森 林 環 境 フォーラム 報 告 資 料 奥 入 瀬 渓 流 事 件 判 決 について 弁 護 士 平 成 22 年 11 月 20 日 お ぼ な い 小 保 内 義 和 第 1 事 案 の 概 要 と 原 告 ( 被 害 者 )の 請 求 の 内 容 1 平 成 15 年 8 月 4 日 十 和 田 八 幡 平 国 立 公 園 の 奥 入 瀬 渓 流 の 石 ヶ 戸 地 区 所 在 の 遊 歩 道 付 近 で 観 光 客 であるA 子 ( 当 時 39 歳 理 学 博 士 号 を 取 得 し 著 名 な 研 究 所 の 任 期 付 研 究 員 ) が 昼 食 をとろうとして 立 っていたところ 地 上 約 10 mの 高 さから 長 さ 約 7m 直 径 約 20 cmの 大 きなブナの 枯 れ 枝 がA 子 に 落 下 直 撃 し A 子 は 重 傷 を 負 い 1 年 近 く 入 院 生 活 を 続 けたが 身 体 障 害 者 福 祉 法 に 基 づく 等 級 表 で 下 肢 1 級 1 号 ( 両 下 肢 の 機 能 を 全 廃 したもの)に 該 当 する 後 遺 症 を 負 った そこで A 子 は 本 件 事 故 により 約 2 億 2000 万 円 の 損 害 を 被 り 青 森 県 と 国 がその 賠 償 責 任 を 負 うとして 提 訴 した また A 子 の 内 縁 の 夫 ( 後 に 婚 姻 ) であるB 男 も 近 親 者 の 重 大 事 故 による 固 有 の 慰 謝 料 等 請 求 権 があるとして 1100 万 円 の 支 払 を 求 めた 2 1 審 判 決 書 によれば 訴 訟 では A 子 らは 県 及 び 国 の 責 任 原 因 として 大 要 次 の 各 点 を 主 張 した( 裁 判 所 は 後 記 第 2のとおり 県 はア 国 はウのみを 判 断 して 両 者 の 責 任 を 認 め 他 の 主 張 の 当 否 については 判 断 しなかった ) 県 の 責 任 原 因 ア 国 家 賠 償 法 2 条 1 項 ( 公 の 営 造 物 の 管 理 の 瑕 疵 ) 本 件 事 故 が 発 生 した 場 所 は 青 森 県 が 土 地 所 有 者 である 国 から 遊 歩 道 敷 として 無 償 で 借 り( 国 有 林 野 の 管 理 経 営 に 関 する 法 律 に 基 づく ) 遊 歩 道 として 整 備 している 土 地 の 一 部 である( 厳 密 に 言 えば 事 故 の 発 生 地 点 は 遊 歩 道 内 ではなく その 付 近 であり 遊 歩 道 の 一 端 と 一 端 との 中 間 に 所 在 する 地 点 である 判 決 では 空 白 域 と 表 現 されている ) よって 県 は 本 件 空 白 域 ( 本 件 ブナの 木 及 び 事 故 現 場 )も 本 件 遊 歩 道 と 共 に 事 実 上 管 理 しており 本 件 ブナの 木 及 び 事 故 現 場 は 公 の 営 造 物 に あたる そして 本 件 事 故 現 場 付 近 は 多 数 の 観 光 客 が 訪 れる 場 所 なので -1-
枯 死 による 落 枝 の 危 険 があり その 予 見 が 可 能 であった 本 件 ブナの 木 に 対 し 伐 採 や 防 止 柵 等 の 措 置 を 講 ずべきであるのに これをしなかったので 本 件 ブナの 木 の 管 理 に 瑕 疵 があったと 言 え その 瑕 疵 により 原 告 らに 生 じ た 損 害 を 賠 償 すべき 責 任 を 負 う イ 国 家 賠 償 法 1 条 1 項 ( 公 権 力 の 違 法 な 行 使 ) 本 件 事 故 現 場 周 辺 には 多 数 の 観 光 客 が 立 ち 入 っており また 本 件 ブナ の 木 は 枯 死 し 落 枝 の 可 能 性 が 高 い 状 態 であった 県 は 本 件 遊 歩 道 に 隣 接 する 本 件 事 故 現 場 を 管 理 していたのであるから 管 理 責 任 者 を 通 じて 現 場 の 安 全 性 を 保 持 し 観 光 客 等 に 危 害 を 及 ぼさないようにする 職 務 上 の 義 務 が あったのに これを 怠 ったので これによる 損 害 賠 償 責 任 を 負 う ウ 民 法 717 条 2 項 ( 工 作 物 の 占 有 者 責 任 ) 本 件 ブナの 木 は 竹 木 の 支 持 に 瑕 疵 がある 状 態 ( 民 法 717 条 2 項 )である ところ 県 は 本 件 ブナの 木 の 占 有 者 であるから その 瑕 疵 による 損 害 の 賠 償 責 任 を 負 う エ 安 全 配 慮 義 務 違 反 ( 観 光 誘 致 に 伴 う 契 約 類 似 の 社 会 的 接 触 関 係 ) 県 及 び 国 は 本 件 事 故 現 場 付 近 を 特 別 名 勝 地 域 内 にある 観 光 地 として 観 光 客 を 誘 致 等 しており 観 光 客 たるA 子 らに 対 し 本 件 ブナの 木 の 落 枝 等 を 予 見 し 危 険 を 回 避 ( 除 去 )すべき 注 意 義 務 ( 安 全 配 慮 義 務 )を 負 って いたのに これを 怠 ったので これによる 損 害 賠 償 責 任 を 負 う 国 の 責 任 原 因 ア 国 家 賠 償 法 2 条 1 項 ( 公 の 営 造 物 の 管 理 の 瑕 疵 ) 前 記 アのとおり 本 件 ブナの 木 及 び 事 故 現 場 は 公 の 営 造 物 にあたるが 国 は 所 有 者 として 県 と 共 同 でこれを 管 理 しているので 国 にも 管 理 の 瑕 疵 があったと 言 うべきである イ 国 家 賠 償 法 1 条 1 項 ( 公 権 力 の 違 法 な 行 使 ) 前 記 イと 同 様 国 は 所 有 者 管 理 者 として 本 件 ブナの 木 の 落 枝 等 の 危 険 を 察 知 し 被 害 を 未 然 に 防 止 すべき 職 務 上 の 義 務 があったのに これを 怠 ったので これによる 損 害 賠 償 責 任 を 負 う -2-
ウ 民 法 717 条 2 項 ( 工 作 物 の 占 有 者 責 任 ) 前 記 ウと 同 様 国 は 本 件 ブナの 木 の 所 有 者 であるから 本 件 ブナの 木 の 支 持 の 瑕 疵 による 損 害 の 賠 償 責 任 を 負 う エ 安 全 配 慮 義 務 違 反 ( 契 約 類 似 の 社 会 的 接 触 関 係 ) 前 記 エのとおり 3 なお 上 記 2に 対 する 県 及 び 国 の 反 論 の 骨 子 は 次 のとおり 県 の 反 論 ア 国 家 賠 償 法 2 条 1 項 ( 公 の 営 造 物 の 管 理 の 瑕 疵 )について 本 件 ブナの 木 及 び 事 故 現 場 ( 空 白 域 )について 県 には 何 ら 管 理 権 限 が ないので 管 理 責 任 がなく 本 件 ブナの 木 及 び 事 故 現 場 は 県 が 管 理 する 公 の 営 造 物 にあたらない また 本 件 ブナの 木 の 落 枝 を 予 見 することは 不 可 能 であったので その ような 危 険 があることをもって 瑕 疵 = 営 造 物 が 通 常 有 すべき 安 全 性 を 欠 く 状 態 にあったとは 言 えない また 自 然 公 園 の 指 定 目 的 上 本 件 事 故 現 場 付 近 の 植 生 は 現 状 のまま 自 然 の 推 移 に 委 ねることを 基 本 とし 無 差 別 に 伐 採 して 管 理 することは 許 されていなかったこと 等 から 県 は 本 件 ブナの 木 の 落 枝 を 回 避 できなかったので その 点 でも 県 の 管 理 に 瑕 疵 があったとは 言 えない イ 国 家 賠 償 法 1 条 1 項 ( 公 権 力 の 違 法 な 行 使 )について 県 は 本 件 事 故 現 場 に 何 ら 管 理 権 限 を 有 しないので 管 理 責 任 がないこと 等 から 同 条 項 に 基 づく 危 険 防 止 の 職 務 上 の 義 務 違 反 は 認 められない ウ 民 法 717 条 2 項 ( 工 作 物 の 占 有 者 責 任 )について 本 件 ブナの 木 は 天 然 木 であるから 竹 木 に 該 当 しない また 天 然 木 として 通 常 有 すべき 安 全 性 を 欠 くものではないから 支 持 の 瑕 疵 にも 該 当 しない エ 安 全 配 慮 義 務 違 反 ( 契 約 類 似 の 社 会 的 接 触 関 係 ) 原 告 らと 県 との 間 に 安 全 配 慮 義 務 の 前 提 となる 特 別 な 社 会 的 接 触 関 係 はない -3-
ア 国 の 反 論 国 家 賠 償 法 2 条 1 項 ( 公 の 営 造 物 の 管 理 の 瑕 疵 )について 一 般 の 国 有 林 野 ( 本 件 ブナの 木 )は 直 接 に 公 の 目 的 に 供 されているもの ではない 上 本 件 ブナの 木 は 直 接 公 共 の 用 に 供 するため 植 栽 したものでは なく 自 然 公 園 内 に 自 生 したものであるから 公 の 営 造 物 に 該 当 しない また 国 は 本 件 事 故 現 場 付 近 を 観 光 客 等 に 遊 歩 道 等 として 利 用 させてお らず 国 が 本 件 事 故 現 場 を 公 の 目 的 のため 共 用 したことはない(ので 本 件 事 故 現 場 をもって 国 が 管 理 する 公 の 営 造 物 とは 言 えない ) その 他 予 見 可 能 性 や 回 避 可 能 性 ( 管 理 の 瑕 疵 の 否 定 )につき 県 の 主 張 と 同 じ イ 国 家 賠 償 法 1 条 1 項 ( 公 権 力 の 違 法 な 行 使 )について 本 件 ブナの 木 及 び 事 故 現 場 周 辺 には 本 件 事 故 等 の 被 害 が 発 生 する 具 体 的 な 危 険 性 が 認 められる 状 況 になかったので 営 林 署 の 公 務 員 が 個 々の 国 民 に 職 務 上 の 法 的 義 務 ( 危 険 防 止 