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221 新潟県長岡市 齋藤氏【自治体における組織横断的な連携~精神障害者の地域移行を通して~】



高齢者サポートサービスとは? お一人暮らしの高齢者 お子さんがいらっしゃらなかったり 遠くにお住いの高齢者の方は 医療機関への入院 介護施設等への入居の際の身元保証人 ( 身元引受人 ) の手配や 亡くなった後の葬儀の手配や遺品整理について不安を抱えることが多くあります そのほかにも 日々の見守りな


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13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

4 チェック項目 意見 事業所評価 子どもと保護者のニーズや課題が客観的に分析さ れた上で 放課後等デイサービス計画 i が作成されているか ご意見はなく の回答数が全員でした 今後もよい支援を行えるよう努めていきたいと思いますのでご協力よろしくお願いします チェック項目意見 事

小規模多機能型居宅介護・介護予防小規模多機能型居宅介護サービス

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高齢者虐待防止対応マニュアル別冊 6 関係機関との連携 (1) 各機関の役割 市町村や地域包括支援センター等の関係機関は それぞれ対応可能な範囲があります 範囲を超えた対応は行うことができません また 事例によって関係機関の対応を依頼する場合があります 市町村が中心となるコアメンバー会議によって 大

利用者満足の向上センターのチラシの配布など センターのPRのために具体的な取り組みを行っている 苦情対応体制を整備している 特記事項 名刺 サービス情報誌 広報での PR イベントでのパネル設置など実施 相談の際のプライバシーの確保を図っている 公平性 中立性の確保 業務改善への取り組み 相談室の整

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裁判員制度 についてのアンケート < 調査概要 > 調査方法 : インサーチモニターを対象としたインターネット調査 分析対象者 : 札幌市内在住の20 歳以上男女 調査実施期間 : 2009 年 11 月 10 日 ( 火 )~11 月 11 日 ( 水 ) 有効回答者数 : N=450 全体 45

埼玉県特別養護老人ホーム優先入所指針 1 目的この指針は 特別養護老人ホーム ( 以下 施設 という ) のサービスを受ける必要性が高いと認められる者を優先的に入所させるため 施設が優先入所 ( 以下 入所 という ) に関する手続き及び入所の必要性を評価する基準等を制定する際の参考とすべき基準を明

2016 年顧客満足度調査集計結果 全体 全体の集計 目次 年顧客満足度調査集計結果 全体 1 ページ 株式会社ニチイ学館 年顧客満足度評価集計表 全体 2ページ 年利用者回答結果一覧 全体 3ページ サービス名 年利用者回答詳細結果 全体 4

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AIUの海外旅行保険はさまざまなリスクを幅広くカバーし ワーキングホリデーに行かれるお客さまの不安を解消します 保険金をお支払いする場合 お支払いする保険金 保険金をお支払いできない主な場合について 必ず本パンフレット P.5 裏表紙 でご確認ください ご自身がケガをしたり 病気になったりした場合

2コアメンバー会議の開催時期コアメンバー会議は 事実確認調査で得られた情報や相談 通報内容に基づき 緊急性を判断し 緊急性が高いと判断される事例については 早急に開催します 3 協議内容 虐待の事実認定情報の内容により虐待の事実の有無の判断を行います 情報の内容虐待の事実の有無の判断 高齢者の権利を

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事業所自己評価 ミーティング様式実施日平成 9 年 8 月 日 ( :~ :). ~ したい の実現 ( 自己実現の尊重 ) メンハ ー 前回の課題について取り組めましたか? 人 6 人 7 人 人 6 人 個別介護計画を見直す際にはケアマネ 介護職 看護師が必ず参加し 他職種の意見を取り入れた計画

個人情報の取り扱いについて 公益財団法人岩手県予防医学協会 個人情報保護管理責任者常務理事 公益財団法人岩手県予防医学協会 ( 以下 協会 という ) は 健康診断等で取得した個人情報 を協会の個人情報保護基本規程に従って適正に管理し 以下のとおりお取り扱いさせていただき ますので 個人情報の提供

