財 政 学 @ 埼 玉 大 学 経 済 学 部 1 第 6 回 租 (2) ( 前 ) 2014 年 11 月 4 日 ( 火 ) 担 当 : 天 羽 正 継 ( 高 崎 経 済 大 学 経 済 学 部 経 済 学 科 専 任 講 師 )
2 とは 何 か : 個 人 の に 対 して 課 される 国 以 外 に に 対 して 課 される 国 としては 法 人 の に 対 して 課 される 法 人 もある そのため を 個 人 法 人 を 法 人 と 称 して 区 別 することがある 個 人 の に 対 して 課 される 地 方 としては 個 人 住 民 がある 現 在 は 国 収 入 の 約 3 割 を 占 める(2012 年 度 決 算 では33% 14 兆 円 ) は 租 主 体 にまず 着 目 し それに 帰 属 する 事 実 を 租 客 体 とする 人 能 力 ( 応 能 ) 原 則 に 基 づき 納 者 の 経 済 力 に 合 わせて できるため 誂 え とも 呼 ばれる 現 在 の の 起 源 は 1891 年 にドイツで 導 入 されたもの 次 の 三 つの 特 徴 を 備 える の 累 進 性 差 別 性 勤 労 には 軽 く 資 産 には 重 く 最 低 生 活 費 の 免 最 低 限 を 設 け それに 満 たない には しない
3 をどのように 捉 えるか(1) 周 期 説 ( 源 泉 説 ): 源 泉 と 結 びついた 周 期 的 のみを とみなし 一 時 的 は とみなさない 給 与 など 生 産 要 素 の 提 供 に 対 して 周 期 的 ( 定 期 的 )に 支 払 われる 報 酬 を とし 相 続 や 贈 与 富 くじや 賭 博 の 賞 金 キャピタル ゲインなど 一 時 的 に られた 利 は とはみなさない 資 産 価 値 の 増 加 を キャピタル ゲイン 減 少 を キャピタル ロス と 呼 ぶ 純 資 産 増 価 説 : 一 定 期 間 内 における 純 資 産 の 増 加 を として 捉 える この 場 合 周 期 的 だけでなく 一 時 的 や 帰 属 も に 含 まれる 帰 属 : 持 家 や 資 産 の 保 有 家 事 労 働 自 家 消 費 など 貨 幣 の 受 け 取 りはないものの 実 際 にはそこから 便 益 を 享 受 している ことから 生 じているとみなされる 純 資 産 増 価 説 における は 支 出 の 側 面 からみた 場 合 一 定 期 間 内 における 経 済 力 の 増 加 ( 消 費 + 資 産 の 純 増 ) として 捉 えられる このような 概 念 を 包 括 的 概 念 と 呼 ぶ = 消 費 + 資 産 の 純 増 は Y = C + S にほぼ 等 しい ただし 市 場 を 通 じて 取 引 されるものについてのみ 当 てはまる 収 入 の 側 面 からみた 場 合 は = 周 期 的 + 移 転 + 帰 属 + キャピタル ゲイン となる しかし 包 括 的 概 念 をそのまま 現 実 の 標 準 として 採 用 することは 不 可 能 そのため 実 際 には 包 括 的 概 念 を 理 念 型 としつつ 実 行 可 能 な 概 念 が 模 索 される
4 をどのように 捉 えるか(2) 包 括 的 概 念 消 費 周 期 的 ( 要 素 ) 移 転 ( 相 続 贈 与 ) 帰 属 キャピタル ゲイン 資 産 資 産 期 首 期 末 神 野 直 彦 財 政 学 改 訂 版 191 頁
5 額 の 算 定 (1): 総 合 日 本 の 法 は を 源 泉 別 に10 種 類 に 区 分 ( 利 子 配 当 不 動 産 事 業 給 与 退 職 山 林 譲 渡 一 時 雑 ) 不 動 産 : 不 動 産 等 の 貸 付 による 収 入 事 業 : 会 社 等 に 勤 めずに 事 業 を 営 んでいる 個 人 の 事 業 による 収 入 金 額 から 必 要 経 費 を 差 し 引 いて 求 め られる 給 与 : 給 与 等 の 収 入 金 額 から 給 与 控 除 を 差 し 引 いて 求 められる のうち 最 大 の 比 重 を 占 める 給 与 控 除 の 額 は 収 入 金 額 によって 異 なる 最 低 額 は65 万 円 一 時 : 営 利 を 目 的 とする 継 続 的 行 為 から 生 じた 以 外 で 労 務 その 他 の 役 務 の 対 価 としての 性 質 や 資 産 の 譲 渡 による 対 価 としての 性 質 を 有 しない 懸 賞 金 競 馬 や 競 輪 の 払 戻 金 など 雑 :その 他 の9 種 類 のいずれにも 該 当 しない 公 的 年 金 原 稿 料 印 など 以 上 の5 種 類 の は 基 本 的 に 合 算 された 上 で 累 進 が 適 用 される( 総 合 ) 以 上 の でも 場 合 によっては 合 算 されず 分 離 されることもある 相 続 や 贈 与 帰 属 消 費 などは 含 まれず 包 括 的 概 念 から 乖 離
