政 策 提 言 NO6 対 北 朝 鮮 制 裁 の 実 態 進 む 国 連 制 裁 と 不 徹 底 な 日 本 の 対 応 2009 年 8 月 21 日 ( 財 ) 平 和 安 全 保 障 研 究 所
目 次 1. 国 連 の 制 裁 強 化 と 日 本 の 対 応 1 2. 国 連 の 制 裁 強 化 の 動 き 1 (1) 国 連 初 の 北 朝 鮮 企 業 の 資 産 凍 結 指 定 1 (2) 核 実 験 強 行 で 更 なる 制 裁 措 置 2 (3) 新 たな 追 加 指 定 に 個 人 も 含 める 2 (4) 制 裁 の 実 効 性 カギを 握 る 中 国 ロシア 3 3. 国 連 の 制 裁 リストに 指 定 された 団 体 個 人 3 (1)4 月 24 日 に 制 裁 指 定 を 受 けた 団 体 3 (2)7 月 16 日 に 制 裁 追 加 指 定 を 受 けた 団 体 個 人 4 (3) 国 連 の 制 裁 リストからはずされた 日 米 提 出 の 資 産 凍 結 対 象 候 補 リスト( 団 体 ) 4 4. 北 の 大 量 破 壊 兵 器 の 製 造 を 支 える 日 本 の 技 術 6 (1) 必 要 な 機 器 の 90%は 日 本 製 6 (2) 北 朝 鮮 の 技 術 開 発 に 大 きな 役 割 を 果 たす 朝 鮮 総 連 と 科 協 7 (3) 北 朝 鮮 への 科 協 の 貢 献 度 に 対 する 評 価 7 (4) 在 日 本 朝 鮮 人 科 学 技 術 協 会 の 概 要 8 5. 日 本 からの 不 正 輸 出 事 件 10 6. 北 の 特 異 な 経 済 体 制 金 体 制 を 支 える 宮 廷 経 済 14 7. 信 頼 感 を 失 う 日 本 の 対 応 15 (1) 貨 物 検 査 実 施 の 法 制 さえ 整 えられない 日 本 15 (2) 有 効 な 金 融 制 裁 手 段 を 持 ちながら 実 行 に 移 さない 日 本 15 (3) 徹 底 を 欠 く 日 本 の 制 裁 措 置 16
対 北 朝 鮮 制 裁 の 実 態 進 む 国 連 制 裁 と 不 徹 底 な 日 本 の 対 応 * 1. 国 連 の 制 裁 強 化 と 日 本 の 対 応 2009 年 4 月 5 日 北 朝 鮮 が 人 工 衛 星 打 ち 上 げ という 名 目 でミサイル 発 射 を 太 平 洋 へ 向 けて 行 った 結 果 国 連 安 全 保 障 理 事 会 は 4 月 13 日 これを 非 難 する 議 長 声 明 を 出 した この 中 で 国 連 安 保 理 は 4 月 30 日 までに 資 産 凍 結 の 対 象 となる 個 人 団 体 と 禁 輸 品 目 を 定 めるとした 2006 年 10 月 に 北 朝 鮮 が 核 実 験 を 行 った 際 国 連 安 保 理 はこれを 非 難 する 決 議 1718 号 を 採 択 したが そこでは 北 朝 鮮 への ぜいたく 品 の 輸 出 を 禁 じて いた これと 併 せて 日 本 は 万 景 峰 号 の 新 潟 港 出 入 禁 止 など 独 自 の 制 裁 措 置 を 追 加 して 履 行 してきた しかし 実 際 には 中 国 は 北 への 経 済 支 援 や 鉱 物 資 源 開 発 への 投 資 を 増 大 させてきた いまでは 中 国 は 北 の 食 糧 の 70% エネルギー 資 源 の 70~80%を 供 給 するまでになっていると 言 われる しかも 日 本 の 北 に 対 する 制 裁 は 不 徹 底 で この 間 北 の 核 ミサイルの 開 発 に 必 要 な 機 械 や 精 密 部 品 の 多 くが 日 本 国 内 の 北 朝 鮮 系 の 商 社 や 科 学 者 の 支 援 によっており いくつかの 不 正 輸 出 事 件 が 起 きてきた ここでは 国 連 の 制 裁 強 化 の 経 緯 および 日 本 の 制 裁 措 置 の 実 態 を 示 して 日 本 の 対 応 の 改 善 を 促 したい 2. 国 連 の 制 裁 強 化 の 動 き (1) 国 連 初 の 北 朝 鮮 企 業 の 資 産 凍 結 指 定 上 記 のように 4 月 13 日 の 議 長 声 明 を 受 けて 4 月 24 日 国 連 安 保 理 の 制 裁 委 員 会 は 北 朝 鮮 の 弾 道 ミサイル 関 連 品 目 の 輸 出 を 取 り 扱 う 朝 鮮 工 業 開 発 貿 易 会 社 軍 需 物 資 の 調 達 を 担 当 しているとされる 朝 鮮 嶺 峰 総 合 会 社 武 器 取 引 の 決 済 を 担 当 しているとされる 瑞 川 商 業 銀 行 の3 社 の 資 産 凍 結 を 命 * このペーパーは 西 原 正 ( 当 研 究 所 理 事 長 )と 長 谷 川 忠 を 中 心 とした 研 究 グループによ って 作 成 されたものである 1
じる 制 裁 リストを 正 式 に 採 択 した この 新 たな 指 定 は 2006 年 の 北 の 核 実 験 後 に 採 択 された 国 連 安 保 理 制 裁 決 議 1718 号 の 正 式 付 属 文 書 として 全 加 盟 国 に 通 達 された 各 国 は 本 決 議 に 基 づき 指 定 企 業 の 銀 行 口 座 凍 結 や 指 定 品 目 の 禁 輸 を 実 施 する 義 務 を 負 う 制 裁 委 員 会 は 90 日 ごとに 履 行 状 況 をチェックするとしている (2) 核 実 験 強 行 で 更 なる 制 裁 措 置 北 朝 鮮 はさらに 2009 年 5 月 25 日 に 地 下 核 実 験 を 断 行 した 2006 年 10 月 に 次 いで 2 回 目 の 核 実 験 となったが これを 非 難 する 国 連 安 保 理 は 6 月 12 日 に 国 連 憲 章 第 7 章 を 適 用 する 決 議 1874 号 を 採 択 した これによって 北 に 対 する 新 たな 経 済 援 助 や 投 資 ( 人 道 目 的 は 除 く)を 禁 止 することや 北 を 出 入 りする 飛 行 機 や 船 舶 の 貨 物 検 査 をすることが 決 議 された 日 本 は 決 議 採 択 には 米 国 と ともに 共 同 行 動 をとって 中 国 やロシアを 説 得 したが 肝 心 の 国 内 法 を 制 定 する 必 要 があった 麻 生 政 権 は 7 月 14 日 に 貨 物 検 査 特 別 措 置 法 案 を 衆 議 院 で 通 過 させたが 7 月 21 日 参 議 院 で 多 数 派 の 民 主 党 によって 首 相 問 責 案 が 可 決 された ため 民 主 党 は 参 議 院 での 法 案 審 議 を 拒 否 してしまった このため 同 法 案 は 廃 案 となったのである (3) 新 たな 追 加 指 定 に 個 人 も 含 める 7 月 16 日 国 連 安 保 理 の 制 裁 委 員 会 は4 月 の 制 裁 強 