民法(債権関係)の改正



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民 法 ( 債 権 関 係 )の 改 正 要 綱 仮 案 が 決 定 通 常 国 会 にも 法 案 提 出 の 可 能 性 法 務 委 員 会 調 査 室 菱 沼 誠 一 1.はじめに 法 制 審 議 会 民 法 ( 債 権 関 係 ) 部 会 ( 以 下 部 会 という )は 平 成 26 年 8 月 26 日 に 民 法 ( 債 権 関 係 )の 改 正 に 関 する 要 綱 仮 案 1 ( 以 下 要 綱 仮 案 という )を 決 定 した 本 稿 が 出 る 頃 には 要 綱 仮 案 を 踏 まえた 要 綱 案 が 取 りまとめられていることも 予 想 されるが 今 後 法 制 審 議 会 総 会 を 経 て 平 成 27 年 の 通 常 国 会 に 民 法 等 の 改 正 案 の 提 出 も 考 えられ ることから 要 綱 仮 案 の 内 容 の 一 端 を 紹 介 したい なお 要 綱 仮 案 に 対 してはパブリッ ク コメントの 手 続 は 採 られていないものの 様 々な 意 見 もあり 更 に 内 容 が 変 わる 可 能 性 もあることをお 断 りしておきたい また 要 綱 仮 案 の 内 容 は 極 めて 多 岐 にわたる 膨 大 なも ので 紙 幅 の 関 係 からその 全 てを 御 紹 介 することは 不 可 能 であり 本 稿 は 消 滅 時 効 法 定 利 率 保 証 債 務 定 型 約 款 ( 継 続 検 討 中 )など 新 しい 規 律 の 置 かれたものを 中 心 に 要 綱 仮 案 の 一 部 の 紹 介 にとどまることを 御 寛 恕 願 いたい 2. 要 綱 仮 案 決 定 に 至 るまで 平 成 21 年 10 月 28 日 の 法 制 審 議 会 総 会 における 民 事 基 本 法 典 である 民 法 のうち 債 権 関 係 の 規 定 について 同 法 制 定 以 来 の 社 会 経 済 の 変 化 への 対 応 を 図 り 国 民 一 般 に 分 か りやすいものとする 等 の 観 点 から 国 民 の 日 常 生 活 や 経 済 活 動 にかかわりの 深 い 契 約 に 関 する 規 定 を 中 心 に 見 直 しを 行 う 必 要 があると 思 われるので その 要 綱 を 示 されたい との 法 務 大 臣 の 諮 問 を 受 けて 約 5 年 間 にわたる 審 議 が 行 われた その 回 数 は 要 綱 仮 案 決 定 までで 計 96 回 ( 第 1ステージ( 基 礎 的 な 議 論 )が 25 回 関 係 業 界 からのヒヤリングが4 回 第 2ステージが 44 回 ( 更 に3つの 分 科 会 がそれぞれ6 回 ずつ) 第 3ステージ( 検 討 留 保 項 目 についての 補 充 的 な 議 論 )が 23 回 )に 上 っており この 間 作 成 された 民 法 ( 債 2 権 関 係 )の 改 正 に 関 する 中 間 的 な 論 点 整 理 ( 以 下 中 間 的 論 点 整 理 という ) 及 び 民 法 3 ( 債 権 関 係 )の 改 正 に 関 する 中 間 試 案 ( 以 下 中 間 試 案 という )のいずれに 対 しても パブリック コメントの 手 続 が 採 られている(なお これらの 部 会 審 議 に 先 立 ち 学 会 の 有 志 等 による 民 法 ( 債 権 法 ) 改 正 検 討 委 員 会 によって 3 年 余 りの 議 論 により 債 権 1 要 綱 仮 案 は <http://www.moj.go.jp/content/001127038.pdf> 要 綱 仮 案 ( 案 ) 補 足 説 明 については <http://www.moj.go.jp/content/000126620.pdf> 2 中 間 的 論 点 整 理 は<http://www.moj.go.jp/content/000074384.pdf> 3 中 間 試 案 は<http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900184.html> また 中 間 試 案 と 要 綱 仮 案 の 比 較 は <http://www.matsuoka.law.kyoto-u.ac.jp/research/reformdraftofjapanesecivillaw20140908.pdf>が 詳 しい 32 立 法 と 調 査 2015.1 No. 360( 参 議 院 事 務 局 企 画 調 整 室 編 集 発 行 )

法 改 正 の 基 本 方 針 4 もまとめられている ) 前 述 の 法 制 審 への 諮 問 では 今 回 の 改 正 の 目 的 は 1 民 法 を 社 会 経 済 の 変 化 に 対 応 させること 2 国 民 一 般 に 分 かりやすいものと すること の2 点 にあるとされており 1は 約 120 年 前 に 制 定 された 民 法 を 現 代 の 取 引 事 情 に 合 わせるために 現 代 化 すること 2は 判 例 ルールを 明 文 化 し 不 明 確 な 条 文 を 明 確 化 するとともに 書 かれていない 前 提 原 理 定 義 を 補 うことと 説 明 されている(ただし 2については 要 綱 仮 案 に 関 して 定 義 等 が 最 終 段 階 で 削 ぎ 落 とされ プロ 向 きなもの に 変 貌 した 5 との 指 摘 もある ) なお 今 回 の 検 討 では 民 法 中 の 債 権 編 ( 第 三 編 ) だけでなく 総 則 編 ( 第 一 編 )の 中 から 契 約 に 係 る 規 定 の 改 正 であることから 法 律 行 為 関 係 も また 国 際 的 に 短 期 化 の 動 きが 顕 著 なことから 消 滅 時 効 も それぞれ 検 討 の 対 象 となっている 以 下 個 別 項 目 につき 概 説 する( 各 項 目 の 見 出 しの 数 字 は 要 綱 仮 案 に 対 応 している ) 3. 