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法 律 と 実 務 の 基 礎 知 識 特 許 法 第 29 条 第 1 項 ( 新 規 性 ) 2 号 特 許 出 願 前 に 日 本 国 内 又 は 外 国 において 公 然 実 施 をされた 発 明 ( 公 用 発 明 ) 特 許 法 第 29 条 第 2 項 ( 進 歩 性 ) 特 許 出 願 前 にその 発 明 の 属 する 技 術 の 分 野 における 通 常 の 知 識 を 有 する 者 が 前 項 各 号 に 掲 げる 発 明 ( 注 : 公 知 公 用 刊 行 物 記 載 の 発 明 )に 基 づいて 容 易 に 発 明 をすることができたとき は その 発 明 については 特 許 を 受 けることができない 特 許 法 第 104 条 の3 ( 特 許 権 者 等 の 権 利 行 使 の 制 限 ) 第 1 項 特 許 権 又 は 専 用 実 施 権 の 侵 害 に 係 る 訴 訟 において 当 該 特 許 が 特 許 無 効 審 判 によ り 無 効 にされるべきものと 認 められるときは 特 許 権 者 又 は 専 用 実 施 権 者 は 相 手 方 に 対 してその 権 利 を 行 使 することができない 注 釈 キルビー 判 決 ( 平 成 12 年 4 月 11 日 最 高 裁 判 決 )が 契 機 となって 平 成 16 年 の 裁 判 所 法 等 の 一 部 改 正 により 新 設 された 規 定 いわゆる 権 利 行 使 阻 止 の 抗 弁 の 根 拠 規 定 [キルビー 判 決 以 前 ] 侵 害 訴 訟 等 の 民 事 訴 訟 において 裁 判 所 は 独 自 に 特 許 の 有 効 性 を 判 断 することは 許 されな かった つまり 特 許 庁 での 特 許 無 効 審 判 を 経 て 特 許 審 決 が 確 定 するまでは 特 許 は 有 効 な ものとして 扱 わなければならなかった キルビー 最 高 裁 判 決 は 上 記 従 来 の 大 原 則 を 覆 し 無 効 理 由 の 存 在 が 明 白 である 場 合 権 利 の 行 使 は 権 利 の 濫 用 にあたり 許 されない として 侵 害 裁 判 所 が 権 利 の 有 効 性 を 判 断 すると 共 に 権 利 濫 用 論 を 適 用 する 余 地 を 認 めた

平 成 27 年 (ワ) 第 1025 号 特 許 権 侵 害 差 止 請 求 事 件 平 成 27 年 10 月 29 日 判 決 言 渡 原 告 ( 特 許 権 者 ) サントリーホールディングス 株 式 会 社 被 告 アサヒビール 株 式 会 社 事 案 の 概 要 特 許 権 を 有 する 原 告 が, 被 告 に 対 し, 被 告 による 被 告 製 品 の 製 造 等 が 特 許 権 侵 害 に 当 たると 主 張 して, 特 許 法 100 条 1 項 及 び2 項 に 基 づき, 被 告 製 品 の 製 造 等 の 差 止 め 及 び 廃 棄 を 求 めた 被 告 製 品 : Asahi DRY ZERO -ドライゼロ- 本 件 特 許 発 明 の 名 称 : phを 調 整 した 低 エキス 分 のビールテイスト 飲 料 特 許 番 号 : 第 5382754 号 [ 出 願 の 経 緯 ] 優 先 日 平 成 23 年 11 月 22 日 原 出 願 日 平 成 24 年 11 月 19 日 (PCT 経 由 / 日 本 移 行 の 親 出 願 ) ( 分 割 ) 出 願 日 平 成 25 年 5 月 27 日 ( 特 願 2013-110731) ( 審 査 段 階 でクレーム 補 正 あり) 登 録 日 平 成 25 年 10 月 11 日 ( 特 許 第 5382754 号 ) 訂 正 審 判 の 請 求 平 成 26 年 6 月 訂 正 審 決 の 確 定 平 成 26 年 8 月 7 日 [ 訂 正 後 の 請 求 項 1( 本 件 発 明 )] エキス 分 の 総 量 が0.5 重 量 % 以 上 2.0 重 量 % 以 下 であるノンアルコールの ビールテイスト 飲 料 であって,pHが3.0 以 上 4.5 以 下 であり, 糖 質 の 含 量 が 0.5g/100ml 以 下 である, 前 記 飲 料 [ 本 