ユーモア 表 出 行 動 と 表 出 相 手 との 親 密 さの 関 連 115 ユーモア 表 出 行 動 と 表 出 相 手 との 親 密 さの 関 連 宮 戸 美 樹 Relationships between the Humor Expression and Close Friendship with the Partner MIYATO Miki 問 題 と 目 的 1.ユーモアと 対 人 意 識 について 上 野 (1992)はユーモアについて 従 来 のユーモア 研 究 を 整 理 し ユーモアを 表 出 する 動 機 に よって 遊 戯 的 ユーモア 支 援 的 ユーモア 攻 撃 的 ユーモアの3 種 に 分 類 した そして それら のユーモアと 対 人 意 識 の 側 面 としての 親 和 要 求 思 いやり 行 動 拒 否 回 避 要 求 公 的 自 意 識 と の 関 連 を 検 討 した 結 果 遊 戯 的 ユーモアや 支 援 的 ユーモアと 親 和 要 求 との 関 連 が また 遊 戯 的 ユーモアと 拒 否 回 避 要 求 や 公 的 自 意 識 との 関 連 が 明 らかとなった( 上 野, 2003) また 塚 脇 ら (2009a)は ユーモア 表 出 類 型 と 人 格 特 性 との 関 連 を 検 討 した その 結 果 攻 撃 性 が 高 い 者 ほど 攻 撃 的 ユーモアを 自 己 受 容 度 が 高 い 者 ほど 自 虐 的 ユーモアと 遊 戯 的 ユーモアを 愛 他 性 が 高 い 者 ほど 遊 戯 的 ユーモアを 表 出 することが 明 らかにされている このように ユーモアに 対 する 好 みや 態 度 が その 個 人 の 対 人 関 係 への 意 識 と 関 連 していることが 示 唆 されている 2. 対 人 コミュニケーションにおけるユーモア 表 出 行 動 について J.モリオール(1983, 1995 訳 )は 社 会 的 現 象 としてユーモアを 位 置 づけ その 社 会 的 性 質 として 伝 染 性 凝 集 効 果 親 しみに 満 ちた 社 会 的 身 振 り 社 会 的 な 関 わりへの 影 響 の4 点 を 挙 げている その 中 で 親 しみに 満 ちた 社 会 的 身 振 り は 対 人 コミュニケーションという 視 点 からの 論 考 であり その 中 でモリオールは 他 者 とユーモアを 分 かち 合 うことは 受 容 的 雰 囲 気 を 醸 しだし 相 手 をリラックスさせるために 新 しい 知 人 との 会 話 をしばしば 軽 いジョーク で 始 める と 述 べている 牧 野 (1991)は 友 人 関 係 や 知 人 関 係 が 笑 いにどのような 影 響 を 及 ぼしているかについて 検 討 し 送 り 手 と 受 け 手 が 親 しい 場 合 及 び 受 け 手 同 士 が 親 しい 場 合 は そうでない 場 合 に 比 べて 笑 いが 発 生 することが 検 証 されている このように 相 手 を 笑 わ せることや 笑 いを 共 有 するというユーモア 表 出 行 動 が 対 人 関 係 における 潤 滑 油 的 な 機 能 をも たらすことが 示 されている このように ユーモアは 対 人 関 係 においてモリオールの 言 う 親 しみに 満 ちた 社 会 的 身 振 り と 位 置 づけられる 一 方 で ユーモアには 上 野 (1992)が 分 類 するように 相 手 を 攻 撃 する 意 図 から 表 出 されるとされる 攻 撃 的 ユーモアも 存 在 している このようなユーモアの 攻 撃 的 な 側 面 は 日 常 場 面 における からかい などに 代 表 され いじめなどの 問 題 に 発 展 する 危 険 性 の ある 問 題 行 動 である しかし 一 方 で 親 密 な 関 係 においては からかいあえるほどに 親 しいと
116 宮 戸 美 樹 いうことを 当 事 者 同 士 が 確 認 するものとなり 快 経 験 の 共 有 をもたらすなど 関 係 促 進 的 効 果 をもつという 指 摘 もある( 遠 藤, 2007) 葉 山 櫻 井 (2008)は 友 人 との 関 係 性 によって 冗 談 行 動 が 異 なるかを 検 討 し 冗 談 行 動 が 相 手 との 関 係 により 異 なることが 示 唆 されている さ らに 冗 談 関 係 の 認 知 と 冗 談 行 動 との 因 果 関 係 を 検 証 し 冗 談 関 係 の 認 知 からの 影 響 の 変 化 に よって 親 友 に 対 する 攻 撃 的 な 冗 談 行 動 の 割 合 が 相 対 的 に 増 加 していくと 推 察 されている こ のように 対 人 コミュニケーション 場 面 におけるユーモア 表 出 行 動 は 相 手 との 関 係 に 影 響 を 与 えると 同 時 に 相 手 との 関 係 によってその 形 態 や 行 動 に 影 響 を 受 けるものであると 言 える 3.ユーモア 表 出 行 動 と 動 機 について 塚 脇 ら(2009b)は 従 来 のユーモア 研 究 を 概 観 した 上 で ユーモア 表 出 の 動 機 について 関 係 構 築 動 機 不 満 伝 達 動 機 他 者 支 援 動 機 印 象 操 作 動 機 自 己 支 援 動 機 の5つに 整 理 されることを 示 した さらに ユーモアの3 種 の 表 出 類 型 ( 塚 脇 他, 2009a) 間 で 5つの 表 出 動 機 強 度 に 差 があるか 検 討 し 攻 撃 的 ユーモアは 他 の2 種 のユーモアよりも 不 満 伝 達 動 機 に 基 づいて 使 用 されること 自 虐 的 ユーモアと 遊 戯 的 ユーモアは 攻 撃 的 ユーモアよりも 他 者 支 援 動 機 に 基 づいて 使 用 されることが 明 らかとなっている このようにユーモアの 表 出 類 型 の 違 いに よってユーモアの 表 出 動 機 の 強 度 に 違 いがあることが 明 らかとなった さらに 塚 脇 (2011)は ユーモア 表 出 の 類 型 別 に 表 出 動 機 の 構 造 を 検 討 し 自 虐 的 ユーモア 表 出 と 遊 戯 的 ユーモア 表 出 の 動 機 の 構 造 が 比 較 的 類 似 していること 攻 撃 的 ユーモア 表 出 においては 他 の2つの 類 型 と は 異 なり 不 満 伝 達 動 機 が 特 徴 として 抽 出 されている また 攻 撃 的 ユーモアにのみ 自 己 支 援 動 機 が 抽 出 されず 攻 撃 的 ユーモア 表 出 が 他 の2つの 類 型 のユーモア 表 出 とは 異 なる 特 徴 を 有 していると 推 測 されている 4. 