義 務 )を 負 担 することはない ウ 民 法 717 条 2 項 ( 工 作 物 の 占 有 者 責 任 )について エ 安 全 配 慮 義 務 違 反 ( 契 約 類 似 の 社 会 的 接 触 関 係 ) いずれも 県 の 主 張 と 同 じ 第 2 主 要 争 点 に 対 する 第 1 審 ( 東 京 地 裁 平 成 19 年 1 月 17 日 判 決 )の 判 断 要 旨 1 裁 判 所 の 判 断 の 概 要 青 森 県 については 国 賠 法 2 条 の 責 任 のみを 検 討 し 本 件 事 故 現 場 ( 空 白 域 ) が 本 件 遊 歩 道 と 一 体 であることなどから 本 件 事 故 が 青 森 県 が 管 理 する 本 件 遊 歩 道 の 管 理 の 瑕 疵 によって 生 じたものであると 判 断 ( ブナの 木 を 営 造 物 としたのではなく 本 件 現 場 が 営 造 物 たる 遊 歩 道 の 一 部 であると 認 定 した) し 同 条 に 基 づく 賠 償 責 任 を 認 めた 国 については 民 法 717 条 2 項 の 責 任 のみを 検 討 し 天 然 木 であっても 一 定 の 場 合 に 竹 木 に 該 当 し 本 件 ブナの 木 はこれに 当 てはまると 共 に 多 くの 観 光 客 等 が 散 策 等 のため 立 ち 入 る 場 所 に 存 在 したことに 照 らし その 有 すべき 安 全 性 を 欠 いた 状 態 にあったので その 支 持 ( 維 持 管 理 )に 瑕 疵 があったと -4-
して 同 条 に 基 づく 賠 償 責 任 を 認 めた なお いずれの 責 任 についても 過 失 相 殺 はしなかった(A 子 の 利 用 態 様 が 一 般 の 観 光 客 の 行 動 として 特 に 問 題 がなかったこと 及 び 本 件 事 故 現 場 が 当 時 A 子 のような 一 般 の 観 光 客 が 自 由 に 立 ち 入 ることが 許 された 状 態 にあったこと などが 重 視 されたと 見 られる ただ 仮 に 事 故 直 前 の 木 の 状 態 が 素 人 目 にも 今 すぐ 落 枝 しそうだと 分 かる 状 態 であったとか 一 般 人 でも 危 険 を 予 知 しうる 兆 候 が 存 在 していたのであれば 過 失 相 殺 はあり 得 たかもしれない ) 2 青 森 県 の 責 任 ( 国 家 賠 償 法 2 条 1 項 = 公 の 造 営 物 の 管 理 の 瑕 疵 ) 本 件 事 故 現 場 ( 遊 歩 道 の 隣 接 地 )が 公 の 営 造 物 に 該 当 すること 国 賠 法 2 条 1 項 の 公 の 営 造 物 とは 国 等 により 直 接 に 公 の 目 的 のため 供 用 されている 有 体 物 物 的 設 備 をいう 本 件 事 故 現 場 である 空 白 域 は 県 が 国 から 貸 与 され 設 置 管 理 する 遊 歩 道 の 外 側 にあるが 本 件 空 白 域 に 面 する 二 箇 所 の 遊 歩 道 の 端 ( 起 点 )から 他 に 通 ずる 道 はなく 遊 歩 道 の 利 用 者 は 本 件 空 白 域 を 通 行 するほかなく 一 続 きの 遊 歩 道 として 利 用 することが 予 定 されていたと 解 せざるを 得 ない 形 状 をなしていること ( 遊 歩 道 との 接 続 性 ) 事 故 現 場 付 近 に 県 が 設 置 した 石 ヶ 戸 休 憩 所 は 年 間 数 十 万 人 の 観 光 客 が 利 用 し その 多 くが 本 件 事 故 現 場 付 近 を 散 策 するに 際 し 本 件 遊 歩 道 や 空 白 域 に 立 ち 寄 っていたこと( 県 が 設 置 した 施 設 との 一 体 性 や 観 光 地 としての 一 体 的 利 用 )から 本 件 事 故 現 場 を 含 む 石 ヶ 戸 一 帯 は 全 体 として 奥 入 瀬 で 休 憩 施 設 等 の 設 備 を 備 えた 唯 一 の 渓 流 散 策 地 として 機 能 していたものというべき であって 県 は 本 件 事 故 現 場 を 含 む 本 件 空 白 域 についても これを 事 実 上 管 理 し これを 含 めた 周 辺 一 帯 を 本 件 遊 歩 道 と 一 体 として 観 光 客 らの 利 用 に 供 していたものというべき よって 本 件 事 故 現 場 付 近 は 県 により 公 の 目 的 のため 供 用 されているというべきである 本 件 事 故 現 場 ( 公 の 営 造 物 )の 管 理 に 瑕 疵 があったこと 営 造 物 の 管 理 の 瑕 疵 とは 営 造 物 が 通 常 有 すべき 安 全 性 を 欠 いている ことをいい 本 件 では 県 の 管 理 により 本 件 事 故 現 場 付 近 の 通 行 の 安 全 性 が 確 保 されていたかどうかが 問 題 となる -5-
