修 士 論 文 ( 要 旨 ) 2015 年 7 月 男 性 ひとり 暮 らし 高 齢 者 が 社 会 的 孤 立 を 免 れる 要 因 の 分 析 指 導 渡 辺 修 一 郎 教 授 老 年 学 研 究 科 老 年 学 専 攻 213J6902 大 屋 由 枝
Master s Thesis (Abstract) July 2015 Factors in Preventing Social Isolation among Elderly Men Living Alone Yoshie Ohya 213J6902 Master s Program in Gerontology Graduate School of Gerontology J.F.Oberlin University Thesis Supervisor:Shuichiro Watanabe
目 次 I. はじめに 1. 研 究 背 景 1 2. 先 行 研 究 2 3. 研 究 目 的 5 II. 方 法 1. 対 象 5 2. 方 法 5 3. 分 析 6 III. 結 果 7 IV. 考 察 8 参 考 文 献 資 料 表 1 ⅰ 表 2-1 ⅱ 表 2-2 ⅲ 表 3 ⅳ 表 4-1 ⅴ 表 4-2 ⅵ 表 5-1 ⅶ 表 5-2 ⅷ
I. はじめに 1. 研 究 背 景 高 齢 者 世 帯 に 占 める 単 身 世 帯 は 2 割 を 超 え 1) その 一 部 は 社 会 的 孤 立 となり 孤 独 死 な どのさまざまな 問 題 を 引 き 起 こしている 1) 2) 地 域 包 括 センターの 相 談 内 容 も 社 会 的 孤 立 に 関 する 問 題 が 増 えており とくに 深 刻 な 問 題 は 男 性 ひとり 暮 らし( 単 身 ) 高 齢 者 に 多 い 2. 先 行 研 究 P. Townsend をはじめとした 国 内 外 の 多 くの 研 究 者 によりさまざまの 社 会 的 孤 立 の 指 標 が 提 唱 されている 4)5) 社 会 的 孤 立 では 他 者 とのつながりが 弱 いことが 報 告 され とくに 男 性 単 身 者 の 社 会 関 係 の 縮 小 と 孤 独 感 を 高 める 可 能 性 が 指 摘 されている 6)7)8)9) また 社 会 的 孤 立 は 生 活 問 題 と 関 連 するため 地 域 と 行 政 が 協 働 し 地 域 の 優 先 課 題 を 明 確 にし 10)11) 防 止 対 策 を 樹 立 する 重 要 性 が 提 言 されている 12)13) 3. 研 究 目 的 男 性 単 身 高 齢 者 が 社 会 的 孤 立 を 免 れている 要 因 を 明 らかにし 地 域 の 社 会 的 孤 立 に 関 す る 課 題 を 明 確 にすることを 目 的 とする II. 方 法 本 研 究 で 分 析 に 用 いたデータは 2013 年 7 月 に 大 田 区 が 実 施 主 体 となり 東 京 都 健 康 長 寿 医 療 センター 研 究 所 の 社 会 参 加 と 地 域 保 健 研 究 チームが 行 った 高 齢 者 の 健 康 と 安 心 な 暮 らしに 関 する 調 査 に 基 づくものである なお 本 調 査 は 同 研 究 所 の 倫 理 審 査 の 承 認 を 受 けて 実 施 された 1. 対 象 東 京 都 大 田 区 A 地 区 において 2013 年 7 月 現 在 65 歳 以 上 の 住 民 で 要 介 護 4 5 施 設 入 所 を 除 いた 7,705 人 を 対 象 とした 同 区 の 2014 年 1 月 現 在 人 口 は 701,416 人 うち 65 歳 以 上 は 155,059 人 (22.1%)である 14) 2. 方 法 自 記 式 質 問 紙 による 郵 送 調 査 を 行 った 回 収 数 は 5,310 票 ( 回 収 率 70.1%)で 平 均 年 齢 は 74 歳 男 性 が 39.4% 女 性 が 54.7%であった 単 身 者 は 20.7%を 占 めていた 3. 分 析 同 居 者 がなく かつ 家 族 や 親 戚 友 人 や 知 人 からの 情 緒 的 サポートおよび 手 段 的 サポ ートがない 者 を 社 会 的 孤 立 と 操 作 的 に 定 義 した また 同 居 者 がいないが 何 らかの 情 緒 的 サポートまたは 手 段 的 サポートがある 人 を 社 会 的 非 孤 立 独 居 と 操 作 的 に 定 義 した 男 性 単 身 高 齢 者 の 社 会 的 孤 立 群 71 人 社 会 的 非 孤 立 独 居 群 268 人 の 2 群 について 健 康 状 態 孤 立 感 社 会 活 動 飲 酒 喫 煙 相 談 窓 口 の 認 知 や 利 用 見 守 り 事 業 の 利 用 就 労 状 況 収 入 暮 らし 向 き 住 居 形 態 などの 調 査 項 目 についてクロス 集 計 およびχ 2 検 定 を 行 った 有 意 水 準 は 5%とし 統 計 的 分 析 には SPSS.ver.22 を 用 いた III. 結 果 1. 健 康 状 態 健 康 度 自 己 評 価 がよい 群 視 力 障 害 がない 群 において 社 会 的 非 孤 立 の 割 合 が 有 意 に 高 か った 1
