転倒 骨折予防について 超高齢社会の到来 2015年には国民の4人に1人が65歳以上 要介護者が2025年には倍増し600万人以上 高齢者の骨折 衰弱が増加の一途 運動の習慣化が重要とされている 貞松病院 理学療法士 大場 裕之 骨格筋量の変化 骨格筋量の変化 加齢に伴う筋量減少は ラテン語で サルコペニアと呼ばれ 早ければ30歳代 出典 中高年の元気長寿のための運動プログラム 理学療法 Vol.28 No7 2011 50歳以降に加速 加齢に伴う身体的変化 ホルモン分泌の低下など タンパク質代謝に障害 サルコペニアとなり筋肉量減少 高齢者の機能的自立を奪う最大の要因 でもある とされている 藤田ら 2004 骨格筋量の変化 運動量低下がさらに筋肉量減少を加速 加齢に伴う筋力の変化 成人の筋肉重量は体重の約40 サルコペニアに伴って筋力も著しく低下 20 50歳までに5 10 減少 60 70歳代では1年に1.5 ずつ低下 50 80歳では30 40 減少 1年に2 5 ずつ低下するとの報告もある Lexellら 1988 遅筋線維 速筋線維共に数は減少 断面積は速筋線維が減少 高齢者に特徴的な瞬発力の低下をもたらす Larssonら 1979 Anianssonら 1986 Winegardら1996 転倒の発生率と下肢筋力低下の間に 強い相関が認められている Gerdhemら 2005;Tinettiら 1995;Lordら 1991 1
骨粗鬆症について① 骨粗鬆症について② 診断基準 測定部位 腰椎 大腿骨頚部など) ①脆弱性骨折がある場合 若年成人平均値 YAM の80 未満 ②脆弱性骨折がない場合 若年成人平均値 YAM の70 未満 簡単な検査で 短時間で測定 できます 転倒とは 骨粗鬆症患者数は1300万人と推測 治療を受けている患者は200万人に留まっている 80歳以上の男性40 以上 女性60 以上 が骨粗鬆症を有していると報告されている 出典 理学療法2011 No.7 欧米では検診率の 向上や薬剤の投与 によって骨折が減 少してきています 転倒とは 本人の意思からではなく 地面または より低い面に身体が倒れること Gibson,1999 ①地域在住高齢者の10 20 が経験 ②施設入居高齢者の10 50 が経験 ⑤高齢者の転倒を防ぐことは 骨密度を増加さ せるのと同じほど 骨折予防に役立ち しか も経済的効率もよい 角田ら 2008 ⑥転倒による医療 介護費用は年間7277億円 林 2007 ③転倒による外傷発生が54 74 転倒予防教室の需要は増加 ④骨折が6 12 出典 理学療法Vol27 No.5 なぜ転倒するのか 個人要因 ①内的要因 身体障害 様々な疾患 筋力 バランスの低下 ①内的要因 ②外的要因 身体能力 身につけている物 病気やケガ 身の回りの環境 など など 転倒 歩行能力の低下 服用している薬剤 視力の低下 白内障 緑内障など 認知機能の低下 転倒への恐怖心 2
転倒場所 ②外的要因 屋外その他 玄関 5% 5% トイレ 9% カーペットや電気コード 薄暗い照明 乗物 庭 3% 3% 屋内廊下 23% 家屋の内外での手すりの不足 靴や服装 平坦でない歩行路 寝室 14% 居間 12% 段差や通り道の障害物 屋内その他 13% 歩道 13% 転倒時の履物 転倒の原因 段差 8% 障害物 6% 階段 4% 足のもつれ 19% その他の身体 的要因 15% めまい 8% 長靴 その他 10% 3% ハイヒール 1% 運動靴 27% バランス障害 8% 床滑り 10% 暗い 10% その他の環境 要因 12% 転倒による骨折 橈骨遠位端骨折 上腕骨近位端骨折 椎体圧迫骨折 大腿骨頸部骨折 サンダル 26% 革靴 22% パンプス 11% 橈骨遠位端骨折 前方へ 転倒し 手をつ き受傷 鋼線や プレート で固定 出典 術後理学療法プログラム 3
