平 成 23 年 度 調 査 研 究 レポート 他 県 の 先 進 取 組 事 例 に 学 ぶ 効 果 的 なメンタルヘルス 対 策 について ~ 新 規 採 用 職 員 や 異 動 者 には 他 の 職 員 より 入 念 なケアが 必 要 ~ 平 成 23 年 11 月 北 海 道 人 事 委 員 会
目 次 はじめに 1 Ⅰ 現 状 とこれまでの 取 組 1 1 全 国 の 自 治 体 における 状 況 1 2 民 間 企 業 における 状 況 2 3 メンタルヘルス 対 策 の 基 本 的 な 考 え 方 3 (1) 仕 事 とストレス (2) 職 場 のストレス 要 因 (3) 職 場 のメンタルヘルス 対 策 (4) 4つのケア (5) 復 職 のプロセスの 重 要 性 4 道 における 精 神 性 疾 患 による 長 期 療 養 者 の 現 状 6 5 道 において 行 われているメンタルヘルス 対 策 の 取 組 とその 問 題 点 6 (1) これまでの 取 組 (2) これまでの 取 組 に 関 する 検 証 Ⅱ 今 後 のメンタルヘルス 対 策 1 他 県 における 先 進 事 例 7 (1) 富 山 県 の 事 例 ~ 精 神 性 疾 患 による 長 期 療 養 者 の 割 合 は 全 国 平 均 の 半 分 程 度 を 維 持 (2) 鳥 取 県 の 事 例 ~ 精 神 性 疾 患 による 長 期 療 養 者 の 割 合 が 平 成 18 年 度 をピークに 減 少 (3) 愛 媛 県 の 事 例 ~ 精 神 性 疾 患 による 長 期 療 養 者 の 割 合 の 上 昇 傾 向 に 歯 止 め 2 今 後 のメンタルヘルス 対 策 の 取 組 に 必 要 な 視 点 10 視 点 1 ~ 職 員 による 定 期 的 な 自 己 診 断 の 機 会 を 確 保 すること 視 点 2 ~ 新 規 採 用 職 員 や 異 動 者 に 対 するケアが 必 要 であること 視 点 3 ~ 管 理 職 員 によるケアは 一 定 程 度 にとどめること 視 点 4 ~ 職 場 風 土 ( 環 境 )の 改 善 を 行 うこと 視 点 5 ~ 外 部 機 関 による 支 援 を 活 用 すること 視 点 6 ~ 人 事 部 門 と 健 康 管 理 部 門 が 付 かず 離 れず の 関 係 であること
はじめに 近 年 道 職 員 の 長 期 療 養 者 のうち 精 神 性 疾 患 *1 を 理 由 とする 者 の 割 合 は 全 国 平 均 よ りも 高 率 で 推 移 しており 公 務 の 運 営 に 多 大 な 影 響 を 与 えることが 懸 念 されている 行 政 課 題 がますます 複 雑 化 多 様 化 してきており 質 の 高 い 政 策 の 立 案 や 行 政 サービ スを 維 持 していくためには 職 員 が 心 身 共 に 健 康 であり 各 々が 能 力 を 最 大 限 に 発 揮 で きる 状 態 での 職 務 への 従 事 が 求 められることから 道 において メンタルヘルス 対 策 は 重 要 な 課 題 であり 早 期 に 効 果 的 な 取 組 を 行 い 職 員 の 心 の 健 康 の 維 持 増 進 が 図 られ る 必 要 がある メンタルヘルス 対 策 の 充 実 については 勤 務 環 境 の 整 備 という 側 面 もあるため 地 方 公 務 員 法 第 8 条 第 1 項 第 2 号 に 基 づく 調 査 研 究 を 行 ったものである Ⅰ 現 状 とこれまでの 取 組 1 全 国 の 自 治 体 における 状 況 財 団 法 人 社 会 経 済 生 産 性 本 部 が 平 成 19 年 7 月 に 発 表 した 自 治 体 に 対 するアンケート 調 査 結 果 *2 によると 約 半 数 の 自 治 体 において 心 の 病 が 増 加 傾 向 にあり 職 員 数 が1,000 名 を 超 える 規 模 の 自 治 体 では 増 加 傾 向 にあるものが 民 間 企 業 を 上 回 る 割 合 になってい る また 心 の 病 による 1ヶ 月 以 上 の 休 業 者 がいる 自 治 体 は53.4%で 規 模 が 大 きいほどその 割 合 は 高 くなっている 一 人 当 たりの 仕 事 量 が 増 えている(94.6%) 個 人 で 仕 事 をする 機 会 が 増 えている (71.8%) 職 場 のコミュニケーションの 機 会 が 減 っている(52.4%) 職 場 の 助 け 合 い が 少 なくなっている(48.8%)などが 特 徴 となっており 住 民 の 行 政 を 見 る 目 が 厳 しく なっている(97.6%)という 点 も 大 きい 職 場 での 助 け 合 いが 減 少 したという 自 治 体 においては 心 の 病 が 増 加 傾 向 にある 割 合 が 高 く(56.3%) 職 場 での 助 け 合 いが 減 少 していないという 自 治 体 との 差 が 顕 著 であ る また 職 場 でのコミュニケーションの 機 会 が 減 少 したという 自 治 体 においても 心 の 病 が 増 加 傾 向 にある 割 合 が 高 く(54.3%) 職 場 でのコミュニケーションの 機 会 が 減 少 していないという 自 治 体 との 差 が 大 きい この 調 査 結 果 においては 今 後 の 自 治 体 行 政 のあり 方 をどういう 方 向 で 地 域 住 民 と 創 り 上 げていくのか そのビジョンを 全 員 でしっかり 共 有 していくこと 組 織 内 外 の 人 の つながりの 構 築 と それを 含 めた 意 味 での 一 人 ひとりの 働 きがいに 焦 点 を 当 てた 活 力 あ る 風 土 づくりをいかに 進 めていくかが 喫 緊 の 課 題 である としている *1 いわゆる メンタル 職 員 について ( 財 ) 地 方 公 務 員 安 全 衛 生 推 進 協 会 及 び 知 事 部 局 ( 道 総 務 部 職 員 厚 生 課 )では WHOの 疾 病 分 類 表 に 基 づき 精 神 及 び 行 動 の 障 害 に 分 類 している 一 方 教 育 庁 では 文 部 科 学 省 の 指 示 により 精 神 神 経 系 疾 患 ( 精 神 及 び 行 動 の 障 害 対 象 者 - 自 律 神 経 失 調 症 対 象 者 ) に 分 類 しているが これらを 統 一 的 に 表 現 するための 慣 例 的 な 用 語 がないことから 便 宜 的 に 医 学 用 語 として 広 く 用 いられている 精 神 性 疾 患 と いう 用 語 を 用 いたものである 精 神 及 び 行 動 の 障 害 には 総 合 失 調 症 躁 病 躁 うつ 病 うつ 病 神 経 症 性 障 害 アルコール 依 存 症 などがあ る *2 メンタルヘルスの 取 り 組 み に 関 する 自 治 体 アンケート 調 査 結 果 1
