教 科 指 導 等 を 通 じたPISA 型 読 解 力 の 育 成 に 関 する 研 究 - 読 解 力 グループ 研 究 の 概 要 - 研 究 の 概 要 本 研 究 は,これからの 国 際 社 会 を 生 きる 日 本 人 にとって 必 要 とされる 力 である PISA 型 読 解 力 を, 教 科 領 域 の 指 導 を 通 して 育 成 することを 目 指 すものである PISA 型 読 解 力 の 育 成 に 向 けて, 学 習 内 容 や 学 習 過 程 を 工 夫 することが 効 果 的 であることにつ いて,グループ 研 究 として 検 討 した キーワード 読 解 力 収 集 する 力 考 える 力 表 現 する 力 Ⅰ 主 題 設 定 の 理 由 平 成 17 年 1 月 に 文 部 科 学 省 は, OECD 生 徒 の 学 習 到 達 度 調 査 ( Programme for International Student Assessment 2003 以 後, PISA2003 と 呼 ぶ )の 調 査 結 果 を 発 表 した この 調 査 は, 実 生 活 の 様 々な 場 面 で 直 面 する 課 題 において 知 識 や 技 能 をどの 程 度 活 用 できるかを 評 価 することを 目 的 としている す なわち,この 調 査 が 求 める 能 力 は, 現 行 指 導 要 領 が 目 指 す 生 きる 力 確 かな 学 力 と 同 じ 方 向 性 のものであると 考 えられている PISA2003 調 査 結 果 によると, 我 が 国 の 学 力 は, 全 体 として 国 際 的 に 見 て 上 位 ではあるが, 読 解 力 など 低 下 傾 向 にあり, 特 に, 学 ぶ 意 欲 や 学 習 習 慣 に 課 題 が 見 られた 読 解 力 の 得 点 は OECD 平 均 程 度 まで 低 下 していることが 明 らかにされた そして,この 読 解 力 が 低 下 した 結 果 を 受 けて, 平 成 17 年 12 月 に 文 部 科 学 省 は 読 解 力 向 上 プログラム を 打 ち 出 した( 図 1, 表 1 参 照 ) このプログラムは PISA 型 読 解 力 の 向 上 を 図 るために, 各 学 校 における 指 導 改 善 に 向 けての 具 体 的 な 取 り 組 み 方 法 や, 文 部 科 学 省 と 教 育 委 員 会 による 学 校 現 場 を 支 援 するための 施 策 等 が 示 されて いる 特 に, 各 学 校 においては, PISA 型 読 解 力 の 育 成 に 向 けて, 国 語 科 の 指 導 を 中 心 としつつ, すべての 教 科 等 を 通 じて 取 り 組 むことが 求 められている 昨 年 12 月 に, 平 成 18 年 度 ( 2006 年 調 査 )に 実 施 された PISA 調 査 結 果 が 公 表 された この 結 果 に においても, 読 解 力 の 得 点 が 一 層 低 下 したことが 明 らかにされている この PISA 型 読 解 力 を 児 童 生 徒 に 育 成 することの 必 要 性 について, 国 立 教 育 政 策 研 究 所 の 有 元 秀 文 氏 は, 日 本 人 が 国 際 社 会 の 一 員 となるためには 国 際 的 なコミュニケーションができなければな らない と 述 べている 国 際 化 する 日 本 社 会 で 外 国 人 と 交 流 するためには, 知 識 や 技 能 を 実 生 活 の 場 面 で 応 用 する 力 が 必 要 である 日 常 の 課 題 解 決 をおこなう 場 面 において, 資 料 を 評 価 したり 根 拠 を 明 らかにしながら, 自 分 の 考 えを 論 理 的 に 表 現 することができるようなコミュニケーションの 力 が, これからの 国 際 社 会 を 生 きていく 日 本 人 にとって 必 要 である このような 力 は, 生 きる 力 と 同 様 のものであると 考 えられ,これからの 国 際 社 会 を 生 きる 児 童 生 徒 に, PISA 型 読 解 力 を 育 成 する ことが 必 要 であると 考 えられる 本 センターでは, 平 成 16~18 年 度 の3 年 間 にわたり, 国 語 力 向 上 についての 研 究 に 主 事 研 究 のグループ 研 究 として 取 り 組 んできた 特 に, 国 語 力 の 向 上 を, 論 理 的 思 考 力 と 相 互 向 上 -1-
