第32回 漢方でがんと向き合う(漢方)



Similar documents
図 表 1 1,000 万 円 以 上 高 額 レセプト ( 平 成 25 年 度 ) 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷


診療行為コード

各論_1章〜7章.indd

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

アフターケア.indd

大 腸 がん 術 後 内 服 化 学 療 法 連 携 1コース~3コース 大 腸 がん 術 後 内 服 化 学 療 法 連 携 4コース 以 降 拠 点 病 院 への 紹 介 基 準 : 食 事 が 入 らないとき 腫 瘍 マーカー 上 昇 時 発 熱 時 処 方 拠 点 病 院 への 紹 介 基

スライド 1

< F2D874491E682528FCD2091E DF C A2E>

一般用漢方製剤の添付文書等に記載する使用上の注意の一部改正について_3

3 薬 局 サービス 等 (1) 健 康 サポート 薬 局 である 旨 の 表 示 健 康 サポート 薬 局 である 旨 を 表 示 している 場 合 健 康 サポート 薬 局 とは かかりつけ 薬 剤 師 薬 局 としての 基 本 的 な 機 能 に 加 えて 積 極 的 な 健 康 サポート 機

1章A_責了.indd

5 月 25 日 2 口 腔 咽 頭 唾 液 腺 の 疾 患 2 GIO: 口 腔 咽 頭 唾 液 腺 の 疾 患 を 理 解 する SBO: 1. 急 性 慢 性 炎 症 性 疾 患 を 説 明 できる 2. 扁 桃 の 疾 患 を 説 明 できる 3. 病 巣 感 染 症 を 説 明 できる 4

<96DA8E9F81698D8791CC A2E786C73>

平成24年度 福島県患者調査の概況(厚生労働省大臣官房統計情報部人口動態・保健社会統計課 保健統計室:H )

目次

Microsoft Word - 通知 _2_.doc

認 定 看 護 師 専 門 看 護 師 集 中 ケア 新 生 児 集 中 ケア A 呼 吸 ケアチーム 加 算 150 点 呼 吸 ケアチームの 設 置 救 急 看 護 小 児 救 急 看 護 慢 性 呼 吸 器 疾 患 看 護 急 性 重 症 患 者 看 護 A 247 認 知 症

有 料 老 ホーム ( ) ( 主 として 要 介 護 状 態 にある を 入 居 させるも のに 限 る ) 第 29 条 ( 届 出 等 ) 第 二 十 九 条 有 料 老 ホーム( 老 を 入 居 させ 入 浴 排 せつ 若 しくは 食 事 の 介 護 食 事 の 提 供 又 はその 他 の

Microsoft Word - 2章.doc

5 月 27 日 4 子 宮 頸 癌 1 GIO: 子 宮 頸 癌 の 病 態 診 断 治 療 について 理 解 する SBO: 1. 子 宮 頸 癌 の 発 癌 のメカニズムや 発 癌 過 程 について 説 明 できる 2. 子 宮 頸 癌 および 前 癌 病 変 の 分 類 ついて 説 明 でき

10w.xdw

vol.54.pmd

Microsoft PowerPoint _GP向けGL_final

総 合 科 学 研 究 科 ( 留 学 生 担 当 ) 文 学 部 文 学 研 究 科 哲 学 思 想 文 化 学 コース 歴 史 学 コース 地 理 学 考 古 学 文 化 財 学 コース 日 本 中 国 文 学 語 学 コース 翀 欧 米 文 学 語 学 言 語 学 コース 比 較 日 本 文

4 ぼうこう又は直腸機能障害

<4D F736F F F696E74202D C928D4E C182C4967B939682C991CC82C982A282A282CC F4390B394C529>

( 医 療 機 器 の 性 能 及 び 機 能 ) 第 3 条 医 療 機 器 は 製 造 販 売 業 者 等 の 意 図 する 性 能 を 発 揮 できなければならず 医 療 機 器 としての 機 能 を 発 揮 できるよう 設 計 製 造 及 び 包 装 されなければならない 要 求 項 目 を