化 処 置 に 引 き 続 き 北 朝 鮮 の 核 開 発 計 画 を 統 括 する 立 場 にある 李 済 善 原 子 力 総 局 長 をはじめとする 高 官 ら5 人 を 制 裁 リストに 加 え 資 産 凍 結 や 渡 航 禁 止 の 対 象 としたほか 原 子 力 総 局 や イランに 拠 点 を 置 いて 弾 道 ミサイル 輸 出 に 関 する 資 金 移 転 に 関 与 してい るとされる 香 港 エレクトロニクスなど 5 団 体 も 追 加 指 定 し 制 裁 リストに 挙 げ られている 団 体 は 計 8 団 体 となった 制 裁 委 員 会 はさらに 対 象 企 業 の 子 会 社 などの 追 加 指 定 に 向 けた 作 業 も 進 め るとしているが 国 連 安 保 理 の 制 裁 委 員 会 が 資 産 凍 結 や 渡 航 禁 止 の 対 象 指 定 作 業 を 完 了 したことで 北 朝 鮮 に 核 を 放 棄 させる 目 標 に 向 けた ヒト モノ カネ の 流 れを 封 じる 国 際 包 囲 網 がしかれることとなった 2
(4) 制 裁 の 実 効 性 カギを 握 る 中 国 ロシア 安 保 理 制 裁 ではこれまでも 北 朝 鮮 に 出 入 する 貨 物 検 査 によって モノ の 流 れを 企 業 に 対 する 金 融 制 裁 で カネ の 流 れを 封 じてきたが 今 回 は 更 に 核 開 発 を 進 める 技 術 開 発 部 門 の 責 任 者 を 渡 航 禁 止 とすることで ヒト の 動 き も 封 じたものである しかしながら 国 連 安 保 理 の 決 議 は 全 加 盟 国 に 履 行 を 義 務 付 けるものである が 実 際 には 不 履 行 国 に 対 する 罰 則 規 定 はないため 実 際 の 履 行 は 各 国 の 自 主 性 に 委 ねられており その 実 効 性 には 疑 問 も 付 きまとっている 特 に4 月 の 制 裁 強 化 処 置 について 日 本 は 14 社 米 国 は 11 社 を 資 産 凍 結 対 象 候 補 として 提 案 したのに 対 し 中 国 ロシアが 制 裁 強 化 は 非 生 産 的 だ などとしてリストの 拡 大 に 強 硬 に 反 対 したことから 3 社 に 大 幅 に 減 少 したほか 7 月 の 個 人 指 定 においても 15 人 をリストアップした 当 初 案 から 交 渉 の 過 程 で 人 数 が 大 きく 後 退 したことなどから 実 効 性 を 確 保 するためには 特 に 中 国 ロシアの 協 力 履 行 が 鍵 となる 3. 国 連 の 制 裁 リストに 指 定 された 団 体 個 人 (1)4 月 24 日 に 制 裁 指 定 を 受 けた 団 体 1 朝 鮮 鉱 業 開 発 貿 易 会 社 ( 本 社 平 壌 旧 蒼 光 信 用 貿 易 会 社 主 に 弾 道 ミサイ ルや 通 常 兵 器 関 連 商 品 の 輸 出 弾 道 ミサイル 関 連 部 品 を 取 り 扱 う 第 2 経 済 委 員 会 4 総 局 に 所 属 し かつても 弾 道 ミサイルの 取 引 容 疑 で 数 回 にわたり 制 裁 を 受 けている ) 2 朝 鮮 嶺 峰 総 合 会 社 ( 本 社 平 壌 北 朝 鮮 の 武 器 産 業 を 支 える 複 合 企 業 体 旧 龍 岳 山 貿 易 会 社 で 軍 事 物 資 の 獲 得 武 器 売 却 支 援 を 行 っている 中 東 地 域 など に 兵 器 を 輸 出 ) 3 端 川 商 業 銀 行 ( 本 部 平 壌 北 朝 鮮 の 通 常 兵 器 弾 道 ミサイルなど 武 器 売 買 に 関 する 主 要 金 融 機 関 旧 蒼 光 信 用 銀 行 で 兵 器 取 引 の 代 金 を 管 理 ) 3
(2)7 月 16 日 に 制 裁 追 加 指 定 を 受 けた 団 体 個 人 団 体 1 南 川 江 貿 易 会 社 ( 原 子 力 総 局 傘 下 で 核 関 連 物 資 の 調 達 を 担 当 2007 年 9 月 にイスラエルによって 空 爆 されたシリアの 原 子 炉 とみられる 施 設 の 建 設 への 関 与 が 指 摘 されている 米 政 府 関 係 者 によると 同 社 はダマスカスに 支 店 を 置 い ていた 北 京 にも 支 店 を 構 え 中 国 を 通 じ 核 施 設 建 設 のための 資 材 を 入 手 し シリアに 輸 送 していた 制 裁 指 定 を 受 けた 同 社 のユン ホジン 社 長 は 欧 米 の 情 報 機 関 の 監 視 対 象 だったという 米 政 府 は 破 壊 されたシリアの 原 子 炉 は 北 朝 鮮 の 支 援 を 受 けて 完 成 したとみている 2008 年 5 月 に 摘 発 された ナカノ コーポレーション による 真 空 ポンプ の 不 正 輸 出 は 台 湾 の 商 社 を 経 由 して 南 川 江 貿 易 会 社 に 迂 回 輸 出 されていた ) 2 香 港 エレクトロニクス( 弾 道 ミサイル 取 引 などの 資 金 移 転 を 担 当 イラン キッシュ 島 に 本 拠 を 置 く 北 朝 鮮 によるイランの 核 計 画 支 援 の 中 心 となってい るといわれ 米 財 務 省 は6 月 末 北 朝 鮮 のミサイル 拡 散 に 関 与 したと 断 定 し 同 社 に 対 する 金 融 制 裁 措 置 をとった ) 3 朝 鮮 革 新 貿 易 会 社 ( 大 量 破 壊 兵 器 開 発 に 関 与 ) 4 原 子 力 総 局 ( 核 開 発 計 画 を 統 括 ) 5 朝 鮮 タングン 貿 易 会 社 ( 大 量 破 壊 兵 器 の 研 究 開 発 を 行 う 北 朝 鮮 第 2 自 然 科 学 アカデミー 傘 下 の 貿 易 会 社 ) 個 人 1ユン ホジン( 南 川 江 貿 易 社 長 ウラン 濃 縮 計 画 に 必 要 な 物 資 の 調 達 役 ) 2 李 済 善 ( 原 子 力 総 局 総 局 長 核 計 画 を 総 括 ) 3 黄 錫 夏 ( 原 子 力 総 局 局 長 核 計 画 を 担 当 ) 4リ ホンソプ( 寧 辺 原 子 力 研 究 センター 元 所 長 ) 5 韓 裕 魯 ( 朝 鮮 竜 岳 山 貿 易 総 会 社 総 社 長 弾 道 ミサイル 計 画 に 関 与 ) (3) 国 連 の 制 裁 リストからはずされた 日 米 提 出 の 資 産 凍 結 対 象 候 補 リスト ( 団 体 ) 北 朝 鮮 のミサイル 発 射 で 議 長 声 明 が 採 択 された 後 日 本 は 北 朝 鮮 の 兵 器 輸 出 に 関 連 した 14 社 米 国 は 11 社 を 資 産 凍 結 対 象 候 補 として 提 案 したが 中 国 4