本 研 究 の 目 的 以 上 のように 従 来 の 研 究 でユーモアの 類 型 が 整 理 され 対 人 コミュニケーション 場 面 にお けるユーモア 表 出 行 動 の 意 味 や ユーモア 表 出 行 動 の 動 機 について 検 討 が 進 んではいるが 誰 に 表 出 するか という 相 手 との 関 係 性 を 考 慮 し ユーモア 表 出 行 動 と 表 意 出 意 図 との 関 連 を 検 討 した 研 究 はまだ 数 少 ない 相 手 を 笑 わせるようなことを 言 う(する) というユーモア 表 出 行 動 は 対 人 場 面 において 生 起 する 行 動 であり どのような 意 図 でどのようなユーモアを 表 出 するかということに 対 して 表 出 する 相 手 との 関 係 性 特 に 相 手 との 心 理 的 な 距 離 が 強 く 影 響 すると 推 測 される しかし 従 来 の 研 究 では 表 出 行 動 や 表 出 意 図 について 表 出 対 象 との 関 係 性 に 注 目 して 検 討 した 研 究 はほとんどみられない 塚 脇 他 (2009a, 2009b)において 表 出 類 型 や 表 出 動 機 を 抽 出 する 際 にも 個 人 内 の 表 出 行 動 や 表 出 動 機 を 尋 ねる 項 目 が 作 成 使 用 さ れているが 対 人 場 面 は 想 定 されていない そこで 本 研 究 では 面 白 いことを 言 って 相 手 を 笑 わせる ことをユーモア 表 出 行 動 と 定 義 し 表 出 されるユーモアやその 表 出 意 図 が 相 手 との 親
ユーモア 表 出 行 動 と 表 出 相 手 との 親 密 さの 関 連 117 密 性 によって 異 なるか ユーモア 表 出 行 動 や 表 出 意 図 と 相 手 との 関 係 性 の 関 連 について 検 討 す ることを 目 的 とする まず 対 人 場 面 の 中 でのユーモア 表 出 意 図 を 抽 出 するために 予 備 的 調 査 を 行 い その 後 相 手 との 関 係 性 とユーモア 表 出 行 動 及 び 表 出 意 図 と 関 連 を 検 討 する 1> 予 備 的 調 査 目 的 対 人 関 係 におけるユーモア 表 出 行 動 に 関 して その 表 出 意 図 がどのように 意 識 されているか を 明 らかにする 方 法 1. 調 査 対 象 者 と 実 施 方 法 : 首 都 圏 の4 年 制 大 学 の 大 学 生 20 名 ( 男 性 10 名 女 性 10 名 平 均 年 齢 21.5 歳 ) 自 由 記 述 形 式 の 質 問 紙 調 査 を 個 別 配 布 回 収 した 回 答 は 中 断 しても 良 いことが 伝 えられた 実 施 時 間 は15 分 程 度 であった 2. 調 査 内 容 : 1)フェイスシート: 性 別 学 年 年 齢 所 属 する 学 部 の 記 入 を 求 めた 2)ユーモア 表 出 行 動 の 意 図 : ユーモア 表 出 行 動 を 行 う 意 図 を 把 握 するために あなたが 同 性 の 人 を 笑 わせるような 冗 談 を 言 う 時 それはどういった 場 面 で なぜそのような 行 動 をとるのですか 自 由 にお 書 き 下 さい と 質 問 文 を 提 示 し 親 友 友 人 知 人 3 者 それぞれについて 自 由 記 述 形 式 で 回 答 を 求 めた また それぞれの 相 手 について 異 性 の 場 合 についても 同 様 に 回 答 を 求 めた 結 果 1.ユーモア 表 出 行 動 の 表 出 意 図 ユーモア 表 出 行 動 を 行 う 場 面 と 目 的 を 自 由 にお 書 き 下 さい という 質 問 に 対 して 親 友 友 人 知 人 の 全 ての 回 答 内 容 を 対 象 に 心 理 学 を 専 攻 する 者 3 名 でKJ 法 ( 川 喜 多,1967) を 用 いて 分 類 した 分 類 の 結 果 ユーモア 表 出 行 動 の 意 図 は 他 者 を 支 援 する 意 図 雰 囲 気 を 操 作 する 意 図 自 己 の 印 象 を 操 作 する 意 図 関 係 を 操 作 する 意 図 の4つに 分 類 された 他 者 を 支 援 する 意 図 は 相 手 を 励 ますため 相 手 を 元 気 づけるため などが 雰 囲 気 を 操 作 する 意 図 には 場 を 盛 り 上 げるため 楽 しい 雰 囲 気 にするため 自 己 の 印 象 を 操 作 する 意 図 には 自 分 に 好 印 象 をもってもらうため おもしろい 人 だと 思 われたいため などの 内 容 が 分 類 された また 関 係 を 操 作 する 意 図 は 相 手 と 仲 良 くなるため どのような 人 なの か 知 るため 相 手 の 情 報 を 得 るため などの 内 容 が 分 類 された