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc


<93798D488E7B8D488AC7979D977697CC5F F96DA8E9F2E786264>

1.H26年エイズ発生動向年報ー概要

untitled

○00表紙

( 減 免 の 根 拠 等 ) 第 1 条 こ の 要 綱 は, 地 方 税 法 第 条 の 規 定 に 基 づ く 市 税 条 例 第 6 9 条 の 2 の 規 定 を 根 拠 と す る 身 体 障 害 者 等 に 対 す る 軽 自 動 車 税 の 減 免 の 具 体 的 な 対

(Microsoft Word _10\214\216\222\262\215\270\203\212\203\212\201[\203X_\215\305\217I\215e.doc)

2 積 極 的 な 接 種 勧 奨 の 差 し 控 え 国 は 平 成 25 年 4 月 から 定 期 接 種 化 したが ワクチン 接 種 との 関 連 を 否 定 できない 持 続 的 な 痛 みなどの 症 状 が 接 種 後 に 見 られたことから 平 成 25 年 6 月 定 期 接 種 と

2 ペインクリニック ペインクリニック 科 に 関 しては 先 ずは 様 々な 痛 みの 症 例 を 正 確 に 診 断 できる 能 力 の 養 成 を 最 大 の 目 標 にします その 過 程 で 薬 物 療 法 神 経 ブロック( 超 音 波 透 視 下 を 含 む) Intervention

Microsoft PowerPoint - )大腸癌をお受けになる方に図(南堺_更新用 [互換モード]

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

< F2D8E9197BF C B68F9182C98AD682B7>

17 外 国 人 看 護 師 候 補 者 就 労 研 修 支 援 18 看 護 職 員 の 就 労 環 境 改 善 運 動 推 進 特 別 20 歯 科 医 療 安 全 管 理 体 制 推 進 特 別 21 在 宅 歯 科 医 療 連 携 室 整 備 22 地 域 災 害 拠 点 病

Microsoft Word - conference

光 輪 はさみこども 園 学 校 保 健 安 全 法 ( 第 19 条 )に 準 ずる(H24.4 改 定 ) 病 名 感 染 しやすい 期 間 登 園 のめやす 症 状 ( 発 熱 全 身 症 状 呼 吸 器 症 状 )がある 期 間 インフルエンザ ( 発 症 前 24 時 間 ~ 発 病 後

人生の最終段階における医療に関する意識調査 結果の概要

栄養管理手順について

5 月 19 日 5 新 生 児 の 呼 吸 障 害 GIO: 新 生 児 期 に 生 じる 呼 吸 障 害 の 病 態 の 特 徴 を 説 明 でき 胸 部 XPから 診 断 できる SBO: 1. 新 生 児 呼 吸 障 害 の 病 態 に 基 づく 症 状 の 特 徴 を 説 明 できる 2.

2-1膠原病.doc

< F2D F97CC8EFB8F BE8DD78F9192CA926D>

003-00個人の健康増進・疾病予防の推進のための所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

認 し 通 常 の 立 入 検 査 に 際 しても 許 可 内 容 が 遵 守 されていることを 確 認 するこ と 2 学 校 薬 剤 師 業 務 の 兼 任 学 校 薬 剤 師 の 業 務 を 兼 任 する 場 合 の 取 扱 いは 次 のとおりとする (1) 許 可 要 件 1 薬 局 等 の

< F2D C482C682EA B40945C8BE6>

主 要 な が ん 治 療 に つ い て 入 院 に か か る 医 療 費 の 支 払 い か ら 計 算 し た も の で す 例 え ば 胃 が ん に つ い て は 平 均 入 院 費 は 総 額 約 万 円 で 自 己 負 担 額 は 約 3 3 万 円 程 度 必 要

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

地域支援心理研究センター 紀要 第10号

スライド 1

相 談 窓 口 独 立 行 政 法 人 医 薬 品 医 療 機 器 総 合 機 構 救 済 制 度 相 談 窓 口 (フリーダイヤル) IP 電 話 等 の 方 でフリーダイヤルが 御 利 用 になれない 場 合 は ( 有 料 )を 御 利 用 くだ

Microsoft Word - 膵臓癌ホームページ用.doc

Microsoft Word 印刷ver 本編最終no1(黒字化) .doc

Microsoft Word - 1表紙.doc

総合評価点算定基準(簡易型建築・電気・管工事)