各 項 目 について (1) 第 2 意 思 能 力 意 思 能 力 のない 状 態 でした 意 思 表 示 の 効 力 について 現 行 法 上 規 定 はないが 私 的 自 治 の 原 則 から 判 例 学 説 6 は 意 思 表 示 の 性 質 上 当 然 に 無 効 としており( 大 判 明 治 38 年 5 月 11 日 等 ) 要 綱 仮 案 はこの 解 釈 を 明 文 化 することを 提 案 している (2) 第 3 意 思 表 示 2 錯 誤 現 行 民 法 95 条 は 法 律 行 為 の 要 素 に 錯 誤 があったときは 意 思 表 示 は 無 効 としている しかしながら 本 来 の 無 効 が 主 張 する 者 も 主 張 の 対 象 となる 者 も 限 定 されない 上 ま た 追 認 されることがなく( 民 法 119 条 ) 善 意 の 第 三 者 も 94 条 2 項 のような 特 別 な 規 定 がない 限 り 保 護 されず 無 効 主 張 の 期 間 制 限 もない(126 条 参 照 )のに 対 し 錯 誤 無 効 の 主 張 権 者 について 判 例 ( 最 判 昭 和 40 年 9 月 10 日 ) は 要 素 の 錯 誤 による 無 効 を 第 三 者 が 主 張 することは 許 されないとする(このような 無 効 のことを 相 対 的 無 効 ( 取 消 的 無 効 )と 呼 ぶ 立 場 もある ) 学 説 上 も 錯 誤 が 表 意 者 保 護 の 規 定 であること 等 から 無 効 の 主 張 権 者 を 表 意 者 に 限 定 するとともに 無 効 主 張 の 対 象 者 は 相 手 方 となり(123 条 ) 追 認 を 認 め(122 条 ) 善 意 の 第 三 者 を 保 護 し(96 条 3 項 類 推 適 用 など) 無 効 主 張 の 期 間 が 制 限 される(126 条 類 推 適 用 )とする 考 え 方 が 有 力 である 7 そのため 要 綱 仮 案 は 端 的 に 錯 誤 の 効 果 を 無 効 から 取 消 しへ 改 めている これにより 詐 欺 取 消 し 同 様 取 消 しの 効 果 を 善 意 無 過 失 の 第 三 者 に 対 抗 することができないことと なり また その 他 の 効 果 についても 取 消 しに 関 する 一 般 規 定 が 適 用 されることになる 4 債 権 法 改 正 の 基 本 方 針 については<http://www.moj.go.jp/content/000074989.pdf> また 債 権 法 改 正 の 経 緯 等 については 内 田 貴 参 考 文 献 1( 特 に 第 1 章 ~ 第 5 章 ) 5 奥 田 昌 道 松 岡 久 和 債 権 関 係 規 定 の 見 直 し 参 考 文 献 37 頁 ( 奥 田 発 言 ) 6 内 田 貴 民 法 Ⅰ( 第 4 版 ) ( 東 京 大 学 出 版 会 7 内 田 前 掲 6 73 ~ 75 頁 参 照 2008 年 )103 頁 等 33

(3) 第 7 消 滅 時 効 消 滅 時 効 の 期 間 について 現 行 法 は 権 利 行 使 できる 時 から 10 年 ( 民 法 166 条 167 条 参 照 )と 規 定 しているところ 要 綱 仮 案 は 権 利 を 行 使 することができることを 知 っ た 時 から5 年 若 しくは 権 利 を 行 使 することができる 時 から 10 年 のいずれか 早 い 方 という 主 観 的 起 算 点 からの 短 期 (5 年 )と 客 観 的 起 算 点 からの 長 期 (10 年 )から 成 る 二 重 期 間 構 成 を 提 案 している ただし 毎 月 の 家 賃 のような 定 期 金 債 権 については 現 行 法 の 168 条 を 改 正 し 債 権 者 が 定 期 金 の 債 権 から 生 じる 各 債 権 を 行 使 できることを 知 った 時 から 10 年 間 若 しくは 各 債 権 を 行 使 することができる 時 から 20 年 間 行 使 しないときに 消 滅 するとした あわせて 169 条 も 廃 止 することとしている 次 に 現 行 法 では 時 効 の 進 行 を 妨 げる 場 合 ( 時 効 障 害 事 由 )として 時 効 の 中 断 ( 進 行 した 時 効 期 間 がリセットされたようにゼロになるもの) 及 び 停 止 ( 時 効 の 進 行 が 一 時 中 断 するもの)が 規 定 されている しかしながら 進 行 した 時 効 期 間 がリセットさ れ ゼロに 戻 って 一 から 再 開 するのであるから 中 断 という 用 語 は 適 切 でない また 停 止 も 文 字 どおり 時 効 の 進 行 が 停 止 するわけではないから やはり 名 前 と 中 身 に 齟 齬 があ る 上 停 止 の 中 に 時 効 完 成 の 停 止 と 時 効 進 行 の 停 止 があるなど 紛 らわしい 点 がある そこで 要 綱 仮 案 は 中 断 に 代 えて 更 新 という 言 葉 を 採 用 し それ 以 外 は 完 成 猶 予 ( 時 効 の 進 行 を 一 時 停 止 すること)として 時 効 障 害 事 由 を 再 編 成 した その 結 果 時 効 の 完 成 猶 予 事 由 は 1 裁 判 上 の 請 求 等 2 強 制 執 行 等 3 仮 差 押 え 等 4 催 告 5 天 災 等 6 当 事 者 間 の 協 議 の6つに 整 理 し 直 されている また 不 法 行 為 に 基 づく 損 害 賠 償 請 求 権 についても 現 行 法 の 724 条 が 年 数 は 変 わら ないが 不 法 行 為 の 時 から 20 年 行 使 しないときに 消 滅 するという 点 につき 除 斥 期 間 ではなく 消 滅 時 効 として 位 置 付 けられた さらに 生 命 身 体 の 侵 害 による 損 害 賠 償 請 求 権 の 消 滅 時 効 については ( 損 害 が 債 務 不 履 行 によるものであっても 不 法 行 為 によるもの であっても)1 損 害 及 び 加 害 者 を 知 った 時 から5 年 間 又 は 2 権 利 を 行 使 できる 時 から 20 年 間 とされている この 点 に 関 連 し 今 後 の 不 法 行 為 法 改 正 の 際 の 課 題 として ⅰ 公 訴 時 効 の 一 部 廃 止 ( 刑 事 訴 訟 法 250 条 ) 等 による 刑 事 時 効 との 均 衡 を 図 る 必 要 性 があるの ではないか ⅱ 性 的 虐 待 の 被 害 者 が 幼 児 ないし 未 成 年 者 である 場 合 家 族 共 同 体 の 一 