118 宮 戸 美 樹 2. 対 象 の 性 別 によるユーモア 表 出 行 動 の 意 図 の 違 い 同 性 の 対 象 か 異 性 の 対 象 か 相 手 の 性 別 によってユーモア 表 出 行 動 の 意 図 が 異 なるかを 明 ら かにするため 親 友 友 人 知 人 それぞれについて 同 性 の 場 合 と 異 性 の 場 合 の 表 出 意 図 を 比 較 したところ 20 名 のうち18 名 が 同 性 に 対 しても 異 性 に 対 しても 表 出 意 図 は 同 じ と 回 答 した 男 性 回 答 者 のうち2 名 は 異 性 の 友 人 に 対 して もてるため おもしろいとアピー ルするため と 回 答 した 3. 親 密 性 によるユーモア 表 出 行 動 の 意 図 の 違 い 親 友 友 人 知 人 という 対 象 との 親 密 性 の 違 いによって ユーモア 表 出 行 動 の 意 図 が 違 うかを 明 らかにするために それぞれの 対 象 ごとに4つの 表 出 意 図 について 出 現 率 を 比 較 し た( 図 1) その 結 果 親 友 では 他 者 を 支 援 する 意 図 が 61.9% 雰 囲 気 を 操 作 する 意 図 が23.8% 自 己 の 印 象 を 操 作 する 意 図 が14.3% 関 係 を 操 作 する 意 図 が0%であっ た 友 人 では 他 者 を 支 援 する 意 図 が9.5% 雰 囲 気 を 操 作 する 意 図 が57.1% 自 己 の 印 象 を 操 作 する 意 図 が19.1% 関 係 を 操 作 する 意 図 が14.3%であった 知 人 では 他 者 を 支 援 する 意 図 が0% 雰 囲 気 を 操 作 する 意 図 が23.1% 自 己 の 印 象 を 操 作 する 意 図 が46.2% 関 係 を 操 作 する 意 図 が30.7%であった 図 1.ユーモア 表 出 意 図 に 関 する 対 象 者 による 抽 出 率 の 比 較 考 察 ユーモア 表 出 行 動 の 表 出 意 図 は 他 者 を 支 援 する 意 図 雰 囲 気 を 操 作 する 意 図 自 己 の 印 象 を 操 作 する 意 図 関 係 を 操 作 する 意 図 の4つに 分 類 された その 中 の 雰 囲 気 を 操 作 する 意 図 は 親 友 友 人 知 人 すべての 対 象 に 対 して 20% 以 上 の 選 択 率 が 示 され その 場 の 雰 囲 気 を 良 くするという 意 図 は どのような 相 手 に 対 しても 意 識 されていることが 明 らかに なった また 相 手 との 関 係 性 による 違 いを 検 討 した 結 果 親 友 に 対 しては 他 者 を 支 援 する
ユーモア 表 出 行 動 と 表 出 相 手 との 親 密 さの 関 連 119 意 図 が 友 人 に 対 しては 雰 囲 気 を 操 作 する 意 図 が 知 人 に 対 しては 自 己 の 印 象 を 操 作 する 意 図 関 係 を 操 作 する 意 図 が それぞれ 表 出 意 図 として 強 く 意 識 されていた このこと から 対 象 との 親 密 性 によってユーモアの 表 出 意 図 が 異 なることが 示 唆 された 2> 本 調 査 目 的 対 人 関 係 におけるユーモア 表 出 行 動 や 表 出 意 図 が 相 手 との 関 係 の 親 密 さによって 違 いがみ られるか 検 討 する 方 法 1. 調 査 対 象 者 と 実 施 方 法 : 首 都 圏 の4 年 制 大 学 の 大 学 生 273 名 ( 男 性 142 名 女 性 131 名 平 均 年 齢 20.1 歳 )を 分 析 の 対 象 とした 調 査 は 大 学 の 講 義 内 で 集 団 実 施 し 回 答 は 無 記 名 により 行 った 回 答 は 中 断 し ても 良 いことが 伝 えられた 所 要 時 間 は15 分 程 度 であった 2. 調 査 内 容 : 1)フェイスシート: 性 別 学 年 年 齢 の 記 入 を 求 めた 2)ユーモア 表 出 行 動 尺 度 :3 種 のユーモアそれぞれの 表 出 行 動 を 測 定 するために 攻 撃 的 ユー モア 遊 戯 的 ユーモア 志 向 尺 度 ( 上 野, 1992) 支 援 的 ユーモア 志 向 尺 度 ( 宮 戸 上 野, 1996) を それぞれのユーモアを 表 出 する 行 動 を 測 定 する 項 目 に 変 更 して 使 用 した 対 象 による 表 出 行 動 の 違 いを 測 定 するため 1 親 友 2 友 人 3 知 人 を 表 出 対 象 として 挙 げ 対 象 者 ごとに 相 手 を 笑 わせるために あなたはどのようなふるまいをしますか 以 下 の 項 目 それぞれについて あなたがその 相 手 を 笑 わせるためにとる 行 動 に 最 も 当 てはまるもの 1 つに をつけて 下 さい と 教 示 文 を 提 示 し 1. 全 く 当 てはまらない から 5.とてもあてはまる までの5 件 法 で 回 答 を 求 めた 3)ユーモア 表 出 意 図 尺 度 :ユーモアを 表 出 する 意 図 について 明 らかにするために 相 手 を 笑 わ せる 理 由 について 自 由 記 述 で 尋 ねた 予 備 調 査 の 結 果 から 4 因 子 を 想 定 して 作 成 した 候 補 項 目 20 項 目 を 作 成 した 対 象 による 表 出 意 図 の 違 いを 測 定 するため 1 親 友 2 友 人 3 知 人 を 対 象 として 挙 げ 対 象 者 ごとに あなたが 相 手 を 笑 わせる 理 由 はなんですか 笑 わせる 理 由 につ いて 以 下 の 項 目 それぞれについて 最 もあてはまるもの1つに をつけて 下 さい と 教 示 文 を 提 示 し 1. 全 くあてはまらない から 5.とてもあてはまる までの5 件 法 で 回 答 を 求 め た 結 果