2. 日 常 の 活 動 性 および 生 活 習 慣 新 聞 を 読 む 群 本 を 読 む 群 若 者 に 話 しかけることがある 群 笑 うことのある 群 グル ープ 等 の 活 動 を 行 う 群 の 方 が そうでない 群 に 比 較 し 社 会 的 非 孤 立 の 割 合 が 有 意 に 高 か った 3. 支 援 機 器 やサービスの 利 用 緊 急 通 報 の 利 用 については わからない と 回 答 した 群 において 社 会 的 非 孤 立 の 割 合 が 低 かった 4. 精 神 心 理 状 況 周 囲 から 孤 立 を 感 じている 群 生 活 に 満 足 していない 群 において 社 会 的 孤 立 の 割 合 が 高 かった 心 理 的 な 状 態 ( 楽 しい 気 分 リラックス 活 動 意 欲 睡 眠 物 事 への 興 味 )に 関 してはいずれもよく 感 じられている 群 において 社 会 的 非 孤 立 の 割 合 が 有 意 に 高 かった 5. 社 会 的 状 況 暮 らし 向 きにゆとりがあると 回 答 した 群 では 社 会 的 非 孤 立 者 の 割 合 が 高 かった 一 方 賃 貸 住 居 居 住 群 また 世 帯 収 入 が 少 ない 群 では 社 会 的 孤 立 の 割 合 が 高 かった 手 段 的 自 立 状 況 飲 酒 頻 度 喫 煙 外 出 頻 度 地 域 包 括 支 援 センターの 認 知 や 利 用 自 覚 的 物 忘 れの 程 度 などについては 社 会 的 孤 立 の 有 無 との 間 に 有 意 差 はみられなかった IV. 考 察 社 会 的 孤 立 を 免 れるには 一 つの 要 因 だけでなく 健 康 状 態 活 動 性 経 済 状 態 住 宅 環 境 の 要 因 が 重 なっていると 考 えられた 特 に 健 康 状 態 と 社 会 的 孤 立 との 関 係 では 社 会 的 孤 立 が 健 康 状 態 を 悪 化 させるという 関 係 だけでなく 健 康 状 態 活 動 性 が 保 たれている と 他 者 とつながる 機 会 も 増 え 新 たな 支 援 者 と 知 り 合 う 機 会 も 増 えることで 社 会 的 孤 立 を 防 止 するという 関 係 もあるのではないかと 思 われた 分 析 対 象 の 大 田 区 では 地 域 で 活 動 している 人 や 活 動 したい 人 が その 意 欲 や 能 力 を 発 揮 できるよう 地 域 福 祉 に 取 り 組 む 団 体 等 との 連 携 により 参 加 のきっかけをつくり 地 域 活 動 をさらに 活 性 化 できるよう 交 流 の 場 の 確 保 健 診 の 強 化 などの 生 活 習 慣 病 予 防 包 括 支 援 センター 機 能 強 化 見 守 り 体 制 の 推 進 住 宅 確 保 など 現 状 の 問 題 に 沿 った 事 業 計 画 を 策 定 した 分 析 結 果 と 今 回 の 行 政 の 計 画 に 一 致 した 点 も 多 く 研 究 者 と 現 場 の 連 携 が 意 義 のある ことだと 実 感 した 本 研 究 にご 協 力 をいただいた 対 象 の 皆 様 ご 指 導 をいただいた 渡 辺 修 一 郎 先 生 データ の 提 供 とご 指 導 をいただいた 東 京 都 健 康 長 寿 医 療 センター 研 究 所 の 藤 原 佳 典 先 生 をはじめ チームの 皆 様 に 心 よりお 礼 申 し 上 げます 2
参 考 文 献 1) 内 閣 府 : 平 成 22 年 度 高 齢 者 白 書. (http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/ index-w.html, 2014.12.22 アクセス)(2014) 2) 東 京 都 23 区 における 孤 独 死 統 計 ( 平 成 20~23 年 ): 世 帯 分 類 別 異 状 死 統 計 調 査. 