員 で ある 場 合 には 被 害 者 が 成 年 に 達 してから 又 は 家 族 共 同 体 の 終 了 から5 年 間 は 消 滅 時 効 は 完 成 しないとして 債 権 者 の 保 護 を 図 る 必 要 があるのではないか 9 といった 指 摘 も なされている さらに 現 行 民 法 上 飲 食 店 の 代 金 債 権 は1 年 弁 護 士 等 の 報 酬 債 権 は2 年 医 師 等 の 診 療 報 酬 債 権 は3 年 などといった いわゆる 職 業 別 の 短 期 消 滅 時 効 の 規 定 (170 条 ないし 174 条 )が 置 かれている しかしながら このような 職 業 別 の 規 定 については 合 理 性 がな 8 8 消 滅 時 効 同 様 法 律 で 定 められた 一 定 の 期 間 権 利 者 が 権 利 を 行 使 しないことによって 権 利 を 失 う 制 度 であ るが 1 中 断 停 止 の 問 題 が 起 こらない 2 当 事 者 の 援 用 が 問 題 とならない 3 起 算 点 はそれぞれの 規 定 が 起 点 とする 時 であって 権 利 を 行 使 することができる 時 ではない 等 の 点 で 消 滅 時 効 と 異 なる( 潮 見 佳 男 入 門 民 法 ( 全 ) ( 有 斐 閣 2007 年 )86 頁 ) 9 松 久 三 四 彦 消 滅 時 効 参 考 文 献 3 61 頁 34

いと 言 われている 10 ことから 要 綱 仮 案 では 当 該 規 定 を 廃 止 し あわせて 現 行 の 商 事 消 滅 時 効 の 規 定 ( 商 法 522 条 )を 削 除 している (4) 第 9 法 定 利 率 法 定 利 率 について 現 行 法 は 民 事 で5%( 民 法 404 条 ) 商 事 で6%( 商 法 514 条 )で いずれも 固 定 とされているが 現 在 の 低 金 利 低 成 長 時 代 を 考 えると これらの 規 定 には 合 理 性 がないと 言 われていた 11 また 将 来 の 債 権 の 価 値 を 現 在 化 する 場 合 に 中 間 利 息 控 除 に 法 定 利 率 が 使 われる 結 果 実 質 以 上 に 大 幅 な 目 減 りが 生 じ 被 害 者 の 救 済 にも 不 十 分 であるといった 問 題 もあった そのため 中 間 試 案 では 法 定 利 率 は 変 動 制 とし 中 間 利 息 控 除 は 固 定 制 とするといっ た 案 が 示 されたが これに 対 し パブリック コメントで 中 間 利 息 控 除 は 原 則 として 運 用 利 益 に 近 い 利 率 で 行 うべきであり 5%は 高 すぎる 法 定 利 率 と 中 間 利 息 控 除 の 割 合 の 比 較 において 後 者 だけが 高 いまま 固 定 されることは 被 害 者 の 救 済 の 観 点 から 著 しく 不 合 理 である といった 反 対 意 見 が 多 数 寄 せられたこともあり 要 綱 仮 案 では いずれも 3%とし 3 年 ごとに1% 刻 みで 見 直 すという 変 動 制 の 採 用 を 提 案 している この 要 綱 仮 案 の 方 向 性 は 適 正 としつつも 損 害 保 険 会 社 を 始 めそれによる 社 会 的 影 響 が 大 きいことに 鑑 み 1 政 令 などにより 法 定 利 率 の 変 更 の 告 示 から 施 行 までの 期 間 を 空 ける 規 定 を 置 くべきである 2 債 権 法 改 正 の 施 行 時 には 中 間 利 息 控 除 割 合 が5%から3%にな ることから これを 段 階 的 に 変 更 する 工 夫 が 必 要 である 3 要 綱 仮 案 の 中 間 利 息 控 除 の 条 文 が 逸 失 利 益 ( 不 法 行 為 がなければ 得 られたであろう 利 益 )についてのみ 適 用 されるよう に 読 めることから 将 来 の 積 極 的 損 害 ( 傷 病 の 治 療 費 等 財 産 の 積 極 的 な 減 少 )も 含 めた 規 定 を 置 くべきである といった 問 題 点 が 指 摘 されている 12 (5) 第 11 債 務 不 履 行 による 損 害 賠 償 第 12 契 約 の 解 除 第 13 危 険 負 担 債 務 不 履 行 による 損 害 賠 償 請 求 が 債 務 者 の 責 めに 帰 すべき 事 由 がないときは 免 責 される ことは 現 行 民 法 上 履 行 不 能 についてのみ 規 定 されている(415 条 後 段 )が 債 務 不 履 行 一 般 のルールであることを 明 示 すべきと 言 われており また 責 めに 帰 すべき 事 由 の 有 無 についても 条 文 上 明 確 ではないことから 要 綱 仮 案 は 債 務 者 がその 債 務 の 本 旨 に 従 っ た 履 行 をしないとき 又 は 債 務 の 履 行 が 不 能 であるときは 債 権 者 は これによって 生 じた 損 害 の 賠 償 を 請 求 することができる ただし その 債 務 の 不 履 行 が 契 約 その 他 の 当 該 債 務 の 発 生 原 因 及 び 取 引 上 の 社 会 通 念 に 照 らして 債 務 者 の 責 めに 帰 することができない 事 由 によるものであるときは この 限 りでない とし 債 務 不 履 行 が 債 務 者 の 責 めに 帰 す ることのできない 事 由 によるものであるときは 債 権 者 が 損 害 賠 償 を 請 求 できないことを 明 確 化 している 10 金 山 直 樹 民 法 166 条 1 項 167 条 ( 消 滅 時 効 ) 173 条 174 条 ( 短 期 消 滅 時 効 ) 広 中 俊 雄 星 野 英 一 編 民 法 典 の 百 年 Ⅱ ( 有 斐 閣 1998 年 )381 頁 11 内 田 参 考 文 献 2 75 頁 以 下 12 大 塚 直 不 法 行 為 との 関 係 - 中 間 利 息 の 控 除 を 中 心 として 参 考 文 献 3 55 頁 35