図 1 読 解 力 向 上 プログラム( 文 部 科 学 省 平 成 17 年 12 月 ) 表 1 読 解 力 向 上 プログラム( 文 部 科 学 省 平 成 17 年 12 月 ) コミュニケーション 能 力 の 育 成 に 焦 点 化 し, 研 究 を 進 めてきた そして, 相 互 向 上 コミュニケー ション 能 力 を 人 間 の 成 長 への 願 望 や 人 格 の 完 成 という 教 育 の 期 待 を 根 底 にもち, 言 語 を 媒 介 とす る 本 質 的 理 解 と 高 い 相 互 理 解 を 目 指 していく 伝 達 受 容 能 力 と 定 義 し,その 伸 長 を 目 指 してきた 相 互 向 上 コミュニケーション 能 力 は, 知 識 の 本 質 的 理 解 と 人 間 的 理 解 を 結 び 付 けた 相 互 啓 発 型 のコミュニケーション 能 力 である 知 識 の 本 質 的 理 解 と 人 間 的 理 解 を 深 める 為 にコミュニケーション を 効 果 的 に 用 いている 点 は, PISA 型 読 解 力 の 育 成 に 深 く 関 わるクリティカル リーディング ( 建 設 的 な 視 点 に 基 づいた 評 価 批 判 読 み)と 関 連 があり, PISA 型 読 解 力 の 育 成 に 向 けて 参 考 にな ると 考 えられる 我 が 国 におけるこれまでの 学 習 指 導 要 領 の 改 訂 は, 国 が 行 う 各 種 学 力 調 査 結 果 に 基 づいて 行 われて きた 現 在 検 討 されている 新 学 習 指 導 要 領 においても, PISA2003 などの 国 際 学 力 到 達 度 調 査 結 果 や 教 育 課 程 実 施 状 況 調 査 の 結 果 を 基 に 検 討 されている 新 学 習 指 導 要 領 においては, 基 礎 的 基 本 的 な 知 識 技 能 を 身 に 付 けさせ, 自 ら 学 び 自 ら 考 える 力 などの 生 きる 力 をはぐくむという 現 行 の 学 習 -2-
指 導 要 領 のねらいが 引 き 継 がれている そして, 実 現 に 向 けて, 基 礎 的 基 本 的 な 知 識 技 能 の 育 成 ( 習 得 型 の 学 習 )と 自 ら 考 える 力 の 育 成 ( 探 究 型 の 学 習 )の 両 方 を 総 合 的 に 育 成 することが 必 要 であ り,そのための 手 だてとして 言 葉 と 体 験 などの 学 習 や 生 活 の 基 盤 づくりを 重 視 する 事 の 必 要 性 があげ られている 特 に, 習 得 と 活 用 については, 改 正 された 学 校 教 育 法 第 30 条 二 項 においては, 前 項 を 受 けて 前 項 の 場 合 においては, 生 涯 にわたり 学 習 する 基 盤 が 培 われるよう, 基 礎 的 な 知 識 及 び 技 能 を 習 得 させるとともに,これらを 活 用 して 課 題 を 解 決 するために 必 要 な 思 考 力, 判 断 力, 表 現 力 その 他 の 能 力 をはぐくみ, 主 体 的 に 学 習 に 取 り 組 む 態 度 を 養 うことに, 特 に 意 を 用 いなければなら ない と 述 べられている また, 習 得 型 の 学 習 と 探 究 型 の 学 習 の 間 に,この2つの 学 習 をつなぐ 学 習 ( 活 用 型 の 学 習 )を 位 置 付 けることが 考 えられている すなわち,1 基 礎 的 基 本 的 な 知 識 技 能 を 確 実 に 定 着 させる,2 定 着 した 知 識 技 能 を 実 際 に 活 用 する 力 を 育 成 する,3 活 用 する 力 を 基 礎 として, 実 際 に 課 題 を 探 究 す る 活 動 を 行 い, 自 ら 学 び 自 ら 考 える 力 を 育 成 する,という 過 程 を 各 教 科 等 で 具 体 的 に 行 っていくこと が 検 討 されている このような 状 況 を 踏 まえ, 本 センターにおいても PISA 型 読 解 力 の 育 成 についての 研 究 に 取 り 組 むことが 必 要 であると 考 える Ⅱ グループ 研 究 の 目 標 国 際 学 力 調 査 結 果 を 受 けて, 今 日 的 な 教 育 課 題 である PISA 型 読 解 力 についての 研 究 にグルー プ 研 究 として 協 同 で 取 り 組 み, PISA 型 読 解 力 の 具 体 的 な 育 成 方 法 について 検 討 し, 学 習 指 導 案 の 提 示 と 授 業 実 践 を 通 じて,その 育 成 過 程 について 明 らかにする Ⅲ 研 究 の 基 本 的 な 考 え 方 1 OECD 生 徒 の 学 習 到 達 度 調 査 (1) OECD 生 徒 の 学 習 到 達 度 調 査 ( PISA2003)の 概 要 OECD では, 学 習 到 達 度 を, 読 解 力 数 学 的 リテラシー( 活 用 能 力 ) 科 学 的 リテラシー( 活 用 能 力 ) の 主 要 3 分 野 から, 思 考 プロセスの 習 得, 概 念 の 理 解, 様 々な 状 況 でそれらを 生 かす 力 を 重 視 して 調 査 している 2000 年 に 最 初 の 調 査 を 行 い, 以 後 3 年 ごとのサイクルで 実 施 している 2003 年 調 査 は, 第 2サイクルとして 実 施 された 調 査 で, 主 要 3 分 野 に 新 たに 問 題 解 決 能 力 を 加 えて 行 われた 具 体 的 な 調 査 内 容 等 については, 表 2のとおりである また, OECD 生 徒 の 学 習 到 達 度 調 査 ( PISA2003) 年 調 査 国 際 結 果 報 告 書 によると, 読 解 力 数 学 的 リテラシー 科 学 的 リテラシー 問 題 解 決 能 力 については,それぞれ 表 3のように 定 義 さ れている (2) OECD 生 徒 の 学 習 到 達 度 調 査 ( PISA2003)の 調 査 結 果 我 が 国 の 学 