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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

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平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定


平成24年度 業務概況書

定 性 的 情 報 財 務 諸 表 等 1. 連 結 経 営 成 績 に 関 する 定 性 的 情 報 当 第 3 四 半 期 連 結 累 計 期 間 の 業 績 は 売 上 高 につきましては 前 年 同 四 半 期 累 計 期 間 比 15.1% 減 少 の 454 億 27 百 万 円 となり

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1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

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[2] 控 除 限 度 額 繰 越 欠 損 金 を 有 する 法 人 において 欠 損 金 発 生 事 業 年 度 の 翌 事 業 年 度 以 後 の 欠 損 金 の 繰 越 控 除 にあ たっては 平 成 27 年 度 税 制 改 正 により 次 ページ 以 降 で 解 説 する の 特 例 (

(2) 実 務 上 の 取 扱 い 減 価 償 却 の 方 法 は 会 計 方 針 にあたるため その 変 更 は 本 来 会 計 方 針 の 変 更 として 遡 及 適 用 の 対 象 と なります しかしながら 減 価 償 却 方 法 の 変 更 については 会 計 方 針 の 変 更 を 会

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続 に 基 づく 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 再 認 定 を 受 けていること ) c) 会 社 更 生 法 に 基 づき 更 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなされている 者 又 は 民 事 再 生 法 に 基 づき 再 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなさ

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リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

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ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

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年 金 払 い 退 職 給 付 制 度 における 年 金 財 政 のイメージ 積 立 時 給 付 時 給 付 定 基 (1/2) で 年 金 を 基 準 利 率 で 付 利 給 付 定 基 ( 付 与 利 の ) 有 期 年 金 終 身 年 金 退 職 1 年 2 年 1 月 2 月 ( 終 了 )

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注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

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4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 新 規 社 ( 社 名 ) 除 外 社 ( 社 名 ) (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の

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第4回税制調査会 総4-1

Transcription:

事 例 研 究 中 間 レポート 消 費 者 金 融 市 場 の 経 済 分 析 経 済 政 策 2 年 石 渡 慧 一 経 済 政 策 2 年 大 口 正 隆

要 旨 2006 年 の 最 高 裁 判 決 を 機 に 消 費 者 金 融 大 手 各 社 が 貸 付 金 利 および 貸 付 残 高 を 抑 制 して いる その 理 由 としては 2006 年 からの 貸 金 業 法 改 正 内 容 である 総 量 規 制 と 上 限 金 利 の 引 き 下 げが 考 えられる 消 費 者 金 融 サービスの 需 要 者 側 と 供 給 者 側 の 間 に 情 報 の 非 対 称 性 が 存 在 すると 個 人 の 消 費 行 動 を 最 適 化 できないため 行 政 による 市 場 介 入 の 意 義 が 生 じる そのような 介 入 を 正 当 化 するためには 消 費 者 金 融 市 場 が 完 全 競 争 市 場 であるか 否 か 分 析 す る 必 要 がある 数 千 社 という 企 業 の 数 や 2006 年 以 降 ( 上 限 金 利 の 実 質 的 な 引 き 下 げ)か ら 供 給 量 が 減 少 していることを 根 拠 に 完 全 競 争 市 場 であるとの 主 張 が 見 受 けられる しか し 貸 出 量 縮 小 の 理 由 として 総 量 規 制 が 一 人 あたりの 貸 出 量 を 減 少 させたことや そもそ もの 貸 出 主 体 の 総 数 が 減 少 したこと 消 費 者 金 融 企 業 が 情 報 ネットワークを 活 用 すること でサブプライム 層 を 排 除 したことなども 考 えられる よって 上 限 金 利 によって 貸 出 量 が 減 少 したことのみを 理 由 に 消 費 者 金 市 場 が 完 全 競 争 市 場 かどうかを 判 断 することは 妥 当 で なく 更 なる 実 証 分 析 が 必 要 である また 不 法 なヤミ 金 融 の 動 向 についても 現 状 を 十 分 に 把 握 した 上 で 理 論 との 整 合 性 を 確 認 するための 実 証 分 析 が 必 要 である 以 上 のようなこれまでの 現 状 分 析 をもとに 今 後 の 分 析 における 重 点 を 置 くべき 論 点 と して 以 下 の 三 点 が 挙 げられる (1) 消 費 者 金 融 市 場 が 完 全 競 争 市 場 であるか 否 かについての 分 析 (2) 消 費 者 金 融 市 場 余 剰 分 析 のための 需 給 曲 線 の 導 出 (3)ヤミ 金 融 と 改 正 貸 金 業 法 との 関 係 についての 実 証 分 析 1 章 序 論 2006 年 に 最 高 裁 における みなし 弁 済 についての 判 決 2010 年 の 改 正 貸 金 業 法 など 司 法 及 び 行 政 の 場 での 消 費 者 金 融 を 取 り 巻 く 環 境 は 大 きな 変 化 を 迎 えている メディアでの 報 道 にあったように 多 重 債 務 問 題 やそれに 付 随 する 悪 質 な 取 り 立 て それらと 対 照 的 で ある 消 費 者 金 融 業 界 の 利 益 率 の 高 さなどがクローズアップされ 社 会 問 題 となっていた このことを 受 けて 司 法 と 行 政 がイニシアチブをとって 対 応 したといえる しかしながら このような 一 方 的 な 見 方 で 消 費 者 金 融 市 場 を 捉 えることは 適 切 ではない 実 際 に 実 質 的 に 最 高 裁 判 決 によってグレーゾーン 金 利 での 貸 出 が 実 質 的 に 不 可 能 になった 後 は 消 費 者 金 融 業 界 は その 貸 出 を 激 減 させ 金 融 本 来 の 機 能 である 資 金 の 融 通 という 役 割 を 果 たせ ているかどうかは 疑 わしくなり また 貸 出 ができなくなった 需 要 者 が 違 法 な 市 場 つまり 闇 金 融 にアクセスする 可 能 性 についても 指 摘 されていて これらの 公 的 な 主 体 の 取 組 みが 一 概 に 正 しかったどうかの 判 断 は 難 しい よって 本 稿 では 消 費 者 金 融 市 場 を 経 済 学 的 モ デルに 依 拠 しながら 分 析 することで 改 正 貸 金 業 法 を 改 めて 位 置 づけてみることを 目 的 と する 2