また 現 行 民 法 543 条 が 履 行 不 能 解 除 には 帰 責 事 由 が 必 要 であるとしているところ 要 綱 仮 案 はこれを 不 要 とする そのため 現 行 法 が 帰 責 事 由 の 有 無 によって 債 務 不 履 行 と 危 険 負 担 の 役 割 分 担 をさせていることから 履 行 不 能 になったことについて 帰 責 事 由 を 要 13 しないとすると 解 除 と 危 険 負 担 のいずれで 処 理 するかという 問 題 が 生 じる この 点 に つき 中 間 試 案 が 危 険 負 担 を 解 除 に 吸 収 する 解 除 一 元 化 モデルの 立 場 を 採 用 したのに 対 し 解 除 のみでは 例 えば 震 災 など 解 除 の 相 手 方 が 見 つからない 場 合 解 除 権 が 消 滅 時 効 にかかった 場 合 など 債 権 者 に 不 利 益 となる 場 合 が 考 えられるといった 懸 念 が 示 されたこと もあり 要 綱 仮 案 は 解 除 がなされるまでは 反 対 債 務 は 存 続 しつつも 履 行 拒 絶 ができるこ ととして 債 権 者 の 利 益 を 保 護 し 債 権 者 が 解 除 をした 場 合 には 反 対 債 務 も 消 滅 するという 二 元 的 構 成 に 立 ち 履 行 拒 絶 権 的 構 成 ( 債 務 者 が 債 務 を 履 行 できなくなった 場 合 において 債 権 者 が 反 対 給 付 の 履 行 を 拒 むことができる 一 方 債 権 者 の 責 めに 帰 すべき 事 由 により 債 務 者 が 債 務 を 履 行 できなくなったときはこの 限 りでないとする 考 え)という 新 たな 提 案 を 行 った この 要 綱 仮 案 の 提 案 に 対 しては 解 除 一 元 化 モデルに 対 して 懸 念 を 表 明 してい た 実 務 家 等 からは 高 く 評 価 されている 14 一 方 このような( 二 元 的 構 成 の) 法 律 構 成 を 採 用 している 国 は( 他 に) 見 当 たらない 15 との 意 見 もある (6) 第 15 債 権 者 代 位 権 第 16 詐 害 行 為 取 消 権 債 権 者 代 位 権 ( 債 務 者 が 自 己 の 権 利 を 行 使 しないときに 債 務 者 に 変 わって 権 利 を 行 使 す ることにより 責 任 財 産 の 維 持 を 図 る 権 利 ) 及 び 詐 害 行 為 取 消 権 ( 債 務 者 が 債 権 者 を 害 する ために 行 った 法 律 行 為 の 取 消 しを 裁 判 所 に 求 めることができる 債 権 者 の 権 利 )については 現 行 民 法 上 それぞれ1 箇 条 (423 条 ) 3 箇 条 (424 条 ~ 426 条 )の 規 定 が 置 かれている にすぎない 今 回 の 検 討 では 両 制 度 の 抜 本 的 改 正 も 議 論 されたが 要 綱 仮 案 は 原 則 と して 現 在 の 実 務 判 例 で 形 成 されたルールを 明 文 化 する 方 向 の 提 案 を 行 っている ただし 詐 害 行 為 取 消 権 については 破 産 法 の 規 定 振 りに 合 わせ ( 本 来 であれば 特 別 法 である 破 産 法 の 規 定 が 詐 害 行 為 取 消 権 の 規 定 より 広 く 認 められるべきであるところ ) 破 産 法 より 詐 害 行 為 の 方 が 広 く 認 められているという いわゆる 逆 転 現 象 16 の 解 消 が 図 ら れた 具 体 的 には 債 務 者 の 所 有 不 動 産 の 時 価 相 当 額 での 売 却 行 為 の 詐 害 行 為 該 当 性 の 点 につき 要 綱 仮 案 は 消 費 容 易 な 金 銭 に 代 えることは 原 則 として 詐 害 行 為 となるという 判 例 ( 大 判 明 治 39 年 2 月 5 日 等 )の 考 えを 採 用 せず 債 務 者 や 受 益 者 に 隠 匿 等 の 処 分 意 思 を 要 求 している また 債 務 者 が 一 部 の 債 権 者 のために 物 的 担 保 を 設 定 する 行 為 ( 破 産 法 13 売 買 のようにお 互 いが 対 価 的 異 議 を 有 する 債 務 を 負 う 双 務 契 約 において 一 方 の 債 務 が 債 務 者 の 責 めに 帰 す ることのできない 事 由 により 消 滅 した 場 合 この 債 務 は 履 行 不 能 により 消 滅 する そのとき 反 対 債 務 は 消 滅 す るか 存 続 するかが 危 険 負 担 の 問 題 であり 反 対 債 務 が 消 滅 する( 不 能 となった 債 務 の 危 険 を 債 務 者 が 引 き 受 け る)との 考 えを 債 務 者 主 義 存 続 するとの 考 えを 債 権 者 主 義 という( 潮 見 前 掲 8 285 頁 ~) 14 鎌 田 薫 中 井 康 之 道 垣 内 弘 人 民 法 ( 債 権 関 係 )の 改 正 に 関 する 要 綱 仮 案 の 公 表 ジュリスト No1474 91 頁 ( 中 井 発 言 ) 山 本 豊 危 険 負 担 参 考 文 献 3 40 頁 等 15 奥 田 松 岡 債 権 関 係 規 定 の 見 直 し 参 考 文 献 3 12 頁 ( 松 岡 発 言 ) 16 潮 見 佳 男 債 権 総 論 ( 第 3 版 ) ( 信 山 社 2007 年 )252 ~ 254 頁 36

ぱ 上 の 偏 頗 行 為 )についても 破 産 法 の 否 認 権 ( 破 産 管 財 人 が 破 産 手 続 開 始 決 定 の 前 に 破 産 者 の 財 産 が 不 当 に 散 逸 することにより 債 権 者 の 利 益 が 害 されるような 場 合 に 散 逸 した 財 産 を 破 産 財 団 に 回 復 させるため 法 律 行 為 の 時 に 遡 って 当 該 法 律 行 為 の 効 果 を 消 滅 させ る 権 利 )に 合 わせて 詳 細 な 規 定 を 置 くこととしている (7) 第 18 保 証 債 務 保 証 債 務 に 関 しては 従 来 から 保 証 人 が 保 証 契 約 時 の 想 定 以 上 の 保 証 債 務 の 履 行 を 求 め られるケースが 少 なくないことが 大 きな 社 会 問 題 となっていた そのため 平 成 16 年 に も 1 保 証 契 約 の 書 面 による 要 式 契 約 化 ( 保 証 意 思 の 明 確 化 ) 2 極 度 額 ( 繰 り 返 し 融 資 を 受 けることができる 上 限 額 )の 定 めのない 貸 金 等 の 禁 止 と 貸 金 等 債 務 を 含 む 貸 