真 空 吸 着 車 輪 ゴンドラの 開 発 本 州 四 国 連 絡 橋 公 団 保 全 部 設 備 課 中 村 修 1.はじめに 海 浜 部 などの 塩 害 環 境 下 に 構 築 されている 大 規 模 コン クリート 構 造 物 の 保 全 では 塩 分 進 入 や 中 性 化 による 内 部 鋼 材 の 腐 食 防 止 対 策 が 重 要 な 課 題 になる 保 全 作 業 は 点 検 調 査, 劣 化 防 止, 修 復 などであり いずれも 対 象 部 位 への 接 近 が 必 要 になる しかし 現 在 の 点 検 調 査 は 管 理 写 真 -1 アンカーレイシ の 総 枠 組 足 場 路 や 脚 立 などによる 接 近 可 能 な 範 囲 に 限 定 される ま た 劣 化 防 止 作 業 は 総 枠 組 足 場 ( 写 真 -1)で 施 工 されてい ゴンドラ 吸 着 車 輪 るため 組 立 解 体 時 には 基 部 への 侵 入 が 不 可 欠 で 設 置 期 間 と 費 用 がかさむ 難 点 があり 今 後 全 ての 構 造 物 へ 適 用 することは 困 難 であることから コンクリート 壁 面 への 図 -1 真 空 吸 着 車 輪 ゴンドラ 安 全 確 実 短 時 間 で 安 価 な 接 近 手 段 が 求 められている よって 図 1 に 示 すような 真 空 吸 着 車 輪 ゴンドラによる 接 近 手 段 を 考 案 した 本 装 置 の 要 諦 はコンクリート 壁 面 への 吸 着 機 構 にあり 今 回 開 発 した 真 空 吸 着 車 輪 を 実 験 した 結 果 実 用 化 に 明 るい 見 通 しを 得 た 本 文 では 開 発 にあたっての 技 術 課 題 とその 解 決 方 法 車 輪 の 吸 着 力 連 続 吸 着 性 等 の 実 験 結 果 と 今 後 の 課 題 を 述 べる 表 -1 接 近 コスト 比 較 項 目 枠 組 足 場 全 面 設 置 真 空 吸 着 車 輪 ゴンドラ5 台 2. 壁 面 への 接 近 方 法 損 料 12,800 千 円 18,000 千 円 基 部 への 進 入 と 高 さに 左 右 されず 設 置 期 間 組 立 解 体 費 38,500 千 円 - を 要 しない 接 近 方 法 に ビル 壁 面 などで 多 用 さ れているゴンドラがあるが ゴンドラは 風 によ って 揺 れるため 稼 働 率 が 低 下 するとともに 作 業 反 力 が 得 られない 難 点 があり 採 用 にあたっ 1 m2 当 たり 5,130 円 2,600 円 対 象 物 :50m 立 方 のアンカーレイジ 壁 面 吊 元 費 (4 面 ) - 8,000 千 円 合 計 51,300 千 円 26,000 千 円 (4 面 合 計 10,000 m2) てはこれらの 解 決 が 必 要 になる 対 象 作 業 : 劣 化 調 査 塗 装 ( 共 に 人 力 作 業 ) 通 常 のゴンドラに 吸 着 機 構 を 付 与 した 事 例 に 作 業 期 間 :6ヶ 月 磁 石 車 輪 ゴンドラがあり 大 鳴 門 橋 主 塔 塗 替 試 験 工 事 で 使 用 した 結 果 次 を 得 た 1 磁 石 車 輪 で 壁 面 に 連 続 吸 着 するため 風 によって 揺 れず 作 業 風 速 は 作 業 員 の 安 全 性 と 施 工 品 質 保 持 上 の 限 界 であった 5~6m/s が 13m/s まで 可 能 になり 作 業 反 力 も 確 保 できる 2 施 工 報 告 によると 大 鳴 門 橋 の 通 年 気 象 条 件 による 稼 働 率 は 従 来 の 50%から 80%に 向 上 する また 枠 組 足 場 の 場 合 と 吸 着 車 輪 ゴンドラを 使 用 する 場 合 の 接 近 コストは 表 -1に 示 すように ゴンドラを5 台 投 入 しても 枠 組 足 場 に 比 べて 約 25,000 千 円 安 価 となり 本 四