本 稿 の 構 成 は 以 下 のようになる 2 章 構 成 1 章 序 論 2 章 構 成 3 章 消 費 者 金 融 市 場 の 背 景 4 章 消 費 者 金 融 サービスのミクロ 経 済 学 的 位 置 づけ 5 章 消 費 者 金 融 市 場 の 分 析 6 章 需 給 曲 線 における 上 限 金 利 規 制 7 章 ヤミ 金 融 及 び 多 重 債 務 問 題 8 章 これからの 研 究 3 章 では 消 費 者 金 融 業 界 のデータや 行 政 の 取 り 組 みを 振 り 返 る 4 章 と 5 章 では 消 費 者 金 融 とその 市 場 を 経 済 学 的 に 俯 瞰 する 6 章 では 上 限 金 利 という 規 制 を 需 給 曲 線 で 位 置 づ け 正 当 化 できるか 検 討 する 7 章 では 消 費 者 金 融 行 政 を 見 直 すうえで 欠 かせない 闇 金 融 市 場 を 概 観 する 8 章 では これからの 研 究 の 方 向 性 を 述 べ 結 びとする 3

3 章 消 費 者 金 融 市 場 の 背 景 本 章 では 以 降 の 分 析 に 役 立 てるための 消 費 者 金 融 市 場 についての 背 景 を 確 認 する 2006 年 12 月 に 国 会 の 全 会 一 致 で 成 立 公 布 された 改 正 貸 金 業 法 は 段 階 的 な 施 行 を 経 て 2010 年 6 月 18 日 に 全 面 的 に 施 行 された その 改 正 目 的 は 近 年 大 きな 社 会 的 問 題 となって いる 返 済 が 事 実 上 不 可 能 となってしまった 多 重 債 務 者 数 の 抑 制 ならびにその 主 因 だと 考 えられている 消 費 者 金 融 業 者 による 過 剰 貸 付 の 抑 制 である 2006 年 に 最 高 裁 判 決 によって 利 息 制 限 法 の 所 定 の 金 利 を 超 える 金 利 で 支 払 った 利 息 は 契 約 時 の 意 思 に 関 わらず 債 務 者 は 消 費 者 金 融 企 業 から 返 還 を 要 求 することが 可 能 になっ た この 過 程 で 債 務 者 は 弁 護 士 を 通 じて 消 費 者 金 融 企 業 との 訴 訟 が 多 くなった この 訴 訟 は 過 払 い 金 訴 訟 として 社 会 現 象 になった 次 は 近 年 の 主 要 各 社 の 平 均 金 利 推 移 である 図 1 主 要 消 費 者 金 融 企 業 (5 社 )の 平 均 約 定 金 利 の 推 移 28 27 26 % 25 24 23 22 21 20 アコム プロミス アイフル 武 富 士 三 洋 信 販 平 均 19 18 17 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 注 1 ( 出 典 : 各 社 有 価 証 券 報 告 書 より 作 成 ) グラフのデータは 平 均 金 利 であり 実 際 に 取 引 されている 貸 出 金 利 の 中 には 上 限 金 利 と 同 程 度 の 金 利 がある 図 1 にもあるように 2006 年 の 最 高 裁 の 判 決 後 である 2008 年 頃 から 金 利 の 引 き 下 げが 行 われているのは 明 らかである この 背 景 には 大 手 を 初 めとした 消 費 者 金 融 各 社 は 過 払 い 金 訴 訟 のコストを 考 慮 したと 考 えられる 時 期 を 同 じくして 主 要 消 費 者 金 融 各 社 の 貸 付 残 高 合 計 も 減 少 傾 向 にある 4