本 件 ブナの 木 及 びその 他 の 樹 木 の 枝 は 本 件 事 故 現 場 付 近 及 び 本 件 遊 歩 道 を 含 む 観 光 客 が 通 常 通 行 ないし 立 ち 入 る 場 所 の 頭 上 を 覆 っており この 樹 木 枝 は 年 月 の 経 過 によりいつ 落 下 するか 分 からないままで 観 光 客 等 は 常 に 落 木 等 の 危 険 に 晒 されていたのに 県 は 年 1 回 歩 道 等 の 安 全 性 の 点 検 を 行 ったのみで 落 木 等 の 危 険 のある 枝 の 伐 採 や 立 入 制 限 の 柵 などの 設 置 をせず 掲 示 等 による 観 光 客 への 注 意 喚 起 の 処 置 を 講 ずることもなかったので 本 件 事 故 現 場 付 近 は 県 により 通 行 の 安 全 性 が 確 保 されていなかったと 言 わざる を 得 ず その 管 理 について 通 常 有 すべき 安 全 性 を 欠 いていたというべき また 山 林 における 落 枝 は 通 常 みられる 自 然 現 象 なので 一 般 的 な 事 故 発 生 の 予 見 は 可 能 であり 本 件 落 枝 は 無 風 状 態 下 で 生 じており 自 然 現 象 により 生 じたものと 認 められる また 県 による 伐 採 には 法 令 上 の 指 定 による 制 約 があるが 伐 採 が 全 面 禁 止 され 県 の 判 断 裁 量 が 否 定 されるまでのものでは ないので 本 件 事 故 が 県 にとって 不 可 抗 力 回 避 不 能 なものとは 言 えない よって 本 件 事 故 は 県 の 遊 歩 道 の 管 理 の 瑕 疵 により 生 じたものと 言 える 3 国 の 責 任 ( 民 法 717 条 2 項 = 占 有 又 は 所 有 する 竹 木 の 支 持 の 瑕 疵 ) 本 件 ブナの 木 が 同 条 の 竹 木 に 該 当 すること 天 然 木 であっても 占 有 者 等 が 一 定 の 管 理 を 及 ぼし その 効 用 を 享 受 して いるような 場 合 には これに 対 する 支 持 があることに 他 ならないので 本 項 の 責 任 を 肯 定 しうる 本 件 ブナの 木 は 天 然 木 だが これを 含 む 山 林 は 三 八 上 北 営 林 署 長 が 管 理 し 森 林 と 人 との 共 生 林 として 景 観 風 致 を 維 持 し ており 同 営 林 署 は 自 らも 環 境 省 や 県 の 主 催 する 合 同 点 検 に 毎 年 参 加 して 山 林 の 遊 歩 道 に 近 接 した 部 分 につき 危 険 性 を 認 識 した 場 合 に 対 処 する 方 策 を とっていたから このようなことを 含 む 営 林 署 の 管 理 行 為 は 少 なくとも 本 件 ブナの 木 を 含 む 本 件 遊 歩 道 に 近 接 した 山 林 部 分 に 存 する 自 然 木 に 対 して 支 持 をしているものと 言 わざるを 得 ないから 本 件 ブナの 木 が 自 然 木 で あっても これが 本 件 事 故 現 場 のような 多 くの 人 が 立 ち 入 る 場 所 にある 立 木 として 通 常 有 すべき 安 全 性 を 欠 いた 状 態 にあるときには その 支 持 の 瑕 疵 に 基 づく 責 任 が 肯 定 される -6-
本 件 落 枝 が 竹 木 の 支 持 の 瑕 疵 に 該 当 すること 本 件 事 故 現 場 付 近 を 含 む 本 件 遊 歩 道 及 び 本 件 空 白 域 には 多 くの 観 光 客 等 が 立 ち 入 り 散 策 や 休 憩 のためこれらの 場 所 を 利 用 していたこと 奥 入 瀬 渓 流 石 ヶ 戸 を 散 策 する 観 光 客 等 の 頭 上 を 樹 木 の 枝 葉 が 広 く 覆 っていたこと 事 故 当 時 は 晴 天 でほぼ 無 風 状 態 であったことなどを 考 慮 すると 多 くの 観 光 客 等 が 散 策 や 休 憩 のため 立 ち 入 る 場 所 に 存 在 した 本 件 ブナの 木 は その 有 すべき 安 全 性 を 欠 いた 状 態 にあったと 言 わざるを 得 ないから 支 持 に 瑕 疵 があった ものとして 国 は 木 の 占 有 者 として 賠 償 責 任 を 負 う(なお 前 記 のとおり 事 故 の 予 見 可 能 性 や 回 避 可 能 性 がないとは 言 えない ) 4 裁 判 所 が 認 定 した 損 害 (A 子 約 1 億 4555 万 円 B 男 330 万 円 )の 概 要 損 害 の 費 目 治 療 費 入 院 付 添 費 入 院 雑 費 付 添 交 通 費 症 状 固 定 後 の 介 護 費 ( 約 5250 万 円 日 額 8000 円 365 ライフ ニッツ 係 数 ) 家 屋 改 造 費 等 (バリアフリー 工 事 台 所 トイレ ユニットハ スで 334 万 円 ) 逸 失 利 益 ( 約 4136 万 円 前 年 度 の 収 入 就 労 可 能 年 数 のライフ ニッツ 係 数 ) 入 院 慰 謝 料 ( 244 