120 宮 戸 美 樹 1.ユーモア 表 出 行 動 尺 度 について 各 ユーモア 表 出 行 動 項 目 について 対 象 ごとに 主 成 分 分 析 を 行 い 全 ての 対 象 の 分 析 において 負 荷 量 が.30 以 下 を 示 した 項 目 を 除 外 して 再 度 分 析 を 行 った その 結 果 攻 撃 的 ユーモア 表 出 行 動 尺 度 の 第 一 主 成 分 への 寄 与 率 は 親 友 が51.9% 友 人 が45.7% 知 人 が55.4%であった また α 係 数 は 親 友 が.62 友 人 が.61 知 人 が.72 であった 遊 戯 的 ユーモア 表 出 行 動 尺 度 の 第 一 主 成 分 への 寄 与 率 は 親 友 が 41.3% 友 人 が 42.7% 知 人 が 46.7%であり α 係 数 は 親 友 が.69 友 人 が.72 知 人 が.85 であった 支 援 的 ユーモア 表 出 行 動 尺 度 の 第 一 主 成 分 への 寄 与 率 は 親 友 が42.6% 友 人 が43.1% 知 人 が50.1%であり α 係 数 は 親 友 が.80 友 人 が.80 知 人 が.85 であった 以 上 の 結 果 から 攻 撃 的 ユーモア 表 出 行 動 尺 度 7 項 目 遊 戯 的 ユーモア 表 出 行 動 尺 度 6 項 目 支 援 的 ユーモア 表 出 行 動 尺 度 8 項 目 を 作 成 した 項 目 内 容 を 表 1に 示 す 表 1.ユーモア 表 出 行 動 尺 度 攻 撃 的 ユーモア 1. 笑 いをとるために 多 少 毒 をはく 2. 皮 肉 を 言 って 楽 しむ 3. 過 激 な 冗 談 を 言 う 4.ブラックユーモアを 使 う 5. 笑 いをとるためにきついことを 言 うことはない * 6. 変 わっている 知 人 をネタにする 7.まじめな 話 をちゃかす 遊 戯 的 ユーモア 1. 単 純 で 分 かりやすいユーモアを 言 う 2. 相 手 を 楽 しませようとよく 笑 わせる 3. 人 のモノマネをして 笑 いをとる 4.ダジャレを 言 う 5. 人 間 くささのある 笑 い 話 や ユーモアを 言 う 6. 相 手 と 一 緒 に 笑 いたいと 思 う 支 援 的 ユーモア 1. 相 手 を 笑 わせて 励 まそうとする 2.あわてたりさわいだりする 滑 稽 な 自 分 をネタに 笑 いをとる 3. 相 手 が 誰 かと 喧 嘩 を 始 めそうな 時 に 冗 談 を 言 って 仲 をとりもつ 4. 相 手 の 気 持 ちを 救 うようなユーモアを 言 う 5. 相 手 に 嫌 なことがあった 時 に 笑 い 飛 ばすことが 出 来 るように 関 わる 6. 相 手 の 気 がめいっている 時 にユーモアで 励 ます 7.ちょっと 寂 しそうにしていると 冗 談 を 言 って 笑 わせる 8. 相 手 をなぐさめるために 自 分 の 失 敗 をおもしろおかしく 語 る * 逆 転 項 目 2.ユーモア 表 出 意 図 尺 度 について 表 出 対 象 ごとに 因 子 分 析 ( 主 因 子 法 Promax 回 転 )を 繰 り 返 し 因 子 負 荷 量 が.35 以 上 を 示 した4 因 子 解 ( 合 計 16 項 目 )を 採 用 した 親 友 友 人 知 人 の 因 子 構 造 はすべて 同 じとなっ
ユーモア 表 出 行 動 と 表 出 相 手 との 親 密 さの 関 連 121 た 項 目 内 容 を 表 2に 示 す 第 1 因 子 は 相 手 との 距 離 感 を 縮 めるため 相 手 との 関 係 をよくするため といった 相 手 と の 関 係 性 の 変 化 を 意 図 する5 項 目 から 構 成 されており 関 係 操 作 と 命 名 した 第 2 因 子 は 空 気 を 盛 り 上 げるため その 場 を 楽 しくするため その 場 の 雰 囲 気 をよくするため といった 場 の 空 気 感 や 雰 囲 気 を 良 くしようと 意 図 する4 項 目 で 雰 囲 気 支 援 と 命 名 した 第 3 因 子 は 相 手 を 元 気 づけるため 相 手 を 励 ますため 相 手 をなぐさめるため なと 他 者 を 支 援 す ることを 意 図 している4 項 目 から 構 成 されており 他 者 支 援 と 命 名 した 第 4 因 子 は 自 分 に 好 印 象 をもってもらうため 自 分 のことをおもしろいと 思 ってもらうため など 自 己 の 印 象 操 作 が 意 図 された3 項 目 で 自 己 印 象 操 作 と 命 名 した 逆 転 項 目 については 処 理 を 行 い 下 位 因 子 ごとに 項 目 の 得 点 を 合 計 し 得 点 化 した それぞれの 得 点 が 高 いほど それぞれの 表 出 意 図 が 強 いことを 意 味 する 表 2.ユーモア 表 出 意 図 尺 度 関 係 操 作 1. 相 手 に 親 しみをもってもらうため 2. 相 手 と 仲 良 くなるため 3. 相 手 との 距 離 感 を 縮 めるため 4. 相 手 との 関 係 をよくするため 5. 相 手 と 親 密 感 を 感 じるため 雰 囲 気 支 援 1. 空 気 を 良 くするため 2.その 場 を 楽 しくするため 3. 空 気 を 盛 り 上 げるため 4.その 場 の 雰 囲 気 を 良 くするため 他 者 支 援 1. 相 手 を 励 ますため 2. 相 手 をなぐさめるため 3. 相 手 を 元 気 づけるため 4. 相 手 を 明 るくするため 自 己 印 象 操 作 1. 自 分 のことをおもしろいと 思 って 欲 しいから 2. 相 手 にすごいと 思 われたいから 3. 自 分 に 好 印 象 をもってもらうため 3.ユーモア 表 出 行 動 の 性 差 について ユーモア 表 出 行 動 について 性 別 による 差 が 見 られるかを 明 らかにするために ユーモア 表 出 行 動 尺 度 得 点 について 対 象 ごとに 性 差 による 母 平 均 値 の 差 の 検 定 を 行 った( 表 3) その 結 果 親 友 と 知 人 に 対 する 攻 撃 的 ユーモア 表 出 行 動 得 点 が 有 意 水 準 1%で 友 人 に 対 する 攻 撃 的 ユーモア 表 出 行 動 得 点 が 有 意 水 準 5%で 男 性 の 方 が 女 性 よりも 高 かった また 知 人 に 対 する 遊 戯 的 ユーモア 表 出 行 動 得 点 が 有 意 水 準 10%で 男 性 の 方 が 女 性 よりも 高 い 傾 向 がみられた 支 援 的 ユーモアについて
