会計制度委員会研究資料第4号「時価の算定に関する研究資料~非金融商品の時価算定~」の概要(会計情報2013年9月号)  



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損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

弁護士報酬規定(抜粋)

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科 売 上 原 価 売 上 総 利 益 損 益 計 算 書 ( 自 平 成 26 年 4 月 1 日 至 平 成 27 年 3 月 31 日 ) 目 売 上 高 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 営 業 利 益 営 業 外 収 益 受 取 保 険 金 受 取 支 援 金 補 助 金 収 入 保

定 性 的 情 報 財 務 諸 表 等 1. 連 結 経 営 成 績 に 関 する 定 性 的 情 報 当 第 3 四 半 期 連 結 累 計 期 間 の 業 績 は 売 上 高 につきましては 前 年 同 四 半 期 累 計 期 間 比 15.1% 減 少 の 454 億 27 百 万 円 となり

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4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

(1) 貸 借 対 照 表 ( 平 成 26 年 11 月 30 日 現 在 ) ( 単 位 : 千 円 ) 資 産 の 部 負 債 の 部 科 目 金 額 科 目 金 額 流 動 資 産 4,623,985 流 動 負 債 3,859,994 現 金 及 び 預 金 31,763 支 払 手 形

平成22年度

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損 益 計 算 書 ( 自 平 成 25 年 4 月 1 日 至 平 成 26 年 3 月 31 日 ) ( 単 位 : 百 万 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 75,917 取 引 参 加 料 金 39,032 上 場 関 係 収 入 11,772 情 報 関 係 収 入 13,352 そ

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は し が き

4 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 若 しくはその 委 任 を 受 けた 者 又 は 監 査 委 員 の 監 査 に 応 じなければ ならない ( 状 況 報 告 ) 第 7 条 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 が 必 要 と 認 めるときは 交 付 金 事 業 の 遂 行 の

. 負 担 調 整 措 置 8 (1) 宅 地 等 調 整 固 定 資 産 税 額 宅 地 に 係 る 固 定 資 産 税 額 は 当 該 年 度 分 の 固 定 資 産 税 額 が 前 年 度 課 税 標 準 額 又 は 比 準 課 税 標 準 額 に 当 該 年 度 分 の 価 格 ( 住 宅

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23信託の会計処理に関する実務上の取扱い

(2) 実 務 上 の 取 扱 い 減 価 償 却 の 方 法 は 会 計 方 針 にあたるため その 変 更 は 本 来 会 計 方 針 の 変 更 として 遡 及 適 用 の 対 象 と なります しかしながら 減 価 償 却 方 法 の 変 更 については 会 計 方 針 の 変 更 を 会

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 新 規 社 ( 社 名 ) 除 外 社 ( 社 名 ) (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の

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土 購 入 土 借 用 土 所 有 権 移 転 登 記 確 約 書 農 転 用 許 可 書 ( 写 ) 農 転 用 届 出 受 理 書 ( 写 ) 土 不 動 産 価 格 評 価 書 土 見 積 書 ( 写 ) 又 は 売 買 確 約 書 ( 写 ) 土 売 主 印 鑑 登 録 証 明 書 売 主

第4回税制調査会 総4-1

第 40 回 中 央 近 代 化 基 金 補 完 融 資 推 薦 申 込 み 公 募 要 綱 1 公 募 推 薦 総 枠 30 億 円 一 般 物 流 効 率 化 促 進 中 小 企 業 高 度 化 資 金 貸 付 対 象 事 業 の 合 計 枠 2 公 募 期 間 平 成 28 年 6 月 20

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入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親

リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

1. 前 払 式 支 払 手 段 サーバ 型 の 前 払 式 支 払 手 段 に 関 する 利 用 者 保 護 等 発 行 者 があらかじめ 利 用 者 から 資 金 を 受 け 取 り 財 サービスを 受 ける 際 の 支 払 手 段 として 前 払 式 支 払 手 段 が 発 行 される 場 合

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平 成 24 年 4 月 1 日 から 平 成 25 年 3 月 31 日 まで 公 益 目 的 事 業 科 目 公 1 公 2 公 3 公 4 法 人 会 計 合 計 共 通 小 計 苦 情 相 談 解 決 研 修 情 報 提 供 保 証 宅 建 取 引 健 全 育 成 Ⅰ. 一 般 正 味 財



第一部【証券情報】

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

(別紙3)保険会社向けの総合的な監督指針の一部を改正する(案)

別添資料

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<重要な会計方針及び注記>

連 結 損 益 計 算 書 売 上 高 及 びその 他 の 営 業 収 入 営 業 費 用 売 上 原 価 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 研 究 開 発 費 営 業 費 用 合 計 営 業 利 益 営 業 外 収 益 ( 費 用 ) 受 取 利 息 支 払 利 息 営 業 外 収 益 (

連 結 注 記 表 ( 連 結 計 算 書 類 作 成 のための 基 本 となる 重 要 な 事 項 ) 1. 連 結 の 範 囲 に 関 する 事 項 (1) 連 結 子 会 社 の 数 3 社 連 結 子 会 社 の 名 称 株 式 会 社 ミック 株 式 会 社 モリワン 株 式 会 社 テッ

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平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

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連 結 注 記 表 1. 連 結 計 算 書 類 の 作 成 のための 基 本 となる 重 要 な 事 項 に 関 する 注 記 等 (1) 連 結 の 範 囲 に 関 する 事 項 1 連 結 子 会 社 の 数 及 び 名 称 連 結 子 会 社 の 数 0 社 連 結 子 会 社 の 名 称

