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Transcription:

証 券 会 社 の 売 買 管 理 当 局 への 報 告 について ( 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 からの 寄 稿 ) 平 成 22.8 平 成 22 年 1 月 より 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 から 個 別 の 調 査 検 査 事 案 から 得 られる 問 題 意 識 を 中 心 とした 最 新 のトピックについて 定 期 的 に 御 寄 稿 いただいております 第 8 回 目 のテーマは 証 券 会 社 の 売 買 管 理 当 局 への 報 告 について です

証 券 業 報 8 月 号 証 券 会 社 の 売 買 管 理 当 局 への 報 告 について 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 事 務 局 市 場 分 析 審 査 課 市 場 分 析 専 門 官 吉 村 満 1.はじめに 証 券 会 社 では 不 公 正 取 引 の 防 止 のために 売 買 管 理 体 制 を 整 備 し 顧 客 の 売 買 動 向 や 売 買 動 機 等 の 把 握 に 努 めると 共 に 不 公 正 取 引 のおそれがないかどうかの 売 買 審 査 を 行 ってい るところである 証 券 会 社 は 証 券 取 引 を 行 う 投 資 家 とのフロントであり ゲートキーパー として 重 要 な 役 割 を 担 っている 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 ( 以 下 監 視 委 と 略 )としても 証 券 会 社 の 皆 様 からいろいろな 場 を 通 じ 市 場 に 関 する 話 題 や 証 券 業 界 の 問 題 意 識 を 伺 い あるいは 不 公 正 取 引 のおそれのある 取 引 については 適 宜 ご 報 告 頂 いているところである また 昨 年 4 月 1 日 には 日 本 証 券 業 協 会 の 不 公 正 取 引 の 防 止 のための 売 買 管 理 体 制 に 関 する 規 則 が 一 部 改 正 され 当 会 員 は 内 部 者 取 引 のおそれがあると 認 識 した 場 合 には 監 視 委 及 び 日 本 証 券 業 協 会 へ 報 告 することが 求 められることとなり 平 成 21 年 4 月 以 降 当 該 報 告 ( 売 買 審 査 結 果 報 告 書 )が 監 視 委 に 寄 せられることとなった 監 視 委 としては 当 該 報 告 を 内 部 者 取 引 に 係 る 審 査 の 端 緒 情 報 や 既 に 進 行 中 の 取 引 審 査 における 参 考 情 報 に 役 立 てているところであり この 場 を 借 りて 会 員 の 皆 様 には 厚 くお 礼 申 し 上 げたい 今 回 は 証 券 会 社 の 売 買 管 理 や 当 局 への 報 告 というテーマで 監 視 委 の 問 題 意 識 等 をお 伝 えしたい なお 本 稿 中 意 見 にわたる 部 分 については 私 見 であることをあらかじめお 断 りしておく 2. 