金 等 根 保 証 契 約 ( 一 定 の 範 囲 に 属 する 不 特 定 の 債 務 を 主 たる 債 務 として 保 証 をする 契 約 )の 元 本 確 定 期 日 を 最 大 5 年 とすること 等 を 内 容 とする 民 法 の 一 部 改 正 法 が 成 立 している また この 問 題 の 背 景 には 個 人 が 知 らないうちに 多 額 の 保 証 責 任 を 負 わされることに 加 え 行 き 過 ぎた 経 営 者 保 証 ( 中 小 企 業 が 融 資 を 受 ける 際 に 経 営 者 が 行 う 保 証 )や 第 三 者 保 証 ( 経 営 者 以 外 の 者 の 行 う 保 証 )といった 問 題 点 があり その 防 止 策 が 必 要 であると 言 われてきた そのため 中 小 企 業 庁 は 信 用 保 証 協 会 が 行 う 保 証 について 平 成 18 年 度 から 保 証 協 会 に 対 して 保 証 申 込 みを 行 った 案 件 については 経 営 者 本 人 以 外 の 第 三 者 を 保 証 人 として 求 めることを 原 則 禁 止 とし 金 融 庁 も 平 成 23 年 に 主 要 行 等 向 けの 総 合 的 な 監 督 指 針 中 小 地 域 金 融 機 関 向 けの 総 合 的 な 監 督 指 針 等 を 見 直 し 経 営 者 以 外 の 第 三 者 の 個 人 連 帯 保 証 を 求 めないことを 原 則 とする 融 資 慣 行 を 確 立 することを 求 めるなど の 対 策 を 講 じた さらに 日 弁 連 も 平 成 24 年 個 人 保 証 の 禁 止 契 約 締 結 時 の 説 明 義 務 及 び 情 報 提 供 義 務 契 約 締 結 後 の 情 報 提 供 義 務 等 を 内 容 とする 保 証 制 度 の 抜 本 的 改 正 を 求 める 意 見 書 17 を 公 表 するなどしている そして 平 成 25 年 の 第 183 回 国 会 に 個 人 保 証 を 原 則 禁 止 とする 法 律 案 が 民 主 党 新 緑 風 会 等 から 参 議 院 に 提 出 され 施 行 日 に 関 する 修 正 の 後 賛 成 多 数 により 修 正 議 決 され た( 衆 議 院 で 継 続 後 審 査 未 了 廃 案 となった また 第 186 回 国 会 にも 同 趣 旨 の 法 案 が 提 出 されたが 審 査 未 了 廃 案 となった ) このような 経 緯 等 を 踏 まえ 保 証 債 務 に 関 し 中 間 試 案 では 保 証 人 保 護 の 各 種 の 方 策 について 引 き 続 き 検 討 する とされていたが 要 綱 仮 案 では 個 人 保 証 の 制 限 と 情 報 提 供 義 務 についての 新 たな 規 律 が 置 かれた 個 人 保 証 の 制 限 については その 禁 止 は 採 用 されなかったものの 前 述 の 平 成 16 年 の 民 法 改 正 の 際 の 両 院 の 附 帯 決 議 も 踏 まえ 貸 金 等 債 務 だけでなく 継 続 的 供 給 契 約 (ガス 電 気 等 種 類 で 定 められた 物 を 一 定 の 期 間 一 定 の 代 金 で 供 給 する 契 約 )における 代 金 債 務 等 も 含 めた 個 人 根 保 証 全 般 を 規 律 対 象 とする 改 正 案 が 提 案 されている まず 前 述 のとおり 個 人 根 保 証 契 約 は 保 証 人 にとって 酷 となることが 少 なくないこ 17 日 本 弁 護 士 連 合 会 保 証 制 度 の 抜 本 的 改 正 を 求 める 意 見 書 ( 平 成 24 年 1 月 20 日 ) <http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2012/opinion_120120.pdf> 37

とから 極 度 額 を 定 めなければならず これを 定 めないと 根 保 証 は 無 効 となる 次 に 個 人 が 保 証 するもののうち 事 業 のために 負 担 した 貸 金 等 債 務 を 主 たる 債 務 と する 保 証 債 務 又 は 主 たる 債 務 の 範 囲 に 事 業 のために 負 担 する 貸 金 等 債 務 が 含 まれる 根 保 証 契 約 については その 契 約 締 結 の 日 前 1 箇 月 以 内 に 作 成 された 公 正 証 書 で 保 証 人 となる 個 人 が 保 証 債 務 を 履 行 する 意 思 を 表 示 しない 限 り その 効 力 を 生 じないこととされ ている さらに 公 正 証 書 作 成 時 の 必 要 事 項 等 も 提 案 されているが この 規 制 は 主 たる 債 務 者 が 法 人 その 他 の 団 体 である 場 合 のその 理 事 取 締 役 執 行 役 又 はこれに 準 ずる 者 で ある 場 合 等 については 適 用 外 とされている また 個 人 保 証 の 契 約 締 結 時 には 情 報 提 供 義 務 が 規 定 され 主 たる 債 務 者 が 事 業 のため に 負 担 する 債 務 についての 保 証 を 委 託 する 場 合 委 託 を 受 ける 個 人 に 対 して 1 財 産 及 び 収 支 の 状 況 2 主 たる 債 務 以 外 に 負 担 している 債 務 の 有 無 並 びにその 額 及 び 履 行 状 況 3 主 たる 債 務 の 担 保 として 他 に 提 供 し 又 は 提 供 しようとするものがあるときは その 旨 及 びその 内 容 に 関 する 情 報 を 提 供 しなければならない 主 たる 債 務 者 が これらの 事 項 の 説 明 をせず 又 は 事 実 と 異 なる 説 明 をしたために 委 託 を 受 けた 者 が1から3につき 誤 認 をし それにより 保 証 契 約 をした 場 合 その 説 明 に 関 する 問 題 について 債 権 者 が 知 り 又 は 知 る ことができたときは 保 証 人 は 保 証 契 約 を 取 り 消 すことができる さらに 債 権 者 は 委 託 を 受 けた 保 証 人 から 請 求 があったときは 保 証 人 に 対 し 遅 滞 なく 1 主 たる 債 務 の 元 本 及 び2 主 たる 債 務 に 関 する 利 息 等 についての 不 履 行 の 有 無 並 びに 