東 京 都 医 務 院 編,2012 東 京 都 23 区 における 孤 独 死 統 計 ( 平 成 25 年 ) 東 京 都 医 務 院 (www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kansatsu/, 2014.12.22 アクセス)(2014) 3) 最 高 裁 判 所 事 務 総 局 家 庭 局 : 平 成 24 年 成 年 後 見 関 係 事 件 の 概 況 (http://www.courts.go.jp/vcms_lf/koukengaikyou_h24.pdf, 2014.12.22 アクセス) (2014) 4) P.Townsend, 山 室 周 平 訳 : 居 宅 老 人 の 生 活 と 親 族 網 戦 後 東 ロンドンにおける 実 証 研 究 垣 内 出 版, (1974). 5) 栗 本 鮎 美, 粟 田 主 一, 大 久 保 孝 義, 他 : 日 本 語 版 Lubben Social Network Scale 短 縮 版 (LSNS- 6)の 作 成 と 信 頼 性 および 妥 当 性 の 検 討. 日 本 老 年 医 学 誌, (48): 149-157(2011). 6) 矢 部 卓 也, 西 村 昌 記, 浅 川 達 人, 他 : 都 市 高 齢 者 における 社 会 関 係 の 形 成 知 り 合 ったきっか けとその 後 の 経 過. 老 年 社 会 科 学, 24(3): 319-326(2002). 7) 古 谷 野 亘, 西 村 昌 記, 矢 部 卓 也, 他 : 関 係 の 重 複 が 他 者 との 交 流 に 及 ぼす 影 響 都 市 男 性 の 社 会 関 係. 老 年 社 会 科 学, 27(1): 17-23(2005). 8) 西 村 昌 記 : 一 人 暮 らし 高 齢 者 の 生 活 課 題 サポートネットワークの 観 点 からー. 老 年 精 神 医 学 雑 誌, 15(2): 184-191(2004). 9) 小 林 江 里 香, 藤 原 佳 典, 深 谷 太 郎, 他 : 孤 立 高 齢 者 におけるソーシャルサポートの 利 用 可 能 性 と 心 理 的 健 康. 日 本 公 衆 衛 生 誌, 58(6): 446-456(2011). 10) 斉 藤 雅 茂 : 社 会 福 祉 調 査 としての 高 齢 者 孤 立 研 究 の 意 義 と 課 題. 日 本 福 祉 大 学 社 会 福 祉 論 集, 121: 29-42(2009). 11) 斉 藤 雅 茂 : 高 齢 期 の 社 会 的 孤 立 に 関 連 する 諸 問 題 と 今 後 の 課 題. 老 年 社 会 科 学, 35(1): 60-66(2013). 12) 山 本 和 興, 平 松 優 太 : 無 縁 社 会 と 地 域 コミュニティの 再 生 : 大 都 市 東 京 の 現 状 と 課 題 からの 考 察. 都 市 政 策 研 究, (7): 79-112(2013). 13) 舛 田 ゆづり, 田 高 悦 子, 臺 有 佳, 他 : 住 民 組 織 からみた 都 市 部 の 孤 立 死 予 防 に 向 けた 見 守 り 活 動 におけるジレンマと 方 略 に 関 する 記 述 的 研 究. 日 本 公 衆 誌 58(12): 1040-1047(2011). 14) 大 田 区 (https://www.city.ota.tokyo.jp/, 2014.12.22 アクセス)(2014) 15) 東 京 法 務 局 (http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/, 2014.12.22 アクセス)(2014) 16) 田 中 千 晶, 吉 田 裕 人, 天 野 秀 紀, 他 : 地 域 高 齢 者 における 身 体 活 動 量 と 身 体 心 理 社 会 的 要 因 との 関 連. 日 本 公 衆 衛 生 誌, 53(9): 671-680 (2006). 17) 赤 嶺 伊 都 子, 新 城 正 紀 : 世 帯 形 態 からみた 地 域 在 住 高 齢 者 の 支 援 単 独 世 帯 に 焦 点 をあてて ー. 民 族 衛 生,72(5):191-207(2006). 18) 濱 島 ちさと: 高 齢 者 のクオリティオブライフ. 日 本 衛 生 学 雑 誌,49(2):533-542(1994). 19) 内 閣 府 : 平 成 27 年 度 高 齢 者 白 書. (http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/ index-w.html, 2014.12.22 アクセス)(2015) 20) Wenger GC,Davies R,Shahtahmasebi S,et al:social Isolation and Loneliness in Old Age;Review and Model Refinement.Ageing and Society,16(3):333-358(1996)