架 橋 全 体 の 効 果 は 約 4 億 円 安 くなる また 開 発 吸 着 パッド 全 体 の 効 果 は 費 用 を 設 計 から 実 橋 実 験 まで 踏 ま えても 効 果 / 費 用 (B/C)は 15 倍 であり 十 分 な 投 資 効 果 がある 以 上 から コンクリートのような 非 磁 性 壁 面 で も 吸 着 可 能 な 機 構 を 有 したゴンドラの 開 発 に 着 手 した 図 -2 車 輪 形 状 の 真 空 吸 着 機 構 構 想 図 表 -2 必 要 性 能 項 目 必 要 性 能 吸 引 3. 吸 着 機 構 3.1 既 往 吸 着 技 術 非 磁 性 体 壁 面 への 既 往 吸 着 技 術 としては ビル の 外 装 点 検 等 を 目 的 に 真 空 吸 着 移 動 体 が 考 案 され 実 施 工 に 供 されている しかしゴンドラとの 組 み 合 わせでは 1 機 構 が 煩 雑 2 装 置 の 大 型 化 3 移 動 速 度 や 範 囲 が 限 定 される 4 積 載 を 目 的 とし 高 速 移 動 重 量 物 搭 載 広 い 作 業 エリア 高 い 安 全 性 段 差 走 行 性 所 用 吸 着 力 横 抵 抗 力 昇 降 速 度 7.2m/min 積 載 質 量 300kg 以 上 50m 50m で 安 定 した 移 動 耐 風 速 16m/s で 揺 れないこと 高 さ 252mm のテクスチャー 乗 越 1 輪 当 たり 490N (50kgf)で 連 続 吸 着 1 輪 当 たり 245N (25kgf) ていない 等 の 難 点 があり 既 往 技 術 を 採 用 すること は 不 可 能 である したがって 機 構 が 簡 素 コン パクトで 容 易 に 広 範 囲 の 移 動 が 可 能 となる 車 輪 形 状 の 真 空 吸 着 機 構 ( 図 2)を 開 発 する 吸 着 パッドを 裏 面 より 見 る パッドの 凹 凸 吸 収 状 況 パッド 3.2 ゴンドラの 必 要 性 能 吸 着 機 構 を 有 したゴンドラに 必 要 な 性 能 は 壁 写 真 -2 吸 着 パッドと 密 着 性 状 況 凹 凸 物 面 に 常 時 吸 着 し 高 速 移 動 重 量 物 積 載 広 い 作 業 エリア 高 い 安 全 性 を 実 現 することに ある また 瀬 戸 大 橋 のアンカーレイジ 壁 面 には 船 舶 のレーダー 偽 像 対 策 として 5 の 反 射 角 ( 段 差 高 252mm)を 持 たせたテクスチャーを 配 している これらを 踏 まえたゴンド ラの 必 要 性 能 を 表 -2 に 示 す 4. 真 空 吸 着 車 輪 の 技 術 課 題 と 対 策 必 要 性 能 のうちゴンドラを 採 用 することで 得 られるものを 除 き 車 輪 を 検 討 した 結 果 次 の 技 術 課 題 があった 4.1 凹 凸 面 への 密 着 性 確 保 凹 凸 面 の 密 着 性 を 確 保 するためには 吸 着 パッドの 柔 軟 さが 必 要 になる 一 般 に 流 通 し ているパッドは 硬 質 ゴム 製 であり 凹 凸 に 対 する 密 着 性 は 劣 る また 端 部 が 薄 く 比 較 的 柔 軟 性 を 有 する 円 形 パッドでも 車 輪 の 回 転 によりパッド 端 部 に 巻 き 込 みを 生 じる このた め 鋼 板 に 柔 軟 性 に 富 むスポンジゴムを 貼 り 合 わせた 吸 着 パッド( 写 真 -2)を 製 作 し 凹 凸 面 の 密 着 性 を 確 保 した 4.2 吸 着 パッドへの 吸 気 機 構 回 転 体 を 真 空 吸 着 させるため 壁 面 に 接 触 していないパッドからエアを 吸 い 込 むと 真 空 は 形 成 されない 各 パッドへの 吸 気 配 管 を 独 立 させると 真 空 形 成 は 可 能 になるが 機 器 構