ロシアの 強 硬 な 反 対 によって 3 社 しか 認 められなかった 制 裁 指 定 からはずさ れた 団 体 は 次 の 通 り 米 国 が 提 出 していた 制 裁 対 象 リスト 指 定 された 団 体 1 朝 鮮 鉱 業 開 発 貿 易 会 社 2 朝 鮮 嶺 峰 総 合 会 社 3 端 川 商 業 銀 行 指 定 から 外 された 団 体 (いずれも 指 定 された 朝 鮮 鉱 業 開 発 貿 易 会 社 及 び 朝 鮮 嶺 峰 総 合 会 社 の 子 会 社 ) 4 彗 星 貿 易 会 社 ( 武 器 用 部 品 製 造 民 需 品 も 一 部 製 造 ) 5 朝 鮮 総 合 設 備 輸 入 会 社 ( 旧 朝 鮮 海 金 剛 貿 易 会 社 朝 鮮 複 合 設 備 輸 入 会 社 武 器 用 部 品 製 造 民 需 品 も 一 部 製 造 ) 6 朝 鮮 国 際 化 学 共 同 企 業 体 7 朝 鮮 光 星 貿 易 会 社 ( 金 属 製 品 の 輸 出 入 専 門 会 社 衣 類 の 加 工 貿 易 天 然 水 の 輸 出 も 行 っている) 8 富 強 貿 易 会 社 ( 民 需 軍 需 両 方 を 扱 う 総 合 貿 易 会 社 中 国 韓 国 に 支 社 バイ クの 生 産 など 金 属 工 業 もあるが 豆 の 抽 出 物 で 作 り 血 液 の 循 環 を 助 けるとい われる 血 宮 不 老 精 を 日 本 に 輸 出 し かなりの 収 益 を 得 ていたが 2006 年 日 本 が 制 裁 を 発 動 し 輸 出 が 禁 止 された ) 9 朝 鮮 龍 光 貿 易 会 社 ( 鉱 物 輸 出 電 子 部 品 化 学 製 品 等 の 輸 入 船 舶 解 体 と 海 外 工 事 の 専 門 会 社 ) 10 朝 鮮 蓮 花 機 械 ( 武 器 製 造 に 欠 かせない 旋 盤 などの 加 工 機 械 を 開 発 輸 出 最 近 コンピューターで 操 縦 できるミーリングマシンと 旋 盤 を 開 発 東 南 アジア 諸 国 と 取 引 ) 11 土 城 技 術 貿 易 会 社 日 本 が 提 出 していたリスト( 米 国 案 に 下 記 3 社 を 追 加 した 14 社 ) 12 朝 鮮 東 海 海 運 会 社 ( 北 朝 鮮 の 主 力 貨 物 船 を 所 有 する 旅 客 輸 送 会 社 第 2 経 済 委 員 会 に 所 属 するといわれる ) 13 蜂 火 病 院 ( 朝 鮮 労 働 党 の 副 部 長 級 以 上 のための 高 級 病 院 であるが 診 療 以 外 に 微 生 物 の 研 究 も 行 う 研 究 室 が 内 部 にあるといわれている 朝 鮮 総 連 からの 寄 付 や 寄 贈 が 多 く 朝 鮮 総 連 との 関 係 が 強 く 日 本 からの 最 新 医 療 設 備 が 持 ち 込 ま れている 模 様 である ) 5
14 平 壌 情 報 科 学 センター( 北 朝 鮮 の 政 府 機 関 向 け 管 理 ソフトなどの 開 発 が 主 な 業 務 中 国 に 関 連 のベンチャー 企 業 を 置 いているほか 韓 国 の 企 業 体 とも 提 携 し てプログラム 開 発 等 を 行 っている 表 看 板 は 学 術 団 体 ということで 韓 国 の 大 学 と 交 流 している ) 北 朝 鮮 は4 月 の 国 連 議 長 声 明 に 強 く 反 発 したが この 国 連 安 保 理 の 議 長 声 明 に 基 づく 制 裁 を 無 視 し 5 月 に 核 実 験 7 月 4 日 には 弾 道 ミサイル 7 発 を 連 続 発 射 し 対 北 圧 力 を 強 める 国 際 社 会 との 対 決 姿 勢 を 鮮 明 にした 7 月 の 追 加 制 裁 では 北 朝 鮮 の 権 力 中 枢 に 最 も 近 い 軍 関 係 者 や 政 治 指 導 者 な どが 今 回 のリストには 含 まれていないが 国 連 安 保 理 は 今 後 の 北 朝 鮮 の 反 応 を 見 極 めながら これらの 層 をターゲットにした 実 効 性 の 高 い 追 加 指 定 も 視 野 に 入 れているとみられ また 団 体 指 定 された 香 港 エレクトロニクス 南 川 江 貿 易 は 米 政 府 が 今 年 6 月 に 金 融 制 裁 措 置 を 発 動 しているが 国 連 の 制 裁 対 象 になったことで 国 際 包 囲 網 が 逐 次 形 成 されている 状 況 を 北 朝 鮮 に 強 く 示 したものといえる これまで 北 朝 鮮 は 国 連 安 保 理 決 議 や 制 裁 のたびに 反 発 し 挑 発 行 為 をエス カレートさせてきた しかし 最 近 になって 北 朝 鮮 船 舶 カンナム 号 が 米 国 艦 船 の 追 跡 を 受 けて 引 き 返 すなど 挑 発 一 辺 倒 だった 北 朝 鮮 にも 微 妙 な 変 化 がみられる 国 連 外 交 筋 は 国 際 社 会 による 包 囲 網 が 形 成 されつつあることは 確 実 に 北 朝 鮮 に 伝 わっているだろう と 制 裁 がすでに 一 定 の 効 果 を 上 げ 始 め ているとの 見 方 を 示 している 4. 北 の 大 量 破 壊 兵 器 の 製 造 を 支 える 日 本 の 技 術 (1) 必 要 な 機 器 の 90%は 日 本 製 従 来 から 北 朝 鮮 の 軍 事 力 特 に 北 朝 鮮 が 異 常 な 執 念 を 以 て 開 発 している 核 生 物 化 学 兵 器 の 大 量 破 壊 兵 器 とミサイルに 関 連 する 各 種 機 器 類 等 は 殆 どが 日 本 から 入 手 しているといわれてきた 2003 年 5 月 に 米 国 のシンクタンクのハドソン 研 究 所 が 開 いた 北 朝 鮮 の 大 量 破 壊 兵 器 や 弾 道 ミサイルの 製 造 等 に 関 する 記 者 会 見 で 北 朝 鮮 でミサイル 開 発 6
に9 年 間 携 わっていたという 元 技 師 は 北 朝 鮮 の 核 生 物 化 学 の 大 量 破 壊 兵 器 と 弾 道 ミサイルの 製 造 に 必 要 な 機 械 類 部 品 はほぼ 100% 外 国 からの 輸 入 に 頼 ってきた この 輸 入 のうちの 90%が 日 本 からで 直 接 に 日 本 領 土 から 様 々 な 方 法 で 北 朝 鮮 に 持 って 来 るという 調 達 の 方 法 がとられてきた また 核 開 発 施 設 で 使 われていた 排 水 ポンプや 油 圧 掘 削 機 輸 送 用 のトラックなどは 全 て 日 本 製 だった と 北 朝 鮮 の 大 量 破 壊 兵 器 の 開 発 には 日 本 製 品 が 大 きく 関 わってい ることを 明 らかにした (2) 北 朝 鮮 の 技 術 開 発 に 大 きな 役 割 を 果 たす 朝 鮮 総 連 と 科 協 これらの 機 器 等 の 北 朝 鮮 への 流 出 不 正 輸 出 には 朝 鮮 総 連 と 共 に 朝 鮮 総 連 の 傘 下 団 体 在 日 本 朝 鮮 人 科 学 技 術 協 会 ( 以 下 科 協 と 記 す)の 