2 民 間 企 業 における 状 況 公 益 財 団 法 人 社 会 経 済 生 産 性 本 部 の 調 査 *3 (2008 年 8 月 以 下 2008 年 調 査 とい う )によると 半 数 以 上 (56.1%)の 企 業 で 直 近 3 年 間 の 心 の 病 は 増 加 傾 向 に あるとの 結 果 が 出 ていたが 2010 年 8 月 に 発 表 された 同 調 査 *4 ( 以 下 2010 年 調 査 という )によれば 横 ばいと 回 答 した 企 業 が 増 加 傾 向 と 回 答 した 企 業 を 上 回 る 結 果 と なっており 増 加 傾 向 に 一 定 の 歯 止 めがかかってきているものと 分 析 されている 過 去 の 同 調 査 と 比 較 しても 増 加 傾 向 にあると 回 答 した 企 業 の 割 合 は 減 少 傾 向 にあり 横 ばい 又 は 減 少 傾 向 にあると 回 答 した 企 業 の 割 合 が 増 加 している このことは 民 間 企 業 においては メンタルヘルス 対 策 が 一 定 の 効 果 を 上 げている ことを 示 していると 考 えられる 心 の 病 の 最 も 多 い 年 齢 層 については 30 歳 代 が 最 も 多 い(58.2%)が 40 歳 代 とす る 企 業 も 多 い(22.3%) *4 過 去 の 同 調 査 と 比 較 すると 30 歳 代 とした 企 業 の 割 合 が 減 少 し 40 歳 代 とした 企 業 の 割 合 が 増 加 している 心 の 病 の 発 症 年 齢 も 上 昇 している と 考 えられる 2008 年 調 査 における 職 場 の 状 況 の 変 化 と 心 の 病 の 傾 向 の 関 係 についての 分 析 に よると 人 を 育 てる 余 裕 が 職 場 になくなってきている 組 織 職 場 とのつながりを 感 じにくくなってきている 仕 事 の 全 体 像 や 意 味 を 考 える 余 裕 が 職 場 になくなって きている に 対 する 回 答 と 心 の 病 の 増 加 傾 向 との 間 に 統 計 的 に 有 意 な 関 係 がある とのことである まず 人 を 育 てる 余 裕 が 職 場 になくなってきている という 質 問 に 対 し 肯 定 した 企 業 においては 心 の 病 が 増 加 傾 向 にあるとした 企 業 が60.2%であるのに 対 し 否 定 した 企 業 においては 心 の 病 が 増 加 傾 向 にあるとした 企 業 は35.3%である 次 に 組 織 職 場 とのつながりを 感 じにくくなってきている という 質 問 に 対 し 肯 定 した 企 業 においては 心 の 病 が 増 加 傾 向 にあるとした 企 業 が63.5%であるのに 対 し 否 定 した 企 業 においては 心 の 病 が 増 加 傾 向 にあるとした 企 業 が43.8%であ る さらに 仕 事 の 全 体 像 や 意 味 を 考 える 余 裕 が 職 場 になくなってきている という 質 問 に 対 し 肯 定 した 企 業 においては 心 の 病 が 増 加 傾 向 にあるとした 企 業 が61.6% であるのに 対 し 否 定 した 企 業 においては 心 の 病 が 増 加 傾 向 にあるとした 企 業 が 42.9%である これらの3つの 変 化 が 見 られる 企 業 では 心 の 病 は 増 加 傾 向 にある 割 合 が 高 いこ とから メンタルヘルス 施 策 の 今 後 の 方 向 性 として メンタル 不 調 者 の 早 期 発 見 早 期 対 応 だけではなく 職 場 風 土 ( 職 場 環 境 )の 改 善 にもっと 目 を 向 けていく 必 要 があ ると 考 えられる 2010 年 調 査 によれば 今 後 の 動 向 は 現 状 の 取 組 継 続 と 質 の 向 上 との 結 果 であり 心 の 病 の 増 加 傾 向 に 歯 止 めがかからなかったことの 理 由 は 複 雑 な 要 素 が 絡 んでいる ため 明 らかではないが 三 次 予 防 の 見 直 しの 必 要 性 について 言 及 されている *3 第 4 回 メンタルヘルスの 取 り 組 み に 関 する 企 業 アンケート 調 査 結 果 ( 平 成 20 年 8 月 5 日 ) *4 第 5 回 メンタルヘルスの 取 り 組 み に 関 する 企 業 アンケート 調 査 結 果 ( 平 成 22 年 8 月 6 日 ) 2
3 メンタルヘルス 対 策 の 基 本 的 な 考 え 方 (1) 仕 事 とストレス 仕 事 とストレスの 相 関 関 係 は 図 表 1のように 仕 事 の コントロール( 自 由 度 )と 仕 事 の 要 求 度 の 相 関 関 係 によ り 増 減 することとなると 考 えられるが これに 周 囲 のサ ポートを 加 えた3つの 要 素 に より 高 ストレス 群 が 形 成 さ れる このうち 仕 事 の 要 求 度 は 業 務 の 複 雑 化 高 度 化 により 急 激 に 高 まっていると 考 えら れるから ストレスが 高 くな るリスクも 大 きい 図 表 1 仕 事 とストレスの 関 係 (2) 職 場 のストレス 要 因 1 職 場 の 人 間 関 係 厚 生 労 働 省 が 平 成 19 年 に 行 った 労 働 者 健 康 状 況 調 査 の 結 果 によると 最 も 多 いストレス 要 因 としては 職 場 の 人 間 関 係 が 挙 げられる 特 に 女 性 労 働 者 にお いてストレス 要 因 になると 考 えられ 男 性 労 働 者 に 比 して 顕 著 な 傾 向 が 出 ている 人 間 関 係 が 悪 くなると 職 場 での 居 心 地 も 悪 く 業 務 上 