図 2 主 要 消 費 者 金 融 企 業 (5 社 )の 消 費 者 向 け 無 担 保 貸 付 残 高 の 推 移 8,000,000 単 位 : 百 万 円 7,000,000 6,000,000 5,000,000 4,000,000 3,000,000 2,000,000 三 洋 信 販 武 富 士 アイフル プロミス アコム 1,000,000 0 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 ( 出 典 : 各 社 有 価 証 券 報 告 書 より 作 成 ) この 傾 向 の 背 景 には 二 つの 原 因 があると 考 えられる 一 つ 目 は 今 回 の 上 限 金 利 以 外 の 改 正 貸 金 業 法 によって 対 象 となった 総 量 規 制 である この 規 制 の 下 では 個 人 の 需 要 者 は 原 則 としてその 貸 出 量 が 年 収 等 の 三 分 の 一 までに 制 限 されることになった それゆえに 一 人 あたりの 貸 出 量 が 減 少 した 二 つ 目 は 実 質 的 な 上 限 金 利 変 更 後 に 消 費 者 金 融 各 社 がその 貸 出 を 返 済 リスクが 少 ない プライム 層 に 限 定 し 始 めたことが 考 えられる これは 時 期 的 に 2006 年 あるいは 2010 年 と 必 ずしも 時 期 を 同 じにするものではなく 2000 年 初 期 から 銀 行 系 個 人 向 けローン 企 業 が その 個 人 所 得 に 関 する 情 報 ネットワークを 活 用 して プライム 層 に 限 定 した 消 費 者 金 融 サ ービスに 参 入 し 始 めたことや 非 銀 行 系 消 費 者 金 融 が 貸 出 量 や 返 済 履 歴 などの 情 報 データベ ースの 構 築 1 によって 同 様 にそのサービスをプライム 層 にシフトしていったことによるも のである 結 果 として 返 済 リスクが 低 いサブプライム 層 が 消 費 者 金 融 サービスから 排 除 されるということになった 以 上 のように 消 費 者 金 融 業 界 は 司 法 の 判 断 や 行 政 の 施 策 新 しいプレーヤーの 参 入 ネットワーク 構 築 などによって 著 しく 変 化 している 1 平 野 (2003) 5

4 章 消 費 者 金 融 サービスのミクロ 経 済 学 的 位 置 づけ 本 章 では 消 費 者 金 融 サービスに 対 する 規 制 の 意 義 を 検 討 するべく 消 費 者 金 融 サービ スをミクロ 経 済 学 的 観 点 から 位 置 づけなおす 晝 間 (2001)によれば 消 費 者 金 融 は 個 人 の 制 約 付 き 消 費 を 超 えて 望 ましい 消 費 の 時 間 的 パターンを 選 択 することを 可 能 にする ただし その 前 提 には 自 己 利 益 最 大 化 と 合 理 的 思 考 がある 返 済 リスクに 関 して 不 確 実 性 があったとしても 消 費 者 金 融 サービスは 個 人 の 消 費 行 動 を 最 適 化 できる なぜなら 情 報 の 対 称 性 という 仮 定 が 満 たされる つまり 貸 出 需 要 者 と 消 費 者 金 融 がその 返 済 リスクの 不 確 実 性 について 同 程 度 観 察 可 能 であるならば 貸 出 金 利 にリスクプレミアムを 上 乗 せたしたうえで 貸 出 が 行 われるからである 一 方 で 情 報 の 対 称 性 が 満 たされないならば 消 費 者 金 融 サービスは 個 人 の 消 費 行 動 を 最 適 化 できるとは 限 らない なぜなら 逆 選 択 とモラルハザードの 問 題 が 起 きるからであ る 双 方 とも 消 費 者 金 融 市 場 を 縮 小 させたりするなど 市 場 を 歪 める 効 果 を 持 つ 2 逆 選 択 とモラルハザードの 問 題 に 対 しては それぞれ 自 己 選 択 と 信 用 割 当 という 手 段 が 消 費 行 動 の 最 適 化 のためには 適 切 である なぜなら ハイリスク ハイリターンとローリ スク ローリタンという 2 つのサービスの 選 択 肢 を 選 ばせる 自 己 選 択 の 下 では プライム 層 及 びサブプライム 層 の 各 々が 適 切 にサービスを 選 ぶことが 期 待 できる 一 方 で 信 用 割 当 では 需 要 者 の 貸 出 限 度 額 を 設 定 することで モラルハザードによる 非 効 率 をある 程 度 緩 和 できると 考 えられるからだ 後 者 の 信 用 割 当 は 改 正 貸 金 業 法 の 総 量 規 制 と 同 様 のものであると 言 え そこに 行 政 に よる 規 制 の 意 義 がある 前 者 の 自 己 選 択 に 関 しては 以 前 より 一 つの 消 費 者 金 融 企 業 の 中 でも 高 金 利 の 無 担 保 融 資 や 低 金 利 の 担 保 融 資 を 行 っていることに 加 えて 2000 年 初 期 より 参 入 し 始 めた 銀 行 系 消 費 者 金 融 の 情 報 ネットワークや 非 銀 行 系 のデータベースによって 情 報 の 非 対 称 性 がある 程 度 最 小 化 でき それに 応 じて 逆 選 択 という 問 題 も 解 消 できている 可 能 性 がある 2 詳 細 は 晝 間 (2001)に 譲 る 6