力 は, 全 体 として 国 際 的 に 見 て 上 位 ではあるが, 読 解 力 などが 低 下 傾 向 にあり, 世 界 トップレベルとはいえない 状 況 であった 数 学 的 リテラシー( 活 用 能 力 ) は, 前 回 1 位 であっ たが 今 回 は 6 位 読 解 力 は 前 回 8 位 であったが OECD 平 均 と 同 程 度 の 14 位 科 学 的 リテラシー ( 活 用 能 力 ) は 前 回 と 変 わらず2 位 今 回 から 新 しく 実 施 された 問 題 解 決 能 力 は4 位 という 結 果 であった 平 均 得 点 の 国 際 比 較 については, 表 4のとおりである なお, 2006 年 調 査 においては, 我 が 国 の 読 解 力 の 得 点 は,さらに 14 位 から 15 位 へと 順 位 が 低 下 した -3-
表 2 OECD 生 徒 の 学 習 到 達 度 調 査 (PISA2003) 表 3 読 解 力 数 学 的 リテラシー 科 学 的 リテラシー 問 題 解 決 能 力 の 定 義 表 4 OECD 生 徒 の 学 習 到 達 度 調 査 (PISA2003)における 平 均 得 点 の 国 際 比 較 -4-
2 PISA 型 読 解 力 の 捉 え 方 読 解 という 用 語 は, 国 語 大 辞 典 ( 学 習 研 究 社 )では, 文 章 を 読 んで,その 意 味 内 容 を 理 解 する と 記 述 されている この 記 述 にみられるように 読 解 力 とは, 我 が 国 においては 文 章 を 読 んで,その 内 容 を 正 確 に 理 解 する 力 という 意 味 で 用 いられていることが 多 いと 考 えられる これに 対 して, PISA2003 調 査 における 読 解 力 ( Reading Literacy)は, 自 らの 目 標 を 達 成 し, 自 らの 知 識 と 可 能 性 を 発 達 させ, 効 果 的 に 社 会 に 参 加 するために, 書 かれたテキストを 理 解 し, 利 用 し, 熟 考 する 能 力 ( OECD 生 徒 の 学 習 到 達 度 調 査 ( PISA2003) 年 調 査 国 際 結 果 報 告 書 による ) と 定 義 されており, 我 が 国 の 国 語 教 育 等 で 従 来 用 いられてきた 読 解 力 という 語 の 意 味 とは 異 なる ものであると 考 えられる( 図 2 参 照 ) 以 後, 従 来 我 が 国 で 用 いられてきた 読 解 力 と 区 別 するた めに, PISA 調 査 における 読 解 力 ( Reading Literacy)を PISA 型 読 解 力 と 呼 ぶことにする 図 2 PISA 型 読 解 力 の 定 義 (OECD 国 際 報 告 書 英 語 版 参 照 ) PISA 型 読 解 力 の 定 義 は, 目 的 を 記 述 している 部 分 と 能 力 を 記 述 している 部 分 に 分 かれ ている 目 的 については, 自 らの 目 標 を 達 成 する 自 らの 知 識 と 可 能 性 を 発 達 させる 効 果 的 に 社 会 に 参 加 する ことが 示 されている そして,これらの 目 的 を 実 現 するために 必 要 であると 考 えら れる 能 力 として,テキストを 理 解 する 利 用 する 熟 考 する という3つが 示 されている また, 効 果 的 に 社 会 に 参 加 するために という 目 的 を 踏 まえて, PISA 型 読 解 力 の 調 査 問 題 に は, 実 生 活 で 直 面 する 実 際 的 な 課 題 が 多 く 含 まれている 単 に 文 章 を 読 んで 理 解 することばかりでは なく,それを 基 にして 推 論 したり, 自 己 の 知 識 や 経 験 と 結 び 付 けて 深 く 考 えたりする 問 題 である こ れは, 社 会 に 参 加 するために 求 められている 力 を 測 定 しているものであり, 生 きる 力 と 深 く 関 わ るものである さらに 上 記 報 告 書 では, 次 のような 内 容 の 解 説 を 付 け 加 えている 1 文 章 を 理 解 することはもちろん, 様 々な 目 的 のために 書 かれた 情 報 を 理 解 し, 利 用 し, 熟 考 す -5-
る 能 力 2ある 範 囲 の 状 況 の 中 で 様 々な 目 的 で 行 われる 読 解 の 応 用 力 をより 広 く 深 く 測 定 することに 焦 点 化 する 3 将 来 それぞれのコミュニティーに 積 極 的 に 参 加 することを 期 待 されている 生 徒 達 の 手 段 あるい は 道 具 として 捉 えている これらより, PISA 型 読 解 力 は,これまで 我 が 国 で 用 いられてきた 読 解 力 のイメージに 加 えて,1テキストを 解 釈 したり, 熟 考 したりすること,2テキストを 利 用 すること,3テキ ストに 基 づいて 自 分 の 意 見 を 論 じること,4テキストの 構 造 形 式, 表 現 法 を 評 価 すること,5 図 や グラフ, 表 なども 読 解 の 対 象 とすること,なども 包 括 している また, 読 解 力 向 上 プログラムによる