平成29年2月期 第2四半期決算短信

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平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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連 結 株 主 資 本 等 変 動 計 算 書 (2015 年 6 月 1 日 から2016 年 5 月 31 日 まで) 株 主 資 本 ( 単 位 : 千 円 ) 資 本 金 資 本 剰 余 金 利 益 剰 余 金 自 己 株 式 株 主 資 本 合 計 当 期 首 残 高 2,049,318

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c. 投 資 口 の 譲 渡 に 係 る 税 務 個 人 投 資 主 が 投 資 口 を 譲 渡 した 際 の 譲 渡 益 は 株 式 等 に 係 る 譲 渡 所 得 等 として 原 則 20%( 所 得 税 15% 住 民 税 5%)の 税 率 による 申 告 分 離 課 税 の 対 象 となりま

若 しくは 利 益 の 配 当 又 はいわゆる 中 間 配 当 ( 資 本 剰 余 金 の 額 の 減 少 に 伴 うものを 除 きます 以 下 同 じです )を した 場 合 には その 積 立 金 の 取 崩 額 を 減 2 に 記 載 す るとともに 繰 越 損 益 金 26 の 増 3 の

積 み 立 てた 剰 余 金 の 配 当 に 係 る 利 益 準 備 金 の 額 は 利 益 準 備 金 1 の 増 3 に 記 載 します ⑸ 平 成 22 年 10 月 1 日 以 後 に 適 格 合 併 に 該 当 しない 合 併 により 完 全 支 配 関 係 がある 被 合 併 法 人 か

40 総 論 41 法 人 課 税 01 租 税 法 概 論 ( 4001 ) 02 税 制 の 動 向 ( 4002 ) 91 事 例 研 究 ( 4091 ) 99 その 他 ( 4099 ) 01 法 人 税 ( 4101 ) 3. 税 務 官 庁 の 組 織 4. 不 服 申 立 て 税 務

平成24年度 業務概況書

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(ⅴ) 平 成 28 年 4 月 1 日 から 平 成 35 年 12 月 31 日 までの 期 間 未 成 年 者 に 係 る 少 額 上 場 株 式 等 の 非 課 税 口 座 制 度 に 基 づき 証 券 会 社 等 の 金 融 商 品 取 引 業 者 等 に 開 設 した 未 成 年 者 口

(2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 該 当 事 項 はありません (3) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 作 成 に 係 る 会 計 処 理 の 原 則 手 続 表 示 方 法 等 の 変 更 当

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

しかし 主 に 欧 州 の 一 部 の 回 答 者 は 受 託 責 任 について 資 源 配 分 の 意 思 決 定 の 有 用 性 とは 独 立 の 財 務 報 告 の 目 的 とすべきであると 回 答 した 本 ED に 対 する ASBJ のコメント レターにおける 意 見 経 営 者 の 受

内 において 管 理 されている 上 場 株 式 等 のうち 非 課 税 管 理 勘 定 に 係 るもの( 新 規 投 資 額 で 毎 年 80 万 円 を 上 限 とします )に 係 る 配 当 等 で 未 成 年 者 口 座 に 非 課 税 管 理 勘 定 を 設 けた 日 から 同 日 の 属

目 次 高 山 市 連 結 財 務 諸 表 について 1 連 結 貸 借 対 照 表 2 連 結 行 政 コスト 計 算 書 4 連 結 純 資 産 変 動 計 算 書 6 連 結 資 金 収 支 計 算 書 7

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第1章 簿記の一巡

2. 会 計 規 程 の 業 務 (1) 規 程 と 実 際 の 業 務 の 調 査 規 程 や 運 用 方 針 に 規 定 されている 業 務 ( 帳 票 )が 実 際 に 行 われているか( 作 成 されている か)どうかについて 調 べてみた 以 下 の 表 は 規 程 の 条 項 とそこに

第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 末 の 運 用 資 産 額 は 2,976 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +1.79%となりました なお 実 現 収 益 率 は +0.67%です 第 3 四 半 期

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

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預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