万 円 ) 後 遺 症 慰 謝 料 ( 3000 万 円 ) 弁 護 費 ( 1320 万 円 ) B 男 の 慰 謝 料 ( 300 万 円 ) 弁 護 費 ( 30 万 円 ) 第 3 上 級 審 の 判 断 要 旨 その 他 1 控 訴 審 ( 東 京 高 裁 平 成 19 年 1 月 17 日 判 決 ) なお A 子 が 附 帯 控 訴 結 論 と 理 由 の 骨 子 県 国 の 控 訴 は 棄 却 A 子 の 附 帯 控 訴 によりA 子 の 請 求 認 容 額 が 約 5000 万 円 増 額 ( 改 造 費 の 増 額 と 逸 失 利 益 につき 大 卒 女 子 賃 金 センサス 採 用 ) 判 決 理 由 は 大 要 民 法 717 条 2 項 の 解 釈 に 関 する 補 足 微 修 正 のほか 県 国 の 控 訴 理 由 に 対 する 反 論 ( 主 に 本 件 空 白 域 を 県 が 管 理 し ブナの 木 を 国 が 占 有 していたこと 及 び 県 に 伐 採 権 限 がないからといって 責 任 がない とは 言 えないこと 県 が 事 実 上 管 理 していることをもって 国 の 占 有 者 として の 責 任 がないとは 言 えないことなど)を 簡 単 に 述 べているに 止 まる 県 の 責 任 について( 国 賠 法 2 条 1 項 = 公 の 営 造 物 の 管 理 の 瑕 疵 に 該 当 ) -7-
県 は 1 県 は 本 件 空 白 域 ブナの 木 の 管 理 主 体 ではなく ( 林 野 庁 が 管 理 ) 合 同 点 検 での 危 険 木 の 判 定 は 環 境 省 が 行 い 県 は 補 助 者 に 過 ぎないこと 2 本 件 事 故 現 場 周 辺 は 自 然 の 推 移 に 委 ねる 管 理 方 法 が 採 られ 観 光 客 にも 相 当 程 度 周 知 されていること 融 雪 期 でなく 台 風 通 過 直 後 でもないのに 無 風 で 落 枝 が 発 生 するとは 考 えにくい( 予 測 困 難 )こと 県 が 環 境 省 の 許 可 を 得 ず 伐 採 すると 自 然 公 園 法 違 反 で 罰 せられること( 回 避 困 難 )から 瑕 疵 があると 認 められるべきでないと 主 張 した これに 対 し 判 決 は 1 県 が 本 件 ブナの 木 の 周 囲 に 植 生 復 元 のため 立 入 防 止 柵 を 設 置 し 草 木 類 移 植 は 県 が 主 体 的 に 行 っていたこと 等 から それらの 設 置 等 に 林 野 庁 の 承 諾 等 が 必 要 であったとしても 県 が 本 件 空 白 域 を 事 実 上 管 理 していたとの 判 断 は 左 右 されない 2 本 件 現 場 が 観 光 客 が 多 数 参 集 する 場 所 である 以 上 自 然 の 推 移 に 委 ねる 管 理 方 法 が 採 られていたとしても 安 全 性 への 社 会 的 期 待 は 高 かったというべきで 本 件 ブナの 木 の 状 況 等 から 県 や 国 には 周 到 な 安 全 点 検 が 求 められていたというべきである また 本 件 落 枝 は 予 測 困 難 とは 言 えず 結 果 の 回 避 が 困 難 であったとも 言 えない( 県 は 伐 採 権 限 が 国 から 与 えられなかったとしても 国 への 進 言 や 警 告 表 示 などによる 結 果 回 避 措 置 を 講 じ 得 た)として 県 の 主 張 を 退 けた 国 の 責 任 について( 民 法 717 条 2 項 = 占 有 所 有 竹 木 の 支 持 の 瑕 疵 ) 国 は 1 竹 木 は 天 然 木 に 限 るべき 2 支 持 とは 支 柱 を 施 すなどの 物 理 的 措 置 を 意 味 する( ので 国 は 支 持 をしていないから 責 任 がない) 3 本 件 ブナの 木 には 瑕 疵 は 認 められるべきでない( 伐 採 権 限 がなかった 点 を 除 き 県 の 上 記 主 張 と 同 視 )と 主 張 した これに 対 し 判 決 は 1 天 然 木 だから 竹 木 に 該 当 しないという 解 釈 は 条 文 の 文 言 や 天 然 木 も 危 険 を 内 包 していることに 照 らして 採 用 できず 天 然 木 で あるという 事 情 は その 生 立 する 自 然 的 社 会 的 な 状 況 に 反 映 される 限 りで 瑕 疵 の 有 無 を 判 断 する 要 素 として 考 慮 されるに 止 まる 2 支 持 は 竹 木 の 管 理 維 持 を 意 味 する( 土 地 工 作 物 の 保 存 と 同 義 ) 3 上 記 で 述 べた のと 同 様 本 件 ブナの 木 には 瑕 疵 があったと 言 えるとした(なお 国 は 本 件 -8-