と, PISA 型 読 解 力 は, 文 章 や 資 料 等 のテキストから 情 報 を 取 り 出 す ことに 加 えて,テキス トを 解 釈 したり, 熟 考 評 価 や 論 述 したりすることを 含 むことが 示 されている よって, PISA 型 読 解 力 の 概 念 の 方 がより 幅 が 広 いものであると 考 えられる また, 一 方 では, PISA 型 読 解 力 は,1 受 信 受 容 ( 読 むこと, 聞 くこと ),2 思 考 判 断 創 造 ( 考 えること, 思 うこと ),3 発 信 提 示 ( 書 くこと, 話 すこと)の3つの 要 素 の 総 体 であるとも 考 えられている( 横 浜 国 立 大 学 教 育 人 間 科 学 部 附 属 横 浜 中 学 校 による ) テキストを 正 確 に 読 み 取 る とともに, 自 分 の 考 えや 意 見 を 持 ち,さらにそれを 表 現 することができる 能 力 であると 考 えることが できる 以 上 のことを 踏 まえ, 本 グループとしては, PISA 型 読 解 力 を 図 3のように 捉 えることとした 図 3 PISA 型 読 解 力 の 捉 え 方 -6-
つまり,この PISA 型 読 解 力 を,1 収 集 する 力,2 考 える 力,3 表 現 する 力 の3つの 力 の 総 体 であると 考 えた 収 集 する 力 は,テキストの 中 にある 色 々な 情 報 を 目 的 に 応 じて 正 確 に 取 り 出 すことができる 力 である これは, 読 む 力 や 聞 く 力, 見 る 力 等 がこの 力 の 中 心 であると 考 えられる 我 が 国 において, 今 まで 一 般 的 に 読 解 力 と 言 われてきたような, 国 語 科 における 文 章 問 題 等 は, この 収 集 する 力 の 中 に 含 まれるものである 収 集 する 力 は, PISA 型 読 解 力 の 読 解 プロセスの 中 では 情 報 の 取 り 出 し に 深 く 関 わる 力 である 考 える 力 は,テキスト 全 体 の 内 容 について 理 解 した 上 で,テキストに 基 づいて 推 論 したり, 思 考 したりする 力 である これは,テキストの 中 にある 情 報 を 自 分 の 知 識 や 経 験 と 関 連 付 けて 理 解 した り, テキストに 基 づいて 論 理 的 に 思 考 したり, テキストの 内 容 や 形 式 について 多 方 面 から 吟 味 したり, 自 分 の 経 験 に 基 づいてテキストの 内 容 を 推 論 したりする 等 の 力 である その 際,あくまでもテキスト にあることを 根 拠 にして 推 論 したり, 思 考 したりすることが 必 要 である この 考 える 力 は, PISA 型 読 解 力 の 読 解 プロセスの 中 では 解 釈, 熟 考 評 価 に 深 く 関 わる 力 である 表 現 する 力 は, 推 論 したり 思 考 したことを, 文 字 として 文 章 に 論 述 ( 書 く 力 )したり, 音 声 言 語 により 発 表 する 等 の 話 す 力 や, 絵 や 歌, 身 体 を 用 いて 表 現 する 等 の 表 す 力 である ここでは,この 表 現 する 力 は, 最 終 段 階 として 自 ら 情 報 発 信 していく 力 であるといえる なお,この 表 現 する 力 は, PISA 型 読 解 力 の 読 解 プロセスの 中 では 解 釈, 熟 考 評 価 に 深 く 関 わる 力 でもある これらの3つの 力 の 中 で, PISA 型 読 解 力 の 中 核 をなすものは, 考 える 力 である この 考 える 力 を 育 成 するとともに, 推 論 や 思 考 したことを,テキストに 基 づいて 根 拠 を 示 しながら 表 現 す ることに 関 わる 表 現 する 力 を 育 成 することが 大 切 であると 考 える PISA 型 読 解 力 は,これからの 日 本 の 教 育 において, 学 力 の 中 心 的 な 位 置 付 けがなされるもの である 3 PISA 型 読 解 力 の 問 題 の 特 徴 PISA 調 査 における 読 解 力 の 問 題 は,テキストは 一 般 的 な 文 章 だけでなく 連 続 型 テキスト と 非 連 続 型 テキスト の 問 題 がある これらのテキストを 幅 広 く 読 み, 広 く 学 校 内 外 の 様 々な 状 況 に 関 連 付 けて 理 解 することがどの 程 度 できるかを 測 定 している この 調 査 は, 義 務 教 育 修 了 段 階 の 15 歳 児 が, 知 識 や 技 能 を 実 生 活 の 様 々な 場 面 で 直 面 する 課 題 に 対 してどの 程 度 活 用 できるかを 評 価 する ことをねらいとしている したがって, 特 定 の 学 校 カリキュラムがどれだけ 習 得 されているかをみる ものではない PISA 型 読 解 力 の 問 題 の 特 徴 としては, 情 報 の 取 り 出 し テキストの 解 釈 熟 考 評 価 と いう 読 解 のプロセスを 含 んでいる また, 問 題 の 出 題 形 式 は, 自 由 記 述 によるものが 多 く, 全 問 題 の うち 約 4 割 を 占 めている (1) 読 解 のプロセスの3つの 視 点 PISA 型 読 解 力 の 問 題 は, 読 解 のプロセスとして, 以 下 の3つの 視 点 を 設 定 している 1 情 報 の 取 り 出 し : テキストの 中 の 事 実 を 切 り 取 り, 言 語 化 図 式 化 する 2テキストの 解 釈 : 書 かれた 情 報 から 推 論 比 較 して 意 味 を 理 解 する 3 熟 考 評 価 : 書 かれた 情 報 を 自 らの 知 識 や 経 験 に 位 置 付 けて 理 解 評 価 する PISA 型 読 解 力 の 問 題 は, 文 章 や 資 料 から 情 報 を 取 り 出 す ことに 加 えて, テキストの 解 釈 -7-