橈骨遠位端骨折 上腕骨近位端骨折 主に側方への 転倒にて受傷 人工骨頭や プレート固定 などの手術が 用いられる プレートを使用した 手術後の画像 ロッキングプレートの例 出典 理学療法2011 No.7 上腕骨近位端骨折 出典 標準整形外科学 椎体圧迫骨折 後方への転倒 重たい物を持つ 咳 くしゃみ 保存療法 (コルセット使用) 髄内釘を使用した手術 プレートを使用した手術 出典 理学療法2011 No.7 圧迫骨折の病態 骨折部の叩打痛 胸背部痛 腰痛 自覚症状がでない場合も多い 背中が丸くなる 身長が低くなるなどの症状 70歳以上の骨粗鬆症例は44 が発症 骨粗鬆症による脆弱性骨折の中で 圧迫骨折が最も多いとされている 勢いよく座ったり 咳をしただけで受傷 する場合もあります 出典 標準整形外科学 大腿骨頸部骨折 高齢者の 骨折で一番 多い 人工骨頭や 髄内釘など の手術が用 いられる 出典 術後理学療法プログラム 4
頸部骨折の発生数 大腿骨頸部骨折 頸部骨折の90 が転倒により発症 75歳以上では3 4が 屋内で発生 頸部骨折の受傷原因の74 が立った 116,800 120,000 92,600 100,000 71,600 80,000 58,000 60,000 男性 女性 39,700 40,000 高さからの転倒 20,000 13,500 19,000 20,800 25,300 31,300 0 当院でも一番 多い疾患です 1987年 1992年 1997年 2002年 2007年 大腿骨頸部発生患者数 出典 理学療法Vol27 No.5 バイオメカニズム学会誌Vol30 N0.3 頸部骨折に伴う医療費 一人当たり 平均146万円 全日本病院協会 介護費用 さらにその後かかる介護費用を 含めると 2007年の患者数で計算した場合 5300~6300億円 と推測され転倒によって 膨大な介護費用が使われ ている 年間 約2200億円の 医療費が使われている 介護が必要となった原因 パーキンソン病 6% その他 17% 脳血管疾患 28% 介護が必要となった原因 年代別 関節疾患 10% 認知症 11% 高齢による衰弱 16% 骨折 転倒 12% 出典 国民生活基礎調 2001年 出典 国民生活基礎調 2001年 5
寝たきりチャート図 寝たきりの原因 1位 脳血管疾患 36.7% 2位 高齢による衰弱 13.6% 3位 骨粗鬆症 骨折 11.7% 国民衛生の動向 2003 骨折のほとんどが頸部骨折 転倒 転倒不安 転倒症候群 外傷骨折 身体虚弱化 廃用症候群 ADL低下 閉じこもり 骨折の約20 の方が寝たきりに 女性は骨粗鬆症 骨折が1位 寝たきり ロコモティブシンドローム ロコモティブシンドローム 定義 運動器の障害により要介護になる リスクの高い状態 運動機能維持の重要性が浸透していない (2008年4月 日本整形外科学会) 類を見ないスピードでの高齢化 高齢化率が23.1 世界第1位 女性では運動器は要介護の最大原因 (出典 理学療法ジャーナル Vol45,No4) 意義 概念 変形性腰椎症 膝OA 骨粗鬆症が 一つでも当てはまる人は4700万人 要介護 要支援人口の原因疾患は 5人に1人が骨と関節の障害 (出典 臨床スポーツ医学 Vol27,No1) ロコチェック 1 気づく手段 2 障害の複合と連鎖 3 知の構造化 4 3大疾患への集約 5 運動器への理解 (出典 臨床スポーツ医学 Vol27,No1) 出典 日本整形外科学会 6