成 が 煩 雑 になり 現 実 的 ではない よって 車 輪 の 回 転 中 心 にディストリビュータハブを 組 み 込 むこ とで 解 決 した これにより 壁 面 側 のパッドのみ ディストリビュータ を 常 に 吸 着 し かつ 簡 素 な 機 構 にできた ( 図 3) 4.3 真 空 発 生 機 構 の 選 択 高 所 で 広 範 囲 の 移 動 を 要 することから 真 空 発 壁 面 側 3パッドのみ 吸 着 生 機 構 は 車 輪 近 傍 すなわちゴンドラ 上 に 搭 載 し なければ 施 工 能 率 が 格 段 に 低 下 する また メ 図 -3 ディストリビュータハブ ンテナンス 上 は 小 型 軽 量 で 汎 用 性 のある 機 構 が 必 要 である この 真 空 発 生 機 構 には 真 空 ポンプ 方 式 と エジェクタ( 真 空 発 生 器 )を 使 用 して 正 圧 を 負 圧 に 変 換 するコンプレッサー 方 式 があるが 目 地 テクスチャー コンプレッサーは 市 場 に 多 く 出 回 っており 汎 用 性 に 優 れ 不 具 合 時 の 代 替 品 も 容 易 に 確 保 できるこ 写 真 -3 模 擬 壁 面 写 真 -4 装 着 状 況 とから コンプレッサー 方 式 を 採 用 した 今 回 使 用 したのはベビーコンプレッサーで 小 型 軽 量 のため 人 力 で 容 易 に 可 搬 でき ゴンドラ 上 に 搭 載 できる 5. 室 内 実 験 吸 着 開 始 5.1 実 験 方 法 前 述 の 検 討 結 果 を 基 に 車 輪 を 試 作 し 室 内 実 験 した 走 行 面 は 目 地 を 切 ったコンクリート 平 面 と 実 スケールのテクスチャーを 2 段 配 した 模 引 き 剥 がし 開 始 真 空 到 達 引 き 剥 がし 力 (kgf) 真 空 度 ( 上 )(kpa) 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 擬 壁 面 を 使 用 し 懸 架 装 置 と 車 輪 は ゴンドラ に 装 着 した 条 件 になるよう 重 量 配 分 した ( 写 真 時 間 (sec) 図 -4 真 空 吸 着 力 60 50 最 大 引 っ 張 り 力 点 -3 写 真 -4) 40 吸 着 開 始 30 実 験 の 主 な 確 認 項 目 は 1 車 輪 の 吸 着 力 2 車 輪 の 横 抵 抗 力 3 連 続 吸 着 性 4テクスチャ 20 10 0-10 -20-30 -40 引 き 剥 がし 開 始 -50 真 空 到 達 ー 乗 越 性 能 である -60-70 吊 上 げ 荷 重 (kgf) 5.2 実 験 結 果 5.2.1 真 空 吸 着 力 真 空 吸 着 力 は 吸 着 させた 車 輪 を 後 方 に 引 き -80 真 空 度 ( 上 )(kpa) -90-100 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 時 間 (sec) 図 -5 横 抵 抗 力 車 輪 が 離 壁 するときの 最 大 引 き 剥 がし 力 を 測 定 した 代 表 的 な 測 定 データを 図 -4 に 示 す 測 定 結 果 から 最 大 585N(59.7kgf) 最 小 516N(52.7kgf)のデータが 得 られた 1 車 輪 当 た り 490N(50kgf)としても 4 車 輪 では 1,960N(200kgf)の 吸 着 力 が 十 分 に 得 られる 5.2.2 横 抵 抗 力 横 抵 抗 力 は 車 輪 軸 を 軸 方 向 に 引 き 車 輪 がずれるもしくは 剥 がれる 時 の 最 大 引 っ 張 り 力 を 測 定 した 代 表 的 な 測 定 データを 図 -5 に 示 す 測 定 結 果 から 最 大 272N(27.8kgf) 最 小 214N(21.9kgf)のデータを 得 た 今 回 は 1 車 輪 で 引 っ 張 ったため 本 来 の 4 輪 での 安 70 60 50 40 30 20 10-10 0-20 -30-40 -50-60 -70-80 -90-100 最 大 引 き 剥 がし 力 点