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一般競争入札について

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会 計 監 査 会 計 制 度 委 員 会 研 究 資 料 第 4 号 時 価 の 算 定 に 関 す る 研 究 資 料 非 金 融 商 品 の 時 価 算 定 の 概 要 公 認 会 計 士 こ 小 ぼり 堀 かずひで 一 英 はじめに 日 本 公 認 会 計 士 協 会 (JICPA)は 平 成 25 年 7 月 9 日 付 けで 会 計 制 度 委 員 会 研 究 資 料 第 4 号 時 価 の 算 定 に 関 する 研 究 資 料 非 金 融 商 品 の 時 価 算 定 ( 以 下 研 究 資 料 という )を 公 表 した *1 これは 一 般 に 時 価 算 定 に 際 しては 状 況 に 応 じた 十 分 なデータが 入 手 できる 適 切 な 算 定 方 法 を 併 用 又 は 選 択 する 必 要 があるものの たとえば 固 定 資 産 や 棚 卸 資 産 を 正 味 売 却 価 額 で 評 価 する 場 合 におい て その 市 場 価 格 が 存 在 するかどうか 市 場 に 参 加 する 者 は 独 立 した 第 三 者 かどうか 市 場 価 格 がない 場 合 の 合 理 的 な 複 数 のアプローチのうち 最 適 なアプ ローチはどれか 等 実 務 上 時 価 算 定 が 容 易 ではな い 又 は 判 断 に 迷 う 局 面 が 多 いものと 考 えられる ことから JICPA の 会 員 が 非 金 融 商 品 の 時 価 の 算 定 方 法 を 研 究 する 上 での 一 助 となるべく JICPA におけるこれまでの 検 討 経 過 を 研 究 資 料 として 公 表 したものである 本 稿 では 研 究 資 料 の 概 要 について 解 説 を 行 うこ ととする なお 文 中 意 見 にわたる 部 分 は 筆 者 の 私 見 であることをあらかじめお 断 りしておく Ⅰ 研 究 資 料 の 位 置 付 け 研 究 資 料 では 様 々な 会 計 基 準 等 で 測 定 や 開 示 が 求 められている 時 価 の 取 扱 いについてその 内 容 を 振 り 返 るとともに 日 本 の 会 計 基 準 でどのように 時 価 が 取 り 扱 われているかを 概 観 し 種 々の 時 価 の 算 定 方 法 の 理 解 と 論 点 等 の 整 理 が 行 われている 日 本 公 認 会 計 士 協 会 が 公 表 する 委 員 会 報 告 等 の 公 表 物 の 体 系 は 図 表 1のとおりであるが このうち 1から3は 日 本 公 認 会 計 士 協 会 会 則 第 41 条 に 定 め る 会 員 が 遵 守 すべき 基 準 等 に 該 当 するものとされて いる 研 究 資 料 は 図 表 1における5に 相 当 するも のであり 非 金 融 資 産 ( 主 に 有 形 固 定 資 産 と 無 形 資 産 )の 測 定 開 示 に 関 して 実 務 上 どのように 時 価 が 算 定 されているのかについてその 計 算 過 程 を 知 ることは 監 査 業 務 に 当 たり 重 要 な 知 見 であることか ら 可 能 な 範 囲 で 設 例 を 設 け その 考 え 方 の 過 程 を 示 したものである したがって この 研 究 資 料 は 実 務 上 の 指 針 として 位 置 付 けられるものではなく また 実 務 を 拘 束 するものでもない 点 に 留 意 が 必 要 である 図 表 1 日 本 公 認 会 計 士 協 会 が 公 表 する 公 表 物 の 体 系 名 称 1 報 告 書 2 実 務 指 針 3 通 達 4 研 究 報 告 5 研 究 資 料 内 容 業 種 業 界 分 野 を 問 わず 基 本 となるもので かつ 監 査 又 は 会 計 に 関 する 基 準 の 設 定 主 体 からの 委 任 を 受 けたもの ア. 業 種 業 界 分 野 を 問 わず 基 本 となるもの( 報 告 書 としたものを 除 く ) イ. 特 定 の 業 種 業 界 分 野 を 対 象 とするもの 基 準 又 は 報 告 書 若 しくは 実 務 指 針 の 範 囲 内 での 適 用 方 法 取 扱 い 等 について 注 意 喚 起 等 するためのもの 委 員 会 における 研 究 の 成 果 委 員 会 において 答 申 等 として 結 論 を 得 るには 至 らなかった 場 合 等 における 当 該 委 員 会 の 審 議 過 程 の 状 況 結 論 を 得 るには 至 らなかった 理 由 等 を 整 理 したもの *1 この 研 究 資 料 の 原 文 については JICPA の Web サイト(http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/main/post_1701.html)を 参 照 のこと テクニカルセンター 会 計 情 報 Vol. 445 / 2013. 9 2013. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC 7