証 券 会 社 の 売 買 管 理 について 日 本 証 券 業 協 会 では 平 成 22 年 2 月 10 日 付 第 三 者 割 当 の 取 扱 いに 関 するワーキン グ グループ 報 告 書 において 第 三 者 割 当 増 資 等 の 割 当 先 による 短 期 転 売 の 問 題 に 関 し 売 却 注 文 の 受 託 段 階 で 何 かできることがないか 別 途 検 討 する 必 要 がある 旨 の 問 題 提 起 がなされたところである 上 記 報 告 書 の 問 題 提 起 を 契 機 として 不 適 切 ファイナンスや 不 公 正 取 引 などの 最 近 の 事 例 を 踏 まえた 会 員 における 適 切 な 売 買 管 理 等 の 検 討 を 行 うため エクイティ 委 員 会 の 下 部 機 関 として 本 年 4 月 に 証 券 会 社 における 売 買 管 理 等 のあり 方 を 検 討 するワーキング が 立 ち 上 がり 監 視 委 としても 当 ワーキングにオブザーバーとし て 参 加 しているところである 当 ワーキングの 第 2 回 において 監 視 委 の 問 題 意 識 を 述 べさせて 頂 いたところであり 今 回 はその 内 容 を 中 心 にご 紹 介 したい

(1) 第 三 者 割 当 増 資 に 係 る 問 題 近 年 発 行 市 場 においては 割 当 先 が 不 透 明 で 反 社 会 的 勢 力 等 の 関 与 が 懸 念 されたり 既 存 株 主 の 株 主 権 の 著 しい 希 薄 化 をもたらしたりするような 第 三 者 割 当 等 のファイナン スが 頻 繁 に 見 られる こうした 発 行 市 場 における 不 適 切 なファイナンスの 中 には 会 社 の 経 営 陣 と 特 定 の 出 資 者 が 結 託 し 会 社 が 箱 企 業 化 し ファイナンスと 絡 めて 相 場 操 縦 風 説 の 流 布 インサイダー 取 引 虚 偽 記 載 偽 計 等 の 不 公 正 が 行 われるような 複 合 事 案 不 公 正 ファイナンス 事 案 も 多 く 発 生 しているところである 不 公 正 ファイナン ス 事 案 は 発 行 流 通 両 市 場 にまたがる 複 合 事 案 であり 両 市 場 全 体 の 監 視 が 必 要 である 不 適 切 なファイナンスの 最 近 の 傾 向 を 挙 げると 以 下 の 点 が 考 えられるところである 割 当 後 の 短 期 譲 渡 売 却 の 問 題 開 示 上 の 割 当 先 はまともなところだが 割 当 後 の 譲 渡 先 が 問 題 優 先 株 式 の 発 行 希 薄 化 率 規 制 の 回 避 25% 以 上 の 希 薄 化 の 場 合 の 第 三 者 意 見 書 の 問 題 独 立 性 不 十 分 な 検 討 等 現 物 出 資 による 払 い 込 み 特 に イ 不 動 産 による 現 物 出 資 の 場 合 の 鑑 定 評 価 の 問 題 ロ 第 三 者 からの 譲 受 による 現 物 出 資 対 象 資 産 の 取 得 株 主 割 当 の 悪 用 一 般 株 主 が 増 資 に 応 じず( 失 権 ) 特 定 大 株 主 だけが 応 じるよう な 価 格 設 定 等 ( 第 三 者 割 当 増 資 規 制 の 潜 脱 ) 不 公 正 ファイナンス 事 案 への 取 組 みは 既 に 金 融 庁 による 開 示 府 令 の 改 正 証 券 取 引 所 による 上 場 規 則 等 の 改 正 によるルール 面 の 対 応 が 行 われているところであるが 発 行 の 段 階 では 証 券 取 引 所 において 開 示 内 容 の 指 導 や 財 務 局 による 届 出 書 審 査 を 通 じ また 証 券 取 引 所 と 財 務 局 の 連 携 による 水 際 での 対 応 強 化 が 図 られつつあるところである 一 方 で 流 通 の 段 階 においては 証 券 会 社 の 果 たす 役 割 が 大 であり 第 三 者 割 当 の 取 扱 いに 関 するワーキング グループ 報 告 書 での 問 題 提 起 の 通 り 証 券 会 社 において 何 らかの 取 組 みができないか 積 極 的 に 議 論 して 頂 いているところである (2)インサイダー 取 引 に 係 る 問 題 インサイダー 取 引 については 前 回 の7 月 号 課 徴 金 事 例 集 の 公 表 とインサイダー 取 引 事 案 の 傾 