件 発 明 の 分 説 ] A-1 エキス 分 の 総 量 が0.5 重 量 % 以 上 2.0 重 量 % 以 下 であるノンアルコール のビールテイスト 飲 料 であって, A-2 phが3.0 以 上 4.5 以 下 であり, A-3 糖 質 の 含 量 が0.5g/100ml 以 下 である, B 前 記 飲 料 被 告 の 行 為 平 成 25 年 9 月 上 旬 から ドライゼロ を 販 売 開 始 背 景 的 事 情 原 告 / 被 告 ともに 平 成 22 年 8 月 3 日 にノンアルコールのビール テイスト 飲 料 を 発 売 開 始 (いずれも 特 許 発 明 の 技 術 的 範 囲 に 属 さず) 原 告 は サントリー オールフリー ( 以 下 オールフリー という ) 被 告 は アサヒ ダブルゼロ ( 以 下 ダブルゼロ という ) 1

争 点 等 の 整 理 被 告 は, 被 告 製 品 が 本 件 発 明 の 技 術 的 範 囲 に 属 することを 争 っていない よって 本 件 の 争 点 は, 本 件 特 許 が 特 許 無 効 審 判 により 無 効 にされるべきものとして 原 告 が 本 件 特 許 権 を 行 使 することができないか 否 か( 特 許 法 104 条 の3 第 1 項 ) 被 告 の 主 張 ( 無 効 理 由 の 主 張 ) (1) サポート 要 件 ( 特 許 法 36 条 6 項 1 号 ) 違 反 原 告 の 主 張 違 反 しない 裁 判 所 の 判 断 (2) 実 施 可 能 要 件 ( 同 条 4 項 1 号 ) 違 反 違 反 しない (3) 補 正 要 件 ( 同 法 17 条 の2 第 3 項 ) 違 反 違 反 しない (4) オールフリーに 係 る 発 明 ( 以 下 公 然 実 施 発 明 1 という )に 基 づ く 進 歩 性 欠 如 進 歩 性 あり 進 歩 性 無 し 本 件 特 許 は 無 効 にされ るべきもの ( 後 半 で 説 明 します) (5) ダブルゼロに 係 る 発 明 ( 以 下 公 然 実 施 発 明 2 という )に 基 づく 進 歩 性 欠 如 進 歩 性 あり 進 歩 性 無 し 本 件 特 許 は 無 効 にされ るべきもの ( 説 明 は 割 愛 します) (6) 米 国 特 許 第 3717471 号 公 報 ( 乙 13 公 報 )に 記 載 された 発 明 に 基 づく 進 歩 性 欠 如 進 歩 性 あり (7) 特 開 2013-21944 号 公 報 ( 乙 17 公 報 )に 記 載 された 発 明 に 基 づくいわゆる 拡 大 先 願 要 件 ( 同 法 29 条 の2) 違 反 違 反 しない (8) 優 先 権 の 主 張 が 認 められないこと を 前 提 とする 進 歩 性 欠 如 違 反 しない 2

争 点 (4) 公 然 実 施 発 明 1(オールフリー)に 基 づく 進 歩 性 欠 如 について < 被 告 の 主 張 > ア オールフリーの 公 然 実 施 オールフリーが 本 件 特 許 の 優 先 日 前 に 発 売 されたことにより,オールフリーに 係 る 発 明 ( 公 然 実 施 発 明 1)は 日 本 国 内 において 公 然 実 施 をされた 発 明 となった イ 公 然 実 施 発 明 1の 構 成 公 然 実 施 発 明 1は, 以 下 の 構 成 を 備 えている a-1 エキス 分 の 総 量 が0.39 重 量 %であるノンアルコールのビールテイスト 飲 料 である, a-2 phは3.78である, a-3 糖 質 の 含 量 は0.5g/100ml 未 満 である, b 前 記 飲 料 ウ 本 件 発 明 と 公 然 実 施 発 明 1との 一 致 点 及 び 相 違 点 本 件 発 明 と 公 然 実 施 発 明 1とは, 本 件 発 明 がエキス 分 の 総 量 を0.5 重 量 % 以 上 2.0 重 量 % 以 下 としているのに 対 し, 公 然 実 施 発 明 1がこれを0.39 重 量 %とし ている 点 で 相 違 し,その 余 の 点 で 一 致 する エ 相 違 点 の 容 易 想 到 性 (ア) ビールの 分 析 方 法 については,ビール 等 の 間 接 税 課 税 物 件 等 の 試 験 方 法 を 定 めた 国 税 