6 額 の 算 定 (2): 分 離 利 子 配 当 退 職 山 林 譲 渡 は 基 本 的 に その 他 の から 切 り 離 して される ( 分 離 ) 利 子 : 預 貯 金 や 債 券 の 利 子 などの 分 配 に 係 る 配 当 : 株 主 や 出 資 者 が 法 人 から 受 け 取 る 配 当 などの 分 配 に 係 る 退 職 : 退 職 により 勤 務 先 から 支 払 われる 退 職 手 当 などの 山 林 : 山 林 を 伐 採 して 譲 渡 したり 立 木 のままで 譲 渡 することによって 生 じる 譲 渡 : 土 地 建 物 株 式 ゴルフ 会 員 権 などの 資 産 を 譲 渡 することによって 生 じる 利 子 配 当 譲 渡 ( 金 融 )には 基 本 的 に 一 律 20%( 15% 住 民 5%)の が 適 用 される 2008 年 度 までは 金 融 商 品 や の 種 類 ごとに 方 式 がバラバラで 中 立 性 を 損 ねているという 問 題 があるとともに 家 計 が 保 有 する 預 貯 金 を 株 式 に 向 けるという 経 済 政 策 的 な 要 請 もあったことから 現 在 の 制 度 に 改 正 された 退 職 や 山 林 は 長 期 間 かけて 発 生 する であり 短 期 間 で 生 じる 給 与 などとは 同 様 に 扱 えない と 考 えられているために 分 離 される
7 控 除 総 合 される が 決 まると 最 低 生 活 費 を 免 するとともに 納 者 の 個 人 的 事 情 を 勘 案 するために 控 除 が 差 し 引 かれる 控 除 には 基 礎 控 除 配 偶 者 控 除 配 偶 者 特 別 控 除 扶 養 控 除 医 療 費 控 除 社 会 保 険 料 控 除 生 命 保 険 料 控 除 地 震 保 険 料 控 除 障 害 者 控 除 寡 婦 ( 夫 ) 控 除 勤 労 学 生 控 除 小 規 模 企 業 共 済 等 掛 金 控 除 寄 附 金 控 除 雑 損 控 除 がある 基 礎 控 除 :すべての 納 者 に 認 められる 金 額 は38 万 円 配 偶 者 控 除 : 配 偶 者 が を 支 払 うだけの を 稼 していない 人 に 適 用 現 在 廃 止 縮 小 が 政 府 で 検 討 されている 扶 養 控 除 : 子 供 や 親 などを 扶 養 している 人 に 適 用 パートやアルバイトの 場 合 給 与 が 給 与 控 除 65 万 円 と 基 礎 控 除 38 万 円 の 合 計 額 である103 万 円 以 内 であ れば を 課 されない さらに 学 生 の 場 合 勤 労 学 生 控 除 27 万 円 が 適 用 されるので 130 万 円 まで されない 控 除 のうち 一 般 的 に 適 用 されるもの( 給 与 控 除 社 会 保 険 料 控 除 基 礎 控 除 配 偶 者 控 除 扶 養 控 除 特 定 扶 養 控 除 )の 合 計 額 を 最 低 限 と 呼 ぶ
8 累 進 (1) から 控 除 が 差 し 引 かれ が 決 まると それに が 掛 け 合 わされて 額 が 決 定 する の は が 大 きくなるほど 高 くなる 累 進 より 正 確 には の 各 階 層 (ブラケット)に 対 して 適 用 される 超 過 累 進 ( 限 界 ) 超 過 累 進 構 造 の 下 では が 増 加 する 以 上 に 租 負 担 が 増 加 するため 比 例 よりも 大 きな 再 分 配 機 能 を 有 する 現 在 超 過 累 進 は 5%(195 万 円 以 下 ) 10%(195 万 円 超 330 万 円 以 下 ) 20%(330 万 円 超 695 万 円 以 下 ) 23%(695 万 円 超 900 万 円 以 下 ) 33%(900 万 円 超 1,800 万 円 以 下 ) 40%(1,800 万 円 超 )の6 本 かつては 16 本 最 高 75%という 時 代 もあった 2015 年 度 より 4,000 万 円 超 の に 対 して45%の 最 高 が 新 たに 設 定 される 予 定 例 : 超 過 累 進 が10%(100 万 円 以 下 ) 15%(100 万 円 超 500 万 円 以 下 ) 20%(500 万 円 超 1,000 万 円 以 下 ) 30%(1,000 万 円 超 5,000 万 円 以 下 )の 場 合 5,000 万 円 の に 対 する 額 は 以 下 のように 計 算 される 100 0.10 + (500-100) 0.15 + (1,000-500) 0.20 + (5,000-1,000) 0.30 = 1,370 控 除 後 の に 対 する 額 の 比 率 は 平 均 控 除 前 の 額 に 対 する 額 の 比 率 は 実 効 と 呼 ばれる
