胸 部 レントゲンで 肺 の 病 気 をみる 国 際 医 療 センター 画 像 診 断 科 酒 井 文 和 1. 胸 部 画 像 診 断 の 方 法 (1) どのような 画 像 診 断 法 があるか 画 像 診 断 ( 放 射 線 診 断 )で 使 用 される 検 査 方 法 には X 線 (レントゲン 線 )を 利 用 する 単 純 撮 影 各 種 造 影 透 視 撮 影 X 線 CT 検 査 磁 器 共 鳴 MRI 検 査 超 音 波 検 査 核 医 学 検 査 など 多 種 類 のものがあります このうち 磁 気 共 鳴 検 査 と 超 音 波 検 査 を 除 くものがいわゆる 放 射 線 ( 電 離 放 射 線 )を 利 用 するものです 各 々 の 検 査 には 長 所 と 短 所 があり 疾 患 の 種 類 や 患 者 さんの 状 態 により 上 手 に 使 い 分 ける 必 要 があります 逆 にいえば 一 つの 検 査 で 全 てがわかるような 便 利 で 万 能 の 検 査 法 がないといえます 病 院 を 受 診 すると たくさんの 検 査 を 受 け ていやになってしまうことがありますが 複 数 の 検 査 を 受 けなければならない 理 由 はここにあります しかし 放 射 線 診 断 医 は いくつかの 検 査 を 組 み 合 わ せてなるべく 最 小 の 負 担 で 最 大 の 情 報 を 得 るように 努 力 しています (2) X 線 (レントゲン 線 )を 用 いる 検 査 このなかで 放 射 線 を 用 いる 検 査 法 はその 中 心 になっています 人 体 を 構 成 するいろいろな 組 織 は 異 なった X 線 吸 収 度 を 示 します X 線 吸 収 度 の 高 い 骨 な どは 白 く 写 り X 線 吸 収 度 の 低 い 空 気 を 多 量 に 含 む 肺 は 黒 く 写 ります 筋 肉 など の 軟 部 組 織 はその 中 間 のグレイに 写 ります このコントラストの 差 をみて X 線 画 像 から 人 体 の 中 がどのようになっているかを 観 察 する 方 法 です コントラ ストが 足 りないので 水 と 筋 肉 などの 軟 部 組 織 が 区 別 できないことが 欠 点 です が 肺 は 正 常 では 多 量 の 空 気 を 含 んでいるので 空 気 の 含 量 が 減 った 病 気 の 部
分 は 単 純 撮 影 でも 比 較 的 よくわかります 最 近 では デジタルカメラ 同 様 に フィルムを 使 用 しないコンピュータ 写 真 を 利 用 してモニタで 観 察 するデジタル 画 像 診 断 が 広 く 普 及 し 大 きな 規 模 の 病 院 ではほとんどフィルムを 使 用 しなく なってきています 様 々な 撮 影 方 法 がありますが 最 も 一 般 的 なのは,なにも 前 処 置 をせずそのま ま X 線 撮 影 をする 単 純 撮 影 でしょう また 単 純 撮 影 では コントラストが 付 き にくい 部 分 をよく 表 すために 造 影 剤 を 併 用 することがあります 造 影 剤 の 投 与 法 にも 口 から 飲 む 方 法 や 血 管 内 に 注 射 する 方 法 など 様 々な 方 法 があります 最 も 身 近 なのは 胃 バリウム 検 査 でしょう これは 硫 酸 バリウムが X 線 で 白 く 写 ることを 利 用 して 胃 の 内 腔 を X 線 画 像 でみようとするものです また 血 管 造 影 という 方 法 では 血 管 の 中 にいれた 細 い 管 (カテーテル)を 目 的 とする 部 位 に X 線 透 視 下 に 誘 導 してヨードを 含 む 水 に 溶 ける 造 影 剤 を 注 射 して 主 に 血 管 の 内 腔 を 造 影 して 病 気 の 診 断 をする 方 法 です また 血 管 内 に 投 与 する 造 影 剤 は 最 終 的 に 腎 臓 や 肝 臓 から 人 体 外 に 排 泄 されますので 造 影 剤 注 射 後 に 時 間 をおって X 線 像 を 撮 影 してゆくと 腎 臓 から 膀 胱 