の 情 報 伝 達 や 共 同 作 業 に おいても 非 効 率 となり 業 務 の 成 果 に 影 響 が 出 るおそれもある 職 場 の 人 間 関 係 は 事 務 職 において 最 も 大 きなストレス 要 因 であり 専 門 技 術 研 究 職 においても 大 きなストレス 要 因 となっている 2 仕 事 の 質 と 量 業 務 の 複 雑 化 多 様 化 により 仕 事 の 内 容 が 高 度 になったこと 精 神 的 疲 労 を 伴 うクレーム 対 応 など 業 務 の 質 が 求 められる 業 務 や 膨 大 な 仕 事 量 のため 時 間 外 勤 務 が 慢 性 化 し 休 日 出 勤 が 恒 常 化 するなど 長 時 間 にわたる 労 働 によらなければこな せない 業 務 によるストレスが 大 きい 特 に 20 歳 代 及 び30 歳 代 の 労 働 者 については 性 別 を 問 わず 仕 事 の 質 の 問 題 が ストレス 要 因 になっていることに 加 え 40 歳 代 の 男 性 労 働 者 については 仕 事 の 質 に 関 するストレスが 最 も 大 きくなっており 職 場 の 人 間 関 係 よりもストレス 度 が 高 くなっている 仕 事 の 量 の 問 題 は 30 歳 代 の 労 働 者 について 性 別 を 問 わず ストレス 要 因 になっ ており 業 務 の 負 荷 が 大 きいと 考 えられる また 50 歳 代 の 女 性 労 働 者 についても 大 きなストレス 要 因 となっている 職 種 別 に 見 ると 仕 事 の 質 と 量 の 問 題 は 管 理 職 と 専 門 技 術 研 究 職 において 大 きなストレス 要 因 となっている 3
3 将 来 の 問 題 会 社 の 将 来 性 の 問 題 (20 歳 代 男 性 労 働 者 ) 定 年 後 の 仕 事 老 後 の 問 題 (50 歳 代 及 び60 歳 代 の 労 働 者 ( 男 女 とも))など 将 来 への 不 安 や 公 務 員 においては 様 々な 改 革 に 伴 う 将 来 の 不 透 明 感 スキルアップの 機 会 や 長 時 間 労 働 による 時 間 の 不 足 なども 大 きなストレス 要 因 となっている 財 団 法 人 日 本 生 産 性 本 部 の 調 査 *8 においても 将 来 への 不 安 が 倍 増 しているとの 結 果 が 出 ている (3) 職 場 のメンタルヘルス 対 策 労 働 者 の 心 の 健 康 の 保 持 増 進 のための 指 針 ( 平 成 18 年 3 月 厚 生 労 働 省 策 定 以 下 指 針 という )によれば 事 業 者 が1 心 の 健 康 づくり 計 画 の 策 定 2 関 係 者 に 対 する 教 育 研 修 情 報 提 供 3 4つのケア の3つを 推 進 することにより 職 場 環 境 等 の 改 善 メンタルヘルス 不 調 への 対 応 職 場 復 帰 のための 支 援 が 円 滑 に 行 われる 必 要 があるとされている また 事 業 者 は 心 の 健 康 問 題 の 特 性 個 人 の 健 康 情 報 の 保 護 への 配 慮 人 事 労 務 管 理 との 関 係 家 庭 個 人 生 活 等 の 職 場 以 外 の 問 題 等 との 関 係 に 留 意 する 必 要 がある とされている (4) 4つのケア 1 セルフケア 心 の 健 康 づくりを 推 進 するためには 労 働 者 自 身 がストレスに 気 づき これに 対 処 するための 知 識 方 法 を 身 につけ それを 実 施 することが 重 要 である スト レスに 気 づくためには 労 働 者 がストレス 要 因 に 対 するストレス 反 応 や 心 の 健 康 について 理 解 するとともに 自 らのストレスや 心 の 健 康 状 態 について 正 しく 認 識 できるようにする 必 要 がある( 指 針 ) 自 己 管 理 の 徹 底 すなわち 自 己 健 康 保 全 義 務 を 問 われるという 意 味 では 当 然 のことであるが 偏 見 や 病 気 に 対 する 知 識 の 問 題 などから 必 ずしも 本 人 の 自 覚 や 努 力 に 依 拠 することができないという 問 題 がある 2 ラインによるケア 管 理 監 督 者 は 部 下 である 労 働 者 の 状 況 を 日 常 的 に 把 握 しており また 個 々 の 職 場 における 具 体 的 なストレス 要 因 を 把 握 し その 改 善 を 図 ることができる 立 場 にあることから 職 場 環 境 等 の 把 握 と 改 善 労 働 者 からの 相 談 対 応 を 行 うこと が 必 要 である( 指 針 ) 職 場 のストレスの 程 度 は 管 理 監 督 者 によって 左 右 されることに 加 え メンタ ルヘルス 不 調 者 に 関 する 相 談 経 緯 として 上 司 からの 相 談 が 多 いことからも 管 理 監 督 者 は メンタルヘルス 不 調 者 の 早 期 発 見 のキーパーソンである ラインの 管 理 監 督 者 によるケアであり 職 場 のメンタルヘルスの 核 となるもの で 上 司 が 部 下 の 問 題 に 気 付 くこと 上 司 の 部 下 への 配 慮 支 援 が 重 要 であるこ とは 言 を 待 たない しかし 現 場 の 管 理 監 督 者 は 自 らも 業 務 を 担 当 していることが 多 く 短 時 間 の 研 修 を 受 けたとしても 部 下 に 対 して 長 期 間 にわたり 日 常 的 な 対 応 を 行 ってい くことは 困 難 である 実 際 の 現 場 においては 復 職 者 がいた 場 合 単 にその 復 職 者 に 配 慮 するだけでなく 他 の 部 下 が 復 職 者 にどのように 接 するかを 指 導 したり 社 内 や 社 外 との 関 係 にも 目 を 配 らなければならず 管 理 監 督 者 の 負 担 が 極 めて 大 4