9 累 進 (2) の 主 な 改 正 の 推 移 1950 年 1953 年 1969 年 1984 年 1987 年 1989 年 1995 年 1999 年 2007 年 2015 年 階 級 階 級 階 級 階 級 階 級 階 級 階 級 階 級 階 級 階 級 % 万 円 % 万 円 % 万 円 % 万 円 % 万 円 % 万 円 % 万 円 % 万 円 % 万 円 % 万 円 5 195 5 195 10 30 10 300 10 330 10 330 10 330 10 330 10.5 50 10.5 150 12 120 12 200 14 60 14 200 15 2 16 300 17 300 18 100 20 5 20 7 20 500 20 600 20 900 20 900 20 695 20 695 21 400 22 150 23 900 23 900 25 8 25 12 25 600 25 600 26 200 30 10 30 20 30 250 30 800 30 800 30 1,000 30 1,800 30 1,800 33 1,800 33 1,800 34 300 35 12 35 30 35 1,000 35 1,000 37 1,800 ~ 38 400 40 15 40 50 40 1,200 40 1,200 40 2,000 40 3,000 40 1,800 ~ 40 4,000 42 500 45 20 45 100 45 1,500 45 1,500 45 4,000 ~ 46 700 50 50 50 200 50 1,000 50 2,000 50 3,000 50 2,000 ~ 50 3,000 ~ 55 50 ~ 55 300 55 2,000 55 3,000 55 5,000 60 500 60 3,000 60 5,000 60 5,000 ~ 65 500 ~ 65 4,500 65 8,000 70 6,500 70 8,000 ~ 75 6,500 ~ ( 刻 み 数 ) 8 11 16 15 12 5 5 4 6 7 (シャウプ 勧 告 ) ( 富 裕 廃 止 ) ( 長 期 制 答 申 ) ( 最 高 限 界 の 引 下 げ) ( 抜 本 改 革 ) ( 制 改 革 ) ( 最 高 限 界 ( 最 高 限 界 ( 源 移 譲 後 ) の 引 下 げ) の 引 上 げ) 出 : 宇 波 弘 貴 編 著 日 本 の 制 平 成 25 年 度 版 93 頁
10 額 控 除 額 が 算 出 された 後 必 要 に 応 じて 一 定 の 金 額 が 額 控 除 として 差 し 引 かれ 納 額 が 確 定 する 主 な 額 控 除 配 当 控 除 : 総 合 される 配 当 がある 場 合 に 原 則 として 配 当 の10%または5%に 相 当 する 金 額 を 控 除 外 国 額 控 除 : 日 本 で される の 中 に 外 国 で 生 じた があり その に 対 してその 外 国 の 法 令 により に 相 当 する 金 が されている 場 合 に 一 定 額 を 控 除 政 党 等 寄 附 金 特 別 控 除 : 政 党 または 政 治 資 金 団 体 に 対 して 一 定 の 寄 附 金 を 支 払 った 場 合 に 寄 附 金 控 除 ( 控 除 ) の 適 用 を 受 ける 場 合 を 除 き 一 定 額 を 控 除 認 定 NPO 法 人 等 寄 附 金 特 別 控 除 : 認 定 NPO 法 人 等 に 対 して 一 定 の 寄 附 金 を 支 払 った 場 合 に 寄 附 金 控 除 ( 控 除 )の 適 用 を 受 ける 場 合 を 除 き 一 定 額 を 控 除
まとめ: の プロセス 11 非 課 分 離 課 控 除 包 括 的 概 念 課 総 合 課 課 額 額 控 除 納 額 = 分 離 については 他 の と 合 算 されずに 別 途 される 出 : 神 野 直 彦 財 政 学 改 訂 版 192 頁