3これらの 残 額 及 び4そのうち 履 行 期 限 が 到 来 しているものの 額 に 関 する 情 報 を 提 供 しなければならない 以 上 のような 保 証 契 約 締 結 前 における 主 債 務 者 の 保 証 委 託 に 際 する 情 報 提 供 義 務 及 び 保 証 意 思 の 公 正 証 書 による 表 示 等 の 改 正 については 今 回 の 保 証 法 更 には 民 法 改 正 の 目 玉 であり 自 信 を 持 って 世 界 に 発 信 できるものである と 高 く 評 価 する 声 もある そ の 上 で 主 債 務 者 の 説 明 違 反 だけで( 保 証 契 約 の) 取 消 権 が 成 立 することを 認 めるべき であり 債 権 者 に 保 証 契 約 の 際 に 主 債 務 者 のなした 説 明 の 保 証 人 に 対 する 確 認 義 務 も 規 定 すべきである 根 保 証 においては 主 債 務 者 の 信 用 不 安 の 発 生 が 重 要 であるので そ の 通 知 義 務 を 債 権 者 に 負 わせる 規 定 を 置 くべきである との 意 見 も 述 べられている 18 (8) 第 19 債 権 譲 渡 第 21 債 務 引 受 第 22 契 約 上 の 地 位 の 移 転 債 権 譲 渡 については まず 債 権 譲 渡 を 活 用 した 資 金 調 達 を 容 易 にするため 要 綱 仮 案 は 譲 渡 禁 止 特 約 ( 要 綱 仮 案 では 譲 渡 制 限 の 意 思 表 示 という 言 葉 が 用 いられてい る )の 効 力 について いわゆる 債 権 的 効 力 説 ( 譲 渡 禁 止 特 約 は 当 事 者 間 でのみ 有 効 であ るが 悪 意 重 過 失 の 第 三 者 に 対 しては 特 約 を 対 抗 できるとする 立 場 )を 採 用 している ただし 預 貯 金 債 権 に 関 しては 譲 渡 禁 止 であることは 明 示 の 特 約 があり また 性 質 上 黙 示 の 特 約 があるものと 広 く 知 られているものである( 最 判 昭 和 48 年 7 月 19 日 )ことか ら 譲 渡 制 限 を 知 り 又 は 重 大 な 過 失 によってこれを 知 らなかった 第 三 者 がその 債 権 を 譲 18 平 野 裕 之 保 証 参 考 文 献 3 79 頁 38

り 受 けたときは 債 務 者 ( 銀 行 等 )は 譲 渡 制 限 の 意 思 表 示 をもって その 第 三 者 に 対 抗 することができる(もっとも 債 権 に 対 して 強 制 執 行 をした 差 押 債 権 者 に 対 しては 適 用 し ない)とする 特 例 を 設 けること 等 が 要 綱 仮 案 で 提 案 されている また 債 権 譲 渡 の 対 抗 要 件 に 関 して 現 行 民 法 の 468 条 1 項 は 異 議 をとどめない 承 諾 に 公 信 力 を 与 えるという 考 えに 基 づく 規 定 であると 解 される 19 が 異 議 なき 承 諾 の 内 容 が 必 ずしも 明 確 ではなく 譲 渡 を 承 諾 しただけなのに 予 期 しない 形 で 異 議 をとどめない 承 諾 をしたことにされる 債 務 者 にも 配 慮 し 別 途 抗 弁 権 を 放 棄 する 意 思 表 示 をしない 限 り 単 に 承 諾 しただけでは 抗 弁 は 切 断 されないこととするため 同 条 同 項 を 削 除 するとしている なお 債 権 譲 渡 の 対 抗 要 件 に 関 しては 債 権 譲 渡 登 記 への 一 元 化 も 議 論 されたが 費 用 の 問 題 等 もあり 要 綱 仮 案 はそのような 立 場 は 採 用 しなかった また 将 来 債 権 の 譲 渡 性 について 要 綱 仮 案 は 債 権 が 譲 渡 された 場 合 において その 意 思 表 示 の 時 に 債 権 が 現 に 発 生 していないときは 譲 受 人 は 発 生 した 債 権 を 当 然 に 取 得 するとした 将 来 債 権 の 譲 渡 が 可 能 であり 債 権 譲 渡 の 対 抗 要 件 を 備 え 得 ることについて は 判 例 ( 最 判 平 成 11 年 1 月 29 日 最 判 平 成 13 年 11 月 22 日 等 ) 学 説 の 認 めてきたと ころであるが 要 綱 仮 案 に 基 づいた 改 正 が 行 われた 場 合 も 例 えば 将 来 の 賃 料 債 権 が 譲 渡 された 後 に 当 該 賃 貸 借 不 動 産 が 第 三 者 に 譲 渡 された 場 合 その 法 律 関 係 がどうなるかと いった 課 題 は 依 然 として 残 っている さらに 債 務 引 受 や 契 約 上 の 地 位 の 移 転 に 関 し 現 行 法 においては 明 文 の 規 定 が 置 かれ ていないことから 要 綱 仮 案 では 併 存 的 債 務 引 受 ( 債 務 者 と 並 んで 引 受 人 も 同 一 内 容 の 債 務 を 債 権 者 に 対 して 負 担 する 契 約 ) 免 責 的 債 務 引 受 ( 債 務 の 同 一 性 を 保 ちつつ 契 約 によって 債 務 を 債 務 者 から 引 受 人 に 移 転 すること) 契 約 上 の 地 位 の 移 転 ( 債 権 者 とし ての 地 位 を 包 括 した 契 約 当 事 者 としての 地 位 の 承 継 を 目 的 とする 契 約 ) 等 について 規 定 を 置 くこととしている (9) 第 24 相 殺 相 殺 については 現 行 民 法 511 条 に 関 して 差 押 債 権 者 が 債 務 者 の 銀 行 預 金 債 権 を 差 し 押 さえたときに 第 三 債 務 者 である 銀 行 が 債 務 者 に 対 する 貸 付 債 権 と 債 務 者 の 預 金 債 権 を 対 当 額 で 相 殺 するに 当 たり 預 金 債 権 と 貸 付 債 権 が 相 殺 適 状 ( 債 権 債 務 関 係 において 相 殺 することが 可 能 な 状 態 にあること)にあれば 相 殺 できる( 無 制 限 説 )のか 自 働 債 権 ( 貸 付 債 権 )の 弁 済 期 が 受 働 債 権 ( 預 金 債 権 )の 弁 済 期 よりも 先 に 到 来 する 限 り 相 殺 できる ( 制 限 説 )のかといった 争 いがある( 差 押 