きなものになってしまう 復 職 者 に 配 慮 することにより 管 理 監 督 者 自 身 が 疲 弊 してしまう 可 能 性 もあり ラインによるケアに 過 度 に 依 拠 するのは 現 実 的 ではな い( 管 理 監 督 者 もセルフケアの 対 象 とされている ) 管 理 監 督 者 に 過 重 な 負 担 となってしまうことなどを 勘 案 すると 管 理 監 督 者 に は 最 低 限 やってはいけないこと(パワーハラスメントなど)とメンタルヘル スの 不 調 又 は 再 発 の 兆 しがあった 場 合 には 早 期 に 報 告 することの2 点 に 限 定 し て 対 応 を 求 めていくことが 現 実 的 であると 考 える うつ 病 については 管 理 監 督 者 が2つのタイプ(メランコリー 親 和 型 ( 古 典 的 うつ 病 ) ディスチミア 型 ( 現 代 型 うつ 病 )) があることを 認 識 し 適 切 に 対 応 で きるよう 教 育 研 修 情 報 提 供 等 を 行 う 必 要 がある 3 産 業 保 健 スタッフ 等 によるケア セルフケア 及 びラインによるケアが 効 果 的 に 実 施 されるよう 労 働 者 及 び 管 理 監 督 者 に 対 する 支 援 を 行 うとともに 個 人 情 報 の 取 扱 い 事 業 場 外 資 源 とのネッ トワークの 形 成 やその 窓 口 となること 等 心 の 健 康 づくり 計 画 の 実 施 に 当 たり 中 心 的 な 役 割 を 果 たすものである( 指 針 ) 医 学 的 専 門 知 識 が 必 要 な 面 も 大 きく 特 に 主 治 医 との 連 絡 職 場 復 帰 の 判 断 ( 就 業 上 の 配 慮 など)について 重 要 な 役 割 を 担 ってもらう 必 要 がある 4 外 部 機 関 によるケア 事 業 場 が 抱 える 問 題 や 求 めるサービスに 応 じて メンタルヘルスケアに 関 する 専 門 的 な 知 識 を 有 する 各 種 の 外 部 機 関 の 支 援 を 活 用 することが 有 効 である( 指 針 ) ただし 事 業 者 がこれに 依 存 し 主 体 性 を 失 ってはならない リワークプログラムの 活 用 による 生 活 リズムの 形 成 など 職 場 復 帰 のための 準 備 に 有 用 であると 考 えられる ただし 地 域 的 な 資 源 の 格 差 がある (5) 復 職 のプロセスの 重 要 性 メンタルヘルス 対 策 は 一 次 予 防 *5 二 次 予 防 *6 三 次 予 防 *7 に 分 けられるが 財 団 法 人 日 本 生 産 性 本 部 の 調 査 *6 によると 復 職 プロセスを 成 功 させることが 心 の 病 の 未 然 防 止 につながる 可 能 性 があるとのことである つまり 三 次 予 防 が 最 も 重 要 である 同 調 査 によると 復 職 のプロセスと 心 の 病 の 増 減 傾 向 について 最 近 3 年 間 で 心 の 病 が 増 加 している 企 業 では 復 職 のプロセスでも まだまだ 問 題 が 多 い (59.8%) となっているが 最 近 3 年 間 で 心 の 病 が 減 少 している 企 業 では 復 職 のプロセスにつ いて 特 に 問 題 ない (50.0%)となっており メンタルヘルス 対 策 においては 復 職 のプロセスを 円 滑 に 行 うことが 重 要 であると 言 える *5 未 然 に 病 気 にならないように 全 員 の 健 康 度 をより 高 めていく 活 動 をいう *6 早 期 発 見 早 期 治 療 を 促 す 活 動 をいう *7 復 職 プロセスを 含 む 事 後 処 置 の 再 発 予 防 のことをいう *8 2009 年 版 産 業 人 メンタルヘルス 白 書 5
4 道 における 精 神 性 疾 患 による 長 期 療 養 者 の 現 状 長 期 療 養 者 に 占 める 精 神 性 疾 患 を 理 由 とする 者 の 割 合 の 推 移 ( 過 去 10 年 間 ) 70.0% 60.0% 50.0% 40.0% 30.0% 20.0% 道 ( 知 事 部 局 ) 全 国 10.0% 0.0% H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 ( 年 度 ) 上 記 のグラフは 長 期 療 養 者 に 占 める 精 神 性 疾 患 を 理 由 とする 者 の 割 合 について 道 ( 知 事 部 局 )と 全 国 の 数 字 を 比 較 したものであるが 道 の 特 徴 として 次 の 点 を 指 摘 する ことができる 全 体 の 割 合 は 上 昇 傾 向 で 推 移 しており 全 国 平 均 よりも 高 率 である 平 成 15 年 度 と 平 成 18 年 度 に 特 に 顕 著 な 伸 びが 見 られる 5 道 において 行 われているメンタルヘルス 対 策 の 取 組 とその 問 題 点 (1) これまでの 取 組 1 知 事 部 局 精 神 保 健 医 の 配 置 ( 本 庁 支 庁 ) 心 の 健 康 相 談 の 実 施 月 開 設 回 数 等 を 拡 充 (H19.4~) 職 場 リハビリテーションの 実 施 ( 職 場 復 帰 対 策 ) 北 海 道 心 の 健 康 づくり 基 本 方 針 (H15.3) 及 び 北 海 道 職 員 健 康 づくり 計 画 (H15. 9 H21.6 改 訂 )の 策 定 メンタルヘルス 対 策 の 推 進 を 位 置 付 け 北 海 道 職 員 安 全 衛 生 管 理 規 程 の 改 正 (H17.1) 過 重 労 働 による 健 康 障 害 の 防 止 等 について 拡 充 管 理 監 督 者 のための 精 神 性 疾 患 等 職 員 への 対 応 に 関 する 手 引 きの 作 成 配 布 (H17.3 作 成 H21.6 改 訂 ) 職 場 のメンタルヘルス( 管 理 職 用 資 料 )の 作 成 配 布 (H18.3) メンタルヘルスサポート 事 業 (H17.4~ 地 共 済 事 業 ) 電 話 相 談 ( 年 中 無 休 ) 面 接 カウンセリング 職 業 性 ストレス 簡 易 調 査 の 実 施 (H18 年 度 H19 年 度 ) 各 職 場 におけるストレスの 実 態 や 要 因 分 析 を 行 い 必 要 な 対 策 を 講 ずるほか 簡 易 調 査 結 果 の 自 己 採 点 を 通 じ 個 々の 職 員 のセルフケアに 資 することを 目 的 心 とからだの 総 合 健 康 チェック 支 援 (H20.9~) 全 職 員 を 対 象 にチェック アドバイスシートの 送 付 電 話 による 相 談 職 場 環 境 の 分 析 の 実 施 指 導 6