定 した 抵 抗 力 より 低 い 値 が 出 ていると 考 えら 0-10 れるが 横 抵 抗 力 は 1 車 輪 当 たり 平 均 値 の 245N(25kgf)としても 4 車 輪 で 980N(100kgf) -20-30 -40-50 1 回 転 ( 全 18パッド) 以 上 が 十 分 に 得 られる -60-70 パッド1 パッド2 5.2.3 連 続 吸 着 性 -80-90 パッド3 5.0 10.0 15.0 20.0 連 続 吸 着 性 は 吸 着 車 輪 を 一 定 速 度 で 回 転 時 間 (sec) させて 連 続 する 3 パッドの 真 空 度 で 吸 着 性 能 を 確 認 した 代 表 的 な 測 定 データを 図 -6 に 示 す 吸 着 の 切 替 は 等 間 隔 で 円 滑 に 出 来 て いる 5.2.4 テクスチャー 乗 越 性 能 テクスチャーの 乗 越 手 順 は 図 -7 のよう に 上 昇 中 車 輪 がテクスチャー 下 部 に 接 近 す ると 1 上 車 輪 をゴンドラ 側 に 引 き 込 み 段 差 を 乗 り 越 す 2 上 車 輪 が 吸 着 後 下 車 輪 を 引 き 込 む 3 段 差 を 乗 り 越 えたら 再 度 吸 着 す 1 図 -6 2 連 続 吸 着 性 3 引 込 吸 着 る この 動 作 を 繰 り 返 し 上 昇 する( 下 降 時 は 図 -7 テクスチャー 乗 越 手 順 逆 ) 実 験 では 昇 降 中 に 停 止 することなく 円 滑 に 乗 り 越 える 動 作 を 確 認 した 以 上 から 各 項 目 とも 良 好 な 結 果 が 得 られ また 1 吸 着 機 構 は 円 滑 に 作 動 する 2 吸 着 力 横 抵 抗 力 とも 実 用 上 の 耐 力 が 十 分 に 得 られる 3 吸 着 力 不 陸 追 従 性 安 定 性 など の 吸 着 性 能 はパッド 形 状 硬 度 の 選 択 が 重 要 であるとの 知 見 を 得 た 真 空 度 (kpa) 10 6. 今 後 の 課 題 今 回 の 実 験 により 真 空 吸 着 車 輪 単 独 の 機 能 は 確 認 できたが 実 用 化 にはゴンドラへの 装 着 が 不 可 欠 である 実 作 業 へ 使 用 するまでの 課 題 としては 1 吸 着 安 定 性 のさらなる 向 上 2 耐 久 性 を 有 するパッドの 製 作 3 実 基 礎 での 使 い 勝 手 の 検 証 4 吸 着 パッドの 耐 久 性 の 検 証 などが 挙 げられる これらの 課 題 を 解 決 するためには 今 後 予 定 されている 保 全 作 業 に 供 して 使 い 勝 手 など を 確 認 するのが 最 も 早 道 になる さらに 今 まで 必 要 でありながら 設 備 の 不 足 から 制 約 さ れていたコンクリート 品 質 ( 塩 分 含 有 量 中 性 化 深 さ 等 )のデータ 不 足 も 一 挙 に 解 消 され る したがって 今 後 はゴンドラに 真 空 吸 着 車 輪 を 装 着 し 実 橋 での 機 能 確 認 やコンクリ ート 品 質 のデータ 収 集 などを 計 画 している 7.まとめ 当 公 団 には 海 浜 部 に 数 多 くの 大 規 模 コンクリート 構 造 物 があり 本 開 発 により 点 検 や 劣 化 防 止 対 策 など 保 全 作 業 の 機 動 性 安 全 性 保 全 コストが 飛 躍 的 に 向 上 されるものと 期 待 できる 今 後 は 計 画 している 実 橋 実 験 で 課 題 を 検 証 し よりよい 設 備 にしていく 所 存 であ る