存 在 が 大 きく 朝 鮮 総 連 からは 主 として カネ と モノ が 科 協 からは モノ と ヒト ( 技 術 ) が 流 れていると 指 摘 されてきたが その 実 態 については 深 いベールに 包 まれていた 2005 年 10 月 に 科 協 役 員 らによる 薬 事 法 違 反 事 件 で 東 京 都 内 の 科 協 本 部 が 初 めて 捜 索 され 押 収 された 資 料 などから 科 協 の 実 態 が 明 らかにさ れ これまでの 機 器 等 の 不 正 輸 出 ばかりでなく 科 協 会 員 を 介 した 日 本 の 先 端 技 術 知 識 の 流 出 が 鮮 明 になった その 科 協 が 如 何 に 北 朝 鮮 に 貢 献 してきたかについては 北 朝 鮮 自 身 が 次 項 のよ うに 述 べていることからも 明 らかである (3) 北 朝 鮮 への 科 協 の 貢 献 度 に 対 する 評 価 1999 年 3 月 に7 年 ぶりに 平 壌 で 開 催 された 全 国 科 学 者 技 術 者 大 会 に 科 協 が 参 加 ( 団 長 : 科 協 会 長 申 在 均 )した 際 崔 泰 福 党 書 記 は 輝 かしき 成 果 の 報 告 の 中 で 科 協 の 功 績 について 次 のように 語 った 100% 我 々の 力 我 々の 技 術 で 始 めて 人 工 衛 星 光 明 星 1 号 を 成 功 裡 に 発 射 したのは 最 新 科 学 技 術 発 展 で 成 し 遂 げられた 最 も 誇 らしく 貴 重 な 成 果 で ある 在 日 朝 鮮 人 科 学 者 技 術 者 達 は 社 会 主 義 祖 国 の 富 強 発 展 と 祖 国 統 一 の ために 愛 国 的 な 活 動 を 活 発 に 展 開 し 主 体 朝 鮮 の 公 民 である 栄 誉 を 胸 深 く 刻 み 祖 国 の 科 学 者 技 術 者 たちと 経 済 建 設 に 大 きく 寄 与 した 7
1 (4) 在 日 本 朝 鮮 人 科 学 技 術 協 会 の 概 要 在 日 本 朝 鮮 人 科 学 技 術 協 会 とは 在 日 コリアン 科 学 者 技 術 者 生 産 企 業 家 たちをはじめ 自 然 科 学 に 携 わる 教 職 員 と 大 学 院 生 たちを 網 羅 する 団 体 ( 科 協 に ついて 自 ら 説 明 した 言 葉 )で 朝 鮮 労 働 党 の 工 作 機 関 対 外 連 絡 部 の 直 轄 下 にあり 本 国 の 内 閣 の 一 機 関 である 国 家 科 学 院 などと 共 同 研 究 を 行 っている 会 員 は 在 日 の 研 究 者 1,200 人 弱 で 国 立 大 の 研 究 機 関 などに 勤 務 しているも のが 多 い 所 在 地 文 京 区 白 山 朝 鮮 出 版 会 館 6 階 に 所 在 し 全 国 で 12 個 支 部 東 京 エリアの 3 個 支 部 ( 東 京 西 東 京 朝 鮮 大 学 校 )と 神 奈 川 北 海 道 東 北 東 海 京 都 大 阪 兵 庫 中 四 国 九 州 の9エリアの 支 部 からなる 組 織 構 成 8つの 専 門 委 員 会 に 分 かれ 各 専 門 委 員 会 には 分 科 会 とも 言 える 研 究 会 がある 専 門 委 員 会 は 数 学 物 理 学 科 学 材 料 生 物 農 学 機 械 自 動 化 コン ピューター 土 木 建 築 電 気 電 子 各 専 門 委 員 会 からなる 研 究 会 は 例 え ば 科 学 材 料 専 門 委 員 会 には 精 密 有 機 化 学 研 究 会 超 伝 導 研 究 会 水 素 エネルギー 研 究 会 環 境 問 題 研 究 会 エネルギー 研 究 会 物 理 学 専 門 委 員 会 には レザー 研 究 会 生 物 農 学 専 門 委 員 会 には 植 物 生 理 研 究 会 微 生 物 研 究 会 細 胞 及 び 遺 伝 子 工 学 研 究 会 等 々あらゆる 部 門 の 細 部 に 至 る 研 究 会 が 存 在 している 会 員 全 国 12 支 部 の 会 員 1,200 人 弱 で うち 約 300 人 が 幹 部 級 会 員 の 勤 務 先 は 複 数 の 国 立 大 や 独 立 行 政 法 人 の 研 究 機 関 電 機 メーカーや 重 機 大 手 など 日 本 を 代 表 する 企 業 の 他 ネット 関 連 の 研 究 者 も 多 く 06 年 1 月 に 発 覚 した 陸 上 自 衛 隊 の 地 対 空 ミサイルデータ 流 出 先 だったソフトウエア 会 社 の 関 係 者 の 名 前 や 過 去 に 不 正 輸 出 で 摘 発 された 貿 易 会 社 の 関 係 者 の 名 前 も 掲 載 されていた (05 年 10 月 科 協 役 員 らによる 薬 事 法 違 反 事 件 で 東 京 都 内 の 科 協 本 部 を 捜 索 した 際 に 押 収 した 資 料 などから 判 明 ) 1 正 論 ( 平 成 18 年 4 月 号 謎 の 組 織 科 協 に 迫 る 産 経 2006.11.18 8
役 員 とその 専 門 分 野 等 役 員 には 会 長 1 名 常 任 理 事 4 名 副 会 長 に 10 名 顧 問 10 名 そのほか 研 究 部 長 技 術 部 長 広 報 企 画 部 長 総 務 部 副 部 長 事 務 部 長 そして8つの 専 門 委 員 会 に 各 委 員 長 がそれぞれ1 名 さらに 財 政 監 査 4 名 となっている 会 長 は 朝 鮮 大 学 校 理 学 部 卒 の 黄 喆 洪 であるが その 他 の 役 員 やメンバーについては ほとんど 知 られていない 役 員 には 自 然 科 学 のうち 物 理 や 工 学 分 野 の 専 門 家 が 非 常 に 多 く 農 学 博 士 や 植 物 生 理 学 を 専 門 とする 学 者 は 極 めて 少 ない 常 任 理 事 常 任 理 事 の 特 筆 すべき 人 物 の 一 人 は 00 年 以 前 に 会 長 職 を 長 らく 務 めた 李 時 求 で 京 都 大 学 から 大 阪 大 学 大 学 院 に 進 み 物 理 学 の 博 士 号 と 北 朝 鮮 科 学 院 の 院 士 号 を 持 つ 月 刊 誌 諸 君 (90 年 5 月 号 )に 掲 載 された ニッポンが 支 える 北 朝 鮮 の 原 発 計 画 ( 麻 生 幾 )では 科 協 会 長 の 李 時 求 は 日 本 の 原 子 物 理 学 の 権 威 の 下 で 学 び 原 子 力 開 発 にも 精 通 している と そして 李 時 求 が 学 んだ 日 本 の 原 子 物 理 学 の 権 威 北 朝 鮮 がターゲットとする 日 本 人 科 学 者 に ついて 北 朝 鮮 は 李 時 求 科 協 会 長 の 仲 介 で 86 年 には 宇 宙 工 学 の 権 威 で 東 大 名 誉 教 授 の 糸 川 英 夫 を また 