ブナの 木 を 自 ら 占 有 している 上 県 が 相 応 の 管 理 権 限 を 有 していないことに 鑑 みると 県 に 事 実 上 の 管 理 があることをもって 国 が 占 有 者 としての 責 任 を 免 れることはできないとしている= 竹 木 の 占 有 者 としての 責 任 の 認 定 ) 2 最 高 裁 上 告 不 受 理 ( 特 段 の 判 断 を 示 さず)で 第 2 審 判 決 が 確 定 3 その 他 国 と 県 との 求 償 関 係 はどうなるのか?( 観 光 地 としての 奥 入 瀬 渓 流 遊 歩 道 を 事 実 上 管 理 し その 安 全 確 保 の 責 任 を 負 っているのが 主 に 県 だとすれば 県 の 負 担 割 合 が 大 きいかもしれない 但 し 2 審 判 決 は 国 も 自 ら 本 件 ブナの 木 を 占 有 していると 判 示 しており そのことと 本 件 空 白 域 への 法 的 な 管 理 権 限 を 併 せ て 考 えれば 県 よりも 責 任 割 合 が 著 しく 下 回 るべきではないということになる のでは) 第 4 同 種 事 件 における 裁 判 所 の 判 断 や 従 来 の 解 釈 論 等 1 公 の 営 造 物 ( 国 賠 法 2 条 ) 公 の 営 造 物 であるか 否 かを 一 体 的 に 判 断 した 例 として 新 幹 線 騒 音 等 訴 訟 ( 名 古 屋 高 判 S60.6.12 判 例 時 報 1150 号 30 頁 )がある( 単 体 では 瑕 疵 の ない 車 両 と 施 設 が 一 体 となって 騒 音 等 ( 瑕 疵 )を 生 じさせているとした ) ま た 公 の 営 造 物 の 管 理 は 国 又 は 公 共 団 体 が 事 実 上 これをなすに 足 る 状 態 であ れば 足 りる( 最 判 S59.11.29) 本 件 も 本 件 事 故 現 場 ( 空 白 域 )を 含 む 一 帯 を 公 の 営 造 物 たる 遊 歩 道 の 一 部 として 県 が 事 実 上 管 理 していたと 判 示 しており これらの 前 例 に 沿 う なお 国 立 公 園 内 の 施 設 等 を 公 の 営 造 物 と 認 めて 管 理 者 側 の 責 任 が 肯 定 された 前 例 として 1 周 回 路 ( 大 阪 地 判 S46.12.7 判 タ 272-167 架 け 橋 からの 転 落 事 故 につき 架 け 橋 そのものに 瑕 疵 があったのではない?が 転 落 防 止 措 置 が 十 分 に 講 じられていないことが 周 回 路 としての 設 置 管 理 の 瑕 疵 にあたると したもの 過 失 相 殺 8 割 ) 2 自 然 歩 道 ( 東 京 地 判 S53.9.18 判 タ 377-103 危 険 防 止 用 の 柵 に 寄 りかかり 谷 底 を 見 ていたところ 柵 が 折 損 して 転 落 死 亡 した もの 過 失 相 殺 4 割 ) 3 吊 り 橋 ( 神 戸 地 判 S58.12.20 判 タ 513-197 ワイヤー -9-
吊 り 橋 の 切 断 による 転 落 死 亡 等 事 故 過 剰 人 数 の 渡 橋 を 理 由 に 過 失 相 殺 3 割 ) などがある( 他 前 例 を 紹 介 した 資 料 としては 東 條 泰 大 自 然 公 園 における 事 故 による 訴 訟 事 例 の 分 析 が 参 照 価 値 が 大 きいと 思 われる ) 2 設 置 管 理 の 瑕 疵 ( 国 賠 法 2 条 ) 公 の 営 造 物 の 設 置 又 は 管 理 とは 民 法 717 条 の 設 置 又 は 保 存 と 同 義 であり また その 瑕 疵 とは 営 造 物 が 通 常 有 すべき 安 全 性 を 欠 いている ことをいうとされる ( 国 賠 訴 訟 実 務 研 究 会 編 改 訂 国 家 賠 償 訴 訟 の 理 論 と 実 際 216 頁 ) そして ( 責 任 を 問 われる 側 にとっての) 事 故 の 予 見 可 能 性 や 回 避 可 能 性 は 通 常 瑕 疵 の 要 素 として 位 置 づけられている( 室 井 ほか コンメンタ ール 行 政 法 Ⅱ 行 政 事 件 訴 訟 法 国 家 賠 償 法 441 頁 ) したがって 訴 訟 では 瑕 疵 の 存 在 を 主 張 する 側 ( 原 告 )は 責 任 追 及 の 対 象 となる 営 造 物 ( 本 件 であれば 本 件 空 白 域 ブナの 木 を 含 めた 一 体 としての 石 ヶ 戸 地 区 の 遊 歩 道 全 体 ということになると 思 われる)が 通 常 有 すべき 性 能 を 欠 くことや 事 故 の 予 見 可 能 性 回 避 可 能 性 があったことを 基 礎 付 ける 事 実 を 請 求 原 因 として 主 張 立 証 しなければならず 他 方 瑕 疵 の 存 在 を 争 う 側 ( 被 告 )は それらが 存 在 しないとの 評 価 を 基 礎 付 ける 事 実 ( 行 政 側 が 十 分 な 事 故 防 止 措 置 を 講 じていたのであれば それを 含 む)を 抗 弁 として 主 張 立 証 すべきことになる( 判 例 タイムズ 1245-103 参 照 ) 本 判 決 の 管 