向 について をご 参 考 にして 頂 きたいところである そこでは1 公 開 買 付 け 実 施 に 係 るインサイダー 取 引 事 案 の 増 加 2 第 一 次 情 報 受 領 者 によるインサイダ ー 取 引 に 係 る 勧 告 件 数 の 増 加 3 信 用 調 査 会 社 社 員 会 社 のIR 担 当 者 監 査 役 税 理 士 信 金 職 員 など 市 場 において より 高 いモラルを 求 められる 者 によるインサイ ダー 取 引 が 少 なからずあった 等 が 指 摘 されているところである 証 券 会 社 では 内 部 者 登 録 カードを 整 備 し 内 部 者 取 引 の 未 然 防 止 に 努 めているとこ ろであるが 当 該 事 例 集 からの 示 唆 として 売 買 審 査 のポイントとして1 公 開 買 付 け

については 決 定 時 期 から 公 表 までの 期 間 が 他 の 重 要 事 実 に 比 べて 長 く かつ 関 与 す る 者 も 多 いこと また 2についてはインサイダー 取 引 の 行 為 者 も 従 来 の 発 行 会 社 の 役 職 員 から 契 約 締 結 先 や 第 一 次 情 報 受 領 者 の 比 率 が 増 加 しているといった 傾 向 があり 公 表 前 後 の 売 買 の 態 様 や 顧 客 の 属 性 を 合 わせてチェックする 必 要 があると 考 えられる 更 に 課 徴 金 調 査 の 過 程 で 把 握 されたケースとして 借 名 口 座 を 利 用 した 事 実 もあると ころから 特 にネット 取 引 においてはネット 特 有 の 分 析 をしっかり 行 っていく 工 夫 が 必 要 であると 考 えられる 課 徴 金 事 例 集 については 証 券 会 社 の 売 買 審 査 の 視 点 からも 参 考 となる 情 報 であり 今 後 も 積 極 的 に 活 用 して 頂 きたいところである (3) 相 場 操 縦 に 係 る 問 題 相 場 操 縦 事 件 については 最 近 の 課 徴 金 勧 告 事 例 2 件 を 採 り 上 げた ア( 株 )スズケン 株 式 に 係 る 相 場 操 縦 に 対 する 課 徴 金 納 付 命 令 の 勧 告 について (H22 年 2 月 26 日 ) 課 徴 金 納 付 命 令 対 象 者 は 株 式 会 社 スズケンの 株 式 につき 同 株 式 の 売 買 を 誘 引 す る 目 的 をもって 直 前 約 定 値 よりも 上 値 で 約 定 させる 意 思 のない 売 り 注 文 を 発 注 し 売 り 板 を 厚 く 見 せることで 他 の 投 資 家 の 現 値 よりも 低 い 価 格 での 売 り 注 文 を 誘 引 し 株 価 を 下 落 させたところで 同 株 式 を 買 い 付 け その 後 直 前 約 定 値 よりも 下 値 で 約 定 させる 意 思 のない 買 い 注 文 を 発 注 し 買 い 板 を 厚 く 見 せることで 他 の 投 資 家 の 現 値 よ りも 高 い 価 格 での 買 い 注 文 を 誘 引 し 株 価 を 上 昇 させたところで 同 株 式 を 売 り 付 ける などの 方 法 により 同 株 式 の 買 付 け 及 び 売 付 けの 委 託 並 びに 同 株 式 の 買 付 け 及 び 売 付 けを 行 い 同 株 式 の 株 価 を 変 動 させ 28 回 にわたり 同 株 式 の 相 場 を 変 動 させるべ き 一 連 の 売 買 及 び 委 託 をしたものである 当 該 事 例 は 見 せ 玉 等 の 手 法 による 相 場 操 縦 である 昨 年 9 月 29 日 にもネット 取 引 による 見 せ 玉 等 の 手 法 を 用 いたデイトレーダー グループによる 大 規 模 な 相 場 操 縦 の 嫌 疑 で 東 京 地 方 検 察 庁 検 察 官 に 告 発 したところであり