122 宮 戸 美 樹 は すべての 対 象 について 男 女 間 で 有 意 差 はみられなかった 男 女 による 表 出 行 動 に 違 いが 見 られたのは 攻 撃 的 ユーモアであった 攻 撃 的 ユーモアについて は 親 友 友 人 知 人 それぞれの 対 象 に 対 して 女 性 よりも 男 性 の 方 が 多 く 表 出 していることが 明 らかと なった 遊 技 的 ユーモアについては 知 人 という 関 係 性 の 遠 い 対 象 に 対 してのみ 男 性 の 方 が 女 性 よ りも 表 出 していることが 明 らかとなった また 支 援 的 ユーモアについては すべての 表 出 対 象 におい てその 表 出 行 動 に 男 女 差 は 見 られなかった 表 3.ユーモア 表 出 行 動 についての 性 差 の 検 討 ユーモアの 種 別 対 象 性 別 n MEAN SD 支 援 的 ユーモア 親 友 男 性 140 27.29 4.97 df=269 女 性 131 26.86 5.31 t=.357 友 人 男 性 141 26.06 5.09 df=269 女 性 130 26.48 5.26 t=-.669 知 人 男 性 141 23.04 6.25 df=269 女 性 130 22.52 5.65 t=.726 遊 戯 的 ユーモア 親 友 男 性 140 20.37 4.06 df=269 女 性 131 19.66 3.80 t=1.496 友 人 男 性 141 19.89 4.26 df=269 女 性 130 19.07 3.96 t=1.632 知 人 男 性 141 17.65 4.53 df=269 女 性 130 16.62 4.30 t=1.903 攻 撃 的 ユーモア 親 友 男 性 140 22.64 4.59 df=269 女 性 131 20.51 4.23 t=3.969*** 友 人 男 性 141 22.33 5.34 df=269 女 性 130 20.25 4.84 t=3.362** 知 人 男 性 140 19.29 4.75 df=268 女 性 130 17.13 4.88 t=3.679*** P<.10, **P<.01, ***P<.001 4.ユーモア 表 出 意 図 の 性 差 について ユーモア 表 出 意 図 について 性 別 による 差 が 見 られるかを 明 らかにするために ユーモア 表 出 意 図 尺 度 得 点 について 対 象 ごとに 性 差 による 母 平 均 値 の 差 の 検 定 を 行 った( 表 4) その 結 果 友 人 に 対 する 関 係 操 作 雰 囲 気 支 援 他 者 支 援 意 図 得 点 について 女 性 の 方 が 男 性 よりも 有 意 水 準 5%で 高 かった また 他 者 支 援 意 図 得 点 については 親 友 に 対 しては 有 意 水 準 1%で また 知 人 に 対 し ては5% 水 準 で 女 性 の 方 が 男 性 よりも 高 かった 一 方 自 己 印 象 操 作 意 図 については すべての 対 象 において 男 女 間 で 有 意 差 はみられなかった 以 上 の 結 果 から ユーモア 表 出 について 女 性 の 方 が 男 性 よりも 他 者 支 援 意 図 がどの 対 象 に 対 しても 高 いことが 明 らかとなった また 友 人 に 対 する 関 係 操 作 と 雰 囲 気 支 援 意 図 についても 女 性 の 方 が 男 性 よりも 高 いことが 示 された
ユーモア 表 出 行 動 と 表 出 相 手 との 親 密 さの 関 連 123 表 4.ユーモア 表 出 意 図 についての 性 差 の 検 討 表 出 意 図 種 別 対 象 性 別 n MEAN SD 関 係 操 作 親 友 男 性 139 18.29 4.02 df=268 女 性 131 18.54 4.06 t=-.517 友 人 男 性 141 18.34 3.68 df=269 女 性 130 19.34 3.50 t=-2.283* 知 人 男 性 141 18.05 4.13 df=269 女 性 130 18.77 4.09 t=-1.439 雰 囲 気 支 援 親 友 男 性 139 15.83 3.09 df=268 女 性 131 16.45 2.24 t=-1.865 友 人 男 性 141 15.70 2.83 df=259.780 女 性 130 16.48 2.15 t=-2.576* 知 人 男 性 141 14.55 3.71 df=269 女 性 130 15.35 3.36 t=-1.844 他 者 支 援 親 友 男 性 139 14.48 3.31 df=268 女 性 131 15.56 2.62 t=-2.966** 友 人 男 性 141 14.06 3.16 df=269 女 性 130 14.92 3.08 t=-2.244* 知 人 男 性 141 12.53 3.66 df=269 女 性 130 13.43 3.55 t=-2.049* 自 己 印 象 操 作 親 友 男 性 139 9.02 2.66 df=268 女 性 131 8.60 2.53 t=1.321 友 人 男 性 141 9.46 2.75 df=269 女 性 130 9.09 2.42 t=1.170 知 人 男 性 141 9.64 2.78 df=269 女 性 130 9.25 2.60 t=1.174 P<.10, *P<.05, **P<.01, 5. 