ロコトレ(片足立ち) ロコトレ 出典 日本整形外科学会 ロコトレ ロコトレ 出典 日本整形外科学会 ロコトレ 出典 日本整形外科学会 運動回数 頻度 強度について 高齢者運動処方ガイドライン セット数 1セット以上 運動強度 中 高強度 運動回数 10 15回 運動頻度 週2回以上 運動強度は自覚的運動強度を用いる 安静時を0 最大運動を10として中強度は5 6 高強度は7 8とする 週2回以上行う場合は 1日以上の休息を入れる 出典 日本整形外科学会 7
運動習慣化の効果 今後の検討課題 転倒予防事業は重要である と90 の市町村が回答 実際に転倒予防事業を 実施している市町村は 半数程度 転倒の危険要因などに ついて調査している 市町村は10 程度 畑山ら 2004 高齢者の転倒予防 活動性 認知面の向上 がはかれるよう転倒予防教室などの運動を する機会や場所を増やしていくことが重要 筋力の維持 強化 バランス能力の向上 認知機能の改善 耐久性の向上 転倒率の低下 転倒不安の軽減 医療費の抑制 閉じこもり防止 ストレッチ① ストレッチ体操 ①お尻の筋肉を伸ばします 両膝をかかえ お腹のほうに引き 寄せます ストレッチ② ②足の裏の筋肉を伸ばします 片方の足を前にだし 体を前に倒します 腰を曲げ過ぎず なるべく股関節を曲げる ようにしましう ストレッチ③ ③股関節と太ももを伸ばします お尻を半分 椅子から出し 出したほう の足を後ろに伸ばします 8
ストレッチ 4 ストレッチ 5 4 お尻の外側の筋肉を伸ばします 足首を逆の太ももにのせ 膝を下に向かって押します 5 太ももの内側の筋肉を伸ばします 両足を開き 体を前に倒します なるべく腰を曲げず 股関節を曲げるようにしましょう 筋力トレーニング ( 腹筋 ) 転倒予防トレーニング 腹筋 1 手を足の上に置き膝を触るように身体を起こします 腹筋 2 腕を組んで行います 筋力トレーニング ( 腹筋 ) 腹筋 3 腕を頭の上で組んだ状態で行います 腹筋 4 足と体を同時に起こします 筋力トレーニング ( 背筋 ) 背筋 1 両手で上半身を支えながら身体を起こします 腹筋 2 両手を使わずに体を起こします 9
筋力トレーニング ( 大殿筋 ) 大殿筋 1 膝を立てた状態でお尻をもちあげます 大殿筋 2 うつ伏せの状態で足を持ち上げます ( 腰を痛めないようにクッションを利用 ) 筋力トレーニング ( 中殿筋 ) 中殿筋 1 つま先を上に向けたまま足を横に開きます 中殿筋 2 横向きで同じ様に足を開きます 筋力トレーニング ( 中殿筋 ) 筋力トレーニング ( 内転筋 ) 中殿筋 3 チューブを巻いて足を開きます 内転筋 1 ボールを太ももで挟み込みます 中殿筋 4 座りながら行います 筋力トレーニング ( ハムストリング ) ハムスト 1 うつ伏せで足を曲げます ( 腰を痛めないようクッション等を利用します ) ハムスト 2 チューブで抵抗をかけ足を曲げます 筋力トレーニング ( 足関節 ) 足関節 1 足首の曲げ伸ばしを行います 足関節 2 チューブを利用し抵抗をかけます 10
筋力トレーニング ( 足関節 ) 足関節 3 つま先立ちを行います ( 椅子や壁などに手をついて行います ) 筋力トレーニング ( 腸腰筋 ) 腸腰筋 1 膝を伸ばしたまま足を持ち上げます ( 難しい場合 膝を曲げて行います ) 腸腰筋 2 椅子に座って足を持ち上げます ( 簡単な場合は重りを利用します ) 筋力トレーニング ( 大腿四頭筋 ) 四頭筋 1 膝の下にタオル等を入れ押しつけます 四頭筋 2 膝を伸ばした状態で足を持ち上げます 筋力トレーニング ( 大腿四頭筋 ) 四頭筋 3 座った状態で膝を伸ばします ( 簡単な場合 重りを利用します ) 四頭筋 4 立った状態で膝の曲げ伸ばしを行います 筋力トレーニング ( 腹横筋 ) 転倒予防教室 3 スクエアステップ 腹横筋ハ ランスクッションを利用します手を組み ふらつかないようにします 慣れてきたら膝を伸ばしたり太ももを持ち上げたりします 11