庁 所 定 分 析 法 とビール 酒 造 組 合 国 際 技 術 委 員 会 が 定 めた BCOJビ ール 分 析 法 があるところ,いずれの 分 析 方 法 においてもエキス 分 が 分 析 項 目 として 挙 げられており,ビールに 関 してエキス 分 を 測 定 することは 当 業 者 では 当 然 の 事 項 と なっている 特 開 2008-43231 号 公 報 ( 以 下 乙 14 公 報 という ), 特 開 2011-139699 号 公 報 ( 以 下 乙 26 公 報 という ), 特 開 2009-11200 号 公 報 ( 以 下 乙 27 公 報 という )の 記 載 から 明 らかなとおり,ビー ルとノンアルコールビールとは 同 じ 技 術 分 野 に 属 するので,ビールの 分 析 項 目 である エキス 分 につきノンアルコールビールでも 測 定 することが 当 業 者 では 常 識 となってい る 現 に, 本 件 特 許 の 優 先 日 前 に 頒 布 された Biere der Welt( 世 界 の ビール) と 題 する 文 献 及 び 特 開 2011-229538 号 公 報 ( 乙 29)には,ア ルコールの 有 無 にかかわらず,エキス 分 が 測 定 されることが 開 示 されている このよ うに,エキス 分 は, 本 件 特 許 の 優 先 日 前 において 当 業 者 に 広 く 知 られた 技 術 事 項 であ り,ビールテイスト 飲 料 を 調 整 するに 当 たっては, 当 然 に 着 目 する 事 項 である また, 特 開 2009-142233 号 公 報 ( 乙 5), 特 開 平 11-127839 号 公 報 ( 乙 6), 特 開 2010-279349 号 公 報 ( 乙 7), 特 開 2007-124 960 号 公 報 ( 乙 8), 乙 14 公 報, 特 開 2005-13166 号 公 報 ( 乙 15), 特 開 2011-142901 号 公 報 ( 乙 16)に 記 載 されているとおり, 本 件 特 許 の 優 先 日 前 においては,アルコールの 有 無 にかかわらず, 飲 料 中 のエキス 分 が 低 い 場 合 3

に, 風 味,ボディ 感,コク 味 ないし 味 の 厚 みに 欠 けることは 当 業 者 に 広 く 知 られてい た さらに,ノンアルコールビールテイスト 飲 料 に 限 ってみても, 特 開 2003-2 50503 号 公 報 ( 乙 25), 乙 26 公 報, 乙 27 公 報 に 記 載 されているとおり,エ キス 分 を 増 やせば 飲 み 応 えが 付 与 されることは 当 業 者 における 技 術 常 識 であった そして,オールフリーについては, 多 くの 消 費 者 から, コクがない, 味 が 薄 い 等 の 厳 しい 評 価 を 受 けており,コク( 飲 み 応 え)に 乏 しいことが 当 業 者 に 認 識 さ れていた そうすると, 公 然 実 施 発 明 1 及 びこれに 関 する 評 価 を 見 た 当 業 者 におい て, 飲 み 応 えを 出 すためにエキス 分 を 増 やそうとする 動 機 付 けや 示 唆 があったことは 明 らかである したがって, 公 然 実 施 発 明 1において, 飲 み 応 えを 高 めるためにエキ ス 分 を0.5 重 量 % 以 上 まで 増 加 させることは, 容 易 に 想 到 できたものである (イ) 本 件 明 細 書 の 発 明 品 2(エキス 分 の 総 量 は0.1 重 量 %)と 発 明 品 3( 同 0.5 重 量 %)を 比 較 すると 飲 み 応 えに 差 異 がなく( 表 1 ),かえって,エキス 分 の 総 量 を0.5% 以 上 とすると 飲 み 応 え 及 び 酸 味 が 劣 ることが 示 されており( 表 2 ~ 表 5 ),エキス 分 の 総 量 を0.5 重 量 % 以 上 とすることに 技 術 的 意 義 はな い また, 本 件 明 細 書 には, 本 件 発 明 のエキス 分 の 総 量 である 0.5 重 量 % 以 上 2.0 重 量 % 以 下 と 比 較 して,より 好 ましい 範 囲 のエキス 分 の 総 量 として0.5 重 量 % 以 下 であることが 記 載 されているところ( 段 落 0019 ), 本 件 発 明 は, 公 然 実 施 発 明 1を 回 避 するために, 上 記 のエキス 分 の 総 量 のより 好 ましい 範 囲 (0.5 重 量 % 未 満 )を 除 外 したものであるから, 従 来 技 術 である 公 然 実 施 発 明 1と 比 べて 何 らの 技 術 的 貢 献 をもたらすものではない オ 小 括 したがって, 本 件 発 明 は, 公 然 実 施 発 明 1に 基 づいて 容 易 に 発 明 をすることができ たものであるから, 進 歩 性 を 欠 く( 特 許 法 29 条 2 項 ) 4