熟 考 評 価 論 述 することを 含 んでいる( 図 4 参 照 ) 図 4 読 解 のプロセスの3つの 視 点 * 読 解 力 の5つのプロセスを 区 別 する 特 徴 ( 評 価 の 枠 組 み より) * 内 は, 著 者 が 付 加 する (2) PISA型 読 解 力 の 問 題 の 特 徴 PISA 型 読 解 力 の 問 題 は, 読 解 プロセスの3つの 視 点 に 基 づき, 以 下 のような 特 徴 がある 1テキストに 書 かれた 情 報 の 取 り 出 し だけではなく, 理 解 評 価 ( 解 釈 熟 考 )も 含 ん でいること 2テキストを 単 に 読 む だけではなく,テキストを 利 用 したり,テキストに 基 づいて 自 分 の 意 見 を 論 じたりするなどの 活 用 も 含 んでいること 3テキストの 内 容 だけでなく, 構 造 形 式 や 表 現 方 法 も, 評 価 すべき 対 象 となること 4テキストには, 文 学 的 文 章 や 説 明 文 章 などの 連 続 型 テキスト だけでなく, 図,グラフ, 表 などの 非 連 続 型 テキスト を 含 んでいること 読 解 力 の 問 題 は 全 部 で 28 問 あり, 今 までの 学 校 教 育 では 扱 わなかってこなかったような 実 際 的 な 課 題 が 含 まれていたり, 従 来 の 国 語 科 の 枠 を 越 えて 理 科 や 社 会 科 に 関 連 するような 幅 広 い 内 容 が 盛 り 込 まれている その 内, 通 常 の 文 章 の 問 題 は 64 %, 図 表 や 地 図 などの 問 題 は 36 %である 読 解 プロセスの3つの 視 点 により 課 題 を 分 類 した 出 題 率 は,1 情 報 の 取 り 出 しが 25 %,2テキス トの 解 釈 が 50 %,3 熟 考 評 価 が 25 %である 出 題 形 式 は,1 多 肢 選 択,2 複 合 的 選 択,3 求 答,4 自 由 記 述,5 短 答,のような 形 式 をとってい る -8-
(3) PISA 型 読 解 力 の 問 題 におけるテキストの 捉 え 方 PISA 型 読 解 力 の 問 題 で 使 われているテキストには, 連 続 型 テキスト と 非 連 続 型 テキスト がある 連 続 型 テキスト : 文 学 的 な 文 章 ( 物 語 ), 説 明 的 文 章 ( 解 説 ), 記 録 など 非 連 続 型 テキスト: 文 章 以 外 のデータを 視 覚 的 に 表 現 したもので, 図,グラフ, 地 図, 表 など これまで 我 が 国 における 読 解 の 問 題 で 多 く 用 いられてきたテキストは, PISA 型 読 解 力 の 問 題 では 連 続 型 テキスト にあたるものであると 考 えられる PISA 型 読 解 力 の 問 題 で 使 われてい るテキストは, 連 続 型 テキスト ばかりでなく 非 連 続 型 テキスト も 含 み,より 幅 広 く 多 様 な 捉 え 方 をすることができると 考 えられる 4 我 が 国 におけるPISA 型 読 解 力 の 課 題 OECD 生 徒 の 学 習 到 達 度 調 査 ( PISA2003)の 結 果 によると, 我 が 国 における PISA 型 読 解 力 の 課 題 は, 読 解 のプロセスの3つの 視 点 のうちで テキストの 解 釈 熟 考 評 価 に,また, 出 題 形 式 においては, 自 由 記 述 形 式 に 課 題 があることが 明 らかにされている また, 具 体 的 には, 下 記 のような 問 題 に 課 題 が 見 られた 1テキストの 表 現 の 仕 方 に 着 目 する 問 題 2テキストを 評 価 しながら 読 むことを 必 要 とする 問 題 3テキストに 基 づいて 自 分 の 考 えや 理 由 を 述 べる 問 題 4テキストから 読 み 取 ったことを 再 構 成 する 問 題 5 科 学 的 な 文 章 を 読 んだり, 図 やグラフをみて 答 える 問 題 Ⅳ グループ 研 究 の 構 想 1 グループ 研 究 の 構 成 PISA 型 読 解 力 の 育 成 についての 研 究 にグループ 研 究 で 取 り 組 み, 各 教 科 領 域 における 授 業 実 践 を 行 う グループの 構 成 員 と 研 究 対 象 については, 表 5のとおりである 表 5 グループの 構 成 員 と 研 究 対 象 所 属 氏 名 研 究 対 象 ( 教 科 領 域 