放 射 線 を 2013 S AN S O K EN http://www.aist.go.jp 正 しくはかる
放 射 線 とは? 身 のまわりの 放 射 線 大 昔 から 地 球 上 の 生 物 は 放 射 線 とともに 暮 らしてきました 宇 宙 から 降 り 注 ぐ 放 射 線 大 地 から 出 てくる 放 射 線 食 物 の 中 にも 大 気 中 にも 放 射 線 を 出 すものがあります 例 えば 食 物 中 のカリウムには 微 量 のカリウム40という 放 射 性 物 質 が 含 まれています また 私 たちが 呼 吸 している 大 気 の 中 には ラドンなどの 放 射 性 物 質 が 含 まれてい ます 実 は 私 たち 人 間 が 気 付 くずっと 以 前 から 地 球 の 生 物 にとって 放 射 線 は 身 近 なものだったのです 近 年 になって 私 たちは 放 射 線 を 利 用 するようになりました 病 院 では 病 気 の 早 期 発 見 けがの 適 切 な 治 療 の ために X 線 撮 影 やCT 検 査 を 利 用 していますし がん 治 療 のために 放 射 線 治 療 も 行 います また 空 港 では X 線 を 使 った 透 過 画 像 で 荷 物 の 中 身 を 確 認 し 危 険 物 の 持 ち 込 みを 監 視 することで 事 故 や 事 件 を 防 いでいます 私 たちが 健 康 で 安 全 に 暮 らすために 適 切 に 管 理 された 放 射 線 はいろいろな 分 野 で 役 立 っているのです 放 射 線 について 放 射 線 にはアルファ 線 ベータ 線 ガンマ 線 X 線 中 性 子 などがあります 放 射 線 は 物 質 を 透 過 したり 写 真 のフィ ルムを 黒 くさせたり また 物 質 をイオン 化 させたりします さらにある 種 類 の 物 質 は 放 射 線 に 反 応 して 光 を 放 出 し ます 放 射 線 は 目 には 見 えませんが このような 性 質 を 利 用 することで 放 射 線 を 測 定 しています 放 射 線 の 量 を 線 量 といいます 人 体 への 影 響 を 表 す 線 量 の 単 位 はシーベルトでSvという 記 号 で 表 します 1,000 分 の1を 示 す ミリ をつけてミリシーベルト (msv) 1,000,000 分 の 1 を 示 す マイクロ をつけてマイクロシーベルト (µsv) を 使 うこともあります の 0.01 食 物 0.99 大 気 から 宇 宙 0. 大 気 0.4 日 本 人 の 平 均 被 ばく 線 量 ( 年 間 ) 5.9. 食 物 から 大 地 0. 日 本 人 の 平 均 被 ばく 線 量 ( 年 間 ) 新 版 生 活 環 境 放 射 線 ( 国 民 線 量 の 算 定 ) 原 子 力 安 全 研 究 協 会 (2011)より 作 成 大 地 から 2 産 総 研 SAN S O K EN 2013
放 射 性 物 質 と 放 射 能 放 射 線 を 出 す 物 質 を 放 射 性 物 質 といいます 放 射 能 と は 原 子 核 が 壊 変 して 放 射 線 を 出 す 能 力 のことです 放 射 能 の 単 位 はベクレルで Bq という 記 号 で 表 します 1 ベクレルは 1 秒 間 に 原 子 核 が 平 均 1 回 壊 変 する 放 射 能 の 強 さを 意 味 します 原 子 核 の 壊 変 と 放 射 線 原 子 核 には 安 定 な 原 子 核 と 不 安 定 な 原 子 核 があ ります 不 安 定 な 原 子 核 は 余 分 なエネルギーを 放 出 して 安 定 になろうとします その 際 アルファ 線 を 出 して 安 定 になることをアルファ 壊 変 ベー タ 線 を 出 して 安 定 になることをベータ 壊 変 といい ます 