< 原 告 の 反 論 > ア 本 件 発 明 の 認 定 本 件 発 明 はエキス 分 の 総 量,pH 及 び 糖 質 の 含 量 を 一 体 として 捉 えることで 技 術 的 意 義 を 有 するものであり,これらはひとまとまりの 構 成 として 捉 える 必 要 があるか ら, イ ウ エ 相 違 点 の 容 易 想 到 性 本 件 特 許 の 優 先 日 当 時, 健 康 志 向 の 高 まりで,ノンアルコールのビールテイスト 飲 料 の 市 場 は 活 気 を 帯 びていたところ,オールフリーは 市 場 での 販 売 金 額 上 位 10 品 目 のランキングで1 位 を 占 めており, 消 費 者 の 満 足 度 は 極 めて 高 く, 飲 み 応 えの 課 題 が あったとは 想 定 し 難 い そうすると, 公 然 実 施 発 明 1から 本 件 発 明 の 解 決 課 題 (エキ ス 分 の 総 量 が 低 いノンアルコールのビールテイスト 飲 料 であっても 飲 み 応 え 感 が 付 与 された 飲 料 を 提 供 すること)を 容 易 に 認 識 し 得 ないから, 相 違 点 に 係 る 構 成 に 至 るこ とが 容 易 であったとはいえない また, 飲 み 応 え 感 を 付 与 するという 課 題 を 認 識 できたとしても,アルコール 飲 料 に おいて 飲 み 応 え 感 を 付 与 するためには,エキス 分 を 増 やすのではなく, 各 種 添 加 剤 の 種 類 や 量 を 検 討 してみることが 一 般 的 であったから,エキス 分 の 総 量,pH 及 び 糖 質 の 含 量 のみに 着 目 する 示 唆 や 動 機 付 けは 一 切 ない さらに,オールフリーの 商 品 コンセプトは,トリプルゼロ(アルコール,カロリ ー, 糖 質 のゼロ)であり,エキス 分 が 薄 い 飲 料 であることを 特 徴 としてそれが 消 費 者 に 受 け 入 れられていたのであるから,このコンセプトを 破 壊 するようなエキス 分 の 総 量 を 増 やす 行 為 は,オールフリーそのものを 否 定 することであり, 設 計 事 項 としてな し 得 ない オ 本 件 発 明 の 顕 著 な 効 果 本 件 発 明 の 技 術 的 意 義 は,pH 調 整 による 技 術 的 意 義 としての 高 さと 絶 対 量 として の 飲 み 応 え 感 の 高 さとはトレードオフの 関 係 にあるという 新 規 な 発 見 の 中 で, 双 方 を 両 立 させた 範 囲 としてエキス 分 の 総 量 を0.5~2.0 重 量 %とした 点 にあり, 低 糖 質 (0.5g/100ml 以 下 )であっても 所 定 のpH 範 囲 であればこの 技 術 的 意 義 を 維 持 できることが 特 徴 である 本 件 発 明 の 効 果 は,このような 技 術 的 意 義 に 裏 打 ち されたものであり, 公 然 実 施 発 明 1からは 全 く 予 測 できない 顕 著 なものであった カ 小 括 したがって, 本 件 発 明 は, 公 然 実 施 発 明 1に 対 して 十 分 に 進 歩 性 を 有 する 5

