誤 解 の 多 い 法 解 釈 Q 通 算 5 年 になる 前 や 雇 用 契 約 期 間 の 満 了 前 に 契 約 を 打 ち 切 っても 大 丈 夫 ですか? 労 働 契 約 法 では 契 約 期 間 中 の 契 約 解 除 について 使 用 者 は 期 間 の 定 めのある 労 働 契 約



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ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

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誤 解 の 多 い 法 解 釈 Q 通 算 5 年 になる 前 や 雇 用 契 約 期 間 の 満 了 前 に 契 約 を 打 ち 切 っても 大 丈 夫 ですか? 労 働 契 約 法 では 契 約 期 間 中 の 契 約 解 除 について 使 用 者 は 期 間 の 定 めのある 労 働 契 約 について やむを 得 ない 事 由 がある 場 合 でなければ その 契 約 期 間 が 満 了 するまでの 間 において 労 働 者 を 解 雇 することがで きない と 定 めています 解 雇 権 濫 用 法 理 における 客 観 的 に 合 理 的 な 理 由 を 欠 き 社 会 通 念 上 相 当 であ る と 認 められる 場 合 よりも 狭 いと 解 されています つまり 契 約 期 間 内 の 契 約 解 除 は 通 常 の 解 雇 よりも 契 約 破 棄 がしにくいということです また 期 間 満 了 後 に 契 約 を 更 新 しない( 雇 止 め)の 場 合 ですが 雇 止 め 法 理 では 使 用 者 が 雇 止 めをすること が 客 観 的 に 合 理 的 な 理 由 を 欠 き 社 会 通 念 上 相 当 であると 認 められないとき は 雇 止 めが 認 められま せん 雇 止 め は 解 雇 を 意 味 するものではありませんが 有 期 労 働 契 約 者 であっても 解 雇 権 濫 用 法 理 が 類 推 適 用 ( 期 間 の 定 めのない 労 働 契 約 と 同 視 することが 社 会 通 念 上 相 当 )される 場 合 があり 解 雇 と 同 様 とみなさ れます つまり 正 当 な 理 由 がない 限 り 雇 止 めは 出 来 ま せん 法 の 趣 旨 から 考 えると そもそも 有 期 労 働 契 約 の 濫 用 を 防 止 し 安 定 した 無 期 労 働 契 約 への 転 換 を 促 進 す るのが 目 的 であるため このような 雇 止 めは 無 効 とさ れる 可 能 性 が 高 いでしょう Q それでは 更 新 の 際 に 給 料 を 下 げて 提 示 すれば 更 新 を 希 望 しないのではないですか? 今 回 の 法 改 正 は 正 社 員 に 転 換 することを 求 めるも のではありません しかし 転 換 後 の 労 働 条 件 につい ては 労 働 協 約 や 就 業 規 則 に 別 段 の 定 めがない 限 り 転 換 前 と 同 一 の 労 働 条 件 の 適 用 が 義 務 づけられてい ます 無 期 転 換 を 円 滑 に 進 める 観 点 から 望 ましくない からです 上 記 2 例 に 読 み 取 れるとおり 労 働 者 の 雇 い 入 れにあたり 反 復 更 新 を 意 識 した 有 期 契 約 と 無 期 契 約 の 間 にはさしたる 相 違 はないことがわかる 季 節 的 一 時 的 な 繁 忙 時 に 限 って 雇 用 す る 場 合 や 高 度 専 門 職 がプロジェクト 期 間 中 のみ 雇 用 される 場 合 などを 除 き 一 度 採 用 すると 人 員 整 理 に 関 しては 正 社 員 と 同 等 と 考 えなくてはならない 有 期 労 働 契 約 は 本 来 臨 時 的 一 時 的 な 業 