理 の 瑕 疵 の 判 断 は これらに 照 らし ごくオーソドックスな 判 断 を 示 しているように 思 われる 3 竹 木 ( 民 法 717 条 2 項 ) 天 然 木 が 竹 木 に 該 当 するか という 論 点 については 判 例 検 索 ソフト 等 を 調 べた 限 り 正 面 から 論 じた 例 が 見 あたらなかった( 竹 木 の 意 義 について 述 べた 文 献 等 も 特 に 見 られず ) 但 し 大 阪 高 判 S53.4.27( 山 林 中 の 立 木 が 風 で 倒 れて 下 草 刈 り 中 の 耕 作 者 にあたって 死 亡 した 事 故 )は ( 瑕 疵 の 有 無 は) その 立 木 が 生 立 している 状 況 の 社 会 的 な 意 義 に 照 らして 判 断 されるべき ( 立 木 が 枯 れたから 当 然 に 瑕 疵 があるとは 言 えないが) 山 林 原 野 に 生 育 した 立 木 といえども それが 街 道 筋 に 面 した 位 置 にあり その 倒 壊 により 通 行 中 の 車 や -10 -
人 に 危 害 が 加 わる 場 合 はまた 別 個 の 法 律 関 係 となる などと 人 が 造 設 したか 否 かを 問 題 としない 趣 旨 の 判 示 をしており 参 考 になる(このケースでは 問 題 となった 立 木 がほとんど 人 が 近 づかないものであったこと 等 から 責 任 を 否 定 ) なお 工 作 物 等 責 任 ( 民 法 717 条 )の 立 法 趣 旨 である 危 険 責 任 報 償 責 任 の 法 理 からすれば その 物 について 社 会 通 念 上 許 容 し 難 い 危 険 が 生 じていた か という 観 点 を 重 視 するはずなので 本 件 各 判 決 の 判 示 内 容 には 特 に 異 論 は 見 られないと 思 われる( 判 例 評 釈 でも 特 段 の 異 論 なし ) 4 支 持 の 瑕 疵 ( 民 法 717 条 2 項 ) 工 作 物 の 瑕 疵 (1 項 )は 工 作 物 が その 種 類 に 応 じて 通 常 予 想 される 危 険 に 対 し 通 常 備 えているべき 安 全 性 を 欠 いていること であり 設 置 時 に 存 在 していれば 設 置 の 瑕 疵 設 置 後 維 持 管 理 されている 間 に 生 じれば 保 存 の 瑕 疵 とされる( 能 見 加 藤 編 論 点 体 系 判 例 民 法 8 316 頁 ) 支 持 の 瑕 疵 については 独 立 した 定 義 は 見 られないが 上 記 と 同 様 に 考 えてよいと 思 われる よって その 物 ( 本 件 ブナの 木 )が 置 かれていた 状 況 を 総 合 的 に 考 慮 し その 物 の 安 全 に 対 する 社 会 的 期 待 が 大 きかったと 言 えるかどうか を 本 件 判 決 が 重 視 しているのは 当 然 の 判 断 と 思 われる ( 判 例 評 釈 でも 特 段 の 異 論 なし) 第 4 以 上 を 踏 まえた 公 園 管 理 者 の 採 るべき 対 応 に 関 する 一 考 察 1 本 件 判 決 に 対 する 評 価 伝 統 的 な 解 釈 論 や 先 例 などの 延 長 線 上 にある ごくオーソドックスな 判 決 で 法 解 釈 論 として 特 に 驚 くべき 内 容 ではない この 判 決 が 実 務 に 大 きな 衝 撃 を 与 えたのだとすれば それは 従 前 の 先 例 や 通 説 的 な 法 律 論 からすれば 一 般 の 観 光 客 の 自 由 な 出 入 りを 許 容 する 観 光 地 化 された 自 然 公 園 では 観 光 客 が 通 常 の 利 用 をする 限 り その 安 全 性 が 確 保 する 措 置 ( 危 険 箇 所 の 点 検 注 意 喚 起 や 防 止 柵 切 除 等 )を 講 じなけれ ばならないことは 自 明 であったのに それを 怠 っていると 重 大 事 故 が 生 じた 場 合 に 所 有 者 管 理 者 たる 国 や 自 治 体 が 巨 額 の 賠 償 責 任 を 負 うこと( 国 等 には 通 常 それを 防 止 しうる 相 当 な 措 置 を 講 ずべき 義 務 があること ) に 対 する 行 政 側 の 認 識 が 十 分 でなかったことを 示 すものというべきではなかろうか -11 -
