった 三 つ 巴 の 争 いに より 国 土 は 荒 廃 し 戦 火 から 逃 れるために 約 400 万 人 もの 人 々が 難 民 となり その 一 部 が EU に 押 し 寄 せました EU における 難 民 受 け 入 れのためのルールとして 1990 年 に 採 択 された ダブリン 規 則 があります ダブリン 規 則 では 難 民 申 請 者 のたらい 回 しを 防 ぐため 申 請 者 が 最 初 に 滞 在 した EU 加 盟 国 が 責 任 を 持 って 受 け 入 れに 当 たるものとし 複 数 の EU 加 盟 国 を 移 動 した 難 民 申 請 者 については 最 初 に 滞 在 した 国 へ 送 還 することがで きるというものです 難 民 の 受 け 入 れに 消 極 的 であった EU 加 盟 国 は この 規 則 を 逆 手 に 取 り EU 域 外 と 国 境 を 面 するイタリア ギリシャ ブルガリア ルーマニアの 4 カ 国 に 難 民 受 け 入 れの 責 任 を 押 し 付 けました これらの 国 々は 財 政 的 な 余 力 も 少 なく 受 け 入 れら れた 難 民 たちは 十 分 な 衣 食 住 を 得 られませんでした 潮 目 が 変 わったのは 2015 年 8 月 にドイツのメルケル 首 相 がシリアからの 難 民 に 限 り ダブリン 規 則 を 適 用 しないと 宣 言 した 時 でした この 年 ドイツは 数 十 万 人 単 位 での 難 民 の 受 け 入 れを 表 明 し この 問 題 を EU 全 体 で 負 担 を 分 かち 合 うことで 解 決 するべきだと 主 張 しました また 2015 年 9 月 に ギリシャへ 向 かう 難 民 船 が 沈 没 し トルコの 浜 辺 にシリア 難 民 の 子 供 の 遺 体 が 打 ち 上 げられたというニュースが 報 道 されると 世 論 は 難 民 受 け 入 れ 支 持 に 傾 きました しかし 移 民 受 け 入 れ 支 持 の 気 勢 は 長 くは 続 かず ドイツの 難 民 受 け 入 れが 予 想 を 遥 かに 上 回 る 100 万 人 規 模 となったこと 受 け 入 れた 難 民 による 犯 罪 が 発 生 した こと 等 により メルケル 首 相 の 難 民 政 策 への 批 判 が 噴 出 し 政 府 は 政 策 の 見 直 しへ と 追 い 込 まれました 現 在 も EU 域 外 と 国 境 を 面 する 4 カ 国 の 負 担 を 軽 減 するため ダブリン 規 則 の 見 直 しについての 議 論 が 交 わされるほか EU に 隣 接 するトルコと 協 力 体 制 を 確 立 する 等 難 民 問 題 解 決 に 向 けた 努 力 が 続 けられています しかし シリア 情 勢 の 展 望 は 明 る 6

くなく EU 市 民 内 にくすぶる 難 民 排 斥 の 声 も 鳴 り 止 んでいないため 抜 本 的 な 解 決 には 至 っておらず EU が 抱 える 長 期 的 な 問 題 として 尾 を 引 くことが 予 想 されます 5. 英 国 の EU 離 脱 問 題 1973 年 に EC に 加 盟 し 現 在 に 至 るまで EU の 有 力 加 盟 国 であり 続 けた 英 国 ですが 現 在 は EU を 離 脱 するか 否 かの 瀬 戸 際 に 立 っており その 行 く 末 に 世 界 中 から 注 目 が 集 まっています ではなぜ 英 国 は EU に 不 満 を 持 ち Brexit という 考 えを 持 つに 至 ったのでしょうか 英 国 民 が EU に 対 して 持 つ 不 満 の 代 表 的 なものとして まず 移 民 の 流 入 が 挙 げられ ます 2004 年 に 東 欧 10 カ 国 が EU に 加 盟 したことを 契 機 に 英 国 には 東 欧 から 大 量 の 移 民 が 流 入 しました 英 国 は 欧 州 の 中 でも 無 料 の 医 療 保 険 制 