5 章 消 費 者 金 融 市 場 の 分 析 3 章 で 述 べたように 消 費 者 金 融 業 界 は 銀 行 系 消 費 者 金 融 の 参 入 などによって 劇 的 な 変 化 を 迎 えている このことがどのように 市 場 の 貸 出 金 利 に 影 響 を 与 えているかを 検 討 する 平 瀬 (2003)によれば 消 費 者 金 融 市 場 にはセパレーティング 均 衡 がある 以 下 がその ことを 満 たす 前 提 である (1)Eπ! = q! h + q! 1 h R! I Eπ! : プーリング 均 衡 における 期 待 利 益 q! :プライム 層 の 返 済 確 率 h: 市 場 におけるプライム 層 の 割 合 q! : サブプライム 層 の 返 済 確 率 1 h : 市 場 におけるサブプライム 層 の 割 合 R! : プーリング 均 衡 金 利 I: 金 融 市 場 における 貸 出 金 利 この(1)の 背 景 には 消 費 者 金 融 企 業 が 適 切 にプライム 層 とサブプライム 層 が 区 別 できる ことができていないということがある プライム 層 とサブプライム 層 の 返 済 確 率 にそれら の 市 場 における 割 合 を 加 重 平 均 したものに 応 じて 単 一 の 均 衡 金 利 を 設 定 している (2)Eπ!! = q! R!! I C (3)Eπ!! = q! R!! I (4)Eπ! = heπ!!! + 1 h Eπ! Eπ!! : セパレーティング 均 衡 におけるプライム 層 を 対 象 とした 期 待 利 益 R!! : プライム 層 を 対 象 とした 均 衡 金 利 C:プライム 層 とサブプライム 層 を 区 別 するための 審 査 費 用 Eπ!! : セパレーティング 均 衡 におけるサブプライム 層 を 対 象 とした 期 待 利 益 R!! : サブプライム 層 を 対 象 とした 均 衡 金 利 Eπ! : セパレーティング 均 衡 における 全 体 の 期 待 利 益 (2)~(4)の 背 景 には 審 査 費 用 C を 負 担 すれば 消 費 者 金 融 企 業 はプライム 層 とサブ プライム 層 を 区 別 でき 層 に 応 じた 均 衡 金 利 を 設 定 することができるという 事 実 がある これがセパレーティング 均 衡 を 生 じさせている 消 費 者 金 融 市 場 において プーリング 均 衡 あるいはセパレーティング 均 衡 が 生 じるかは 以 下 の 前 提 を 成 り 立 つかどうかである! 5 q! R! > C + 1 (5)が 成 り 立 つならば プーリング 均 衡 ではなくセパレーティング 均 衡 が 生 じる なぜなら 審 査 費 用 と 調 達 金 利 との 和 というコストよりもプーリング 均 衡 における 均 衡 金 利 にプライ 7

ム 層 の 返 済 確 率 を 掛 けたものが 大 きいならば 消 費 者 金 融 企 業 はより 多 くの 需 要 者 を 獲 得 するためにより 小 さい 金 利 を 追 及 して セパレーティング 均 衡 の 金 利 を 望 み その 結 果 セ パレーティング 均 衡 に 移 行 するからである 特 筆 すべきことは 2 章 で 述 べたように 審 査 費 用 C が 近 年 では 減 少 したということである これによって よりセパレーティング 均 衡 が 生 じやすくなると 想 定 できる 政 策 的 意 義 として 指 摘 すべき 点 としては このセパレーティング 均 衡 においては 上 限 金 利 という 規 制 は 非 効 率 性 を 生 む 可 能 性 がプーリング 均 衡 より 大 きいということである なぜなら サブプライム 層 における 均 衡 金 利 が 上 限 金 利 より 高 ければ サブプライム 層 を 対 象 とした 消 費 者 金 融 市 場 が 存 在 しないことを 意 味 することである 2 章 で 述 べたように このことはサブプライム 層 の 消 費 行 動 パターンを 最 適 化 できないことを 意 味 する 8