Ⅱ 非 金 融 資 産 の 時 価 算 定 等 に 関 する 実 務 上 の 論 点 1. 有 形 固 定 資 産 不 動 産 (1) 時 価 算 定 の 考 え 方 1 価 格 不 動 産 鑑 定 評 価 基 準 において 不 動 産 の 鑑 定 評 価 によって 求 める 価 格 には 正 常 価 格 限 定 価 格 特 定 価 格 特 殊 価 格 があるが 会 計 上 の 時 価 に 相 当 するものは 基 本 的 には 正 常 価 格 である ここに 正 常 価 格 とは 市 場 性 を 有 する 不 動 産 について 現 実 の 社 会 経 済 情 勢 の 下 で 合 理 的 と 考 えられる 条 件 を 満 たす 市 場 で 形 成 されるであろう 市 場 価 値 を 表 示 す る 適 正 な 価 格 をいう( 不 動 産 鑑 定 評 価 基 準 総 論 第 5 章 第 3 節 Ⅰ1) 2 鑑 定 評 価 の 方 法 一 般 的 に 不 動 産 の 価 格 を 求 める 鑑 定 評 価 の 手 法 は 原 価 法 取 引 事 例 比 較 法 及 び 収 益 還 元 法 の3つ に 大 別 される なお それぞれの 鑑 定 評 価 の 手 法 により 求 められ た 価 格 を 試 算 価 格 といい 原 価 法 では 積 算 価 格 取 引 事 例 比 較 法 では 比 準 価 格 収 益 還 元 法 では 収 益 価 格 がそれぞれの 試 算 価 格 である 3 留 意 事 項 不 動 産 の 鑑 定 評 価 は 依 頼 目 的 によって 鑑 定 評 価 の 条 件 の 付 され 方 が 異 なる 場 合 があるため 不 動 産 鑑 定 評 価 書 を 利 用 する 場 合 には 依 頼 目 的 及 び 付 さ れている 条 件 に 留 意 が 必 要 である 依 頼 目 的 には 売 買 目 的 担 保 評 価 目 的 訴 訟 に 使 用 する 目 的 など があり また 鑑 定 評 価 を 行 う 際 に 付 される 条 件 に は 土 壌 汚 染 やアスベスト 等 の 有 害 物 質 の 存 在 の 可 能 性 を 考 慮 外 とする 条 件 や 土 地 及 び 建 物 で 構 成 さ れる 不 動 産 について 建 物 が 存 在 しない 独 立 のもの ( 更 地 )として 評 価 対 象 とする 条 件 などがある また 鑑 定 評 価 にあたっては 直 近 に 行 われた 原 則 的 時 価 算 定 等 に 適 切 な 調 整 を 行 い 時 価 算 定 す ることがある(いわゆる 時 点 修 正 ) もっとも 時 点 修 正 を 行 う 際 には 直 近 の 不 動 産 鑑 定 評 価 基 準 に 則 った 鑑 定 評 価 又 はそれ 以 外 の 原 則 的 時 価 算 定 を 行 った 時 から 長 期 間 経 過 していないことに 留 意 する 必 要 があるが その 長 期 間 については12か 月 以 上 36か 月 未 満 が 一 つの 目 安 になるとされている *2 (2) 重 要 性 の 乏 しい 不 動 産 等 会 計 基 準 において 重 要 性 の 乏 しい 不 動 産 等 につ いては 一 定 の 評 価 額 や 適 切 に 市 場 価 格 を 反 映 して いると 考 えられる 指 標 に 基 づく 価 額 を 合 理 的 に 算 定 された 価 額 とみなすことができるとされている ここで 一 定 の 評 価 額 には 不 動 産 鑑 定 評 価 基 準 における 原 価 法 取 引 事 例 比 較 法 収 益 還 元 法 の3 手 法 を 併 用 しない 価 格 等 調 査 ( 鑑 定 評 価 手 法 を 選 択 的 に 適 用 した 簡 便 的 な 方 法 )などがある た だし これらの 成 果 報 告 書 *3 を 利 用 する 場 合 には 評 価 条 件 や 限 定 された 手 続 の 内 容 に 留 意 する 必 要 が ある また 一 定 の 評 価 額 や 適 切 に 市 場 価 格 を 反 映 して いると 考 えられる 指 標 に 基 づく 価 額 には 容 易 に 入 手 できる 評 価 額 や 指 標 を 合 理 的 に 調 整 したものも 含 まれる したがって 一 定 の 条 件 の 下 で 路 線 価 に よる 相 続 税 評 価 額 を 適 切 に 調 整 して 対 象 不 動 産 の 評 価 額 とするといった 実 務 も 許 容 される 場 合 もある と 考 えられる (3) 時 価 算 定 のデータの 取 り 方 1 容 易 に 入 手 できると 考 えられる 評 価 額 (2)のとおり 一 定 の 評 価 額 や 適 切 に 市 場 価 格 を 反 映 していると 考 えられる 指 標 に 基 づく 価 額 を 合 理 的 に 算 定 された 価 額 とみなすことができるが そ れには 実 勢 価 格 や 査 定 価 格 のように 容 易 に 入 手 できる 評 価 額 や 指 標 を 合 理 的 に 調 整 したもの も 含 まれる 実 勢 価 格 とは 市 場 で 実 際 に 取 引 されている 価 格 で あり 国 土 交 通 省 のウェブサイトにおいて 不 動 産 の 取 引 価 格 情 報 を 閲 覧 することができる *4 また 査 定 価 格 とは 不 動 産 売 買 等 の 取 引 を 目 的 として 査 定 した 不 動 産 仲 介 業 者 が 提 供 する 価 格 であり 不 動 産 所 有 者 等 を 介 して 入 手 できる 場 合 がある 2 容 易 に 入 手 できると 考 えられる 土 地 の 価 格 指 標 容 易 に 入 手 できると 考 えられる 土 地 の 価 格 指 標 と しては 公 示 価 格 都 道 府 県 基 準 地 価 格 路 線 価 固 定 資 産 税 評 価 額 が 考 えられるが それぞれの 目 的 及 び 入 手 場 所 は 図 表 2のとおりである *2 財 務 諸 表 のための 価 格 調 査 に 関 する 実 務 指 針 ( 平 成 22 年 6 月 社 団 法 人 日 本 不 動 産 鑑 定 協 会 )Ⅰ9 1 *3 この 成 果 報 告 書 の 名 称 には 調 査 報 告 書 価 格 調 査 書 意 見 書 などが 用 いられる *4 土 地 総 合 情 報 システム (http://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/mainservlet) 8 テクニカルセンター 会 計 情 報 Vol. 445 / 2013. 9 2013. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC

図 表 2 土 地 の 価 格 指 標 の 目 的 と 入 手 場 所 価 格 指 標 目 的 入 手 場 所 公 示 価 格 都 道 府 県 基 準 地 価 格 一 般 的 な 土 地 取 引 の 指 標 や 公 共 事 業 用 地 の 取 得 価 格 算 定 の 規 準 となることにより 適 正 な 地 価 の 形 成 に 寄 与 すること 土 地 取 引 規 制 に 際 しての 価 格 審 査 や 地 方 公 共 団 体 等 による 買 収 価 格 の 算 定 の 規 準 となることにより 適 正 な 地 価 の 形 成 を 図 ること 国 土 交 通 省 ウェブサイト 国 土 交 通 省 地 価 公 示 都 道 府 県 地 価 調 査 *5 国 土 交 通 省 ウェブサイト 国 土 交 通 省 地 価 公 示 都 道 府 県 地 価 調 査 *5 路 線 価 相 続 税 及 び 贈 与 税 課 税 のため 国 税 庁 ウェブサイト 財 産 評 価 基 準 書 路 線 価 図 評 価 倍 率 表 *6 固 定 資 産 税 評 価 額 固 定 資 産 税 課 税 のため 原 則 として 納 税 者 しか 閲 覧 できないが 一 般 財 団 法 人 資 産 評 価 システム 研 究 センターのウェブサイト 全 国 地 価 マッ プ で 固 定 資 産 税 路 線 価 等 を 確 認 することができる *7 3 時 価 算 定 に 係 るデータ 原 価 法 で 使 用 することになる 原 価 については 建 設 請 負 契 約 書 から 把 握 できる したがって 当 該 不 動 産 の 取 得 から 長 期 間 が 経 過 していない 場 合 にはこれ を 利 用 することができる ただし 再 調 達 原 価 につ いては 建 設 会 社 等 の 協 力 がなければ 一 般 的 には 原 価 に 関 するデータを 入 手 することは 困 難 であると 考 えられる 取 引 事 例 比 較 法 を 適 用 する 場 合 における 不 動 産 の 取 引 事 例 については 不 動 産 取 引 価 格 情 報 制 度 を 基 にして 四 半 期 毎 に 国 土 交 通 省 ウェブサイト 土 地 総 合 情 報 システム 等 で 公 表 する 資 料 が 参 考 になる ただし 売 り 急 ぎ 等 の 個 別 事 情 や 方 位 形 状 等 の 個 別 的 要 因 の 記 載 はないため 使 用 にあたってはその 点 留 意 が 必 要 である また 投 資 不 動 産 であれば 上 場 不 動 産 投 資 信 託 の 開 示 情 報 における 取 得 売 却 情 報 も 参 考 となる 収 益 還 元 法 に 使 用 される 賃 借 料 収 入 や 空 室 率 等 の データは 賃 貸 仲 介 業 者 やデータサービス 業 者 等 が 情 報 として 提 供 している( 詳 細 は(4) 参 照 ) 格 *8 を その 発 生 時 期 に 応 じて 現 在 価 値 に 割 り 引 き それぞれを 合 計 する 方 法 をいう 2 留 意 事 項 収 益 還 元 法 では 純 収 益 及 び 還 元 利 回 りと 割 引 率 が 特 に 価 格 算 定 に 大 きな 影 響 を 及 ぼすこと になる ア. 純 収 益 建 物 その 他 償 却 性 資 産 を 含 む 不 動 産 の 純 収 益 の 算 定 においては 基 本 的 に 減 価 償 却 費 を 控 除 しない 償 却 前 の 純 収 益 を 用 いるべきとされている また 純 収 益 の 算 定 に 当 たっては 各 収 益 及 び 費 用 について 過 去 の 推 移 及 び 将 来 の 動 向 を 慎 重 に 分 析 する 必 要 が ある なお 賃 貸 不 動 産 についての DCF 法 の 適 用 に 当 たっては 特 に 賃 貸 借 契 約 の 内 容 並 びに 賃 料 及 び 貸 室 の 稼 働 率 ( 一 般 的 に 空 室 率 という 指 標 で 表 現 される 場 合 が 多 い )の 毎 期 の 変 動 に 留 意 しな ければならない なお 研 究 資 料 では 証 券 化 対 象 不 動 産 を 鑑 定 評 価 する 際 にDCF 法 計 算 において 使 用 する 収 益 費 用 項 目 の 定 義 が 要 約 されている (4) 収 益 還 元 法 の 具 体 的 内 容 1 直 接 還 元 法 とDCF 法 正 常 価 格 を 求 めるに 当 たっては 原 則 として 原 価 法 取 引 事 例 比 較 法 収 益 還 元 法 の3 手 法 の 適 用 に より 求 められた 価 格 を 併 用 又 は 斟 酌 することとさ れているが 収 益 還 元 法 ( 直 接 還 元 法 及 び DCF 法 ) は 論 点 が 多 いため 研 究 資 料 でも 詳 細 に 記 述 されて いる 収 益 還 元 法 には 直 接 還 元 法 と DCF 法 がある 直 接 還 元 法 とは 一 期 間 の 純 収 益 を 還 元 利 回 りに よって 還 元 する 方 法 をいう また DCF 法 とは 連 続 する 複 数 の 期 間 に 発 生 する 純 収 益 及 び 復 帰 価 イ. 還 元 利 回 りと 割 引 率 還 元 利 回 りは 直 接 還 元 法 の 収 益 価 格 及 びDCF 法 の 復 帰 価 格 の 算 定 において 一 期 間 の 純 収 益 から 対 象 不 動 産 の 価 格 を 直 接 求 める 際 に 使 用 される 率 で あり 将 来 の 収 益 に 影 響 を 与 える 要 因 の 変 動 予 測 と 予 測 に 伴 う 不 確 実 性 を 含 むものである また 割 引 率 は DCF 法 において ある 将 来 時 点 の 収 益 を 現 在 時 点 の 価 値 に 割 り 戻 す 際 に 使 用 される 率 であり 還 元 利 回 りに 含 まれる 変 動 予 測 と 予 測 に 伴 う 不 確 実 性 のうち 収 益 見 通 しにおいて 考 慮 された 連 続 する 複 数 の 期 間 に 発 生 する 純 収 益 や 復 帰 価 格 の 変 動 予 測 に 係 るものを 除 くものである *5 http://www.land.mlit.go.jp/landprice/ariaservlet?mod=1&typ=0 *6 http://www.rosenka.nta.go.jp/ *7 http://www.chikamap.jp/ *8 復 帰 価 格 とは 保 有 期 間 の 満 了 時 点 における 対 象 資 産 の 価 格 をいう テクニカルセンター 会 計 情 報 Vol. 445 / 2013. 9 2013. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC 9