87 年 には 原 子 物 理 学 の 権 威 で 日 本 学 術 会 議 会 長 ( 当 時 )の 伏 見 康 治 阪 大 名 誉 教 授 元 日 本 原 子 力 研 究 所 理 事 長 で 科 学 技 術 庁 顧 問 を 務 める 宗 像 英 二 などを 招 聴 している と 書 かれている 伏 見 教 授 は 戦 時 中 日 本 が 行 っていた 原 爆 の 研 究 ウラン 濃 縮 研 究 の 中 心 人 物 のひとりで あったといわれる 10 名 の 副 会 長 10 名 の 副 会 長 は ほとんどが 理 工 系 科 学 技 術 者 で ミサイルデータ 流 出 先 企 業 の 元 社 長 をはじめ フランス 留 学 経 験 もある 東 工 大 理 学 博 士 共 和 国 博 士 号 を 持 つ 朝 鮮 大 学 校 理 工 学 部 長 東 海 大 で 半 導 体 工 学 を 教 える 工 学 博 士 自 動 計 測 機 器 メーカー 社 長 などである 10 名 の 顧 問 10 名 の 顧 問 には おもに 教 育 畑 を 歩 み 朝 鮮 総 連 の 役 職 を 歴 任 した 人 物 労 働 二 重 勲 章 に 輝 く 北 朝 鮮 代 議 員 内 燃 機 関 の 世 界 的 権 威 商 工 連 ( 在 日 本 朝 鮮 人 商 工 連 合 会 ) 役 員 朝 大 元 理 工 学 部 教 授 一 級 建 築 士 として 活 躍 する 東 大 工 学 博 士 先 の 薬 事 法 違 反 容 疑 で 逮 捕 された 東 大 農 学 博 士 等 々 様 々であり 9
工 学 関 係 者 が 半 数 以 上 を 占 める このほか 研 究 部 や 技 術 部 等 の 部 長 各 専 門 委 員 会 委 員 長 等 でも 理 学 部 工 学 部 出 身 者 が 多 い 出 身 大 学 別 では ほぼ 半 数 が 朝 鮮 大 学 校 卒 業 で 次 に 多 いのは 東 大 工 学 部 京 大 工 学 部 東 工 大 と 続 いている 朝 大 卒 業 後 に 東 大 ない し 京 大 の 大 学 院 に 進 んだケースも 多 いが 科 協 には 東 大 工 学 部 特 に 東 大 生 産 技 術 研 究 所 ( 東 大 生 産 研 )との 縁 を 持 つ 科 学 者 が 多 いことが 注 目 される 北 朝 鮮 研 究 者 の 間 で 科 協 の 二 大 拠 点 は 東 大 生 産 研 と 理 化 学 研 究 所 とよく 言 われ るが 東 大 生 産 研 の 科 協 人 脈 とも 呼 ぶべき 流 れがあるという 70 年 代 ~90 年 代 に 限 定 しても 東 大 生 産 研 に 所 属 した 科 協 会 員 は 確 認 できるだけで 20 名 を 下 らない 70 年 代 前 半 には 東 大 生 産 研 を 拠 点 とした 対 南 工 作 ( 学 園 スパイ 団 事 件 )さえ 行 われていた この 事 件 が 終 息 し 一 段 落 してから 日 本 人 拉 致 が 始 まっ た という 流 れを 指 摘 する 向 きもある 5. 日 本 からの 不 正 輸 出 事 件 日 本 政 府 は 2006 年 7 月 に 北 朝 鮮 が 弾 道 ミサイルを 発 射 したことに 対 して 北 朝 鮮 の 大 型 貨 客 船 万 景 峰 号 92 の 入 港 禁 止 措 置 を 発 動 し さらに 06 年 10 月 の 核 実 験 によって すべての 北 朝 鮮 船 舶 の 入 港 を 禁 止 するなど 制 裁 を 強 化 し たことから 日 本 からの 物 流 が 停 止 したかに 見 られたが 北 朝 鮮 はこれに 対 し 軍 事 転 用 可 能 な 汎 用 品 等 は 中 国 台 湾 韓 国 や 東 南 アジア 等 第 三 国 を 経 由 して 不 正 輸 入 する 方 法 や 他 国 籍 船 を 使 用 して 日 本 からの 中 古 製 品 の 輸 入 ル ートを 確 保 するなど 日 本 の 制 裁 措 置 の 網 をくぐって 必 要 物 資 の 調 達 を 図 ってい る 1980~90 年 代 の 不 正 輸 出 の 手 口 は 航 空 機 や 日 朝 間 を 往 来 する 貨 客 船 乗 客 の 宅 送 品 を 装 ったものであったが 03 年 にキャッチオール 規 制 に 移 行 して 以 降 日 本 からの 直 接 持 ち 込 みが 難 しくなり 更 に 日 本 の 経 済 制 裁 措 置 が 採 られてか らは 北 への 直 送 を 避 け 迂 回 貿 易 へと 手 口 を 変 化 させ 本 ルートを 確 立 し 拡 大 している 日 本 には 対 北 朝 鮮 貿 易 商 社 が 数 多 く 常 に 新 たな 迂 回 ル ートの 開 拓 に 努 めており 依 然 として 日 本 を WMD 関 連 資 機 材 の 一 大 調 達 拠 点 と 位 置 づけている 状 況 に 変 化 はない 10
03 年 のキャッチオール 規 制 以 降 の 大 量 破 壊 兵 器 関 連 物 資 等 の 不 正 輸 出 事 件 は 次 の 通 りである *キャッチオール 規 制 輸 出 に 当 たり 製 品 材 料 技 術 が 相 手 国 によって 大 量 破 壊 兵 器 やミサイル の 開 発 生 産 に 利 用 される 恐 れがある 場 合 貿 易 管 理 を 担 当 する 政 府 機 関 に 輸 出 許 可 の 申 請 を 行 う 制 度 日 本 では 2002 年 4 月 から 施 行 され 03 年 と 05 年 に 規 制 内 容 が 強 化 された 1 直 流 安 定 化 電 源 不 正 輸 出 事 件 (2003 年 4 月 ) 対 北 朝 鮮 貿 易 商 社 の 代 表 取 締 役 が 核 を 搭 載 するミサイルの 弾 道 の 安 定 化 や ウランの 濃 縮 など 核 兵 器 の 開 発 に 転 用 可 能 な 部 品 直 流 安 定 化 電 源 装 置 3 台 を 経 済 産 業 省 の 許 可 を 受 けずに 神 戸 港 からタイを 経 由 して 北 朝 鮮 向 けに 不 正 に 輸 出 しようとした 同 社 は 朝 鮮 労 働 党 が 運 営 する 軍 事 物 資 調 達 商 社 朝 鮮 大 聖 貿 易 総 会 社 の 指 揮 下 にあり それまでも 軍 事 関 係 を 中 心 に 電 子 部 品 や 工 作 機 器 を 北 朝 鮮 に 輸 出 していたとみられる 2ジェットミル 不 正 輸 出 事 件 (2003 年 6 月 ) 2003 年 6 月 工 作 機 械 メーカーが ミサイル 開 発 に 必 要 な 粉 砕 機 ジェット ミル をはじめ 生 物 化 学 兵 器 製 造 に 転 用 可 能 な 電 子 天 秤 などを 北 朝 鮮 に 不 正 輸 出 していたとして 同 社 役 員 らが 検 挙 された この 不 正 輸 出 には 工 作 機 械 メーカーの 物 色 から 価 格 交 渉 