等 ) 1 研 究 開 発 内 田 淳 グループの 統 括, 理 論 の 研 究 各 校 種 各 教 科 等 の 授 業 例 の 収 集 2 教 育 指 導 橘 田 雅 春 高 校 国 語 授 業 案 の 提 示 と 実 践 3 教 育 指 導 丸 山 一 彦 小 学 校 算 数 授 業 案 の 提 示 と 実 践 4 教 育 指 導 五 味 一 仁 高 校 理 科 授 業 案 の 提 示 と 実 践 5 業 務 推 進 橘 田 美 喜 恵 中 学 校 音 楽 授 業 案 の 提 示 と 実 践 6 教 育 指 導 清 田 礼 子 中 学 校 技 術 家 庭 ( 家 庭 分 野 ) 授 業 案 の 提 示 と 実 践 7 研 究 開 発 古 谷 みつ 江 高 校 家 庭 授 業 案 の 提 示 と 実 践 8 教 育 指 導 北 川 俊 明 中 学 校 保 健 体 育 ( 保 健 分 野 ) 授 業 案 の 提 示 と 実 践 9 研 究 開 発 二 宮 寛 美 高 校 工 業 授 業 案 の 提 示 と 実 践 10 教 育 指 導 田 中 和 恵 高 校 道 徳 授 業 案 の 提 示 と 実 践 -9-
2 研 究 内 容 (1) PISA 型 読 解 力 の 育 成 方 法 について 検 討 する (2) PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 した 指 導 方 法 を 考 案 する 1 PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 した 学 習 指 導 案 を 作 成 し, 授 業 実 践 を 行 う 2 日 常 的 に 学 校 現 場 で 行 われてきた 学 習 指 導 を 基 に 指 導 方 法 を 工 夫 改 善 する 3 学 校 現 場 において 実 践 しやすいものにする 4 各 教 科 領 域 等 における PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 した 指 導 計 画 ( 単 元 レベル)と 学 習 指 導 案 を 作 成 する 5 現 行 の 学 習 指 導 要 領 に 基 づいた PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 す (3) 各 教 科 領 域 等 におけるねらいの 達 成 を 図 りながら PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 す 1 各 教 科 領 域 等 におけるねらいを 達 成 するとともに, PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 す 指 導 の 工 夫 ( 学 習 内 容, 学 習 過 程 )による 授 業 実 践 を 行 う 2 PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 す 指 導 を 工 夫 ( 学 習 内 容, 学 習 過 程 )することにより, 各 教 科 領 域 等 におけるねらいがより 達 成 されやすくなるような 授 業 実 践 を 行 う 本 グループ 研 究 においては,2にあるような 授 業 実 践 を 目 指 す (4) PISA 型 読 解 力 を 育 成 する 具 体 的 な 視 点 1 読 解 力 向 上 に 関 する 指 導 資 料 ( 文 部 科 学 省 平 成 17 年 12 月 ) 中 で, 読 解 力 を 高 める 指 導 例 として, 指 導 のねらいを7つに 分 類 している この 読 解 力 を 高 める 指 導 例 にある7つの 能 力 の 育 成 に 基 づいた 指 導 を 工 夫 する ( 表 6 参 照 ) 表 6 読 解 力 向 上 に 関 する 指 導 資 料 ( 文 部 科 学 省 平 成 17 年 12 月 ) ア テキストを 理 解 評 価 しながら 読 む 力 を 高 める ア) 目 的 に 応 じて 理 解 し, 解 釈 する 能 力 の 育 成 イ) 評 価 しながら 読 む 能 力 の 育 成 ウ) 課 題 に 即 応 した 読 む 能 力 の 育 成 イ テキストに 基 づいて 自 分 の 考 えを 書 く 力 を 高 める ア)テキストを 利 用 して 自 分 の 考 えを 表 現 する 能 力 の 育 成 イ) 日 常 的 実 用 的 な 言 語 活 動 に 生 かす 能 力 の 育 成 ウ 様 々な 文 章 や 資 料 を 読 む 機 会 や, 自 分 の 意 見 を 述 べたり 書 いたりする 機 会 を 充 実 する こと ア) 多 様 なテキストに 応 じた 読 む 能 力 の 育 成 イ) 自 分 の 感 じたことや 考 えたことを 簡 潔 に 表 現 する 能 力 の 育 成 3 PISA 型 読 解 力 を 育 成 する 指 導 の 工 夫 (1) 学 習 内 容 の 工 夫 1テキストの 吟 味 と 工 夫 児 童 生 徒 にとって 興 味 関 心 が 高 いテキストを, 教 科 等 の 特 性 に 応 じて 選 定 し, 効 果 的 な 活 用 を 工 夫 する 身 近 な 教 材 を 活 用 した 指 導 ( 地 域 教 材, 児 童 生 徒 との 距 離 が 近 い 教 材, 日 常 的 な 教 材 等 ) -10-