務 を 行 わせるための 雇 用 形 態 であり 常 用 労 働 者 の 雇 入 に 適 用 することを 目 的 としていない それにもかかわらず 現 実 には 多 くの 企 業 が 常 用 的 業 務 に 就 かせることを 目 的 として 有 期 労 働 者 を 採 用 し 反 復 更 新 を 重 ね 都 合 の 良 いときに 契 約 を 打 ち 切 るケースが 散 見 された これに 伴 い 労 働 契 約 の 締 結 やその 更 新 契 約 期 間 満 了 に よる 雇 止 めに 際 しての 個 別 紛 争 が 増 加 し 今 般 の 労 働 契 約 法 の 改 正 に 至 っている インターネットの 普 及 により 労 働 者 側 でも 法 規 に 関 しての 知 見 を 備 える 者 が 増 え トラブ ルが 法 的 な 労 使 争 議 にまで 発 展 しやすくなっている 今 回 の 法 改 正 はこの 流 れを 大 いに 助 長 す るものであることは 議 論 を 待 たない ひとたび 労 使 トラブルが 起 きてしまうと 経 営 者 は 解 決 のために 相 当 な 労 力 と 時 間 場 合 によっては 金 銭 の 支 出 を 余 儀 なくされる 今 後 はこれまで 以 上 にトラブルの 予 防 に 重 点 を 置 いた 対 策 が 必 要 である 2 / 5

中 小 企 業 が 取 るべき 対 応 この 法 改 正 に 対 して 中 小 企 業 経 営 者 はいかに 対 応 すべきであろうか 筆 者 は 特 に 重 要 なポイ ントとして 以 下 の2つの 事 項 をあげたい 1. 就 業 規 則 諸 規 程 の 整 備 改 定 有 期 契 約 と 無 期 契 約 の 境 界 線 が 薄 くなったとはいえ 無 期 労 働 契 約 者 = 正 社 員 ではない 会 社 のルールである 就 業 規 則 や 労 働 条 件 を 定 める 雇 用 契 約 書 について この 点 を 踏 まえた 整 備 や 改 定 運 用 の 見 直 しが 必 須 である 不 適 切 な 規 定 や 運 用 としては 以 下 のようなものがあげられる 正 社 員 用 の 就 業 規 則 における 適 用 範 囲 を 雇 用 期 間 の 定 めのないもの としている パートタイマーやアルバイト 用 の 就 業 規 則 に 定 年 の 定 めが 無 い 嘱 託 再 雇 用 の 年 齢 上 限 が 65 歳 であるにも 関 わらずこれを 超 えてなお 雇 用 されている 従 業 員 がいる 書 面 による 雇 用 条 件 の 通 知 もしくは 雇 用 契 約 書 を 交 わしていない 不 始 末 を 起 こした 従 業 員 から 始 末 書 を 徴 求 していない 面 談 時 の 指 導 内 容 を 文 書 で 保 管 していない 上 記 に 一 つでも 当 てはまる 企 業 は 就 業 規 則 や 帳 票 を 見 直 さなければ 近 い 将 来 相 当 に 高 い 確 率 でトラブルが 表 面 化 する それはなぜか まず 就 業 規 則 だが 有 期 契 約 から 無 期 契 約 に 転 換 された 労 働 者 はどの 規 則 が 適 用 される か いうテーマを 考 えたい 正 社 員 用 の 就 業 規 則 における 適 用 範 囲 を 雇 用 期 間 の 定 めがな いもの としていると 無 期 雇 用 契 約 に 転 換 した 労 働 者 は 正 社 員 と 同 じ 就 業 規 則 が 適 用 され ことになる いわんやパートタイマー 用 就 業 規 則 や 嘱 託 規 程 が 整 備 されていない 企 業 では 当 然 に 正 社 員 と 同 じ 扱 いとなる ここで 大 きな 問 題 が 生 じる 中 小 企 業 の 多 くは 正 社 員 のみを 対 象 として 退 職 金 や 賞 与 を 支 給 するが 無 期 に 転 換 された 労 働 者 も 正 社 員 と 同 じ 就 業 規 則 が 