2 教 育 庁 精 神 保 健 医 の 配 置 (H18.4~) 心 の 健 康 相 談 体 制 の 拡 充 (H20.7~) 健 康 電 話 相 談 職 場 復 帰 訓 練 制 度 の 実 施 ( 職 場 復 帰 対 策 ) 道 立 学 校 職 員 等 のメンタルヘルス 基 本 方 針 (H16.12) 及 び 計 画 (H17.7)の 策 定 管 理 監 督 者 のためのメンタルヘルスハンドブックの 作 成 配 布 (H17.7) 3 警 察 本 部 精 神 保 健 医 保 健 師 等 による 相 談 巡 回 健 康 相 談 心 の 健 康 管 理 要 領 の 策 定 (H15.8) 外 部 機 関 によるカウンセリング 全 職 員 を 対 象 として 心 の 健 康 診 断 (H15~H18) 職 場 復 帰 支 援 実 施 要 領 に 基 づく 支 援 (H18.8~) (2) これまでの 取 組 に 関 する 検 証 各 任 命 権 者 に 共 通 のものとして 挙 げられるのは 1 精 神 保 健 医 の 配 置 2 相 談 3 基 本 方 針 及 び 計 画 の 策 定 の3つである 他 に 複 数 の 任 命 権 者 で 行 われているのは 管 理 職 員 向 けのマニュアルの 作 成 職 員 を 対 象 としたストレス 分 析 調 査 である こうした 取 組 を 行 ってきたにもかかわらず 長 期 療 養 者 に 占 める 精 神 性 疾 患 を 理 由 とする 者 の 割 合 は 増 加 傾 向 に 歯 止 めがかかっておらず このことは 現 状 の 対 策 では 未 だ 不 十 分 であり 問 題 点 の 検 証 を 行 い 効 果 を 上 げられるよう 努 めていく 必 要 がある ことを 示 している また 平 成 20 年 度 の 知 事 部 局 における 精 神 性 疾 患 による 長 期 療 養 者 の 年 代 別 傾 向 を 見 ると 20 歳 代 が18 人 (7.8%) 30 歳 代 が76 人 (33.0%) 40 歳 代 が84 人 (36.5%) 50 歳 代 が52 人 (22.6%)となっている 現 在 の 道 職 員 の 年 齢 構 成 を 考 慮 すれば すべて の 年 代 において 高 い 率 となっており 今 後 職 員 を 対 象 としたストレス 分 析 調 査 の 結 果 を 参 考 に それぞれの 世 代 に 合 わせたメンタルヘルス 対 策 を 行 っていく 必 要 がある Ⅱ 今 後 のメンタルヘルス 対 策 1 他 県 における 先 進 事 例 他 県 において 先 進 的 な 取 組 を 行 い 一 定 の 効 果 を 上 げている 事 例 について 文 献 調 査 及 び 訪 問 又 はメール 等 による 聞 き 取 り 調 査 を 行 ったので 以 下 紹 介 する (1) 富 山 県 の 事 例 精 神 性 疾 患 による 長 期 療 養 者 は 増 加 傾 向 にあるが ここ 何 年 も 全 国 平 均 のほぼ 半 数 という 状 態 を 維 持 している *9 病 気 休 暇 取 得 者 の 状 況 から 特 に 壮 年 期 職 員 のセルフケアの 意 識 を 高 めること が 重 要 と 考 えている また 新 しい 環 境 に 対 しての 不 安 を 抱 えている 新 任 職 員 対 する 特 別 なケアが 配 慮 されている 一 次 予 防 及 び 二 次 予 防 に 力 を 入 れている 事 例 である *9 地 方 公 務 員 安 全 と 健 康 フォーラム (2009 年 4 月 )18 頁 以 下 7
< 取 組 事 例 > 1 ストレスドック(メンタル 版 人 間 ドック ) 30 歳 40 歳 及 び50 歳 の 職 員 などを 対 象 にボディソニックやアルファ 波 誘 導 装 置 な どのリラックス 体 験 脳 波 測 定 心 理 テスト 精 神 科 医 の 面 接 によるストレスチェッ クなどを 行 う 2 メンタルヘルス 研 修 管 理 監 督 者 新 任 係 長 35 歳 職 員 25 歳 職 員 に 区 分 して 実 効 が 上 がるように 実 施 しており 管 理 監 督 者 対 象 の 研 修 においては 対 処 方 法 の 実 践 を 内 容 に 盛 り 込 んでい る 新 任 職 員 に 対 しては 採 用 時 の 研 修 において 健 康 に 関 する 意 識 付 けを 強 化 して いる 3 WEB 問 診 (セルフチェック) 庁 内 LANから 職 員 自 らがストレスをチェックでき( 年 4 回 実 施 ) 簡 単 なアドバ イスを 受 けることができる 毎 回 チェックする 内 容 を 変 えて 職 員 が 飽 きないように 工 夫 をしている 4 総 合 庁 舎 での 巡 回 相 談 本 人 家 族 上 司 等 を 対 象 に 定 期 的 に 相 談 日 を 設 定 している (2) 鳥 取 県 の 事 例 精 神 性 疾 患 により30 日 以 上 の 長 期 休 暇 を 取 得 する 職 員 が 増 加 傾 向 にあったが 平 成 18 年 度 をピークに 減 少 し 横 ばい 傾 向 にある 全 国 平 均 も 増 加 傾 向 にある 中 で メンタルヘルス 対 策 の 効 果 を 上 げている *10 早 期 発 見 早 期 介 入 初 期 からの 療 養 復 帰 支 援 への 関 与 復 帰 後 の 支 援 再 発 予 防 が 特 徴 的 な 事 例 である < 取 組 事 例 > 1 新 規 採 用 職 員 健 康 相 談 メンタルヘルス 不 調 に 陥 りやすい 新 規 採 用 職 員 全 員 を 対 象 に 入 庁 後 半 年 以 内 に 必 ず 行 う 新 規 採 用 職 員 の 健 康 状 態 やストレス 耐 性 の 有 無 を 把 握 し 対 処 するとともに 健 康 づくりに 対 する 意 識 も 養 う 2 メンタルヘルス 研 修 新 採 用 職 員 新 任 係 長 新 任 課 長 補 佐 及 び 新 任 課 長 を 対 象 として メンタルヘル ス 対 策 のみを 対 象 に90 分 の 研 修 を 実 施 している 3 ストレス 度 チェック 自 己 診 断 年 2 回 (6 月 と2 月 ) 庁 内 