の 内 腔 が 造 影 されてきます( 排 泄 性 尿 路 造 影 ) このように 様 々な 補 助 手 段 を 併 用 した X 線 撮 影 も 頻 繁 に 行 われます 大 変 重 要 な 検 査 ですが 放 射 線 被 曝 があることや 造 影 剤 を 併 用 する 場 合 は 造 影 剤 の 副 作 用 あるいはカテーテルの 挿 入 などに 伴 う 合 併 症 がおこりえます (3) X 線 CT X 線 で 人 体 を 輪 切 りにした 画 像 を 撮 影 する 方 法 で 胸 部 の 画 像 診 断 では その 中 心 的 な 役 割 をなす 方 法 です この 技 術 は 1970 年 代 の 初 頭 に 確 立 されましたが その 後 徐 々に 進 歩 しています 人 体 を 各 方 向 から 撮 影 し そのデータから 人 体 内 部 の 各 点 の X 線 吸 収 度 を 計 算 して 白 黒 の 画 像 として 示 すものです X 線 を 用 い ますので 空 気 は 黒 く 骨 は 白 く 写 りますが 単 純 撮 影 では 十 分 に 見 られなか
った 水 と 軟 部 組 織 の 区 別 や 軟 部 組 織 内 部 のコントラストがつき 軟 部 組 織 の 内 部 がよくわかります また 輪 切 りの 画 像 ですので 重 なりのない 情 報 が 得 られ ます 最 近 では 短 い 時 間 の 間 にたくさんの 画 像 を 一 度 に 撮 影 でし 頭 の 先 か ら 足 の 先 まで 5-10 秒 以 内 に 撮 影 できます またこれらの 輪 切 りの 画 像 からコン ピュータグラフィックスを 用 いて 縦 切 りの 画 像 や 立 体 的 な 画 像 を 表 示 すること ができます 肺 は 空 気 をたくさん 含 んでいるので 造 影 剤 を 使 用 しない CT でもかなりの 情 報 をえることができます しかし 軟 部 組 織 主 体 の 疾 患 や 詳 細 な 評 価 血 管 の 病 変 などでは 血 管 内 のヨード 造 影 剤 を 注 射 して CT( 造 影 CT)を 行 うことが あります 放 射 線 被 曝 のあること 造 影 剤 の 合 併 症 がありうることが 欠 点 です (4) 磁 気 共 鳴 検 査 人 体 を 強 力 な 磁 場 の 中 において 水 ( 水 素 分 子 )の 生 体 内 での 分 布 水 素 の 結 合 状 態 の 差 を 白 黒 のイメージとして 断 面 の 画 像 で 示 す 検 査 方 法 です 一 見 す ると CT と 同 じような 画 像 が 得 られますが 原 理 は 全 く 違 います 長 所 は 組 織 の 相 違 によるコントラストの 差 が CT よりさらに 細 かくわかるので 病 変 がより 明 瞭 にわかる 点 や 輪 切 り 像 ばかりでなく 任 意 の 方 向 の 断 面 の 画 像 が 直 接 に 得 ら れること X 線 を 使 用 しないので 放 射 線 被 曝 がない 点 があげられます 欠 点 は 生 体 内 に 金 属 のある 方 やその 他 検 査 ができない 方 がいること 動 きで 画 質 が 劣 化 するので 体 動 のある 方 はあまり 良 い 画 像 が 得 られないなどのことがあげられ ます 胸 部 では 空 気 が 多 量 にあると 画 質 が 劣 化 するので 肺 の 病 気 の 使 用 に は 制 限 がありますが 胸 壁 や 心 臓 縦 隔 ( 両 肺 の 間 の 中 央 にある 軟 部 組 織 )の 診 断 には 威 力 を 発 揮 します 放 射 線 被 曝 はありませんが 造 影 剤 投 与 による 合 併 症 があり 得 ます (5) 超 音 波 検 査