日 常 生 活 との 関 連 を 意 識 させる 指 導 楽 しく 学 習 に 取 り 組 めるテキスト 児 童 生 徒 の 既 習 知 識 や 体 験 等 を 生 かせる 指 導 を 工 夫 する 文 部 科 学 省 読 解 力 向 上 に 関 する 指 導 資 料 によると,テキストについての 具 体 例 として, 表 7の ような 例 をあげている 表 7 テキストの 具 体 例 ( 読 解 力 向 上 に 関 する 指 導 資 料 による) これは, PISA 調 査 で 用 いられているテキストが, 書 かれたテキストであるのに 対 して,もっと 幅 広 く 視 覚, 聴 覚 的 な 情 報 全 般 にわたってテキストと 捉 えている 本 グループとしては,テキストにつ いては, 上 記 具 体 例 を 中 心 に, 書 かれたテキストばかりでなく, 学 習 の 対 象 となり 得 る 全 てのものが テキストになると 考 える (2) 学 習 過 程 の 工 夫 情 報 の 取 り 出 し テキストの 解 釈 熟 考 評 価 という 読 解 のプロセスの3つの 視 点 に 表 現 を 加 えて, 読 解 のプロセスの4つの 視 点 とし, 学 習 過 程 にこのプロセスを 位 置 付 けた 指 導 を 行 う なお, 読 解 力 向 上 プログラム に 明 記 されている 論 述 は, 本 研 究 においては 表 現 の 中 に 含 めて 考 えることとする 本 グループとしては, 読 解 のプロセスの4つの 視 点 を 表 8のように 考 える 表 8 読 解 のプロセスの4つの 視 点 情 報 の 取 り 出 し:テキストの 中 から 求 められた 情 報 を 正 確 に 取 り 出 すこと テキストの 解 釈 :テキストの 中 にある 情 報 を 根 拠 として,その 情 報 がもつ 意 味 について テキスト 全 体 から 構 造 的 に 理 解 したり 推 論 したりして,テキストを 解 釈 すること 熟 考 評 価 :テキストの 中 にある 情 報 を 解 釈 したことに 基 づいて,これまでの 知 識 や 体 験, 考 えなどのテキスト 以 外 の 情 報 に 照 らし 合 わせながら 自 分 で 思 考 すること また,テキストを 吟 味 したり,クリティカル リーディングを 行 うこ とにより,テキストの 内 容 や 形 式 について 自 分 で 考 えること 表 現 : 情 報 の 取 り 出 し テキストの 解 釈 熟 考 評 価 したことを 表 現 する ( 書 く 話 す あらわす 等 特 に, 論 述 することも 表 現 するこ との 中 に 含 めて 考 えることとする ) -11-
4 研 究 計 画 研 究 計 画 については, 表 9のとおりである 表 9 研 究 計 画 Ⅴ 研 究 のまとめと 今 後 の 課 題 グループ 研 究 として, PISA 型 読 解 力 の 育 成 についての 研 究 に 着 手 した 1 年 目 の 研 究 として, 日 常 の 授 業 の 中 で PISA 型 読 解 力 を 育 成 する 方 法 について 検 討 した そして, 小 学 校 中 学 校 高 等 学 校 のそれぞれの 校 種 において,9つの 授 業 実 践 を 行 った 小 学 校 の 算 数 科 では, 指 導 方 法 の 工 夫 として 学 習 過 程 に 論 理 的 な 思 考 活 動 の 場 面 を 位 置 付 けた 授 業 実 践 が 行 なわれた また, 中 学 校 の 音 楽 科 では, 表 現 領 域 と 鑑 賞 領 域 との 関 連 を 重 視 し, PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 した テキストから 音 楽 的 な 諸 要 素 を 取 り 出 させ, 音 楽 の 諸 要 素 の 役 割 を 理 解 さ せ, 表 現 方 法 を 工 夫 して 考 えさせ,より 深 い 表 現 をさせるというプロセスを 重 視 した 授 業 実 践 が 行 わ れた 技 術 家 庭 科 ( 家 庭 科 )では, 資 料 を 基 に 深 く 思 考 したり, 自 分 の 考 えを 記 述 したりする 活 動 を 学 習 過 程 の 中 に 取 り 入 れることにより, PISA 型 読 解 力 を 育 成 し,それが 教 科 のねらいの 一 層 の 実 現 につながるような 授 業 実 践 が 行 なわれた 保 健 体 育 科 ( 保 健 分 野 )では, 色 々な 情 報 を 効 果 的 に 活 用 し, 思 考 判 断 表 現 させるような 授 業 過 程 を 通 して, PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 した 授 業 実 践 が 行 なわれた また, 高 等 学 校 の 国 語 科 では, 古 文 の 読 解 指 導 において, PISA 型 読 解 力 の 育 成 と 古 文 の 読 みを 深 める 学 習 指 導 を 目 指 した 授 業 実 践 が 行 なわれた 理 科 では, 実 験 観 察 の 授 業 において, 学 習 過 程 や 学 習 プリント 等 を 工 夫 することを 通 して, PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 -12-