表 出 対 象 別 にみたユーモア 表 出 行 動 について ユーモア 表 出 行 動 の 表 出 対 象 による 違 いを 検 討 するために 3 種 のユーモア 表 出 行 動 尺 度 につい て1 親 友 2 友 人 3 知 人 の3 対 象 を 被 験 者 内 変 数 とした 分 散 分 析 を 性 別 ごとに 行 った 男 性 においては 遊 戯 的 ユーモアと 攻 撃 的 ユーモアについて その 表 出 行 動 得 点 が 知 人 よりも 親 友 と 友 人 の 方 が 有 意 水 準 1%で 高 かった 支 援 的 ユーモアについては 親 友 が 友 人 よりも 有 意 水 準 5%で 知 人 よりも 有 意 水 準 1%で 友 人 が 知 人 よりも 有 意 水 準 1%で 得 点 が 高 かった( 表 5) 表 5. 表 出 対 象 者 別 にみた 表 出 行 動 得 点 の 平 均 値 の 差 の 検 定 ( 被 検 者 内 検 定 男 性 ) ユーモアの 種 別 対 象 n MEAN SD 支 援 的 ユーモア 親 友 139 27.08 4.98 F =36.16*** 友 人 139 26.10 5.12 df=1.564 知 人 139 23.16 6.20 知 人 < 親 友 友 人 *** 友 人 < 親 友 * 遊 戯 的 ユーモア 親 友 139 20.38 4.07 F =39.35*** 友 人 139 19.96 4.24 df=1.509 知 人 139 17.69 4.49 知 人 < 親 友 友 人 *** 攻 撃 的 ユーモア 親 友 138 22.57 4.58 F =30.21*** 友 人 138 22.27 5.34 df=2,274 知 人 138 19.36 4.74 知 人 < 親 友 友 人 *** P<.10, **P<.01, ***P<.001 一 方 女 性 においては すべてのユーモアについて 知 人 よりも 親 友 や 友 人 の 方 が 有 意 水 準 1%で 得 点 が 高 かった( 表 6)
124 宮 戸 美 樹 表 6. 表 出 対 象 者 別 にみた 表 出 行 動 得 点 の 平 均 値 の 差 の 検 定 ( 被 検 者 内 検 定 女 性 ) ユーモアの 種 別 対 象 n MEAN SD 支 援 的 ユーモア 親 友 130 26.81 5.30 F =47.46*** 友 人 130 26.48 5.26 df=1.645 知 人 130 22.52 5.65 知 人 < 親 友 友 人 *** 遊 戯 的 ユーモア 親 友 130 19.62 3.78 F =48.20*** 友 人 130 19.07 3.96 df=1.602 知 人 130 16.62 4.30 知 人 < 親 友 友 人 *** 攻 撃 的 ユーモア 親 友 130 20.55 4.22 F =38.14*** 友 人 130 20.25 4.84 df=1.834 知 人 130 17.13 4.88 知 人 < 親 友 友 人 *** P<.10, **P<.01, ***P<.001 以 上 のことから 男 性 においても 女 性 においても 知 人 に 対 しては 親 友 や 友 人 に 対 してよりもユー モア 表 出 されにくいことが 明 らかとなった また 男 性 においては 支 援 的 ユーモアについて 親 友 と 友 人 友 人 と 知 人 という 関 係 の 違 いによっても 表 出 行 動 に 差 が 見 られることが 明 らかとなった 6. 表 出 対 象 別 にみたユーモア 表 出 意 図 について ユーモア 表 出 意 図 の 表 出 対 象 による 違 いを 検 討 するために 3 種 のユーモア 表 出 意 図 尺 度 につい て1 親 友 2 友 人 3 知 人 の3 対 象 を 被 験 者 内 変 数 とした 分 散 分 析 を 性 別 ごとに 行 った 男 性 については 雰 囲 気 支 援 他 者 支 援 自 己 印 象 操 作 意 図 得 点 について 有 意 差 が 見 られ た 多 重 比 較 の 結 果 雰 囲 気 支 援 他 者 支 援 意 図 得 点 は 知 人 よりも 親 友 と 友 人 の 方 が 有 意 水 準 1%で 高 く 自 己 印 象 操 作 意 図 得 点 は 親 友 の 方 が 友 人 と 知 人 よりも 有 意 水 準 5%で 低 かった 関 係 操 作 意 図 については 対 象 による 得 点 の 差 は 見 られなかった( 表 7) 表 7. 表 出 対 象 者 別 にみた 表 出 意 図 得 点 の 平 均 値 の 差 の 検 定 ( 被 検 者 内 検 定 男 性 ) 表 出 意 図 対 象 n MEAN SD 関 係 操 作 親 友 139 18.29 4.02 F =.290 n.s. 友 人 139 18.33 3.70 df=1.570 知 人 139 18.09 4.14 雰 囲 気 支 援 親 友 139 15.83 3.09 F =12.01*** 友 人 139 15.71 2.84 df=1.704 知 人 139 14.59 3.71 知 人 < 親 友 友 人 *** 他 者 支 援 親 友 139 14.48 3.31 F =22.79*** 友 人 139 14.09 3.17 df=1.570 知 人 139 12.58 3.67 知 人 < 親 友 友 人 *** 自 己 印 象 操 作 親 友 139 9.02 2.66 F =5.12* 友 人 139 9.47 2.76 df=1.676 知 人 139 9.68 2.77 親 友 < 友 人 知 人 * P<.10, **P<.01, ***P<.001 一 方 女 性 については 雰 囲 気 支 援 他 者 支 援 自 己 印 象 操 作 意 図 得 点 について 有 意 水 準 1%で 有 意 差 が 見 られ 関 係 操 作 意 図 得 点 については 有 意 水 準 10%で 有 意 差 傾 向 がみられた 多 重 比 較 の 結 果 雰 囲 気 支 援 意 図 得 点 については 知 人 は 親 友 と 友 人 よりも 有 意 水 準 1%で 得 点 が 低 く 自 己 印 象 操 作 意 図 得 点 は 親 友 の 方 が 友 人 と 知 人 よりも 有 意 水 準 1%で 得 点 が 低 かった 他 者 支 援 意 図 得 点 については 親 友 は 友 人 と 知 人 よりも 有 意 水 準 1%で 友 人 は 知 人 よりも 有 意 水 準 1%でそれぞれ 得 点 が 高 かった 有 意 差 傾 向 が 見 られた 関 係 操 作 意 図 得 点 については 有 意 水