6 章 需 給 曲 線 における 上 限 金 利 規 制 6 章 では セパレーティング 均 衡 によって 生 ずる 2 つの 市 場 に 関 わらず いかなる 状 況 に おいて 規 制 が 望 まれるかを 分 析 する 多 数 のプレーヤーが 存 在 する 完 全 競 争 市 場 においては 上 限 金 利 という 価 格 規 制 は 非 効 率 を 生 ずるので 望 ましくない 図 3 完 全 競 争 市 場 における 均 衡 金 利 (r: 金 利 d: 貸 出 需 要 量 s: 貸 出 供 給 量 r1: 均 衡 金 利 q1: 均 衡 量 S: 供 給 曲 線 D: 需 要 曲 線 ) 図 4 完 全 競 争 市 場 における 上 限 金 利 (r2: 上 限 金 利 q2: 上 限 金 利 の 下 での 均 衡 量 ) 上 記 2 つの 図 が 示 すように 図 3 と 比 較 して 図 4 では 灰 色 部 分 の 余 剰 損 失 が 生 じてい るので 上 限 金 利 は 望 ましくないと 言 える 一 方 で 独 占 ( 寡 占 ) 市 場 における 上 限 金 利 の 効 果 を 示 す 図 は 以 下 のようになる 9

図 5 独 占 ( 寡 占 ) 市 場 における 上 限 金 利 (r3: 独 占 ( 寡 占 ) 市 場 での 均 衡 金 利 r4: 上 限 金 利 q3: 独 占 ( 寡 占 ) 市 場 での 均 衡 量 q4: 上 限 金 利 での 均 衡 量 ) 図 5 から 分 かることは 独 占 ( 寡 占 ) 市 場 における 上 限 金 利 は 灰 色 部 分 の 余 剰 を 増 加 す るので 望 ましいと 言 える 上 限 金 利 の 必 要 性 を 検 討 するにあたっての 論 点 は 消 費 者 金 融 市 場 が 完 全 競 争 市 場 か 否 かが 焦 点 となる 日 本 の 研 究 者 には 平 瀬 (2003)のように 数 千 社 の 消 費 者 金 融 企 業 が 存 在 することを 根 拠 に 消 費 者 金 融 市 場 が 完 全 競 争 市 場 であることを 主 張 している 一 方 で Lawrence(1991)のように 日 本 の 消 費 者 金 融 とほぼ 同 様 の 機 能 を 持 つクレジットサービス 市 場 において 数 千 社 の 企 業 の 存 在 に 関 わらず 寡 占 の 存 在 を 指 摘 している 者 もいる これ らの 正 否 を 確 かめるためには 各 々の 企 業 の 利 潤 や 費 用 などの 変 化 を 詳 細 に 分 析 する 必 要 がある 大 竹 (2007)は 別 の 観 点 から 消 費 者 金 融 市 場 が 完 全 競 争 市 場 であったと 主 張 している なぜなら 上 限 金 利 が 実 質 的 に 適 用 され 始 めた 2006 年 以 降 から 供 給 量 が 減 少 していて その 減 少 は 完 全 競 争 市 場 においてのみ 起 こりうるものである 考 えているからである 図 4 でいうところの(q1-q2) 分 の 貸 出 量 の 減 少 がそれにあたる しかしながら この 見 方 は 必 ずしも 適 切 であるとは 言 えない なぜなら 他 の 要 因 で 貸 出 量 が 減 少 したとも 考 えられるからである 例 えば 改 正 貸 金 業 法 の 総 量 規 制 が 一 人 あた りの 貸 出 量 を 減 少 させたことや 過 払 い 金 訴 訟 のコストで 多 くの 消 費 者 金 融 企 業 が 倒 産 し そもそもの 貸 出 供 給 主 体 が 減 少 したこと 消 費 者 金 融 企 業 がネットワークなどによって 貸 出 サービスをプライム 層 に 限 定 し 始 め サブプライム 層 を 排 除 したことなどである それ らのことを 指 し 示 す 図 は 以 下 である 10