< 裁 判 所 の 判 断 > 1 争 点 (4)について 判 断 する オールフリーは 本 件 特 許 の 優 先 日 前 である 平 成 22 年 8 月 3 日 に 原 告 が 販 売 を 開 始 したものであり,その 成 分 等 を 分 析 することが 格 別 困 難 であるとはうかがわれ ないから,オールフリーに 係 る 発 明 ( 公 然 実 施 発 明 1)は 日 本 国 内 において 公 然 実 施 をされた 発 明 ( 特 許 法 29 条 1 項 2 号 )に 当 たる (1) 本 件 発 明 と 公 然 実 施 発 明 1の 対 比 ア 本 件 発 明 は 請 求 項 1 記 載 のとおり, である 一 方, 公 然 実 施 発 明 1は, 証 拠 ( 乙 1,4,41の1) 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれ ば, 別 紙 1-1~3に 示 された 各 分 析 項 目 の 成 分 量 ないし 特 性 を 備 えたノンアルコー ルのビールテイスト 飲 料 であり,エキス 分 の 総 量 は0.39 重 量 %,phの 値 は3. 78, 糖 質 はゼロ( 栄 養 表 示 基 準 に 基 づき100ml 当 たり0.5g 未 満 )であると 認 められる そうすると, 本 件 発 明 と 公 然 実 施 発 明 1は,エキス 分 の 総 量 につき, 本 件 発 明 が 0.5 重 量 % 以 上 2.0 重 量 % 以 下 であるのに 対 し, 公 然 実 施 発 明 1が0.39 重 量 %である 点 で 相 違 し,その 余 の 点 で 一 致 する イ これに 対 し, 原 告 は, 本 件 発 明 はエキス 分 の 総 量,pH 及 び 糖 質 の 含 量 の 各 数 値 範 囲 と 飲 み 応 え 感 及 び 適 度 な 酸 味 付 与 という 効 果 の 関 連 性 を 見 いだしたことを 技 術 思 想 とするものであり, 公 然 実 施 発 明 1はこのような 技 術 思 想 を 開 示 するものではない から,オールフリーの 多 数 の 分 析 項 目 の 中 からエキス 分 の 総 量,pH 及 び 糖 質 の 含 量 のみを 抜 き 出 して 公 然 実 施 発 明 1を 特 定 することは 許 されず,エキス 分 の 総 量,pH 及 び 糖 質 の 含 量 をひとまとまりの 構 成 として 相 違 点 を 認 定 すべきである 旨 主 張 する そこで 判 断 するに, 後 掲 の 証 拠 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば, 以 下 のとおり 解 するこ とができる (ア) 本 件 発 明 は, 特 許 請 求 の 範 囲 の 記 載 上,エキス 分 の 総 量,pH 及 び 糖 質 の 含 量 につき 数 値 範 囲 を 限 定 しているが, 各 数 値 がそれぞれ 当 該 範 囲 内 にあれば 足 りる のであり,これらが 相 互 に 特 定 の 相 関 関 係 を 有 することは 規 定 されていない また, 本 件 明 細 書 の 発 明 の 詳 細 な 説 明 の 欄 をみても, 例 えば,エキス 分 の 総 量 が0.5 重 量 %であるときはpHをどの 範 囲 とし,これが2.0 重 量 %であるときはpHをどの 範 囲 とするのが 望 ましいなどといった 記 載 は 見 当 たらず, 要 は,エキス 分 の 総 量,p H 及 び 糖 質 の 含 量 がそれぞれ 数 値 範 囲 内 にあれば 足 りるとされている (イ) 証 拠 ( 乙 4,21,28の1) 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば,1リキュール の 品 質 及 び 成 分 の 評 価 においてエキス 分 の 総 量,pH 及 び 糖 質 の 含 量 が 一 般 的 な 分 析 項 目 とされていること,2 本 件 特 許 の 優 先 日 前 に 頒 布 された Biere der W elt( 世 界 のビール) と 題 する 文 献 ( 乙 28の1)に, 各 種 のノンアルコールビ ールテイスト 飲 料 についてエキス 分 及 びpHを 測 定 項 目 に 含 めた 一 覧 表 が 掲 載 されて いること,3 原 告 が 公 然 実 施 発 明 1の 発 売 に 当 たり 糖 質 の 含 量 を 測 定 し, 糖 質 がゼロ であることを 宣 伝 文 句 としていることが 認 められる これら 事 実 関 係 に 照 らせば,エ キス 分 の 総 量,pH 及 び 糖 質 はノンアルコールのビールテイスト 飲 料 の 性 状 を 特 定 す 6