ネット 取 引 化 の 進 展 に 伴 って 見 せ 玉 等 の 行 為 は 監 視 委 としても 監 視 を 強 化 しているところである 見 せ 玉 等 の 手 法 は 市 場 の 公 正 を 害 する 悪 質 な 行 為 であるが それこそゲーム 感 覚 に 近 く 短 時 間 に 頻 繁 に 発 注 を 繰 り 返 し その 手 法 も 時 間 と 共 に 巧 妙 化 し 徐 々に 規 模 も 拡 大 していく 可 能 性 が 考 えられることから 早 期 に 発 見 し 注 意 を 喚 起 し 行 為 を 止 め させることが 肝 要 である 取 引 のフロントに 立 つ 証 券 会 社 の 売 買 審 査 の 手 腕 が 問 われ るところであり 顧 客 への 早 めの 注 意 喚 起 や 厳 しい 対 応 が 望 まれる イ( 株 )タウンニュース 社 社 員 による 相 場 操 縦 に 対 する 課 徴 金 納 付 命 令 の 勧 告 につ いて(H22 年 2 月 2 日 )

課 徴 金 納 付 命 令 対 象 者 は 株 式 会 社 タウンニュース 社 の 社 員 であったが 同 社 の 株 券 につき その 株 価 の 高 値 形 成 を 図 り 同 株 券 の 売 買 を 誘 引 する 目 的 をもって 平 成 20 年 11 月 6 日 から 同 月 14 日 までの 間 7 取 引 日 にわたり 直 前 約 定 値 より 高 値 で 買 い 注 文 と 売 り 注 文 を 同 時 期 に 発 注 して 対 当 させ 株 価 を 引 き 上 げる 方 法 や 新 値 を 形 成 しながら 買 い 上 がり 買 付 けを 行 うなどの 方 法 により 同 株 券 合 計 9,100 株 を 買 い 付 ける 一 方 同 株 券 合 計 7,800 株 を 売 り 付 け 同 株 券 の 株 価 を172 円 から 260 円 まで 高 騰 させるなどし 同 株 券 の 相 場 を 変 動 させるべき 一 連 の 売 買 をしたも のである 当 該 事 例 は 仮 装 売 買 等 の 手 法 による 相 場 操 縦 である 仮 装 売 買 は 他 に 株 価 の 高 値 形 成 や 終 値 形 成 を 図 る 等 の 行 為 を 組 み 合 わせて 行 われることも 多 く 売 買 審 査 のポイントとしてもこうした 売 買 を 総 合 的 にチェックする 視 点 が 必 要 と 考 えられる 課 徴 金 事 例 集 によれば 相 場 操 縦 に 関 する 過 去 8 件 の 勧 告 案 件 に 認 められる 傾 向 とし て 1 多 くの 案 件 において 相 場 操 縦 の 対 象 となった 銘 柄 は 新 興 市 場 銘 柄 といった 一 般 的 に 時 価 総 額 が 小 さく 日 々の 取 引 高 も 大 きくない 銘 柄 2 勧 告 になった 案 件 の 違 反 行 為 はすべてネット 取 引 により 行 われ 案 件 によっては 1つの 証 券 口 座 のみならず 複 数 ( 最 大 3 口 座 )を 使 用 したものがあるが 8 件 中 7 件 において 違 反 行 為 者 本 人 名 義 の 口 座 が 用 いられ 借 名 口 座 を 使 う 場 合 も 親 族 名 義 にとどまっているとの 分 析 で あり ネット 取 引 なら 見 つからない この 程 度 なら 咎 められないだろう といった 半 ば 軽 い 感 覚 で 違 反 行 為 を 行 っているとの 推 測 もされ 証 券 会 社 においては 進 行 の 初 期 段 階 で 食 い 止 めるような 売 買 審 査 のグレードアップが 重 要 である 特 にネット 取 引 については 顧 客 と 非 対 面 で 行 われるという 特 性 に 鑑 み 対 面 で 行 う 際 と 同 様 の 顧 客 口 座 の 管 理 や 不 公 正 取 引 のスクリーニングのための 