適 用 されると ルール 上 は 退 職 金 や 賞 与 を 支 給 する 義 務 が 生 じる 慶 弔 見 舞 金 や 慶 弔 休 暇 な ども 同 様 である またアルバイトやパートタイマー 用 の 就 業 規 則 には 定 年 の 定 めが 無 いことが 一 般 的 だが 無 期 契 約 への 転 換 者 に 対 しこのパートタイマー 規 程 が 適 用 されると 定 めが 無 いがために 文 字 通 り 終 身 雇 用 となる 同 様 に 60 歳 定 年 後 再 雇 用 されているいわゆる 嘱 託 社 員 も 5 年 経 過 し 65 歳 以 降 も 雇 用 され 続 けると 無 期 契 約 への 転 換 の 申 込 権 が 発 生 する そのため 必 要 に 応 じて 第 2 定 年 などを 定 めなくてはならない 加 えて 平 成 25 年 4 月 からは 雇 い 入 れ 時 に 期 間 の 定 めのある 労 働 契 約 を 更 新 する 場 合 の 基 準 について 書 面 交 付 が 必 要 とされた 法 改 正 以 前 から 労 働 契 約 の 期 間 に 関 する 事 項 3 / 5

就 業 場 所 及 び 従 事 すべき 業 務 に 関 する 事 項 更 新 の 有 無 は 雇 用 契 約 書 に 明 示 しなくて はならないとされていたが 中 小 の 現 場 では 未 だにそもそも 雇 用 契 約 書 を 結 んでいないとい う 企 業 が 多 い 明 示 義 務 を 果 たしていないことはおろか 雇 用 契 約 書 を 交 わしていない 事 実 により 当 該 労 働 契 約 は 無 期 であるとみなされ トラブルの 原 因 となる 危 険 性 が 高 い これらの 理 由 から 有 期 雇 用 契 約 者 が 存 在 している 企 業 は トラブル 回 避 のために 当 該 労 働 者 に 適 用 される 規 則 および 雇 用 契 約 書 の 作 成 や 内 容 の 修 正 が 求 められるのである 2. アルバイト パートタイマーの 労 務 管 理 先 の 項 で 就 業 規 則 や 雇 用 契 約 書 について 触 れたが 新 しく 義 務 となった 従 業 員 に 明 示 すべ き 労 働 契 約 の 更 新 基 準 とは どのような 内 容 が 要 求 されているのだろうか 以 下 厚 生 労 働 省 が 出 している 更 新 基 準 の 具 体 的 な 例 をあげる 1 契 約 期 間 満 了 時 の 業 務 量 による 2 労 働 者 の 勤 務 成 績 態 度 により 判 断 する 3 労 働 者 の 能 力 により 判 断 する 4 会 社 の 経 営 状 況 により 判 断 する 5 従 事 している 業 務 の 進 捗 状 況 により 判 断 する など 上 記 145に 関 しては 決 算 書 や 月 次 試 算 表 の 内 容 これに 対 するコスト 削 減 や 配 置 転 換 が 合 理 的 になされているか などが 判 断 基 準 となる では23に 関 しては 何 をもって 判 断 基 準 とすれば 認 容 されるのだろうか アルバイトやパートタイマーに 人 事 評 価 制 度 がある 中 小 企 業 は 少 ない 実 態 として 定 量 的 な 人 事 評 価 を 経 ず 今 年 は 時 給 10 円 アップ などと 経 営 者 の 一 存 で 決 めていることが 多 い このような 決 定 方 法 は 平 時 より 労 使 トラブルの 原 因 の 一 つとなるが 特 に 雇 止 め 時 のトラブ ルを 避 けるために どのような 場 合 は 契 約 を 終 了 するのか どのようなことを 期 待 するの か を 明 確 にした 上 で 評 価 を 公 正 に 行 い 少 なくとも 1 年 に1 度 の 個 別 面 談 を 実 施 従 業 員 に 評 価 結 果 をフィードバックするというプロセスが 必 要 である その 面 談 