異 なった 組 織 の 境 界 面 で 音 波 が 反 射 される 性 質 を 利 用 して 人 体 に 高 周 波 の 超 音 波 を 照 射 して その 反 射 波 をイメージ 化 するものです 任 意 の 方 向 の 断 面 が 実 際 に 動 いている 画 像 としてみられます 生 体 に 対 す 影 響 がきわめて 小 さ く 放 射 線 被 曝 のない 安 全 な 検 査 ですので 妊 婦 さんや 幼 児 などにも 安 心 して 行 えます 欠 点 は 骨 と 空 気 で 超 音 波 が 強 く 反 射 されるので 骨 やガスの 後 方 は 全 く 情 報 が 得 られない 点 で 肺 の 病 気 の 診 断 には その 使 用 範 囲 が 狭 くなりま す (6) 核 医 学 検 査 人 体 に 放 射 線 を 出 す 物 質 ( 放 射 性 同 位 元 素 )を 微 量 投 与 して 人 体 外 からこ の 分 布 を 測 定 し イメージ 化 するものです(シンチグラムといいます) たとえ ば 腫 瘍 に 集 積 しやすい 物 質 に 放 射 線 を 発 する 放 射 性 同 位 元 素 をラベルして 人 体 に 投 与 し この 物 質 の 生 体 内 での 分 布 を 横 断 像 などでイメージ 化 する FDGPET と いう 手 法 は 癌 の 診 断 に 必 須 の 方 法 になっています その 他 に 検 査 目 的 に 応 じて 種 々の 物 質 に 微 量 の 放 射 性 同 位 元 素 をラベルして 投 与 し 臓 器 の 輪 郭 な どの 形 態 学 的 情 報 や 機 能 などを 測 定 することができます たとえばエコノミ ークラス 症 候 群 などの 肺 血 栓 塞 栓 症 の 診 断 には 肺 血 流 シンチグラム 検 査 が 有 用 です 微 量 の 放 射 線 被 曝 がありますが その 量 はわずかです 2. 胸 部 画 像 診 断 でどのような 病 気 がわかるのか 肺 は もともと 多 量 の 空 気 を 含 んでいます 肺 の 病 気 の 多 くは その 部 分 で 肺 の 空 気 の 量 が 減 少 するので 正 常 の 肺 とはことなった 形 態 を 示 します X 線 検 査 では おおまかにいえば 肺 の 病 気 の 部 分 は 白 く 写 ってきます この 形 や 分 布 をみて その 病 気 がどのような 性 質 のものであるか 診 断 します 肺 の 病 気 の 診 断 の 中 心 は 何 と 言 っても 単 純 撮 影 とX 線 CTでしょう 必 要 に 応 じて 口 から 造
影 剤 を 飲 んだり 静 脈 に 造 影 剤 を 点 滴 などで 注 入 して 検 査 します 胸 壁 や 縦 隔 の 病 変 を 診 断 するのには 磁 気 共 鳴 診 断 法 や 超 音 波 診 断 が 行 われることもあり ます また FDGPET などの 核 医 学 検 査 は 肺 癌 の 病 期 ( 病 気 のひろがり)の 診 断 には 必 要 不 可 欠 の 検 査 法 です 胸 部 では 行 われることはあまり 多 くはないですが 喀 血 の 診 断 や 治 療 に 血 管 撮 影 がおこなわれることもあります どのような 検 査 を どのような 時 に 行 うのかの 選 択 や 検 査 の 細 かいやり 方 は 病 気 の 種 類 や 検 査 の 目 的 患 者 さんの 状 態 により 異 なりますので 放 射 線 診 断 医 は 主 治 医 と 相 談 のうえ その 詳 細 を 決 定 しています 3. 胸 部 画 像 診 断 の 実 際 と 検 査 を 受 ける 際 の 注 意 点 (1) 単 純 撮 影 とく 注 意 点 はありませんが ネックレスなどの 金 属 を 体 に 付 けていると 撮 影 部 位 によっては 読 影 の 障 害 になりますので 撮 影 時 にはずしてください また T シャツのロゴなども 写 ってしまうことがありますので このような 場 合 は 脱 いでいただいたり 検 査 着 に 着 替 えていただくことがあります また 撮 影 時 に 正 確 に 正 面 を 向 いていたいたり 正 確 な 体 位 をとる 必 要 がありますので お 体 に 触 って 確 認 することが 必 要 な 場 合 があります そのような 場 合 にはお 声 を 掛 け ますのでご 協 力 をお 願 いいたします X 線 を 使 用 する 検 査 ( 単 純 撮 影 造 影 撮 影 X 線 CT では 放 射 線 被 曝 があり ます 胎 児 の 被 曝 はできる 限 り 避 けた 方 がよいので 妊 娠 中 あるいは 妊 娠 の 感 応 性 がある 方 は 主 治 医 または 検 査 担 当 者 などにご 相 談 ください (2) 造 影 検 査 検 査 の 種 類 によっては 検 査 の 前 日 より 前 から 前 処 置 が 必 要 な 場 合 がありま す また 動 脈 撮 影 検 査 などでは 検 査 終 了 後 一 定 時 間 の 安 静 時 間 が 必 要 です