過誤申立書のみで結構です Q7. 過誤申立手続きが可能なのは 何か月前の利用分までですか? A7. 再請求の有無や再請求する額の増減によって異なります 各区 支所の介護医療係または神戸市役所介護保険課保険事業係にご相談ください Q8. 今月 10 日に提出したレセプト ( 介護給付費明細書 ) に入

制度 後期高齢者医療制度とは 3 資格 被保険者 4 被保険者証 保険証 5 保険料の算定 6 保険料の納付方法 7 保険料の軽減と納付相談 8 お医者さんにかかるときの自己負担割合 10 療養費 12 接骨院 整骨院 柔道整復 のかかり方 13 訪問看護療養費 移送費 13 高額療養費 14 特定

児童発達支援又は放課後等デイサービス事業に係る自己評価結果公表用(あかしゆらんこクラブ)

ファーストケアチーム 事業実施マニュアル 阿南市保健福祉部福祉事務所 介護 ながいき課 平成 28 年 6 月作成

目次 1 調査概要 1 (1) 調査目的 (2) 実施日時 (3) 実施場所 (4) 対象者 (5) 実施方法 (6) 回答総数 アンケートの様式 2 2 市民課窓口アンケート結果 3 (1) 設問項目別の結果 (2) 昨年度との比較 (3) 利用者の声 3 窓口サービスの向上のために 13

2 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収集を適切に行っている 十分 おおむね十分 やや十分 不十分 分からない 不明 計 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収

まちの新しい介護保険について 1. 制度のしくみについて 東温市 ( 保険者 ) 制度を運営し 介護サービスを整備します 要介護認定を行います 保険料を徴収し 保険証を交付します 東温市地域包括支援センター ( 東温市社会福祉協議会内 ) ~ 高齢者への総合的な支援 ( 包括的支援事業 )~ 介護予

山梨県社会福祉士会地域包括支援委員会アンケート調査結果 (43 部回収 22 事業所 ) 問 1 あなたの性別を教えてください 1) 男性 2) 女性 問 2 あなたの現在のご年齢をお答え下さい 1)20 代 2)30 代 3)40 代 4)50 代 5)60 代

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学校評価保護者アンケート集計結果 2 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収集を適切に行っている 十分 おおむね十分 やや十分 不十分 分からない 不明

平成17年度社会福祉法人多花楽会事業計画(案)

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特別養護老人ホーム瑞光の里金表 ( 従来型個室 ) ( 平成 30 年 4 月 1 日現在 ) + 口腔衛生管理加算 介護職員処遇改善加算 + 所定単位数 介護度 ,867 21,516 介護度 ,975 23, 介護度

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がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

介護における尊厳の保持 自立支援 9 時間 介護職が 利用者の尊厳のある暮らしを支える専門職であることを自覚し 自立支援 介 護予防という介護 福祉サービスを提供するにあたっての基本的視点及びやってはいけ ない行動例を理解している 1 人権と尊厳を支える介護 人権と尊厳の保持 ICF QOL ノーマ

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< ワーク > あなたが市町村社協の職員として相談を受けた場合 ケアマネジャーにどのような質問をしますか どのような目的から どういった情報収集が必要でしょうか 必要な情報をもっている関係機関はどこでしょうか 例 : 本人の収支の状況 必要な情報情報収集の目的情報を持つ関係機関 次ページから C さ


≪障がい者雇用について≫

環境 体制整備 4 チェック項目意見 事業所評価 生活空間は 清潔で 心地よく過ごせる環境になっているか また 子ども達の活動に合わせた空間となっているか クーラーの設定温度がもう少し下がればなおよいと思いました 蒸し暑く感じました お迎え時に見学させて頂きますが とても清潔だと思

平成 29 年 4 月から 保険料の軽減率が変わります 後期高齢者医療保険料は 1 被保険者全員に納めていただく定額部分 ( 均等割 ) と 2 所得に応じて納めていただく部分 ( 所得割 ) があります 平成 29 年 4 月から 保険料が下のように変わります 1 均等割の額が変わる方 元被扶養者

中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律

特別養護老人ホーム 優雅 社会福祉法人 桜寿会 ( 特別養護老人ホーム優雅 ) 福島県南会津郡南会津町田島字北下原 111 番 TEL: FAX: ( 郡山オフィス ) 福島県郡山市菜根一丁目 22 番 10 号 T