Taro (完成版) 「

首 は 下 あ ご の 骨 の 下 か ら 鎖 骨 の 上 ま で 自 分 の 首 を 両 手 で は さ ん で お さ え て み ま し ょ う 師 首 っ て ど ん な 仕 事 を し て い る か な 子 頭 を の せ て い る 頭 を お さ え て い る 頭 を 動 か し

Microsoft Word - 3大疾病保障特約付団体信用生命保険の概要_村上.docx

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

プレス発表に関する手引き

一 方 でも 自 分 から 医 師 に 症 状 の 変 化 について 伝 えている 割 合 は シーズン 前 では 満 足 な と 同 じ %でしたが シーズン 開 始 直 後 から 高 くなり シーズン 後 半 では の 31%を 上 回 り 42%となっています (グラフ 3) ギャップ 3:

Microsoft Word - nagekomi栃木県特定医療費(指定難病)支給認定申請手続きのご案内 - コピー

Microsoft Word - 02目次.doc

製 造 業 者 は 製 造 販 売 業 者 の 管 理 監 督 の 下 適 切 な 品 質 管 理 を 行 い 製 品 を 製 造 します なお 製 造 業 は 製 造 に 特 化 した 許 可 となっており 製 造 業 の 許 可 のみでは 製 品 を 市 場 に 出 荷 することはできま せん

< F2D A C5817A C495B6817A>

○医療用医薬品の使用上の注意記載要領について

( 新 ) 医 療 提 供 の 機 能 分 化 に 向 けたICT 医 療 連 携 導 入 支 援 事 業 費 事 業 の 目 的 医 療 政 策 課 予 算 額 58,011 千 円 医 療 分 野 において あじさいネットを 活 用 したICT したICT 導 入 により により 医 療 機 能

: 必 須 項 目 : 必 要 時 に 行 います : 補 助 化 学 療 法 施 行 時 に 実 施 病 院 4ヶ 月 5ヶ 月 6ヶ 月 ~メモ~ *あなたが 手 術 を 受 けた 日 平 成 年 月 日 内 はあなたにご 記 入 いただ きます

TEL: がん 拠 点 病 院 地 域 連 携 室 TEL 薬 局 薬 剤 師 1

Ⅶ 東 海 地 震 に 関 して 注 意 情 報 発 表 時 及 び 警 戒 宣 言 発 令 時 の 対 応 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 第 6 条 の 規 定 に 基 づき 本 県 の 東 海 地 震 に 係 る 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 において 東 海 地 震

<4D F736F F D2090BC8BBB959491BA8F5A91EE8A C52E646F63>

1604_栄養科 がん患者向け食事のヒント.indd

S7-2)わが国におけるHIV感染妊娠の動向と近年の特徴

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

Zoladex新規治療ガイド.indd

‚æ39›ñ‚“›ï„‹™è‘W/P1~2 ‡à‡Ł‡¶†E…V…“

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

2 ギニア シエラレオネ リベリア ウガンダ スーダン ガボン コートジボワー ル コンゴ 民 主 共 和 国 コンゴ 共 和 国 また 有 症 状 者 からの 電 話 相 談 によりエボラ 出 血 熱 への 感 染 が 疑 われる 場 合 二 次 感 染 拡 大 のリスクを 避 けるため 保 健

PowerPoint プレゼンテーション

< F2D8E968BC6895E89638E77906A816988C4816A2E6A7464>

3 保 険 料 ( 掛 金 )を 納 めていること 原 則 として 初 診 日 月 前 々 月 まで 国 民 年 金 加 入 期 間 全 体 うち 3 分 2 以 上 きち んと 納 めている( 保 険 料 免 除 期 間 も 含 む)ことが 必 要 です 現 在 は 特 例 として 初 診 日 が

する ( 評 定 の 時 期 ) 第 条 成 績 評 定 の 時 期 は 第 3 次 評 定 者 にあっては 完 成 検 査 及 び 部 分 引 渡 しに 伴 う 検 査 の 時 とし 第 次 評 定 者 及 び 第 次 評 定 者 にあっては 工 事 の 完 成 の 時 とする ( 成 績 評 定

1

(7) 水 道 事 業 又 は 公 共 下 水 道 の 用 に 供 するポンプ 施 設 (8) 第 一 種 電 気 通 信 事 業 の 用 に 供 する 電 気 通 信 交 換 施 設 (9) 都 市 高 速 鉄 道 の 用 に 供 する 停 車 場 開 閉 所 及 び 変 電 所 (10) 発 電

監 修 北 辰 会 有 澤 総 合 病 院 内 科 大 八 木 秀 和 1 時 間 目 子 宮 内 膜 症 名 古 屋 大 学 大 学 院 医 学 系 研 究 科 産 婦 人 科 中 原 辰 夫 NAKAHARA Tatsuo 月 経 困 腎 難 不 を 全 訴 とはどのような えて 来 院 される

Microsoft Word - 22佐竹和夫.doc

容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

Microsoft Word - h doc

<6D33335F976C8EAE CF6955C A2E786C73>

Microsoft Word - H25年度の概要

健 康 医 療 戦 略 に 係 る 農 林 産 省 の 主 な 取 組 みについて 1. 健 康 長 寿 社 会 の 形 成 のための 食 の 研 究 開 発 の 推 進 2. 医 福 食 農 連 携 の 取 組 の 推 進 3 5 2

スライド 1

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

Transcription:

第 32 回 漢 方 教 室 ( 漢 方 ) 漢 方 でがんと 向 き 合 う- 心 と 体 の 免 疫 力 をアップ- Ⅰ. 日 本 における 漢 方 治 療 の 現 状 西 洋 医 学 を 学 んだ 医 師 と 薬 剤 師 だけが 漢 方 治 療 を 実 践 できる( 免 許 の 一 本 化 ) 保 険 医 療 制 度 の 中 で 西 洋 医 学 治 療 と 同 時 に 漢 方 治 療 を 行 うことができる 漢 方 エキス 製 剤 が 広 く 普 及 している エキス 治 療 も 生 薬 治 療 ( 煎 じ 薬 )も 健 康 保 険 で 取 り 扱 われる 地 域 医 療 に 携 わる 医 師 の 97%が 漢 方 薬 の 使 用 経 験 を 持 つ Ⅱ.がん 治 療 の 方 法 主 な 西 洋 医 学 治 療 (3 大 療 法 ) 外 科 療 法 放 射 線 療 法 抗 がん 剤 治 療 ( 化 学 療 法 分 子 標 的 治 療 ) その 他 の 西 洋 医 学 治 療 温 熱 療 法 (ハイパーサーミア) サイトカイン 療 法 ホルモン 療 法 ( 内 分 泌 療 法 ) 遺 伝 子 治 療 免 疫 療 法 ( 細 胞 免 疫 療 法 活 性 化 リンパ 球 リンパ 球 移 入 法 ) 抗 体 療 法 穿 刺 療 法 凍 結 療 法 ワクチン 療 法 生 体 応 答 調 節 剤 (BRM) 療 法 ステント 留 置 術 造 血 幹 細 胞 移 植 療 法 ( 骨 髄 移 植 臍 帯 血 移 植 ) 肝 動 脈 塞 栓 術 (TAE)など 代 替 医 療 漢 方 鍼 灸 植 物 療 法 (メシマコブ アガリスクなど) アロマテラピー 気 功 など Ⅲ. 西 洋 医 学 におけるがん 治 療 の 標 準 的 な 考 え 方 1) 西 洋 医 学 的 に 治 療 法 が 確 立 しているものはそれを 優 先 する 外 科 切 除 術 と 補 助 的 治 療 ( 放 射 線 療 法 化 学 療 法 ホルモン 療 法 など) 放 射 線 療 法 抗 がん 剤 治 療 ( 化 学 療 法 分 子 標 的 治 療 ) 骨 髄 移 植 など 2) 根 治 でなくても 症 状 緩 和 のために 西 洋 医 学 治 療 が 有 効 なものは 積 極 的 に 行 う 姑 息 手 術 ( 人 工 肛 門 胃 瘻 など) 癌 性 疼 痛 に 対 する 緩 和 医 療 3) 補 助 的 治 療 を 適 宜 行 う 化 学 療 法 ( 抗 がん 剤 )の 副 作 用 に 対 する 治 療 手 術 による 後 遺 症 ( 腸 閉 塞 など)の 治 療 機 能 障 害 に 対 するリハビリテーション 精 神 的 ケア 1