検 査 によっては 長 時 間 の 時 間 と 高 度 の 検 査 技 術 を 要 する 検 査 もありますので 検 査 予 約 時 などにご 説 明 する 注 意 事 項 をよくお 聞 きになりご 協 力 をお 願 いいた します また 検 査 時 に 呼 吸 体 の 動 きや 姿 勢 などに 制 限 が 加 わったり 指 示 を することがあります 適 切 な 検 査 や 合 併 症 の 回 避 に 必 要 ですので ぜひご 協 力 をお 願 いいたします 胸 部 ではありませんが 腹 部 や 腸 管 の 造 影 検 査 では 腸 管 の 動 きを 止 める 薬 を 注 射 します この 薬 は 不 整 脈 や 前 立 腺 肥 大 や 緑 内 障 によくないことがあるで そのような 疾 患 のある 方 はご 相 談 ください またこのお 薬 は 眼 の 遠 近 の 調 節 機 構 が 一 時 働 きにくくなりますので お 車 を 運 転 しての 来 院 はお 避 け 下 さい 造 影 剤 の 注 射 ( 経 静 脈 性 造 影 剤 )の 副 作 用 とその 注 意 点 については あとでま とめてお 話 します (3) X 線 CT 検 査 造 影 CT では 検 査 前 食 は 食 べないでいただくのが 原 則 ですが お 茶 などの 水 分 はとっていただいて 結 構 です 単 純 CT では 特 殊 な 場 合 を 除 いて 検 査 前 の 食 事 に 制 限 はありません 検 査 時 は 原 則 息 を 吸 って 行 いますが 場 合 によっては 息 を 吐 いて 止 めていただくこともあります 撮 影 時 に 体 が 動 くと 画 質 が 劣 化 し 的 確 な 診 断 ができないので 息 止 めの 支 持 のある 間 は しっかり 息 を 止 めて 体 を 動 かさないようにしてください (4) 磁 気 共 鳴 検 査 一 部 の 検 査 ( 特 に 腹 部 臓 器 の 検 査 )では 検 査 前 の 絶 食 が 必 要 になります 必 要 に 応 じて 腸 管 の 動 きを 止 める 薬 や 造 影 剤 を 注 射 して 検 査 します 腸 管 の 動 きを 止 める 薬 を 使 う 場 合 は 腹 部 腸 管 の 造 影 検 査 と 同 様 の 注 意 が 必 要 です 磁 気 共 鳴 検 査 では 以 下 のように 検 査 ができない 方 や 検 査 が 制 限 される 方 特 有 の 注 意 が 必 要 ですので 主 治 医 にご 相 談 ください 体 内 に 磁 性 体 ( 磁 石 に
吸 い 付 く 性 質 のある) 金 属 や 電 子 機 器 ( 心 臓 ペースメーカ 神 経 刺 激 装 置 人 工 内 耳 など)を 装 着 している 方 は 検 査 できません 金 属 はその 性 質 固 定 の 状 態 部 位 などで 検 査 ができるかどうか 千 差 万 別 です 金 属 類 が 体 内 に 入 っている 可 能 性 のある 方 は あらかじめ 主 治 医 にご 相 談 ください また 検 査 当 日 はアイ ライナーなどの 濃 い 化 粧 は 避 けてください 刺 青 のある 方 は 皮 膚 の 低 温 やけど の 可 能 性 があります また 狭 いところの 苦 手 な 方 ( 閉 所 恐 怖 症 )は 検 査 がで きないか 鎮 静 剤 の 併 用 が 必 要 です 金 属 類 は 検 査 室 内 に 持 ち 込 めません また 時 計 磁 気 カード( 銀 行 カード スイカなど) 