多 くの 場 合 壊 変 に 引 き 続 いてガンマ 線 を 出 します 宇 宙 から 飛 行 機 で 東 京 ニューヨークを 往 復 すると 0.19 ミリシーベルト * アルファ 壊 変 とそれに 伴 うガンマ 線 放 出 の 様 子 X 線 CT 検 査 1 回 で 6.9 ミリシーベルト * 胸 の X 線 検 査 1 回 で 0.05 ミリシーベルト * * 原 子 力 安 全 の 取 組 について 内 閣 府 原 子 力 安 全 委 員 会 (2006)より 産 総 研 SAN S O K EN 2013 3
放 射 線 をはかる 放 射 線 の 測 定 器 には 検 出 方 法 によって 測 定 できる 放 射 線 の 種 類 や 量 などに 違 いがあるので 目 的 に 合 った 測 定 器 を 選 ぶことが 大 切 です 放 射 線 をどのくらい 受 けたかをはかる 個 人 線 量 計 は 一 人 ひとりがどの 程 度 放 射 線 を 受 けたのか を 測 定 します 個 人 線 量 計 男 性 は 胸 に 女 性 は 腹 部 に 装 着 します ガラス 線 量 計 ( 下 ) は 一 定 期 間 ( 数 日 ~1カ 月 )に 受 け た 放 射 線 の 個 人 線 量 を 測 定 します 電 子 式 線 量 計 ( 左 ) は 個 人 線 量 をリアルタイムで 表 示 します 放 射 線 の 線 量 をはかる その 場 の 線 量 は 適 切 なサーベイメータやモニタリング ポストで 測 定 します これらの 測 定 器 にはさまざまな 種 類 があり 放 射 線 の 種 類 や 強 さによって 使 い 分 けます 線 量 測 定 用 サーベイメータ その 場 の 線 量 を 測 定 するための 携 帯 式 の 装 置 で 持 ち 運 びながら 測 定 することができ ます リアルタイム 線 量 測 定 システム その 場 の 線 量 を 測 定 して 表 示 する 装 置 です 通 信 機 能 を 持 ち 測 定 値 をホームページ 等 で 表 示 することができます モニタリングポストとして 屋 外 に 設 置 されて います 4 産 総 研 SAN S O K EN 2013
放 射 性 物 質 を 見 つける 放 射 性 物 質 が 表 面 についているかどうかを 調 べるには 大 面 積 のサーベイメータを 使 います 表 面 汚 染 測 定 用 大 面 積 サーベイメータ 表 面 に 付 着 した 放 射 性 物 質 から 出 てく るベータ 線 を 測 定 します アルファ 線 を 測 定 するものもあります 食 品 検 査 装 置 食 品 に 含 まれる 放 射 性 物 質 の 放 射 能 をはかる シンチレーション 式 検 出 器 です 放 射 能 をはかる 食 品 に 基 準 値 以 上 の 放 射 性 物 質 が 含 まれていないことを 確 認 す るために 放 射 能 を 測 定 しています 測 定 にはゲルマニウム 半 導 体 検 出 器 やシンチレーション 式 検 出 器 などの 分 析 装 置 を 用 います 産 総 研 SAN S O KEN 2013 5
放 射 線 測 定 のトレーサビリティ 放 射 線 を 正 しくはかるために 正 しい 測 定 には 正 しい 目 盛 りが 必 要 です このために 測 定 のトレーサビリティという 仕 組 みが あり 産 総 研 が 重 要 な 役 割 を 果 たしています 測 定 器 の 校 正 毎 時 1シーベルト (1 Sv/h) の 場 所 に 測 定 器 を 置 いて 2 Sv/h と 表 示 されれば その 測 定 器 は 正 しく 測 定 してい るとはいえません 正 しい 測 定 のためには 測 定 器 の 目 盛 りを 正 しく 調 整 する 必 要 があります そのために 測 定 器 を 例 えば 1 