2 本 判 決 の 射 程 範 囲 と 公 園 ( 行 政 ) 側 のとるべき 選 択 本 判 決 は 自 然 公 園 内 の 天 然 木 の 落 枝 による 事 故 について 常 に 管 理 者 側 に 賠 償 責 任 を 負 わせることを 内 容 とするものではなく 事 故 の 原 因 となった 事 象 ( 枯 死 落 枝 及 びその 危 険 )がどの 程 度 一 般 的 なものか( 落 雷 による 倒 木 など 特 異 な 事 故 であれば 行 政 の 責 任 が 否 定 されやすいが 自 然 の 枯 死 による 落 枝 で あれば 事 前 に 点 検 し 予 知 が 可 能 であったとして 責 任 が 肯 定 されやすい ) その 事 象 ないし 危 険 による 事 故 を 防 止 するため 管 理 者 側 が 従 前 適 切 な 対 処 をしていたか 否 か 事 故 現 場 が 事 故 発 生 までの 間 どのように 利 用 されていたか ( 本 件 のように 一 般 の 観 光 客 が 多 数 かつ 自 由 に 立 ち 入 ることができる 状 態 か 相 応 の 訓 練 或 いは 覚 悟 を 持 った 者 しか 立 ち 入 ることができない 立 ち 入 ること がない 状 態 となっていたか ) 利 用 者 側 の 利 用 態 様 など 諸 般 の 事 情 に 応 じて 所 有 者 管 理 者 が 負 うべき 義 務 や 責 任 が 異 なる 旨 を 述 べているに 過 ぎない よって 自 庁 自 社 が 管 理 されている 自 然 公 園 等 について 特 段 の 知 識 経 験 のない 一 般 の 観 光 客 が 自 由 に 立 ち 入 ることができる 観 光 地 を 指 向 ( 遊 歩 道 の 設 置 等 )するのであれば 通 常 の 用 法 に 従 って 施 設 利 用 をする( 木 の 下 で 弁 当 を 拡 げて 食 べるなどと 言 うのは その 典 型 というべき) 限 り 事 故 に 遭 う 事 態 が 生 じないよう 点 検 と 危 険 の 除 去 防 止 柵 告 知 等 を 徹 底 すべきであり 現 実 的 にとりうる 相 当 な 措 置 を 講 じてもなお 事 故 の 危 険 を 防 止 できない 場 合 ( 有 毒 ガス 発 生 や 頻 繁 な 落 石 等 が 典 型 )には 全 面 的 な 立 入 禁 止 などの 措 置 も 必 要 になる( 参 照 城 ヶ 倉 渓 谷 遊 歩 道 落 石 事 故 事 件 ) 他 方 一 定 の 経 験 装 備 等 を 積 んだ 者 しか 立 ち 入 らないような 公 園 等 ( 日 本 アルプスのように 日 帰 りが 困 難 な 本 格 的 な 登 山 道 など)であれば その 公 園 等 に 通 常 立 ち 入 る 者 であれば 回 避 できる 危 険 についてまで 除 去 等 の 義 務 が 課 されるとは 考 えにくいが そのような 者 でも 回 避 が 困 難 で かつ 危 険 の 発 生 が 事 前 に 認 識 でき かつ 除 去 等 の 防 止 措 置 が 執 りうる 場 合 には 相 当 な 措 置 を 講 ずべき 義 務 が 課 されると 思 われる( 例 えば 一 般 登 山 客 向 けの 登 山 道 の 一 部 が 台 風 で 不 安 定 な(エキスパートでなければ 滑 落 し 易 い) 状 態 になった 場 合 に は 修 復 迂 回 路 警 告 などの 措 置 を 一 切 講 じずに 放 置 したままであると こ -12 -
れによる 事 故 発 生 の 際 に 管 理 者 等 の 責 任 が 問 われやすいと 思 われる ) もちろん 以 上 とは 別 に 一 般 の 観 光 客 が 自 由 に 立 ち 入 ることが 容 易 な 場 所 であっても 自 然 の 景 観 や 生 育 環 境 に 極 力 手 を 加 えるべきではないので 整 備 をせず 自 然 のままにしておくべきだ という 観 点 はあり 得 るし その 方 が 自 然 公 園 としてのあり 方 や 法 規 制 に 合 致 する 面 もあると 思 われる また 予 算 の 都 合 で 整 備 費 用 が 捻 出 し 難 いケースもあり 得 る しかし 自 然 のまま の 状 態 で 本 件 のように 事 故 の 具 体 的 危 険 が 生 じて いた( 事 故 の 予 見 可 能 性 や 回 避 可 能 性 が 肯 定 される) 場 合 には 事 故 発 生 時 に 管 理 者 等 に 賠 償 責 任 が 問 われる 可 能 性 が 高 いことは 否 定 しようがないので こ の 方 向 を 指 向 する 場 合 立 入 禁 止 や 防 止 柵 警 告 看 板 の 設 置 などにより 一 般 観 光 客 の 立 入 を 極 力 抑 制 する 措 置 を 講 ずべきことになる 最 後 に 賠 償 責 任 論 とは 別 の 話 になるが 観 光 地 化 ( 来 訪 歓 迎 整 備 )か 非 観 光 地 化 ( 立 入 抑 制 未 整 備 )か いずれの 方 針 をとるにせよ 地 域 の 重 要 な 資 源 であり 次 世 代 に 引 き 継 ぐべき 名 勝 地 等 とどのように 向 き 合 うべきかとい う 問 題 は 行 政 の 管 理 担 当 者 の 判 断 のみで 決 するのではなく 適 切 な 情 報 公 開 や 住 民 有 識 者 等 の 意 見 の 聴 取 管 理 等 に 関 するガイドラインの 策 定 遵 守 な ど 合 意 やルールの 形 成 のため 様 々な 工 夫 を 積 み 上 げていく 努 力 が 求 められる ものと 思 われる 以 上 -13 -