電 子 機 器 携 帯 電 話 などは 故 障 することがあるので 持 ち 込 めませ んので 入 室 時 専 用 の 検 査 着 に 着 かえていただき これらの 金 属 類 や 財 布 など の 貴 重 品 類 を 専 用 のロッカーなどに 入 れてください 検 査 中 は トントンとかビービ とか 大 きな 音 がします 必 要 であれば 耳 栓 がありますのでお 申 し 出 ください 音 がするのは 機 械 が 正 常 に 動 いている 証 拠 ですのでご 安 心 ください 検 査 するところは 非 常 に 狭 く 圧 迫 感 があることがあ りますが 我 慢 できない 場 合 は お 知 らせください 造 影 剤 の 合 併 症 について は あとでまとめてお 話 します (5) 超 音 波 検 査 特 に 注 意 事 項 はありませんが 腹 部 特 に 上 腹 部 の 検 査 では 検 査 前 の 十 分 な 絶 食 が 必 要 になります 下 腹 部 骨 盤 腔 の 検 査 や 乳 腺 甲 状 腺 の 検 査 では 特 に 注 意 はありません (6) 核 医 学 検 査 検 査 の 種 類 によって 注 意 事 項 は 異 なります FDGPET では 血 中 のブドウ 糖 濃 度 が 高 いと 検 査 結 果 に 影 響 があり せっかく 検 査 しても 無 駄 になってしまいま すので 検 査 前 の 絶 食 をお 願 いいたします 糖 尿 病 がある 方 インスリン 治 療
をしている 方 は 主 治 医 にご 相 談 ください 薬 剤 注 射 後 は 安 静 にして あまり 体 を 動 かしたりしないでください 検 査 の 種 類 により 注 意 事 項 が 異 なりますの で 検 査 前 の 指 示 をお 守 りください 投 与 する 薬 剤 がきわめて 微 量 なので 薬 剤 自 体 による 副 作 用 はほとんどありません 4. 胸 部 画 像 診 断 検 査 の 合 併 症 (1) 放 射 線 被 曝 放 射 線 被 曝 は 最 近 話 題 になることが 多 いようです まずなぜ 放 射 線 検 査 が 必 要 なのか 考 えてみましょう ある 検 査 をするかしにかは その 検 査 により 情 報 が 得 られて 病 気 の 診 断 治 療 に 役 立 つということこと( 検 査 のメリット)と 検 査 をすることによる 悪 いこと(デメリット)を 比 較 して メリットの 大 きいと きのみ 施 行 するのが 原 則 です 画 像 診 断 検 査 もこれと 同 様 で ある 病 気 を 疑 っ てその 診 断 を 決 める あるいは 病 気 の 広 がりを 決 めることが 重 要 になります デメリットには いろいろのものがあります 検 査 手 技 の 中 にはある 程 度 の 合 併 症 が 起 きるものもありますし 検 査 薬 の 副 作 用 もあります 放 射 線 被 曝 はこ のデメリットの 一 つです たしかに 放 射 線 被 曝 により 様 々の 障 害 が 起 きえます 悪 性 腫 瘍 の 発 生 率 も 増 加 するといわれています 一 般 に 医 療 被 曝 ( 医 療 行 為 による 患 者 さんの 被 曝 )は 低 線 量 被 曝 です 悪 性 腫 瘍 の 増 加 は 原 爆 被 災 者 や 原 発 事 故 のような 大 量 被 曝 の 影 響 から 類 推 されたデータ(これを 直 線 仮 説 といいます)で 本 当 に 低 線 量 被 曝 で 悪 性 腫 瘍 の 発 生 が 増 加 したという 報 告 はありません 一 般 に 医 療 被 曝 は 上 限 が 設 定 されていません これは 診 療 に 必 要 な 被 曝 はやむを 得 ないもの であり これをむやみに 制 限 するのは 実 情 に 合 わないからです ( 我 々 病 院 の 職 員 の 被 曝 を 職 業 被 曝 宇 宙 線 などの 自 然 放 射 線 による 一 般 公 衆 の 被 曝 である 公