る 上 でごくありふれた 項 目 であり, 当 業 者 であれば 当 然 に 着 目 する 事 項 とみることが できる (ウ) さらに, 本 件 発 明 は, 特 許 請 求 の 範 囲 の 記 載 上,エキス 分 又 は 糖 質 として 具 体 的 にどのような 物 質 をいかなる 量 含 有 するか,pHの 数 値 をどのように 規 制 する かを 特 定 するものでなく,また, 他 の 成 分 の 存 否 や 測 定 値 につき 触 れるところもな い 本 件 明 細 書 ( 甲 2)の 発 明 の 詳 細 な 説 明 の 記 載 をみても,エキス 分 の 具 体 的 成 分 及 び 総 量 を 規 制 する 手 段,pH 調 整 剤 の 種 類 及 び 使 用 方 法, 糖 質 の 種 類,その 他 の 添 加 物 の 有 無 等 に 格 別 の 限 定 はされていない( 段 落 0020, 0021, 0 024 ~ 0027, 0030, 0033 ) そうすると, 別 紙 1-1 ~3に 示 された 公 然 実 施 発 明 1の 多 数 の 分 析 項 目 のうちエキス 分 の 総 量,pH 及 び 糖 質 以 外 の 成 分 等 の 分 析 結 果 は, 本 件 発 明 の 進 歩 性 を 検 討 するに 当 たり 考 慮 する 必 要 は ないと 考 えられる (エ) 以 上 によれば, 本 件 発 明 の 進 歩 性 を 判 断 する 前 提 として 公 然 実 施 発 明 1と の 相 違 点 を 認 定 するに 当 たっては,エキス 分 の 総 量,pH 及 び 糖 質 の 各 数 値 をみれば 足 りると 解 すべきであるから, 原 告 の 上 記 主 張 を 採 用 することはできない (2) 相 違 点 の 容 易 想 到 性 ア 後 掲 の 証 拠 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば, 次 の 事 実 が 認 められる (ア) 公 然 実 施 発 明 1は, 本 件 特 許 の 優 先 日 当 時, 我 が 国 におけるノンアルコー ルのビールテイスト 飲 料 の 中 で 販 売 金 額 が 最 も 大 きかったが,その 一 方 で, 消 費 者 か ら,コク( 飲 み 応 え)がない, 物 足 りない, 味 が 薄 いといった 評 価 を 受 けていた ( 乙 10,34~36) (イ) ノンアルコールのビールテイスト 飲 料 については, 本 件 特 許 の 優 先 日 以 前 から, 濃 厚 感, 旨 味 感,モルト 感,ボリューム 感 やコク 感 を 欠 くという 問 題 点 が 指 摘 されており,これらを 解 消 して 飲 み 応 えを 向 上 させるため, 穀 物 の 摩 砕 物 にプロテア ーゼ 処 理 を 施 して 得 られる 風 味 付 与 剤, 麦 芽 溶 液 を 抽 出 して 得 られる 香 味 改 善 剤 又 は 香 料 組 成 物, 植 物 性 タンパク 分 解 物 や 麦 芽 抽 出 物, 麦 芽 エキス, 清 酒 由 来 のエキスを 用 いる 風 味 向 上 剤, 茶 葉 の 水 又 はエタノール 抽 出 物 といった 添 加 物 を 用 いる 技 術 が 周 知 となっていた ( 乙 14~16,25~27) (ウ) 本 件 明 細 書 におけるエキス 分 の 総 量 とは,アルコール 度 数 が0.005% 未 満 の 飲 料 の 場 合, 脱 ガスしたサンプルをビール 酒 造 組 合 国 際 技 術 委 員 会 (BOC J)が 定 めるビール 分 析 法 に 従 って 測 定 したエキス 値 ( 重 量 %)をいう( 段 落 00 22 ) 上 記 (イ)の 風 味 付 与 剤 等 はいずれもこの 方 法 の 測 定 対 象 となるエキス 分 に 当 たる ( 甲 2, 乙 2) イ 上 記 事 実 関 係 によれば, 公 然 実 施 発 明 1に 接 した 当 業 者 において 飲 み 応 えが 乏 しいとの 問 題 があると 認 識 することが 明 らかであり,これを 改 善 するための 手 段 とし て,エキス 分 の 添 加 という 方 法 を 採 用 することは 容 易 であったと 認 められる そし て,その 添 加 によりエキス 分 の 総 量 は 当 然 に 増 加 するところ, 公 然 実 施 発 明 1の0. 39 重 量 %を0.5 重 量 % 以 上 とすることが 困 難 であるとはうかがわれない そうす ると, 相 違 点 に 係 る 本 件 発 明 の 構 成 は 当 業 者 であれば 容 易 に 想 到 し 得 る 事 項 であると 解 すべきである 7