Ⅳ.がん 治 療 に 漢 方 薬 が 使 えるか 1 漢 方 治 療 の 適 応 2 漢 方 と 西 洋 医 学 の 使 い 分 け 治 療 の 主 たる 目 標 西 洋 医 学 : 病 変 部 検 査 異 常 漢 方 : 自 覚 症 状 がん( 早 期 も 含 む) 第 一 義 的 には 西 洋 医 学 の 適 応 Ⅴ. 漢 方 治 療 の 特 徴 西 洋 医 学 と 異 なった 体 系 を 持 つ もう1つの 医 学 である 1 自 覚 症 状 の 軽 減 が 治 療 の 主 目 標 である 生 活 の 質 (Quality of life : QOL)を 高 めることができる 2 局 所 だけではなく 全 身 をみる 特 に 消 化 管 機 能 の 向 上 に 優 れた 効 果 がある 3 免 疫 能 を 向 上 させて 自 然 治 癒 力 を 高 める 補 剤 ( 補 中 益 気 湯 十 全 大 補 湯 人 参 養 栄 湯 など)を 用 いる 機 会 が 多 い 4 証 と 言 われる 複 数 の 症 候 を 同 時 に 治 療 する 5 副 作 用 が 少 ない 2

Ⅵ. 未 病 を 治 す 1 西 洋 医 学 からみた 未 病 1) 定 義 病 気 と 健 康 の 中 間 東 洋 医 学 において 検 査 を 受 けても 異 常 が 見 つからず 病 気 と 診 断 されないが 健 康 ともいえない 状 態 放 置 すると 病 気 になるだろうと 予 測 される 状 態 をいう 場 合 が 多 い ( 大 辞 泉 ) 病 気 ではないが 健 康 でもない 状 態 自 覚 症 状 はないが 検 査 結 果 に 異 常 がある 場 合 と 自 覚 症 状 はあるが 検 査 結 果 に 異 常 がない 場 合 に 大 別 される 骨 粗 鬆 症 肥 満 な ど (スーパー 大 辞 林 ) 2) 未 病 システム 学 会 の 定 義 西 洋 型 未 病 自 覚 症 状 はないが 検 査 で 異 常 が ある 状 態 東 洋 型 未 病 自 覚 症 状 はあるが 検 査 で 異 常 が ない 状 態 以 上 を 合 わせて 未 病 と している 病 気 自 覚 症 状 でも 検 査 でも 異 常 が ある 状 態 病 気 予 備 軍 = 未 病 期 2 東 洋 医 学 でいう 未 病 未 病 を 治 す 疾 病 発 症 前 のどの 段 階 を 治 療 対 象 としているかで 少 なくとも 3 つの 意 味 を 持 つ 1 疾 病 に 対 する 予 防 疾 病 を 引 き 起 こす 原 因 となる 邪 気 がまだ 人 体 にまったく 関 与 していない 段 階 で あらかじめ 身 体 側 の 生 体 防 御 機 構 を 高 めて 備 える 予 防 医 学 的 公 衆 衛 生 学 的 な 意 義 2 早 期 治 療 疾 病 が 明 らかな 徴 候 となって 身 体 や 精 神 に 現 れる 前 の 段 階 において わずかな 予 兆 からそれを 察 知 し その 段 階 で 治 してしまう 早 期 発 見 早 期 治 療 という 意 義 ( 時 間 的 広 がりとしての 未 病 ) 3

3 疾 病 の 発 展 的 傾 向 を 掌 握 すること 疾 病 は 発 症 した 後 にもさらに 進 展 して 他 の 臓 腑 を 侵 すため この 発 展 傾 向 を 掌 握 して 先 手 を 打 つ 全 身 管 理 的 な 意 義 ( 空 間 的 広 がりとしての 未 病 ) 病 的 部 位 に 過 度 にとらわれず 未 病 的 部 位 にも 着 目 し その 部 位 の 予 防 予 備 力 維 持 健 康 増 進 を 図 ることができる 3 未 病 を 治 す( 治 未 病 ) のがん 治 療 への 応 用 1 疾 病 に 対 する 予 防 漢 方 薬 は 全 般 に 身 体 の 免 疫 力 を 高 める 2 早 期 治 療 がん 自 体 ではなく 背 景 病 態 の 早 期 発 見 早 期 治 療 という 意 味 で 漢 方 は 役 立 つ 3 疾 病 の 発 展 的 傾 向 を 掌 握 すること 漢 方 は 局 所 にとらわれない 全 身 を 診 る 治 療 法 ( 全 人 的 医 療 )である 特 に 消 化 器 系 ( 胃 腸 )の 補 強 を 重 視 している Ⅶ.がん 治 療 における 漢 方 治 療 の 役 割 4

Ⅷ. 東 洋 医 学 から 考 える 治 療 の 基 本 方 針 1) 気 の 充 実 気 功 生 き 方 の 変 換 プラス 思 考 2) 精 神 的 な 安 定 リラックスした 気 分 で 過 ごす ( 副 交 感 神 経 優 位 な 状 態 を 作 る) 楽 しい 気 分 にする 笑 いの 健 康 法 3) 漢 方 薬 の 服 用 主 として 補 剤 を 用 いる エキス 剤 を 白 湯 に 溶 いて 味 わって 飲 む 笑 いと 免 疫 能 - 笑 いの 体 験 による 免 疫 能 の 変 化 - 対 象 はがんや 心 臓 病 の 人 を 含 む 男 女 19 人 (20 歳 から62 歳 ) 吉 本 新 喜 劇 の 開 演 前 後 に 採 血 し 3 時 間 後 の 笑 いの 効 果 を 調 べた 4) 鍼 灸 特 にお 灸 が 効 果 的 NK 活 性 の 変 動 データ 5) 食 の 充 実 栄 養 のバランスが 取 れた 食 事 内 容 ( 肉 類 を 少 なめ ビタミンやミネラルが 豊 富 なもの アルコールは 適 量 可 など) 食 べ 方 の 工 夫 (よく 噛 んで 食 べる ゆっくりと 味 わって 食 べる ありがたく 感 じて 食 べる など) 6) 日 常 生 活 の 改 善 規 則 正 しい 生 活 身 体 を 冷 やさない タバコは 不 可 伊 丹 仁 朗 他. 心 身 医 学 34(7): 565-571 Ⅸ.がん 患 者 の 漢 方 的 病 態 と 治 療 進 行 がん 最 終 的 に 気 虚 血 虚 陰 証 に 陥 る 十 全 大 補 湯 の 病 態 に 近 づく 5

Ⅹ.よく 用 いる 漢 方 薬 と 使 い 方 1 気 力 や 体 力 の 増 強 1 十 全 大 補 湯 [48](じゅうぜんたいほとう) 悪 性 腫 瘍 の 第 一 選 択 薬 / 栄 養 状 態 不 良 / 貧 血 傾 向 / 皮 膚 枯 燥 がんが 進 行 すると 漢 方 的 には 気 虚 (ききょ) 血 虚 (けっきょ)の 状 態 に 陥 りやすい 十 全 大 補 湯 を 長 期 的 に 服 用 することで 病 態 が 改 善 することがある 2 補 中 益 気 湯 [41](ほちゅうえっきとう) 人 参 黄 耆 剤 の 中 心 的 処 方 ( 気 虚 )/だるさが 強 い 場 合 の 一 般 的 な 第 一 選 択 薬 3 人 参 養 栄 湯 [108](にんじんようえいとう) 咳 や 痰 などの 呼 吸 器 症 状 / 微 熱 4 加 味 帰 脾 湯 [137](かみきひとう) 気 力 体 力 の 甚 だしい 低 下 / 抑 うつ 不 眠 不 安 など 精 神 症 状 5 半 夏 白 朮 天 麻 湯 [37](はんげびゃくじゅつてんまとう) めまい/ 立 ちくらみ/ 頭 痛 ( 頭 重 ) 6 清 心 蓮 子 飲 [111](せいしんれんしいん) 頻 尿 / 排 尿 時 不 快 感 / 冷 え/ 膀 胱 神 経 症 人 参 黄 耆 剤 (にんじんおうぎざい) 人 参 と 黄 耆 を 含 む 処 方 群 だるい/ 疲 れやすい/ 寝 汗 / 胃 腸 が 弱 い 2 胃 腸 症 状 の 改 善 1 六 君 子 湯 [43](りっくんしとう) 食 欲 低 下 / 胃 もたれ 抑 うつ 気 分 には 香 蘇 散 [70](こうそさん) 腹 痛 には 柴 胡 桂 枝 湯 [10](さいこけいしとう)を 併 用 2 人 参 湯 [32](にんじんとう) 慢 性 下 痢 / 手 足 の 冷 え/ 食 欲 低 下 3 真 武 湯 [30](しんぶとう) 慢 性 下 痢 ( 未 消 化 便 排 便 後 倦 怠 感 )/ 身 体 が 重 い/ 顔 色 不 良 6

4 大 建 中 湯 [100](だいけんちゅうとう) 腸 閉 塞 / 腹 部 膨 満 (ガス 貯 留 ) 腹 痛 が 強 いものや 効 果 が 不 十 分 なものには 桂 枝 加 芍 薬 湯 [60](けいしかしゃくやくとう)を 併 用 5 半 夏 厚 朴 湯 [16](はんげこうぼくとう) 再 発 不 安 感 / 胸 部 圧 迫 感 / 咽 喉 頭 異 物 感 / 吐 き 気 6 半 夏 瀉 心 湯 [14] (はんげしゃしんとう) 胃 部 膨 満 感 / 腹 鳴 /げっぷ/ 抗 癌 剤 による 下 痢 3 免 疫 能 の 維 持 向 上 1 小 柴 胡 湯 [9](しょうさいことう) 比 較 的 体 力 がある/ 胃 腸 が 丈 夫 / 胸 脇 苦 満 ( 季 肋 部 が 重 苦 しい) 桂 枝 茯 苓 丸 [25](けいしぶくりょうがん)や 四 物 湯 [61](しもつとう)と 合 方 して 効 果 的 なことがある 2 十 全 大 補 湯 [48](じゅうぜんたいほとう) 栄 養 状 態 不 良 / 貧 血 / 皮 膚 枯 燥 Ⅺ. 十 全 大 補 湯 を 用 いたがん 治 療 の 臨 床 研 究 1 胃 癌 術 後 の 5-FU 経 口 剤 投 与 時 特 に Stage III および Stage IV の 症 例 に 対 しては 十 全 大 補 湯 投 与 群 に 有 意 な 生 存 期 間 の 延 長 が 認 められた ( 山 田 卓 也 :Prog.Med.24 2746-2747, 2004) 2 放 射 線 治 療 を 受 けた 子 宮 頸 癌 症 例 ( 十 全 大 補 湯 併 用 群 74 例 非 併 用 群 231 例 )に 対 し 十 全 大 補 湯 は 延 命 効 果 を 認 めた ( 居 村 暁 ほか: 消 化 器 外 科 3199-108, 2008) 3 肝 癌 術 後 十 全 大 補 湯 投 与 群 (11 例 )では 非 投 与 群 (36 例 )に 比 べて 再 発 率 が 有 意 に 低 く 肝 癌 再 発 抑 制 効 果 が 確 認 された ( 河 野 寛 : 消 化 器 外 科 31 99-108, 2008) Ⅻ. 漢 方 によるがん 治 療 の 臨 床 治 験 例 1 炎 症 性 乳 がんの 痛 みと 熱 感 に 温 清 飲 [57](うんせいいん) 2 急 性 リンパ 性 白 血 病 の 化 学 療 法 による 副 作 用 ( 発 熱 と 嘔 気 )に 柴 胡 桂 枝 湯 [10](さいこけいしとう) 新 井 信 著 症 例 でわかる 漢 方 薬 入 門 ( 日 中 出 版 )に 掲 載 7