すなわち 直 接 還 元 法 では 一 定 期 間 の 純 収 益 が 用 いられるため 純 収 益 の 変 動 は 還 元 利 回 りに 反 映 させている 一 方 DCF 法 は 純 収 益 の 変 動 を 毎 期 の 純 収 益 に 反 映 させているため 割 引 率 には 純 収 益 の 変 動 による 影 響 を 反 映 させないことになる 2. 有 形 固 定 資 産 動 産 (1) 時 価 算 定 の 考 え 方 機 械 装 置 車 両 工 具 器 具 備 品 等 の 動 産 の 時 価 に ついては 算 定 の 対 象 となる 動 産 について 観 察 可 能 な 市 場 価 格 が 存 在 するケースは 限 定 的 であるため 時 価 を 何 らかの 手 法 により 合 理 的 に 算 定 する 必 要 が ある コスト アプローチは 算 定 の 対 象 となった 動 産 について 基 準 日 時 点 において 同 等 の 動 産 を 新 規 に 取 得 する 場 合 に 要 するコスト( 再 取 得 コスト) 又 は 同 等 の 動 産 を 新 たに 製 作 する 場 合 に 要 するコス ト( 再 製 作 コスト)を 用 いて 時 価 を 算 定 する 考 え 方 である これらは 通 常 一 定 の 前 提 の 下 で 測 定 す ることが 可 能 であるため 動 産 の 時 価 の 算 定 に 係 る 現 行 実 務 においてはコスト アプローチを 採 用 する ケースが 最 も 多 いと 考 えられる これに 対 して マーケット アプローチは 市 場 での 直 近 の 取 得 価 額 を 時 価 とする 考 え 方 であるが 船 舶 航 空 機 を 除 く 中 古 の 動 産 について 活 発 な 市 場 が 存 在 するのは 自 動 車 や 一 部 の 機 械 装 置 等 ( 工 作 機 械 建 設 機 械 等 )のみであるため 採 用 できるケー スは 限 定 的 と 考 えられる また インカム アプ ローチは 算 定 の 対 象 となった 動 産 自 体 が 生 み 出 す キャッシュ フローから 時 価 を 見 積 もる 考 え 方 であ るが 通 常 それを 特 定 するのは 困 難 であるため 採 用 されるケースは 少 ないと 考 えられる (2)コスト アプローチによる 算 定 方 法 コスト アプローチによる 場 合 再 調 達 原 価 ( 又 は 複 製 原 価 )を 算 定 することになるが その 算 定 に 際 しては まず 算 定 の 時 点 において 対 象 資 産 と 同 種 のものを 新 品 で 取 得 した 場 合 の 再 取 得 コスト( 又 は 再 製 作 コスト)を 見 積 もり 次 に 算 定 対 象 の 資 産 の 物 理 的 機 能 的 経 済 的 な 減 価 率 を 加 味 するこ とになる この 減 価 率 は 物 理 的 な 要 素 機 能 的 な 要 素 経 済 的 な 要 素 などを 考 慮 する たとえば 経 過 年 数 に 応 じて その 間 の 技 術 革 新 や 新 しい 製 法 等 によって 処 理 速 度 や 容 量 増 加 などの 能 力 がアップした 機 械 装 置 が 開 発 され 買 収 した 当 該 固 定 資 産 の 価 値 が 相 対 的 に 低 くなったという 事 実 があれば より 減 価 率 が 高 くなることになる 3. 無 形 資 産 ( 仕 掛 研 究 開 発 を 除 く ) (1) 我 が 国 における 無 形 資 産 の 開 示 研 究 資 料 では 過 去 5 年 間 (2007 年 3 月 期 から 2012 年 3 月 期 )の 有 価 証 券 報 告 書 における 企 業 結 合 等 関 係 注 記 から 企 業 結 合 時 に 無 形 資 産 を 識 別 した 会 社 数 などを 集 計 している( 図 表 3) これに よれば 企 業 結 合 時 に 無 形 資 産 を 識 別 した 会 社 数 は 48 社 企 業 結 合 の 件 数 は57 件 識 別 された 無 形 資 産 の 件 数 は107 件 であり また 識 別 された 無 形 資 産 の 件 数 を 項 目 別 に 集 計 した 結 果 技 術 関 連 ( 特 許 権 ソフトウェア R&D 等 ) 顧 客 関 連 ( 顧 客 リ スト 顧 客 基 盤 等 ) マーケティング 関 連 ( 商 標 権 商 号 販 売 権 等 )が 多 くを 占 めていたとされている もっとも 我 が 国 においても 芸 術 関 連 や 契 約 関 連 の 無 形 資 産 が 識 別 されている 例 があることは 興 味 深 いと 思 われる 図 表 3 企 業 結 合 時 に 識 別 された 無 形 資 産 ( 出 典 ) 研 究 資 料 37ページ 10 テクニカルセンター 会 計 情 報 Vol. 445 / 2013. 9 2013. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC

(2) 時 価 算 定 の 考 え 方 コスト アプローチは 時 価 算 定 の 対 象 となった 無 形 資 産 を 算 定 日 時 点 において 再 調 達 したと 仮 定 し て 新 たに 発 生 するコスト( 再 調 達 原 価 / 複 製 原 価 ) に 着 目 して 算 定 する 手 法 であるが 無 形 資 産 につい て 再 調 達 原 価 / 複 製 原 価 を 測 定 するのは 困 難 なケー スもあり 実 務 上 はソフトウェアなど 限 定 的 なケー スで 利 用 される また マーケット アプローチも 無 形 資 産 について 活 発 な 市 場 が 存 在 するケースがま れであることから 採 用 できるケースは 限 定 的 であ る ただし 活 発 な 市 場 とはいえないが 実 際 に 売 買 されている 無 形 資 産 (たとえば 漁 業 権 や 生 産 割 当 医 薬 品 特 許 など)もあるため 可 能 な 限 り 直 近 の 売 買 事 例 やマーケットの 価 格 水 準 を 参 考 にすることも 考 えられる これらに 対 してインカム アプローチは 時 価 算 定 の 対 象 となった 無 形 資 産 自 体 が 生 み 出 すキャッ シュ フローを 特 定 し その 割 引 現 在 価 値 を 測 定 す るものであり 多 くの 無 形 資 産 は 通 常 この 手 法 を 用 いるのが 一 般 的 である 算 定 の 対 象 となった 無 形 資 産 自 体 が 生 み 出 すキャッシュ フローを 特 定 するた めに 超 過 収 益 法 利 益 分 割 法 利 益 差 分 法 等 の 手 法 が 採 用 される 場 合 が 多 いと 考 えられる ま た 商 標 権 や 特 許 権 などは 第 三 者 に 貸 与 する 際 の 類 似 のロイヤルティレートを 推 定 し ロイヤルティ 免 除 法 を 採 用 するケースが 多 い (3)インカム アプローチによる 算 定 方 法 1ロイヤリティ 免 除 法 ロイヤルティ 免 除 法 は 時 価 算 定 の 対 象 となった 無 形 資 産 の 所 有 者 が 当 該 資 産 の 使 用 を 第 三 者 より 許 可 されたものと 仮 定 した 場 合 に 所 有 者 が 第 三 者 に 対 して 支 払 うであろうロイヤルティが 免 除 された ものとしてロイヤルティコスト 削 減 効 果 の 割 引 現 在 価 値 により 時 価 を 算 定 する 手 法 である 2 利 益 差 分 法 利 益 差 分 法 は 算 定 対 象 の 無 形 資 産 がある 場 合 の 利 益 と 当 該 無 形 資 産 がない 場 合 の 利 益 を 比 較 し て 両 者 の 差 額 が 当 該 無 形 資 産 に 関 する 利 益 とみな して その 割 引 現 在 価 値 により 時 価 を 算 定 する 手 法 である 3 利 益 分 割 法 利 益 分 割 法 は 算 定 対 象 の 無 形 資 産 が 使 用 されて いる 事 業 全 体 の 利 益 のうち 当 該 無 形 資 産 が 貢 献 し ている 割 合 を 見 積 もることにより 当 該 無 形 資 産 に 関 する 利 益 とみなして その 割 引 現 在 価 値 により 算 定 する 手 法 である 4 超 過 収 益 法 超 過 収 益 法 は 算 定 対 象 の 無 形 資 産 が 使 用 されて いる 事 業 全 体 の 利 益 から 運 転 資 本 有 形 固 定 資 産 など 当 該 無 形 資 産 以 外 の 資 産 に 求 められる 期 待 収 益 を 控 除 した 残 余 利 益 を 算 定 し その 割 引 現 在 価 値 に より 算 定 する 手 法 である なお 超 過 収 益 法 は 算 定 対 象 の 無 形 資 産 以 外 の 資 産 の 時 価 が 特 定 されていることが 前 提 となってい るため 超 過 収 益 法 を 用 いて 複 数 の 資 産 を 計 算 する ことはできない 4. 無 形 資 産 仕 掛 研 究 開 発 (1) 時 価 算 定 の 考 え 方 企 業 結 合 時 における 研 究 開 発 の 途 中 段 階 の 成 果 が 識 別 可 能 である 場 合 我 が 国 における 会 計 基 準 の 下 では 識 別 可 能 資 産 として 取 得 原 価 を 配 分 するため に 当 該 研 究 開 発 の 途 中 段 階 の 成 果 について 時 価 算 定 を 行 うことになる 通 常 この 時 価 算 定 に 当 たって は 大 きくコスト アプローチ マーケット アプ ローチ インカム アプローチの3つのアプローチ が 検 討 されるが 研 究 開 発 活 動 の 途 中 段 階 の 成 果 の 時 価 算 定 に 当 たっては インカム アプローチを 採 用 するのが 一 般 的 である (2)インカム アプローチによる 算 定 方 法 仕 掛 研 究 開 発 の 時 価 算 定 においては インカム アプローチの 中 でも DCF 法 又 は 超 過 収 益 法 が 採 られることが 多 い *9 DCF 法 は その 研 究 開 発 プロジェクトの 成 否 等 に 対 応 して 複 数 のシナリオに 分 かれるため それぞ れの 将 来 のキャッシュ フローを 見 積 もり 経 験 的 に 得 られたそれらのシナリオごとの 可 能 性 で 加 重 平 均 し 現 在 価 値 に 割 り 引 いた 期 待 値 から 時 価 を 算 定 することとなる また 超 過 収 益 法 は 仕 掛 途 中 の 研 究 開 発 の 成 果 の 時 価 算 定 においても 多 く 用 いられている 対 象 と なる 研 究 開 発 の 成 果 を 含 んだ 事 業 から 生 み 出 される と 見 込 まれる 将 来 の 収 益 から 当 該 収 益 を 生 み 出 す ために 使 用 される 運 転 資 本 有 形 固 定 資 産 その 他 の 無 形 固 定 資 産 が 寄 与 する 利 益 等 (キャピタル チャージ)を 控 除 し 現 在 価 値 に 割 り 引 くこととなる (3)DCF 法 における 時 価 算 定 のポイント DCF 法 における 複 数 シナリオの 将 来 キャッシュ フロー 及 びそれぞれの 成 功 確 率 等 は 過 去 の 経 験 を 基 礎 として 見 積 もられる 性 格 のものである その 点 *9 技 術 に 関 連 した 無 形 資 産 の 時 価 算 定 では ロイヤルティ 免 除 法 によることも 考 えられる しかしながら 研 究 開 発 の 途 中 段 階 においては 当 該 技 術 が 将 来 ロイヤルティの 収 受 をもたらすか 否 かが 判 明 しないため 研 究 開 発 の 途 中 段 階 の 成 果 に 対 してロイヤルティ 免 除 法 を 適 用 す ることは 難 しい テクニカルセンター 会 計 情 報 Vol. 445 / 2013. 9 2013. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC 11