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. ~ したい の実現 ( 自己実現の尊重 ) メンバー 立石小幡長尾森野三浦池原小倉星場 に対する取組み状況 0 か? 人人 に対する取組み結果 1 本人の目標( ゴール ) がわかっていますか? 0 4 本人の当面の目標 ~したい がわかっていますか? 0 4 本人の当面の目標 ~したい を目指

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平成18年度標準調査票

2) 社内外相談窓口についてまた ストレスチェック制度に基づく医師の面接指導以外にも 社内外に以下のような相談窓口が用意されています 今回のストレスチェックの結果に関わらず どなたでも利用できますので 体調面で何か気になることがあればご相談ください [ 社内相談窓口 ] 会社 部健康管理室保健師 連

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

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計画の概要 太田市地域福祉計画 太田市地域福祉活動計画とは? 太田市地域福祉計画市民のみなさまからご意見を伺いながら作成した 今後の地域福祉の方向性 将来像を示した太田市の計画です 太田市地域福祉活動計画社会福祉法人太田市社会福祉協議会が策定した 地域の社会福祉を推進するための具体的な活動計画です

2 従事者の態度 1 家族 要旨 看護師の発言への不満と褥瘡処置材料の入所者負担について 概要 母は要介護 5 先月 右膝横に表皮剥離があると連絡があった 表皮剥離はいつものことなので仕方がないと思っていたが 最近になって看護師から電話で 覚悟してください と言われた 意味を尋ねると 医師から足の切

A-2-(1)-1 利用者の自律 自立生活のための支援を行っている A-2-(1)-2 利用者の心身の状況に応じたコミュニケーション手段の確保と必要な支援を行っている A-2-(1)-3 利用者の意思を尊重する支援としての相談等を適切に行っている A-2-(1)-4 個別支援計画にもとづく日中活動と

2017 年 2 月 27 日株式会社カカクコム 価格.com 生命保険 に関する調査結果を発表加入率は約 8 割 若年層ほど低い傾向 加入中の生命保険は終身タイプがトップ将来への不安?20 代の加入目的 老後保障 貯蓄 が他世代よりも高い結果に補償内容への理解度 十分理解できていない加入者が 53

3 国保連調査事例 (1) 不明瞭な会計や職員の対応を改善してほしい分類申立者利用者事業者調査方法利用料子要介護 5 男性指定介護老人福文書調査祉施設実地調査苦情内容私の父は 特別養護老人ホームに入所している 1 入所してから一度も料金の明細書を見せてもらえない ただ 合計金額を知らされ支払うよう請

NPO法人おかやま入居支援 センターの取り組み

家族の介護負担感や死別後の抑うつ症状 介護について全般的に負担感が大きかった 割合が4 割 患者の死亡後に抑うつ等の高い精神的な負担を抱えるものの割合が2 割弱と 家族の介護負担やその後の精神的な負担が高いことなどが示されました 予備調査の結果から 人生の最終段階における患者や家族の苦痛の緩和が難し

満足度調査 単純集計結果

このような現状を踏まえると これからの介護予防は 機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく 生活環境の調整や 地域の中に生きがい 役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど 高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた バランスのとれたアプローチが重要である このような効果的

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(2) 医療処置の状況 医療処置の状況で あてはまるものはない は 特養入所待機者が約 6 割 施設入所者が 7 割近くとなっている 医療処置が必要な場合は 褥瘡 ( 床ずれ ) の処置 ( 特養入所待機者 % 施設入所者 %) 胃ろう 経管栄養 ( 特養入所待機者 % 施設入所者 %) が挙げられ

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【大同】「ご家族登録制度」を創設します!~大同生命「ベストシニアサービス」~

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SBOs- 3: がん診断期の患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 4: がん治療期 ; 化学療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 5: がん治療期 ; 放射線療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 6: がん治療期

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六七八九 生活の質の向上相談 助言教育権監護権 ( 利用料 ) 第 5 条利用者は 前条に定める重症心身障害児 肢体不自由児施設サービスの提供に対して 都道府県が定める障害児施設給付費 障害児施設医療費 肢体不自由児施設給付費 肢体不自由児施設医療費及び重要事項説明書に定める所定の利用者負担額を病院