ユーモア 表 出 行 動 と 表 出 相 手 との 親 密 さの 関 連 125 準 5%で 親 友 の 方 が 友 人 よりも 得 点 が 低 かった( 表 8) 表 8. 表 出 対 象 者 別 にみた 表 出 意 図 得 点 の 平 均 値 の 差 の 検 定 ( 被 検 者 内 検 定 女 性 ) 表 出 意 図 対 象 n MEAN SD 関 係 操 作 親 友 130 18.62 3.99 F =2.751 友 人 130 19.34 3.50 df=1.795 知 人 130 18.77 4.09 親 友 < 友 人 * 雰 囲 気 支 援 親 友 130 16.49 2.20 F =14.21*** 友 人 130 16.48 2.15 df=1.442 知 人 130 15.35 3.36 知 人 < 親 友 友 人 *** 他 者 支 援 親 友 130 15.55 2.62 F =35.49*** 友 人 130 14.92 3.08 df=1.735 知 人 130 13.43 3.55 知 人 < 友 人 親 友 *** 友 人 < 親 友 ** 自 己 印 象 操 作 親 友 130 8.62 2.53 F =5.51** 友 人 130 9.09 2.42 df=1.758 知 人 130 9.25 2.60 親 友 < 友 人 知 人 * P<.10, **P<.01, ***P<.001 考 察 1.ユーモア 表 出 行 動 と 表 出 意 図 における 性 差 について 表 出 行 動 については どのような 相 手 との 関 係 性 においても 男 性 の 方 が 攻 撃 的 ユーモアを 表 出 して いた 攻 撃 的 ユーモアは 時 に 相 手 を 傷 つける 危 険 性 があり 女 性 の 場 合 は 男 性 に 比 べて 相 手 を 笑 わせる 手 段 としてはあまり 選 択 されないと 考 えられる また 知 人 という 親 密 性 が 低 い 相 手 に 対 しても 女 性 は 男 性 ほど 遊 戯 的 ユーモアを 表 出 しないことが 示 され 対 人 関 係 において 男 性 の 方 が 女 性 より も ユーモアをコミュニケーションの 手 段 として 用 いやすいことが 示 された これは 男 性 同 士 の 関 係 に おいて 遠 藤 (2007)が 言 う 親 密 な 関 係 においては からかいあえるほど 親 しいということを 当 事 者 同 士 が 確 認 するものとなり 快 経 験 の 共 有 をもたらす という 要 素 が 関 連 しているとも 考 えられる 表 出 意 図 については 友 人 に 対 する 関 係 操 作 雰 囲 気 支 援 意 図 が 男 性 よりも 女 性 の 方 が 強 く 意 識 されていることが 明 らかとなり 他 者 支 援 意 図 については すべての 対 象 に 対 して 女 性 の 方 が 強 く 意 識 されていた 以 上 のことから 女 性 の 方 が ある 程 度 の 親 しさがある 相 手 に 対 して 相 手 との 心 理 的 距 離 感 の 調 整 やその 場 の 雰 囲 気 を 良 くするといった 関 係 性 の 調 整 や 相 手 を 励 ますためという 表 出 意 図 が 強 いことが 明 らかとなった 女 性 は 男 性 よりもユーモアのもつ 対 人 関 係 の 潤 滑 油 ( 牧 野, 1991) 機 能 を 対 人 関 係 においては 意 識 していると 推 察 される また 他 者 支 援 意 図 については ど の 対 象 に 対 しても 女 性 の 方 が 強 く 意 識 されており 女 性 の 方 がユーモア 表 出 行 動 の 背 後 に 相 手 を 励 ますという 意 図 が 強 いことが 示 唆 された 2. 相 手 との 親 密 性 と 表 出 するユーモアの 類 型 について 男 性 においては 友 人 や 親 友 に 比 べて 知 人 に 対 しては 遊 戯 的 ユーモアと 攻 撃 的 ユーモアを 表 出 していないことが 明 らかとなった 支 援 的 ユーモアについては 上 記 の 違 いに 加 えて 友 人 よりも 親 友 に 知 人 よりも 友 人 に 支 援 的 ユーモアを 表 出 していることが 明 らかとなり より 親 密 性 が 高 い 相 手 に 対 し