LANを 通 じて 配 信 する 職 員 が 各 自 でストレス 度 の 自 己 診 断 を 行 い 自 分 のストレスやその 要 因 に 気 づき セルフケアを 考 えるきっかけとして 活 用 すると 同 時 に 電 子 メールや 面 接 などによ る 相 談 を 受 けるきっかけとし 早 期 発 見 予 防 のツールとしている 4 出 前 講 座 職 場 から 要 請 があったときに 保 健 師 が 職 場 に 出 向 き メンタルヘルスや 健 康 管 理 ハラスメントなどテーマを 決 めて 話 をする 一 方 的 な 講 義 だけではなく 新 規 採 用 職 員 や 人 事 異 動 者 メンタル 不 調 を 感 じている 職 員 の 個 別 相 談 を 行 ったり 職 場 全 体 のケアを 図 るためにワークショップなど 実 践 的 な 内 容 も 取 り 入 れている *10 地 方 公 務 員 安 全 と 健 康 フォーラム (2009 年 4 月 )16 頁 以 下 地 方 公 務 員 月 報 ( 平 成 22 年 9 月 号 ) 8
5 療 養 円 滑 な 復 職 のための 支 援 及 び 復 職 後 の 対 応 (ア) 療 養 支 援 職 員 や 職 場 主 治 医 及 びセカンドオピニオン 等 と 連 携 し 療 養 計 画 等 を 支 援 し ている (イ) 職 場 リハビリテーションの 実 施 原 則 1か 月 ( 最 長 2か 月 ) 以 内 で 職 場 復 帰 前 に 必 ず 実 施 し 復 職 が 可 能 かど うか(1 日 8 時 間 勤 務 が 可 能 かどうか)を 確 認 している あくまで 治 療 の 一 環 と して 休 職 期 間 中 に 行 っているため 別 途 保 険 に 加 入 している (ウ) 健 康 管 理 審 査 会 による 復 職 可 否 の 審 査 及 び 復 職 後 の 再 審 査 4 名 の 精 神 科 医 産 業 医 人 事 担 当 部 局 職 員 及 び 健 康 管 理 担 当 部 局 職 員 の7 名 で 構 成 する 審 査 会 において 職 場 リハビリテーションにおける 勤 務 成 績 や 病 状 を 踏 まえ 職 員 と 面 談 することにより 県 庁 の 現 状 を 踏 まえて 本 人 に 見 合 う 業 務 を 与 えることができるかを 審 査 する 審 査 会 に 人 事 担 当 部 局 が 関 与 することで 配 置 換 えや 時 間 外 勤 務 制 限 等 健 康 レベルに 応 じた 職 場 環 境 調 整 が 可 能 となってい る また 復 職 6か 月 後 には 復 職 後 の 体 調 や 勤 務 成 績 を 評 価 し 審 査 会 による 経 過 観 察 の 再 審 査 を 実 施 している (エ) 長 期 療 養 者 全 員 に 対 する 面 談 人 事 担 当 部 局 から 病 気 休 暇 を 連 続 して30 日 以 上 取 得 した 職 員 の 情 報 を 得 て 対 象 職 員 全 員 と 面 談 を 実 施 している 休 暇 当 初 から 職 員 上 司 等 と 面 談 することに より 療 養 に 至 る 経 緯 や 精 神 疾 患 について 把 握 することができ 早 期 に 今 後 の 方 針 を 立 てることが 可 能 となっている (3) 愛 媛 県 の 事 例 長 期 休 業 している 職 員 の 約 4 割 が 精 神 性 疾 患 によるものであり その 割 合 も 増 加 傾 向 にある *11 が 平 成 18 年 度 以 降 上 昇 カーブに 一 定 の 歯 止 めがかかってきてい る 一 次 予 防 から 三 次 予 防 までバランスよく 一 貫 した 取 組 を 行 っている 事 例 であ る < 取 組 事 例 > 1 庁 内 LANにおけるストレスチェックの 活 用 早 期 発 見 を 目 的 として 職 員 自 らが ストレスチェック 票 による 自 己 診 断 を 行 うことができる 実 施 率 を 向 上 させ これを 円 滑 に 活 用 するため 管 理 職 員 が 部 下 職 員 に 対 して 行 う 個 別 面 接 ( 年 2 回 )の 前 に 各 職 員 にチェックさせ 管 理 職 員 から のコミュニケーションのきっかけとしている 管 理 職 員 の 側 からも 面 接 時 の 話 のきっかけとして 重 要 視 されており 稼 働 率 が 向 上 している 2 健 康 なんでも 相 談 こころの 悩 みなんでも 相 談 健 康 相 談 室 を 個 室 とし 職 員 が 相 談 しやすい 体 制 としている 平 成 22 年 3 月 末 ま でに6,000 件 以 上 の 相 談 があり うち1,300 件 ほどがメンタルに 関 する 相 談 であった 他 の 相 談 内 容 としては 業 務 に 関 することや 職 員 個 人 の 恋 愛 に 関 すること 職 員 の 家 庭 に 関 する 問 題 などのプライベートなものもあり 相 談 のしやすさが 利 用 件 数 に 表 れている *11 人 事 行 政 の 窓 (2009 年 5 月 )53 頁 以 下 9
3 職 場 復 帰 支 援 システム の 構 築 職 員 本 人 の 同 意 の 下 産 業 保 健 スタッフが 主 治 医 等 と 連 携 を 図 りながら きめ 細 かな 相 談 やケアを 実 施 する( 平 成 18 年 4 月 から) 職 場 復 帰 が 近 い 状 態 にある 職 員 について 復 帰 支 援 プラン を 作 成 することとし ており 休 職 者 の 不 安 軽 減 などを 目 的 として 試 し 出 勤 制 度 を 導 入 している( 希 望 者 のみ 県 において 傷 害 保 険 に 加 入 ) 復 職 後 も6か 月 程 度 は 産 業 保 健 スタッフによるフォローアップ( 定 期 的 な 面 談 等 の 実 施 )が 行 われている 2 今 後 のメンタルヘルス 対 策 の 取 組 に 必 要 な 視 点 道 における 今 後 の 取 組 においては 各 県 の 先 進 的 な 事 例 などを 踏 まえ 次 の 点 につい て 考 察 を 加 えた 取 組 が 必 要 となるであろう 視 点 1 ~ 職 員 による 定 期 的 な 自 己 診 断 の 機 会 を 確 保 すること 先 進 的 な 取 組 