図 6 供 給 曲 線 のシフトを 考 慮 した 寡 占 市 場 における 上 限 金 利 (s : 変 化 した 供 給 曲 線 q5: 新 しい 均 衡 量 ) 図 6 においても(q3-q5) 分 の 貸 出 量 が 減 少 していることが 分 かる よって 上 限 金 利 によ って 貸 出 量 が 減 少 したことを 理 由 に 消 費 者 金 市 場 が 完 全 競 争 市 場 であるか 否 かを 判 断 す ることは 必 ずしも 妥 当 であるとは 言 えない 消 費 者 金 融 市 場 の 特 性 については 更 なる 分 析 が 必 要 である 11

7 章 ヤミ 金 融 及 び 多 重 債 務 問 題 貸 金 業 法 改 正 の 影 響 で 正 規 の 消 費 者 金 融 市 場 が 縮 小 すると どこからも 資 金 を 借 りられ なくなったこれまでの 利 用 者 が 違 法 金 融 (ヤミ 金 融 )に 相 当 数 流 れ 違 法 金 融 市 場 が 拡 大 することが 様 々な 識 者 によって 予 測 されている 3 ここではそのメカニズムを 消 費 者 個 人 の 信 用 力 の 分 布 を 用 いて 説 明 する 消 費 者 個 人 の 信 用 力 と 消 費 者 金 融 の 金 利 を 正 規 分 布 に 基 づくものだと 仮 定 する 信 用 力 が 高 い 個 人 は 低 い 金 利 で 資 金 を 借 りることが 出 来 るが 信 用 力 が 低 い 個 人 は 高 い 金 利 でし か 資 金 を 調 達 出 来 ないと 考 える その 場 合 人 口 分 布 を P 金 利 水 準 を x とすると 信 用 力 の 分 布 P は 金 利 x に 対 して 正 規 分 布 の 関 数 P(x)と 表 わすことができる ピーク 金 利 は 最 も 利 用 者 の 多 い 金 利 帯 で 大 手 消 費 者 金 融 企 業 の 顧 客 層 だと 考 えられる 図 における 斜 線 で 塗 りつぶされた 領 域 は 上 限 金 利 を 設 定 することによって 正 規 の 金 融 業 者 から 借 り ることの 出 来 なくなった 信 用 力 の 低 い 利 用 者 の 分 布 である この 図 が 示 唆 することは ピ ーク 金 利 以 下 の 上 限 金 利 を 設 定 しない 限 り 上 限 金 利 が 低 くなればなるほど その 金 利 1 単 位 ごとの 影 響 力 は 増 すということである つまり 2000 年 の 出 資 法 改 定 ( 上 限 金 利 40.004%から 29.2%)よりも 今 回 の 貸 金 業 法 改 正 ( 上 限 金 利 29.2%から 20%)の 方 が 正 規 の 貸 金 業 者 から 借 りられなくなる 人 の 減 少 幅 が 大 きい 可 能 性 が 強 い そして 上 限 金 利 の 設 定 によって 資 金 を 調 達 出 来 なくなった 個 人 の 一 部 がヤミ 金 融 に 流 れることが 想 定 される 図 7 上 限 金 利 が 設 定 された 場 合 の 個 人 信 用 力 の 分 布 多 い 利 用 者 分 布 少 な い 金 利 低 い ピーク 金 利 A% 現 行 上 限 金 利 (20%) 上 限 金 利 により 金 融 機 関 が 融 資 出 来 なくなる 消 費 者 一 部 がヤミ 金 融 の 利 用 者 へ 金 利 高 い ( 出 典 : 堂 本 (2005)を 参 考 に 作 成 ) 警 視 庁 のデータからもヤミ 金 融 市 場 について 分 析 できる 警 視 庁 が 発 表 しているヤミ 金 3 堂 本 (2005) 他 12