搬 送 まで 科 協 幹 部 が 介 在 取 り 仕 切 っていた 本 件 の 取 調 の 際 1994 年 3 月 には 新 潟 港 から 万 景 峰 92 号 で 輸 出 したことが 明 らかとなったが この 際 は 機 器 の 梱 包 会 社 に 科 協 の 荷 物 として 渡 していた 3ミサイル 移 動 用 車 両 に 転 換 可 能 な 大 型 トラクターの 不 正 輸 出 事 件 (2003 年 9 月 ) 福 岡 県 の 中 古 車 販 売 会 社 の 経 営 者 ら5 人 は 2003 年 9 月 に 軍 事 転 用 可 能 な 大 型 トレーラーに 使 うトラクター( 牽 引 車 )を 中 国 経 由 で 北 朝 鮮 に 不 正 輸 出 しよ うとした 同 社 は 2003 年 2 月 と3 月 にも 北 朝 鮮 の 商 社 に 30 トン 級 の 大 型 トレーラーを 無 許 可 で 輸 出 しようとして 失 敗 したため 5 月 には 大 型 トレーラーの 一 部 を 船 員 らの 手 荷 物 として 不 正 に 輸 出 していた 11
4 周 波 数 変 換 器 不 正 輸 出 事 件 (2004 年 1 月 ) 対 北 朝 鮮 貿 易 商 社 の 代 表 らが 2003 年 11 月 に 核 兵 器 開 発 に 転 用 可 能 な 周 波 数 変 換 器 (インバーター)1 台 を 神 戸 港 からタイを 経 由 して 北 朝 鮮 に 不 正 輸 出 しようとした 同 社 代 表 らは 2003 年 8 月 にも 横 浜 港 から 不 正 輸 出 を 計 画 していた 輸 入 元 の 北 朝 鮮 の 貿 易 会 社 社 長 は 北 朝 鮮 秘 密 警 察 国 家 安 全 保 衛 部 と 関 連 のあるコ ンピューターソフト 開 発 機 構 の 代 表 を 務 めており 日 本 側 の 貿 易 商 社 の 代 表 の 姉 の 夫 である 5 凍 結 乾 燥 機 不 正 輸 出 事 件 (2006 年 2 月 ) 対 北 朝 鮮 貿 易 商 社 の 元 代 表 取 締 役 が 2002 年 9 月 に 生 物 兵 器 製 造 に 転 用 可 能 な 凍 結 乾 燥 機 1 台 を 横 浜 港 から 台 湾 を 経 由 して 北 朝 鮮 向 けに 不 正 に 輸 出 同 機 器 は 金 総 書 記 直 轄 で 軍 関 係 の 研 究 開 発 を 行 う 烽 火 病 院 に 設 置 されたものと 見 られている 同 社 からは 2000~2003 年 にかけて 10 数 回 に 亘 り 電 気 攪 拌 機 一 酸 化 炭 素 計 測 器 ガンマー 線 測 定 機 圧 力 センサーなども 大 量 に 烽 火 病 院 内 の 研 究 施 設 に 搬 入 されていることが 判 明 した 6 生 物 兵 器 に 転 用 可 能 な 医 薬 品 等 の 不 正 輸 出 事 件 (2006 年 11 月 ) 2006 年 11 月 朝 鮮 総 連 関 連 団 体 が 生 物 兵 器 に 転 用 可 能 な 医 薬 品 等 を 万 景 峰 号 で 度 々 不 正 に 持 ち 出 していた 他 北 朝 鮮 系 商 社 から 法 定 伝 染 病 のワクチンな どの 医 薬 品 が 金 総 書 記 直 轄 の 企 業 を 含 む 約 30 社 に 輸 出 されていることが 判 明 した 約 30 社 のうち5 社 は 大 量 破 壊 兵 器 の 開 発 に 関 連 している 懸 念 企 業 として 経 産 省 が 指 定 した 企 業 であった 関 係 当 局 は 朝 鮮 総 連 が 北 の 国 家 的 指 示 を 受 けて 日 本 各 地 で 各 種 活 動 を 進 めてきたと 見 ている ア. 朝 鮮 総 連 の 傘 下 団 体 である 科 協 の 幹 部 が 役 員 を 務 める 千 代 田 区 の 商 社 が 05 年 12 月 に 輸 液 パック 8,100 袋 と 放 射 能 の 被 爆 治 療 にも 使 われるアンプル 薬 1 万 5 千 本 を 北 朝 鮮 の 軍 関 連 商 社 に 輸 出 していることが 判 明 した 輸 出 元 となった 北 系 商 社 の 経 営 陣 には 科 協 幹 部 が 名 を 連 ねている 輸 出 先 約 30 社 のうち ルンラ 888 貿 易 朝 鮮 大 聖 第 6 貿 易 朝 鮮 大 聖 第 8 貿 易 万 景 貿 易 平 壌 産 婦 人 科 の5 社 が 経 産 省 が 指 定 する 懸 念 先 企 業 であった 12
イ.06 年 5 月 科 協 の 理 事 の 妻 は 東 京 都 の 医 師 (59)から 無 許 可 で 輸 液 パッ ク 60 袋 を 受 け 取 り 放 射 能 の 被 爆 治 療 にも 使 われるアンプル 薬 120 本 とともに 段 ボール 箱 の 衣 類 の 下 に 隠 し 万 景 峰 92 号 に 積 み 込 もうとしたところを 税 関 当 局 に 発 見 された 女 は 朝 鮮 総 連 主 催 の 祖 国 訪 問 事 業 に 参 加 するとの 名 目 で 携 行 品 を 北 朝 鮮 に 持 ち 出 そうとした その 後 も 06 年 6 月 別 の 在 日 朝 鮮 人 の 男 が 同 種 の 輸 液 パックを 万 景 峰 92 号 に 持 ち 込 もうとして 通 関 検 査 で 発 覚 し た 輸 出 された 輸 液 パック( 点 滴 薬 )は 生 物 兵 器 に 必 須 の 細 菌 培 養 に 転 用 可 能 であり 01 から 06 年 4 月 までに 横 浜 港 から 少 なくとも 32 トン 以 上 の 点 滴 薬 が 北 に 輸 出 されているという 7 真 空 ポンプの 不 正 輸 出 事 件 (2008 年 5 月 ) 2007 年 に 国 際 原 子 力 機 関 (IAEA)が 北 朝 鮮 の 核 関 連 施 設 に 対 し 行 った 査 察 で ウラン 濃 縮 装 置 に 転 用 された 日 本 製 の 真 空 ポンプが 発 見 された この 真 空 ポン プは 日 本 の 輸 出 入 代 行 業 者 が 北 朝 鮮 へ 送 られるのを 認 識 しながら ポンプ 製 造 元 の 機 械 装 置 メーカーから 真 空 ポンプ 10 台 を 購 入 し 03 年 夏 台 北 の 商 社 を 経 由 して 平 壌 の 南 川 江 貿 易 に 不 正 輸 出 したものと 判 明 した 南 川 江 貿 易 はシリアの 核 開 発 問 題 にも 深 く 関 与 真 空 ポンプや 電 動 タイマーなどを 輸 出 し ていた 8 磁 気 測 定 装 置 の 不 正 輸 出 (2009 年 2 月 ) 北 朝 鮮 系 貿 易 商 社 東 興 貿 易 ( 東 京 都 新 宿 区 )が 2008 年 から 2009 年 初 め にかけ 大 量 破 壊 兵 器 やミサイル 開 発 などに 転 用 可 能 な 物 資 の 輸 出 を 禁 じる キ ャッチオール 規 制 に 該 当 する 磁 気 測 定 装 置 を 経 済 産 業 大 臣 の 許 可 を 受 けずに 東 南 アジア 経 由 で 北 朝 鮮 に 輸 出 しようとした その 後 の 調 査 で 東 興 貿 易 の 李 社 長 は 2008 年 春 ごろ 北 朝 鮮 の 軍 需 物 資 調 達 機 関 第 2 経 済 委 員 会 の 直 轄 企 業 東 新 国 際 貿 易 公 司 ( 本 社 香 港 ) の 北 京 事 務 所 からミサイル 開 発 に 転 用 可 能 な 磁 気 測 定 装 置 をミャンマーに 輸 出 するよう 指 示 され 不 正 輸 出 を 画 策 したことが 判 明 した 発 注 と 送 金 がどちら も 第 2 経 済 委 員 会 ルートだったことや 李 容 疑 者 が 過 去 磁 気 測 定 装 置 とは 別 に WMD などの 開 発 に 転 用 できる 物 資 を 第 2 経 済 委 員 会 ルートで 受 注 し 既 にミ ャンマーに 納 品 している WMD 転 用 可 能 物 資 などが 北 朝 鮮 に 流 れていたことなど から 李 容 疑 者 が 第 2 経 済 委 員 会 と 密 接 に 連 携 して 日 本 での 物 資 調 達 に 深 く 関 13
与 していたとみている 9 大 型 タンクローリー 不 正 輸 出 (2009 年 5 月 ) 韓 国 籍 の 貿 易 会 社 社 長 が 08 年 1 月 に 弾 道 ミサイルの 発 射 台 や 燃 料 運 搬 など に 転 用 可 能 な 中 古 の 国 産 タンクローリー2 台 を 韓 国 の 運 送 会 社 に 輸 出 すると 見 せかけ 仲 介 役 の 中 国 大 連 の 貿 易 会 社 を 通 じ 北 朝 鮮 平 壌 の 商 社 朝 鮮 白 虎 7 貿 易 会 社 に 向 け 輸 出 したとして 為 法 違 反 ( 無 許 可 輸 出 ) 容 疑 で 逮 捕 さ れた 社 長 は 白 虎 7 社 からタンクローリーを 受 注 したとみられる 白 虎 7 社 は 朝 鮮 人 民 軍 直 轄 で 大 量 破 壊 兵 器 やミサイルの 開 発 などの 懸 念 が 残 る 海 外 企 業 として 経 産 省 のリストに 掲 載 されている 商 社 である 6. 北 の 特 異 な 経 済 体 制 金 体 制 を 支 える 宮 廷 経 済 2009 年 5 月 北 朝 鮮 中 枢 の 外 貨 管 理 部 門 で 長 年 働 いていた 金 光 進 は 産 経 新 聞 との 会 見 で 北 朝 鮮 の 近 年 の 経 済 構 造 について 内 閣 が 統 括 する 一 般 の 人 民 経 済 と 外 貨 を 得 る 企 業 産 業 のほぼすべてと 兵 器 産 業 を 統 括 し 金 総 書 記 に 直 結 する 宮 廷 経 済 に 分 離 されている 特 異 な 状 況 などについて 語 った この 外 貨 に 依 存 する 宮 廷 経 済 が 金 総 書 記 の 政 治 軍 事 独 裁 体 制 を 支 えおり 日 本 の 朝 鮮 総 連 からの 送 金 寄 付 金 など 財 政 支 援 が 外 貨 全 体 の 実 に 20~30% を 占 め この 宮 廷 経 済 を 支 える 大 きな 財 源 となっていることを 明 かにした 上 で この 宮 廷 経 済 への 圧 力 こそが 急 速 に 進 む 金 正 日 体 制 の 弱 体 化 を 早 める 上 で 最 も 効 果 があると 強 調 した 金 光 進 はさらに 日 本 に 関 連 して 1 北 朝 鮮 の 外 貨 送 金 受 け 入 れの 朝 鮮 合 営 銀 行 は 事 実 上 朝 鮮 総 連 の 財 政 支 援 で 運 営 されてきた 2 朝 鮮 総 連 系 の 保 険 会 社 金 剛 保 険 は 北 朝 鮮 の 国 家 保 険 機 構 と 連 携 し 不 正 手 段 をも 含 めて 金 正 日 体 制 への 外 貨 稼 ぎに 協 力 してきた 3 金 総 書 記 の 拉 致 自 認 後 日 本 からの 資 金 流 入 や 貿 易 収 入 は 減 り 金 総 書 記 個 人 への 大 きな 打 撃 ともなったが 韓 国 からの 外 貨 流 入 の 増 加 でなんとか 危 機 を 乗 り 越 えてきた 4 北 朝 鮮 の 兵 器 産 業 は 核 や ミサイルを 含 めて 関 連 の 技 術 部 品 資 金 を 1990 年 代 未 まで 日 本 から 広 範 に 得 ていたが 現 在 では 中 国 からがほとんどとなったーなどと 述 べた 14
このため 日 本 が 金 政 権 から 拉 致 問 題 などで 譲 歩 を 得 るには 宮 廷 経 済 の 外 貨 獲 得 の 領 域 で 圧 力 をさらにかけ できれば 韓 国 や 米 国 と 金 融 制 裁 などで 連 携 していくことが 最 も 効 果 があるだろう と 強 調 した ( 金 光 進 は 今 年 春 からワシントンの 北 朝 鮮 人 権 委 員 会 研 究 員 2003 年 に 亡 命 するまで 朝 鮮 労 働 党 組 織 指 導 部 の 国 家 保 険 機 構 で 主 要 諸 国 の 大 手 保 険 会 社 か ら 外 貨 で 高 額 保 険 金 を 獲 得 して 総 書 記 に 供 する 任 務 にあたっていた) 2 7. 信 頼 感 を 失 う 日 本 の 対 応 (1) 貨 物 検 査 実 施 の 法 制 さえ 整 えられない 日 本 安 保 理 決 議 では 北 朝 鮮 に 大 量 破 壊 兵 器 や 通 常 兵 器 贅 沢 品 などの モノ が 輸 送 されるのを 断 つため 公 海 上 や 領 海 内 で 北 朝 鮮 船 舶 に 貨 物 検 査 を 行 うこ とを 加 盟 国 に 要 請 している ところが 日 本 には 当 該 法 律 がないため 北 朝 鮮 船 舶 に 対 する 公 海 上 や 領 海 内 での 貨 物 検 査 のため 公 海 上 での 臨 検 を 実 施 しうる 法 的 体 制 を 整 える 必 要 があり 政 府 は 貨 物 検 査 特 別 措 置 法 の 制 定 を 進 めていた が 参 院 での 首 相 問 責 決 可 決 を 受 け 民 主 党 など 野 党 は 一 切 の 国 会 審 議 を 拒 否 し たため 衆 院 解 散 に 伴 い 廃 案 となった 北 朝 鮮 のミサイル 発 射 それに 引 き 続 く 核 実 験 の 強 行 に 対 して 日 本 は 厳 し い 制 裁 措 置 を 安 保 理 決 議 に 求 めてきた 一 方 で 国 連 が 決 定 した 制 裁 決 議 を 実 行 に 移 す 法 律 を 日 本 自 身 が 定 められないことは 国 連 加 盟 国 に 対 して 日 本 の 取 り 組 み 姿 勢 に 対 する 信 頼 性 を 大 きく 損 なう 結 果 となった (2) 有 効 な 金 融 制 裁 手 段 を 持 ちながら 実 行 に 移 さない 日 本 6ヶ 国 協 議 について 以 前 から 多 くのアメリカの 経 済 専 門 家 の 間 では 6カ 国 協 議 のカギは 日 本 が 握 っている と 言 われてきた 一 般 的 には 中 国 と 韓 国 が 北 朝 鮮 を 動 かせる 国 として 認 識 されているが 実 は 日 本 が 一 番 大 きな 影 響 力 を 行 使 できるといい その 力 は 北 朝 鮮 への 送 金 を 認 めるかどうかにあると 言 われて きた 日 本 政 府 が 本 気 になって 北 朝 鮮 への 送 金 を 遮 断 することを 決 意 すれば 極 めて 有 効 な 制 裁 措 置 となるだろうと 言 われてきたが 今 般 の 制 裁 強 化 でも 送 2 ( 産 経 2009.5.22) 15