で 製 薬 業 界 など 多 くの 研 究 開 発 実 績 データのある 業 界 では 当 該 方 法 の 利 用 が 可 能 であると 考 えられ る 5. 企 業 結 合 に 関 連 する 論 点 (1) 取 得 日 の 決 定 企 業 結 合 時 における 取 得 原 価 の 配 分 に 当 たって は 取 得 日 となる 企 業 結 合 日 をいつにするかが 問 題 となる ここで 企 業 結 合 日 とは 被 取 得 企 業 若 しく は 取 得 した 事 業 に 対 する 支 配 が 取 得 企 業 に 移 転 した 日 又 は 結 合 当 事 企 業 の 事 業 のすべて 若 しくは 事 実 上 すべてが 統 合 された 日 をいい 会 社 法 における 組 織 再 編 の 効 力 が 発 生 する 日 と 同 じ 日 となる とさ れている( 企 業 結 合 及 び 事 業 分 離 等 適 用 指 針 第 31 項 ) 実 務 上 企 業 結 合 に 関 する 契 約 書 に 定 められ た 株 式 譲 渡 日 又 は 株 式 移 転 日 が 企 業 結 合 日 になるこ とが 多 いと 考 えられるが 取 得 日 の 決 定 に 当 たって は 当 該 企 業 結 合 に 関 連 する 事 実 や 契 約 内 容 を 十 分 に 検 討 する 必 要 がある (2) 識 別 可 能 資 産 負 債 への 配 分 取 得 に 分 類 される 企 業 結 合 の 場 合 には 取 得 原 価 を 識 別 可 能 資 産 負 債 に 取 得 日 における 時 価 をもっ て 配 分 する 必 要 があるが 企 業 結 合 前 に 被 取 得 企 業 が 計 上 していなかった 資 産 負 債 であっても 取 得 日 において 識 別 可 能 資 産 負 債 の 要 件 を 満 たすもの は 当 該 取 得 の 会 計 処 理 において 識 別 することにな る この 識 別 可 能 資 産 負 債 への 配 分 にあたっては 被 取 得 企 業 の 貸 借 対 照 表 に 計 上 されている 帳 簿 価 額 を 考 慮 する 必 要 がない 点 に 留 意 が 必 要 であるとされ ている すなわち たとえば ブランドや 顧 客 関 係 顧 客 リストのように 被 取 得 企 業 が 自 ら 築 き 上 げて きたものは 当 該 被 取 得 企 業 の 資 産 として 計 上 される ことはないが(いわゆる 自 己 創 設 資 産 ) たとえ ば この 資 産 の 取 得 を 目 的 に 行 われた 企 業 結 合 ( 取 得 )であれば 取 得 企 業 において 識 別 可 能 資 産 とし て 認 識 する 必 要 がある (3)のれんの 会 計 処 理 我 が 国 の 企 業 結 合 会 計 基 準 では 少 数 株 主 持 分 は 被 取 得 企 業 の 純 資 産 を 持 分 割 合 で 按 分 することによ り 算 定 され のれんは 取 得 原 価 を 識 別 可 能 資 産 負 債 に 配 分 した 残 余 として 算 定 される(いわゆる 購 入 のれん 方 式 ) 一 方 国 際 的 な 会 計 基 準 において は 全 部 のれんを 認 識 する 場 合 すなわち 少 数 株 主 持 分 ( 非 支 配 持 分 )にかかるのれんもあわせて 認 識 する 場 合 があり この 場 合 にはのれんの 時 価 も 測 定 する 必 要 が 生 ずることがある (4) 企 業 結 合 時 における 留 意 点 企 業 結 合 時 において 重 要 な 土 地 や 建 物 などの 有 形 固 定 資 産 の 時 価 を 算 定 する 場 合 には それらが 不 動 産 鑑 定 評 価 に 基 づいた 価 額 で 算 定 されているかどう かについて 留 意 が 必 要 である また ソフトウェア 商 標 権 特 許 権 及 び 顧 客 リストなどの 無 形 資 産 は インカム アプローチによって 算 定 されることが 多 いが 超 過 収 益 法 やロイヤルティ 免 除 法 などの 具 体 的 な 手 法 が 正 しく 適 用 されているかについても 留 意 が 必 要 であるとされている おわりに 研 究 資 料 では 本 稿 で 触 れた 論 点 のほか 我 が 国 の 会 計 基 準 で 時 価 が 導 入 されてきた 背 景 我 が 国 の 会 計 基 準 における 時 価 の 取 扱 いの 概 観 一 般 的 な 時 価 の 算 定 方 法 の 概 観 税 務 メリット WACC と WARA の 関 係 など 実 務 上 参 考 になるポイントが 随 所 に 記 述 されている この 研 究 資 料 が 非 金 融 商 品 の 時 価 の 算 定 方 法 に 関 するさらなる 研 究 の 促 進 に つながることを 期 待 したい 以 上 12 テクニカルセンター 会 計 情 報 Vol. 445 / 2013. 9 2013. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC