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Transcription:

主 文 1 本 件 訴 えのうち, 処 分 行 政 庁 が 平 成 24 年 12 月 27 日 付 けで 原 告 に 対 してした 原 告 を 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 する 処 分 が 無 効 であ ることの 確 認 を 求 める 訴 えを 却 下 する 2 本 件 訴 えのうち, 処 分 行 政 庁 が 平 成 25 年 12 月 25 日 付 けで 原 告 に 対 してした 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 指 定 の 期 限 を 延 長 する 処 分 の 取 消 し を 求 める 訴 えを 却 下 する 3 原 告 のその 余 の 請 求 をいずれも 棄 却 する 4 訴 訟 費 用 は 原 告 の 負 担 とする 事 実 及 び 理 由 第 1 当 事 者 の 求 めた 裁 判 1 原 告 (1) 処 分 行 政 庁 が 平 成 24 年 12 月 27 日 付 けで 原 告 に 対 してした 原 告 を 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 する 処 分 ( 以 下 本 件 処 分 という )が 無 効 であることを 確 認 する (2)ア 主 位 的 請 求 処 分 行 政 庁 が 平 成 24 年 12 月 27 日 付 けで 原 告 に 対 してした 本 件 処 分 を 取 り 消 す イ 予 備 的 請 求 処 分 行 政 庁 が 平 成 24 年 12 月 27 日 付 けで 原 告 に 対 してした 本 件 処 分 のうち, 警 戒 区 域 として 豊 前 市, 春 日 市, 遠 賀 郡 及 び 鞍 手 郡 を 指 定 し た 部 分 を 取 り 消 す (3) 処 分 行 政 庁 が 平 成 25 年 12 月 25 日 付 けで 原 告 に 対 してした 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 指 定 の 期 限 を 延 長 する 処 分 ( 以 下 本 件 延 長 処 分 1 と いう )を 取 り 消 す (4) 処 分 行 政 庁 が 平 成 26 年 12 月 25 日 付 けで 原 告 に 対 してした 特 定 危 1

険 指 定 暴 力 団 等 の 指 定 の 期 限 を 延 長 する 処 分 ( 以 下 本 件 延 長 処 分 2 と いう )を 取 り 消 す 2 被 告 (1) 本 案 前 の 答 弁 本 件 訴 えのうち, 本 件 処 分 が 無 効 であることの 確 認 を 求 める 訴 え 及 び 本 件 延 長 処 分 1の 取 消 しを 求 める 訴 えをいずれも 却 下 する (2) 本 案 の 答 弁 原 告 の 請 求 をいずれも 棄 却 する 第 2 事 案 の 概 要 等 1 事 案 の 概 要 本 件 は, 暴 力 団 員 による 不 当 な 行 為 の 防 止 等 に 関 する 法 律 ( 以 下 暴 対 法 という )3 条 に 基 づき 指 定 暴 力 団 として 指 定 されている 原 告 が, 処 分 行 政 庁 から 平 成 24 年 12 月 27 日 付 けで 同 法 30 条 の8 第 1 項 に 基 づき 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 する 処 分 ( 本 件 処 分 )を 受 けたため, 被 告 に 対 し,1 本 件 処 分 は 法 主 体 性 のない 暴 力 団 に 対 する 処 分 であるから 無 効 である 等 と 主 張 し て 本 件 処 分 が 無 効 であることの 確 認 を 求 める( 以 下 本 件 無 効 確 認 請 求 とい う )とともに,2 暴 対 法 及 び 同 法 の 各 条 項 は 違 憲 であり, 本 件 処 分 は 違 法 で ある 等 と 主 張 して, 主 位 的 に 本 件 処 分 の 全 部 の 取 消 しを 求 め( 以 下 本 件 処 分 の 取 消 請 求 という ), 予 備 的 に 本 件 処 分 のうち 警 戒 区 域 として 豊 前 市, 春 日 市, 遠 賀 郡 及 び 鞍 手 郡 を 指 定 した 部 分 の 取 消 しを 求 め( 以 下 本 件 予 備 的 請 求 という ),さらに,3 平 成 25 年 12 月 25 日 付 けで 暴 対 法 30 条 の8 第 2 項 に 基 づき 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 指 定 の 期 限 を 延 長 する 処 分 ( 本 件 延 長 処 分 1)を, 平 成 26 年 12 月 25 日 付 けで 同 項 に 基 づき 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 指 定 の 期 限 を 延 長 する 処 分 ( 本 件 延 長 処 分 2)をそれぞれ 受 けたことから, 同 項 は 違 憲 である 上, 本 件 延 長 処 分 1 及 び 同 2は 同 項 の 要 件 を 満 たしていない から 違 法 である 旨 主 張 して 本 件 延 長 処 分 1 及 び 同 2の 取 消 しを 求 めた( 以 下, 2

それぞれ 本 件 延 長 処 分 1の 取 消 請 求, 本 件 延 長 処 分 2の 取 消 請 求 とい う ) 事 案 である 2 関 係 法 令 の 定 め 本 件 に 関 係 する 法 令 の 定 めは 別 紙 関 係 法 令 の 定 め のとおりである( 同 別 紙 に 定 める 略 称 等 は, 以 下 においても 用 いることとする ) 3 前 提 事 実 以 下 の 事 実 は, 当 事 者 間 に 争 いがないか, 各 項 末 尾 に 記 載 の 証 拠 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 により 容 易 に 認 められる (1) 原 告 は, 肩 書 地 に 主 たる 事 務 所 を 設 置 し, 代 表 者 をCとする 組 織 である ( 争 いのない 事 実, 弁 論 の 全 趣 旨 ) (2) 原 告 に 関 する 暴 対 法 3 条 に 基 づく 指 定 暴 力 団 としての 指 定 の 経 緯 原 告 は, 以 下 のとおり, 平 成 4 年 6 月 26 日 以 降 8 回 にわたり, 処 分 行 政 庁 により, 暴 対 法 3 条 に 基 づく 指 定 暴 力 団 としての 指 定 ( 以 下 3 条 指 定 処 分 という )を 受 けている( 争 いのない 事 実, 乙 44) ア 第 1 回 平 成 4 年 6 月 26 日 ( 福 岡 県 公 安 委 員 会 告 示 第 78 号 ) イ 第 2 回 平 成 7 年 6 月 19 日 ( 福 岡 県 公 安 委 員 会 告 示 第 78 号 ) ウ 第 3 回 平 成 10 年 6 月 24 日 ( 福 岡 県 公 安 委 員 会 告 示 第 82 号 ) エ 第 4 回 平 成 13 年 6 月 19 日 ( 福 岡 県 公 安 委 員 会 告 示 第 83 号 ) オ 第 5 回 平 成 16 年 6 月 21 日 ( 福 岡 県 公 安 委 員 会 告 示 第 109 号 ) カ 第 6 回 平 成 19 年 6 月 21 日 ( 福 岡 県 公 安 委 員 会 告 示 第 194 号 ) キ 第 7 回 平 成 22 年 6 月 22 日 ( 福 岡 県 公 安 委 員 会 告 示 第 171 号 ) ク 第 8 回 平 成 25 年 6 月 20 日 ( 福 岡 県 公 安 委 員 会 告 示 第 162 号 ) (3) 本 件 処 分 処 分 行 政 庁 は, 平 成 24 年 12 月 27 日, 原 告 に 対 し, 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 に 基 づき, 指 定 の 期 限 を 平 成 25 年 12 月 26 日 までとし, 警 戒 区 域 を 北 九 州 市, 福 岡 市, 行 橋 市, 豊 前 市, 中 間 市, 春 日 市, 宮 若 市, 遠 賀 郡, 3

鞍 手 郡, 京 都 郡 及 び 築 上 郡 の 区 域 ( 島 しょ 部 ( 架 橋 等 により 本 土 との 陸 上 交 通 が 確 保 された 島 を 除 く )の 区 域 を 除 く 以 下, 一 括 して 本 件 各 区 域 という )と 定 めて 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 する 処 分 ( 本 件 処 分 ) をした( 甲 1) (4) 本 件 延 長 処 分 1 処 分 行 政 庁 は, 平 成 25 年 12 月 25 日, 原 告 に 対 し, 暴 対 法 30 条 の8 第 2 項 に 基 づき, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 指 定 の 期 限 を 平 成 26 年 12 月 2 6 日 までとする 指 定 の 期 限 の 延 長 処 分 ( 本 件 延 長 処 分 1)を 行 った( 乙 48, 62) (5) 本 件 延 長 処 分 2 処 分 行 政 庁 は, 平 成 26 年 12 月 25 日, 原 告 に 対 し, 暴 対 法 30 条 の8 第 2 項 に 基 づき, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 指 定 の 期 限 を 平 成 27 年 12 月 2 6 日 までとする 指 定 の 期 限 の 延 長 処 分 ( 本 件 延 長 処 分 2)を 行 った( 乙 63, 79) 4 争 点 及 び 当 事 者 の 主 張 (1) 本 案 前 の 争 点 ア 本 件 無 効 確 認 請 求 について 本 件 無 効 確 認 請 求 の 訴 えの 利 益 の 有 無 ( 本 案 前 の 争 点 1) イ 本 件 延 長 処 分 1の 取 消 請 求 について 本 件 延 長 処 分 1の 取 消 請 求 の 訴 えの 利 益 の 有 無 ( 本 案 前 の 争 点 2) (2) 本 案 の 争 点 ア 本 件 無 効 確 認 請 求 について 本 件 処 分 の 無 効 事 由 の 有 無 ( 本 案 の 争 点 1) イ 本 件 処 分 の 取 消 請 求 及 び 本 件 予 備 的 請 求 について (ア) 暴 対 法 及 び 本 件 処 分 等 の 合 憲 性 ( 本 案 の 争 点 2) (イ) 本 件 処 分 の 適 法 性 ( 本 案 の 争 点 3) 4

ウ 本 件 延 長 処 分 1の 取 消 請 求 及 び 本 件 延 長 処 分 2の 取 消 請 求 について (ア) 暴 対 法 30 条 の8 第 2 項 の 合 憲 性 ( 本 案 の 争 点 4) (イ) 本 件 延 長 処 分 1の 適 法 性 ( 本 案 の 争 点 5) (ウ) 本 件 延 長 処 分 2の 適 法 性 ( 本 案 の 争 点 6) 5 争 点 に 対 する 当 事 者 の 主 張 (1) 本 件 無 効 確 認 請 求 の 訴 えの 利 益 の 有 無 ( 本 案 前 の 争 点 1) ( 被 告 の 主 張 ) 本 件 無 効 確 認 請 求 は, 本 件 処 分 の 無 効 確 認 を 求 める 無 効 等 確 認 の 訴 え( 行 政 事 件 訴 訟 法 [ 以 下 行 訴 法 という ]3 条 4 項 )に 該 当 するものと 解 され るところ, 処 分 の 無 効 事 由 となる 重 大 かつ 明 白 な 違 法 は 処 分 の 取 消 事 由 とな る 違 法 に 包 含 される 関 係 にあるから, 特 定 の 行 政 処 分 につきその 取 消 しを 求 める 訴 え( 同 法 3 条 2 項 )を 適 法 に 提 起 することができる 場 合,その 原 告 は, 当 該 取 消 しの 訴 えによって 当 該 処 分 により 生 じる 不 利 益 についての 権 利 救 済 が 図 られ 得 る 以 上,これとは 別 に, 同 時 に 当 該 処 分 について 無 効 確 認 を 求 め る 訴 えの 利 益 を 有 しないものというべきであり,かかる 場 合 において, 無 効 確 認 の 訴 えは, 同 訴 えによらなければ 十 分 な 救 済 を 得 られないような 例 外 的 な 場 合 にのみ 許 容 されるというべきである そして,このことは, 行 政 処 分 の 効 力 を 争 ってその 取 消 しの 訴 えと 無 効 確 認 の 訴 えとを 提 起 している 原 告 が 主 張 する 当 該 処 分 を 取 り 消 す 理 由 となる 違 法 事 由 と 当 該 処 分 の 無 効 原 因 とな る 違 法 事 由 とが 異 なることによって 左 右 されるものではない 本 件 において, 原 告 は, 既 に 本 件 処 分 の 取 消 しを 求 めて 本 件 処 分 の 取 消 請 求 に 係 る 訴 えを 適 法 に 提 起 している 以 上, 原 告 は,これと 並 行 して 本 件 無 効 確 認 請 求 を 提 起 して, 本 件 処 分 により 生 じる 不 利 益 について 権 利 救 済 を 求 め る 利 益 を 有 しない したがって, 本 件 無 効 確 認 請 求 に 係 る 訴 えは 訴 えの 利 益 を 欠 き, 不 適 法 で あるから, 却 下 されるべきである 5

( 原 告 の 主 張 ) 争 う 行 政 処 分 に 重 大 かつ 明 白 な 違 法 があったとしても 取 消 事 由 となる 違 法 に 包 含 されるために 取 消 訴 訟 によって 権 利 救 済 が 図 られる 以 上 訴 えの 利 益 がない という 被 告 の 主 張 を 前 提 とすると,あらゆる 場 合 に 無 効 等 確 認 の 訴 えを 提 起 することができなくなり, 行 訴 法 において 無 効 等 確 認 の 訴 えを 明 文 上 定 めた 意 義 が 失 われるのであり, 取 消 訴 訟 を 提 起 することができる 場 合 であっても, 無 効 等 確 認 の 訴 えを 提 起 する 訴 えの 利 益 がある (2) 本 件 延 長 処 分 1の 取 消 請 求 の 訴 えの 利 益 の 有 無 ( 本 案 前 の 争 点 2) ( 被 告 の 主 張 ) 暴 対 法 30 条 の8 第 2 項 は, 特 定 危 険 指 定 処 分 について,その 期 限 が 経 過 する 際 に 当 該 処 分 の 対 象 となった 指 定 暴 力 団 等 についておそれ 要 件 が 存 続 し ていることを 改 めて 確 認 することとし,おそれ 要 件 が 存 続 していることが 確 認 された 場 合 には, 当 初 の 指 定 処 分 の 内 容 の 一 部 である 指 定 の 期 限 を 延 長 す ることによって, 当 初 の 指 定 処 分 の 効 力 を 存 続 させるという 立 法 政 策 を 採 用 したものである 上 記 の 暴 対 法 の 趣 旨 からすれば, 本 件 延 長 処 分 1の 取 消 しを 求 める 訴 えに ついては, 同 処 分 によって 延 長 された 後 の 指 定 の 期 限 ( 平 成 26 年 12 月 2 6 日 )の 経 過 により, 同 処 分 によって 当 初 の 指 定 処 分 ( 本 件 処 分 )の 効 力 が 維 持 されているという 状 態 は 既 に 解 消 されているのであるから, 原 告 に 本 件 延 長 処 分 1の 取 消 しを 求 める 訴 えの 利 益 はない したがって, 本 件 延 長 処 分 1の 取 消 しを 求 める 訴 えは, 訴 えの 利 益 を 欠 く 不 適 法 なものであるから, 却 下 されるべきである ( 原 告 の 主 張 ) 争 う (3) 本 件 処 分 の 無 効 事 由 の 有 無 ( 本 案 の 争 点 1) 6

( 原 告 の 主 張 ) 行 政 処 分 は, 重 大 かつ 明 白 な 違 法 が 認 められる 場 合 には, 当 然 無 効 となる ところ,3 条 指 定 処 分, 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 に 基 づく 特 定 危 険 指 定 処 分 はいずれも 行 政 行 為 ( 行 政 処 分 )であり,かかる 処 分 の 効 果 を 受 ける 主 体 は 法 人 格 を 有 していなければならないが, 同 法 には 暴 力 団 にその 法 律 効 果 を 受 ける 法 主 体 性 を 認 める 条 項 等 は 存 在 しない 同 法 の 存 在 それ 自 体 によって 当 然 に 法 主 体 性 が 認 められるわけではないのであり, 原 告 は,3 条 指 定 処 分 の 際 においても 本 件 処 分 の 際 においても, 行 政 処 分 の 要 件 となる 法 主 体 性 がな いことは 客 観 的 に 明 白 であり, 本 件 処 分 は, 法 主 体 性 がない 暴 力 団 に 対 して 行 ったものであるから, 法 主 体 性 の 欠 缺 を 見 逃 したものとして 重 大 かつ 一 見 明 白 な 違 法 があるし, 処 分 行 政 庁 が 上 記 各 処 分 時 にその 職 務 の 誠 実 な 遂 行 として 当 然 要 求 せられる 程 度 の 調 査 によって 判 明 すべき 原 告 の 法 主 体 性 の 欠 缺 があることからすれば,これらの 処 分 には 重 大 かつ 客 観 的 に 明 白 な 違 法 があるのであり, 本 件 処 分 は 当 然 無 効 である ( 被 告 の 主 張 ) 原 告 が 主 張 する 法 主 体 性 が 何 を 意 味 するか 必 ずしも 明 らかではないが, 暴 対 法 は,その 立 法 政 策 として, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 指 定 ( 同 法 第 30 条 の8 第 1 項 )について 処 分 性 を 付 与 しているから, 同 法 によって, 原 告 は 同 指 定 処 分 の 対 象 となる 法 的 地 位 に 置 かれる 反 面, 同 指 定 処 分 を 争 うことが できる 法 的 地 位 を 有 するものと 解 される したがって, 原 告 は, 少 なくとも この 意 味 における 訴 訟 の 当 事 者 性 を 有 するものとされるものであるから, 原 告 の 上 記 主 張 は 失 当 であり, 本 件 無 効 確 認 請 求 には 理 由 がない (4) 暴 対 法 及 び 本 件 処 分 等 の 合 憲 性 ( 本 案 の 争 点 2) ( 原 告 の 主 張 ) ア 暴 対 法 及 び 同 法 の 各 条 項 の 違 憲 以 下 のとおり, 暴 対 法 は, 法 律 全 体 として 暴 力 団 及 び 暴 力 団 員 の 権 利 7

の 侵 害 を 定 める 体 系 的 な 法 律 であり, 暴 対 法 及 び 同 法 の 本 件 処 分 に 関 連 する 規 定 は 違 憲 であり, 本 件 処 分 は 違 憲 である なお, 被 告 は, 暴 対 法 30 条 の8 第 2 項, 第 3 項, 同 法 30 条 の11, 同 法 49 条 等 について 原 告 に 違 憲 を 主 張 する 適 格 がない 等 と 主 張 するが, 下 記 のとおり, 各 規 定 は 本 件 処 分 ないし 本 件 処 分 の 根 拠 規 定 である 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 と 非 常 に 強 い 内 部 的 関 連 性 を 有 し, 法 律 全 体 で 暴 力 団 及 び 暴 力 団 員 の 権 利 侵 害 を 定 めるものであるから, 原 告 に 違 憲 主 張 をする 適 格 があること は 明 らかであるし, 暴 対 法 30 条 の11, 同 法 49 条 について 行 訴 法 1 0 条 1 項 による 違 法 事 由 の 制 限 を 受 けないことは 明 らかである (ア) 暴 対 法 の 立 法 目 的, 制 定 過 程 等 の 違 憲 a 立 法 目 的 の 違 憲 (a) 暴 対 法 は1 条 に 定 める 目 的 を 立 法 目 的 とするものではなく, 暴 力 団 又 は 暴 力 団 員 というカテゴリーを 創 設 し, 一 般 の 刑 罰 法 令 とは 異 なる 行 政 刑 罰 法 令 を 創 出 し, 一 般 社 会 とは 異 なった 法 体 系 を 適 用 す るという 特 殊 社 会 的 秩 序 を 作 り 出 して 暴 力 団, 暴 力 団 員 を 差 別 化 す るものであり, 社 会 の 誰 もがその 壊 滅 に 賛 成 する 暴 力 団 を 対 象 とし た 差 別 立 法 であり,これを 利 用 して 同 法 を 所 掌 する 官 庁 の 利 益 を 図 ることを 目 的 とし, 憲 法 14 条 1 項 の 社 会 的 身 分 による 差 別 を するものであり, 法 の 下 の 平 等 に 反 する 差 別 立 法 である 暴 対 法 に より 暴 力 団 のレッテルを 貼 られれば, 自 分 の 力 ではそこから 脱 却 することができず, 事 実 上 暴 力 団 は 悪 い 集 団, 反 社 会 的 勢 力 などとの 社 会 的 評 価 を 伴 うものであり, 暴 力 団 員 というレ ッテルを 貼 られた 者 については 暴 力 団 を 脱 退 しても 元 暴 力 団 員 というレッテルが 貼 られるものであるから, 暴 力 団 と 称 する 地 位 は 社 会 的 身 分 に 該 当 する (b) 法 律 を 制 定 する 場 合 には 法 律 の 基 礎 にあってその 合 理 性 を 支 える 8

社 会 的, 経 済 的, 文 化 的 な 一 般 的 事 実 としての 立 法 事 実 が 存 在 する 必 要 があるところ, 被 告 の 指 摘 する 立 法 事 実 は 暴 力 団 員 の 行 為 に 対 する 規 制 を 支 える 立 法 事 実 にもなり 得 ない 上, 組 織 としての 暴 力 団 対 策 を 基 礎 付 ける 立 法 事 実 とはなり 得 ないし, 仮 に 暴 力 団 員 の 行 為 に 対 する 何 らかの 取 締 りの 必 要 性 を 示 すものであったとしても,そ の 目 的 を 達 成 するための 手 段 の 合 理 性 を 基 礎 付 けるものではなく, 立 法 事 実 とはなり 得 ない (c) また, 暴 対 法 は 暴 力 団 員 の 行 う 暴 力 的 要 求 行 為 等 について 必 要 な 規 制 を 行 い, 市 民 生 活 に 対 する 危 険 を 防 止 するために 必 要 な 措 置 を 講 じること 等 により 市 民 生 活 の 安 全 と 平 穏 の 確 保 を 図 り, 国 民 の 自 由 と 権 利 を 保 護 することを 目 的 とする 旨 規 定 するが( 同 法 1 条 ), ここにいう 暴 力 的 要 求 行 為 等 は 従 来 違 法 行 為 とされず 刑 罰 の 対 象 と ならない 行 為 や 従 来 存 在 した 刑 罰 法 規 により 処 罰 されてきた 行 為 で あって,これに 対 する 必 要 な 規 制 は 行 われ, 市 民 生 活 に 対 する 危 険 を 防 止 し, 市 民 生 活 の 安 全 と 平 穏 を 確 保 し, 国 民 の 自 由 と 権 利 を 保 護 することができていたのであるから,どのような 暴 力 的 要 求 行 為 が 法 制 定 の 基 礎 事 実 となったのか, 従 来 の 法 律 が 適 用 されなかった のかが 明 らかでない 限 り, 立 法 を 基 礎 付 ける 事 実 を 欠 き, 立 法 目 的 を 欠 くものである 市 民 生 活 の 安 全 と 平 穏 の 確 保 という 暴 対 法 に 規 定 する 保 護 利 益 自 体 は 個 々の 暴 力 団 員 の 犯 罪 行 為 の 防 止 が 図 られれ ば 足 りるところ, 犯 罪 防 止 という 観 点 からは, 従 来 の 刑 法 等 の 法 律 の 適 用 によりその 目 的 を 十 分 に 達 成 することができる (d) したがって, 暴 対 法 は, 立 法 目 的 を 欠 くものであり, 憲 法 13 条, 14 条 1 項,21 条 1 項 に 反 する b 個 別 具 体 的 法 規 範 であることによる 違 憲 憲 法 41 条 が 規 定 する 国 会 の 立 法 権 の 立 法 の 意 義 は, 一 般 的 抽 9

象 的 法 規 範 ( 受 範 者 が 不 特 定 多 数 であり[ 一 般 性 ], 規 律 の 及 ぶ 場 合 が 不 特 定 多 数 であること[ 抽 象 性 ])を 意 味 し, 特 定 の 人 や 特 定 の 事 件 を 名 指 しした 法 律 は 国 民 の 権 利, 自 由 を 不 安 定 なものにし, 平 等 原 則 に 違 反 するところ, 暴 対 法 は 暴 力 団 員 の 行 う 暴 力 的 要 求 行 為 等 について の 規 制 を 行 う 法 律 であり, 一 般 性 はないから, 一 般 的 抽 象 的 法 規 範 を 制 定 する 立 法 権 により 制 定 された 法 律 ではない したがって, 暴 対 法 は, 憲 法 41 条 に 違 反 するし, 憲 法 14 条 の 平 等 原 則 にも 違 反 する c 暴 対 法 の 立 法 過 程, 運 用 の 違 憲 暴 対 法 は 平 成 3 年 の 制 定 過 程, 平 成 24 年 の 改 正 過 程 における 審 議 時 間 が 極 めて 短 く, 十 分 な 審 議 がされておらず, 各 条 文 の 解 釈 上 問 題 となる 点 のみならず 立 法 事 実 の 存 否 等 の 基 礎 事 実 の 十 分 な 検 討 が 行 わ れていない 重 大 な 欠 陥 があり 違 憲 である すなわち, 平 成 3 年 の 暴 対 法 制 定 過 程 においては,1 警 察 庁 が 法 案 を 提 出 する 際 に, 衆 議 院 及 び 参 議 院 において 物 理 的 に 審 議 の 日 程 の 確 保 が 困 難 な 時 期 に 上 程 しており, 審 議 時 間 が 極 めて 短 いこと,2 暴 対 法 の 立 法 に 向 けた 作 業 が 警 察 庁 内 部 で 開 始 された 後, 国 民 的 な 議 論 に 必 要 な 時 間 的 余 裕 や 場 を 提 供 することなく 法 案 を 作 成 し, 国 会 に 提 出 したこと 等 から 暴 対 法 の 制 定 の 拙 速 さ, 立 法 事 実 の 把 握 の 稚 拙 さ, 各 条 文 の 審 議 が 存 在 しないことは 明 らかである また, 平 成 24 年 の 暴 対 法 改 正 時 においても, 平 成 3 年 の 暴 対 法 制 定 時 と 同 様, 警 察 庁 が 改 正 法 案 を 作 成 し, 内 閣 による 閣 議 決 定 の 後 国 会 に 提 出 されたが, 国 会 における 審 議 時 間 は 約 5 時 間 半 にとどまり, このような 短 い 審 議 時 間 では 改 正 を 根 拠 付 ける 立 法 事 実 の 存 否 等 の 審 議 を 行 うことができず, 審 議 において 平 成 24 年 の 改 正 における 大 き な 改 正 点 の 一 つである 特 定 危 険 指 定 処 分 に 関 する 暴 対 法 30 条 の8 及 びその 関 連 規 定 に 関 する 十 分 な 審 議, 議 論 は 存 在 しないのであり, 各 10

条 文 の 審 議 が 存 在 しないこと, 立 法 事 実 の 把 握 の 稚 拙 さは 明 らかであ る (イ) 3 条 指 定 処 分 に 関 連 する 規 定 の 違 憲 a 暴 対 法 3 条 柱 書 暴 対 法 3 条 柱 書 は, 暴 力 団 員 が 集 団 的 に 又 は 常 習 的 に 暴 力 的 不 法 行 為 等 を 行 うことを 助 長 する おそれ があるだけで 指 定 暴 力 団 として の 指 定 を 受 け, 暴 対 法 に 定 める 行 動 の 制 約 を 課 すものであり, 指 定 を 受 ける 暴 力 団 の 要 件 該 当 性 を 曖 昧 にし, 憲 法 31 条 に 違 反 するも のであるし, 憲 法 21 条 1 項 の 結 社 の 自 由 を 侵 害 し,また, 憲 法 13 条 の 幸 福 追 求 権 を 侵 害 するものである また, 暴 対 法 3 条 柱 書 は, 任 侠 道 を 信 奉 する 団 体 が 結 集 した 団 体 で ある 原 告 及 びその 構 成 員 を 暴 力 団 と 指 定 して 任 侠 道 を 信 奉 する 団 体 で あることを 理 由 に 社 会 的 に 差 別 するものであり, 憲 法 19 条,14 条 に 違 反 し,13 条 の 幸 福 追 求 権 を 侵 害 する b 暴 対 法 3 条 1 号 暴 対 法 3 条 1 号 の 目 的 要 件 は, 目 的 という 主 観 的 要 素 を 指 定 暴 力 団 の 指 定 要 件 として 規 定 しており, 公 安 委 員 会 が 実 質 的 には 何 の 客 観 的 基 準 もなく 恣 意 的 に 要 件 該 当 性 を 判 断 することになり, 憲 法 21 条 1 項 の 結 社 の 自 由 を 侵 害 し, 憲 法 31 条 に 反 する c 暴 対 法 3 条 2 号 (a) 暴 対 法 3 条 2 号 は, 暴 力 団 の 幹 部 である 暴 力 団 員 の 人 数 のうち に 占 める 犯 罪 経 歴 保 有 者 の 人 数 の 比 率 又 は 当 該 暴 力 団 の 全 暴 力 団 員 の 人 数 のうちに 占 める 犯 罪 経 歴 保 有 者 の 人 数 の 比 率 が 一 定 の 比 率 を 超 えることを3 条 指 定 処 分 の 要 件 としているが, 犯 罪, 経 歴, 保 有 の 意 味 が 不 明 確 であり,このような 曖 昧 な 文 言 を 不 利 益 処 分 の 要 素 とすることは, 憲 法 31 条 に 違 反 する 11

(b) 暴 対 法 3 条 2 号 は, 暴 力 団 の 幹 部 又 は 構 成 員 の 中 に 一 定 比 率 を 超 える 犯 罪 経 歴 保 有 者 がいる 団 体 であることを 要 件 とし, 当 該 比 率 を 政 令 で 定 める としているが,3 条 指 定 処 分 の 要 件 を 政 令 に 白 紙 委 任 することになり, 憲 法 31 条 に 反 する (c) 暴 対 法 3 条 2 号 は, 犯 罪 経 歴 保 有 者 を 社 会 的 身 分 により 差 別 するものであり 憲 法 14 条 に 違 反 する (d) 暴 対 法 3 条 2 号 の 幹 部 という 概 念 は 不 明 確 であり, 団 体 の 定 める 幹 部 とは 無 関 係 に 幹 部 とされ,これにより 犯 罪 経 歴 保 有 者 の 比 率 が 判 断 されることは, 憲 法 14 条 に 違 反 し, 憲 法 21 条 1 項 の 結 社 の 自 由 を 侵 害 する (e) 暴 対 法 3 条 2 号 は,その 属 する 集 団 の 人 数 の 多 少 により 犯 罪 経 歴 保 有 者 比 率 の 区 分 を 設 けているが,このような 区 分 を 設 けること 自 体 その 根 拠 も 関 連 性 も 合 理 性 もなく, 犯 罪 経 歴 保 有 者 の 多 少 により 区 別 することになり, 憲 法 14 条 1 項 に 違 反 し, 憲 法 21 条 1 項 の 結 社 の 自 由 を 侵 害 するし, 犯 罪 経 歴 保 有 者 の 少 ない 団 体 を 良 い 団 体 とし, 多 い 団 体 を 悪 い 団 体 とすることを 前 提 とするものであり, 判 断 基 準 が 曖 昧 であり, 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 する (f) 暴 対 法 3 条 2 号 は, 恩 赦 の 場 合 や 刑 の 執 行 猶 予 期 間 が 経 過 した 者 等 刑 の 言 渡 しの 効 力 が 消 滅 した 者 を 犯 罪 経 歴 保 有 者 であるとす るものであり, 憲 法 14 条 1 項 に 違 反 する d 暴 対 法 3 条 3 号 暴 対 法 3 条 3 号 は, 運 営 を 支 配 する 地 位 にある 者 を 要 件 として 定 めるが,その 定 義 は 不 明 確 であるから 憲 法 31 条 に 違 反 するし, 憲 法 21 条 1 項 の 結 社 の 自 由 を 侵 害 する e 暴 対 法 5 条 暴 対 法 5 条 は,3 条 指 定 処 分 を 行 う 際 に, 処 分 行 政 庁 に 指 定 の 要 件 12

該 当 性 があることを 根 拠 づける 資 料 の 提 出 を 求 めておらず, 同 条 が 告 知 聴 聞 の 機 会 を 設 けているものであるとした 場 合 であっても, 要 件 該 当 性 の 検 討 の 機 会, 反 論 の 機 会 を 奪 うものであるから, 憲 法 31 条 に 違 反 する f 暴 対 法 9 条 暴 対 法 9 条 は,3 条 指 定 処 分 による 効 果 として, 暴 力 的 要 求 行 為 の 禁 止 を 定 めるが,その 特 質 として 私 人 の 経 済 活 動 の 自 由 の 全 ての 分 野 に 及 ぶものであり, 同 条 は, 威 力 を 示 して 行 った 行 為 を 対 象 とし ているものの,この 文 言 によっては 適 法 行 為 の 外 延 が 不 明 確 であり, 日 常 生 活 にまで 過 度 の 委 縮 を 及 ぼすものであって, 漠 然 性 ゆえに 無 効 の 理 論, 過 度 に 広 汎 ゆえに 無 効 の 理 論 が 妥 当 し, 罪 刑 法 定 主 義 に 違 反 し,かつ 憲 法 21 条 1 項 にも 違 反 する (ウ) 暴 対 法 30 条 の8に 基 づく 処 分 に 関 する 違 憲 a 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 (a) 明 確 性 の 原 則 違 反 等 1 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 による 特 定 危 険 指 定 処 分 は,3 条 指 定 処 分 と 同 様 に 団 体 に 対 して 暴 力 的 行 為 を 常 習 する 者 の 団 体 である というレッテルを 貼 るものであり,その 効 果 は, 究 極 的 には 任 侠 団 体 を 旨 とする 団 体 構 成 員 の 思 想 良 心 を 弾 圧 するもので, 結 社 の 自 由 を 制 限 するものである また, 単 に3 条 指 定 処 分 がされたに とどまる 暴 力 団 よりも 一 層 高 いレベルでその 指 定 された 団 体 が 法 に 抵 触 し, 存 在 を 許 されないという 印 象 を 与 え,その 指 定 された 団 体 の 構 成 員 がいわば 暴 力 的 行 為 を 常 習 する 者 であるとの 印 象 を 与 えるものであり, 団 体 活 動 に 対 する 事 後 規 制 の 制 限 であるから, 明 確 な 要 件 及 び 慎 重 な 手 続 が 定 められている 必 要 があるし,その 自 由 については 必 要 最 小 限 の 規 制 しか 許 されないというべきであ 13

る しかしながら, 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 は, 特 定 危 険 指 定 処 分 の 要 件 の 一 つとして 更 に 反 復 して 同 様 の 暴 力 行 為 を 行 うおそれ があると 認 めるとき と 規 定 し, おそれがある という 漠 然 と した 要 件 の 下 で 司 法 機 関 等 の 第 三 者 機 関 ではない 公 安 委 員 会 に 特 定 危 険 指 定 処 分 の 権 限 を 与 え, 恣 意 的 運 用 がされる 可 能 性 も 十 分 にあるのであり, 学 説 の 通 説 上 違 憲 であるとされている 破 壊 活 動 防 止 法 と 比 較 しても 構 成 要 件 が 不 明 確 であるから, 明 確 性 の 原 則 に 反 するし, 憲 法 上 規 制 されるべきではない 行 為 も 包 括 的 に 含 む 形 で 規 制 対 象 を 定 めるものであるから, 過 度 の 広 汎 性 理 論 からも, 憲 法 21 条 1 項,31 条 に 違 反 する 2 また, 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 は, 公 安 委 員 会 が 人 の 生 命 又 は 身 体 に 重 大 な 危 害 が 加 えられることを 防 止 する 目 的 の 下 に 特 に 警 戒 を 要 する 区 域 ( 警 戒 区 域 )を 定 めることができる 旨 規 定 するが, 警 戒 という 文 言 が 不 明 確 であり,さらに, 警 戒 を 要 する か 否 かや 上 記 の 目 的 の 判 断 を 全 面 的 に 公 安 委 員 会 に 委 ねて 白 紙 委 任 をするものであるから, 構 成 要 件 が 漠 然 不 明 確 であり, 明 確 性 の 原 則 に 反 し, 憲 法 21 条 1 項,31 条 に 違 反 する (b) 結 社 の 自 由 侵 害 結 社 の 自 由 は, 多 数 の 人 々がある 共 同 目 的 ( 思 想 良 心 の 自 由 等 ) を 達 成 するために 任 意 にかつ 継 続 的 に 結 合 する 行 為 の 自 由 であり, 団 体 を 結 成 する 自 由, 団 体 に 参 加 する 自 由, 団 体 自 体 が 存 続 する 権 利 が 含 まれており,1 人 が 団 体 の 結 成 不 結 成, 団 体 への 加 入 不 加 入, 団 体 の 構 成 員 の 継 続 脱 退 につき 公 権 力 による 干 渉 を 受 けな いこと,2 団 体 が 団 体 としての 意 思 を 形 成 し,その 意 思 実 現 のため の 諸 活 動 につき 公 権 力 による 干 渉 を 受 けないことを 保 障 するもので 14

あるところ, 特 定 危 険 指 定 処 分 は, 結 成 された 団 体 の 弱 体 化 を 招 来 する 行 為 を 含 むものであり, 団 体 が 団 体 としての 意 思 を 形 成 し,そ の 意 思 実 現 のための 諸 活 動 につき 公 権 力 による 干 渉 を 受 けない 権 利 が 直 接 制 約 され, 団 体 自 体 が 存 続 する 権 利 への 直 接 的 制 約 になるこ とは,その 指 定 効 果 の 重 大 性 ( 直 罰 化, 面 会 要 求 等 の 禁 止, 事 務 所 の 使 用 制 限 )に 鑑 みれば 明 らかである そして, 結 社 の 自 由 の 侵 害 についての 違 憲 審 査 基 準 は, 最 高 裁 判 所 平 成 7 年 3 月 7 日 判 決 ( 民 集 49 巻 3 号 687 頁 )が 採 用 する 明 白 かつ 現 在 の 危 険 の 原 則 によるべきであり, 規 制 を 行 うには 明 らか な 差 し 迫 った 危 険 の 発 生 が 具 体 的 に 予 見 されることが 必 要 であり, そのような 事 態 の 発 生 が 客 観 的 な 事 実 に 照 らして 具 体 的 に 明 らかに 予 測 される 場 合 でなければならない 本 件 についてみるに, 憲 法 21 条 1 項 が 保 障 する 結 社 の 自 由 の 重 大 性 や 上 記 (a)のとおり, 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 が 定 める おそ れ 要 件 の 漠 然 不 明 確 性 に 鑑 みれば, 明 白 かつ 現 在 の 危 険 の 原 則 に より 違 憲 審 査 がされるべきであるところ, 同 項 が おそれ という 可 能 性 を 根 拠 に 憲 法 上 優 越 的 地 位 にある 結 社 の 自 由 を 侵 害 するもの であるから, 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 し 違 憲 であることは 明 らかであ る したがって, 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 による 特 定 危 険 指 定 処 分 は, 結 成 された 団 体 の 弱 体 化 を 招 来 する 行 為 として, 結 社 の 自 由 に 対 す る 侵 害 行 為 であり, 同 法 30 条 の9ないし11 等 に 定 めるとおり, 団 体 自 体 に 対 して 半 永 久 的 に 処 分 の 効 果 が 残 るものであるし, 構 成 員 に 対 しても 多 方 面 に 波 及 する 過 度 な 人 権 侵 害 を 内 包 するものであ るにもかかわらず, 漠 然 不 明 確 な 要 件 と 公 安 委 員 会 による 主 観 的 な 手 続 が 採 用 されている 点 で 必 要 最 小 限 の 規 制 として 到 底 首 肯 し 得 る 15

ものではなく, 団 体 構 成 員 の 結 社 の 自 由 ひいては 思 想 良 心 の 自 由 を 著 しく 侵 害 し, 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 する b 暴 対 法 30 条 の8 第 2 項 暴 対 法 30 条 の8 第 2 項 は, 公 安 委 員 会 が 更 にその 指 定 の 必 要 が あると 認 めるとき には, 特 定 危 険 指 定 処 分 の 要 件 該 当 性 ないし 要 件 充 足 性 を 問 題 とすることなく, 同 処 分 により 定 められた 期 限 を 延 長 で きる 旨 規 定 しており, 延 長 処 分 の 可 否 を 必 要 があると 認 めるとき という 公 安 委 員 会 の 恣 意 的 な 判 断 に 委 ね, 具 体 的 要 件 を 必 要 とせず, その 主 観 的 判 断 により 延 長 する 権 限 を 認 めるものであり, 憲 法 21 条 1 項 の 結 社 の 自 由 を 侵 害 し, 憲 法 31 条 に 違 反 する なお, 暴 対 法 30 条 の8 第 2 項 は, 特 定 危 険 指 定 処 分 の 実 質 的 な 自 動 更 新 条 項 であり, 特 定 危 険 指 定 処 分 ないし 同 条 1 項 と 非 常 に 強 い 内 部 的 関 連 性 を 有 しており, 原 告 は, 同 条 2 項 についての 違 憲 を 主 張 す る 適 格 がある c 暴 対 法 30 条 の8 第 3 項 暴 対 法 30 条 の8 第 3 項 は, 同 条 1 項 により 定 めた 警 戒 区 域 を 必 要 と 認 めるとき に 変 更 することができる 旨 規 定 しており, 必 要 性 以 外 に 何 らの 基 準 もなく 公 安 委 員 会 の 恣 意 的 な 判 断 により 変 更 すること ができるものであり, 憲 法 31 条 に 違 反 する なお, 暴 対 法 30 条 の8 第 3 項 は, 特 定 危 険 指 定 処 分 における 警 戒 区 域 の 変 更 に 関 する 規 定 であり, 特 定 危 険 指 定 処 分 と 不 即 不 離 の 関 係 にあるから, 同 条 1 項 と 非 常 に 強 い 内 部 的 関 連 性 を 有 しており, 原 告 は, 同 条 3 項 についての 違 憲 を 主 張 する 適 格 がある d 暴 対 法 30 条 の8 第 4 項 暴 対 法 30 条 の8 第 4 項 が 準 用 する 同 法 5 条 は, 上 記 (イ)eのとおり, 公 安 委 員 会 に 要 件 該 当 性 があることを 根 拠 づける 資 料 の 提 出 を 求 めて 16

いないから, 上 記 (イ)eと 同 様 憲 法 31 条 に 違 反 する e 暴 対 法 30 条 の8 第 7 項 暴 対 法 30 条 の8 第 7 項 は, 同 法 3 条 及 び4 条 の 指 定 ( 旧 指 定 )の 有 効 期 間 が 経 過 した 場 合 において, 引 き 続 き 同 法 3 条 及 び4 条 に 基 づ く 指 定 ( 新 指 定 )がされたときは, 同 法 30 条 の8 第 1 項 の 規 定 によ り 旧 指 定 にかかる 指 定 暴 力 団 等 について 公 安 委 員 会 がした 指 定 は, 新 指 定 に 係 る 指 定 暴 力 団 等 について 引 き 続 きその 効 力 を 有 する 旨 規 定 す るところ,かかる 規 定 は, 同 項 による 要 件 該 当 性 の 審 査 を 行 うことな く 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 として 扱 うものであるから, 憲 法 21 条 1 項, 31 条 に 違 反 する f 暴 対 法 30 条 の9 及 び30 条 の10 (a) 暴 対 法 30 条 9 及 び30 条 の10の 各 規 定 が 不 明 確 であること 暴 対 法 30 条 の9は, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 指 定 暴 力 団 員 が 暴 力 的 要 求 行 為 を 行 う 目 的 で 警 戒 区 域 において,その 相 手 方 に 対 し, 面 会 を 要 求 し(1 号 ), 電 話 をかけ,ファクシミリ 装 置 を 用 いて 送 信 し, 又 は 電 子 メールを 送 信 し(2 号 ),つきまとい, 居 宅 又 は 事 業 所 の 付 近 をうろつくこと(3 号 )を 禁 止 し, 同 法 30 条 の10は, これらの 行 為 が 行 われたときには, 公 安 委 員 会 は 中 止 命 令 を 発 する ことができるほか, 必 要 な 事 項 を 命 じることができる 旨 規 定 し ているが, 同 法 30 条 の9は, つきまとい, うろつく 等 の 曖 昧 かつ 不 明 確 な 概 念 により 規 制 を 行 うものであるし, 目 的 と いう 主 観 的 要 素 の 有 無 によって 犯 罪 でない 行 為 を 規 制 の 対 象 とする ものであり,その 判 断 が 恣 意 的 となり 基 準 として 曖 昧 であるから, 憲 法 21 条,31 条 違 反 は 明 らかであるし, 必 要 な 事 項 を 命 じ ることができる 旨 の 規 定 ( 暴 対 法 30 条 の10 第 2 項 )は,その 内 容 が 全 く 明 らかでなく,さらに, 要 件 を 政 令 等 に 完 全 に 委 ねている 17

から, 憲 法 31 条 に 違 反 する (b) 暴 対 法 30 条 の9 第 1 号 暴 対 法 30 条 の9 第 1 号 は, 警 戒 区 域 内 において 相 手 方 に 対 して 面 会 を 要 求 することを 禁 止 するものであるところ, 誰 と 面 会 し 交 流 するかについて 公 権 力 による 介 入 を 受 けない 利 益 が 憲 法 13 条 及 び 21 条 1 項 により 保 障 されていることは 明 らかであり,このような 個 人 の 人 格 的 生 存 に 不 可 欠 な 核 心 的 利 益 は 個 人 の 尊 厳 を 規 定 する 憲 法 の 下 で 制 約 されてはならないものであり, 暴 対 法 30 条 の9 第 1 号 は,かかる 権 利 を 制 約 するものであるから, 憲 法 13 条 及 び21 条 1 項 に 違 反 する (c) 暴 対 法 30 条 の9 第 2 号 暴 対 法 30 条 の9 第 2 号 は, 電 話 をかけ,ファクシミリ 装 置 を 用 いて 送 信 し, 又 は 電 子 メールを 送 信 することを 禁 止 しているもので あるところ,かかる 規 定 は 表 現 の 自 由 の 一 態 様 である 通 信 の 自 由 を 侵 害 するものであり,これを 制 約 する 規 定 の 違 憲 審 査 においては 上 記 a(b)のとおり 明 白 かつ 現 在 の 危 険 の 基 準 によるべきであるところ, 同 号 が 想 定 する 立 法 事 実 には 通 信 の 自 由 を 規 制 する 明 白 かつ 現 在 の 危 険 は 存 在 しないことは 明 らかであるから, 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 する (d) 暴 対 法 30 条 の9 第 3 号 暴 対 法 30 条 の9 第 3 号 は, 警 戒 区 域 内 において 相 手 方 に 対 して つきまとい, 居 宅 又 は 事 業 所 の 付 近 をうろつくことを 禁 止 している ところ, 憲 法 13 条 により 保 障 される 身 体 の 自 由 の 一 態 様 である 移 動 の 自 由 を 侵 害 するものであり,これを 制 約 する 規 定 の 違 憲 審 査 に は 上 記 a(b)のとおり 明 白 かつ 現 在 の 危 険 の 基 準 が 採 用 されるべきで あるところ,かかる 明 白 かつ 現 在 の 危 険 は 存 在 しないから, 憲 法 1 18

3 条 に 違 反 する g 暴 対 法 30 条 の11 暴 対 法 30 条 の11は, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 事 務 所 について, 3か 月 の 期 間 を 定 めて 使 用 を 制 限 することができる 旨 定 め(1 項 ), かかる 期 間 が 経 過 した 後 も 必 要 があると 認 められるとき はさらに 延 長 することができる 旨 定 める(2 項 )ところ, 本 来 自 ら 所 有 又 は 管 理 する 建 物 等 を 事 務 所 として 使 用 することは 自 由 であり, 財 産 権 とし て 保 障 されているのが 原 則 であって, 同 条 は 実 質 的 に 事 務 所 の 使 用 を 禁 止 するという 制 限 を 課 すとともに, 一 度 使 用 制 限 の 命 令 が 出 される ことにより 永 遠 に 事 務 所 を 使 用 することができなくなる 規 定 となって おり, 財 産 の 没 収, 財 産 収 用 処 分 と 実 質 的 に 同 視 することができる 財 産 権 に 対 する 制 約 に 関 する 審 査 基 準 について, 規 制 の 目 的, 必 要 性, 内 容,その 規 制 によって 制 限 される 財 産 権 の 種 類, 性 質 及 び 制 限 の 程 度 等 を 比 較 考 量 して 判 断 し, 立 法 の 規 制 目 的 が 社 会 的 理 由 ないし 目 的 に 出 たものといえないものとして 公 共 の 福 祉 に 合 致 しないことが 明 ら かであるか, 又 は 規 制 目 的 が 公 共 の 福 祉 に 合 致 するものであっても 規 制 手 段 が 目 的 を 達 成 するための 手 段 として 必 要 性 若 しくは 合 理 性 に 欠 けていることが 明 らかであってそのために 立 法 府 の 判 断 が 合 理 的 裁 量 の 範 囲 を 超 えるものとなる 場 合 に 限 り 憲 法 29 条 2 項 に 違 反 するもの とするいわゆる 森 林 法 共 有 物 分 割 制 限 規 定 違 憲 判 決 に 照 らしても, 暴 対 法 30 条 の11は 憲 法 29 条 に 違 反 する また, 暴 対 法 30 条 の1 1は, 団 体 自 体 の 活 動 を 制 限 し, 団 体 構 成 員 の 行 為 を 制 限 するもので あり, 団 体 の 行 動 に 対 する 萎 縮 効 果 をもたらし, 結 成 された 団 体 の 弱 体 化 を 招 来 する 規 制 であるから 憲 法 21 条 の 結 社 の 自 由, 集 会 の 自 由 を 制 限 するものであり, 憲 法 21 条 に 違 反 し,さらには, 人 格 的 権 利 としての 性 格 を 有 する 居 住 の 自 由 ( 憲 法 22 条 )をも 制 限 するもので 19

あるし, 必 要 がある ときであれば 延 長 を 行 うことができる 規 定 で あるから 憲 法 31 条 に 違 反 する また, 暴 対 法 30 条 の11 第 3 項 は, 同 条 1 項 に 基 づく 使 用 制 限 命 令 を 受 けた 場 合 に, 当 該 事 務 所 の 出 入 口 の 見 やすい 場 所 に 当 該 命 令 を 受 けている 旨 を 告 知 する 国 家 公 安 員 会 で 定 める 標 章 を 貼 り 付 けること を 強 制 するものであり, 不 利 益 処 分 を 受 けていることの 表 示 を 強 制 す るものであるから, 不 利 益 供 述 の 強 要 として, 憲 法 38 条 に 違 反 する なお, 暴 対 法 30 条 の11 第 1 項 及 び2 項 による 事 務 所 に 対 する 規 制 は 暴 力 団 に 対 する 規 制 の 本 質 であるし, 同 条 3 項 は 実 質 的 には 特 定 危 険 指 定 処 分 の 標 章 を 定 めるものでもあり, 特 定 危 険 指 定 処 分 の 本 質 的 要 素 であるから, 同 法 30 条 の8 第 1 項 と 非 常 に 強 い 内 部 的 関 連 性 を 有 しており, 原 告 は, 同 項 についての 違 憲 を 主 張 する 適 格 があるし, 原 告 の 利 害 と 関 連 性 を 有 する 規 定 であり, 同 法 30 条 の11に 関 する 違 法 事 由 の 主 張 が 行 訴 法 10 条 1 項 により 制 限 されることはない (エ) その 他 罰 則 等 の 暴 対 法 の 各 条 項 の 違 憲 a 暴 対 法 33 条,49 条 の 違 憲 暴 対 法 33 条 は, 公 安 委 員 会 が この 法 律 の 施 行 に 必 要 があると 認 めるときは, 国 家 公 安 委 員 会 規 則 で 定 めるところにより,この 法 律 の 施 行 に 必 要 な 限 度 において 指 定 暴 力 団 員 その 他 の 関 係 者 に 対 し 報 告 若 しくは 資 料 の 提 出 を 求 め, 又 は 警 察 職 員 に 事 務 所 に 立 ち 入 り, 物 件 を 検 査 させ 若 しくは 指 定 暴 力 団 員 その 他 の 関 係 者 に 質 問 させることが できる 旨 定 めるところ( 以 下, 一 括 して 立 入 検 査 等 という ), 公 安 委 員 会 が 立 入 検 査 等 を 行 うことができる 場 合 の 要 件 につき, 国 家 公 安 委 員 会 規 則 に 一 般 的 包 括 的 に 委 任 するものであり, 憲 法 41 条, 73 条 6 項 但 書 に 違 反 する また, 上 記 規 定 に 基 づく 立 入 検 査 は,その 内 容 も 定 められておらず, 20

刑 事 訴 訟 法 上 の 捜 索 差 押 え 等 令 状 が 必 要 な 強 制 処 分 と 同 様 のことを 令 状 無 しに 行 うものであり( 暴 対 法 49 条 において 同 法 33 条 の 立 入 検 査 を 拒 んだ 者 に 対 する 罰 則 が 定 められていることからすれば 上 記 立 入 検 査 が 強 制 処 分 であることが 裏 付 けられる ), 令 状 主 義 を 保 障 する 憲 法 35 条 に 違 反 する さらに, 暴 対 法 49 条 は, 同 法 33 条 1 項 の 規 定 による 公 安 委 員 会 による 指 定 暴 力 団 員 その 他 の 関 係 者 に 対 する 質 問 に 対 して 当 該 暴 力 団 員 等 が 陳 述 しない 場 合 に 罰 則 を 科 す 旨 定 めるが,これは 陳 述 の 強 制 に 当 たり, 憲 法 38 条 1 項 の 黙 秘 権 侵 害 である なお, 暴 対 法 33 条 及 び49 条 は, 同 法 30 条 の8 第 1 項 と 非 常 に 強 い 内 部 的 関 連 性 を 有 しており, 原 告 は, 同 法 33 条 及 び49 条 につ いての 違 憲 を 主 張 する 適 格 があるし, 原 告 の 利 害 と 関 連 性 を 有 する 規 定 であり, 同 各 条 に 関 する 違 法 事 由 の 主 張 が 行 訴 法 10 条 1 項 により 制 限 されることはない b 中 止 命 令 違 反 等 に 係 る 罰 則 規 定 の 違 憲 刑 事 罰, 行 政 刑 罰 は 犯 罪 構 成 要 件 ないし 効 果 発 生 のための 要 件 を 法 により 定 めることが 必 要 であり,かかる 立 法 事 項 を 委 任 する 場 合 であ っても 一 般 的 包 括 的 な 委 任 は 禁 止 されているところ, 暴 対 法 は 第 8 章 において 中 止 命 令 等 に 違 反 する 者 に 対 して 罰 則 を 科 しているが, 同 法 46 条 3 号,49 条,50 条 2 号,51 条 を 除 く 同 法 第 8 章 ( 罰 則 ) の 全 ての 条 文 は 中 止 命 令 等 に 違 反 したことを 要 件 に 罰 則 を 科 す 旨 定 め ており,その 具 体 的 な 構 成 要 件 は 明 らかにされておらず,その 要 件 は 中 止 命 令 等 の 内 容 によって 異 なることとなるものであって, 刑 罰 の 具 体 的 構 成 要 件 を 中 止 命 令 等 を 発 する 行 政 庁 に 白 紙 委 任 するものである から, 立 法 の 委 任 の 限 界 を 超 えるものであり, 憲 法 41 条,73 条 6 号 に 違 反 し,また, 罪 刑 法 定 主 義 を 定 める 憲 法 31 条 に 違 反 する 21

c 直 罰 規 定 ( 暴 対 法 46 条 3 号 )の 違 憲 暴 対 法 46 条 3 号 は, 同 法 30 条 の2に 定 める つきまとい 行 為 や 請 求 者 に 不 安 を 覚 えさせるような 方 法 で 妨 害 した 場 合 の 直 罰 規 定 を 定 めるものであるところ, 同 じく つきまとい 行 為 について 規 制 するストーカー 行 為 等 の 規 制 等 に 関 する 法 律 ( 平 成 12 年 法 律 第 8 1 号 )( 以 下 ストーカー 規 制 法 という ) 等 と 比 較 すると 罪 刑 の 均 衡 を 失 しており, 憲 法 31 条 に 違 反 するし,その 構 成 要 件 となる つ きまとい の 意 義 も 不 明 確 であり,また, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 の 構 成 員 のみがそれ 以 外 の 指 定 暴 力 団 の 構 成 員 と 同 様 の 暴 力 的 要 求 行 為 等 を 行 った 場 合 に 直 罰 を 受 けるものであり, 他 の 暴 力 団 の 構 成 員 との 間 で 身 体 の 自 由 という 重 要 な 権 利, 利 益 について 不 合 理 な 差 別 的 取 扱 いを 受 けるものとして 憲 法 14 法 1 項 に 違 反 する イ 本 件 処 分 が 違 憲 であること (ア) 山 口 県 においては 原 告 以 外 に 原 告 よりも 活 動 拠 点 や 構 成 員 等 が 多 く 勢 力 が 大 きい 暴 力 団 が 存 在 するにもかかわらず, 原 告 のみに 対 して 本 件 処 分 を 行 ったのであり, 原 告 と 原 告 以 外 の 山 口 県 下 に 存 在 する 指 定 暴 力 団 との 関 係 で 特 に 原 告 に 対 して 特 定 危 険 指 定 処 分 を 行 う 合 理 的 根 拠 がないにもかかわらず 本 件 処 分 を 行 ったものであるから, 結 社 の 自 由 の 保 障 について 差 別 的 な 扱 いをするものであり, 憲 法 14 条 1 項 に 違 反 し, 違 憲, 違 法 である (イ) 本 件 処 分 は, 憲 法 21 条 1 項 が 保 障 する 優 越 的 権 利 である 結 社 の 自 由,コミュニケーション 行 為 の 自 由, 通 信 の 自 由 を 侵 害 するものであ るから 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 し,また, 憲 法 13 条 が 保 障 する 人 格 的 生 存 に 不 可 欠 な 幸 福 的 追 求 権, 移 動 の 自 由 を 侵 害 するものであり, 憲 法 21 条 1 項,13 条 に 違 反 し 違 憲, 違 法 である ( 被 告 の 主 張 ) 22

ア 暴 対 法 及 び 同 法 の 各 条 項 の 違 憲 主 張 について (ア) 暴 対 法 の 立 法 目 的, 制 定 過 程 等 の 違 憲 主 張 について a 立 法 目 的 の 違 憲 に 関 する 主 張 について 暴 対 法 は, 広 域 暴 力 団 の 勢 力 の 拡 大 や 寡 占 化, 暴 力 団 員 による 民 事 介 入 暴 力 行 為 の 増 加, 暴 力 団 相 互 間 の 対 立 抗 争 事 件 の 多 発, 暴 力 団 に 対 する 新 たな 規 制 法 律 制 定 や 暴 力 団 員 の 民 事 介 入 暴 力 行 為 の 禁 止 等 を 求 める 暴 力 団 に 対 する 厳 しい 世 論 等 を 背 景 として, 必 要 な 規 制 等 を 行 うことにより, 市 民 生 活 の 安 全 と 平 穏 の 確 保 を 図 る 目 的 で 制 定 された ものであり,その 立 法 目 的 は 明 確 であって, 暴 対 法 1 条 に 定 めるとお り 合 理 的 な 立 法 目 的 によるものであるから 憲 法 違 反 はない b 個 別 具 体 的 法 規 範 であることによる 違 憲 に 関 する 主 張 について 暴 対 法 は, 暴 力 団,すなわちその 団 体 の 構 成 員 (その 団 体 の 構 成 団 体 の 構 成 員 を 含 む )が 集 団 的 に 又 は 常 習 的 に 暴 力 的 不 法 行 為 等 を 行 うことを 助 長 するおそれがある 団 体 やその 構 成 員 のうち, 暴 対 法 が 規 定 する 要 件 を 満 たす 団 体 やその 構 成 員 に 対 して 等 しく 適 用 されるので あり, 当 該 適 用 の 対 象 とされる 団 体 や 個 人 は 特 定 の 団 体 や 個 人 ではな いから, 暴 対 法 に 一 般 性 がなく 憲 法 41 条 に 反 するとはいえず, 原 告 の 主 張 は 失 当 である c 立 法 制 定 過 程 の 違 憲 に 関 する 主 張 について 法 案 の 審 議 にどの 程 度 の 時 間 をかけるかは 専 ら 各 議 院 の 判 断 による べき 事 項 であり,その 時 間 の 長 短 により 公 布 された 法 律 の 効 力 が 左 右 されるものでないことはいうまでもなく, 国 会 における 審 議 時 間 が 法 律 の 効 力 に 影 響 を 及 ぼすものではない この 点 を 措 くとしても, 平 成 3 年 の 暴 対 法 制 定 時 及 び 平 成 24 年 の 改 正 時 には,いずれも 国 会 において 十 分 な 審 議 を 経 て 可 決 成 立 した ものであるから, 原 告 の 主 張 には 理 由 がない 23

(イ) 暴 対 法 3 条 等 の 違 憲 主 張 ( 原 告 の 主 張 ア(イ))について a 暴 対 法 3 条 柱 書 に 関 する 主 張 について (a) 暴 対 法 3 条 柱 書 は, 同 条 1 号 ないし3 号 のいずれにも 該 当 すると 認 められる 暴 力 団 について, その 暴 力 団 員 が 集 団 的 に 又 は 常 習 的 に 暴 力 的 不 法 行 為 等 を 行 うことを 助 長 するおそれが 大 きい 暴 力 団, つまり 指 定 暴 力 団 ( 同 法 2 条 3 号 )として 指 定 する 旨 規 定 している のであり, 同 法 3 条 柱 書 自 体 は 指 定 暴 力 団 の 指 定 要 件 を 定 める 規 定 ではないのであって, 同 条 柱 書 につき 上 記 の おそれ を 指 定 暴 力 団 の 指 定 要 件 とする 規 定 であることを 前 提 とする 原 告 の 主 張 は 失 当 である (b) また, 上 記 (a)のとおり, 指 定 暴 力 団 の 指 定 要 件 を 定 める 規 定 は 暴 対 法 3 条 1 号 ないし3 号 であり, 同 各 号 には, 指 定 要 件 として 暴 力 団 やその 暴 力 団 員 が 任 侠 道 を 信 奉 するか 否 かに 関 係 する 事 項 を 定 めるものは 全 くないのであり, 同 条 は, 暴 力 団 やその 暴 力 団 員 が 任 侠 道 を 信 奉 することを 理 由 にして 指 定 暴 力 団 と 指 定 することを 定 め ていないから, 同 法 3 条 柱 書 が 原 告 及 びその 構 成 員 を, 暴 力 団 と 指 定 して 任 侠 道 を 信 奉 する 団 体 であることを 理 由 に 社 会 的 に 差 別 する ものであることを 理 由 とする 原 告 の 違 憲 主 張 は,その 前 提 を 欠 く b 暴 対 法 3 条 1 号 に 関 する 主 張 について 上 記 第 2の2の 関 係 法 令 の 定 めのとおり, 暴 対 法 3 条 1 号 は, 目 的 の 内 容 につき 具 体 性 をもって 規 定 しており, 具 体 的 場 合 に 通 常 の 判 断 能 力 を 有 する 一 般 人 の 理 解 において 同 号 の 目 的 に 該 当 するか どうかの 判 断 をすることができるものであるから, 同 号 は, 何 の 客 観 的 基 準 もなく 恣 意 的 に 要 件 該 当 性 を 判 断 することになる 指 定 要 件 を 定 めたものではないから, 原 告 の 違 憲 主 張 は,その 前 提 を 欠 く c 暴 対 法 3 条 2 号 に 関 する 主 張 について 24

(a) 犯 罪 経 歴 保 有 者 については, 暴 対 法 3 条 2 号 柱 書 において, 同 号 イないしヘのいずれかに 該 当 する 者 をいうと 規 定 し, 同 号 イな いしヘにおいて, 個 別 具 体 的 に 犯 罪 経 歴 保 有 者 に 当 たる 者 を 定 めて おり,これらの 規 定 中 に 抽 象 的 ないし 不 確 定 概 念 はなく,この 規 定 内 容 により 犯 罪 経 歴 保 有 者 であるかどうかが 一 義 的 に 判 断 できるも のであるから, 犯 罪 経 歴 保 有 者 に 関 して 同 号 が 曖 昧 な 文 言 をもって 不 利 益 処 分 の 要 素 としていることを 前 提 とする 原 告 の 違 憲 主 張 は, その 前 提 を 欠 く (b) 上 記 第 2の2の 関 係 法 令 の 定 めのとおり, 暴 対 法 3 条 2 号 は, 同 号 において, 暴 対 法 施 行 令 1 条 に 委 任 する 犯 罪 経 歴 保 有 者 の 人 数 の 比 率 の 内 容, 定 め 方 について 規 定 しており, 当 該 比 率 は,いわゆる 二 項 分 布 という 確 率 計 算 の 方 法 に 基 づいて 算 定 することとされてい るから, 暴 対 法 3 条 2 号 は, 同 条 の 指 定 の 要 件 となる 犯 罪 経 歴 保 有 者 の 人 数 の 比 率 について 政 令 に 白 紙 委 任 するものとはいえず, 同 法 3 条 2 号 が 同 条 の 指 定 の 要 件 を 政 令 に 白 紙 委 任 していることを 前 提 とする 原 告 の 違 憲 主 張 は,その 前 提 を 欠 く (c) 原 告 は, 暴 対 法 3 条 2 号 が 犯 罪 経 歴 保 有 者 をその 社 会 的 身 分 により 差 別 するものであり 憲 法 14 条 に 違 反 する 旨 主 張 するが, 原 告 の 上 記 主 張 が, 暴 対 法 3 条 2 号 が 犯 罪 経 歴 保 有 者 である 原 告 の 構 成 員 に 対 する 取 扱 いが 当 該 構 成 員 の 利 益 を 侵 害 する 規 定 であるとい う 趣 旨 で 憲 法 14 条 違 反 を 主 張 するものであれば, 原 告 の 法 律 上 の 利 益 に 関 係 のない 違 法 を 理 由 とするものに 当 たり, 行 訴 法 10 条 1 項 により 本 件 において 上 記 主 張 は 許 されない また, 原 告 の 上 記 主 張 が, 暴 対 法 3 条 2 号 が, 暴 力 団 について,その 構 成 員 の 中 に 一 定 の 比 率 を 超 える 犯 罪 経 歴 保 有 者 を 有 する 団 体 であるとし, 他 の 団 体 と 区 別 して 同 条 の 指 定 の 対 象 とすることが 差 別 的 取 扱 いに 当 たると 25

する 趣 旨 で 憲 法 14 条 違 反 を 主 張 するものであるとしても, 憲 法 1 4 条 は, 国 民 に 対 する 絶 対 的 な 平 等 の 取 扱 いを 保 障 したものではな く, 合 理 的 な 理 由 なくして 差 別 することを 禁 止 する 趣 旨 であるから, 事 実 上 の 差 異 に 相 応 して 合 理 的 に 法 的 取 扱 いを 区 別 することは, 憲 法 14 条 に 反 するものではないものであるところ, 暴 対 法 3 条 2 号 は, 同 法 による 規 制 対 象 となるのが 暴 力 団 の 構 成 員 である 暴 力 団 員 であり,その 暴 力 団 員 を 特 定 する 手 法 として 採 られた 暴 力 団 の 指 定 において, 一 般 的 に 暴 力 団 の 構 成 員 に 暴 力 的 不 法 行 為 等 に 係 る 犯 罪 を 犯 した 者 が 著 しく 多 く 含 まれているという 暴 力 団 の 特 性 に 着 目 し, これを 要 件 として, 同 要 件 に 該 当 する 暴 力 団 だけを 指 定 することと したものであり,このような 取 扱 いには 合 理 的 な 理 由 があるという ことができるから,これが 憲 法 14 条 に 違 反 するものとはいえない (d) 暴 対 法 3 条 2 号 に 規 定 する 幹 部 とは, 同 条 3 号 の 要 件 とされ ている 階 層 的 組 織 構 成 の 上 層 部 にある 者 を 意 味 し,その 範 囲 につい ては, 国 家 公 安 委 員 会 規 則 において 定 める 要 件 に 該 当 する 者 と し,その 国 家 公 安 委 員 会 規 則 である 暴 対 法 施 行 規 則 2 条 1 号 ないし 3 号 において, 幹 部 に 当 たる 者 の 要 件 を 具 体 的 に 定 めており,その 要 件 該 当 性 は, 通 常 の 判 断 能 力 を 有 する 一 般 人 の 理 解 において 合 理 的 に 判 断 できるものであるから, 暴 対 法 3 条 2 号 の 幹 部 の 要 件 が 不 明 確 であるとはいえないのであり, 同 要 件 が 不 明 確 であること を 前 提 とする 原 告 の 違 憲 主 張 は,その 前 提 を 欠 く (e) 原 告 は, 暴 対 法 3 条 2 号 がその 属 する 集 団 の 人 数 の 多 少 により 犯 罪 経 歴 保 有 者 比 率 の 区 分 を 設 けることは 根 拠 も 関 連 性 も 合 理 性 もな く, 憲 法 14 条 1 項,21 条 1 項 に 違 反 する 旨 主 張 するが, 原 告 の 主 張 は 根 拠 も 関 連 性 も 合 理 性 もない という 根 拠 が 全 く 不 明 であ る 暴 対 法 3 条 2 号 は, 上 記 (c)のとおり, 暴 力 団 の 特 性 に 着 目 し, 26

これを 要 件 として, 同 要 件 に 該 当 する 暴 力 団 だけを 指 定 し, 暴 力 団 以 外 の 団 体 が 指 定 されないようにするものであり, 同 号 に 定 める 犯 罪 経 歴 保 有 者 の 比 率 の 要 件 は, 暴 力 団 と 暴 力 団 以 外 の 団 体 とを 区 別 する 客 観 的 かつ 明 確 な 基 準 を 措 定 したものであるため, 同 号 は, 構 成 員 又 は 幹 部 の 中 に 一 定 の 比 率 を 超 える 犯 罪 経 歴 保 有 者 がいる 団 体 であることを 要 件 とし, 当 該 比 率 は,いわゆる 二 項 分 布 という 確 率 計 算 の 方 法 に 基 づいて 算 定 することとされており, 暴 力 団 以 外 の 集 団 であれば,その 構 成 員 の 犯 罪 経 歴 保 有 者 の 比 率 が 同 条 に 定 める 比 率 以 上 になることが 現 実 的 にあり 得 ないといえるだけの 確 率 を 持 っ た 比 率 を 定 めたものであるから, 同 号 の 犯 罪 経 歴 保 有 者 比 率 の 定 め には, 暴 力 団 と 暴 力 団 以 外 の 団 体 との 区 別 をする 基 準 として 客 観 的 な 基 準 であり, 同 条 の 指 定 をする 上 で 上 記 の 区 別 をするための 十 分 な 関 連 性, 合 理 性 が 認 められるものであるのであり, 原 告 の 違 憲 主 張 は,その 前 提 を 欠 く (f) 原 告 は, 暴 対 法 3 条 2 号 は 恩 赦 の 場 合 や 刑 の 執 行 猶 予 期 間 が 経 過 した 者 等 刑 の 言 渡 しの 効 力 が 消 滅 した 者 を 犯 罪 経 歴 保 有 者 であ るとするものであるから, 憲 法 14 条 1 項 に 違 反 する 旨 主 張 するが, その 根 拠 は 不 明 である 仮 に 原 告 の 上 記 主 張 が, 犯 罪 経 歴 保 有 者 で ある 原 告 の 構 成 員 に 対 する 取 扱 いが 構 成 員 の 利 益 を 侵 害 するという 意 味 で 平 等 原 則 違 反 である 旨 の 主 張 である 場 合 には, 原 告 の 法 律 上 の 利 益 に 関 係 のない 違 法 を 言 うものであり, 行 訴 法 10 条 1 項 によ り, 本 件 において 上 記 主 張 は 許 されない この 点 を 措 くとしても, 犯 罪 経 歴 保 有 者 の 比 率 の 要 件 は, 暴 力 団 の 構 成 員 には 一 定 の 犯 罪 行 為 を 行 った 者 が 著 しく 多 いという 事 実 に 着 目 して, 当 該 事 実 を 暴 対 法 3 条 の 指 定 の 要 件 とするものであるから,その 比 率 の 算 定 に 当 た り, 恩 赦 や 執 行 猶 予 期 間 の 経 過 により 刑 の 言 渡 しの 効 力 が 消 滅 した 27

者 をも 犯 罪 経 歴 保 有 者 に 含 めることには 十 分 に 合 理 性 があるのであ り, 同 要 件 を 定 めていることが 憲 法 14 条 に 違 反 する 理 由 となるも のではない d 暴 対 法 3 条 3 号 に 関 する 主 張 について 暴 対 法 3 条 3 号 は, 暴 力 団 が, 組 長, 総 長,あるいは 会 長 などの 名 称 で 呼 ばれる 最 上 位 に 位 置 する 者 の 統 制 の 下 に, 様 々な 役 職, 地 位 が 定 められ,そのうち 同 等 の 者 の 集 団 が 一 つの 階 層 をなし,その 他 の 階 級 集 団 とそれぞれの 地 位 に 基 づき 段 階 的 な 階 層 をなして 構 成 されてい る 団 体 であるという 特 徴 を 有 する 点 を 捉 えて,この 特 徴 を 有 すること を 要 件 とするものであり, その 運 営 を 支 配 する 地 位 にある 者 とは, その 法 文 から 明 らかなとおり, 団 体 を 統 制 している 者 を 意 味 するもの であるから, 同 号 の その 運 営 を 支 配 する 地 位 にある 者 の 意 義 は, その 規 定 自 体 から 明 確 なものということができ,その 者 の 該 当 性 は, 通 常 の 判 断 能 力 を 有 する 一 般 人 の 理 解 において 合 理 的 に 判 断 できるも のである したがって, 同 号 の 上 記 記 載 部 分 の 規 定 が 不 明 確 であるこ とを 前 提 とする 原 告 の 違 憲 の 主 張 は,その 前 提 を 欠 く e 暴 対 法 5 条 は, 行 政 処 分 の 相 手 方 に 十 分 な 事 前 の 告 知, 弁 解, 防 御 の 機 会 を 与 える 規 定 であり, 憲 法 31 条 に 違 反 するものではない f 暴 対 法 9 条 が 違 憲 である 旨 の 原 告 の 主 張 はこれが 本 件 訴 訟 との 関 係 でいかなる 法 的 意 味 をもつ 主 張 であるのか 明 らかでなく,この 点 において 既 に 主 張 自 体 失 当 であるが,この 点 を 措 くとしても, 暴 対 法 9 条 においては, 禁 止 される 行 為 は 飽 くまで 指 定 暴 力 団 等 の 威 力 を 示 して される 反 社 会 的 な 行 為 に 限 定 されており,また,その 内 容 は 同 条 各 号 に 明 確 に 規 定 されているのであるから, 罪 刑 法 定 主 義 や 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 するものではない (ウ) 暴 対 法 30 条 の8の 違 憲 主 張 ( 原 告 の 主 張 ア(ウ))について 28

a 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 に 関 する 主 張 について (a) 明 確 性 の 原 則 違 反 等 の 主 張 について 1 原 告 は, 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 の おそれ の 文 言 が 不 明 確 であり, 特 定 危 険 指 定 処 分 の 構 成 要 件 が 不 明 確 である 旨 主 張 する が, 一 般 に, 法 律 の 規 定 が 不 明 確 であるか 否 かは, 通 常 の 判 断 能 力 を 有 する 一 般 人 の 理 解 において, 具 体 的 場 合 にその 規 定 が 適 用 されて,そこで 定 める 行 為 規 制 を 受 けるものかどうかの 判 断 を 可 能 ならしめるような 基 準 が 読 み 取 れるかどうかによってこれを 決 定 すべきである そして, 特 定 危 険 指 定 処 分 の 処 分 要 件 は,1 暴 力 行 為 要 件 と2おそれ 要 件 とを 満 たす 必 要 があるが,これらの 処 分 要 件 に 関 する 規 定 は,その 法 文 上 具 体 的 に 定 められているから, 通 常 の 判 断 能 力 を 有 する 一 般 人 において, 上 記 各 要 件 を 充 足 して いるかどうかについて 理 解 することは 十 分 に 可 能 である おそ れ 要 件 についての 処 分 行 政 庁 の 認 定 は, 暴 対 法 1 条 に 定 める 目 的 を 踏 まえ, 必 要 かつ 合 理 的 な 範 囲 で 行 われるべきものであって, 処 分 行 政 庁 の 恣 意 的 運 用 を 許 すものではないし, 特 定 危 険 指 定 処 分 を 行 う 場 合 は, 意 見 の 聴 取 を 必 要 とするとして 手 続 的 保 障 規 定 が 設 けられており( 同 法 30 条 の8 第 4 項,5 条 ), 公 安 委 員 会 が 特 定 危 険 指 定 処 分 をするに 当 たって 恣 意 的 な 運 用 を 許 すもので はないから, 原 告 の 主 張 には 理 由 がない 2 また, 原 告 は, 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 の 警 戒 を 要 する 区 域 の 文 言 が 不 明 確 である 旨 主 張 するが, 警 戒 区 域 は,おそれ 要 件 を 充 足 する 場 合,すなわち, 指 定 暴 力 団 員 等 により 一 般 市 民 の 生 命 身 体 に 重 大 な 危 害 が 加 えられるおそれがある 場 合 にそのおそれの ある 区 域 として 定 めるものであり,かかる 暴 対 法 の 目 的 や 指 定 要 件 との 関 係 で 必 要 的 かつ 合 理 的 な 範 囲 と 認 められる 区 域 ( 具 体 的 29

には, 当 該 区 域 について, 暴 力 行 為 やその 前 提 となる 暴 力 的 要 求 行 為 等 又 は 請 求 妨 害 行 為 を 行 った 指 定 暴 力 団 員 及 びその 所 属 組 織 の 活 動 拠 点 や 資 金 獲 得 活 動 等 の 状 況, 当 該 団 体 や 組 織 が 関 与 する 過 去 の 同 種 事 案 の 発 生 状 況 等 に 基 づいて 判 断 される )が 警 戒 区 域 として 定 められるものであるから, 警 戒 区 域 の 指 定 に 当 た って 処 分 行 政 庁 の 恣 意 を 許 すものではない また, 警 戒 区 域 は 特 定 危 険 指 定 処 分 において 定 めるものであるから, 上 記 1のとおり, その 定 めをするに 当 たっては 意 見 の 聴 取 が 必 要 的 に 行 われること になっており,この 点 においても, 処 分 行 政 庁 の 恣 意 を 許 すもの ではないから, 原 告 の 主 張 には 理 由 がない (b) 結 社 の 自 由 侵 害 の 主 張 について 特 定 危 険 指 定 処 分 は, 暴 力 団 としての 活 動 一 切 を 禁 止 したり, 暴 力 団 という 団 体 の 解 散 を 命 令 するものではなく, 指 定 された 暴 力 団 の 構 成 員 の 行 為 のうち, 一 定 の 反 社 会 的 行 為 を 禁 止 するにすぎない から, 結 社 の 自 由 を 直 接 制 約 するものではない また, 特 定 危 険 指 定 処 分 を 結 社 の 自 由 に 対 する 制 約 であると 捉 え たとしても, 憲 法 21 条 1 項 が 保 障 する 結 社 の 自 由 は,あらゆる 場 合 に 無 制 限 に 保 障 されるものではなく, 公 共 の 福 祉 による 必 要 かつ 合 理 的 な 制 限 を 受 けることがあるのはいうまでもなく,このような 結 社 の 自 由 に 対 する 制 約 が 必 要 かつ 合 理 的 なものとして 是 認 される かどうかは, 制 限 が 必 要 とされる 程 度 と, 制 限 される 自 由 の 性 質 及 び 内 容,これに 加 えられる 具 体 的 な 制 限 の 態 様 及 び 程 度 等 を 総 合 衡 量 して 決 めるのが 相 当 である( 利 益 較 量 論 ) そして, 特 定 危 険 指 定 処 分 による 結 社 の 自 由 に 対 する 制 約 が 必 要 かつ 合 理 的 なものかど うかを 見 てみるに,まず, 制 限 の 必 要 性 については, 指 定 暴 力 団 員 によるものと 思 われる 一 般 市 民 の 生 命 身 体 に 対 する 重 大 な 危 害 を 及 30

ぼす 危 険 な 暴 力 行 為 が 繰 り 返 し 発 生 していた 状 況 において, 一 般 市 民 の 生 命 身 体 を 保 護 するため, 特 定 危 険 指 定 処 分 により 指 定 暴 力 団 に 対 してより 強 度 の 規 制 を 行 う 必 要 が 生 じたというものである ま た, 特 定 危 険 指 定 処 分 の 効 果 は,1 警 戒 区 域 において, 暴 対 法 9 条 に 定 める 暴 力 的 要 求 行 為 又 は 同 法 30 条 の2の 規 定 に 違 反 する 行 為 を 行 った 場 合 に 当 該 指 定 暴 力 団 の 構 成 員 は 処 罰 される( 同 法 46 条 3 号 ),2 警 戒 区 域 において, 暴 力 的 要 求 行 為 を 行 う 目 的 での 面 会 要 求 等 を 行 うことが 禁 止 され( 同 法 30 条 の9),これに 違 反 した 指 定 暴 力 団 員 に 対 しては 中 止 命 令 等 が 発 出 される( 同 法 30 条 の1 0),3 警 戒 区 域 内 における 当 該 暴 力 団 の 事 務 所 について 一 定 の 場 合 に3 月 以 内 の 期 間 を 定 めて 使 用 制 限 命 令 を 発 出 することができる ( 同 法 30 条 の11)などというものである これらの 効 果 を 結 社 の 自 由 に 対 する 制 限 の 関 係 で 整 理 すると,1において 禁 止 される 指 定 暴 力 団 員 の 行 為 は, 処 罰 に 当 たって 中 止 命 令 を 経 ることが 必 要 か 否 かの 差 異 はあるものの, 特 定 危 険 指 定 処 分 の 有 無 にかかわらず, そもそも 暴 対 法 で 禁 止 されている 行 為 であるし,また,2において 禁 止 される 指 定 暴 力 団 員 の 行 為 は, 特 定 危 険 指 定 処 分 に 伴 って 禁 止 される 行 為 であるが,これに 違 反 した 場 合, 中 止 命 令 が 発 せられる のであり, 直 ちに 処 罰 されるわけではない 上,3は 特 定 危 険 指 定 処 分 に 伴 う 規 制 ではなく, 同 処 分 後 に, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 事 務 所 を, 同 法 30 条 の8 第 1 項 の 暴 力 行 為 に 関 し, 構 成 員 の 多 数 の 集 合 の 用 に 供 していたり, 暴 力 行 為 のための 謀 議 の 用 に 供 しているこ となどを 要 件 として 行 われる 規 制 である 特 定 危 険 指 定 処 分 により 生 ずる 上 記 の 規 制 は,その 処 分 要 件 を 充 足 すると 認 められる 状 況 下 においては, 警 戒 区 域 における 一 般 市 民 の 生 命 身 体 を 保 護 するため に 必 要 なものであることは 明 らかというべきであり,また, 規 制 の 31

態 様 及 び 程 度 は 上 記 のとおりのものであり,これが 一 般 市 民 の 生 命 身 体 を 保 護 するという 規 制 目 的 との 関 係 で 過 度 なものとは 到 底 いえ ず, 合 理 的 な 規 制 の 態 様 及 び 程 度 の 範 囲 内 のものである したがっ て, 同 法 30 条 の8 第 1 項 の 規 定 は 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 するとは いえない b 暴 対 法 30 条 の8 第 2 項 に 関 する 主 張 について 本 件 処 分 は, 暴 対 法 30 条 の8 第 1 項 に 基 づく 特 定 危 険 指 定 処 分 で あり, 同 条 2 項 の 規 定 の 違 憲 性 は, 本 件 処 分 の 効 力 に 何 ら 影 響 を 及 ぼ すものではないから, 原 告 の 同 項 の 違 憲 主 張 は, 本 件 処 分 の 適 否 に 関 係 しない 暴 対 法 の 規 定 の 違 憲 をいうものであり, 主 張 自 体 失 当 である また,この 点 を 措 くとしても, 下 記 (6)の 被 告 の 主 張 のとおり, 原 告 の 暴 対 法 30 条 の8 第 2 項 に 関 する 憲 法 21 条 1 項 違 反 の 主 張, 憲 法 31 条 違 反 の 主 張 には 理 由 がない c 暴 対 法 30 条 の8 第 3 項 に 関 する 主 張 について 本 件 処 分 は, 特 定 危 険 指 定 処 分 として 初 めてされた 処 分 であり, 暴 対 法 30 条 の8 第 3 項 に 基 づく 警 戒 区 域 の 変 更 は 何 らされていないか ら, 同 項 の 規 定 の 違 憲 性 は, 本 件 処 分 の 効 力 に 何 ら 影 響 を 及 ぼすもの ではなく, 原 告 の 同 項 の 違 憲 主 張 は 本 件 処 分 の 適 否 に 関 係 しない 暴 対 法 の 規 定 の 違 憲 をいうものとして 主 張 自 体 失 当 である 暴 対 法 30 条 の8 第 3 項 は, 同 条 1 項 の 特 定 危 険 指 定 処 分 を 受 けて 規 定 されているものであり, 同 条 3 項 に 規 定 する 警 戒 区 域 変 更 の 必 要 性 がある 場 合 とは, 同 条 1 項 に 規 定 する 警 戒 区 域 を 定 める 場 合 におけ るその 区 域 に 組 み 入 れる 範 囲 に 係 る 判 断 と 同 様 に 解 するものであるこ とが 明 らかというべきである そして, 同 項 に 規 定 する 警 戒 区 域 を 定 める 場 合 におけるその 区 域 に 組 み 入 れる 範 囲 に 係 る 判 断 が 不 明 確 なも のでも 恣 意 的 になるものでもないことは, 上 記 a(a)2のとおりである 32

から, 同 条 3 項 は, 警 戒 区 域 変 更 の 必 要 性,すなわち 変 更 する 警 戒 区 域 の 範 囲 の 判 断 をするについて, 同 条 1 項 に 定 める 警 戒 区 域 を 定 める 場 合 におけるその 区 域 に 組 み 入 れる 範 囲 の 判 断 と 同 様 に, 処 分 行 政 庁 の 恣 意 的 判 断 を 許 すものではない したがって, 同 条 3 項 の 警 戒 区 域 の 変 更 が 公 安 委 員 会 に 恣 意 的 判 断 をする 権 限 を 与 えていることを 前 提 とする 原 告 の 上 記 違 憲 の 主 張 は,その 前 提 を 欠 く d 暴 対 法 30 条 の8 第 4 項 に 関 する 主 張 について 暴 対 法 5 条 2 項 は, 同 条 1 項 の 意 見 聴 取 を 行 う 場 合 において, 公 安 委 員 会 が, 指 定 に 係 る 暴 力 団 を 代 表 する 者 又 はこれに 代 わるべき 者 に 対 し, 指 定 をしようとする 理 由 等 を 相 当 の 期 間 をおいて 通 知 するなど しなければならない 旨 定 めているところ,この 趣 旨 は, 指 定 をしよう とする 理 由 等 を 相 当 の 期 間 をおいて 事 前 に 通 知 することによって,3 条 指 定 処 分 の 適 正 を 図 る 趣 旨 で 設 けられた 意 見 聴 取 に 向 けて, 同 条 各 号 の 要 件 該 当 性 の 有 無 について 指 定 対 象 者 に 意 見 及 び 証 拠 提 出 の 準 備 をさせ, 実 質 的 に 攻 撃 防 御 を 行 うことができるようにすることにある したがって, 暴 対 法 5 条 は, 行 政 処 分 の 相 手 方 に 十 分 な 事 前 の 告 知, 弁 解, 防 御 の 機 会 を 与 える 規 定 であり, 憲 法 31 条 に 違 反 するもので はないから, 暴 対 法 5 条 が 憲 法 31 条 に 違 反 するものであることを 前 提 として 暴 対 法 30 条 の8 第 4 項 が 憲 法 31 条 に 違 反 するとの 原 告 の 主 張 は,その 前 提 を 欠 く e 暴 対 法 30 条 の8 第 7 項 に 関 する 主 張 について 原 告 の 暴 対 法 30 条 の8 第 7 項 の 違 憲 主 張 は 本 件 処 分 の 適 否 に 関 係 しない 法 の 規 定 の 違 憲 をいうものとして 主 張 自 体 失 当 である また,この 点 を 措 くとしても, 暴 対 法 30 条 の8 第 7 項 が 予 定 して いる 事 態 が 生 じる 場 合 には, 新 たに 特 定 危 険 指 定 処 分 がされたものと みなされるのではなく, 既 にされている 有 効 な 特 定 危 険 指 定 処 分 がそ 33

のまま 効 力 を 有 することになるだけであるから, 原 告 がいうように 特 定 危 険 指 定 処 分 の 要 件 該 当 性 の 審 査 なく, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 とし て 扱 われるものではないのであり, 原 告 の 違 憲 の 主 張 は,その 前 提 を 欠 く f 暴 対 法 30 条 の9 及 び30 条 の10に 関 する 主 張 について (a) 暴 対 法 30 条 の9 及 び30 条 の10の 規 定 の 明 確 性 に 関 する 主 張 について 1 原 告 は, 暴 対 法 30 条 の9の 要 件 となる 目 的, つきまと い, うろつく 等 の 文 言, 同 法 30 条 の10 第 2 項 の 必 要 な 事 項 の 文 言 が 不 明 確 であるから, 憲 法 31 条 に 違 反 する 旨 主 張 するが, 同 法 30 条 の9 柱 書 の 暴 力 的 要 求 行 為 を 行 う 目 的 については,その 目 的 の 内 容 となる 暴 力 的 要 求 行 為 の 具 体 的 な 内 容 が 同 法 9 条 において 法 定 されているのであるから,その 目 的 の 有 無 についても, 通 常 の 判 断 能 力 を 有 する 一 般 人 の 理 解 にお いて 合 理 的 に 判 断 できるものであり, 不 明 確 とはいえない また, 暴 対 法 30 条 の9は, 一 般 市 民 の 生 命 身 体 に 対 する 重 大 な 危 害 が 生 じるおそれがあるという 特 定 危 険 指 定 処 分 の 処 分 要 件 を 充 足 す る 状 況 下 において 同 処 分 を 受 けた 暴 力 団 の 構 成 員 の 一 定 の 行 為 を 禁 止 するものであるところ, 同 条 3 号 で 使 われている つきまと い, うろつく は,ストーカー 規 制 法, 売 春 防 止 法 ( 昭 和 3 1 年 法 律 第 118 号 ), 軽 犯 罪 法 ( 昭 和 23 年 法 律 第 39 号 ), 配 偶 者 からの 暴 力 の 防 止 及 び 被 害 者 の 保 護 等 に 関 する 法 律 ( 平 成 13 年 法 律 第 31 号 ) 等 において 法 律 の 文 言 として 用 いられてい るものであって, 一 定 の 行 為 態 様 を 表 す 用 語 であり, 暴 対 法 30 条 の9 柱 書 と 併 せて 読 めば, 暴 力 的 要 求 行 為 を 行 う 目 的 で 行 うも のに 限 定 されたものとして, 不 明 確 なものということはできない 34

また, 同 法 30 条 の10 第 2 項 が 規 定 する 必 要 な 事 項 を 命 ずる とは, 暴 力 団 の 構 成 員 が 行 うおそれが 認 められる 同 法 30 条 の9 各 号 の 面 会 要 求 行 為 等 とそれを 防 ぐという 目 的 との 関 係 で 必 要 か つ 合 理 的 な 内 容 といえる 事 項 が 命 じられるものであるから, 内 容 が 明 らかでないとはいえないし, 特 定 危 険 指 定 処 分 を 受 けた 暴 力 団 の 構 成 員 が 同 条 各 号 に 規 定 する 行 為 に 及 ぶ 方 法 は 様 々であって, これを 効 果 的 に 防 ぐ 方 法 もまた 様 々であることからすると, 防 止 方 法 をあらかじめ 法 律 で 画 一 的 に 定 めておいたのでは, 一 般 市 民 の 生 命 身 体 の 保 護 という 暴 対 法 の 目 的 を 達 成 することは 極 めて 困 難 であるから, 実 際 に 暴 力 的 要 求 行 為 を 目 的 とする 面 会 要 求 等 の 行 為 が 行 われた 状 況 に 対 応 した 措 置 を 講 じることができるような 立 法 をすることはやむを 得 ないというべきである したがって, 暴 対 法 30 条 の9 及 び30 条 の10の 規 定 が 不 明 確 であるとはい えず, 憲 法 31 条 に 違 反 するとはいえない 2 また, 原 告 は, 暴 対 法 30 条 の9 及 び30 条 の10が 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 する 旨 主 張 するが, 上 記 a(b)のとおり, 結 社 の 自 由 に 対 する 制 約 が 必 要 かつ 合 理 的 なものとして 是 認 されるかどうか は, 制 限 が 必 要 とされる 程 度 と, 制 限 される 自 由 の 性 質 及 び 内 容, これに 加 えられる 具 体 的 な 制 限 の 態 様 及 び 程 度 等 を 総 合 衡 量 して 決 めるのが 相 当 であるところ, 暴 対 法 30 条 の9 及 び30 条 の1 0は, 特 定 危 険 指 定 処 分 に 伴 う 措 置 であるところ, 同 処 分 がされ る 状 況 下 ( 同 法 30 条 の8 第 1 項 参 照 )において, 同 処 分 の 対 象 となった 暴 力 団 の 構 成 員 が, 同 法 30 条 の9に 定 める 面 会 要 求 行 為 等 を 行 うことは, 第 三 者 の 生 命 身 体 に 重 大 な 危 害 が 生 じるおそ れが 高 く,そのような 行 為 を 禁 止 する 必 要 性 は 高 いことから, 同 法 30 条 の9 及 び30 条 の10の 規 定 が 設 けられたものであり, 35

これらの 規 定 が 一 般 市 民 の 生 命 等 に 重 大 な 危 害 を 加 える 暴 力 行 為 を 抑 止 するという 立 法 目 的 との 関 係 で 合 理 的 な 関 連 性 を 有 してい ることは 明 らかである そして, 上 記 各 規 定 による 措 置 の 効 果 と しての 上 記 行 為 の 禁 止 の 態 様 は,これに 違 反 した 場 合, 直 ちに 処 罰 の 対 象 とするのではなく, 公 安 委 員 会 による 中 止 命 令 等 の 対 象 にとどめ, 同 命 令 に 違 反 した 場 合 に 初 めて 処 罰 すべきものとする 事 後 的 かつ 段 階 的 規 制 の 手 法 を 採 っているのであり,これが 一 般 市 民 の 生 命 身 体 を 保 護 するという 規 制 目 的 との 関 係 で 過 度 のもの とは 到 底 いえず, 合 理 的 な 規 制 の 態 様 及 び 程 度 の 範 囲 内 のもので ある したがって, 暴 対 法 30 条 の9 及 び30 条 の10の 規 定 に よる 規 制 は 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 するとはいえない (b) 暴 対 法 30 条 の9 第 1 号 に 関 する 主 張 について 原 告 が 主 張 する 誰 と 面 会 し 交 流 するかにつき 公 権 力 の 介 入 を 受 け ないという 利 益 が 憲 法 上 保 障 される 旨 最 高 裁 判 決 によって 判 示 され たわけではない この 点 を 措 くとしても, 上 記 (a)のとおり, 暴 対 法 30 条 の9 第 1 号 による 暴 力 的 要 求 行 為 を 行 う 目 的 での 面 会 要 求 の 規 制 は, 規 制 の 必 要 性 が 高 い 一 方,このような 面 会 を 要 求 する 行 為 自 体, 法 的 保 護 に 値 するものとは 言 い 難 い 上,その 規 制 態 様 は, 一 般 市 民 の 生 命 等 に 重 大 な 危 害 を 加 える 暴 力 行 為 を 抑 止 するという 規 制 目 的 との 関 係 で 過 度 のものとは 到 底 いえず, 合 理 的 な 規 制 の 態 様 及 び 程 度 の 範 囲 内 のものであることからすれば, 憲 法 13 条 及 び21 条 1 項 に 違 反 するとはいえない (c) 暴 対 法 30 条 の9 第 2 号 に 関 する 主 張 について 暴 対 法 30 条 の9 第 2 号 による 暴 力 的 要 求 行 為 を 行 う 目 的 での 電 話 をかけること 等 の 規 制 は, 規 制 の 必 要 性 が 高 い 一 方,このような 36

電 話 をかけること 等 は 法 的 保 護 に 値 するものとは 言 い 難 い 上,その 規 制 態 様 は, 一 般 市 民 の 生 命 等 に 重 大 な 危 害 を 加 える 暴 力 行 為 を 抑 止 するという 規 制 目 的 との 関 係 で 過 度 のものとは 到 底 いえず, 合 理 的 な 規 制 の 態 様 及 び 程 度 の 範 囲 内 のものであることからすれば, 原 告 が 主 張 するように 明 白 かつ 現 在 の 危 険 の 原 則 の 判 断 基 準 が 採 用 されるべきものとはいえず, 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 するともいえ ない (d) 暴 対 法 30 条 の9 第 3 号 に 関 する 主 張 について 暴 対 法 30 条 の9 第 3 号 による 暴 力 的 要 求 行 為 を 行 う 目 的 でのつ きまとい 等 の 規 制 は, 規 制 の 必 要 性 が 高 い 一 方,このようなつきま とい 等 は 法 的 保 護 に 値 するものとは 言 い 難 い 上,その 規 制 態 様 は, 一 般 市 民 の 生 命 等 に 重 大 な 危 害 を 加 える 暴 力 行 為 を 抑 止 するという 規 制 目 的 との 関 係 で 過 度 のものとは 到 底 いえず, 合 理 的 な 規 制 の 態 様 及 び 程 度 の 範 囲 内 のものであることからすれば, 原 告 が 主 張 する ように 明 白 かつ 現 在 の 危 険 の 原 則 の 判 断 基 準 が 採 用 されるべき ものとはいえず, 憲 法 13 条 に 違 反 するともいえない g 暴 対 法 30 条 の11に 関 する 主 張 について (a) 暴 対 法 30 条 の11 第 1 項 及 び2 項 に 定 める 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 事 務 所 の 使 用 制 限, 同 条 3 項 に 定 める 標 章 の 貼 り 付 け 義 務 は, 特 定 危 険 指 定 処 分 そのものによって 生 じるものではなく, 同 条 1 項 に 基 づく 命 令 が 別 途 公 安 委 員 会 からされたことにより 生 じるもので あり, 同 条 2 項 の 当 該 命 令 の 期 限 の 延 長 についても, 同 様 であるか ら, 上 記 各 項 の 規 定 の 違 憲 性 は, 本 件 処 分 の 効 力 に 何 ら 影 響 を 及 ぼ すものではなく, 原 告 の 暴 対 法 30 条 の11の 違 憲 主 張 は 本 件 処 分 の 適 否 に 関 係 しない 同 法 の 規 定 の 違 憲 をいうものとして 主 張 自 体 失 当 である 37

また, 暴 対 法 30 条 の11による 規 制 の 対 象 となるのは, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 事 務 所 に 係 る 管 理 者 又 は 当 該 事 務 所 を 現 に 使 用 し ている 指 定 暴 力 団 員 であって, 原 告 自 身 ではないから, 原 告 には 同 条 による 規 制 の 適 法 性 を 争 う 法 律 上 の 利 益 はなく, 行 訴 法 10 条 1 項 により, 原 告 の 上 記 違 憲 の 主 張 は, 本 件 において 主 張 することが 許 されないものであり, 失 当 である (b) 上 記 (a)の 点 を 措 くとして, 原 告 の 暴 対 法 30 条 の11に 関 する 憲 法 違 反 の 主 張 を 検 討 するに, 原 告 は, 暴 対 法 30 条 の11が 憲 法 29 条 1 項 に 違 反 する 旨 主 張 するところ, 憲 法 29 条 1 項 で 保 障 さ れる 財 産 権 が 公 共 の 福 祉 による 制 約 を 受 けるものであることは, 同 条 2 項 が 明 文 で 規 定 しており, 財 産 権 に 対 する 規 制 が 公 共 の 福 祉 に 適 合 するものとして 是 認 されるべきものであるかどうかは, 規 制 の 目 的, 必 要 性 及 び 内 容, 当 該 規 制 によって 制 限 される 財 産 権 の 種 類, 性 質 及 び 制 限 の 程 度 等 を 比 較 衡 量 して 判 断 すべきものであるとされ ており, 立 法 の 規 制 目 的 が 公 共 の 福 祉 に 合 致 しないことが 明 らかで あるか, 又 は 規 制 目 的 が 公 共 の 福 祉 に 合 致 するものであっても 規 制 手 段 が 目 的 を 達 成 するための 手 段 として 必 要 性 若 しくは 合 理 性 に 欠 けていることが 明 らかであって,そのため 立 法 府 の 判 断 が 合 理 的 裁 量 の 範 囲 を 超 えるものとなる 場 合 に 限 り, 当 該 規 制 立 法 が 憲 法 29 条 2 項 に 違 背 するものとして,その 効 力 を 否 定 されるものと 解 され る そして, 暴 対 法 30 条 の11 第 1 項 及 び2 項 は, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 指 定 暴 力 団 員 等 が, 暴 力 的 要 求 行 為 を 拒 絶 した 相 手 方 等 に 対 して 危 険 な 暴 力 行 為 を 反 復 して 行 うおそれがある 場 合 において, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 指 定 暴 力 団 員 等 が 更 なる 暴 力 行 為 を 行 うこ とを 抑 止 し, 人 の 生 命 及 び 身 体 を 保 護 するための 規 制 であり,この 目 的 は 公 共 の 福 祉 に 合 致 するものといえ, 他 方,この 規 制 は, 上 記 38

のような 危 険 な 暴 力 行 為 が 反 復 して 行 われるおそれがある 場 合 にお いて, 警 戒 区 域 内 に 在 る 事 務 所 が, 当 該 暴 力 行 為 の 謀 議 等 の 用 に 供 され, 又 はそのおそれがあると 認 める 場 合 に 限 り, 当 該 事 務 所 の 使 用 を 制 限 するものであること, 当 該 事 務 所 の 使 用 を 一 切 禁 止 するも のではなく, 特 定 危 険 指 定 暴 力 団 等 の 活 動 の 用 等 に 供 することを 禁 止 するにすぎないこと, 制 限 の 期 間 も, 延 長 の 可 能 性 はあるものの, 3 月 以 内 に 限 られていることなど, 規 制 目 的 を 達 成 するための 手 段 として 過 剰 なものではなく,その 必 要 性 及 び 合 理 性 が 優 に 認 められ るものである したがって, 暴 対 法 30 条 の11 第 1 項 及 び2 項 に 規 定 する 事 務 所 の 使 用 制 限 という 財 産 権 に 対 して 加 えられる 規 制 は, 憲 法 29 条 2 項 の 公 共 の 福 祉 に 適 合 するものとして 是 認 されるべき ものであり, 同 条 に 違 反 するとはいえない (c) また, 原 告 は, 暴 対 法 30 条 の11が 憲 法 21 条 1 項 の 結 社 の 自 由 を 侵 害 する 旨 主 張 するが, 結 社 の 自 由 に 対 する 制 約 が 必 要 かつ 合 理 的 なものとして 是 認 されるかどうかは, 制 限 が 必 要 とされる 程 度 と, 制 限 される 自 由 の 性 質 及 び 内 容,これに 加 えられる 具 体 的 な 制 限 の 態 様 及 び 程 度 等 を 総 合 衡 量 して 決 めるのが 相 当 であるところ, 上 記 (b)の 規 制 の 必 要 性, 態 様 等 に 照 らせば, 暴 対 法 30 条 の11 第 1 項 及 び2 項 に 規 定 する 事 務 所 の 使 用 制 限 は, 集 会 の 自 由 に 対 す る 必 要 最 小 限 度 の 規 制 であり, 公 共 の 福 祉 による 必 要 かつ 合 理 的 な 制 限 であるといえるものであるから, 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 するも のではない (d) さらに, 原 告 は, 暴 対 法 30 条 の11 第 2 項 の 必 要 があるとき という 要 件 が 不 明 確 であることを 理 由 に 憲 法 31 条 違 反 をいうもの とも 解 されるが,この 必 要 があると 認 めるとき とは, 暴 対 法 3 0 条 の11 第 1 項 の 規 定 による 命 令 をした 場 合 においてその 命 令 の 39

有 効 期 間 が 経 過 した 後 も 更 にその 命 令 の 必 要 があると 認 められると きということであることはその 文 言 から 明 らかであって, 同 項 に 定 める 使 用 制 限 の 要 件 を 満 たすことが 認 められることを 意 味 するもの であり,その 要 件 の 充 足 性 は, 通 常 の 判 断 能 力 を 有 する 一 般 人 の 理 解 において 合 理 的 に 判 断 できるものであるから, 不 明 確 であるとは いえない したがって, 暴 対 法 30 条 の11 第 2 項 に 定 める 要 件 が 不 明 確 であることを 前 提 とする 原 告 の 上 記 違 憲 の 主 張 は,その 前 提 を 欠 く (e) 原 告 は, 暴 対 法 30 条 の11 第 3 項 が, 標 章 を 貼 り 付 ける 旨 規 定 している 点 が 不 利 益 処 分 を 受 けていることの 表 示 の 強 制 であり, 不 利 益 供 述 の 強 要 であることから, 憲 法 38 条 に 違 反 する 旨 主 張 する が, 標 章 を 貼 り 付 けるのは 公 安 委 員 会 であり,この 標 章 の 貼 り 付 け 行 為 が 憲 法 38 条 1 項 にいう 自 己 に 不 利 益 な 供 述 の 強 要 と 解 する 余 地 はなく, 他 に 当 該 強 要 と 評 価 し 得 る 事 情 はないから, 原 告 の 上 記 違 憲 の 主 張 は 理 由 がない (エ) その 他 罰 則 等 の 暴 対 法 の 各 条 項 の 違 憲 主 張 ( 原 告 の 主 張 ア(エ))に ついて a 暴 対 法 33 条 及 び49 条 の 違 憲 主 張 について (a) 暴 対 法 33 条 は, 特 定 危 険 指 定 処 分 の 手 続 上 及 び 実 体 上 の 要 件 を 定 める 規 定 ではなく, 同 処 分 に 係 る 法 律 関 係 とは 別 個 のものである し, 同 法 49 条 の 処 罰 規 定 は, 本 件 処 分 である 特 定 危 険 指 定 処 分 に 関 する 罰 則 を 定 めるものではないから, 上 記 各 条 項 の 規 定 の 違 憲 性 は, 本 件 処 分 の 効 力 に 何 ら 影 響 を 及 ぼすものではないのであり, 原 告 の 上 記 各 条 項 の 違 憲 主 張 は 本 件 処 分 の 適 否 に 関 係 しない 暴 対 法 の 規 定 の 違 憲 をいうものとして 主 張 自 体 失 当 である また, 暴 対 法 49 条 の 規 定 による 罰 則 の 対 象 となるのは, 原 告 の 40

構 成 員 であって, 原 告 自 身 ではないから, 原 告 には 同 条 による 罰 則 の 適 法 性 を 争 う 法 律 上 の 利 益 はないのであり, 行 訴 法 10 条 1 項 に より 原 告 の 上 記 違 憲 の 主 張 は, 本 件 において 主 張 することが 許 され ないものであり, 失 当 である (b) 上 記 (a)の 点 を 措 くとして, 原 告 の 憲 法 違 反 の 主 張 について 検 討 するに, 暴 対 法 33 条 は, 公 安 委 員 会 が 立 入 検 査 等 を 行 うことがで きる 場 合 の 要 件 を, この 法 律 の 施 行 に 必 要 があると 認 めるとき, この 法 律 の 施 行 に 必 要 な 限 度 において と 明 確 に 規 定 した 上 で, その 具 体 的 な 定 めを 国 家 公 安 委 員 会 規 則 に 委 任 しているものであり, 個 別 的 具 体 的 な 委 任 であることから, 憲 法 41 条 及 び73 条 6 号 に 違 反 しない また, 暴 対 法 33 条 に 基 づく 立 入 検 査 は, 相 手 方 の 意 思 に 反 して 物 理 的 実 力 をもって 行 い 得 るものではないのであって,その 拒 否 等 を 罰 則 の 対 象 とすることにより, 間 接 的 にその 実 効 性 を 担 保 してい るにすぎないのであるから, 憲 法 35 条 に 違 反 するとの 原 告 の 主 張 は,その 前 提 を 欠 くものであって 失 当 である (c) また, 原 告 は, 暴 対 法 49 条 が 憲 法 38 条 に 違 反 する 旨 主 張 する が, 憲 法 38 条 による 供 述 拒 否 権 の 保 障 は, 純 然 たる 刑 事 手 続 にお いてばかりでなく,それ 以 外 の 手 続 においても, 対 象 となる 者 が 自 己 の 刑 事 上 の 責 任 を 問 われるおそれのある 事 項 について 供 述 を 求 め ることになるものであって, 実 質 上 刑 事 責 任 追 及 のための 資 料 の 収 集 に 直 接 結 びつく 作 用 を 一 般 的 に 有 する 手 続 には 及 ぶものと 解 され るが, 暴 対 法 33 条 1 項 による 質 問 は, 他 の 一 般 的 な 行 政 目 的 によ る 質 問 の 権 限 と 同 様 に, 犯 罪 捜 査 のために 認 められたものではなく, 同 法 の 施 行 に 必 要 があると 認 めるときに, 同 法 の 施 行 に 必 要 な 限 度 において 実 施 することができるものであり,それ 以 上 に 刑 事 責 任 を 41

問 われるおそれのある 事 項 についてまで 報 告 を 求 めるものではない し, 刑 事 責 任 追 及 のための 資 料 収 集 に 直 接 結 びつく 作 用 を 一 般 的 に 有 するものでもないから, 暴 対 法 33 条 1 項 の 規 定 に 違 反 した 者 を 処 罰 することを 規 定 した 同 法 49 条 は, 憲 法 38 条 1 項 に 違 反 する ものとはいえない b 中 止 命 令 等 に 係 る 罰 則 規 定 の 違 憲 主 張 について (a) 原 告 が 指 摘 する 命 令 に 違 反 を 構 成 要 件 とする 罰 則 は, 暴 対 法 46 条 1 号,47 条 各 号,48 条,50 条 1 号 に 規 定 されているが, これらの 処 罰 規 定 は, 特 定 危 険 指 定 処 分 に 関 する 罰 則 を 定 めるもの ではないもの, 又 は 特 定 危 険 指 定 処 分 そのものによってその 適 用 が 可 能 となるものではなく, 別 途 の 命 令 が 公 安 委 員 会 からされたこと によりその 適 用 が 可 能 となるものであり,これらの 規 定 の 違 憲 性 は, 本 件 処 分 の 効 力 に 何 ら 影 響 を 及 ぼすものではないから,これらの 規 定 が 憲 法 に 違 反 するとの 原 告 の 主 張 は, 主 張 自 体 失 当 である また, 暴 対 法 第 8 章 の 規 定 による 罰 則 の 対 象 となるのは, 原 告 の 構 成 員 等 であって, 原 告 自 身 ではないから, 原 告 には 同 法 の 罰 則 規 定 の 適 法 性 を 争 う 法 律 上 の 利 益 はなく, 行 訴 法 10 条 1 項 により, 原 告 の 上 記 違 憲 の 主 張 は, 本 件 において 主 張 することが 許 されない ものであり, 失 当 である (b) 上 記 (a)の 点 を 措 くとして, 原 告 の 違 憲 主 張 について 検 討 するに, 原 告 が 指 摘 する 暴 対 法 の 各 罰 則 規 定 は, 禁 止 される 行 為 の 内 容 を 政 令 等 の 下 位 法 令 において 定 めることとしているものはないから, 委 任 立 法 の 限 界 を 超 えるとして 憲 法 41 条 及 び73 条 6 号 ただし 書 に 違 反 する 余 地 はなく, 原 告 の 主 張 は 失 当 である さらに,この 点 を 措 くとしても, 暴 対 法 は, 公 安 委 員 会 が 行 い 得 る 命 令 の 内 容 を 明 確 に 規 定 しており, 犯 罪 構 成 要 件 は 法 律 上 明 確 に 42