を 踏 まえ 次 回 の 更 新 条 件 を 提 示 しつつ 契 約 更 新 手 続 きに 進 むのであり 前 提 となる 人 事 評 価 制 度 を 構 築 し 労 働 者 のキャリアプランを 明 確 にしなくてはならない さらに 言 われていない 事 態 を 避 けるため 始 末 書 や 指 導 書 改 善 しない 場 合 は 次 回 更 新 しないという 内 容 の 通 知 書 等 を 文 書 化 し 保 管 する 万 一 労 使 トラブルが 発 生 した 場 合 これらの 資 料 を 基 に 上 記 基 準 を 満 たすかが 個 別 に 判 断 されることになり これらの 資 料 が 無 い 場 合 はきわめて 不 利 となるからである 4 / 5

改 正 労 働 契 約 法 の 問 題 点 今 回 の 改 正 の 最 大 の 問 題 点 は 入 口 規 制 を 導 入 しなかったことである 一 般 的 な 労 働 者 に とって 雇 用 契 約 が 有 期 であるメリットはない 有 期 雇 用 を 結 ぶ 際 になぜ 無 期 ではなく 有 期 なの かを 求 める 入 口 規 制 が 必 要 である その 上 で 先 般 見 送 りされたが 解 雇 自 由 の 原 則 を 規 定 し 再 就 職 支 援 金 を 支 払 えば 解 雇 できる 事 前 型 の 金 銭 解 決 制 度 の 導 入 に 関 しても 議 論 を 進 めなければ 今 回 の 改 正 により 企 業 は 雇 用 を 控 え 失 業 率 は 悪 化 するであろう 一 方 この 改 正 を 前 向 きにとらえれば 企 業 が 先 に 示 したような 労 務 管 理 に 取 り 組 むことによ り 人 材 力 の 底 上 げと 労 働 生 産 性 の 向 上 につながること 正 社 員 と 非 正 規 社 員 の 労 働 条 件 の 格 差 が 是 正 されることによって 労 働 者 のモチベーションが 維 持 されることが 期 待 される 最 後 に 同 時 に 施 行 された 65 歳 までの 雇 用 を 義 務 付 ける 高 年 齢 者 雇 用 安 定 法 や 今 回 のテーマで ある 労 働 契 約 法 改 正 では 少 なからず 企 業 の 負 担 が 求 められるが 筆 者 は 企 業 だけが 変 わ るのではなく その 企 業 で 働 く 従 業 員 の 意 識 も 変 わることを 期 待 している 起 業 志 向 が 世 界 的 に 見 て 日 本 は 最 低 水 準 だとのニュースもあったが 雇 われている 立 場 でありながら 経 営 者 意 識 や 数 値 意 識 問 題 意 識 を 持 ちながら 仕 事 をすることが これからのアルバイト パートタイ マー 労 働 者 にも 必 要 になるだろう 業 務 上 関 与 先 企 業 の 会 議 進 行 を 依 頼 されることも 多 いが その 際 私 はパートだから と か 所 詮 アルバイトだから などの 発 言 も 漏 れ 聞 こえてくる この 法 改 正 の 趣 旨 は 正 社 員 とア ルバイトやパートタイマーのギャップを 低 減 していこうというものである 今 は 非 正 規 社 員 で あっても 日 々コストダウンを 意 識 する 100 しかできなかった 作 業 を 101 出 来 るように 工 夫 する 8 時 間 かかっていた 仕 事 を7 時 間 で 終 わるよう 工 程 を 変 える 提 案 をしてみるなどする と 与 えられた 仕 事 は 企 業 や 社 会 へ 貢 献 自 己 成 長 仕 事 へのやりがいへと 昇 華 する このと き 労 働 者 ではなく その 企 業 になくてはならない 人 財 になっているだろう これら 一 連 の 法 改 正 が わが 国 の 中 小 企 業 に 人 財 が 育 まれ トラブルが 少 ない 社 会 に 発 展 する 契 機 とな らんことを 切 に 願 うものである ( 了 ) 5 / 5