を 行 ってきた 県 においては 庁 内 LANを 活 用 し 定 期 的 に 職 員 に 自 己 診 断 を 行 うよう 働 きかけていることが 効 果 を 上 げている 点 が 共 通 している 富 山 県 では 年 に4 回 実 施 しており 質 問 内 容 もその 都 度 検 討 を 行 い 職 員 が 飽 き ないよう 工 夫 されている また 鳥 取 県 及 び 愛 媛 県 でも 年 に2 回 行 っており その 結 果 を 個 別 面 接 に 活 用 するなど 自 己 診 断 結 果 を 有 効 に 活 用 している 職 員 にセルフケアを 行 わせる 観 点 からも 定 期 的 に 自 己 診 断 を 行 わせることは 一 定 の 効 果 があると 言 える 視 点 2 ~ 新 規 採 用 職 員 や 異 動 者 に 対 するケアが 必 要 であること 先 進 的 な 取 組 を 行 ってきた 県 においては 新 規 採 用 者 や 新 しい 職 場 に 異 動 した 職 員 がメンタルヘルス 不 調 に 陥 りやすいということを 認 識 した 上 で そうした 職 員 に 対 象 を 絞 ったケアを 行 っており それが 奏 功 している 鳥 取 県 では 新 規 採 用 職 員 に 限 定 した 取 組 を 行 っているし 富 山 県 も25 歳 職 員 の 区 分 は そろそろ 職 場 にも 慣 れ 始 めるころ 事 務 職 の 場 合 三 年 程 度 で 異 動 がありますから 初 めての 異 動 直 後 の 職 員 もいるはず *12 という 理 由 に 基 づいて 重 点 的 なケアを 行 って いる 新 規 採 用 職 員 や 異 動 者 ( 特 に 昇 任 者 )については 他 の 職 員 よりも 重 点 的 入 念 的 なケアが 必 要 であろう 視 点 3 ~ 管 理 職 員 によるケアは 一 定 程 度 にとどめること 先 に 述 べたように 管 理 職 員 によるケアについては 管 理 職 員 の 固 有 の 業 務 との 兼 ね 合 い 専 門 的 知 識 等 の 不 足 などの 問 題 があることから 部 下 職 員 のメンタルヘルス 対 策 について 過 重 な 負 担 をかけることは 避 けた 方 がよいと 考 えられる 現 在 の 道 の 管 理 職 員 に 対 する 研 修 等 の 時 間 から 考 えると 管 理 職 員 によるケアは 過 度 な 期 待 をすることはできず 管 理 職 員 が 職 場 のメンタルヘルスに 関 するキーパー ソンであることに 違 いはないが 責 任 の 重 大 さから 管 理 職 員 自 身 がメンタルヘルス 不 調 者 になってしまうおそれもある *12 地 方 公 務 員 安 全 と 健 康 フォーラム (2009 年 4 月 )19 頁 10
よって 管 理 職 員 には 1 自 らが 部 下 職 員 のストレス 要 因 にならないこと(パワー ハラスメントを 行 わないことなど) 2 部 下 職 員 のメンタルヘルス 不 調 又 は 再 発 の 予 兆 があった 場 合 には 産 業 保 健 スタッフに 相 談 して 対 応 すること 3 復 職 者 に 対 しては メンタルヘルス 不 調 の 型 の 違 いにより 対 応 すべきことに 留 意 すること を 行 ってもら うことを 徹 底 し それ 以 外 のことについては 専 門 的 な 産 業 保 健 スタッフ 等 に 任 せる こととすべきである それ 以 上 の 負 担 を 管 理 職 員 に 要 求 すると 管 理 職 員 自 身 のセルフケアさえままなら ない 状 況 を 引 き 起 こし 職 場 全 体 に 悪 影 響 を 及 ぼすことになりかねない 視 点 4 ~ 職 場 風 土 ( 環 境 )の 改 善 を 行 うこと 道 ( 知 事 部 局 )において 平 成 20 年 度 に 実 施 した 調 査 の 結 果 によると 1 職 務 共 感 2 職 場 環 境 における 人 間 関 係 3 職 場 環 境 における 組 織 環 境 4 行 動 面 の 健 康 での 性 急 さ 5ストレス 対 応 力 6 性 格 傾 向 での 寛 容 性 7 性 格 傾 向 での 自 由 性 について 改 善 が 必 要 であるとされている 具 体 的 には ア 仕 事 への 意 欲 が 失 われがちであるため 仕 事 の 意 義 についての 共 通 認 識 を 深 めること イ 職 場 の 人 たちが 互 いに 協 力 し 合 う 風 土 づくりをすることにより 人 間 関 係 のストレスを 軽 減 すること ウ 仕 事 にせき 立 てられるなどの 雰 囲 気 があるた め 仕 事 に 適 度 な 余 裕 を 持 つこと エメンタルヘルス 研 修 等 を 通 じて 個 々の 職 員 の ストレス 対 応 力 を 高 めること オ 周 囲 の 人 への 関 心 や 思 いやりを 大 切 にする 風 土 づく りが 必 要 であること カ 自 由 に 自 分 の 意 見 を 言 える 雰 囲 気 づくりが 重 要 であること が 指 摘 されている Ⅰ-3(2)で 述 べたとおり 人 を 育 てる 余 裕 が 職 場 になくなってきている 組 織 職 場 とのつながりを 感 じにくくなってきている 仕 事 の 全 体 像 や 意 味 を 考 える 余 裕 が 職 場 になくなってきている といった 職 場 環 境 にある 企 業 は メンタルヘルス 不 調 者 が 増 加 傾 向 にある 割 合 が 高 いとのデータが 出 ていることから 道 においても 同 じ 状 況 にあることがうかがえる 現 在 の 道 職 員 の 年 齢 構 成 から 考 えると 若 手 職 員 層 が 非 常 に 少 ない 状 況 にあるが 将 来 的 には 道 行 政 の 中 核 を 担 っていく 人 材 であるから 上 司 はきちんと 仕 事 を 教 え 人 材 を 育 成 していく 必 要 がある また グループ 制 導 入 の 本 来 の 目 的 である 職 員 同 士 の 業 務 上 のサポートについても 個 人 の 担 当 業 務 のみに 固 執 した 業 務 の 執 行 体 制 が 常 態 化 しており 職 員 の 人 間 関 係 も 希 薄 な 状 態 であるから 効 果 が 十 分 に 発 揮 されていないと 