融 事 犯 検 挙 状 況 によると 検 挙 事 件 数 および 検 挙 人 員 2007 年 度 をピークに 減 少 傾 向 が 見 ら れる また 検 挙 されることで 明 らかになった ヤミ 金 融 被 害 の 被 害 金 総 額 および 被 害 者 数 もおなじくしかし 手 口 の 巧 妙 化 複 雑 化 したことからより 水 面 下 で 犯 行 が 増 えている 可 能 性 があると 指 摘 している 先 行 研 究 もある 4 また 検 挙 数 は 警 視 庁 の 取 締 体 制 にも 大 き く 左 右 される 事 実 貸 金 法 改 正 に 伴 い 警 視 庁 は 生 活 経 済 対 策 管 理 官 を 設 置 するなど 5 取 締 体 制 を 強 化 している よ っ て 検 挙 数 の 2007 年 度 からの 増 加 傾 向 は 貸 金 法 改 正 によるものと 断 定 することはできない 図 8 ヤミ 金 融 事 犯 等 の 検 挙 状 況 の 推 移 1200 人 1000 600 500 件 800 400 600 400 300 200 検 挙 時 件 数 検 挙 人 員 200 100 0 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 0 ( 出 典 : 平 成 24 年 度 版 警 察 白 書 および 第 13 回 多 重 債 務 者 対 策 本 部 有 識 者 会 議 (2009 年 5 月 19 日 ) 警 視 庁 提 出 資 料 より 作 成 ) 注 1) ヤミ 金 融 事 犯 としては 出 資 法 違 反 事 件 及 び 貸 金 業 法 違 反 事 件 並 びに 貸 金 業 に 関 連 し た 恐 喝 暴 行 詐 欺 等 の 事 件 を 計 上 している 注 2) 被 害 人 員 等 には 商 金 利 貸 し 付 けに 係 る 借 入 者 恐 喝 の 被 害 者 等 を 計 上 している 注 3) 被 害 額 等 には 商 金 利 に 係 る 貸 付 金 額 恐 喝 の 被 害 額 等 を 計 上 している 次 は 金 融 庁 データからの 分 析 である 金 融 庁 がまとめた 金 融 庁 財 務 局 都 道 府 県 に 寄 せられた 無 登 録 業 者 に 係 る 苦 情 等 受 付 件 数 は 項 目 が 設 けられ 集 計 が 始 まった 2003 年 度 をピークに 減 少 傾 向 にある 法 改 正 に 前 後 して 相 談 件 数 は 減 少 しているが 全 苦 情 中 に 占 める 割 合 はやや 上 昇 傾 向 にある 4 違 法 金 融 の 実 態 -ヤミ 金 相 談 サイトのテキスト 分 析 - 早 稲 田 大 学 消 費 者 金 融 サービス 研 究 所 (2009) 5 平 成 22 年 度 警 察 白 書 13

図 9 金 融 庁 財 務 局 都 道 府 県 に 寄 せられた 貸 金 業 者 に 係 る 苦 情 のうち 無 登 録 業 者 に 係 るもの 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 40.0% 35.0% 30.0% 25.0% 20.0% 15.0% 10.0% 5.0% 無 登 録 業 者 に 係 るもの ( 件 ) 全 苦 情 中 に 占 める 割 合 0 2003 2004 2005 2006 2007 2008 0.0% ( 出 典 : 金 融 庁 貸 金 業 関 係 統 計 資 料 より 作 成 ) 最 後 は 堂 下 (2011)の 論 文 再 拡 大 し 始 めたヤミ 金 融 市 場 - 国 民 保 護 の 視 点 から 改 正 貸 金 業 法 の 見 直 し 急 げ- 内 でヤミ 金 融 の 現 在 利 用 者 数 を 大 規 模 なアンケート 調 査 から の 分 析 である 推 計 結 果 は 2008 年 5 月 には 45 万 8000 人 2009 年 5 月 は 42 万 3000 人 直 近 の 2010 年 7 月 は 57 万 7000 人 であった 数 値 をまとめ 推 計 誤 差 を 考 慮 して( 信 頼 区 間 95%) 推 計 上 限 と 下 限 を 合 わせて 表 記 したのが 下 の 図 表 20 である 氏 は 2008 年 から 2009 年 にかけての 減 少 そして 2010 年 の 増 加 を 他 のアンケート 結 果 と 合 わせて 次 の 様 な 要 因 だと 分 析 している まず 貸 金 業 法 改 正 によって 借 り 入 れが 困 難 となった 資 金 需 要 者 は 知 人 や 親 族 からの 借 り 入 れで 資 金 を 賄 おうとした そのため 一 時 的 にヤミ 金 利 用 者 は 減 少 した しかし 次 第 にその 資 金 供 給 力 が 弱 まったため 資 金 需 要 者 はヤミ 金 の 利 用 を 進 める 他 なく 2010 年 の 調 査 においてヤミ 金 利 用 者 の 増 加 が 表 面 化 した というものであ る これは 資 金 需 要 者 のヤミ 金 融 利 用 が 増 加 していることを 示 唆 しているという 点 で 重 要 な 研 究 結 果 だと 考 えられる 14