16 3 PC
Expanded Poly-Styrol Construction Method
1) 2) C ap C = Cpap + Co (1 - ap) Cp = qup/2, Co = quo/2, ap = Ap/A] 2 2 C(kN/m) Cp(kN/m) Co (kn/m 2 ) apqup (kn/m 2 ) quo(kn/m 2 ) Ap(m 2 ) A (m 2 ) Ep qup ( Ep=100 qup) Cp qup ( Cp= qup/2) Ep ( Ep=200 Cp) Ec C 2 Ec = Epap + Eo (1 - ap) 2 Ec(kN/m 2 ) Ep(kN/m 2 ) Eo (kn/m 2 ) k 3) Ec (3) -3/4 k=( Ec/ 0.3) ( D/ ) 1/ 0.3) 3 k(kn/m 3 ) Ec(kN/m 2 ) 4-1 Dm ( kd)/4ei m E (kn/m 2 ) I(m 4 ) 3)
4) 1/ =(45 + /2)( ) 3 L=57.6m 40m N=0 10
20 5000 A1 ( 1500mm, L=37.0m) 5) Eo 2 qu=200kn/m 78.5% 2 Eo=15700kN/m Eo N =22 K =81400kN/m 3 3) H K K 3 3 y=h [(1+ h) +1/2]/(3EI ) h: (mm) y: (mm) H: (N) D: (mm) E: (N/mm 2 ) I: (mm 4 ) K1 K 1.5 ( K1=120000kN/m 3 K 3 3 =81400kN/m ) K1=120000kN/m K1 6) (4)
m 1/ =(45 + /2) 3 C ap 1). 5 2002.11. 2). pp.48-148,1999. 3). pp.254-397,2002. 4). pp.868-870,1969. 5). pp.21-34,1993. 6). pp.48-118,2002.
ワイヤネット 工 による 砂 礫 型 土 石 流 の 捕 捉 効 果 立 山 砂 防 事 務 所 水 谷 出 張 所 平 井 謙 蔵 まえがき ワイヤネット 工 は 現 況 の 渓 床 状 況 を 維 持 しつつ 短 期 間 で しかも 低 コストで 施 工 が 可 能 な 土 石 流 捕 捉 工 として 開 発 された 当 事 務 所 では 平 成 14 年 度 常 願 寺 川 の 源 流 部 に だしわらだに 位 置 する 立 山 カルデラの 多 枝 原 谷 にワイヤネット 工 を 設 置 し 下 流 の 砂 防 工 事 用 道 路 の 安 全 確 保 に 努 めていたところ 翌 年 8 月 に 発 生 した 土 石 流 を 捕 捉 し 人 的 被 害 はもとより 工 事 用 道 路 の 損 傷 を 免 れることができた 本 報 告 は 監 視 カメラで 捉 えた 土 石 流 や 捕 捉 後 に 実 施 した 堆 積 物 調 査 等 の 結 果 から 土 石 流 の 性 状 を 明 らかにするとともに ワイヤネット 工 による 土 石 流 の 捕 捉 効 果 や 課 題 に ついて 考 察 したものである 1.