えと 相 殺 ) 判 例 は 相 殺 の 担 保 的 機 能 に 対 す る 期 待 の 尊 重 の 見 地 から 無 制 限 説 を 採 用 しており( 最 判 昭 和 49 年 6 月 24 日 ) 要 綱 仮 案 もこの 判 例 の 立 場 を 採 用 している 債 権 譲 渡 と 相 殺 についても 同 様 の 問 題 があるが 要 綱 仮 案 は 基 本 的 に 同 様 の 立 場 を 採 用 している 19 債 権 の 譲 渡 について 債 務 者 が 承 諾 をするに 当 たって 異 議 をとどめなかった 場 合 には 債 務 者 は 譲 受 人 が 債 権 を 行 使 してきたときに 譲 渡 人 に 対 して 主 張 できた 一 切 の 抗 弁 事 由 を 譲 受 人 に 対 して 主 張 することができな くなる( 抗 弁 切 断 効 ) 通 説 は この 抗 弁 切 断 効 を 異 議 をとどめない 承 諾 という 外 観 を 信 頼 した 譲 受 人 を 保 護 し 取 引 の 安 全 を 図 るため 法 律 が 与 えた 効 果 であると 説 明 する( 潮 見 前 掲 8 251 頁 等 ) 39

(10) 第 30 売 買 購 入 商 品 の 品 質 が 契 約 に 適 合 していない 場 合 買 主 の 修 補 請 求 権 に 関 しては 民 法 に 詳 し い 規 定 がなく 損 害 賠 償 と 解 除 を 認 めた 規 定 も 目 的 物 が 有 すべき 品 質 性 能 を 欠 いてい ることを 言 う 瑕 疵 という 語 句 が 難 解 である 上 その 解 釈 についても 判 例 実 務 が 分 か れているとの 指 摘 があることから 要 綱 仮 案 は 買 主 が 修 補 等 履 行 の 追 完 損 害 賠 償 契 約 解 除 代 金 減 額 請 求 ができる 旨 明 記 することとしている (11) 第 32 消 費 貸 借 現 行 法 上 消 費 貸 借 は 目 的 物 を 現 実 に 引 き 渡 すことを 要 するいわゆる 要 物 契 約 とされて いる( 民 法 587 条 )が 実 務 上 合 意 だけの 諾 成 的 消 費 貸 借 も 認 められている 20 ことから 要 綱 仮 案 では 明 文 でこれを 認 めることとしている ただし 当 事 者 が 軽 率 に 合 意 するこ とのないよう 書 面 若 しくは 電 磁 的 記 録 によって 合 意 のなされることが 必 要 であるとして いる (12) 第 33 賃 貸 借 賃 貸 借 のうち 敷 金 の 返 還 や 賃 借 物 の 原 状 回 復 の 範 囲 等 については 現 行 法 上 規 定 がなく 判 例 の 積 み 重 ねにより 紛 争 が 解 決 されている しかしながら トラブルの 解 決 指 針 である ルールについては 民 法 に 明 記 すべきとの 意 見 があることから 要 綱 仮 案 では 敷 金 の 定 義 返 還 時 期 ( 明 渡 時 説 最 判 昭 和 49 年 9 月 2 日 ) 及 び 返 還 範 囲 ( 賃 借 物 に 損 傷 が 生 じた 場 合 には 原 則 として 賃 借 人 は 回 復 の 義 務 を 負 うが 賃 借 物 の 経 年 変 化 等 についてはその 義 務 を 負 わない )などについて 明 記 することとしている (13) 第 35 請 負 請 負 について 現 行 民 法 は 仕 事 の 目 的 物 に 瑕 疵 があり 契 約 の 目 的 を 達 成 できないとき は 解 除 できるとし さらに そのようなときでも 建 物 その 他 の 土 地 の 工 作 物 の 場 合 には 解 除 できないとしている(635 条 ) 要 綱 仮 案 では この 条 文 を 削 除 し 解 除 一 般 の 規 定 によ ることとしている また 目 的 物 に 瑕 疵 があった 場 合 現 行 法 上 注 文 者 が 請 負 人 に 修 補 請 求 等 ができるのは 原 則 として 目 的 物 の 引 渡 時 から1 年 以 内 とされている(637 条 1 項 ) が それでは 注 文 者 に 酷 なことがあることから 21 要 綱 仮 案 は 注 文 者 がその 不 適 合 を 知 った 時 から1 年 以 内 としている そして この 期 間 内 に 注 文 者 から 請 負 人 に 対 し 不 適 合 の 事 実 を 通 知 しないときは 注 文 者 は 不 適 合 を 理 由 とする 修 補 請 求 等 ができないとしてい る (14) 第 36 委 任 20 内 田 貴 民 法 Ⅱ( 第 3 版 ) ( 東 京 大 学 出 版 会 21 内 田 前 掲 20 283 頁 等 2011 年 )250 頁 等 40

委 任 について 要 綱 仮 案 は 受 任 者 は 委 任 者 の 許 諾 を 得 たとき 又 はやむを 得 ない 事 由 があるときでなければ 復 受 任 者 ( 受 任 者 から 更 に 委 任 を 受 けた 者 )を 選 任 できないと している 現 行 法 上 委 任 にも 代 理 に 関 する 民 法 104 条 ( 任 意 代 理 人 による 復 代 理 人 の 選 任 )の 規 定 を 類 推 適 用 できる 22 との 考 えが 一 般 的 なことから これを 条 文 上 明 記 するもの である (15) 第 28 定 型 約 款 取 引 が 一 対 一 から 一 対 多 数 に 広 がっていったことに 伴 い 保 険 や 公 的 サービスの 分 野 で 登 場 した 約 款 (なお 中 間 試 案 では 約 款 その 後 の 議 論 では 定 型 条 項 要 綱 仮 案 では 定 型 約 款 という 言 葉 が 用 いられている )については 民 法 には 規 定 が 置 かれて おらず 新 たな 対 応 が 必 要 ではないかとの 意 見 がある 23 そのため 中 間 試 案 では 1 約 款 の 定 義 2 約 款 の 組 入 要 件 ( 約 款 に 契 約 としての 拘 束 力 を 認 めるための 要 件 ) 3 不 意 打 ち 条 項 ( 組 入 要 件 を 充 たすことにより 契 約 としての 拘 束 力 が 認 められた 条 項 であっても その 約 款 に 含 まれているとは 合 理 的 に 予 測 できない 条 項 )の 規 制 4 変 更 要 件 5 不 当 条 項 