図 10 ヤミ 金 現 在 利 用 者 数 ( 推 計 値 )の 推 移 700,000 600,000 577,000 500,000 400,000 458,000 423,000 推 計 下 限 300,000 200,000 ±0 推 計 上 限 100,000 0 2008 年 1 月 2009 年 1 月 2010 年 1 月 ( 出 典 : 堂 本 浩 (2011) 再 拡 大 し 始 めたヤミ 金 融 市 場 - 国 民 保 護 の 視 点 から 改 正 貸 金 業 法 の 見 直 し 急 げ- より 作 成 注 )アンケート 調 査 のサンプル 数 は 2008 年 調 査 82551 人 2009 年 調 査 93760 人 2010 年 調 査 93787 人 以 上 のデータからの 分 析 統 計 自 体 にバイアスが 存 在 するものがあり その 評 価 には 留 意 が 必 要 である これからの 分 析 には 多 重 債 務 者 のデータをより 正 確 に 集 めて ヤミ 金 融 と 上 限 金 利 との 関 係 性 を 実 証 的 に 検 証 していくことが 求 められる 8 章 これからの 研 究 本 章 では これからの 研 究 の 方 向 性 を 述 べて 本 稿 のむすびとする これからの 分 析 は 以 下 の 3 点 に 絞 られる (1) 消 費 者 金 融 市 場 が 完 全 競 争 市 場 であるか 否 かについての 分 析 (2) 消 費 者 金 融 市 場 余 剰 分 析 のための 需 給 曲 線 の 導 出 (3)ヤミ 金 融 と 改 正 貸 金 業 法 との 関 係 についての 実 証 分 析 (1)に 関 しては 消 費 者 金 融 各 社 の 財 務 諸 表 から 平 均 費 用 と 金 利 の 関 係 を 分 析 することによ って 分 析 する 気 を 付 けなければならない 点 としては プライム 層 に 対 するサービスかサ ブプライム 層 に 対 するサービスかによって 費 用 や 金 利 が 異 なることである また プロミ スなど 公 表 されているデータは 数 年 に 限 られていて 分 析 の 正 確 性 に 支 障 であると 思 われる ので 企 業 に 直 接 出 向 くなどして より 過 去 にさかのぼったデータを 入 手 する 必 要 がある (2)に 関 しては 消 費 者 金 融 市 場 が 独 占 ( 寡 占 ) 市 場 であった 場 合 は 市 場 における 貸 出 量 15

と 金 利 が 需 要 曲 線 上 の 点 となるので 容 易 に 求 めることができる 供 給 曲 線 は 調 達 金 利 や 審 査 費 用 を 合 計 したものとなる (1)と 同 様 に 各 社 のより 詳 細 なデータが 必 要 となる (3) ついては データの 性 質 上 統 計 が 取 りにくいが 総 務 省 の 多 重 債 務 者 のデータなどを 参 考 に 今 後 の 推 計 を 行 っていく 16

参 考 文 献 大 竹 文 雄 晝 間 文 彦 筒 井 義 郎 ほか 上 限 金 利 規 制 の 是 非 : 行 動 経 済 学 的 アプローチ 大 阪 大 学 経 済 研 究 所 2007 警 察 庁 第 13 回 多 重 債 務 者 対 策 本 部 有 識 者 会 議 警 察 庁 提 出 資 料 2012 年 8 月 6 日 <http://www.fsa.go.jp/singi/tajusaimu/siryou/20090519.html> 警 察 庁 平 成 23 年 中 における 生 活 経 済 事 犯 の 検 挙 状 況 等 について 2012 年 8 月 6 日 < http://www.npa.go.jp/safetylife/seikan25/h23_seikeijihan.pdf> 警 察 庁 平 成 24 年 警 察 白 書 2012 年 堂 本 浩 消 費 者 金 融 市 場 の 研 究 文 眞 堂 2005 年 堂 本 浩 改 正 貸 金 業 法 と い う 壮 大 な 社 会 実 験 ( 上 ) Kei 2010 年 2 月 号 堂 本 浩 再 拡 大 し 始 めたヤミ 金 融 市 場 - 国 民 保 護 の 視 点 から 改 正 貸 金 業 法 の 見 直 し 急 げ- 月 刊 公 明 2 月 号 2011 年 60-65 貢 日 本 貸 金 業 協 会 月 次 統 計 資 料 2012 年 8 月 7 日 < http://www.keieiken.co.jp/j-fsa/monthly_survey/index.html > 平 瀬 友 樹 銀 行 による 消 費 者 金 融 サービス 市 場 への 参 入 についての 分 析 京 都 大 学 経 済 論 叢 172 巻 第 1 号 2003 年 晝 間 文 彦 消 費 者 金 融 の 経 済 的 意 義 早 稲 田 大 学 消 費 者 金 融 サービス 研 究 所 2001 年 Lawrence M, Ausubel The Failure of Competition in the Credit Card Market The American Economic Review, volume1, Number1, 1991, pp50-81 早 稲 田 大 学 消 費 者 金 融 サービス 研 究 所 違 法 金 融 の 実 態 -ヤミ 金 相 談 サイトのテキスト 分 析 - 早 稲 田 大 学 消 費 者 金 融 サービス 研 究 所 ワーキングペーパー 2011 年 17