ワイヤネット 工 の 概 要 1.1 ワイヤネット 工 の 設 置 ワイヤネット 工 を 設 置 した 多 枝 原 谷 は 飛 越 地 震 ( 1858 年 )によって とんびくずれ 大 規 模 な 山 体 崩 壊 を 起 こした 鳶 崩 れ を 源 頭 部 にもつ 流 域 面 積 0.85km 2 平 均 渓 床 勾 配 1/6 の 荒 廃 渓 流 であり 毎 年 のように 土 石 流 が 発 生 している 多 枝 原 谷 には 多 枝 原 谷 より 以 奥 の 砂 防 工 事 を 施 工 するための 工 事 用 道 路 が 渡 河 しており 降 雨 時 ( 時 間 雨 量 20mm または 連 続 雨 量 50mm を 越 えた 場 合 )や 渓 流 に 設 置 している 鳶 崩 れ ワイヤセンサが 切 断 された 場 合 には 通 行 止 めの 措 置 を 講 じていたが よ 多 り 高 い 安 全 性 の 確 保 と 工 事 用 道 路 枝 原 の 被 害 軽 減 をはかるため 工 事 用 道 谷 路 から 80m 上 流 の 土 石 流 流 下 域 にワ イヤネット 工 を 設 置 した 写 真 -1 ワイヤネット 工 の 設 置 1.2 ワイヤネット 工 の 構 造 図 -1にワイヤネット 工 の 一 般 図 を 示 す 基 本 構 造 は 設 置 箇 所 の 谷 形 状 や 想 定 される 土 石 流 の 規 模 等 に 基 づき 有 効 高 3.5m 主 索 幅 約 28m ネット 幅 約 17m リング 径 1.0m とした 設 計 外 力 は 堆 砂 面 から 下 部 に 堆 砂 圧 を 堆 砂 面 から 上 部 に 土 石 流 流 体 力 を 与 え 主 索 吊 索 リングネット 等 の 各 部 材 の 必 要 強 度 を 算 定 し 部 材 仕 様 を 決 定 した -1- 多 枝 原 上 流 雨 量 観 測 所 ワイヤネット 工 監 視 カ メ ラ ワイヤセンサ 多 枝 原 谷 950m 80m 工 事 用 道 路
2. 土 石 流 の 発 生 誘 因 と 性 状 正 面 図 側 面 図 (A-A) 平 成 15 年 8 月 26 日 17 時 15 分 ころ ワ 右 岸 左 岸 イヤネット 工 の 上 流 950m 地 点 に 設 置 して いるワイヤセンサが 切 断 され 連 動 してい る 土 石 流 警 報 装 置 が 作 動 した 2.1 土 石 流 の 発 生 誘 因 ( 降 雨 状 況 ) アンカレッジ アンカレッジ 常 願 寺 川 上 流 部 の 雨 量 観 測 所 の 位 置 を 図 -2に 示 す 土 石 流 発 生 前 後 の 累 計 降 水 量 図 -1 ワイヤネット 工 の 構 造 と 10 分 間 降 水 量 は 図 -3および 図 -4のとおりであった 8 月 26 日 16 時 ~ 17 時 の 時 間 雨 量 は 多 枝 原 上 流 雨 量 観 測 所 で 3mm 多 枝 原 谷 の 源 頭 部 に 位 置 する 標 高 2,530m の 五 色 ヶ 原 雨 量 観 測 所 で 1mm を 観 測 し 多 枝 原 谷 周 辺 では 目 立 った 降 雨 がなかった その 後 の 17 時 ~ 18 時 には 多 枝 原 上 流 で 38mm 五 色 ヶ 原 で 42mm を 記 録 し 他 の 雨 量 観 測 所 では 15mm 以 下 であったことから 多 枝 原 谷 流 域 周 辺 で 局 所 的 集 中 豪 雨 があったものと 推 察 される さらに 10 分 間 降 水 量 でみてみると 17 時 0 ~ 10 分 間 に 多 枝 原 上 流 で 15.5mm 五 色 ヶ 原 で 10mm 17 時 10 ~ 20 分 間 には 多 枝 原 上 流 で 7.5mm 五 色 ヶ 原 で 13mm を 記 録 して おり この 時 間 帯 の 降 雨 が 誘 因 となって 土 石 流 が 発 生 したものと 考 えられる 2.2 土 石 流 の 性 状 土 石 流 の 捕 捉 過 程 については ワイヤネット 雑 穀 工 の 下 流 右 岸 に 設 置 している 監 視 カメラで 捉 え 常 願 寺 川 千 寿 ヶ 原 られ 土 石 流 の 性 状 について 以 下 の 知 見 を 得 る ことができた 小 見 松 尾 峠 水 谷 湯 川 樺 平 多 枝 原 谷 五 色 ヶ 原 真 多 枝 原 上 流 川 