度 に 代 表 される 高 福 祉 国 家 であり 欧 州 経 済 の 中 心 地 でもあることから 経 済 的 に 貧 しい 東 欧 諸 国 か ら 手 厚 い 社 会 保 障 と 雇 用 を 求 め 移 民 が 殺 到 しました その 結 果 移 民 による 安 価 な 労 働 力 が 供 給 されたことにより 英 国 民 の 失 業 率 は 上 昇 し 賃 金 は 低 下 しました 移 民 のための 社 会 保 障 費 も 増 加 し 英 国 の 財 政 収 支 は 悪 化 の 一 途 を 辿 りました また シリアの 難 民 問 題 において EU より 一 方 的 に 難 民 受 け 入 れ 数 の 割 り 当 てを 提 示 されていることも EU への 不 満 非 英 国 民 への 排 斥 意 識 を 高 めています 英 国 は EU 第 4 位 の 予 算 負 担 国 ですが 予 算 は 負 担 させられるものの EU によっ て 作 られた 指 令 規 則 は 英 国 を 圧 迫 するものばかりであり 主 権 を 侵 害 されている といった 声 も 聞 かれます 英 国 は 19 世 紀 に 栄 光 ある 孤 立 として 孤 立 外 交 をつら ぬいたほか 統 合 通 貨 であるユーロにも 金 融 政 策 の 自 主 権 が 損 なわれるとして 参 加 を 見 送 る 等 自 主 独 立 の 国 家 としての 意 識 が 強 く EU の 中 央 集 権 的 な 政 策 の 進 め 方 に 反 発 が 集 まっています 7

これらの 不 満 を 抱 えた 英 国 民 は 2011 年 9 月 に EU 離 脱 の 是 非 を 問 う 国 民 投 票 の 実 施 を 求 め 10 万 人 もの 署 名 を 集 めた 嘆 願 書 を 首 相 官 邸 に 提 出 しました その 後 様 々な 議 論 を 経 た 2016 年 2 月 キャメロン 首 相 は 同 年 6 月 23 日 に 国 民 投 票 の 実 施 を 発 表 しました Brexit が 現 実 のものとなった 場 合 移 民 の 流 入 を 制 限 することが 可 能 になります が その 代 わりに 英 国 は 大 きな 経 済 的 損 失 を 被 ることが 見 込 まれます 英 国 財 務 省 の 発 表 によれば 英 国 が EU を 離 脱 し EU の 単 一 市 場 に 有 利 な 条 件 でアクセスでき なくなった 際 の 損 失 は 1 世 帯 あたり 年 間 4,300 ポンド( 約 67 万 円 )にも 上 るとの ことであり 欧 州 の 経 済 大 国 金 融 の 中 心 地 としての 地 位 は 損 なわれるとの 分 析 結 果 が 出 ています 現 在 キャメロン 首 相 を 中 心 とした 残 留 派 は 前 述 のような 経 済 への 悪 影 響 をアピ ールすることで 国 民 への EU 残 留 支 持 を 呼 びかけており 一 方 ボリス ジョンソン 前 ロンドン 市 長 等 の 離 脱 派 は EU への 多 大 な 予 算 拠 出 や EU が 制 定 した 法 律 の 欠 点 を 指 摘 し 主 権 を 取 り 戻 すべきだと 主 張 しています 写 真 1. 英 国 政 府 より 各 家 庭 に 郵 送 された EU 残 留 を 訴 えるレター 写 真 2.EU 離 脱 賛 成 派 のキャンペーン 事 務 所 Brexit についての 国 民 投 票 は 実 は 今 回 が 初 めてではありません EC 加 入 後 の 1975 年 サービス 業 工 業 が 中 心 産 業 の 英 国 は EC による 農 業 政 策 重 視 の 予 算 案 に 反 発 し EC 離 脱 の 是 非 を 問 う 国 民 投 票 を 実 施 しました この 時 は EC が 東 欧 諸 国 ま で 拡 大 しておらず 移 民 問 題 が 生 じていなかったこと 事 前 に 予 算 案 の 削 減 交 渉 に 成 功 したこと 等 もあり 大 差 で 残 留 派 が 勝 利 しました このことから 英 国 民 は 欧 8