126 宮 戸 美 樹 て 支 援 的 ユーモアを 表 出 しやすいという 関 係 性 による 細 かい 相 違 が 示 された 男 性 においては 親 友 に 対 しては 知 人 や 友 人 よりも 支 援 的 ユーモアが 表 出 されており より 親 密 な 関 係 性 においては 落 ち 込 んでいたり 悩 んでいたりする 相 手 を 励 ますために 笑 わせる という 手 段 がとられやすいことが 示 された 落 ち 込 んでいたり 悩 んでいる 相 手 を 笑 わせる という 行 為 は ふざけている バカにしてい る などの 誤 解 を 生 む 危 険 性 を 孕 んでいる 従 って より 親 密 な 関 係 である 方 が 誤 解 を 生 む 危 険 性 は 軽 減 し 励 ます という 意 図 が 相 手 に 伝 わりやすく また 共 に 笑 う という 行 為 が 相 手 への 支 援 となり うるのであろう 一 方 女 性 においては すべてのユーモアの 類 型 について 友 人 や 親 友 に 対 してよりも 知 人 に 対 し ては すべての 類 型 のユーモアを 表 出 していないことが 明 らかとなった 性 別 に 関 係 なく 知 人 という 親 密 性 の 乏 しい 心 理 的 距 離 のある 関 係 性 においては ユーモアというコミュニケーションツールを 用 い にくいことが 示 唆 された 3. 相 手 との 親 密 性 とユーモア 表 出 意 図 について 相 手 との 親 密 性 とユーモア 表 出 意 図 については 男 女 ともに 親 友 という 親 密 な 関 係 の 相 手 には 自 己 印 象 操 作 意 図 が 低 いことが 示 された すでに 親 しく 相 手 のことを 理 解 している 関 係 性 においては 自 分 のイメージをよくするといった 自 己 印 象 操 作 は 必 要 ではないためであろう 一 方 で 知 人 という 親 密 性 の 低 い 相 手 との 関 係 においては 相 手 に 自 分 のことをよく 思 ってもらいたいという 意 図 が 強 いと も 解 釈 できることから 親 密 性 の 低 い 相 手 に 対 しては 親 しみに 満 ちた 社 会 的 身 振 り (J.モリオー ル,1983,1995)や 牧 野 (1991)のいうユーモアの 対 人 関 係 の 潤 滑 油 としての 機 能 が 意 識 されている と 推 察 される 雰 囲 気 支 援 や 他 者 支 援 意 図 については 親 友 や 友 人 に 比 べて 知 人 に 対 しては 表 出 意 図 とし て 意 識 されていないことが 明 らかとなった また 女 性 においては 他 者 支 援 意 図 は 友 人 よりも 親 友 に 知 人 よりも 友 人 に 意 図 されており 関 係 性 の 相 違 に 影 響 を 受 けやすいことが 明 らかとなった 知 人 とのコミュニケーションにおいては ある 程 度 の 心 理 的 距 離 を 保 ったコミュニケーションが 展 開 される と 思 われ 場 を 盛 り 上 げようという 雰 囲 気 支 援 意 図 は 親 しい 関 係 である 友 人 や 親 友 に 比 べて 少 な いと 推 測 される 他 者 支 援 意 図 については 特 に 女 性 においてはより 親 しい 関 係 性 の 相 手 に 対 して 意 図 されており 親 密 である 相 手 と 笑 いを 共 有 することや 相 手 を 笑 わせることが 励 ましなどの 心 理 的 支 援 であることが 受 け 手 とも 共 通 認 識 されていると 推 察 される 以 上 の 本 研 究 の 結 果 から 親 密 さという 相 手 との 関 係 性 の 違 いによって ユーモアコミュニケーション の 類 型 やその 表 出 意 図 が 異 なっていることが 示 唆 された 今 後 の 課 題 今 後 の 課 題 として 第 1に 表 出 されるユーモアの 類 型 と 表 出 意 図 と 相 手 との 関 係 性 について 表 出 意 図 と 表 出 されるユーモアの 類 型 という 関 係 を 含 めて 検 討 していく 必 要 がある また 本 研 究 では 良 好
ユーモア 表 出 行 動 と 表 出 相 手 との 親 密 さの 関 連 127 な 関 係 性 を 前 提 として 相 手 を 笑 わせる 行 動 や 意 図 について 尋 ねたため 攻 撃 的 ユーモアについて その 行 動 や 表 出 意 図 について 明 らかにしきれていない 従 って 関 係 性 における 攻 撃 的 意 図 につい て 抽 出 し 検 討 する 必 要 がある 文 献 遠 藤 由 美 2007 役 割 と 社 会 的 スキルがからかい 認 知 に 及 ぼす 影 響 関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要,38, 3, 119-131. 葉 山 大 地 櫻 井 茂 雄 2008 友 人 に 対 する 冗 談 関 係 の 認 知 が 冗 談 行 動 へ 及 ぼす 影 響 心 理 学 研 究, 79, 1, 18-26. 川 喜 田 二 郎 1967 発 想 法 - 創 造 性 開 発 のために 中 公 新 書 牧 野 圭 子 1991 笑 いに 及 ぼす 友 人 知 人 関 係 の 効 果 日 本 心 理 学 会 第 55 回 大 会 発 表 論 文 集,710 モリオール.J. 森 下 伸 也 ( 訳 ) 1995 ユーモア 社 会 を 求 めて 笑 いの 人 間 学 新 曜 社 塚 脇 涼 太 樋 口 匡 貴 深 田 博 己 2009a ユーモア 表 出 と 自 己 受 容 攻 撃 性 愛 他 性 との 関 係 心 理 学 研 究, 80, 4, 339-344. 塚 脇 涼 太 越 良 子 樋 口 匡 貴 深 田 博 己 2009b なぜ 人 はユーモアを 感 じさせる 言 動 をとるのか? ユーモア 表 出 動 機 の 検 討 心 理 学 研 究, 80, 5, 397-404. 塚 脇 涼 太 2011 ユーモア 表 出 の 類 型 ごとにみた 動 機 の 構 造 広 島 大 学 心 理 学 研 究, 11, 49-56. 上 野 行 良 1992 ユーモア 現 象 に 関 する 諸 研 究 とユーモアの 分 類 化 について 社 会 心 理 学 研 究, 7, 112-120. 上 野 行 良 2003 ユーモアの 心 理 学 - 人 間 関 係 とパーソナリティ- サイエンス 社 *この 研 究 は 阿 孫 聖 翔 さんの 平 成 24 年 度 横 浜 国 立 大 学 卒 業 論 文 のデータを 再 分 析 検 討 したもの である