1 土 石 流 の 流 下 に 先 行 して 河 道 埋 塞 等 によ 岩 井 谷 祐 延 る 流 量 の 減 少 が 確 認 されていないことから 渓 流 不 安 定 土 砂 や 渓 岸 浸 食 によって 生 産 され 太 郎 平 た 土 石 が 洪 水 流 に 巻 き 込 まれながら 流 下 た ものと 考 えられる 図 -2 雨 量 観 測 所 の 位 置 累 計 降 水 量 (mm) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 五 色 ヶ 原 水 谷 多 枝 原 上 流 樺 平 10 時 11 時 12 時 13 時 14 時 15 時 16 時 17 時 18 時 19 時 20 時 平 成 15 年 8 月 26 日 18 16 14 10 分 間 降 水 量 (mm) 12 10 8 6 4 2 0 多 枝 原 上 流 五 色 ヶ 原 土 石 流 発 生 (17:15 ワイヤセンサ 切 断 ) 30-40 分 40-50 分 50-60 分 0-10 分 10-20 分 20-30 分 30-40 分 16 時 17 時 図 -3 累 計 降 水 量 図 -4 10 分 間 降 水 量 -2-
2 土 石 流 は 高 濃 度 の 土 石 流 体 として 連 続 的 に 流 下 する 砂 礫 型 土 石 流 に 分 類 される 3 土 石 流 に 顕 著 なフロント 部 ( 段 波 部 ) は 観 測 されなかった 最 大 波 高 を 吊 索 間 隔 1.1m から 推 定 すると 設 計 時 想 定 の 1m 程 度 であった 4 流 下 した 土 石 流 は ワイヤネット 工 に 捕 捉 されることによって 土 石 と 流 水 とに 分 離 され 急 速 にその 勢 いが 殺 がれた 5 土 石 流 は 河 道 中 央 部 が 盛 り 上 がった 状 態 で 堆 積 し 土 石 流 末 期 の 流 水 は 河 道 の 両 岸 を 流 下 した 6 多 枝 原 谷 を 流 下 した 土 石 流 は ワイヤセンサが 切 断 された 4 分 後 の 17 時 19 分 ころに ワイヤネット 工 に 達 したと 目 すと その 流 下 速 度 は 毎 秒 4.0m 程 度 ( 時 速 14km)と 類 推 され 設 計 流 速 に 近 似 していた 土 石 流 の 流 下 継 続 時 間 は 10 分 間 程 であった 3. 土 石 流 堆 積 物 調 査 ワイヤネット 工 による 土 石 流 の 捕 捉 状 況 を 写 真 -2に 示 す ワイヤネット 工 は 満 砂 状 態 になり 測 量 の 結 果 捕 捉 した 土 石 は 約 3,800m3であった 図 -5はワイヤネット 工 に 捕 捉 された 土 石 流 の 表 層 礫 の 粒 度 分 布 である 同 図 から 捕 捉 最 下 段 の 先 端 に 位 置 する1の 巨 礫 の 最 大 礫 径 ( 95 % 礫 径 )は dmax = 0.8m で 設 計 時 想 定 礫 径 ( dmax = 0.8m)と 同 程 度 であり 2~4の dmax = 0.6m より 大 きく 土 石 流 発 生 初 期 は 後 続 の 土 石 流 に 比 べて 礫 経 が 大 きいことがわかった 100 90 4 3 2 1 累 積 (%) 80 70 60 50 40 30 20 10 4 3 2 全 体 1 4 dmax=0.6m(2 3 4) dmax=0.7m( 全 体 ) dmax=0.8m(1) 3 2 1 0 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 礫 径 (m) 1.3 1.4 写 真 -2 先 端 部 での 捕 捉 状 況 図 -5 先 端 部 の 粒 度 分 布 4. 