衆 被 曝 には 上 限 が 設 定 されていますが この 2 つは 放 射 線 被 曝 によるメリ ットがほとんどないからです 医 療 被 曝 職 業 被 曝 公 衆 被 曝 は 厳 密 に 区 別 し て 考 えなければなりません 我 々 診 療 にあたる 医 師 は 検 査 結 果 から 予 測 される 様 々のメリットとデメリ ットを 天 秤 にかけて メリットの 多 いときにのみ 検 査 を 考 えます いたずらに 被 曝 を 恐 れて 必 要 な 検 査 をしないのは 病 気 の 的 確 な 診 断 や 治 療 の 遅 れにつな がる 恐 れがありますので 医 療 従 事 者 を 信 頼 いただき 必 要 な 検 査 はお 受 けにな ることをお 勧 めします もちろん 病 気 がなければ 検 査 も 不 要 ですし 不 必 要 な 被 曝 は 避 けなければなりませんし また 放 射 線 感 受 性 の 高 い 幼 少 児 や 妊 婦 の 被 曝 はできる 限 り 避 けるように 配 慮 が 必 要 です (2) 造 影 剤 による 合 併 症 CT ではヨード 造 影 剤 MR では 主 にガドリニウムという 金 属 の 入 った 造 影 剤 を 必 要 に 応 じて 注 射 します これらの 薬 で 合 併 症 が 起 きることがあります 一 つ はアレルギー 反 応 です 軽 度 のアレルギー 反 応 による 発 疹 やかゆみ 嘔 気 嘔 吐 などは 2-3%の 頻 度 で 起 きるといわれていますが 薬 物 治 療 あるいは 経 過 観 察 で 十 分 対 処 可 能 です ショックに 陥 るような 重 篤 なアレルギー 反 応 (アナフラ キシー 反 応 )は 2000-5000 例 に 一 回 程 度 起 きるとされていますし 20-40 万 例 に 一 例 程 度 の 死 亡 があるとされます このような 場 合 には 入 院 治 療 が 必 要 に なります しかし このような 合 併 症 は 事 前 にその 発 生 を 予 測 することがで きません 注 射 後 の 状 態 を 慎 重 に 見 る 以 外 ないのです ただアレルギー 歴 のあ る 方 や 喘 息 の 方 などでは アレルギー 反 応 の 発 生 率 が 高 くなりと 言 われていま す またヨード 造 影 剤 では 注 射 直 後 には 何 もなくても 1 時 間 後 あるいは 翌 日 になって 発 疹 の 出 る 方 もいます(これを 遅 発 性 合 併 症 といいます) またガドリ ニウム 造 影 剤 は 喘 息 の 方 には 原 則 注 射 できません
もう 一 つは 腎 臓 に 対 する 影 響 です 腎 臓 の 悪 い 方 は ヨード 造 影 剤 が 体 内 に 入 るとさらに 腎 臓 の 機 能 が 低 下 することがあります 腎 臓 の 機 能 障 害 の 程 度 で 造 影 剤 の 投 与 ができない 場 合 や 点 滴 をすることがあります ヨード 造 影 剤 による 腎 機 能 の 悪 化 を 起 こしやすい 危 険 因 子 は 脱 水 です ですので ヨード 造 影 剤 投 与 前 には 脱 水 は 避 けるべきであり 腎 機 能 が 悪 化 している 方 に 造 影 剤 を 使 わなければならない 場 合 は 点 滴 をして 脱 水 を 避 けることがあります 腎 機 能 が 廃 絶 して 血 液 透 析 を 受 けている 方 は 造 影 剤 の 投 与 が 可 能 です MR 造 影 剤 は 腎 臓 の 機 能 を 悪 化 させることは 少 ないのですが 腎 臓 から 排 泄 が 遅 れ 体 内 にガドリニウムが 残 り 合 併 症 を 起 こすので 腎 臓 の 機 能 が 一 定 以 上 に 低 下 している 方 には 使 用 できません (3) その 他 の 合 併 症 造 影 剤 を 注 入 するために 観 血 的 な 手 技 を 要 する 場 合 には これによる 合 併 症 がおこりえます たとえば 動 脈 造 影 などの 検 査 では 一 定 の 率 で 合 併 症 が 起 きることが 知 られています 合 併 症 の 頻 度 は 検 査 の 種 別 や 患 者 さんの 状 態 で 異 なります