金 についての 報 告 基 準 額 を 引 き 下 げたのみで 送 金 は 従 来 通 り 継 続 されている パチンコ 業 界 について 取 材 を 続 けているマスコミ 関 係 者 は 北 朝 鮮 への 送 金 について 次 のように 述 べている 現 在 パチンコ 産 業 の 売 り 上 げは およそ 年 間 23 兆 円 と 言 われており 他 のギ ャンブルと 比 較 すると 大 きく 突 出 している( 中 央 競 馬 3 兆 円 強 競 輪 1 兆 円 弱 ) この 巨 大 なパチンコ 業 界 の 存 在 について1 北 朝 鮮 への 送 金 2マスコミに よる 業 界 依 存 度 の 拡 大 3 政 界 と 業 界 の 密 接 な 関 わりを 指 摘 している 大 衆 娯 楽 として 定 着 しているパチンコ 業 界 の 4 分 の 1 以 上 が 在 日 韓 国 朝 鮮 人 が 経 営 しているとみられ その 収 益 金 のうち 毎 年 およそ 230 億 円 が 北 朝 鮮 に 送 金 されているであろう 日 本 政 府 が 本 気 になって 北 朝 鮮 への 送 金 を 遮 断 す ることとなれば 極 めて 有 効 な 制 裁 措 置 になると 思 われるが 現 状 を 見 るとま ったく そのような 気 配 も 論 調 も 見 られない むしろ パチンコ 業 界 は 野 放 し 状 態 であるといえよう ちなみに 韓 国 と 台 湾 ではパチンコそのものが 禁 止 され ている マスメディアにおいても パチンコ 業 界 への 依 存 度 が 高 まっており 在 京 キ ー 局 5 局 でのパチンコ 関 連 CMの 年 間 放 送 回 数 は 2004 年 には 2,066 回 だっ たが 07 年 には 1 万 3151 回 にまで 急 増 2008 年 は 1~10 月 だけで 1 万 6443 回 に 上 っているといわれ この 問 題 を 取 り 上 げればマスコミ 自 体 が 損 害 を 受 け ることから 取 り 上 げることはないであろう (3) 徹 底 を 欠 く 日 本 の 制 裁 措 置 北 朝 鮮 のテロ 支 援 国 家 の 指 定 を 解 除 した 米 国 に 対 して 日 本 は 大 きな 不 満 と 失 望 感 を 抱 いたが その 米 国 でさえ 国 連 制 裁 強 化 をはじめ 米 国 自 身 の 制 裁 措 置 を 進 め また 武 器 輸 出 船 と 見 られる 船 舶 の 追 跡 を 続 行 し 目 的 地 に 向 かうことを 断 念 させ 帰 港 させるなど 逐 次 制 裁 効 果 を 上 げている また 韓 国 に 亡 命 した 北 朝 鮮 の 元 高 位 級 科 学 者 は 北 は 国 際 的 な 封 鎖 で 技 術 や 部 品 の 輸 入 が 困 難 にな り 核 ミサイル 開 発 で 壁 に 直 面 している ( 月 間 朝 鮮 編 集 委 員 趙 甲 済 産 経 2009.5.15)と 制 裁 の 効 果 を 語 っている 一 方 日 本 は 単 独 制 裁 として 4 月 に 対 北 制 裁 の 1 年 間 延 長 と 送 金 追 加 制 裁 16
措 置 として 北 朝 鮮 への 送 金 報 告 義 務 を 3,000 万 円 超 から 1,000 万 円 超 に 引 き 下 げたほか 北 朝 鮮 への 渡 航 者 が 現 金 を 持 ち 出 す 際 の 届 出 額 を 100 万 円 超 から 30 万 円 超 に 引 き 下 げた 更 に 6 月 には 北 朝 鮮 に 向 けた 全 品 目 の 輸 出 禁 止 と 制 裁 措 置 に 違 反 し 刑 が 確 定 している 在 日 外 国 人 や 外 国 人 船 員 についても 上 陸 や 再 入 国 禁 止 を 原 則 不 許 可 とすることを 決 定 した これら 制 裁 措 置 の 再 延 長 や 追 加 措 置 によって 一 見 効 果 があるように 見 られる ものの 送 金 の 届 出 額 が 低 くなっただけで 北 朝 鮮 にとって カネ の 流 れは 変 わらず 金 正 日 体 制 を 支 えている 宮 廷 経 済 に 与 える 影 響 は 実 質 ゼロである また ヒト の 流 れについても 再 入 国 許 可 停 止 措 置 の 対 象 者 は 北 朝 鮮 の 国 会 議 員 をかねる 朝 鮮 総 連 幹 部 6 名 と 見 られ 効 果 は 限 定 的 と 見 られる これまでも 北 朝 鮮 の 大 量 破 壊 兵 器 の 開 発 には 朝 鮮 労 働 党 の 工 作 機 関 対 外 連 絡 部 の 直 轄 下 にある 在 日 朝 鮮 人 科 学 者 協 会 ( 科 協 )が 大 きく 貢 献 しており 発 射 実 験 等 の 主 要 な 段 階 には 度 々 主 要 幹 部 技 術 者 が 北 朝 鮮 を 訪 問 滞 在 するなど 技 術 の 流 出 を 断 つには 朝 鮮 総 連 幹 部 もさることながら 大 量 破 壊 兵 器 に 関 する 技 術 流 出 阻 止 の 観 点 からは 科 協 幹 部 らの 再 入 国 禁 止 措 置 こそが 不 可 欠 である 今 般 の 国 連 制 裁 のみならず これまでも 北 朝 鮮 との 同 盟 関 係 資 源 確 保 等 の 経 済 自 国 の 安 全 保 障 上 の 観 点 からロシア 中 国 とも 北 朝 鮮 に 対 する 制 裁 強 化 には 強 く 反 対 してきた そして 今 や 北 朝 鮮 の 経 済 の 大 きなカギを 握 っている 中 国 に 対 して 北 朝 鮮 に 対 する 規 制 強 化 と 制 裁 措 置 の 実 行 と 協 力 を 求 めて 行 くべ きとの 声 もあるが 自 ら 処 置 すべき 事 項 有 効 な 制 裁 手 段 があるに 拘 わらず 形 式 的 な 実 効 性 のない 制 裁 措 置 では 北 朝 鮮 に 対 して 実 質 的 に 何 の 圧 力 にもな らないばかりか 国 連 加 盟 国 からは 日 本 の 取 り 組 み 姿 勢 に 疑 念 を 抱 かせるのみ であろう 17