態 勢 を 確 立 することが 必 須 であ ると 考 えられる (4) 新 たな 商 品 と 市 場 の 監 視 新 たな 金 融 商 品 や 取 引 形 態 に 対 する 市 場 監 視 については 本 シリーズの 第 三 回 でCD S 取 引 を 中 心 にご 紹 介 させて 頂 いたところである CDS 取 引 の 他 にDMA( ) デリバティブ 取 引 ( 例 えば 証 券 CFD 取 引 ) ダーク プール 東 証 の 次 世 代 システム 導 入 後 の 高 速 化 する 取 引 手 法 に 伴 った 不 公 正 取 引 等 の パターンの 変 化 等 について 監 視 委 としては 情 報 収 集 分 析 を 行 っているところであり 証 券 会 社 においても 取 引 の 公 正 性 が 確 保 されるための 適 切 な 内 部 管 理 態 勢 について 問 題 意 識 をもって 対 応 をお 願 いしたいところである

3. 当 局 への 報 告 について(コンプライアンスWANの 利 用 ) コンプライアンス は 全 国 の 証 券 会 社 と 全 国 の 証 券 取 引 所 日 本 証 券 業 協 会 監 視 委 財 務 局 等 との 間 を 専 用 線 によるネットワークで 結 び 売 買 データの 授 受 を 電 子 的 に 処 理 するシステムであり 日 本 証 券 業 協 会 及 び 証 券 取 引 所 を 中 心 として 検 討 が 進 められた 結 果 構 築 運 営 される 運 びとなったものである それまで フロッピーディスク 電 子 メール 等 で 行 っていた 売 買 データの 授 受 を 安 全 性 の 高 い 専 用 ネットワークを 経 由 する 方 法 に 一 本 化 することにより 売 買 データの 授 受 における 個 人 情 報 の 漏 洩 リスク 記 録 媒 体 紛 失 リスクが 低 減 し 売 買 データの 徴 求 依 頼 受 領 処 理 に 要 する 時 間 が 短 縮 されることで 取 引 審 査 事 務 の 効 率 化 につながり 証 券 会 社 においても 売 買 データの 提 出 に 要 するコスト 削 減 につながる などといったメリットがもたらされているところである コンプライアンス が 稼 動 を 開 始 した 平 成 21 年 1 月 26 日 から 監 視 委 財 務 局 等 東 京 証 券 取 引 所 及 びその 総 合 取 引 参 加 者 が 利 用 しているほか 同 年 4 月 からは 他 の 証 券 取 引 所 日 本 証 券 業 協 会 及 び 東 京 証 券 取 引 所 の 総 合 取 引 参 加 者 以 外 の 証 券 会 社 も 利 用 を 始 め ている なお 同 年 6 月 1 日 からは コンプライアンス の 個 別 メッセージ 機 能 が 稼 動 し 証 券 会 社 から 売 買 明 細 以 外 のデータ 授 受 が 可 能 になるとともに 監 視 委 財 務 局 等 と 証 券 取 引 所 及 び 日 本 証 券 業 協 会 との 間 でのデータのやり 取 りも 可 能 となっている 監 視 委 としては 今 後 も 各 種 データ 等 の 当 局 宛 報 告 については 安 全 性 の 高 いネットワー クインフラである コンプライアンス をベースとして 関 係 者 との 協 力 連 携 を 図 りつ つ 利 用 していきたい.おわりに 市 場 の 公 正 性 及 び 透 明 性 を 確 保 するためには ゲートキーパーである 証 券 会 社 日 本 証 券 業 協 会 や 証 券 取 引 所 といった 自 主 規 制 機 関 及 び 当 局 が 一 体 となった 取 組 みが 必 要 であり 監 視 委 としては 引 き 続 き 自 主 規 制 機 関 証 券 会 社 と 連 携 を 図 り 市 場 監 視 機 能 の 全 体 と しての 向 上 に 努 めたい