Sv/h の 場 所 に 置 いて 表 示 される 数 値 が 1 Sv/h からどの 程 度 ずれるかを 調 べます これを 校 正 とい います 基 準 となる 線 量 の 目 盛 りは 国 家 標 準 器 ( グラファイト 壁 空 洞 電 離 箱 図 A)によって 決 められています A 側 面 壁 電 図 A グラファイト 壁 空 洞 電 離 箱 ( 右 : 側 面 壁 をはずしている) ガンマ 線 の 線 量 を 正 確 に 測 定 することができる 国 家 標 準 器 B 図 B ガンマ 線 の 照 射 装 置 を 使 って 放 射 線 測 定 器 を 校 正 している 様 子 左 : 国 家 標 準 器 を 使 って 線 量 の 基 準 を 決 めている 様 子 右 : 放 射 線 測 定 器 を 取 り 付 けて 校 正 している 様 子 1ガンマ 線 照 射 装 置 2ここからガンマ 線 が 手 前 側 に 出 ます 3 国 家 標 準 器 4 校 正 される 放 射 線 測 定 器 6 産 総 研 SAN S O K EN 2013
トレーサビリティ ある 測 定 器 の 校 正 に 用 いた 基 準 の 元 をたどっていくと 国 の 最 上 位 の 標 準 にたどり 着 きます これを 測 定 のトレー サビリティといいます 国 の 最 上 位 の 標 準 のことを 国 家 標 準 といい 日 本 では 現 在 線 量 放 射 能 ともに 産 総 研 が 管 理 しています 測 定 のトレーサビリティについて 放 射 能 の 場 合 を 例 にして 考 えてみましょう 食 品 土 壌 廃 棄 物 等 に 含 まれる 放 射 性 物 質 の 放 射 能 を 測 定 するゲルマニウム 半 導 体 検 出 器 ( 図 C)などの 目 盛 りを 校 正 する 際 には 標 準 線 源 ( 図 D) を 用 います 標 準 線 源 は 校 正 を 専 門 に 行 っている 校 正 事 業 者 によって 校 正 されています 校 正 事 業 者 のもつ 放 射 能 測 定 器 は 国 家 標 準 を 用 いて 校 正 されています 放 射 能 の 国 家 標 準 は 産 総 研 にある 4πβ-γ 同 時 測 定 装 置 ( 図 E)などで 成 り 立 っています このような 国 内 の 放 射 能 のトレーサビリティ 体 系 が 保 たれることで いつでもどこでも 同 じ 結 果 が 期 待 できます E 図 E 4πβ-γ 同 時 測 定 装 置 標 準 線 源 を 用 いずに 放 射 能 を 求 めることができる 測 定 装 置 です ベータ 線 ガンマ 線 およびそれらを 同 時 に 検 出 した 回 数 と 測 定 時 間 から 放 射 能 を 求 めます D C 図 D 標 準 線 源 ゲルマニウム 半 導 体 検 出 器 などを 校 正 する 際 に 用 いる 線 源 で その 放 射 能 は 校 正 事 業 者 によって 校 正 されています 図 C ゲルマニウム 半 導 体 検 出 器 食 品 土 壌 廃 棄 物 等 に 含 まれる 放 射 性 物 質 の 放 射 能 測 定 に 用 います 測 定 用 の 容 器 にサンプルを 入 れ 検 出 器 の 上 に 置 いて 測 定 します 検 出 器 の 上 にサンプルを 置 いた 様 子 世 界 と 日 本 日 本 の 国 家 標 準 と 他 国 の 国 家 標 準 の 関 係 を 考 えてみましょう 各 国 には 産 総 研 と 同 じように 国 家 標 準 を 管 理 して いる 機 関 があり お 互 いの 標 準 を 比 較 して 同 等 であることを 確 認 しています そのため 各 国 で 校 正 した 測 定 器 は 共 通 の 目 盛 りを 持 ちます 産 総 研 はこの 活 動 に 積 極 的 に 参 加 しています 産 総 研 SAN S O KEN 2013 7