広島県における『地域ケア会議』

Transcription:

福祉サービス苦情相談 センター通信 40 平成 27 年 11 月発行 社会福祉法人名古屋市社会福祉協議会 福祉サービス苦情相談センター TEL:052-910-7976 FAX:052-910-7977 発行 670 部 目次 ~ シリーズ連載 : 高齢者福祉施設と 苦情相談 3 1 施設訪問相談事業の報告 4 苦情相談事業研修会の報告 4 センターからのお知らせ 5 1. シリーズ連載 : 高齢者福祉施設と苦情相談 3 福祉サービス苦情相談センター苦情調整委員 ( 高齢者福祉施設担当 ) 愛知県社会福祉士会事務局長 中井景子 最近新聞等で 高齢者施設内での虐待が取り上げられることが多いと感じます 虐待は認知症高齢者に対する職員の介護知識 技術の未熟さや 人手不足から起こることも少なくないと思います 在宅での虐待と同時に 施設内の虐待をなくす取り組みも今後一層求められます また 介護施設内での事故も珍しくありません 事故を皆無にすることはできないかもしれませんが できるだけ事故を少なくしていくこと 事故が起きてしまったときどう対処していくのかについて事業所でよく検討し 職員全体が理解できているようにしていくことが必要です 今回は 施設内での事故後 説明 情報不足により苦情となった事例をもとに考えてみたいと思います 1

事例 申立者 : 姪申立内容 :87 歳の叔母がグループホームに入居している ホームで転倒し骨折 入院したが 謝罪の言葉もなく 医療費と入院期間中のホームの家賃も支払うように言われた 納得できない この事例は 夜間姪のもとに 転んでこぶができた と連絡が入り病院受診の結果 大腿骨骨折と診断され入院 手術となりました 2 週間後にはリハビリ病院に転院となっています 施設からは謝罪の言葉もなく 転倒に至った具体的な説明もなかったそうです また 入院の医療費の補償等の話もなく 入院中もホームの家賃の支払いが必要と言われてしまいました 姪が納得できず 苦情相談センターに電話をかけられました おそらく叔母様はご自身の子供はおらず 老後のことは姪御さんに託されていたのでしょう 介護施設での事故について全国的な統計はないようですが 介護事故の8 割は 転倒 転落 によるものだと言われています しかも居室のベッド周辺や 施設のリビング内での事故が圧倒的に多いのです この事例の場合も夜間の事故ですので トイレに行こうとして居室ベッドから立ち上がろうとしたところ 足元がふらついて転倒となったのかもしれません 具体的な説明がなかったとのことなので おそらく職員は見ておらず 本人も記憶がはっきりしていないことが想像されます 施設内で起こった事故の場合 安心して過ごせる場所としての施設でいったい何があったのか 職員は何をしていたのかと家族は疑問に思います 納得できる説明がないと 普段もきちんとお世話してもらえているのだろうかと不安になってきます 説明がない上に謝罪もないとなると不安だけでなく不信感につながります 職員は特に手落ちはなかったのだからと思うかもしれませんが 施設内で起こったことについては管理責任があると言えます 骨折による入院費の支払いについては 介護保険事業所は基本的に何らかの損害賠償保険に加入していると思いますが どのような事故なら保険で補償されるのか そのためにどんな手続きが必要で施設としてはどのように考えるのかといったこと 入院中にホームの家賃が必要となる理由の説明が不足していたと思われます 家族としては施設の中で起きた事故であり 施設側の責任があるのではないかと思っていますので 入院費 家賃の支払いに納得できない気持ちだったのでしょう この事例は 説明 情報不足による苦情ですが 背景には サービスの質 の問題があるとも言えます 介護事故で多い 転倒 転落 をできるだけ減らすにはどうしたらいいのかを検討することによって 施設内事故を減らすことができます 事故を減らすために施設職員としてしなければならないことはなんでしょうか 2