州 単 一 市 場 といった 経 済 的 な 合 理 性 のある 統 合 には 賛 成 を 示 すものの 移 民 による 経 済 的 なデメリットや EU による 画 一 的 な 政 策 不 公 平 な 予 算 拠 出 といった 自 主 権 を 脅 かされる 事 態 には 強 い 抵 抗 感 を 抱 いていることが 分 かります 英 国 は 産 業 革 命 後 の 世 界 の 工 場 として また 幾 多 の 海 を 制 覇 した 大 英 帝 国 として 世 界 の 中 心 であった 時 から 多 種 多 様 な 人 種 が 集 まる 多 様 性 が 認 めら れた 国 でした この 様 に 移 民 を 受 け 入 れやすい 下 地 のある 英 国 ですら 移 民 排 除 に 傾 かせてしまう EU の 構 造 的 な 歪 み 画 一 的 な 超 国 家 主 義 (スープラナショナリズム) は 第 二 第 三 の EU 離 脱 国 家 を 生 み 出 しかねず 変 革 を 遂 げる 必 要 に 迫 られています 投 票 まで 残 り 1 ヶ 月 となった Brexit この 問 題 は 英 国 だけでなく EU の 地 位 にも 大 きな 影 響 を 与 え ひいては 世 界 経 済 の 安 定 性 を 揺 るがしかねない 大 きな 問 題 であ ると 考 えられます 世 論 は 離 脱 残 留 どちらにも 傾 きかねない 程 拮 抗 しており そ の 行 く 末 を 注 意 深 く 見 守 っていく 必 要 がありそうです 6.おわりに 現 在 EU は 更 なる 連 合 規 模 の 拡 大 途 上 にあり 欧 州 債 務 危 機 の 経 験 から 各 国 政 府 の 財 政 状 況 や 民 間 金 融 機 関 に 対 する 関 与 を 強 め 新 たな 金 融 危 機 を 発 生 させない 機 構 作 りも 進 めている 等 国 家 連 合 としての 黎 明 期 を 終 え 成 熟 期 に 入 ったと 言 え ます 一 方 で ユーロに 関 わる 様 々な 問 題 や 中 東 や 英 国 との 難 民 移 民 問 題 といった 異 なる 人 種 異 なる 経 済 を 持 つ 国 家 がひとつに 纏 まることの 難 しさは 未 だ 解 消 の 糸 口 が 見 えておりません EU は 日 本 から 見 ると 遠 い 異 国 であり 直 接 の 関 係 性 は 薄 いように 思 えますが 経 済 的 な 結 びつきは 強 く ユーロ 圏 におけるマイナス 金 利 や 近 隣 諸 国 からの 移 民 難 民 受 け 入 れといった 日 本 が 現 在 そして 近 い 将 来 向 かい 合 わなければならないか もしれない 問 題 に 直 面 している 先 例 として 今 後 の 動 向 を 注 目 していく 必 要 がある でしょう 9

( 重 要 な 注 意 ) なお 本 資 料 は 作 成 時 点 で 入 手 可 能 な 資 料 及 び 一 般 に 信 頼 し 得 ると 思 われる 資 料 に 基 づいて 作 成 されたものですが 情 報 の 正 確 性 完 全 性 につきましては 弊 行 で 保 証 する 性 格 のものではありません 参 照 ウェブサイト 外 務 省 European Union 駐 日 欧 州 連 合 代 表 部 国 連 難 民 高 等 弁 務 官 事 務 所 英 国 政 府 Vote Leave http://www.mofa.go.jp/ http://www.europa.eu/ http://www.euinjapan.jp/ http://www.unhcr.org/ http://www.gov.uk/ http://voteleavetakecontrol.org/ 参 考 文 献 詳 説 世 界 史 研 究 山 川 社 出 版 刊 欧 州 中 央 銀 行 の 金 融 政 策 一 般 社 団 法 人 金 融 財 政 事 情 研 究 会 刊 10