放 射 線 計 測 の 研 究 事 例 個 人 向 け 小 型 放 射 線 積 算 線 量 計 を 開 発 小 型 放 射 線 積 算 線 量 計 と500 円 玉 の 大 きさ 比 較 この 小 型 放 射 線 積 算 線 量 計 は 産 総 研 がこれまで 培 ってきた 放 射 線 関 連 機 器 の 小 型 化 省 エネ 化 技 術 を 応 用 して 開 発 され 20 g 以 下 と 軽 く 持 ち 運 びが 簡 単 で 3 Vのボタン 電 池 1 個 で1 年 以 上 動 作 します 積 算 線 量 計 の 記 録 は 無 線 や 光 通 信 によりパソコンなどで 読 み 取 り 日 々の 放 射 線 被 ば く 量 を 自 宅 などで 手 軽 に 把 握 することができます 今 後 は この 放 射 線 線 量 計 の 校 正 を 無 線 でできるシステムを 構 築 し 計 測 線 量 値 の 信 頼 性 の 向 上 と 安 価 で 入 手 できるように 量 産 技 術 を 確 立 し 早 期 の 実 用 化 を 目 指 します (2012 年 2 月 13 日 発 表 ) 放 射 性 セシウムを 含 む 玄 米 の 認 証 標 準 物 質 を 開 発 東 京 電 力 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 事 故 以 来 放 射 性 物 質 による 食 品 の 汚 染 が 懸 念 され 多 くの 検 査 機 関 で 放 射 能 測 定 が 行 われています 産 総 研 では 放 射 性 セシウムを 含 む 玄 米 の 認 証 標 準 物 質 を ( 独 ) 農 業 食 品 産 業 技 術 総 合 研 究 機 構 食 品 総 合 研 究 所 と 共 同 で 開 発 しました 認 証 標 準 物 質 の 放 射 能 濃 度 は 約 85 Bq/kgで 厚 生 労 働 省 による 一 般 食 品 に 含 まれる 放 射 性 セシウムの 基 準 値 (100 Bq/kg)より 若 干 低 い 値 です そのため 検 査 機 関 がこの 認 証 標 準 物 質 の 放 射 能 を 正 しく 測 定 できれば 基 準 値 を 超 える 食 品 に 含 まれる 放 射 性 セシウムの 測 定 ができることの 確 証 となります (2012 年 8 月 30 日 発 表 ) 放 射 性 セシウムを 含 む 玄 米 の 認 証 標 準 物 質 マンモグラフィ 用 X 線 の 線 量 標 準 を 開 発 乳 房 X 線 撮 影 (マンモグラフィ)による 乳 がん 検 診 が 日 本 でも 2000 年 に 導 入 されました このマンモグラフィに 使 われるX 線 は 胸 部 レントゲン 写 真 撮 影 装 置 などで 利 用 されている 従 来 のX 線 とは 特 性 が 異 なります このため マンモグラフィに 使 われるX 線 の 線 量 を 正 しく 測 定 するためには 新 たな 線 量 の 基 準 が 必 要 となります そこで 産 総 研 は マンモグラフィ 用 X 線 の 線 量 標 準 を 開 発 し 医 療 現 場 での 線 量 測 定 をより 正 確 にすることで 受 検 者 が 不 必 要 な 被 ば くをせず 正 確 な 診 断 を 受 けられるように 貢 献 しています また このマンモグラフィ 用 X 線 の 線 量 標 準 の 他 に 例 えば がん 治 療 に 使 われる 放 射 線 の 線 量 標 準 も 開 発 しています (2009 年 3 月 5 日 発 表 ) 広 報 部 広 報 制 作 室 305-8568 つくば 市 梅 園 1-1-1 中 央 第 2 Tel:029-862-6217 Fax:029-862-6212 E-mail: 発 行 :2013.02