考 えられる 今 後 は 職 員 の 意 識 改 革 が 必 要 であるとともに 余 裕 を 持 って 職 員 の 協 働 による 業 務 の 執 行 を 行 えるような 体 制 の 整 備 を 行 うことがメンタルヘルス 対 策 の 重 要 なポイ ントになる 視 点 5 ~ 外 部 機 関 による 支 援 を 活 用 すること メンタルヘルス 不 調 者 の 復 職 について 事 業 場 外 資 源 の 活 用 が 有 効 である メンタ ルヘルス 不 調 者 については 休 職 後 医 療 機 関 による 治 療 と 休 養 で 病 状 は 一 定 程 度 改 善 するものの それが 短 期 間 すなわち 休 職 を 認 められた 期 間 中 に 勤 務 可 能 のレベ ルにまで 達 することは 困 難 なことが 多 い 知 事 部 局 においても 取 組 により 現 在 は 一 定 程 度 改 善 されているものの 復 職 後 症 状 が 再 発 し 同 一 年 度 内 に 再 度 休 職 に 至 った 事 例 が 多 数 あったことが 報 告 されてい る 11
復 職 時 における 問 題 点 としては 主 治 医 による 職 場 復 帰 の 判 断 は 患 者 すなわち 休 職 者 側 に 偏 りがちであり もっぱら 病 状 の 消 退 又 は 回 復 のみをもって 職 場 復 帰 可 能 と の 判 断 が 行 われていることが 挙 げられる この 点 については 職 場 の 勤 務 実 態 を 熟 知 している 産 業 医 の 判 断 により 対 応 すべき であり 職 場 における 業 務 遂 行 能 力 が 回 復 しているか 否 かで 判 断 すべきである 既 に こうした 取 組 は 行 われており 短 期 間 の 再 発 は 減 少 していると 報 告 されている 1 産 業 医 の 活 用 復 職 時 における 産 業 医 の 関 与 については 一 定 程 度 なされているが 休 職 者 の 症 状 が 改 善 し 復 職 可 能 との 診 断 がなされた 場 合 であっても 元 の 業 務 と 同 程 度 の 作 業 が 可 能 か 時 間 外 勤 務 は 可 能 か( 一 部 制 限 か) 出 張 は 可 能 か 今 後 の 治 療 の 見 通 し(いつまで 服 薬 が 必 要 か)など 様 々な 観 点 からの 考 慮 が 必 要 と 考 えられるか ら 職 場 と 産 業 医 が 連 携 して 対 応 しなければならないものと 考 える 2 職 場 復 帰 支 援 先 に 述 べたとおり 仕 事 を 休 んだことにより 病 状 が 回 復 したというレベルに 比 べ 職 場 で 仕 事 ができるほどに 回 復 したというレベルの 方 がはるかに 高 い 回 復 度 合 い を 求 められることとなる 単 に 通 勤 が 可 能 などというレベルではなく 業 務 を 行 う ということは 定 められた 時 間 内 で 一 定 の 業 務 を 行 わなければならないレベルが 要 求 される 業 務 を 行 う 上 では 職 場 での 人 間 関 係 上 のストレス 職 場 外 の 人 との 人 間 関 係 上 のストレスなど 休 職 時 自 宅 療 養 時 とは 比 較 にならないほどの 身 体 的 心 理 的 ス トレスへの 対 応 力 が 必 要 となる 復 職 に 当 たっては 業 務 に 耐 え 得 る 体 力 作 業 能 力 などを 改 善 させなければなら ないが 医 療 機 関 における 医 療 行 為 だけでは これらの 改 善 を 望 むことは 困 難 であ る しかし こうした 復 職 の 準 備 のための 能 力 改 善 を 行 うことは 道 の 組 織 として 困 難 であることは 明 らかであるから 外 部 資 源 を 有 効 に 活 用 すべきであり この 中 で 特 筆 すべきものがリワークプログラム( 病 状 の 回 復 度 を 目 安 として 復 職 に 向 けた 準 備 を 行 うもの)である リワークプログラムを 行 っている 施 設 等 はまだ 少 ないものの 1 生 活 リズムを 整 えることができる 2 共 通 の 悩 みを 持 つ 仲 間 同 士 で 支 え 合 える 3 復 職 に 向 けた 準 備 が 整 う 4 相 談 できるスタッフがいる などのメリットがあるから 組 織 として は 直 接 活 用 できなくても 主 治 医 及 び 産 業 医 と 連 携 し 休 職 者 に 対 して 復 職 の 準 備 として 行 うよう 指 導 することが 効 果 を 上 げていくことも 考 えられる 12
視 点 6 ~ 人 事 部 門 と 健 康 管 理 部 門 が 付 かず 離 れず の 関 係 であること Ⅱ-1で 取 り 上 げた 先 進 的 な 取 組 が 功 を 奏 している3つの 県 に 共 通 していることは 人 事 部 門 と 健 康 管 理 部 門 の 連 携 が 取 れていることである 人 事 部 門 と 職 員 健 康 管 理 部 門 が 一 緒 になっていたら 職 員 は 相 談 しにくくなって しまう しかし 完 全 に 離 れてしまえば 職 員 厚 生 室 と 人 事 課 の 連 携 が 難 しくなり 必 要 な 情 報 共 有 がスムーズにいかなくなってしまう 恐 れがある だからこそ 今 の 職 員 厚 生 室 のような 人 事 課 内 の 独 立 した 組 織 という 付 かず 離 れず の 関 係 がやりやす い ( 愛 媛 県 ) *13 とか 人 事 管 理 を 担 当 する 職 員 課 と 健 康 管 理 を 担 当 する 福 利 厚 生 室 において 健 康 管 理 区 分 ( 病 気 休 暇 や 職 場 復 帰 など)の 情 報 の 連 動 化 や 復 職 に 向 けた 方 策 の 検 討 病 気 休 暇 制 度 の 整 備 等 を 行 うこととなりました ( 鳥 取 県 ) *14 という 指 摘 は 自 治 体 における 効 果 的 なメンタルヘルス 対 策 の 取 組 の 在 り 方 について 道 筋 を 示 しているものと 考 えられる *13 地 方 公 務 員 安 全 と 健 康 フォーラム (2007 年 10 月 )16 頁 *14 地 方 公 務 員 月 報 ( 平 成 22 年 9 月 ) 13