1 利用者の心身の状態の把握利用者の病気や障害の程度 日常生活動作 理解度 精神状態 意欲等 2 利用者の行動の把握行動範囲 移動時の動き それに伴う危険性 3 適切な介護方法の検討危険を回避するための介護 介助方法 見守りでの注意点 環境整備 職員間の情報共有 4 介護知識 技術向上の取り組み介護知識 技術に関する指導 研修 適切な介護の提供とともに大切なことは 事故が起こってしまったときに利用者 家 族に丁寧に対応する姿勢と その後のサ - ビス提供に活かしていくことができる体制づ くりです そのために必要なことはなんでしょうか 1 事故の報告の仕組みの確立事故発生時の口頭報告 文書報告の徹底 家族 保険者 ( 市町村 ) への報告 職員間での共有 2 事故対応マニュアルの検討担当者 責任者の設定 事故発生時の処置 報告 家族への連絡 説明 謝罪等の方法 事故内容の分析 原因究明の方法 課題の確認と職員間での対策の検討 リスクマネジメントは日常的な取り組みの積み重ねです 日々高齢者のお世話をする仕事は 毎日とにかく無事で終わったとホッとする繰り返しかもしれません 高齢者の状態の変化も気を付けてみていないと気づかずに過ぎていってしまうかもしれません おや? と思ったこと 転倒しそうで危なかったこと そういったことを一人の職員の気付きだけに終わらせるのではなくて 今日こういうヒヤリとしたことがあった さんはいつもと違う様子だが? とすぐに口に出して話し 職員間で確認する習慣を作りたいものです そうすることによって 職員が見ていないところで起きた転倒事故に対して 普段の動きはどうだったのか 職員はどんな配慮をしていたのか それでも起きた事故に対して今後どうしていこうと考えているのか等を家族に説明することができるでしょう 事故は完全になくすことは難しいことかもしれません 起きてしまったときにはきちんと謝罪し 普段の介護も含めて誠心誠意お世話していることが家族に伝わると 苦情とまでならずにいい関係が続けられるのではないでしょうか また 普段の介護現場での気づき 配慮 事故の状況 対応等がきちんと記録に残されていると振り返りができ 今後同様の事故が起こらないように対策を考えることができます 忙しさに流されがちですが より良い介護が提供できるよう 日々の取り組みを積み重ねていくことが大切だと思います ( 次号へ続く ) 3

2. 施設訪問相談事業の報告 障害福祉サービス事業所 TUTTIにて施設訪問相談事業を実施しました 実施日時 : 平成 27 年 8 月 3 日 ( 月 )16 時 30 分 ~18 時 45 分 担当委員 : 福祉サービス苦情相談センター苦情調整委員手嶋雅史氏 ( 障害福祉担当 ) テーマ : 障がい者の権利擁護と利用者支援について 参加者 :19 名 職員研修の一環として 障害福祉サービス事業所 TUTTIにおいて施設訪問相談事業を実施しました 最初に事務局から 苦情解決制度 についての講話を行い 続いて 手嶋委員から 障がい者の権利擁護と利用者支援 についての講話をしていただきました 最後に 参加者事前アンケート に基づき 手嶋委員と参加者の懇談後に手嶋委員からアドバイスをいただきました 参加された皆さんからは 支援者視点のわかりやすい内容でした 資料がとてもわかりやすく 参加型で良かったです 大変 参考になりました 今後に活かしていきたいです などのご意見をいただき 充実した内容の研修となりました 3. 苦情相談事業研修会の報告 第 1 回福祉サービス苦情相談事業研修会を開催しました 開催日時 : 平成 27 年 8 月 7 日 ( 金 )13 時 30 分 ~16 時 30 分 講師 : エム心理相談オフィス所長臨床心理士諏訪部政好氏 テーマ : 苦情相談の特性と相談技術 ~ 対応が難しい方の心理理解と苦情解決について~ 事例報告 : 社会福祉法人平針福祉会若杉作業所管理者岡昭良氏 : 名古屋市植田寮第一福祉係長中野耕次氏 参加者 :112 名今回は 第一部では神奈川県から諏訪部先生を講師にお招きし 支援する立場として 利用者の方やご家族についての心理理解を深めるとともに 対応方法について少し視点を変えて 苦情を信頼に変える相談対応について学びました 第二部では若杉作業所の岡氏 名古屋市植田寮の中野氏からの苦情対応事例報告を元に 諏訪部先生に対応への助言をいただきました 参加者の方から 心理的な部分でのアプローチは目からうろこでした 相談する側の気持ちに注目しなければならないということがとても参考になりました 事例報告により 自分の身に置き換えて考えることができました といった声をいただきました 4

4. センターからのお知らせ 契約事業所への支援事業について 施設訪問相談事業福祉サービス苦情相談センターの苦情調整委員が 相談を希望される契約事業所を訪 問し 苦情解決責任者や受付担当者 様々な現場の職員さんとの懇談 アドバイス等 を行います 現場における適切 円満な苦情解決のための相談や 職員さんの苦情解 決制度への理解促進 サービスの質の向上を図るための研修 会議の一環としても 是非ご利用ください 実施方法 :1 事業所あたり 利用できる回数は年 1 回までとします 多数のお申込 みがあった場合には 実施時期を調整させていただきます 実施時間 : 平日の原則 9 時から 16 時の時間帯で 2 時間程度 内 容 : 福祉サービスの利用に関する苦情についての相談 ただし サービスの 質の向上の観点からの 利用者処遇に関する相談であれば可能な限り助言等させて いただきます また ご希望があれば 委員による利用者への苦情相談も 併せて 実施いたします 申込方法 : 苦情相談センターまで電話または FAX でご相談ください 施設訪問相 談事業申込書 を送付いたします サポートくん福祉サービス苦情相談事業契約施設の皆さまをサポ ートする相談事業です 利用者さんへの処遇面で 疑問に思うことや 対応に 苦慮することはありませんか? そんな時 専門的助言が欲しいなぁと思うことはあり ませんか? そんな時は いつでもお気軽にご相談ください 福祉サービス苦情相談センターの苦情調整委員が 専門的立場からのアドバイスをさ せていただきます 原則として 相談をお受けしてから 5 日以内 ( 土 日 祝日は除 きます ) に 回答させていただきます 内容 : 福祉サービスの利用に関する苦情についての相談 サービスの質の向上の観点からの 利用者の処遇面に関する相談なら どんなことでも結構です ただし 苦情対応関係以外の同一内容の相談については 原則 1 回までとさせていただきます 利用方法 : 苦情相談センターまで 電話 FAXにて または直接窓口でご相談ください 相談受付時間は平日の9 時 ~12 時及び13 時 ~17 時です なお 法律関係のご相談については 定められた様式での申込みとさせていただきます 5

パネル パンフレットの配布について当センターでは 窓口掲示用パネル 利用者用パンフレット をお配りしています これらをご活用いただくことにより 施設の第三者委員を苦情相談センターに委託されていることを利用者やご家族に知っていただき 第三者の相談窓口を整備している施設 である安心感も一緒に伝えていただけると思います パネルがない 見づらくなっている場合やパンフレットの在庫がなくなった場合にはお気軽にご連絡ください 苦情申立窓口の掲載 パネル 福祉サービス苦情相談センター パンフレット / 利用者向け 事業所窓口にて苦情受付担当者 苦情解決責任者 第三者委員を利用者等へ案内するための 案内パネル を配布しています パネルを適切に掲示していただくことにより 苦情解決の仕組みに関する理解を深めるとともに 苦情相談センター ( 第三者委員 ) の活用により事業所と利用者等との良好な関係づくりを図ることを目的としています 苦情相談センターの利用のきっかけづくり 苦情解決制度の理解の促進を目的としています パネル に摩耗 破損がある場合や 配布する パンフレット が無くなった場合はセンターへご一報を! 苦情受付実績報告について ( お願い ) 苦情相談センターでは 全契約事業所を対象に苦情申立実績の月次報告をお願いしております これは どの施設種別でどんな苦情内容が申し立てされているか を把握し 適切なサポートを行うためのものです 苦情を基にこれまでの処遇を見直し より良いサービスを提供していくための糧として活用するため 事業所で直接申し立てを受け付けた苦情実績の報告にご協力をお願いいたします 福祉サービス苦情相談センター TEL:052-910-7976( 平日 9~12 時及び 13~17 時 ) FAX:052-910-7977 6