なお, 飲 料 中 のエキス 分 の 総 量 を 増 加 させた 場 合 にはpH 及 び 糖 質 の 含 量 が 変 化 す ると 考 えられるが,エキス 分 には 糖 質 由 来 のものとそれ 以 外 のものがあり( 本 件 明 細 書 の 段 落 0020, 0033 参 照 ),phにも 多 様 のものがあると 解 される ことに 照 らすと, 公 然 実 施 発 明 1にエキス 分 を 適 宜 ( 例 えば, 非 糖 質 由 来 で 酸 性 又 は 中 性 のものを) 加 えてその 総 量 を0.5 重 量 以 上 としつつ,pH 及 び 糖 質 の 含 量 を 公 然 実 施 発 明 1と 同 程 度 のもの( 本 件 発 明 の 特 許 請 求 の 範 囲 に 記 載 の 各 数 値 範 囲 を 超 え ないもの)とすることに 困 難 性 はないと 解 される ウ これに 対 し, 原 告 は, 1 公 然 実 施 発 明 1については, 消 費 者 の 満 足 度 が 高 く, 飲 み 応 えに 関 する 課 題 はなか ったこと, 2 飲 み 応 え 感 を 付 与 する 方 法 としてエキス 分 の 総 量 に 着 目 する 動 機 付 けがないこと, 3 公 然 実 施 発 明 1は,トリプルゼロ(アルコール,カロリー 及 び 糖 質 のゼロ)を 商 品 コンセプトとし,エキス 分 が 薄 いことを 特 徴 としていたから,エキス 分 を 増 加 させる ことは 考 え 難 いこと, 4 本 件 発 明 には 公 然 実 施 発 明 1から 予 測 できない 顕 著 な 効 果 があること を 理 由 に, 本 件 発 明 に 進 歩 性 がある 旨 主 張 するが, 以 下 のとおり,いずれも 採 用 する ことができない 1について 公 然 実 施 発 明 1に 対 する 消 費 者 の 評 価 は 前 記 ア(ア)のとおりであ り, 飲 み 応 えに 乏 しいとの 意 見 もあったから, 当 業 者 ( 原 告 に 限 らない )において 公 然 実 施 発 明 1より 飲 み 応 えが 高 いノンアルコールのビールテイスト 飲 料 を 開 発 する ことの 動 機 付 けはあったと 考 えられる 2について,ノンアルコールのビールテイスト 飲 料 につき 飲 み 応 え 感 を 付 与 するた めに 各 種 のエキス 分 を 添 加 する 技 術 が 周 知 であったことは 前 記 ア(イ) 及 びア(ウ) のとおりであり これに 伴 いエキス 分 の 総 量 が 増 加 することは 当 然 に 想 定 されるとい うことができる 3について, 公 然 実 施 発 明 1の 商 品 コンセプトは,アルコール,カロリー 及 び 糖 質 がゼロであることであり( 乙 4),エキス 分 には 糖 質 に 由 来 しないものがあるから ( 上 記 イ),エキス 分 の 総 量 を 増 加 させることが 上 記 コンセプトの 破 壊 につながると は 認 められない 4について,エキス 分 の 増 加 により 飲 み 応 えが 向 上 することが 周 知 であったことは 前 記 ア(イ) 及 び(ウ)のとおりであるから, 本 件 発 明 が 公 然 実 施 発 明 1から 予 測 し 得 る 範 囲 を 超 えた 顕 著 な 効 果 を 奏 するということはできない (3) 小 括 本 件 発 明 は 公 然 実 施 発 明 1に 基 づいて 容 易 に 想 到 することができたから, 本 件 特 許 は 特 許 無 効 審 判 により 無 効 にされるべきもの ( 特 許 法 123 条 1 項 2 号 ) < 裁 判 所 の 結 論 > 以 上 の 次 第 で, 原 告 は 被 告 に 対 して 本 件 特 許 権 を 行 使 することができないから( 特 許 法 104 条 の3 第 1 項 ),その 余 の 点 を 判 断 するまでもなく, 原 告 の 請 求 はいずれ も 理 由 がない よって, 原 告 の 請 求 をいずれも 棄 却 する 以 上 8