規 制 ( 約 款 に 含 まれる 個 別 の 契 約 条 項 のうち 当 該 条 項 が 存 在 しない 場 合 と 比 較 して 約 款 使 用 者 の 相 手 方 に 過 大 な 不 利 益 を 与 えると 認 められ るものを 無 効 とする 旨 の 規 定 ) 等 について 規 律 をすることとされた 要 綱 仮 案 では 基 本 的 には 中 間 試 案 の 方 向 が 踏 襲 されているが 例 えば 2の 約 款 の 組 入 要 件 に 関 して それまでは 組 入 要 件 を 充 たして 契 約 の 内 容 となったものについてその 内 容 の 当 否 等 を 議 論 するという 構 造 であったものを 不 当 な 約 款 は 契 約 内 容 にならず 不 当 で ない 約 款 は 契 約 内 容 になるという 従 前 とはいわば 逆 の 構 造 を 採 用 した 点 については 疑 問 も 示 されている 24 さらに 3の 不 意 打 ち 条 項 について 不 意 打 ち 条 項 か 否 かの 判 断 を 解 釈 に 委 ねることとした 点 に 関 して 解 釈 に 委 ねられたままでは 法 的 安 定 性 を 害 するのでは ないか 5の 不 当 条 項 規 制 について 無 効 とすべき 程 度 に 不 当 な 条 項 であれば 信 義 則 公 序 良 俗 等 の 一 般 法 理 によって 個 別 の 事 情 に 応 じて 解 決 することが 可 能 かつ 妥 当 で 不 当 条 項 規 定 を 置 く 理 由 にはならないのではないかといった 意 見 も 経 済 界 等 から 出 されてい る また そもそも 約 款 の 定 義 が 明 確 ではなく どこまでが 約 款 として 規 律 されるのか 不 明 確 である 組 入 要 件 と 不 意 打 ち 条 項 や 不 当 条 項 は 明 確 に 分 けられず 内 容 が 不 当 なもの だけ 効 力 を 否 定 すればよいのではないかといった 意 見 がある 一 方 で 約 款 の 拘 束 力 を 肯 定 するためには 約 款 による 契 約 の 合 意 という 意 味 での 組 入 要 件 は 不 可 欠 である 等 の 意 見 もあ り 結 局 定 型 約 款 については 要 綱 案 のとりまとめまでに 結 論 を 出 すこととされている いずれにしても 約 款 は 経 済 界 はもとより 消 費 者 にも 極 めて 関 心 の 高 い 分 野 であるこ とから 要 綱 案 における 扱 いがどのようなものになるか 注 目 される 22 内 田 前 掲 20 293 頁 等 23 内 田 参 考 文 献 1 175 頁 以 下 等 24 奥 田 松 岡 債 権 関 係 規 定 の 見 直 し 参 考 文 献 35 頁 ( 松 岡 発 言 ) 河 上 正 二 約 款 による 取 引 同 98 頁 41

4.おわりに 前 述 のとおり 要 綱 仮 案 の 内 容 は 極 めて 多 岐 にわたっており 代 理 多 数 当 事 者 など 紹 介 できなかった 項 目 も 多 い また 中 間 的 論 点 整 理 や 中 間 試 案 で 検 討 が 行 われながら 最 終 的 に 採 用 されなかった 項 目 も 多 数 存 在 する( 中 間 試 案 の 第 1 法 律 行 為 総 則 の 法 律 行 為 の 意 義 や 現 代 型 暴 利 行 為 の 定 式 化 第 26 契 約 に 関 する 基 本 原 則 等 の 付 随 義 務 及 び 保 護 義 務 第 29 契 約 の 解 釈 第 32 事 情 変 更 の 法 理 第 33 不 安 の 抗 弁 権 第 34 継 続 的 契 約 等 これに 伴 い 大 項 目 が 46 小 項 目 が 240 であった 中 間 試 案 から 要 綱 仮 案 では 大 項 目 が 39 小 項 目 が 199( 他 に 留 保 された 項 目 が4)に 減 少 している 25 ) さ らに パブリック コメント 等 を 受 け 要 綱 仮 案 の 内 容 の 多 くの 部 分 が 現 在 の 判 例 実 務 を 追 認 し 現 行 法 を 大 幅 に 変 更 するものではなくなったこともあり これならば 改 正 は 不 要 といった 意 見 さえ 聞 こえてきそうである 25 といった 声 もないわけではない しか しながら 要 綱 を 受 けて 民 法 等 の 改 正 が 行 われれば 実 務 界 を 始 め 国 民 生 活 に 様 々な 影 響 が 生 じることは 間 違 いない 要 綱 を 受 けた 民 法 等 の 改 正 法 案 が 国 会 に 提 出 された 場 合 国 民 生 活 への 影 響 を 踏 まえ 国 会 における 多 角 的 で 広 範 な 論 議 は 不 可 欠 であるし また 仮 に 改 正 法 が 成 立 した 場 合 の 国 民 への 十 分 な 周 知 や 施 行 のための 方 策 26 も 必 要 であると 思 われる 参 考 文 献 1 内 田 貴 民 法 改 正 - 契 約 のルールが 百 年 ぶりに 変 わる ( 筑 摩 書 房 2011 年 ) 2 内 田 貴 債 権 法 の 新 時 代 ( 商 事 法 務 2009 年 ) 3 特 集 債 権 法 改 正 を 論 ずる- 要 綱 仮 案 の 決 定 を 受 けて 法 律 時 報 86 巻 12 号 (2014 年 11 月 ) 4 山 野 目 章 夫 民 法 ( 債 権 関 係 ) 改 正 のビューポイント NBL No1038(2014 年 11 月 )~( 連 載 中 ) 5 総 特 集 民 法 ( 債 権 関 係 )の 改 正 に 関 する 要 綱 仮 案 NBL No1034(2014 年 9 月 ) 6 東 京 弁 護 士 会 法 友 全 期 会 債 権 法 改 正 特 別 委 員 会 編 速 報! 現 行 条 文 比 較 債 権 法 改 正 ( 第 一 法 規 2014 年 ) (ひしぬま せいいち) 25 平 野 保 証 参 考 文 献 3 72 頁 26 鎌 田 薫 中 井 康 之 道 垣 内 弘 人 前 掲 14 93 頁 ( 中 井 発 言 )は 例 えば 不 法 行 為 債 権 が 20 年 の 除 斥 期 間 から 消 滅 時 効 に 変 わる 点 について いつ 発 生 した 債 権 から 適 用 されるかという 問 題 点 を 挙 げている 42