した 授 業 実 践 が 行 なわれた 家 庭 科 では, PISA 型 読 解 力 に 視 点 をおき, 中 高 の 連 接 に 配 慮 しな がら 学 習 指 導 と 評 価 の 充 実 を 目 指 した 授 業 実 践 が 行 なわれた 建 築 科 では, 学 習 過 程 の 工 夫 や 導 入 の 工 夫 等 を 通 して, ねらいの 達 成 とともに PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 した 授 業 実 践 が 行 なわれた 高 等 学 校 道 徳 教 育 では, 道 徳 の 授 業 を 通 して PISA 型 読 解 力 と 道 徳 性 の 育 成 を 目 指 した 授 業 実 践 が 行 なわれた これらのグループ 研 究 を 通 して, PISA 型 読 解 力 の 育 成 に 向 けて 次 のような 成 果 や 課 題 をあげ ることができる 本 研 究 では, 日 常 の 授 業 において, PISA 型 読 解 力 を 育 成 することを 目 指 した 結 果, PISA 型 読 解 力 の 育 成 につながるような 授 業 実 践 が 行 えたのではないかと 思 われる 授 業 実 践 を 行 った 授 業 者 の 感 想 や 児 童 生 徒 の 様 子 からは, PISA 型 読 解 力 の 育 成 につながるような 授 業 実 践 であったと 考 えられる PISA 型 読 解 力 の 育 成 に 向 けては, 学 習 内 容 の 工 夫 や 学 習 過 程 の 工 夫 が 効 果 的 である ことが 確 認 できた 教 師 が PISA 型 読 解 力 を 意 識 せずに 行 っている 日 常 の 学 習 指 導 の 中 にも, PISA 型 読 解 力 の 育 成 につながるような 素 晴 らしい 実 践 は 当 然 あると 思 われる しかし,そのような 場 合 には,PISA 型 読 解 力 の 育 成 に 向 けて, 教 師 が 意 図 的 に 行 っているわけではないために, 継 続 した 指 導 や 発 展 した 指 導 になることはあまり 期 待 できない 今 回 は, 学 習 内 容 の 工 夫 や 学 習 過 程 の 工 夫 を 通 して, 日 常 の 学 習 指 導 の 中 で, PISA 型 読 解 力 の 育 成 につながるような 具 体 的 な 指 導 方 法 について 検 討 し, 授 業 実 践 を 行 った まだまだ, 実 践 例 も 少 ないために, 明 確 に 結 論 をだすことはできないが, 日 常 の 学 習 指 導 を 行 う 中 で, PISA 型 読 解 力 の 育 成 につながるようなものであったと 考 えられる また, 今 後 の 研 究 としては, 学 習 内 容 や 学 習 過 程 をさらに 工 夫 していくことに 加 えて, 特 に 教 師 発 問 の 工 夫 があげられる 児 童 生 徒 にどのような 発 問 をすることが, PISA 型 読 解 力 の 育 成 に 向 け て 効 果 的 なのかを 検 討 していく 必 要 がある また, 検 証 方 法 についても 十 分 に 検 討 し, PISA 型 読 解 力 がどの 程 度 高 まったのかを 明 らかにしていく 必 要 がある これからも, PISA 型 読 解 力 の 育 成 を 目 指 したより 多 くの 授 業 実 践 が 行 われ, PISA 型 読 解 力 の 育 成 につながるような 効 果 的 な 指 導 方 法 が 明 確 にされて, 広 く 学 校 教 育 現 場 で 実 践 されることを 願 っている 参 考 文 献 初 等 教 育 資 料 No.808, No809, No810 読 解 力 向 上 プログラム ( 文 部 科 学 省 教 育 課 程 課 / 幼 児 教 育 課 編 集 ) ( 文 部 科 学 省 平 成 17 年 12 月 ) 読 解 力 向 上 をめざした 授 業 づくり 読 解 力 向 上 に 関 する 指 導 資 料 ( 井 上 一 郎 東 洋 館 出 版 社 2006) ( 文 部 科 学 省 平 成 17 年 12 月 ) 評 価 の 枠 組 み OECD 生 徒 の 学 習 到 達 度 調 査 ( PISA2003) 年 ( 国 立 教 育 政 策 研 究 所 ぎょうせい 2007) 調 査 国 際 結 果 報 告 書 ( ぎょうせい 2004) 平 成 18 年 度 山 梨 県 総 合 教 育 センター 研 究 紀 要 国 際 的 な 読 解 力 を 育 てるための 相 互 交 流 等 コミュニケーション の 授 業 改 革 ( 有 元 秀 文 渓 水 社 ) 読 解 力 向 上 のためのガイドブック 平 成 19 年 度 山 梨 県 総 合 教 育 センター ( 神 奈 川 県 総 合 教 育 センター 平 成 19 年 3 月 ) 読 解 力 とは 何 か 執 筆 者 研 修 主 事 内 田 淳 ( 横 浜 国 立 大 学 教 育 人 間 学 科 学 部 附 属 横 浜 中 学 校 三 省 堂 2006) -13-