土 石 流 の 捕 捉 効 果 と 課 題 4.1 捕 捉 効 果 写 真 -3にワイヤネット 工 による 土 石 流 の 捕 捉 前 後 の 状 況 を 示 す 今 回 の 土 石 流 では ワイヤネット 工 がほぼ 満 砂 状 態 になり ワイヤネット 工 からの 溢 流 や 透 過 ネット 部 からの 抜 け 出 しはわずかであり ワイヤネット 工 にも 大 きな 損 傷 がなか った また ワイヤネット 工 設 置 後 の 10 箇 月 間 の 小 出 水 で 流 出 した 土 砂 は ワイヤネッ ト 工 に 捕 捉 されることなく 下 流 に 流 下 し 土 石 流 捕 捉 用 の 空 容 量 は 常 時 確 保 され 流 れの 連 続 性 も 確 保 されていた -3-
捕 捉 前 捕 捉 後 写 真 -3 土 石 流 の 捕 捉 前 後 4.2 多 枝 原 谷 におけるワイヤネット 工 の 課 題 今 回 の 土 石 流 で 以 下 のような 課 題 が 明 らかになった アンカレッジ 1 アンカレッジそのものに 異 常 は 観 られなかったものの 捕 捉 した 土 石 流 の 負 荷 で 下 流 に 膨 らんだワイヤネット 工 と アンカレッジとの 間 に 隙 間 が 生 じ 渓 岸 部 が 洗 掘 された ( 写 真 -4) 今 後 アンカレッジ 前 面 の 洗 掘 防 止 対 策 を 講 じ る 必 要 がある 2 満 砂 状 態 のまま 放 置 し 次 期 出 水 時 に 同 様 な 土 石 流 が 発 生 すると 土 石 流 はワイヤネット 工 を 溢 流 し 砂 防 工 事 の 写 真 -4 アンカレッジ 前 面 の 洗 掘 状 況 工 程 等 に 影 響 をおよぼすことから 捕 捉 土 砂 は 早 急 に 取 り 除 くこととした 除 石 作 業 は ワイヤネット 工 の 上 流 側 からバックホウ( 0.6m3)を 用 いて 行 ったところ 3,250m3( 捕 捉 土 砂 の 85 %)はネットを 取 り 外 すことなく 除 石 で きたが ネットの 先 端 部 に 捕 捉 されている 残 り 15 %の 巨 礫 群 は 重 機 のアームがネッ トに 接 触 し 除 石 することができなかった 小 型 バックホウの 導 入 も 検 討 したが 負 荷 の 低 減 によるネットの 跳 ね 返 りが 懸 念 され 安 全 管 理 の 面 から 断 念 した ワイヤネット 工 の 形 状 は 除 石 後 においても 取 り 残 した 巨 礫 の 重 さで 孕 んだままとなっており 今 後 ワイヤネット 工 への 負 荷 を 軽 減 するとともに 最 大 限 の 空 き 容 量 確 保 や 土 石 流 捕 捉 時 に おける 衝 撃 力 緩 和 の 点 から さらに 除 石 率 を 上 げる 方 策 を 検 討 する 必 要 がある あとがき 今 回 発 生 した 土 石 流 をカメラ 映 像 で 捉 えたり またワイヤネット 工 で 捕 捉 したことによ り 今 まで 知 られていなかった 多 枝 原 谷 の 土 石 流 の 性 状 が 明 らかとなり 今 後 の 砂 防 施 設 設 計 や 砂 防 工 事 の 安 全 確 保 に 役 立 つものと 期 待 している また ワイヤネット 工 が 土 石 流 を 捕 捉 し その 効 果 が 実 証 されたが 渓 岸 部 の 洗 掘 や 除 石 方 法 など 検 討 すべき 課 題 も 残 った 今 後 は 工 夫 を 施 し ワイヤネット 工 の 有 用 性 を 活 かしていきたいと 考 えている 本 報 告 をまとめるにあたっては ワイヤネット 工 開 発 メーカの 協 力 を 得 ている 深 謝 す る -4-
C pr C i 1 r T n %% % 15,000 H11
w/c 5,000 20,000 LCC RCPC LCC RC
12 No 1 2 3 4 5 No 1 2 3 4 VOL.19.NO.1.1997